JP3670051B2 - 半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は,半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法及びその装置に係り,特に半導体の製造工程中等に起こる不純物汚染を検出するために用いられる半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体試料中に注入された電子・正孔(以下キャリアという)が,消滅するまでのライフタイムを測定する方法として,従来より光導電減衰法が幅広く用いられている。
この光導電減衰法では,半導体試料にマイクロ波を照射しておき,同時にレーザ光をパルス状に照射する。この照射されるレーザ光のフォトン・エネルギを試料中のバンドギャップ以上にしておくと,試料中にキャリアが発生する。発生したキャリアは,半導体中の欠陥や不純物等がバンドギャップ中に形成されるエネルギ準位の位置を介して再結合し,その数が徐々に減っていく。このとき,マイクロ波の反射波または透過波の強度がキャリアの量に伴って変化する。従って,マイクロ波の反射波又は透過波の強度を測定し,その強度が最大の位置からある一定の強度になるまでの時間をキャリアが半導体試料中に存在できる時間,すなわちライフタイムとして求める。
この測定方法で求められるライフタイムは,通常次のような式により表すことができる。
【0003】
【数1】
Figure 0003670051
ここで,τT は測定によって求まるライフタイム,τb は半導体試料基板中のライフタイム,τS は半導体試料表面のライフタイムである。
通常,半導体試料基板において,その表面には内部よりも多くの欠陥が存在する。また,表面に付着する不純物によって多くの欠陥が生じ,従って表面で多くのキャリアが短い時間中に再結合するいわゆる表面再結合が支配的となる。そのため,測定されるライフタイムτT は,ほとんど半導体試料表面のライフタイムτS によるものになる。そして本来求めようとする半導体試料基板中のライフタイムτb を測定することが困難となる。そこで,上記表面再結合を抑制する簡便な方法として,例えばヨウ素を有機溶液に溶かしたものに試料を浸した状態でライフタイム測定を行ういわゆるケミカル・パッシベーションが考案された(Insitu bulk lifetime measurement on silicon with a chemically passivated surface,T.S.Horalyi,etc.Applied Surface Science 63(1993)306−311 North−Holland 及び特公平5−505881号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような従来の半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法では,表面再結合を抑制し,半導体試料基板中のライフタイムτb を求めるために,ケミカル・パッシベーションを行う。しかし,従来方法では,十分に表面再結合が抑制されず,発生したキャリアの多くはなお表面で再結合する。そのため,測定中に光を照射すると,半導体試料表面中の状態が変化し,測定されるライフタイム値が変化する。
本発明は,上記事情に鑑みてなされたものであり,その主たる目的とするところは,試料表面のライフタイム値の影響をほとんど受けることなく,本来求めようとする試料基板中のライフタイム値を精度よく測定することができる半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法及びその装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は,予め半導体試料の表面を,電解質を含む溶液を用いてパッシベーション状態にしておき,該パッシベーション状態にされた半導体試料の表面にマイクロ波を照射しつつ励起光を照射し,該半導体試料からのマイクロ波の透過波又は反射波を検出し,該マイクロ波の透過波又は反射波の変化に基づいて上記半導体試料中の誘起されたキャリアのライフタイムを測定する半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法において,上記パッシベーション状態にされた半導体試料の表面に,上記励起光とは別の定常的でかつ上記電解質を含む溶液の種類と濃度とに応じて設定される所定の光強度を有するバイアス光を照射してなることを特徴とする半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法として構成されている。
らには,上記電解質を含む溶液中に上記半導体試料を浸漬することにより該半導体試料の表面をパッシベーション状態にする半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法である。
