JP3667108B2 - 糸状体のガイドローラ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は繊維や伸線の製造工程において、糸条や伸線などの糸状体を案内する気体軸受け方式のガイドローラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、繊維の製造工程において、糸条の加工速度は、紡糸工程で3000m/分〜5000m/分、延伸工程では300m/分〜1000m/分と速く、近年さらに加工速度の高速化が進んでいる。
【0003】
ところで、糸条の走行を案内するガイドは、これまで固定式のものが大半を占めていたが、固定式のガイドでは糸条との摩擦抵抗が大きすぎるため、糸に与えるダメージが大きく、糸品質を低下させる要因となっていた。また、糸品種の多様化に伴って糸条の単糸数(糸条を構成するフィラメントの数)も増加する傾向にあり、その結果、単糸一本当たりの太さはより細くなるため、ガイドと糸条の摩擦抵抗が糸品質により一層大きな影響を与える要因となっていた。
【0004】
その為、糸条との摩擦抵抗を小さくして糸品質を向上させるために、軸受を用いた回転式のガイドローラも用いられているが、軸受にころがり軸受を用いたものでは前述のような高速度で糸条を案内するとローラの焼き付きによって回転が抑制され、ローラと糸条との摩擦係数が増加する結果、糸条へのダメージが次第に大きくなるとともに、遂にはローラが焼き付いて動かなくなるといった課題があった。
【0005】
そこで、このような欠点を改善するガイドローラとして、ころがり軸受に代えて気体軸受を用いたものが提案されている。
【0006】
図6に気体軸受け方式の従来のガイドローラの構造を示すように、21は糸状体の案内溝21aを備えたローラ、22は上記ローラ21に遊嵌された軸体、23,24は上記ローラ21の両側面にそれぞれ隙間26を設けて配置された2つのスラスト部材であり、上記各スラスト部材23,24の外側はカバー部材27,28によってそれぞれ包囲されている。そして、上記軸体22の外周面に形成された流体噴射口22aより流体、例えば空気を噴出させてローラ21との間に静圧流体膜を形成し、上記ローラ21を回転自在に支承するとともに、上記流体噴射口22aより噴出された流体の一部をローラ21とスラスト部材23,24との隙間26にも供給し、各スラスト部材23,24のローラ側の内面に形成されたスラスト溝23b,24bによって静圧流体膜を形成し、ローラ21がスラスト方向に移動することを規制するようになっていた。
【0007】
このような気体軸受け方式のガイドローラは、前述のような高速度で糸条を案内してもローラ21の焼き付きがなく、高品質の糸を提供できるといった利点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図6のガイドローラは、ラジアル方向の剛性は高いものの、スラスト方向は組立時におけるローラ21とスラスト部材23,24との隙間26の管理が適正でないと、ローラ21とスラスト部材23,24との隙間26に形成される静圧流体膜が不均一となり、スラスト荷重が加わるとローラ21の回転特性が不安定となり、酷いときにはニューマティックハンマーと呼ばれる激しい振動を生じたり、あるいはローラ21がスラスト部材23,24のいずれか一方と接触すると、面当たりとなるためにローラ21の回転速度が急激に低下し、ローラ21と糸条との摺動抵抗が大きくなって糸品質が低下するとともに、酷いときにはローラ21が回転しないこともあった。
【0009】
さらに、このようなガイドローラを製作するにあたっては、ローラ21、軸体22、スラスト部材23,24等の各部材を高精度に加工するとともに、ローラ21とスラスト部材23,24との隙間26管理が十分になされていないと安定したローラ21の回転特性が得られないため、ガイドローラの製作には手間がかかり、製作費もかさむといった課題があった。しかも、このようなガイドローラは定期的なメンテナンスが必要であり、その度毎に分解、組み立てを行わなければならないことから、熟練者でなければ作業することが難しかった。
【0010】
【発明の目的】
本発明は、これらの課題を一掃し、ローラの回転バラツキが少なく、安定した高速回転が可能で、かつメンテナンス性に優れたガイドローラを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、請求項1に係る発明は、糸状体の案内溝を備えたローラと、該ローラに遊嵌された軸体と、上記ローラの両側面に隙間を設けてそれぞれ配置されたスラスト部材と、上記各スラスト部材を包囲するカバー部材と、上記スラスト部材とカバー部材との間に配置されたシール部材と、上記軸体、各スラスト部材、及び各カバー部材を一体的に固定する固定用ネジとからなり、上記軸体の外周面に備える流体噴射口より流体を噴出させて前記ローラと軸体との隙間に静圧流体膜を形成するとともに、上記スラスト部材の内面に備える流体噴射口より流体を噴出させて前記ローラとスラスト部材との隙間