JP3669105B2 - 多層延伸成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品包装材料等種々の分野で幅広く必要とされているガスバリア性(酸素、炭酸ガス等)、耐内容物性(フレーバー性、保香性)、意匠性(表面光沢性、透明性)、機械的強度、収縮性等が改良され、優れた層間接着力を有する多層延伸成形体に関する。
【0002】
詳しくは特定のエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(以下「EVOH」と称する)、ポリエステル系樹脂(以下「PES樹脂」と称する)、ポリアミド系樹脂(以下「PA系樹脂」と称する)、ポリオレフィン系樹脂(以下「PO系樹脂」と称する)、スチレン系樹脂(以下「PS系樹脂」と称する)、アクリル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂より選ばれた1種以上の材料との接着力に優れる積層体を冷却固化後再加熱し延伸処理を行っても優れた層間接着力を有する多層延伸成形体に関する。
【0003】
【従来の技術】
ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のPO系樹脂は、各種分野で幅広く利用されているが、PO系樹脂は、成形性、機械強度、耐薬品性やヒートシール性に優れるが、ガスバリア性や保香性に劣り、成形手法や樹脂種によっては意匠性(表面光沢、透明性)が劣る等の欠点を有している。この欠点の改良手法として、ガスバリア性に優れたEVOHやPA系樹脂との積層、更に耐内容物性や意匠性改良のため、PES系樹脂との積層等が提案されている。
しかし、PO系樹脂は極性を有しないため、EVOH、PA系樹脂及びPES系樹脂と直接積層しても、積層後の層間接着力が非常に低く実用に耐えない。
【0004】
そこで、種々接着剤を用い積層する手法が提案されている。
例えば、PO系樹脂とEVOHやPA系樹脂等の極性樹脂との接着に関しては、不飽和カルボン酸等で変性したポリオレフィン系接着性樹脂が提案されている。 また、PO系樹脂とEVOH、PA系樹脂以外の積層体、即ちPO系樹脂とPES系樹脂、ポリカーボネート、アクリル系樹脂やPS系樹脂、及びPS系樹脂とEVOH、PA系樹脂、PES系樹脂等の積層体用としては、オレフィン系ポリマーと粘着付与剤として脂環族又は芳香族の重合物との組成物を接着材として用い積層する方法(特開昭50−116536号公報)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(以下EVAと称する)と粘着付与剤との組成物を接着材として用い積層する方法(特開昭53−147733号公報、特開昭54−10384号公報等)、EVAと変性ポリオレフィン及び粘着付与剤として脂肪族石油樹脂との組成物を接着材として用い積層する方法(特開昭53−127546号公報)、変性低結晶性エチレン・α−オレフィンランダム共重合体と粘着付与剤との組成物を接着材として用い積層する方法(特開昭61−241144号公報)、低結晶性(低密度の)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体と粘着付与剤及び変性ポリエチレンとの組成物を接着材として用い積層する方法(特開昭61−162539号公報)、スチレン系熱可塑性エラストマーと粘着剤と低分子量ポリプロピレン及びプロセスオイルの混合物よりなるホットメルト接着剤組成物(特開平1−144483号公報)、スチレン系熱可塑性エラストマーと脂環族系粘着剤及び環状オレフィンランダム共重合体よりなるホットメルト型粘着剤組成物(特開平3−223381号公報)が提案されている。
【0005】
また、最近では各種包材の更なる性能向上のため、共押出成形品を延伸し、強度やガスバリア性の改良、更には収縮包装分野への適用等が試みられ、延伸積層フィルム及びその製造方法(特開昭52−146487)、熱収縮性多層フィルム及びその包装体(特開昭57−205147、58−8644)、熱収縮性多層フィルム及びその製造法(特開昭59−152853)、熱可塑性ポリエステル組成物の二軸延伸成形体(特開昭60−76325)、二軸延伸積層体の製造方法(特開昭60−82324)、熱収縮包装フィルム(特開昭61−94753)等に於いて、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン1共重合体とスチレン変性非晶性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、何れの手法を用いた共押出積層体でも、冷却固化後、再加熱し縦方向又は横方向に1.5倍以上延伸すると、極端に接着強度が低下し実用領域に達しない。又常温で実用領域に到達できても、成形性が悪く、ホットフィルやヒートシール等の高温状態での接着強度が低い等、用途上の問題が多いのが現状である。
