JP3667397B2 - ラマン分光装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はラマン分光装置、特にその試料観察機構の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
物質に特定の波長の光を照射すると、その照射光は散乱され、その一部は照射光の波長とは異なる光(ラマン光)となる。このラマン光は試料を構成する分子の振動や回転に基づいてある決まった波数に現れ、その分子に特有であるため物質の同定が可能であり、またラマン強度は照射光の強度、分子数(濃度)に比例するため試料中の特定成分の定量も可能である。
このため、従来より各種のラマン分光光度計が開発されており(特開平3−272440,特開平4−99929など)、各種測定、分析に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の一般的なラマン分光装置では、空間分解設定アパーチャーの試料面における共役位置を確認する手段がなかったため、試料の測定領域を設定する際には、テレビモニタ上で励起レーザーのスポットからの相対位置として測定者の経験により設定していた。また、測定領域を肉眼により確認することは、強力な励起レーザーの散乱光などにより不可能であった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的はアパーチャーの位置を試料上で確認することのできるラマン分光装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明にかかるラマン分光装置は、
試料表面からの散乱光を集光する集光手段と、
前記集光手段により集光された散乱光から迷光を除去するスリットを有するアパーチャーと、
該アパーチャーを介した散乱光を分光し、ラマン光を採取する分光手段と、
集光手段とは反対面から前記アパーチャーを照射するアパーチャー照射用光源と、
前記試料の測定部位近傍を照明する試料照射用光源と、
前記集光手段とアパーチャーの間の光路上に配置されたモニタ用半透鏡と、
前記アパーチャー照射用光源および試料照射用光源からの光が試料に反射され、さらに前記モニタ用半透鏡に反射された光をモニタするモニタ手段と、
を備え、前記モニタ手段によって、試料照射用光源により照明された試料面と、アパーチャー照明用光源からの照明により試料面上に投影された前記アパーチャーのスリット像とが観察可能であることを特徴とする。
【0005】
なお、本発明にかかる装置において、試料観察モードおよびラマン光測定モードの選択を可能とする操作手段と、前記試料観察モードが選択された場合に、アパーチャー照射用光源および試料照射用光源を点灯し、試料照射用光源により照射された試料面およびアパーチャー照射用光源により形成されたアパーチャー像のモニタ手段によるモニタを可能とし、また、前記ラマン光測定モードが選択された場合に、アパーチャー照射用光源および試料用光源を消灯し、かつ分光手段に散乱光を導入する制御手段と、
を備えることが好適である。
【0006】
また、本発明にかかる装置において、アパーチャーと分光手段の間に配置され得る可動反射鏡を備え、制御手段は、試料観察モードにおいて該可動反射鏡をアパーチャーと分光手段の間に配置しアパーチャー照射用光源からの光をアパーチャーに導光し、ラマン光測定モードにおいて前記可動反射鏡をアパーチャーと分光手段の間から退避させ、アパーチャーを介して得られる散乱光を分光手段に導光することが好適である。
【0007】
【発明の実施形態】
本発明にかかるラマン分光装置は前述したように構成されているので、アパーチャー照射用光源からの照射光がアパーチャーのスリットを介して試料上に照射される。同時に、試料上には試料照射用光源からの照明光が照射されている。
そして、試料上に形成された像は、モニタ用半透鏡により取り出されてモニタ手段によりモニタ可能となる。
【0008】
以下、図面に基づき本発明の実施態様についてより詳細に説明する。
図1は本発明の一実施態様にかかるラマン分光装置の概略構成が示されている。
同図に示すラマン分光装置10は、レーザー部12と、試料部14と、ラマン光導入光学系部16と、分光器部18と、CCD検出部20と、制御部22と、操作部23を備える。