さらには,上記電解質を含む溶液が,ヨウ素のエタノールによる溶解液である半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法である。
【0006】
また,予め半導体試料の表面を,電解質を含む溶液によりパッシベーション状態にしておく試料表面処理手段と,該パッシベーション状態にされた半導体試料の表面にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と,該マイクロ波を照射された半導体試料の表面に励起光を照射する励起光照射手段と,該半導体試料からのマイクロ波の透過波又は反射波を検出するマイクロ波検出手段と,該マイクロ波の透過波又は反射波の変化に基づいて上記半導体試料中に誘起されたキャリアのライフタイムを測定するライフタイム測定手段とを具備した半導体試料のキャリアのライフタイム測定装置において,上記パッシベーション状態にされた半導体試料の表面に,上記励起光とは別の定常的でかつ所定の光強度を有するバイアス光を照射するバイアス光照射手段を備え,上記バイアス光照射手段が,上記バイアス光の所定の光強度を上記電解質を含む溶液の種類と濃度とに応じて設定する光強度設定手段を含んでなることを特徴とする半導体試料のキャリアのライフタイム測定装置である。
らには,上記試料表面処理手段が,上記電解質を含む溶液中に上記半導体試料を浸漬するための浸漬槽を含み,該浸漬により上記半導体試料の表面をパッシベーション状態にする半導体試料のキャリアのライフタイム測定装置である。
【0007】
【作用】
本発明によれば,予め半導体試料の表面が電解質を含む溶解液を用いてパッシベーション状態にされる。該パッシベーション状態にされた半導体試料の表面にマイクロ波が照射されつつ励起光が照射される。該半導体試料のからのマイクロ波の透過波又は反射波が検出される。該マイクロ波の透過波又は反射波の変化に基づいて上記半導体試料中に誘起されたキャリアのライフタイムが測定される。この際に,上記パッシベーション状態にされた半導体試料の表面に,上記励起光とは別の定常的でかつ所定の光強度を有するバイアス光が照射される。
このように予め半導体試料の表面をパッシベーション状態にしておくことにより,表面再結合をある程度抑制しておいた上で,上記バイアス光を照射すれば,溶液中のイオン物質の量が増加し,試料の表面電位が大きく変化するため,上記表面再結合がさらに抑制される。その結果,半導体試料中のキャリアのライフタイムを,表面再結合の影響を受けることなく高精度に測定することができる。
【0008】
【実施例】
以下添付図面を参照して,本発明を具体化した実施例につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施例は本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の一実施例に係る半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法の概略構成を示すフロー図,図2は上記実施例方法を適用可能な第1の装置A1 の概略構成を示す模式図,図3は光照射によってライフタイムが増加する現象示す説明図,図4は上記実施例方法を適用可能な第2の装置A2 の概略構成を示す模式図,図5は上記実施例方法を適用可能な第3の装置A3 の概略構成を示す模式図,図6は上記実施例方法を適用可能な第4の装置A4 の概略構成を示す模式図である。
【0009】
図1に示すごとく,本実施例に係る半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法は,予め半導体試料の表面を電解質を含む溶液を用いてパッシベーション状態にしておき(S1),該パッシベーション状態にされた半導体試料の表面にマイクロ波を照射しつつ励起光を照射し(S2,S3),該半導体試料からのマイクロ波の透過波又は反射波を検出し(S4),該マイクロ波の透過波又は反射波の変化に基づいて上記半導体試料中に誘起されたキャリアのライフタイムを測定する(S5)ように構成されている点で従来例と同様である。しかし,本実施例では,上記パッシベーション状態にされた半導体試料の表面に,上記励起光とは別の定常的でかつ所定の光強度を有するバイアス光を照射する(S3′)点で従来例と異なる。
さらに,上記バイアス光の所定の光強度が,上記電解質を含む溶液の種類と濃度とに応じて設定されることとしてもよい。さらに,上記電解質を含む溶液中に上記半導体試料を浸漬することにより,該半導体試料の表面をパッシベーション状態にすることとしてもよい。さらに,上記電解質を含む溶液が,ヨウ素のエタノールによる溶解液であることとしてもよい。これらの点でも従来例と異なる。
