JP3668549B2 - 未加硫ゴム部材用ライナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、未加硫ゴム部材用ライナーに関し、特にタイヤ製造工程において押出成形された未加硫トレッドゴムやサイドウォールゴム、ビードフィラー等の帯状ゴム部材を巻取り、中間製品として保管するために使用されるライナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タイヤ等の製造工程で供給される未加硫ゴム部材は、組み立て工程で最終的に使用されるまで長尺帯状の巻取用織布ライナーの間に挟むか、或いは、図8に示すように、基部11の表面11Aの幅方向両端部11B、11Cに長手方向に沿う桟部12を設けることにより隣接する基部11、11間に未加硫ゴム部材13を保持する保持部14を形成したトラフ式ライナー10を用いて巻芯に巻き取って保管されていた(特開平5−301300号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の巻取用織布ライナーは比較的柔軟で伸び難い性質を有し、かつ、幅方向と長さ方向の曲げ剛性がともに小さく、また両方向の曲げ剛性比が1か殆ど1に近いものが用いられていた。そのため長さ方向と同じく幅方向にも曲がりやすいため、これにゴム部材を巻き取ると、保管中に図7に示すように、巻芯9から半径方向外側に行くほど端が垂れ下がり、これに伴ってゴム部材8の両端部が変形するという難点があった。また、使用に当たりゴム部材8とライナー15間の過粘着のため精度のよいゴム部材が取り出せないという欠点があった。
【0004】
一方、後者のトラフ式ライナーでは、ゴム部材と基部との間の密着度が高く、ゴム部材を取り出すとき大きい力が加わり、ゴム部材の変形が大きくなる。その上、トラフ式設備は嵩高い高重心巻き物となり転倒の危険さえ生ずるという欠点があった。
【0005】
この発明は、従来のライナーが有する上記のごとき問題点を解決すべくなされたものであって、その目的とするところは、ゴム部材をコンパクトな形に巻き取ることが可能であり、保管時にゴム部材が変形せず、使用に当たっては押出形状を保持したままライナーから容易に取り出すことのできる未加硫ゴム部材用ライナーを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、上記の課題を解決するために、ライナーの曲げ剛性と表面の状態を検討することによって本発明に到達した。
すなわち、この発明は、幅方向のヨコ糸と長さ方向のタテ糸で製織された織物の片面または両面に非粘着性外被層が被覆形成されている未加硫ゴム部材用ライナーにして、該ライナー幅方向の曲げ剛性が長さ方向の曲げ剛性の1.4倍以上であることを特徴とする未加硫ゴム部材用ライナーを要旨とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明において使用する織物の材質は特に限定されるものではないが、通常はポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどの有機繊維、或いは炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維からなるマルチフィラメント糸およびモノフィラメント糸を挙げることができる。
【0008】
このような材質を使用してライナーの幅方向の曲げ剛性を高めるためには、織物のヨコ糸に剛性の大きい糸、有機繊維ならばマルチフィラメント糸よりはモノフィラメント糸を選定し、タテ糸には剛性の小さい有機繊維のマルチフィラメント糸を使用するとよい。
また他の例としては、剛性の高い無機繊維糸をヨコ糸に、剛性の低い有機繊維糸をタテ糸に使用することも望ましい選択である。
【0009】
このようなライナーの幅方向と長さ方向の曲げ剛性比は、上記のごとき材質上の要因に加え、ヨコ糸とタテ糸の繊度(dtex)と密度(本/2.5 cm)の調整により、比較的容易に所望の値に設定することができる。
【0010】
しかしながら、このままでは織物の布目にゴムがめり込むと、取り出す時に剥離力が生じてゴム部材が変形する。
【0011】
そこで、この発明においては、前記のごとき織物の片面または両面に外被層を被覆形成し、その表面を非粘着性にすることを特徴とするものである。この場合、片面または両面のどちらを選ぶか、また表裏いずれの面に施すかは巻き取り保管される未加硫ゴム部材の変形のし易さ、粘着性などを参考にして適宜決めうることである。
【0012】
この非粘着性外被層を形成する材料としては、ライナーの主体である織物とは強力に接着するが、被覆した後は未加硫ゴム部材に対し非粘着性の表面を形成することができるものでなければならない。また、ライナーの長さ方向の曲げ剛性を高めて巻き易さを損なうことのない適度の伸縮性、柔軟性を有することが望ましい。
