JP3669199B2 - コンクリート供試体成型型枠 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートの強度試験に供されるコンクリート供試体を成型するための型枠の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のコンクリート供試体を成型するための型枠は、一般的に2つに分割された円筒状の側板と、底板の三者から構成され、これらをボルトナットなどの留め金具で締結して上部が開口した円筒容器状に組み立てる構造としている。このような型枠を使用して離型材塗布、コンクリートの充填、固化、仕上げ、脱型などの各工程を経て供試体が成型される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の型枠においてはその組み立て分解に伴う構造や過程に大きな欠点を有するものであった。例えば、分割構造であるが故に留め金具で締結して組み立てる際に歪が生じる恐れがあり、組み立てに細心の注意を払わなければならず、極めて手間がかかることになる。また、円筒状の側板は軸方向に2分割されていることから、経時的に歪が生じ供試体の精度を保つことができなくなる欠点があった。さらに、供試体の精度に影響を与えないように、各型枠構成片の接合部をきれいにしておく必要があり、且つ留め金具部分にコンクリートが付着したときもこれを除去しなければならず、供試体の製造工程における保守管理に極めて手間がかかっていたのが実情であった。
【0004】
従来の型枠を使用した場合における製造工程としては、先ず留め金具を外し、側板を分割して供試体を取り出す。そして、側板や底板の内面及び接合部をワイヤブラシで掃除してからウェスで仕上げる。次に各型枠構成片の内面に離型剤を塗布し、接合部にはグリスを塗ってから組み付け、留め金具を締結して組み立てるという作業が繰り返される。このような作業は極めて面倒であり、型枠1本当たり約3分程度の時間を要する。例えば、6本単位で成型する場合には、一日に数組から十数組成型するとなると、相当な作業量となってしまう。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は上記諸点に鑑み鋭意研究の結果、本発明を成し得たものであり、その特徴とするところは、円柱状のコンクリート供試体を成型させる円筒容器状の型枠において、該供試体の周面部分を成型する円筒状の型枠本体と、該供試体の底面部分を成型するもので該型枠本体の内部に装着した底板とによって構成したものであって、該型枠本体に、圧縮空気を送り込むためのもので該底板の装着部に連通させる送気孔を備えたこと。
【0006】
或いは、円柱状のコンクリート供試体を成型させる円筒容器状の型枠において、該供試体の底面部分を成型するもので円筒容器状の容器本体と、該容器本体に内嵌するもので該供試体の周面部分を成型する円筒状の側板とによって構成したものであって、該容器本体と該側板との間に圧縮空気を送り込むための送気孔を該容器本体に設けたことにある。
【0007】
ここで、本明細書中でいう「コンクリート供試体」とは、コンクリートの強度試験を行なう場合において、そのサンプルとして例えば直径100mm、高さ200mmの円柱体に成型して、圧縮強度を測定するために製造するものをいう。この供試体は、円筒容器状に形成した型枠にコンクリートを充填させることによって成型する。本発明においては、供試体の胴部と底部を成型するための型枠を別体の部材で構成する。
【0008】
「型枠本体」とは、本発明の第一発明において、供試体の周面部分を成型するための円筒状の部材をいう。この場合、型枠本体は供試体の周面を成型するための円筒状部分だけの円筒形状でよいが、円筒状に底を設けた円筒容器状にしてもよい。型枠本体に底板を設ける手段としては、例えば型枠本体の開口部から底板を圧入したり、インサート成型などの方法によって行なう。底板の装着部には、特に何も設けなくてもよいが、凹部や凸部など底板に嵌合させるための係合部を設けてもよい。係合部は、必ずしも全周に渡って設けなくてもよく、部分的でもよい。
【0009】
型枠本体には圧縮空気を送り込むための送気孔が設けられる。この送気孔を底板の装着部に連通させることによって成型された供試体を脱型させる。装着部に連通させる場合として、送気孔から送り込まれた圧縮空気を噴出させる噴気孔を装着部に設ける他、型枠本体に底がある場合は噴気孔を型枠本体の底に設けるようにしてもよい。要は、装着部や係合部を通じて底板の上面部分に圧縮空気が噴出するように設けたものであればよい。
【0010】
