JP3669674B2 - 紫外線光学用石英ガラスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線光学用石英ガラスの製造方法に関し、より詳細には、主として半導体素子製造分野に於いてエキシマレーザなどの短波長紫外線用の光学機器部材として使用され、特に紫外線照射時の蛍光の発生が抑制された紫外線光学用合成石英ガラスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子の超微細化に対応して、集積回路の製造用露光機の光源には、KrF(248nm)やArF(193nm)エキシマレーザなど、短波長の紫外線が使われるようになってきている。
これらの装置の光学用部材として、多数の合成石英ガラス部材が使用される。
合成石英ガラスは、このような短波長紫外線に対して高い透過率を有する優れた材料ではあるが、上記レーザ光の照射によって損傷を受けることが判ってきた。
そしてその損傷の結果として、650nm付近にピークを持つ可視域の蛍光を発する。
【0003】
この蛍光は、光学系の調整などに於いて使用されるHeーNeレーザ光の波長に近いために、実用上大きな問題となっている。
それ故、この蛍光発生の低減が、光学用石英ガラスに必須な条件とされている。この蛍光発生の挙動や発生メカニズムについては、例えば、フィジカルレビユーB47巻、3078乃至3082頁(1993)(N.Kuzuu,Y.Komastu,M.Murahara著)、同48巻、6952乃至6956頁(1994)(N.Kuzuu,Y.Matsumoto,M.Murahara著), ジャーナル・オブ・ジ・アプライド・フィジックス68巻、3584乃至3591(1990)(K.Awazu ,H.Kawazoe著)などに於いて報告され、その蛍光発生の原因として、ガラス中に不可避的に存在する過剰酸素に起因する酸素欠陥、所謂、非結合酸素正孔捕獲中心(NBOHC)の生成や、オゾン生成などが指摘されている。
【0004】
この蛍光は、ガラス合成時に使用するバーナーに供給する酸素と水素の割合を制御することによりある程度低減できることが知られ、例えば、特開平2ー64645号公報には、四塩化珪素を酸水素火炎により加水分解する際、バーナーに供給する水素ガスと酸素ガスの比(H2 /O2 )を化学量論比より水素過剰にすることにより蛍光発生を低減する方法が提案されている。
また、特開平6−199531号公報には、四塩化珪素を、酸素/水素比が化学量論量より水素過剰の酸水素火炎中で加水分解して石英ガラスを合成する際、不活性ガスを含むバーナーの反応条件及び排ガスの排気条件等の調整により石英中に存在するシラノール基(SiOH)等のーOH基濃度を1000ppm以上にしたエキシマレーザー光照射時に於ける上記蛍光発生の抑制された光学用合成石英ガラスが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ガラス合成時の酸水素炎に於ける酸素/水素供給比は、石英の合成速度やガラス中に残存するーOH基濃度、透過率等光学用石英ガラスに必要とされる数多くの諸特性に影響を与えるので、これらへの影響を考慮しながら最適条件を見出すのは、多大な手数と、微妙な熟練技術を必要とし、しかもその選択の範囲も限定される。
一方、ガラスを1300℃以下で水素雰囲気中で処理することによって、水素と過剰酸素を反応させ、不活性化させる方法も提案されている(特開平1−201664号公報等)。
【0006】
しかし、この処理方法は効果が不安定であり、かつ高濃度の水素を必要とするために、爆発などの危険性が高く、取り扱いに慎重さを要し、その分、時間、労力と費用を要する。
このような状況に鑑みても、エキシマレーザ等短波長紫外線照射時に於ける上記蛍光発生が抑制された光学用合成石英ガラスを簡便な処理により製造し、提供することができればその産業に上に及ぼす利点は多大である。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ステッパー等の半導体製造用露光機の光学用部材として使用される合成石英ガラスであって、エキシマレーザなどの短波長紫外線を照射したときに、通常、光照射損傷を受けて発生する650nm付近の可視域蛍光が低減された紫外線光学用石英ガラスを、簡便かつ安全な方法で処理し、製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、合成石英ガラスを、炭素の存在下水蒸気雰囲気中で、または、炭化水素基を持つ有機物質を含む非酸化性雰囲気中で、該石英ガラスの歪点以上の温度に於いて、構造決定温度に到達するまでの時間(緩和時間)以上の時間、熱処理することにより紫外線照射による可視域の蛍光発生を防止したことを特徴とする紫外線光学用石英ガラスの製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、上記製造方法の一好適態様として前記熱処理の温度が1400℃以上であることを特徴とする紫外線光学用石英ガラスの製造方法が提供される。