したがって本発明の目的は、各種材料との延伸後の層間接着力が常用温度から高温状態まで、広範囲で優れた接着性を有する多層延伸成形体の提供にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこれらの問題を解決し、加工性、接着性及び熱安定性の向上を目的として鋭意検討した結果、以下の方法により性能が飛躍的に向上することを見い出し、本発明に達した。
即ち本発明は、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性され、その含量が0.01〜20重量%であり、且つ密度0.88〜0.92である変性エチレン・α−オレフィン共重合体(a)1〜97重量%;メルトフローレート0.05〜50g/10分、且つ密度0.85〜0.950g/cm3であるエチレン系共重合体(b)1〜97重量%;粘着付与剤(c)1〜50重量%;及びビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物(d)1〜97重量%;からなる接着用樹脂組成物の層(A層)と、
エチレン含量が15〜65モル%であり鹸化度が90%以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂の層(B層)と、
を積層して得られる積層体を、少なくとも一軸方向に面積比で1.5倍以上延伸処理を施してなる多層延伸成形体を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
(1)A層
A層の樹脂組成物は下記の(i)〜(iv)の成分より構成される。
【0009】
(i)変性エチレン・α−オレフィン共重合体(a)
本発明で用いる変性エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、不飽和カルボン酸又はその誘導体の含量が0.01〜20重量%であり、密度が0.88〜0.92g/cm3である。また、好適なメルトフローレートは0.1〜50g/10分であり、エチレン含有量は30〜95モル%であるものが好適である。なお、ここでいうメルトフローレート(MFR)とは、特記しない限り、JIS K7210に準拠し、温度190℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定した値を意味する。
ここで、変性前のエチレン・α−オレフィンは、主成分のエチレンとα−オレフィンとのブロック又はランダム共重合体であり、α−オレフィンには、通常炭素数3〜20のα−オレフィン、具体的には例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセンなどが用いられ、それぞれ単独あるいは二種類以上を混合して用いられる。この共重合体には、他の重合モノマー、例えばジエン、ビニルエステル等を第3成分として共重合されたものも含まれる。これら共重合体は、2種以上を混合して用いることもできる。好ましいのはランダム共重合体の方であり、低結晶性又は非晶性の、例えば結晶化度20%以下のランダム共重合体がさらに好ましい。
【0010】
変性エチレン・α−オレフィン共重合体(a)とは、上記エチレン・α−オレフィン共重合体を不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト重合したもの、または、これを同種又は異種のエチレン・α−オレフィン共重合体で希釈したものである。
グラフト重合して変性物を製造するには、従来より公知の種々の方法を採用することができる。例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体および不飽和カルボン酸又はその誘導体、ラジカル発生剤を事前に混合し押出機で溶融させグラフト共重合させる方法。あるいはエチレン・α−オレフィン共重合体を溶媒に溶解させラジカル発生剤と不飽和カルボン酸又はその誘導体を添加してグラフト共重合させる方法等がある。
【0011】
グラフト反応温度は通常80〜300℃で行うのが好ましい。
ラジカル発生剤の一般的な使用量は、エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対して通常0.001〜8重量部の範囲が好ましい。
【0012】
