JP3670027B2 - 樹脂接合型光学素子、およびその製造方法 - Google Patents

樹脂接合型光学素子、およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、樹脂層を有する光学素子およびその製造方法に係り、特に、非球面を有する樹脂成形層と、球面または粗い非球面を有するガラスレンズまたはプラスチックレンズとを有する樹脂接合型非球面レンズ、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より知られている非球面レンズの構成を図3および図4に示す。なお、図3は、ガラス基材1(またはプラスチック基材)が球面を有する場合の構成例を示し、図4は、特開昭63−157103号公報に記載されているように、上記基材1が粗い非球面を有するの場合の構成である。
【0003】
従来より知られている非球面レンズは、ガラスまたはプラスチック基材1上に薄い(5〜100μm)樹脂層2を積層した構成を有する。両者はいずれも安価な製造コストで入手出来る。このような非球面レンズの製造方法としては、紫外線硬化型樹脂を用いて樹脂層2を成形する方法が一般的である。
【0004】
この成形法は、成形容易な紫外線硬化型樹脂液を用いて光学面を形成するため、所望形状の光学面を有する非球面レンズを比較的容易に得ることができ、量産性に優れた方法である。従来より知られている樹脂接合型非球面レンズの製造方法を、ガラス基材1が球面を有する場合を例に、図5に示す。
【0005】
まず、通常の方法によりガラス製球面レンズを作製する。すなわち、溶解状態のガラスをプレス成形し、得られたガラスブロックを、機械加工により所望の球面を有するレンズに調製する(基材製造工程:図5(a))。つぎに、基材製造工程により製造されたレンズの一方の面に反射防止膜4をコーティングする(裏面反射防止膜成形工程:図5(b))。さらに、レンズの、上記基材上反射防止膜形成工程で反射防止膜4を形成しなかった面に、紫外線硬化型樹脂液を塗布し、樹脂層2を成形する(樹脂層形成工程:図5(c))。ここでは、樹脂層2の形成された面を、該レンズの表面と呼ぶ。樹脂層2成形後、樹脂層2成形面(表面)に反射防止膜5をコーティングする(表面反射防止膜形成工程:図5(d))。最後に、反射防止膜5の最外周部とレンズの外周部(縁のアラズリ部)とを覆うように遮光用塗料を塗布し、塗料を焼きかため、遮光膜3を形成する。なお、遮光用塗料として墨を用いる場合は、加熱せず、自然乾燥させる(遮光膜形成工程:図5(e))。
【0006】
上記の方法により製造されたレンズの端部を図2に示す。従来の製法では、樹脂層2成形後、樹脂層2表面に反射防止膜5をコーティングし、その後、反射防止膜5の最外周部およびレンズの外周部(アラズリ部)に遮光膜3を形成していた。このため、樹脂層2の端部は、反射防止膜5に覆われるようになっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の製法で製造された樹脂接合型非球面レンズは、レンズの裏面(樹脂層2が形成されていない面)からみると、樹脂層2の最外周端面部6が輪帯状に光ってしまう。この様子を図8の(a)〜(c)に示す。図8の(a)〜(c)は、いずれも従来技術により製造されたレンズの外周付近を、裏面から観察した場合を示す外観斜視図である。また、図9は、従来技術により製造されたレンズの外周付近を、裏面から撮影した写真である。なお、図8において、(a)は10倍、(b)は20倍、(c)は40倍の拡大図である。図9において、(a)は10倍、(b)は20倍、(c)は40倍の拡大写真である。図8の(a)〜(c)および図9において、Eはレンズの外周部を示し、樹脂層の最外周端面部分が反射し、輪帯状の光rが観察される。なお、輪帯状の光rには、反射が不均一で、輪帯が節状になっている箇所wが見られる。このような、輪帯状の反射rや、反射の不均一wは、外観的に見劣りし、場合によっては不良となる。レンズを透過して見た場合、樹脂層2の最外周部端面6の反射は、全反射の条件に近く、非常に明るい輝線として見え、さらに、この部位は、透過光の反射が目立ち易い場所だからである。
【0008】