更に、本発明によれば、前記水蒸気雰囲気中の水蒸気圧、または、前記炭化水素基を持つ有機物質を含む非酸化性雰囲気中の該有機物質の蒸気圧が10Pa以上であることを特徴とする方法、特に、前記水蒸気圧、または、前記有機物質の蒸気圧が30乃至10,000Paの範囲にあることを特徴とする紫外線光学用石英ガラスの製造方法が提供される。
【0010】
また更に、本発明によれば、前記雰囲気が、不活性気体と前記蒸気圧を有する水蒸気または炭化水素基を持つ有機物質の蒸気との混合気体から成ることを特徴とする方法、特に、前記不活性気体が、アルゴン、ヘリウム、ネオン及び窒素から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする紫外線光学用石英ガラスの製造方法が提供される。
また、本発明によれば、前記水蒸気雰囲気下の炭素が黒鉛から成ることを特徴とする紫外線光学用石英ガラスの製造方法が提供される。
【0011】
更に、本発明によれば、前記非酸化性雰囲気中に含有される炭化水素基を持つ有機物質が炭化水素であることを特徴とする製造方法、特に、該炭化水素が、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする方法、及び、前記有機物質が炭化水素基を有する含酸素有機化合物であることを特徴とする方法、特に、該含酸素有機化合物が、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、脂肪酸類、エステル類、エーテル類から選ばれた少なくとも1種である方法が夫々提供される。
また更に、本発明によれば、前記有機物質がナフサ、灯油、軽油、石油ベース潤滑油、石油ベース真空ポンプ油から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする紫外線光学用石英ガラスの製造方法が提供される。
【0012】
本発明の紫外線光学用石英ガラスの製造方法は、該石英ガラス製造時に於いて、炭素の存在下に水蒸気雰囲気中で歪点以上の温度で構造決定温度に到達するまでの時間(緩和時間)以上熱処理するか、或いは、炭化水素基を持つ有機物質を含む非酸化性雰囲気中で歪点以上の温度で緩和時間以上熱処理するという、特定条件下での熱処理が構成上の特徴である。
【0013】
上記構造決定温度は、以下に説明するように、石英ガラスの構造安定性を表すパラメータとして導入されたファクターである。
室温での石英ガラスの密度揺らぎ、即ち構造安定性は、高温で融液状態にある石英ガラスの密度、構造が冷却過程に於いてガラス転移点付近で凍結されたときの密度、構造によって決定される。
即ち、密度、構造が凍結されたときの温度に相当する熱力学密度、構造が室温下でも保存される。その密度、構造が凍結されたときの温度を構造決定温度とという。
【0014】
また、石英ガラスの歪点とは、一般のガラスと同様に、その温度以下では事実上粘性流動が起らない温度と定義され、1014.5 poiseの粘性に対応する。
【0015】
石英ガラス製造時に、本発明の上記特定熱処理を施すことにより、通常の方法で製造された光学用石英ガラスが紫外線照射時に発生する650nm付近の可視域の蛍光を有効に抑止することができる。
このエキシマレーザ光等の紫外線照射時に石英ガラスから発生する蛍光は、赤色であって、例えば既に挙げた公知文献に記載されているように、ガラス中の過剰酸素が関与していると考えられており、その蛍光中心の生成反応は、例えば次のようになると推定されている。
≡SiーO−OーSi≡+紫外光線 → 2≡Si−O・(NBOHC)(1)
一方このような過剰酸素を持つ石英ガラスを水素処理すると、
≡SiーO−OーSi≡+H2 ←→ ≡Si−OH+H−OーSi≡ (2)