ラジカル発生剤として有機過酸化物が一般的に用いられ、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−(tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチル−クミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等が好ましい。
【0013】
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和カルボン酸、又はその誘導体、例えば無水物、アミド、イミド、エステルなどであり、単独又は2種以上が用いられる。これらの内では、不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸又はこの無水物が好適である。
【0014】
不飽和カルボン酸又はその誘導体の好ましい含量は、0.05〜15重量%、とくに好ましくは0.1〜7重量%であり、0.01重量%未満では接着性が劣り、20重量%を超えるとグラフト共重合時に一部架橋を起こし成形性が劣ると同時にフィッシュアイ、ブツ等による製品外観が悪化し、且つ、接着性も低下する。
【0015】
変性エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の好ましい密度は0.88〜0.90g/cm3である。前記範囲以外の密度では延伸後の接着力が極端に低下するため好ましくない。
【0016】
変性エチレン・α−オレフィン共重合体(a)には、変性手法によっては未反応の不飽和カルボン酸又はその誘導体が残存することがあるが、接着性、食品容器の接着材として使用したときの衛生性等の観点よりできるだけ残存させない方が好ましい。従って、各種除去手法、例えば、アセトン等の貧溶媒による抽出、加熱乾燥処理による未反応不飽和カルボン酸又はその誘導体の脱気等の後処理を必要に応じて行うことが好ましい。
【0017】
(ii)エチレン系重合体(b)
本発明で用いるエチレン系重合体(b)とは、メルトフローレート0.05〜50g/10分、密度0.850〜0.950g/cm3のエチレン単独重合体又はエチレンと他の共重合モノマーとのブロック又はランダム共重合体である。共重合モノマーとしては、α−オレフィン、ビニルエステル、不飽和カルボン酸又はそのエステル等である。ここでα−オレフィンは、通常炭素数3〜20の環状分子を含まないα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等であり、それぞれ単独あるいは2種以上の混合物からなる。ビニルエステルとしては酢酸ビニル、酪酸ビニル等があり、不飽和カルボン酸又はそのエステルとしてはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等である。さらに、エチレン系重合体(c)は2種類以上混合して使用することも可能である。
具体例としては、低密度ポリエチレン(通常LDPEと称される)、高密度ポリエチレン(通常HDPEと称される)、中密度ポリエチレン(通常MDPEと称される)、直鎖状低密度ポリエチレン(通常LLDPEと称される)、超低密度ポリエチレン(通常VLDPEと称される)、低結晶性エチレン・ブテン−1ランダム共重合体(通常EBMと称される)、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等であり、中でもLDPEとVLDPEが好ましい。
【0018】
(iii)粘着付与剤(c)
本発明で用いる粘着付与剤(c)とは、常温では固体の非晶性樹脂であり、中でも石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂又はそれらの水添物が好ましく、市販のものから適宜選択して用いることができる。
【0019】
石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、又はそれらの共重合体、およびこれらの水添物などがあり、具体的には市販品としてトーホーハイレジン(東邦石油樹脂(株))、ピコペール(ピコ社)、アルコンPおよびM(荒川化学工業(株))、アドマーブ(出光石油化学工業(株))、スーパースタータック(ライヒホールド(株))、エスコレッツ(エッソ化学(株))、トーホーペトロレジン(東燃石油樹脂(株))、ハイレッツ(三井石油化学(株))、クイントン(日本ゼオン(株))などがある。
ロジン系樹脂として、天然ロジン、重合ロジンおよびそれらの誘導体例えば、ペンタエリストエステルロジン、グリセリンエステルロジンおよびそれらの水添物などがあり、具体的には市販品としてガムロジン、ウッドロジン、エステルガムA、ペルセンA、ペルセンC(荒川化学工業(株))、ペンタリンA、ペンタリンC、フォーラル105(理化ハーキユレス(株))などがある。