そこで、本発明は、生産性を低下させることなく、上記の樹脂層最外周端面部6の反射を軽減させ、外観品質を向上させるレンズの製造方法、および、上記の樹脂層最外周端面部6の反射が少ないレンズを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、基材レンズの少なくとも一方の面に樹脂層を有する樹脂接合型レンズにおいて、遮光膜を有し、上記樹脂層の最外周端面は、上記遮光膜により覆われていることを特徴とする樹脂接合型レンズが提供される。レンズの少なくとも一方が非球面であってもよい。
【0010】
また、基材レンズの少なくとも一方の面に樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、レンズの外周部のアラズリ部および樹脂層の外周部分に遮光塗料を塗布して遮光膜を形成させる遮光膜形成工程と、少なくとも樹脂層の表面に、反射防止膜形成する反射防止膜形成工程とを、上記の順番で有することを特徴とする樹脂接合型レンズの製造方法が提供される。なお、前記遮光塗料は、シラン・カップリング剤を混ぜたアクリルウレタン樹脂塗料を用いることができる。
【0011】
【作用】
本発明のレンズの外周部周辺を図1に示す。本発明によれば、樹脂層2成形後、まず、遮光膜3が樹脂層2最外周端面6上に形成され、つぎに、反射防止膜5が形成される。このようにすれば、樹脂層2最外周端面6の反射を減少させることができることを本発明者等は見出した。
【0012】
なお、本発明は、図3に示したような、基材1の凹面側に樹脂層2を有するレンズであっても、図4に示したような、凸面側に樹脂層2を有するレンズであっても、適用することができる。また、本発明は、基材レンズ1の凹面側及び凸面側のいずれか一方に樹脂層2を有する非球面レンズにのみ限定されるものではなく、例えば、図6に示すように、基材レンズ1の凸面側及び凹面側の双方に樹脂層2をそれぞれ有するレンズにも適用することができる。
【0013】
【実施例】
次に、本発明の一実施例を、図面を用いて説明する。
本実施例では、製造されたレンズは、球面のガラス製基材レンズ1の表面に形成された樹脂層2の最外周端面6は、遮光膜3に覆われている。樹脂層2の厚さは、例えば、中心で5〜100μmとすることができるが、本発明は樹脂層2の厚さには依存しない。また、ガラス製基材レンズ1としては、例えば、外径が15〜40mmで、中心厚が1〜10mmの大きさのものを用いることができるが、上記以外の大きさのレンズを基材として用いることもできる。また、両面とも球面に研磨加工されているレンズを用いることもできるが、一方の面又は両面が非球面のレンズを用いてもよい。さらに、基材として用いられるレンズは、ガラス製に限らない。プラスチック製のレンズを基材レンズとして用いることもできる。 本実施例では、以下に述べる方法により樹脂接合型非球面レンズを作製した。製造の各段階を図7に示す。
【0014】
(1)本実施例では、直径33mm、凸面R1の曲率半径89.50mmR、凹面R2の曲率半径19.0mm、中心厚み1.6mmのガラス製基材レンズ1を用いる。なお、このガラス製基材レンズ1は、両面とも球面に研磨加工されている。このガラス製基材レンズ1の、樹脂層2を接合する面とは反対側の面(凹面側)には、既に、内面反射防止塗料を塗布することにより、内面反射防止膜4が形成されている。内面反射防止塗料としては、アクリル樹脂に対して害を与えることのない塗料を選定しなければならない。また、ガラス製基材レンズ1は、樹脂層2との密着力を向上させるために、表面に予めシランカップリング処理を施してある。シランカップリング処理のためのシランカップリング剤として、本実施例では、商品名KBM503(信越化学(株)製)を2WT%の濃度でエタノールで希釈して使用した。
【0015】
(2)まず、上記ガラス製基材レンズ1に樹脂層2を形成する。樹脂層2の表面形状として所望する非球面とは反転した非球面(樹脂表面の曲率が18.5mmの非球面)を持つ金型7を用意した。最初に、紫外線硬化型樹脂60mgを金型7に滴下する(図7(a))。本実施例では、樹脂層2を形成するための紫外線硬化型樹脂として、ウレタンアクリレート系樹脂を使用した。この樹脂の収縮率は約7%である。
【0016】
この後、樹脂を滴下した金型7に基材レンズ1を押しつけ、金型7と基材レンズ1との間隙に樹脂が充填されるようにした。なお、金型7と基材レンズ1との間隔は、樹脂層2の中心厚が70μmになるように設定した。つぎに、基材レンズ1の凹面側より、出力150Wのキセノンランプを用いて、樹脂層2に紫外線8を60秒間照射した(図7(b))。
【0017】
上記のようにして得られた非球面樹脂層2を、金型7から剥離することにより(図7(c))、図4に示したものと同様の非球面レンズを得た。