の反応で過剰の酸素が不活性なーOH基に変わり、蛍光発生が抑制される。
上記の水素処理による蛍光発生抑制効果は、石英ガラスを炭素との共存下に、水蒸気を含む雰囲気中で処理するか、あるいは炭化水素基を持つ化合物を含む非酸化性雰囲気中で処理しても同様な効果がある。
【0016】
例えば、炭素の存在下に水蒸気雰囲気中で合成石英ガラスの歪点以上の温度で構造決定温度に到達するまでの時間(緩和時間)以上熱処理する前者の態様の場合、おそらく熱処理中に、
H2 O+C → CO+H2 (3)
の反応が起き、発生した微量の水素が上記(2)の反応に預かるものと推測される。
そして上記(2)の反応が安定に進行するためには、Si−Oの結合角や、分子の占める大きさなど、ミクロ的な幾何学的形状、即ち分子的な構造変化が生ずる必要がある。
更に、緩和時間が充分に小さくなる1400℃以上のガラスが軟化する温度で処理すれば、極めて低い水素濃度の雰囲気でも安定に反応を進行させることができる。
なお熱処理温度がガラスの歪点より低ければ、緩和時間が無限大となるので、長時間の水素処理を施しても、当然その効果は期待できない。
【0017】
また、炭化水素基を持つ有機物質を含む非酸化性雰囲気中で合成石英ガラスの歪点以上の温度で構造決定温度に到達するまでの時間(緩和時間)以上熱処理する後者の態様の場合も、おそらくは、熱処理中に炭化水素が分解して水素を発生し、その水素が上記(2)式で表される反応に預かるものと推測される。
そして緩和時間が充分に小さくなる1400℃以上のガラスが軟化する温度で処理すれば、前者の場合と同様、極めて低い水素濃度の雰囲気で安定に反応が進行すると考えられる。
なお、処理温度がガラスの歪点以下では本発明の効果が期待できないことは前者の場合と同様である。
上記本発明の方法ば、水素ガスを用いて直接反応させる方法に比較して安定した効果が得られるだけでなく、高濃度の水素を扱う必要がないため、爆発などの危険性が無く、取り扱いが極めて容易で、時間的にも、労力的にも大きな節減効果を奏する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をより詳細に、かつ、具体的に説明する。
本発明の製造方法に於いて、処理の対象物である合成石英ガラスは、典型的には、四塩化珪素を酸水素炎で加水分解して得られる、いわゆる直接法合成石英ガラスを対象とするが、例えばVAD法合成石英ガラスなど、その他の合成方法の石英ガラスに適用しても十分な効果が得られる。
【0019】
本発明の方法に於いてその第1態様である、炭素の存在下に水蒸気雰囲気中で熱処理する場合に於いては、ガラスを構造決定温度に到達するまでの時間、即ち、その緩和時間より長く、炭素の共存下に水蒸気雰囲気中で熱処理する。
熱処理は合成石英ガラスの歪点(通常900℃前後)以上の温度であれば可能であるが、歪点近傍の比較的低温で処理する場合は、構造決定温度に到達するための時間、即ち、緩和時間が極めて長くなり、処理に極めて長時間を要し、かつその効果もやや不安定であるところから、好ましくは、1200℃以上、より好ましくは1400℃以上、特に好ましくは1600℃以上で実施する。
また、1900℃を越えると石英の蒸発や容器材との反応等の不都合が生じるため、熱処理温度は1900℃以下とすることが好ましい。
【0020】
この熱処理温度と緩和時間との関係は、例えば、ダブリュ・プリマック(W.Primak)著、フィジックス・アンド・ケミストリー・オブ・グラス(Physics and Chemistry of Glass)24巻No.1、8〜18頁(1983)等に記載され、これによれば、例えば、1400℃で約1分程度、1200℃では約1時間程度が目安となる。なお、前記資料には具体的に記載されていないが、1600℃で約0.1分程度が目安となる。
しかしながら、被処理ガラスの大きさや水蒸気の圧力等により水素と過剰酸素との反応に必要な時間は多少変動する。
そのため、一概にはいえないが、1400℃以上1600℃未満の場合、緩和時間〜10分程度、1600℃以上の場合、緩和時間〜5分程度の保持時間が好ましい。尚、1200〜1400℃の範囲の温度の場合、前記の緩和時間を目安とし、略々その2倍程度の保持を行えば充分である。
【0021】
本発明の第1態様の方法に於いて、エキシマレーザ光等短波長紫外線照射時に合成石英ガラスに発生する赤色蛍光の低減を有効にするには、炭素の共存下に水蒸気雰囲気中で熱処理することが必要であるが、この水蒸気雰囲気中の水蒸気圧は、10Pa以上あることが好ましく、10Pa以下では、効果が急減する。