に静圧流体膜を形成することにより上記ローラを回転自在に支承してなるガイドローラであって、上記スラスト部材を変形可能に構成することとともに、上記固定用ネジの締め付け度合いにより前記ローラとスラスト部材の上記隙間幅が前記軸体から隙間開口部に向かって次第に拡長又は縮長するよう調整可能に構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、上記スラスト部材の外側中央に凹部を形成して変形可能に構成し、上記固定用ネジの締め付け度合いにより前記ローラとスラスト部材との上記隙間幅が上記軸体から隙間開口部に向かって次第に縮長するよう調整可能に構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、上記スラスト部材の内側中央に凹部を形成して変形可能に構成し、上記固定用ネジの締め付け度合いにより前記ローラとスラスト部材との上記隙間幅が上記軸体から隙間開口部に向かって次第に拡長するよう調整可能に構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、上記スラスト部材を多孔質体により形成し、該スラスト部材の内面に開口する気孔を流体噴射口としたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、上記軸体を多孔質体により形成し、該軸体の外周面に開口する気孔を流体噴射口としたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は本発明に係る糸条体のガイドローラを示す図で、(a)は斜視図、(b)は縦断面図、図2は図1のガイドローラを示す分解斜視図であり、1は外周面に糸条体の案内溝1aを備えた円筒状のローラ、2は上記ローラ1の内孔に遊嵌される円柱状の軸体、3,4は上記ローラ1の両側面にそれぞれ隙間6を設けて配置された多孔質体からなる円板状のスラスト部材、9は一方のスラスト部材3を包囲する第1のカバー部材、10は他方のスラスト部材4を包囲する第2のカバー部材、11は上記第1のカバー部材9、スラスト部材3、軸体2、スラスト部材4、第2のカバー部材10を一体的に固定する固定用ネジである。
【0018】
上記第1のカバー部材9、スラスト部材3,4、軸体2には軸方向に流体を供給する流体供給孔2c,3c,4c,9cをそれぞれ穿設するとともに、上記軸体2には流体供給孔2cから外周面まで連通する流体導入孔2bを穿設してあり、この流体導入孔2bの出口を流体噴射口2aとしてある。そして、上記流体噴射口2aより流体を噴出させ、ローラ1との隙間5に静圧流体膜を形成することで上記ローラ1を回転自在に支承するようになっている。なお、上記軸体2はローラ1の幅より若干長くなるように構成してある。
【0019】
また、上記スラスト部材3,4の外側中央にはそれぞれ軸体2の断面積より大きな円形の凹部3a,4aを形成するとともに、第1のカバー部材9とスラスト部材3との間及び第2のカバー部材10とスラスト部材4との間にそれぞれシール部材7としてOリングを介在させてあり、第1のカバー部材9の流体供給孔9cより供給された流体が第1のカバー部材9とスラスト部材3との間及び第2のカバー部材10とスラスト部材4との間より漏れることを防ぎ、各スラスト部材3,4の内面に開口する気孔(流体噴射口)より噴出させてローラ1との隙間6に静圧流体膜を形成するようにしてある。
【0020】
そして、固定用ネジ11を仮止めした状態では図3のようにローラ1とスラスト部材3,4との隙間6はほぼ一定幅に形成されることになるが、固定用ネジ11を締め付けると、図1(b)に示すようにスラスト部材3,4の中央が軸体2によって押され、結果としてスラスト部材3,4の周縁が第1のカバー部材9及び第2のカバー部材10によってそれぞれ押圧された状態となり内側に変形するため、ローラ1とスラスト部材3,4との上記隙間幅が軸体2から隙間開口部に向かって次第に縮長した構造とすることができる。
【0021】
かくして、本発明のガイドローラにて糸条体を案内すると、ローラ1が滑らかに回転し、糸状体を高速度で案内することができる。また、何らかの拍子にローラ1がスラスト部材3,4と接触したとしても従来のように面当たりではなく、点又は線当たりになるのでローラ1の回転速度の低下や回転ムラを極力抑えることができる。
【0022】
また、本発明のガイドローラは、固定用ネジ11の締付け力を調整することで、ローラ1とスラスト部材3,4の隙間幅の拡長度合いを容易に制御することができるため、大きなスラスト剛性が得られるようにローラ1とスラスト部材3,4の隙間6の管理を容易に行うことができる。
【0023】
さらに、本発明のガイドローラでは、ローラ1、軸体2、スラスト部材3,4のそれほど厳密な寸法精度が不要であり、また、製作時やメンテナンス時において、高精度な組立て管理も不要であるため、熟練者でなくても容易に製作及びメンテナンスを施すことができる。
【0024】