【0013】
このような材料としては、シリコン樹脂またはフッ素樹脂を好適な例として挙げることができる。前者はメチルハイドロジエンポリシロキサン類またはジメチルポリシロキサン類であり、後者はフッ素化ポリアクリレート(分子量10万以上)を主成分とする溶液型またはエマルジョン型塗料であり、これらを上記織物の片面または両面にコーティングして非粘着性外被層を形成する。コーティングの方法としてはロールによる直接トップ法、離型紙による転写法その他公知の方法を適宜採用することができる。
【0014】
かくして、織物の片面または両面に非粘着性外被層を被覆形成した後もライナーの長さ方向の曲げ剛性を従来の水準に維持したまま幅方向と長さ方向の曲げ剛性比を1.4倍以上とすることが可能であり、これにより巻き取り保管された未加硫ゴム部材の変形を実質的ゼロの状態にまで近付けることができる。
【0015】
また、シリコン樹脂やフッ素樹脂を外被層とする場合には静電気の発生が顕著に認められるため、これらの樹脂に導電性カーボンを混合するか、または導電性カーボン糸を布地に織り込んでおくことが望ましい。
【0016】
シリコン樹脂の目付け量としては、片面で0.02gr/cm2 以上、両面処理では0.03〜0.06gr/cm2 がその目安である。
【0017】
本発明に係る未加硫ゴム部材用ライナーは、以上の通り構成されているので、ゴム部材をコンパクトな形に巻き取ることが可能であり、また、保管中にゴム部材のプロファイルが形崩れせず、使用時にはライナーからゴム部材を剥がす力が小さくてすみ、これにより高精度の寸法でゴム部材を容易に取り出すことができる。
【0018】
【実施例】
つぎに、実施例並びに比較例を挙げてこの発明の特徴をより詳細に説明する。
実施例1
図1は、この発明に係る未加硫ゴム部材用ライナー1の一部を切り欠き内部構造を示した斜視図であり、図において2は幅方向のヨコ糸5と長さ方向のタテ糸6で製織された織物、3は同織物2の表面に被覆されている非粘着性外被層、4は同織物2の裏面に被覆されている非粘着性外被層である。
【0019】
本例において、織物2は、ヨコ糸5として繊度1100dtexのポリエステルモノフィラメント糸、タテ糸6として繊度660dtexのポリエステルマルチフィラメント糸を用い、前者の密度27本/2.5 cm、後者の密度35本/2.5 cmとして製織してなる長尺帯状の布地である。
【0020】
この織物の両面に被覆されている非粘着性外被層3および4は、シリコン樹脂溶液をタンデムに連結されたロールコーティング装置により上記のポリエステル繊維織物の表面と裏面に順次コーティングし、硬化・乾燥して被覆形成されてなり、全体の目付け量は0.043gr/cm2 である。
【0021】
図2は、このライナーの横方向と長さ方向の曲げ剛性比σの測定法を示す説明図である。図において、11はライナー1をその幅方向、長さ方向とも30cmの寸法に裁断して作成した試験用サンプル片である。7は試験台であり、7cmの段差hを有する。測定に当っては、図2のように試験台7の上段からつき出されるサンプル11の垂れ下がり自由端が丁度下段に接した時点の水平距離ιを、幅方向と長さ方向につき測定して、その比を求め、これを横方向と長さ方向の曲げ剛性比σとした。
実施例1のサンプルにつき測定された上記剛性比σは1.40である。
【0022】
このライナーを図3に示すごとき断面形状を有し長尺で帯状のトレッド用未加硫ゴム部材8に適用すると、図4に示す通り、20時間経過後も両端が垂れ下がらず巻き取り時そのままの巻き姿で保管することができた。この場合用いた巻芯9の径は50cmであり、この上に長さ100mの帯状ゴム部材8が巻き取られている。
【0023】
ついで、上記巻回状態にある未加硫ゴム部材8につき、その最外部に位置するゴム部材断面の変形量と最内部に位置する同ゴム部材の引出し時伸び率を下記の方法により測定したところ、変形量は0 mm 、引出し時伸び率は0.1%という良好な結果が得られた。
【0024】
ゴム部材断面の変形量(mm): 巻回状態最外部に位置する未加硫ゴム部材について、断面両端の垂れ下がり量x1 、x2 を測定し、その平均値=(x1 +x2 )/2 をもって変形量とした。(図5参照)
引出し時伸び率(%): 巻き取り時、ゴム部材表面の長さ方向に50cm長さのマークを付しておき、ライナーより引き出した時のマーク長を測定し、その伸び率を計算した。
【0025】
実施例2
非粘着性外被層3と4を形成する樹脂としてフッ素樹脂溶液を使用したこと以外は実施例1と同様にして作成されたライナーであり、この場合の横方向と長さ方向の曲げ剛性比σは1.5であり、ゴム部材断面の変形量は4mmと小さい。また、引出し時伸び率も1.3%と小さく、良好な結果が得られた。