送気孔には、エアコンプレッサーなどの圧縮空気供給源からのホースや配管が接続される。送気孔とホース等の接続は、常時接続しておいてもよく或いは脱型時にのみ接続させるようにしてもよい。送気孔には、ホース等の接続を容易にするためにワンタッチ式のプラグ型の接続具を設けておくのが便利である。型枠本体の材質としては、鉄、アルミニウムなどの金属の他、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、硬質ウレタンなどのプラスチックなどでもよく、特に限定するものではない。
【0011】
「底板」とは、供試体の底面部分を成型するための円板状部材であって、型枠本体の内部に装着するものをいう。材質は、型枠本体と同様でよいが、型枠本体と異なった材質でもよい。型枠本体への底板の支持は、前述した圧入などによる他、底板の底面側に脚などの支持部を設けて支持させてもよい。また、底板にはその周囲にパッキンやOリング等を設けてもよい。パッキン等を設けることにより、コンクリート充填時における送気孔からの漏水の防止、その弾性による型枠本体への装着の容易性や型枠本体との密着性を高める利点がある。送気孔からの漏水を防止するようにパッキン等を設けた場合には、脱型時の圧縮空気の流路を遮断しないように柔らかめの材質や中空構造のものを利用したり、パッキン等の装着箇所に空隙部を設けて圧縮空気を送ったときの流路を確保しやすくするのが好ましい。この空隙部は、圧縮空気の送給時にパッキン等を入り込ませるためのものであり、全周に渡って設ける他、適宜間隔に設けたり、送気孔に対応する箇所にのみ設けてもよい。
【0012】
「容器本体」とは、本発明の第二発明において、供試体の底面部分を成型するための円筒容器状の部材をいう。容器本体としては、供試体の底面を成型する底板部分と後述する側板を内嵌させて支持する周面部分が存在するものであればよい。このため、周面部分としては、必ずしも周面全体を覆う円筒状にする必要はなく、適宜箇所に周面の一部を形成する部材が設けられたものであればよい。この容器本体に、圧縮空気を送り込むための送気孔が設けられる。送気孔の噴出側の噴気孔は、容器本体に内嵌した側板に面する部分に設け、該容器本体と該側板との間に圧縮空気を送り込むことで、該側板の下端部と該容器本体の底板部分との隙間から噴出させるようにする。材質は、型枠本体と同様のものでよい。
【0013】
「側板」とは、供試体の周面部分を成型するための円筒状部材であって、容器本体に内嵌するものをいう。材質も型枠本体と同様でよく、第一発明と同様に異なった材質の組み合わせでもよい。側板を容器本体に内嵌する手段も、第一発明と同様で容器本体と側板を相互に嵌め込んだり、いずれかをインサートして成型させる。また、側板にもその下端部分にパッキンやOリング等を設けてもよい。パッキン等を設けた場合には、噴気孔は該パッキン等に面する部分に設けるようにしてもよい。下端部分とは下端部や下端部よりやや上方の下端部近傍部分をいう。パッキン等は、その構造や材質は上述した底板に設ける場合と同様でよく、パッキン等を設ける箇所に空隙部を設ける場合も同様でよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の第一発明に係るコンクリート供試体成型型枠1の実施の形態の一例を示すもので、底7を設けた円筒容器状の型枠本体2と該型枠本体2内の底部に装着した底板4とによって構成し、該底板4を装着した装着部3に連通する送気孔5を設けたものである。このようにして形成した型枠1内にコンクリートを充填して円柱状の供試体を成型する。コンクリートが固化して供試体が成型されると、該送気孔5から圧縮空気を送り込み該供試体を押し上げて脱型させる。本例に示す型枠本体2は、ポリプロピレンの射出成型品であり、ステンレス製の底板4をインサート成型や圧入によって設けたものである。インサート成型の場合には、底板4に離型材を塗布するなど底板4と装着部3とを密着させないようにするのが好ましい。
【0016】
図1の型枠1では、インサート成型後の収縮や圧入によって底板4を固定させているため、型枠本体2の装着部3としては別段何も設けていないが、装着部3として図2のように周溝状の係合部6を設け、底板4を嵌合させる構造としてもよい。送気孔5は、型枠本体2を底7のある円筒容器状とした場合には、該底7に設けてもよい。型枠本体2としては、図3のように底7のない円筒状としてもよい。この場合、底板4の支持として図では底板4に脚8を設けているが、底板4の係合部6との嵌め込み長さを長くしたり、底板4より下方の型枠本体2の肉厚を全部若しくは部分的に厚くしてもよい。ただ、底板4の下面側全体を覆う底7を設けない場合には、圧縮空気が底板4の下面側から流出しないようにしなければならない。例えば、型枠本体2の成型時に底板4の下面側と密着させたり、接着剤やパテなどによる封止、型枠本体2と底板4に凸部と凹部を設け嵌め合わせて構造的に封止させるようにする。