また、105 Pa(1気圧)以上で、その効果は認められるが、共存する炭素の消耗が激し過ぎ、実用上若干問題を生ずる。
水蒸気圧の特に好ましい範囲は、30〜10,000Paである。
【0022】
このような水蒸気圧の雰囲気は、減圧された炉中に水蒸気を吹き込んだり、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン及び窒素等の不活性気体を水に接触させて、目的とする分圧の水蒸気雰囲気とすることにより得ることができる。
後者の不活性気体との混合気体を用いる場合、雰囲気ガスの全圧は石英ガラスの蛍光発生防止効果には何らの影響を与えないが、全圧が高いと石英ガラスの蒸発抑制に有効であるという利点がある。
但し、全圧が1気圧(105 Pa)を超えると、耐圧炉が必要となるため、炉の建設コストや操作の簡便性等の観点から1気圧以下が好ましい。
【0023】
本発明の方法の第1態様に於けるもう一つの必須材料である炭素源の供給に関しては、炭素材を反応系に共存させてやれば良く、カーボン塊、カーボン片等の適当な炭素材を系中に投入しても良いが、例えば、処理容器を黒鉛等の炭素材で形成する、炉内構造部材に炭素材を使用する、ガス供給口部などにカーボンを取り付ける等の方法でも良い。
【0024】
次に、本発明の方法の第2態様である、処理される石英ガラスを炭化水素基を持つ有機物質を含む非酸化性雰囲気中で熱処理する方法について述べる。
この態様に於いて、石英ガラスを、歪点以上の温度で、構造決定温度に到達するまでの時間(緩和時間)より長く熱処理する点は、前記第1態様の場合と同じである。
即ち、処理される石英ガラスを、合成石英ガラスの歪点以上の温度、特に、安定した処理効果を短時間で達成するために、好ましくは1200℃以上、より好ましくは1400℃以上、特に好ましくは1600℃以上の温度下に、その温度に於ける緩和時間以上の期間、炭化水素を含む非酸化性雰囲気中で熱処理する。
【0025】
しかしながら、被処理ガラスの大きさや水蒸気の圧力等により水素と過剰酸素との反応に必要な時間は多少変動する。
そのため、処理温度と時間の関係は、一概にはいえないが、1400℃以上1600℃未満の場合、緩和時間〜10分程度、1600℃以上の場合、緩和時間〜5分程度の保持時間が好ましい。1200〜1400℃の範囲の場合、その緩和時間の2倍程度(1200℃で約2時間)であれば良い。
上記、炭化水素基を持つ有機物質を含む非酸化性雰囲気として、より具体的には、(1)真空中、または、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン及び窒素等の不活性ガス雰囲気の炉中にメタン、エタン、プロパン、ブタンやエチレン、プロピレン、ブテン等ガス状の飽和乃至不飽和炭化水素を導入する方法、(2)ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンやペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等液状の飽和、不飽和脂肪族炭化水素やシクロペンタン、シクロヘキサン等の液状脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、更に、ナフサ、灯油、軽油等の液状炭化水素混合物を所望の温度に保持し、そこにアルゴン等の不活性ガスを通じるか、減圧にすることで炭化水素蒸気を雰囲気中に含有させる方法、(3)潤滑油や重油、真空ポンプ油等、炭化水素基を含む油で電気炉の構成部品に必須な重質油の蒸気が、拡散等の機構で炉中に自然導入できる炉構造とする方法などを例示できる。
【0026】
炭化水素基を持つ有機物質としては、飽和、不飽和の脂肪族炭化水素、飽和、不飽和の脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素等、炭化水素そのものの他、アルコール類、ケトン類、脂肪酸類、エステル類等の炭化水素基を含む含酸素有機化合物等を使用することができる。
これら炭化水素基を持つ有機物質は、電気炉雰囲気中に導入される必要があるので、気体状または加熱により充分な量の蒸気が得られるものが好ましい。