上記実施例1〜2に係るライナーの各構成と特性の測定結果を表1示す。
【0026】
【表1】
【0027】
比較例1〜3
つぎに、実施例1〜2と比較するため、別な構成からなるライナー3種類(比較例1〜3)を作成し、同様の方法により各特性を測定した。結果は表1に纏めて示されている。
【0028】
すなわち、比較例1は、ヨコ糸とタテ糸に同じ繊度のポリエステルマルチフィラメント糸を使用し、曲げ剛性比σを1とした従来型の織布ライナーである。このライナーはヨコ剛性が小さいので、これに巻き取られたゴム部材の変形量は35mmと大きい。また、非粘着性樹脂で表面処理されていないので取出し時に生ずる剥離力により6.3%の伸び率が観察された。
【0029】
比較例2は、ヨコ糸にモノフィラメント糸を使用して幅方向の曲げ剛性を高くしたこと以外は比較例1と同様にして作成されたライナーである。したがって、実施例と同様にゴム部材の変形量は小さくなるが、非粘着性樹脂で表面処理されていないので引出し時伸び率は8.2%と大きい。
【0030】
比較例3は、ヨコ糸とタテ糸に同じ繊度のポリエステルマルチフィラメント糸を使用して曲げ剛性比σを1とした織布ライナーの表面に、実施例1と同様にして、シリコン樹脂を被覆したものである。この場合には、ゴム部材の取出し時伸び率は0.6%と小さいが、従来の織布ライナーと同様、ライナーに巻き取り保管中のゴム部材6の変形量は30mmと大きい。
【0031】
図6は、実施例1において、ヨコ糸であるポリエステルモノフィラメント糸の密度(本/2.5cm )を種々変更したこと以外は同様にして、幅方向と長さ方向の曲げ剛性比σが1.0〜3.0の範囲にある9ケのライナーを作成したのち、これらのライナーについて測定した曲げ剛性比σと部材変形量との関係をグラフ化したものである。図から明らかなように、曲げ剛性比σが1.4以上でゴム部材は変形しない。
【0032】
【発明の効果】
本発明に係る未加硫ゴム部材用ライナーは、以上の通り構成されているので、トラフ式ライナーに比べるとゴム部材をコンパクトな形に巻き取ることが可能であり、また、保管中にゴム部材のプロファイルが形崩れせず、使用時にはライナーからゴム部材を剥がす力が小さくてすみ、したがってゴム部材を高精度の寸法で取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る長尺帯状の未加硫ゴム部材用ライナーの一部を切り欠き、内部構造を示した斜視図である。
【図2】同ライナーの横方向と長さ方向の曲げ剛性比σの測定法を示す説明図である。
【図3】トレッド用未加硫ゴム部材の断面形状を示す図である。
【図4】この発明に係る未加硫ゴム部材用ライナーによるトレッド用ゴム部材の保管時巻回状態を示す断面図である。
【図5】同巻回状態最外部に位置するゴム部材断面の変形量を表す説明図である。
【図6】ライナーの幅方向に対する長さ方向の曲げ剛性比σとゴム部材変形量との関係示すグラフである。
【図7】従来の巻取用織布ライナーによる未加硫トレッド用ゴム部材の保管時巻回状態を示す断面図である。
【図8】従来のトラフ式ライナーの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 : 未加硫ゴム部材用ライナー
2 : 織物
3、4: 非粘着性外被層
5 : ヨコ糸
6 : タテ糸
Claims (4)
- 幅方向のヨコ糸と長さ方向のタテ糸で製織された織物の片面または両面に非粘着性外被層が被覆形成されている未加硫ゴム部材用ライナーにして、該ライナーを幅方向、長さ方向とも30cmの寸法に裁断して作成したサンプル片を高さ7cmの段差を有する試験台の上段から突き出し、垂れ下がり自由端が下段に接した地点における段差からの水平距離を曲げ剛性とし、該ライナー幅方向の曲げ剛性が長さ方向の曲げ剛性の1.4倍以上であることを特徴とする未加硫ゴム部材用ライナー。
- 請求項1において、織物が有機繊維からなり、ヨコ糸がモノフィラメント糸でタテ糸がマルチフィラメント糸で製織された織物であることを特徴とする未加硫ゴム部材用ライナー。
- 請求項1または2において、非粘着性外被層がシリコン樹脂またはフッ素樹脂からなることを特徴とする未加硫ゴム部材用ライナー。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のライナー上に長尺で帯状の未加硫ゴム部材を載せて、巻芯に巻き取って保管することを特徴とする未加硫ゴム部材の保管方法。
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