【0017】
図4(a)は本発明の第一発明に係るコンクリート供試体成型型枠1の実施の形態の他の例を示すもので、周囲にパッキン9を設けた底板4を型枠本体2の底部に圧入したものである。底板4にパッキン9を設けたことにより、型枠1に生コンクリート充填時における送気孔5からの漏水が防止でき、しかも型枠本体2への装着が容易となる利点がある。本例のパッキン9は、同図(b)のようにコの字状に形成すると共に、底板4にはこれの取り付け部分に空隙部10を設けている。この空隙部10によって、送気孔5から圧縮空気を送給したとき、同図(c)のようにパッキン9が変形して圧縮空気を底板4の上面側に噴出させることができる。
【0018】
パッキン9や空隙部10の他の例としては、図5(a)のような構造としてもよく、圧縮空気送給時には点線のように変形して圧縮空気の流路を確保させることができる。また、同図(b)のように空隙部10を設けずに中空構造のパッキン9を利用してもよい。また、内周側に柔らかいパッキンと外周側に硬いパッキンを組み合わせたものや、内周側を部分的にえぐったり、内周側を突起や突条など変形しやすい構造にすれば、空隙部10を設けなくてもよい。この他、単に圧縮空気の送給によって変形する硬さのパッキン9を選定すれば、空隙部10を設けたり、パッキン9自体を特殊な構造にしなくてもよい。
【0019】
図6は本発明の第二発明に係るコンクリート供試体成型型枠21の実施の形態の一例を示すもので、円筒容器状の容器本体22とこれに内嵌した円筒状の側板23とによって構成したものであり、該容器本体22に側板23との間に圧縮空気を送り込むための送気孔25を設けている。この送気孔25から側板23との間を通じて側板23の下端部と容器本体22の底板24の間から圧縮空気を噴出させることによって成型された供試体を押し出す構造である。圧縮空気をこのように導くために、容器本体22と側板23の上部側に凹部と凸部による封止部26を設けている。封止部26としては、前述したように成型時の密着、接着剤やパテの塗着などによってもよい。
【0020】
第二発明に係る型枠21の形成方法としては、容器本体22と側板23を別々に形成して嵌め合わせる他、インサート成型によって行なう。インサート成型の場合は、一方を金属製にする他両者ともプラスチック製としてもよい。両者をプラスチックにする場合は、分子構造の異なる材質の組み合わせとするのが好ましい。これは、圧縮空気の流路を確保するために成型時に両者が密着しないようにするためである。例えば、容器本体22と側板23のいずれか一方をポリアミド6,6−6、ポリプロピレンなどの結晶性樹脂で射出成型し、これを別の金型に装着して、他方をABS、AS、ポリスチレンなどの非晶性樹脂でインサート成型する。また、この場合にはできるだけ融点の異なる材質を選択するのが好ましい。
【0021】
型枠21の実施の形態の他の例として、容器本体22は必ずしも側板23と同程度の高さにする必要はないため、図7のように側板23の下部の一部に外嵌させる程度でもよい。また、第二発明においても図8(a)のように側板23にOリングなどのパッキン27を設けてもよい。本例では、容器本体22に設けた送気孔25の噴出部を側板23の下端部に配し、圧縮空気でパッキン27を押し上げて側板23の下端部と容器本体22の底板24の間から噴出させるようにしている。このため、側板23のパッキン27を設ける部分の上面に、同図(b)の波形、同図(c)の櫛形のような空隙部28を設けている。圧縮空気の圧でパッキン27を変形させるためには、前述した第一発明の場合と同様に中空構造にしたり、適当な硬さのパッキン27を選定するなどの方法によってもよい。また、第一発明の底板4も波形や櫛型の空隙部28を設けてOリングを装着する構造としてもよい。
【0022】
パッキン27は、側板23の下端部に設ける他、図9のように下端部よりやや上方に設けるようにしてもよい。この場合、パッキン27が容易に変形できるようにするため、側板23のパッキン27装着部の内周面側に図8(b)のような波形の空隙部28を設けている。本例では、側板23の下端部にリング部材29を固着させることによって、パッキン27の装着部を形成している。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るコンクリート供試体成型型枠は、円柱状のコンクリート供試体を成型させる円筒容器状の型枠において、該供試体の周面部分を成型する円筒状の型枠本体と、該供試体の底面部分を成型するもので該型枠本体の内部に装着した底板とによって構成したものであって、該型枠本体に、圧縮空気を送り込むためのもので該底板の装着部に連通させる送気孔を備えたこと。或いは、円柱状のコンクリート供試体を成型させる円筒容器状の型枠において、該供試体の底面部分を成型するもので円筒容器状の容器本体と、該容器本体に内嵌するもので該供試体の周面部分を成型する円筒状の側板とによって構成したものであって、該容器本体と該側板との間に圧縮空気を送り込むための送気孔を該容器本体に設けたことにより、簡単な構造で圧縮空気を確実に型枠内に導入させることが可能となる。