該雰囲気中の炭化水素ガス(蒸気)分圧は、物質の種類と熱処理温度とに関係するので、最適値は実験等により適宜決定されるが、導入雰囲気中の分圧が10Pa以上あればその効果が現れる。
30乃至10,000Paが好適範囲である。
真空中に前記炭化水素基を持つ化合物のガス(蒸気)を上記圧力範囲で供給しても良く、または、炭化水素基を持つ化合物のガス(蒸気)を上記範囲の分圧となるようにアルゴン等の不活性ガスと混合しても良い。
【0027】
後者の場合、炭化水素系ガスの分圧を所定とすれば良く、全圧は蛍光発生の抑 止に何等影響を与えないが、全圧が高いと石英ガラスの蒸発を抑えることができる利点がある。
但し、全圧が1気圧を超えると、高圧に耐える炉が必要となるため、取り扱い易さの点からは1気圧以下が好ましい。
【0028】
【実施例】
「実施例1」
四塩化珪素を酸水素炎で加水分解して得た合成石英ガラスのインゴット1kgを試料として用いた。
この試料を、内径120mm、縁の高さ50mm、厚さ50mmの円形黒鉛容器(炭素供給源を兼ねる)に入れ、炭素発熱体を備え、真空から1気圧の不活性及び還元性雰囲気で加熱できる電気炉中に入れて熱処理した。
熱処理に於ける雰囲気の全圧は、10,000Paで、純Arと、50℃の水中を通して水蒸気を飽和させたArとを混合して、表ー1のような各水蒸気分圧とした。
また、熱処理温度、時間は、それぞれ表ー1に記載した条件で実施した。
熱処理後の試料を、12×12×50mmの角柱に切り出し、面を光学研磨した。
この光学研磨した試料をArFエキシマレーザを用いて、100mJ/cm2のエネルギ密度で105 ショット照射した後、分光蛍光光度計(日立製作所(株)製650−10型)を用いて、255nmの励起光に於ける640nmの蛍光の強さを測定した。
一方、熱処理しないガラス試料について、同じ方法でレーザ照射後の蛍光強度を測定し、その値を1として、熱処理試料の蛍光強度との比を用いて、効果の評価を行った結果を表1に示す。
なおレーザ照射しない試料は蛍光が観察されなかった。
【0029】
【表1】
【0030】
表1から判るように、水蒸気を含む雰囲気中で処理したガラスは640nmの蛍光が検出されなかった。
しかし参照例として、水素を含まない純アルゴンの雰囲気で熱処理したガラスは、未処理品の3倍の蛍光が発生した。
【0031】
「実施例2」
実施例1と同様の石英ガラス試料を、実施例1で使用した電気炉で熱処理した。
熱処理条件は、1,000Paの水蒸気を含む1気圧のAr雰囲気とし、1700℃で5分処理した後、室温まで冷却した。
得られたガラスは120mm径の円盤状に成形されていた。
このガラスを実施例1と同じ形状に研磨し、レーザ照射後の蛍光を同様に測定したが、蛍光は観測されなかった。
【0032】
「実施例3」
四塩化珪素を酸水素炎で加水分解して得た合成石英ガラスのインゴット1kgを試料として用いた。
この試料を、内径120mm、縁の高さ50mm、厚さ50mmの円形黒鉛容器に入れ、炭素発熱体を備え、真空から1気圧の不活性及び還元性雰囲気で加熱できる電気炉中に入れて熱処理した。
雰囲気はArまたは真空とし、表ー2のような種々の炭化水素化合物の蒸気を混合した。
蒸気の分圧は、気体の場合は導入量、液体の場合は一定温度に加熱した化合物の蒸気をArに飽和させる方法で行った。
熱処理条件は表ー1にそれぞれ示した条件とした。
熱処理後の試料を、12×12×50mmの角柱に切り出し、面を光学研磨した。
この光学研磨した試料をArFエキシマレーザを用いて、100mJ/cm2のエネルギ密度で105 ショット照射した後、分光蛍光光度計(日立製作所(株)製650−10型)を用いて、255nmの励起光に於ける640nmの蛍光の強さを測定した。
一方、熱処理しないガラス試料について、同じ方法でレーザ照射後の蛍光強度を測定し、その値を1として、熱処理試料の蛍光強度との比を用いて、効果の評価を行った結果を表ー2に示す。
なおレーザ照射しない試料は蛍光が観察されなかった。
【0033】
【表2】
【0034】
表ー2から判るように、炭化水素化合物の蒸気を含む雰囲気中で処理したガラスは640nmの蛍光強度が低下する。
一方、参照例として、純アルゴンの雰囲気で熱処理したガラスは、未処理品の3倍の蛍光が発生した。
【0035】
「実施例4」
実施例3と同様の石英ガラス試料を、実施例3で使用した電気炉を用い、1気圧のArを1l/min の流速で流しながら加熱した。
1700℃に達した時点で容器に入れたステアリン酸を炉の入り口から炉内の400℃の位置に動かし、蒸発、分解させ、その蒸気をArと共に試料上に送った。