テルペン系樹脂として、ポリテルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂およびそれらの水添物があり、具体的には市販品としてピコライトS、およびA(ピコ社)、YSレジン、クリアロン(安原油脂(株))などがある。
【0020】
本発明においてはこれら粘着剤を用途により使い分けることができるが、これらの粘着剤の中でも、軟化点(環球法)が、好ましくは70〜150℃、特に好ましくは90〜150℃のものが用いられる。軟化点が70℃以下では接着強度が低下する傾向があると同時に、エチレン系樹脂との溶融混練がしにくくなる傾向がある。また、本接着性樹脂組成物の色相を出来る限り自然色(白色又は無色透明、黄色の着色防止)に近づけるためには、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、又はそれらの共重合体が好ましく、特にその水添物が好ましい。その水添率は80%以上、より好ましくは90%以上である。
【0021】
(iv)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物(d)(以下、単にブロック共重合体(d)という)
本発明に用いられるブロック共重合体(d)とは、ビニル芳香族化合物を主成分とする少なくとも1個の重合体ブロックと共役ジエン化合物を主成分とする少なくとも1個の重合体ブロックを有するブロック共重合体の水素添加物であり、ブロックAがビニル芳香族化合物、ブロックBが共役ジエン化合物であるとしたときに、一般式A−B、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−A等で表される。ブロック重合体の、重合体ブロック部Aを構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のうちから1種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。
また、重合体ブロック部Bの共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1・3−ペンタジエン等のうちから1種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
【0022】
Aブロックとなるビニル芳香族化合物の重合体ブロックの含量は10〜80重量%、好ましくは10〜70重量%である。本重合体ブロックの含量は、上記の範囲より少なくても、多くても接着強度が低下し好ましくない。
【0023】
共役ジエン化合物の重合体ブロックの水添率は、一般的には50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上であり、高くなれば熱安定性が向上し特に好ましい。
【0024】
ブロック共重合体(d)の数平均分子量は10,000〜400,000程度、好ましくは20,000〜300,000である。分子量は、高くても、低くても接着強度が低下傾向となり、また、数平均分子量が400,000を超える本ブロック共重合体は、本組成物の加工性が低下する傾向となる。
【0025】
また、ブロック共重合体(d)の数平均分子量が400,000を超えないまでも、高い場合は、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、数平均分子量が6,000以下のオレフィン系ワックス等の中から選ばれた流動性改良剤を、ブロック共重合体水素添加物(d)に対し1〜40重量%を添加することにより、接着強度および加工性の低下を抑えることが可能となり、有効な手段である。
【0026】
ブロック共重合体(d)は、A−B−A構造を有するブロック共重合体が好ましく、具体的に市販品としては、水添スチレン−ブタジエン系ブロックコポリマーとして“タフテック”Hタイプ(旭化成(株)製)、“クレイトン”G1600タイプ(シェル化学製)、水添スチレン−イソプレン系ブロックコポリマーとして“セプトン”2000タイプ((株)クラレ製)がある。また、A−B構造を有する水添スチレン−イソプレン系ブロックコポリマー“セプトン”1000タイプ((株)クラレ製)、“クレイトン”G1700タイプ(シェル化学社製)等がある。
【0027】