【0024】
従って、圧縮空気の供給だけで供試体を傷付けることなく簡単確実に脱型できると共に、作業効率を極めて高くなる。また、底板や側板にパッキンを設ければ、従来のように送気孔にキャップ等を設けるなどの止水対策を講じなくても、該送気孔からの漏水が防止できるなど実用上極めて有益な効果を創出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一発明に係るコンクリート供試体成型型枠の実施の形態の一例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第一発明に係る供試体成型型枠の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第一発明に係る供試体成型型枠の実施の形態のさらに他の例を示す縦断面図である。
【図4】(a)は底板の周面にパッキンを設けた例を示す縦断面図、(b)はパッキン部分の部分拡大図、(c)は送気孔から圧縮空気を送給したときにパッキンが変形した状態を示す部分拡大図である。
【図5】(a)はパッキンと空隙部の他の例を示す部分拡大図、(b)はパッキンのさらに他の例を示す部分拡大図である。
【図6】本発明の第二発明に係るコンクリート供試体成型型枠の実施の形態の一例を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第二発明に係る供試体成型型枠の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図8】(a)は側板の下端部にパッキンを設けた例を示す部分拡大図、(b)(c)は夫々空隙部の例を示す部分拡大図である。
【図9】側板の下端部にパッキンを設けた場合の他の例を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
1 第一発明に係るコンクリート供試体成型型枠
2 型枠本体
3 装着部
4 底板
5 送気孔
6 係合部
7 底
8 脚
9 パッキン
10 空隙部
21 第二発明に係るコンクリート供試体成型型枠
22 容器本体
23 側板
24 底板
25 送気孔
26 封止部
27 パッキン
28 空隙部
29 リング部材

Claims (4)

  1. 円柱状のコンクリート供試体を成型させる円筒容器状の型枠において、該供試体の周面部分を成型する円筒状の型枠本体と、該供試体の底面部分を成型するもので該型枠本体2の内周面に設けた係合部6に嵌合させた底板4とによって構成したものであって、該型枠本体に、圧縮空気を送り込むためのもので該型枠本体2に設けた該係合部6に連通させる送気孔を備えたことを特徴とするコンクリート供試体成型型枠。
  2. 円柱状のコンクリート供試体を成型させる円筒容器状の型枠であって、該供試体の周面部分を成型する円筒状の型枠本体と、該供試体の底面部分を成型するもので周面にパッキン9を設け該型枠本体の内部に全体を装着した底板とによって構成すると共に、該型枠本体に、該底板4の周面に設けたパッキン9を変形させることによって圧縮空気を送り込むためのもので該底板4の周面に設けたパッキン9に対向する装着部に連通させる送気孔を備えたことを特徴とするコンクリート供試体成型型枠。
  3. 円柱状のコンクリート供試体を成型させる円筒容器状の型枠において、該供試体の底面部分を成型するもので円筒容器状の容器本体22と、該容器本体22に内嵌するもので該供試体の周面部分を成型する円筒状の側板23とによって構成したものであって、周面は、該容器本体22を該側板23とほぼ同じ高さとした二重構造であり、該容器本体22と該側板23との間に圧縮空気を送り込むための送気孔25を該容器本体22の上部に設けたことを特徴とするコンクリート供試体成型型枠。
  4. 円柱状のコンクリート供試体を成型させる円筒容器状の型枠において、該供試体の底面部分を成型するもので円筒容器状の容器本体22と、該容器本体22に内嵌するもので該供試体の周面部分を成型する円筒状の側板23とによって構成したものであって、側板23は、下端部分にパッキン27を設けると共に、該パッキン27の装着部に波形や櫛形の空隙部28を設け、該容器本体22と該側板23との間に圧縮空気を送り込むための送気孔25を該容器本体22に設けたことを特徴とするコンクリート供試体成型型枠。
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