そして、レーザー部12から出射されたレーザー光は、減光器(シャッター付)24により所望強度のレーザー光に調整され、前置分光器26により派生光が除去された後、1/2波長板28を介して試料室部14に送られる。
【0009】
本実施例において試料室部14は、大型クライオスタット及びテレビカメラが設置されたマクロ試料室30と、一般試料室32より構成される。一般試料室32は試料34を載置するステージ36と、試料34上の比較的広範囲な部位を観察対象とするマクロ集光系38、比較的狭範囲な部位を観察対象とするミクロ集光系40から構成され両者のいずれかが選択される集光系と、試料照射用光源42、シャッター付減光器44、テレビカメラ46及びオートフォーカス機構48より構成されるモニタ50と、空間分解能用アパーチャー52とを含む。
また、ラマン光導入光学系部16は、レーリー光除去用スーパーノッチフィルタ54と、偏光測定用偏光子/解消板56とを含む。
【0010】
また、分光器部18は、差分散型ダブル分光器とシングル分光器を接続したトリプル分光器入射口58と、1つの分光器を介するシングル分光器入射口60を備え、ラマン光強度などに応じて必要な分光器を選択し、ラマン光とレイリー散乱光とを適切且つ効率的に分光する。
そして、分光器部18で分光されたラマン光はCCD検出部20で検出されることとなる。
なお、1/2波長板からサンプルステージ36上の試料34に導光されるレーザー光は、反射鏡62に反射された場合には直角散乱光の測定に、反射鏡64に反射された場合には疑似後方散乱光の測定に、さらに反射鏡66に反射された場合には後方散乱光の測定に用いられるように、それぞれ所定角度で試料34上に照射される。
【0011】
次に、図2ないし図4により本発明にかかるラマン分光装置10の試料モニタ機構及びラマン測定機構の詳細を説明する。
図2には本発明にかかるラマン分光装置10により試料表面を観察しつつ、空間分解設定アパーチャーの試料面における共役位置の確認方法について説明する。なお、同図中、図1に対応する部材には同一符号を付し、説明を省略する。
まず、操作者は操作部23の操作により試料観察モードを選択する。
図2に示す装置においては、散乱光をレーザー部12からの励起レーザー光は減光器24及び反射鏡70、集光レンズ72を介して試料34上に照射されている。
そして、本実施態様にかかるラマン分光装置10は、試料34の比較的広い範囲の照明を行う試料照射用光源74と、アパーチャー52のスリット周辺を照射するアパーチャー照射用光源76を備える。
【0012】
前記試料照射用光源74から出射した照明光は、結像レンズ78により平行光となり、半透鏡80及び半透鏡82、集光レンズ72を介して試料34の比較的広い範囲を照明している。
一方、アパーチャー照射用光源76を出射した照射光は、結像レンズ84を介し、さらに可動反射鏡86により反射されて図中下方に進行しアパーチャー52に結像する。該照射光の内、アパーチャー52のスリットに位置した照射光がそのまま下方に進行し、結像レンズ88、半透鏡82、集光レンズ72を介して試料34上に照射され、該試料34上にはアパーチャー52のスリット像が写し出されることとなる。
【0013】
そして、アパーチャー投影像とアパーチャー自身を結ぶ光軸は、アパーチャー投影像と分光器部の入射スリットの中心を結ぶ軸と一致させる。また励起レーザーのスポットの中心と、このアパーチャー投影像の中心は、光学調整により一致させる。
以上のようにして、試料34上には図3に示すような像が形成されることとなる。すなわち、試料34上にやや広範囲に試料照明用光源74の照射範囲90が形成され、その内側にスリット像92が、さらに内側にレーザースポット94が写し出される。
この状態は、集光レンズ72、半透鏡82,80、結像レンズ96を介してテレビカメラ46により撮影され、図示を省略したモニタ上で目視観察が可能となる。
【0014】
そして、操作者により所望の試料面上のどの部分の光が分光器部18に取り込まれるかを確認し、操作部23から指示を与えてステージ36を移動制御し、試料の位置決めなどを行う。
測定部位の確認が終了したらば、次に操作部23を介してラマン光測定モードを選択する。
そうすると、図4に示すように制御部22は光源74,76の消灯を行うと共に、反射鏡移動手段98により前記可動反射鏡86を図中左方向に移動さる。