本接着用樹脂組成物は、種々公知の手法、例えばタンブラーブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用い混合し、混合後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等で溶融混練し、造粒あるいは粉砕する手法によって製造される。
各成分の配合割合は、変性エチレン・α−オレフィン共重合体(a)1〜97重量%;エチレン系共重合体(b)1〜97重量%;粘着付与剤(c)1〜50重量%;ブロック共重合体(d)1〜97重量%;であり、好ましくは成分(a)3〜60重量%;成分(b)5〜80重量%;成分(c)5〜40重量%;成分(d)5〜70重量%であり、更に好ましくは成分(a)5〜50重量%;成分(b)10〜60重量%;成分(c)10〜30重量%;成分(d)10〜55重量%である。
成分(a)が多すぎると造粒及び成形時の取り扱いが困難となり、一方、少なすぎると接着力が弱く実用に耐えない。成分(b)が多すぎると接着力が低く実用に耐えず、一方、少なすぎると造粒及び成形時、取り扱いが困難となる。成分(c)及び成分(d)が多すぎると造粒及び成形時、取り扱いが困難となり、一方、少なすぎると接着力が低く実用に耐えない。
【0028】
尚、本組成物には前記成分に加えて、耐熱安定剤、耐候安定剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、難燃剤、触媒残渣の中和剤、顔料、染料、無機および/又は有機フィラー等一般的に用いられている手法を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0029】
(2)B層
B層に使用する樹脂としては、エチレン含量が15〜65モル%であり、鹸化度が90%以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH);ジオールとジカルボン酸より重合体を得る直接重合法やジオールとジカルボン酸エステルよりエステル交換法等により得られる重合体で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、共重合PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキシレンテレフタレート(PCT)等のポリエステル系樹脂(PES系樹脂);ジアミンとジカルボン酸の縮合、アミノ酸の縮合およびラクタムの開環等により得られる酸アミド結合を有する線状合成高分子で、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6−6,6−ナイロン、12−ナイロン、キシリレン基含有ポリアミド樹脂のポリアミド系樹脂(PA系樹脂)等のガスバリア樹脂;ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、4−メチル−1−ペンテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂(PO系樹脂);一般用ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸共重合体等のスチレン系樹脂(PS系樹脂);ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル・メチルアクリレート・ブタジエン共重合体等のアクリル系樹脂;ジヒドロキシ化合物とホスゲン又はジフェニルカーボネートを公知の方法で反応させて得られる重合体であるポリカーボネート(PC)より選ばれた1種又は2種以上の混合物の熱可塑性樹脂である。混合物の例としては、例えばEVOHとPES系樹脂やPA系樹脂やPCとの混合物がある。また、これらの熱可塑性樹脂にはタルク等板状フィラー等のフィラーや他の配合剤を混ぜることもできる。
【0030】
(3)積層体の製造方法
上記A層とB層とからなる積層体を製造する方法としては、従来より公知の種々手法を採用することができる。例えば、押出機で溶融させた、個々の溶融樹脂を多層ダイスに供給し、ダイスの中で積層する共押出し手法によるインフレーションフィルム、T−ダイフィルム、シート、パイプや、溶融した個々の樹脂を同一金型内にタイムラグを付けインジェクションする、共インジェクション成形により未延伸状態試験管状のパリソン等の共押出積層を行うものである。
【0031】
(4)多層延伸成形体の製造方法
本発明の多層延伸成形体は、一軸方向あるいは二軸方向に面積比で1.5倍以上延伸処理を施して得られるものである。延伸方法としては、上記(3)から得られた未延伸多層フィルムを冷却固化後、インライン、又はアウトラインで60〜160℃の延伸温度まで再加熱し、テンター、プラグ及び圧縮空気等を用いて延伸を行う方法が挙げられる。このようにして、多層延伸成形体として一軸又は二軸延伸成形したフィルム、カップ、ボトル等の成形容器を得る。