試料温度1700℃で15分経過し、ステアリン酸からの気体の放出が止んだ時点で炉の加熱を止め、室温まで冷却した。
得られたガラスは120mm径の円盤状に成形されていた。
このガラスを実施例3と同じ形状に研磨し、レーザ照射後の蛍光を同様に測定したが、蛍光は観測されなかった。
【0036】
【発明の効果】
上述のように、本発明によれば、紫外線照射による赤色蛍光の発生が、安定して除去できるだけでなく、水蒸気あるいは炭化水素等を含む不活性雰囲気という、極めて安定な条件下で処理できるので、安全対策に要する設備が簡素化されて低コストで済み、かつ処理に要する操作も極めて簡便である。
更に、本発明によれば、ガラス形状の成形と、蛍光除去操作が同時にできるので、実用上の利点が極めて大きい。
Claims (12)
- 合成石英ガラスを、炭素の存在下水蒸気雰囲気中で、又は、炭化水素基を持つ有機物質を含む非酸化性雰囲気中で、該石英ガラスの歪点以上の温度に於いて、構造決定温度に到達するまでの時間(緩和時間)以上の時間、熱処理することを特徴とする紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
- 前記熱処理の温度が1400℃以上であることを特徴とする請求項1記載の紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
- 前記水蒸気雰囲気中の水蒸気圧、または前記炭化水素基を持つ有機物質を含む非酸化性雰囲気中の該有機物質の蒸気圧が10Pa以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
- 前記水蒸気雰囲気中の水蒸気圧、または、前記炭化水素基を持つ有機物質を含む非酸化性雰囲気中の該有機物質の蒸気圧が30乃至10,000Paの範囲にあることを特徴とする請求項3記載の紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
- 前記雰囲気が、不活性気体と、前記蒸気圧を有する水蒸気または炭化水素基を持つ有機物質蒸気との混合気体から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
- 前記不活性気体が、アルゴン、ヘリウム、ネオン及び窒素から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載の紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
- 前記水蒸気雰囲気下の炭素が、黒鉛から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
- 前記非酸化性雰囲気中に含有される炭化水素基を持つ有機物質が炭化水素であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
- 前記炭化水素が、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項8記載の紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
- 前記非酸化性雰囲気中に含有される炭化水素基を持つ有機物質が、炭化水素基を有する含酸素有機化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
- 前記含酸素有機化合物が、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、脂肪酸類、エステル類、エーテル類から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項10記載の紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
- 前記非酸化性雰囲気中に含有される炭化水素基を持つ有機物質がナフサ、灯油、軽油、石油ベース潤滑油、石油ベース真空ポンプ油から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の紫外線光学用石英ガラスの製造方法。
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