【0010】
上記実施例方法は,例えば図2に示すような第1の装置A1 によって具現化される。即ち,上記実施例方法のステップS1は,同装置A1 の溶液3及び溶液セル4(浸漬槽に相当)よりなる試料表面処理手段により,ステップS2は,マイクロ波発生器5,導波管6,サーキュレータ7及びアンテナ8よりなるマイクロ波照射手段により,ステップS3は,レーザ光源9よりなる励起光照射手段により,ステップS4は,マイクロ波検出器10よりなるマイクロ波検出手段により,ステップS5は,演算器11及び表示器12よりなるライフタイム測定手段によりそれぞれ実行される。そして,ステップS3′は,ハロゲン光源13よりなるバイアス光照射手段により実行される。
以下,本第1の装置A1 の動作を通じて,上記実施例方法をステップS1,S2,…順にさらに詳述する。
【0011】
図1,図2において,測定される半導体試料1は予め溶液セル4中にヨウ素をエタノールで溶解した溶液3と共に封入されてその表面が従来例と同様にパッシベーション状態にされている(S1)。そして,このパッシベーション状態にされた半導体試料1は,ステージ2によりライフタイム測定位置まで移動される。ここで,ガンダイオードなどのマイクロ波発生器5によって発生させたマイクロ波が,導波管6及びサーキュレータ7を通り,マイクロ波照射及び検出用のアンテナ8を介して上記パッシベーション状態にされた半導体試料1の表面に照射される(S2)。また,半導体試料1にはレーザ光源9からのレーザ光(励起光に相当)の照射によってキャリアが注入される(S3)。
半導体試料1からのマイクロ波の反射波は,再びアンテナ8及びサーキュレータ7を通った後,マイクロ波検出器10によって検出される(S4)。このとき検出されたマイクロ波の反射強度の時間変化が演算器11により演算される。そして,この演算結果からライフタイムが求められ,表示部12に表示される(S5)。ここまでは従来例と同様である。
この際,本実施例ではパッシベーション状態にされた半導体試料1に,さらにハロゲンランプ13からのバイアス光が照射される(S3′)。
【0012】
このとき得られた測定結果の一例を図3に示す。ここでは,半導体試料1に,照射強度の異なるバイアス光を照射し,それぞれライフタイムを測定した。その測定結果より,バイアス光を照射すれば,ライフタイムは大きく増加することがわかる。これは,上記バイアス光の照射により,溶液3中のイオン物質の量が増加し,試料の表面電位が大きく変化する結果,半導体試料表面での再結合が大きく抑制されるためである。これにより本来求めようとする半導体試料基板中のライフタイムτb が測定できるようになった。また,図3より試料を浸す電解液の濃度によって,ライフタイムが飽和するバイアス光の光強度が異なることもわかる。このことは電解液の種類が異なる場合も同様である。そこで,使用する電解質の種類と濃度とによってライフタイムが飽和する光強度の例えばテーブルを予め求めておく。そして,このテーブルを用いて最適な強度のバイアス光を試料に照射することにより表面再結合のほとんど無い,本来求めようとする半導体試料基板中のライフタイムτb を精度よく求めることができる。
【0013】
上記実施例方法は図4に示すような第2の装置A2 によっても具現化することができる。
図4において,測定される半導体試料1は,ステージ2によりライフタイム測定位置まで移動される。測定位置で半導体試料1には,レーザ光源9によってキャリアが注入され,マイクロ波照射及び検出用アンテナ8からはマイクロ波が照射され,ライフタイムが測定される。ここまでは,上記第1の装置A1 と同様である。しかし本第2の装置A2 では,ハロゲンランプ13からのバイアス光はレンズ14,光ファイバ15及び光導入孔16を介して,測定位置で半導体試料1に照射される。この場合には,ヨウ素を溶解した溶液3と共に溶液セル4中に封入された半導体試料1に直接バイアス光を照射することができるため,効率よく表面再結合を抑制できる。
上記実施例方法は図5に示すような第3の装置A3 によっても具現化できる。
【0014】
本第3の装置A3 では,ハロゲンランプ13からの光はハーフミラー16により半導体試料1に照射される。この場合にも,半導体試料1に直接バイアス光を照射することができ,効率よく表面再結合を抑制できる。
上記実施例方法は,図6に示すような第4の装置A4 によっても具現化できる。
本第4の装置A4 では,マイクロ波の透過波を検出することにより,ライフタイム測定を行うようになっている。この場合も上記第1の装置と同様,試料の表面再結合を抑制できる。