【0018】
(3)次に、得られた非球面レンズの外周部のアラズリ部と、樹脂層2の外周部分とに遮光塗料を塗布し、遮光膜3を形成させた(図7(d))。その後、塗料を焼き固めるため70℃で1時間ベーキングを行った。なお、遮光塗料は、アクリル樹脂に害を与えない塗料として、シラン・カップリング剤を混ぜたアクリルウレタン樹脂塗料を使用した。
【0019】
(4)最後に、樹脂層2の表面に、無機物からなる多層膜の反射防止膜5をコーティングした(図7(e))。
【0020】
上記のようにして形成した樹脂接合型レンズの外周付近の様子を、図8の(d)〜(f)に示す。また、図10は、従来技術により製造されたレンズの外周付近を、裏面から撮影した写真である。図8の(d)〜(f)は、いずれも従来技術により製造されたレンズの外周付近を、裏面から観察した場合を示す外観斜視図である。なお、図8において、(d)は10倍、(e)は20倍、(f)は40倍の拡大図である。また、図10において、(d)は10倍、(e)は20倍、(f)は40倍の拡大写真である。図8の(d)〜(f)および図10において、Eはレンズの外周部を示す。(d)〜(f)のいずれの倍率でも、輪帯状の光rは、ほんの僅かに観察されるのみであった。本発明の樹脂接合型レンズでは、最外周端面部分6の反射は肉眼では観察されず、外観品質に、該反射が影響を与えることはなかった。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、生産性を低下させることなく、樹脂部の最外周端面部分の反射(外観不良)を防止する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のレンズの外周周辺部の断面図である。
【図2】 従来製法で製造されたレンズの外周周辺部の断面図である。
【図3】 基材が球面を有する複合型非球面レンズの概略垂直断面図である。
【図4】 基材が粗い非球面を有する複合型非球面レンズの概略垂直断面図である。
【図5】 従来の製造方法の各工程における、レンズ1等の垂直断面を示す概念図である。
【図6】 凸面と凹面の両方に樹脂層を有するレンズの断面図である。
【図7】 本発明の製造方法の各工程を示す概念図である。
【図8】 従来技術により製造されたレンズの樹脂膜端面の反射と、本実施例により製造されたレンズの樹脂膜端面の反射とを示す説明図。
【図9】 従来技術により製造されたレンズの樹脂膜端面の反射を示す拡大写真。
【図10】 本実施例により製造されたレンズの樹脂膜端面の反射とを示す拡大写真。
【符号の説明】
1:基材、 2:樹脂層、 2a:紫外線硬化型樹脂液、 3:遮光膜、 4:裏面反射防止膜、 5:表面反射防止膜、 6:樹脂層の最外周端面部分、 7:金型、 8:紫外線、 r:樹脂膜端面の反射、 w:樹脂膜端面の不均一な反射箇所、 E:レンズ外周部。

Claims (5)

  1. 光学素子基材の少なくとも一方の面に樹脂層を有する樹脂接合型光学素子において、
    上記樹脂層の最外周端面の表面に設けられ、該端面を直接覆う遮光膜と、
    上記樹脂層及び上記遮光膜の表面に設けられた無機物からなる多層の反射防止膜とを有し、
    上記遮光膜は、70℃で焼き固め可能な遮光塗料を焼き固めたものであることを特徴とする樹脂接合型光学素子。
  2. 請求項1において、
    前記樹脂接合型光学素子の少なくとも一面が非球面であることを特徴とする樹脂接合型光学素子。
  3. 光学素子基材の少なくとも一面に樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
    樹脂層の最外周端面に70℃で焼き固め可能な遮光塗料を塗布し、焼き固めて遮光膜を形成させる遮光膜形成工程と、
    上記樹脂層及び上記遮光膜の表面に無機物からなる多層の反射防止膜を形成する反射防止膜形成工程とを、
    上記の順番で有することを特徴とする樹脂接合型光学素子の製造方法。
  4. 請求項3において、
    前記光学素子はレンズであり、
    前記遮光膜形成工程は、遮光塗料をレンズ外周部のアラズリ部へも塗布することを特徴とする樹脂接合型光学素子の製造方法。
  5. 請求項3において、
    前記遮光塗料は、シラン・カップリング剤を混ぜたアクリルウレタン樹脂塗料であることを特徴とする樹脂接合型光学素子の製造方法。
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