インフレフィルムの場合、インフレ同時二軸延伸法、Tダイフィルムの場合テンター同時二軸延伸法、ロール及びテンターに因る逐次二軸延伸法等、カップの場合、金型内で圧縮空気等のみによる圧空成形、プラグと圧縮空気を併用するSPPF成形等、ボトルの場合、積層パイプを縦に延伸後、金型内で圧縮空気等で横に延伸するパイプ延伸法、インジェクション成形により試験管状の有底パリソンを成形し、有底パリソンを金型内でロッドにより縦方向に延伸後、圧縮空気等により横方向に延伸する有底パリソン延伸法等が一般的に用いられる。
また、本発明の延伸積層体は必要に応じ、更に延伸後再加熱、即ちヒートセットを行うことにより耐熱性を向上する(収縮性はやや低下する)ことができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例で本発明を具体的に説明する。
【0033】
(1)積層体の製造は以下の方法にて実施した。
2種3層共押出水冷インフレーションフィルム成形法
層構成は内層から外層に向かって、各種被着材/接着材/各種被着材とし、厚さはそれぞれ150μm/100μm/150μmとした。
押出機のダイス幅は内層から外層に向かって40mmφ/35mmφ/ 40mmφ とした。
被着材別成形条件を以下に示す。
共押出温度
PES系樹脂=275℃
PA系樹脂=245℃
EVOH=235℃
成形速度は5m/分に設定した。
【0034】
(2)積層体の延伸は以下の方法にて実施した。
テンター法
標準型二軸延伸機:T.M.Long社製
延伸最大倍率:7.2×7.2倍
延伸速度:7.6〜3000cm/分
加熱方式:熱風循環(室温〜350℃)
延伸ヘッド駆動:油圧シリンダー
延伸可能試料厚み:0.08〜2mm
延伸倍率:3.3×3.3倍
【0035】
尚、実施例および比較例の評価項目は以下の手法にて評価した。
(3)積層体の接着強度(g/10mm)は、JIS K−6854に準拠して下記条件で測定した。
剥離幅 :10mm
剥離状態:Tピール剥離
剥離速度:50mm/分
温度 :23℃および60℃
【0036】
(4)ボイル処理
(1)で作成した本発明の積層体を3.3×3.3倍に延伸して得られたフィルムを用いて行った。
PE袋に延伸フィルムを入れ下記内容物を100cc充填後ヒートシールにて封入し、90℃の熱水中で30分間処理し、その後熱水より取り出し、23℃の水中で冷却(約30分)しサンプルを得た。
内容物 食油:食酢:水=1:1:1
【0037】
(実施例1)
無水マレイン酸グラフト変性エチレン・ブテンランダム共重合体(無水マレイン酸含量:1.3重量%、MFR:2g/10分、密度:0.88g/cm3)10重量%とエチレン・ブテン共重合体(密度:0.900、融点:87℃、MFR−190℃2.16kg:5g/10分)40重量%、粘着付与剤(脂環族系石油樹脂、数平均分子量:710、比重:0.998、軟化点115℃)20重量%とスチレン・ブタジエン共重合体水添物(スチレン含量30重量%、MFR−200℃5kg:10g/10分、水添率97%)30重量%の配合割合で事前に50リッターのV型ブレンダーで5分間混合し、二軸押出機PCM30(D=30mmφ、L/D=32、池貝鉄工(株)製)を用い、温度180℃、スクリュー回転数180rpm、押し出し量11kg/時で溶融混練し、紐状に押し出し、冷却後カッティングし、組成物を得た。
【0038】
(実施例2)
実施例1で用いたのと同じ無水マレイン酸グラフト変性エチレン・ブテンランダム共重合体20重量%と低密度ポリエチレン(密度:0.92、融点:106℃、MFR−190℃2.16kg:3g/10分)35重量%、実施例1で用いたのと同じ粘着付与剤25重量%とスチレン・ブタジエン共重合体水添物(スチレン含量20重量%、MFR−200℃5kg:0.3g/10分、水添率97%)20重量%の配合割合で実施例1と同様にして組成物を得た。
【0039】
(実施例3)
実施例1で用いたのと同じ無水マレイン酸グラフト変性エチレン・ブテンランダム共重合体20重量%とエチレン・ブテン共重合体(密度:0.92、融点:121℃、MFR−190℃2.16kg:2g/10分)30重量%、実施例1で用いたのと同じ粘着付与剤20重量%と実施例2で用いたのと同じスチレン・ブタジエン共重合体水添物30重量%の配合割合で実施例1と同様にして組成物を得た。
【0040】
(実施例4)