以上のように,半導体試料1を測定する際に電解質を含む溶液3中に浸しながら測定すると,溶液3中のイオン物質が試料1の表面電位を変化させ,表面再結合を抑制する。そこで,半導体試料1にレーザ光を照射してライフタイムを測定すると同時に,レーザ光以外のバイアス光を照射すれば,溶液3中のイオン物質の量がさらに増加する。これにより,試料1の表面電位はさらに大きく変化し,表面再結合抑制効果がさらに増加する。そこで,電解質を含む溶液3の種類・濃度に応じて最適な強度の光を照射することにより,表面再結合を最大限抑制することができる。
【0015】
その結果,測定されるライフタイムの値は,試料表面のライフタイム値の影響をほとんど受けず,本来求めようとする試料基板中のライフタイム値を示すことになる。よって,半導体試料中のキャリアのライフタイムを表面再結合の影響を受けることなく高精度に測定することができる。
尚,上記各実施例装置A1 〜A4 では,いずれも半導体試料1はヨウ素をエタノールで溶解した溶液3と共に,溶液セル4中に封入したが,試料表面上に溶液を塗布する状態でライフタイムを測定してもよい。その場合も,同様に表面再結合を抑制して,ライフタイムを高精度に測定できる。
【0016】
【発明の効果】
本発明に係る半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法及びその装置は,上記したように構成されているため,半導体試料のキャリアのライフタイムを,表面再結合の影響を受けることなく高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法の概略構成を示すフロー図。
【図2】 上記実施例方法を適用可能な第1の装置A1 の概略構成を示す模式図。
【図3】 光照射によってライフタイムが増加する現象示す説明図。
【図4】 上記実施例方法を適用可能な第2の装置A2 の概略構成を示す模式図。
【図5】 上記実施例方法を適用可能な第3の装置A3 の概略構成を示す模式図。
【図6】 上記実施例方法を適用可能な第4の装置A4 の概略構成を示す模式図。
【符号の説明】
S1…試料表面処理工程
S2…マイクロ波照射工程
S3′…バイアス光照射工程
S3…励起光照射工程
S4…マイクロ波検出工程
S5…ライフタイム測定工程

Claims (5)

  1. 予め半導体試料の表面を,電解質を含む溶液を用いてパッシベーション状態にしておき,該パッシベーション状態にされた半導体試料の表面にマイクロ波を照射しつつ励起光を照射し,該半導体試料からのマイクロ波の透過波又は反射波を検出し,該マイクロ波の透過波又は反射波の変化に基づいて上記半導体試料中の誘起されたキャリアのライフタイムを測定する半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法において,
    上記パッシベーション状態にされた半導体試料の表面に,上記励起光とは別の定常的でかつ上記電解質を含む溶液の種類と濃度とに応じて設定される所定の光強度を有するバイアス光を照射してなることを特徴とする半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法。
  2. 上記電解質を含む溶液中に上記半導体試料を浸漬することにより該半導体試料の表面をパッシベーション状態にする請求項1に記載の半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法。
  3. 上記電解質を含む溶液が,ヨウ素のエタノールによる溶解液である請求項1又は2のいずれかに記載の半導体試料のキャリアのライフタイム測定方法。
  4. 予め半導体試料の表面を,電解質を含む溶液によりパッシベーション状態にしておく試料表面処理手段と,該パッシベーション状態にされた半導体試料の表面にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と,該マイクロ波を照射された半導体試料の表面に励起光を照射する励起光照射手段と,該半導体試料からのマイクロ波の透過波又は反射波を検出するマイクロ波検出手段と,該マイクロ波の透過波又は反射波の変化に基づいて上記半導体試料中に誘起されたキャリアのライフタイムを測定するライフタイム測定手段とを具備した半導体試料のキャリアのライフタイム測定装置において,
    上記パッシベーション状態にされた半導体試料の表面に,上記励起光とは別の定常的でかつ所定の光強度を有するバイアス光を照射するバイアス光照射手段を備え,
    上記バイアス光照射手段が,上記バイアス光の所定の光強度を上記電解質を含む溶液の種類と濃度とに応じて設定する光強度設定手段を含んでなることを特徴とする半導体試料のキャリアのライフタイム測定装置。
  5. 上記試料表面処理手段が,上記電解質を含む溶液中に上記半導体試料を浸漬するための浸漬槽を含み,該浸漬により上記半導体試料の表面をパッシベーション状態にする請求項4に記載の半導体試料のキャリアのライフタイム測定装置。
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