この結果、試料34に励起レーザー光を照射して生じる散乱光は、集光レンズ72により集光され、さらに結像レンズ88により結像されてアパーチャー52を通過し、そのまま図中上方に進行してラマン光導入光学系部16を介して分光器部18に導光される。
【0015】
分光器部18ではレーリー光とラマン光の分離が行われ、ラマン光がCCD検出部20により検出される。
以上のように本発明にかかるラマン分光装置によれば、試料像観察モードでアパーチャー像と試料の観察像、及びレーザービームとが同時観察できるため、一目で空間分解能が解る。また、制御部22にビデオキャプチャーを内蔵しておくことにより、コンピュータのCRT上にこの画像を写し出し、そのラマンスペクトルと共に表示、印刷出力、あるいは画像デジタルデータとして外部記憶装置へのダウンロードなどが可能である。
【0016】
なお、前記図2の状態において、レーザー部12を停止することにより、空間分解設定アパーチャー52の試料面上の相当部位を、直接肉眼で観察することも可能である。
また、空間分解設定アパーチャーは丸穴、細隙の何れでもよい。
さらに、ラマン光測定モードでは例えば半透鏡82などを光路上から退避させ、ラマン光の減衰を避けることも好適である。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかるラマン分光装置によれば、空間分解設定アパーチャーの位置を試料上に投影する機能を備えたので、アパーチャー像と試料の像を同時に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様にかかるラマン分光装置の全体構成の説明図である。
【図2】図1に示した装置でアパーチャー設定確認を行っている状態の詳細説明図である。
【図3】図2に示した状態での試料面モニタ状態の説明図である。
【図4】図1に示した装置でラマン光の測定を行っている状態の詳細説明図である。
【符号の説明】
12 レーザ光源
18 分光器部(分光手段)
46 テレビカメラ(モニタ手段)
52 アパーチャー
70 モニタ用半透鏡
72 集光レンズ(集光手段)
74 試料照射用光源
76 アパーチャー照射用光源
Claims (3)
- 試料上にレーザー光を照射し、試料上で散乱された光から、照射レーザ光とは異なる波長の散乱光を採取し、試料の特性分析を行うラマン分光装置において、
試料表面からの散乱光を集光する集光手段と、
前記集光手段により集光された散乱光から迷光を除去するスリットを有するアパーチャーと、
該アパーチャーを介した散乱光を分光し、ラマン光を採取する分光手段と、
集光手段とは反対面から前記アパーチャーを照射するアパーチャー照射用光源と、
前記試料の測定部位近傍を照明する試料照射用光源と、
前記集光手段とアパーチャーの間の光路上に配置されたモニタ用半透鏡と、
前記アパーチャー照射用光源および試料照射用光源からの光が試料に反射され、さらに前記モニタ用半透鏡に反射された光をモニタするモニタ手段と、
を備え、前記モニタ手段によって、試料照射用光源により照明された試料面と、アパーチャー照明用光源からの照明により試料面上に投影された前記アパーチャーのスリット像とが観察可能であることを特徴とするラマン分光装置。 - 請求項1記載の装置において、さらに
試料観察モードおよびラマン光測定モードの選択を可能とする操作手段と、
前記試料観察モードが選択された場合に、アパーチャー照射用光源および試料照射用光源を点灯し、試料照射用光源により照射された試料面およびアパーチャー照射用光源により形成されたアパーチャー像のモニタ手段によるモニタを可能とし、また、前記ラマン光測定モードが選択された場合に、アパーチャー照射用光源および試料用光源を消灯し、かつ分光手段に散乱光を導入する制御手段と、
を備えたことを特徴とするラマン分光装置。 - 請求項2記載の装置において、
アパーチャーと分光手段の間に配置され得る可動反射鏡を備え、
制御手段は、試料観察モードにおいて該可動反射鏡をアパーチャーと分光手段の間に配置しアパーチャー照射用光源からの光をアパーチャーに導光し、ラマン光測定モードにおいて前記可動反射鏡をアパーチャーと分光手段の間から退避させ、アパーチャーを介して得られる散乱光を分光手段に導光することを特徴とするラマン分光装置。
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