実施例1で用いたのと同じ無水マレイン酸グラフト変性エチレン・ブテンランダム共重合体5重量%とエチレン・ブテン共重合体(密度:0.88、融点:72℃、MFR−190℃2.16kg:1.5g/10分)30重量%、実施例1で用いたのと同じ粘着付与剤30重量%とスチレン・ブタジエン共重合体水添物(スチレン含量40重量%、MFR−200℃5kg:0.7g/10分、水添率97%)35重量%の配合割合で実施例1と同様にして組成物を得た。
【0041】
(実施例5)
実施例1で用いたのと同じ無水マレイン酸グラフト変性エチレン・ブテンランダム共重合体15重量%とエチレン・ブテン共重合体(密度:0.86、融点:23℃、MFR−190℃2.16kg:3.5g/10分)25重量%、実施例1で用いたのと同じ粘着付与剤25重量%と実施例2で用いたのと同じスチレン・ブタジエン共重合体水添物35重量%の配合割合で実施例1と同様にして組成物を得た。
【0042】
(比較例1)
無水マレイン酸変性エチレン系樹脂(変性LLDPE、無水マレイン酸含量:1.5重量%、MFR:1g/10分、密度:0.922g/cm3)10重量%と実施例1で用いたのと同じエチレン・ブテン共重合体45重量%、同粘着付与剤10重量%と同スチレン・ブタジエン共重合体水添物35重量%の配合割合で実施例1と同様にして組成物を得た。
【0043】
(比較例2)
比較例1で用いたのと同じ無水マレイン酸変性エチレン系樹脂20重量%と実施例1で用いたのと同じ低密度ポリエチレン35重量%、同粘着付与剤10重量%と実施例2で用いたのと同じスチレン・ブタジエン共重合体水添物35重量%の配合割合で実施例1と同様にして組成物を得た。
【0044】
(比較例3)
比較例1で用いたのと同じ無水マレイン酸変性エチレン系樹脂20重量%と実施例3で用いたのと同じエチレン・ブテン共重合体35重量%、実施例1で用いたのと同じ粘着付与剤15重量%と実施例2で用いたのと同じスチレン・ブタジエン共重合体水添物30重量%の配合割合で実施例1と同様にして組成物を得た。
【0045】
上記実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたペレットを用い、2種3層共押出水冷インフレーションフィルム成形法にて、被着材としてPES系樹脂“ダイヤナイト”PA500(比重:1.34g/cm3、固有粘度:0.76dl/g、三菱レーヨン(株)製)とEVOH系樹脂“エバール”EP−F105B(密度:1.14g/cc、メルトインデックス:5.5、エチレン共重合含量:44mol%、(株)クラレ製)とPA系樹脂ノバツテック1020CA2(融点:224℃、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製)の各々の2種3層フィルムを得、冷却固化後、原反接着力として23℃、耐熱接着力として60℃雰囲気下での接着力を測定し、テンターにて70℃雰囲気下で縦方向及び横方向に3.3×3.3倍に延伸した時の接着力、更にボイル(90℃、30分)処理後の23℃雰囲気下での接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
本発明の多層延伸成形体は、各種材料との延伸後の層間接着力が常用温度から高温状態まで、広範囲で優れた接着性を有しているので、耐熱性、ガスバリア性、防湿性、透明性、強度に優れた食品用、医薬品用等のフィルム包装材、熱成形カップ、ブロー瓶、インジェクション瓶、さらには、繊維分野や工業分野における不織布や金属との積層用フィルムなどに好適に用いることができる。
Claims (1)
- 不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性され、その含量が0.01〜20重量%であり、且つ密度0.88〜0.92である変性エチレン・α−オレフィン共重合体(a)1〜97重量%;メルトフローレート0.05〜50g/10分、且つ密度0.85〜0.950g/cm3であるエチレン系重合体(b)1〜97重量%;粘着付与剤(c)1〜50重量%;及びビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物(d)1〜97重量%;からなる接着用樹脂組成物の層(A層)と、
エチレン含量が15〜65モル%であり鹸化度が90%以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂の層(B層)と、
を積層して得られる積層体を、少なくとも一軸方向に面積比で1.5倍以上延伸処理を施してなることを特徴とする多層延伸成形体。
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-
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