ところで、上記スラスト部材3,4に形成した凹部3a,4aの穴径は、軸体2の断面積より大きく形成することが好ましく、スラスト部材3,4の変形による隙間6の管理を固定用ネジ11により容易に行うことができる。なお、スラスト部材3,4の凹部3a,4aの肉厚(凹部3a,4aの底面からローラ1側内面までの距離)は、変形し易くする観点から5mm以下とすることが良い。ただし、肉厚が薄くなり過ぎると強度を保つことが難しくなり、管理された変形度合いを維持することが難しくなるため、下限値は1mm以上とすることが良い。
【0025】
また、ローラ1の回転特性(回転バラツキ・耐荷重)を左右するローラ1と軸体2との隙間5及びローラ1とスラスト部材3,4との隙間6の幅はそれぞれ5〜20μmに管理するのが望ましい。なお、ローラ1とスラスト部材3,4との隙間6の管理においては最も狭い箇所で管理すれば良い。
【0026】
さらに、スラスト部材3,4は多孔質体により形成してあり、ローラ1側の内面に開口する気孔を流体噴射口とし、ローラ1とスラスト部材3,4との隙間6に静圧流体膜を形成するようにしてある。その為、スラスト部材3,4の内面からほぼ均一に流体を噴出させることができるためにローラ1のスラスト方向の剛性を高めることができ、以てローラ1の振動を防いでニューマティックハンマーの発生を防ぐことができる。
【0027】
このようなスラスト部材3,4を構成する多孔質体としては、平均粒径が5μm以下でかつ平均気孔径が0.4〜2μmの範囲にあるものが良く、これらの範囲にある多孔質体を用いれば前述したようなニーマティックハンマーの発生を効果的に防止することができる。
【0028】
また、ガイドローラを構成する部材のうち、ローラ1は案内溝1aが糸条体と摺動するとともに、内面が軸体2と、側面がスラスト部材3,4とそれぞれ摺動する恐れがあるため、高剛性で耐摩耗性に優れるとともに、高速回転させるために比重の小さな材料にて製作する必要があり、例えば、アルミナ、チタニア、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア等を主成分とするセラミックスを用いることができる。
【0029】
また、ローラ1と摺動する軸体2及びスラスト部材3,4も、ローラ1の回転精度に大きな影響を与える部材であることから、高精度に加工できるとともに、耐摩耗性に優れた材料により形成することが好ましく、アルミナ、チタニア、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア等を主成分とするセラミックスにより形成すれば良い。
【0030】
さらに、各カバー部材9,10は軸受けを構成するための機械的強度があれば良く、ステンレス、アルミニウム、真鍮などの金属材料であれば十分に機能を果たすことができる。
【0031】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
【0032】
図4は図1のガイドローラのうち、軸体2を多孔質体により形成したものである。このように、軸体2も多孔質体で形成することにより、軸体2の外周面に開口する気孔を流体噴射口とすることができ、ローラ1に向かって均一に流体を噴出させることができるため、均一な静圧流体膜を形成し、ローラ1の回転をより一層滑らかにすることができる。
【0033】
図5は、図1のガイドローラのうち、スラスト部材3,4に形成する凹部3a,4aを内側中央に設けたものであり、固定用ネジ11を締め付けることによりスラスト部材3,4の周縁を外側に変形させるようにし、ローラ1とスラスト部材3,4の隙間幅を軸体2から隙間開口部に向かって次第に拡長するように構成したものである。
【0034】
このような構造としてもローラ1が何らかの拍子にスラスト部材3,4と摺動したとしても面当たりではなく、点又は線当たりとすることができるため、ローラ1の回転速度の低下や回転ムラを極力抑えることができるとともに、固定用ネジ11の締付け量を調整することで、大きなスラスト剛性が得られるようにローラ1とスラスト部材3,4の隙間6の幅を容易に制御することができる。
【0035】
なお、図5に示すガイドローラの場合、その構造上の問題からネジ11の締付け力を大きくすると、ローラ1とスラスト部材3,4の間隔が内側から外側に向かって大きくなり過ぎるため、軸体2の材質にはセラミックスに比べて剛性(ヤング率)の小さなガラスや金属材料を用いたり、あるいはセラミックスや焼結金属等の多孔質体を用いることが良く、これらの材料を用いれば固定用ネジ11の締め付け力によって軸体2を若干収縮させ、ローラ1とスラスト部材3,4の隙間が大きくなり過ぎることを防ぐことができる。
【0036】
また、スラスト部材3,4の周縁を有効的に変形させるためには、スラスト部材3,4に形成する凹部3a,4aの穴径を軸体2の断面積より小さくすることが必要であり、さらに、凹部3a,4aの穴径を小さくし、ネジ11の締め付け力を大きくすることで、軸体2の収縮度合いを大きくすることができるため、結果としてローラ1とスラスト部材3,4の隙間幅を管理し易くすることができる。
【0037】
なお、スラスト部材3,4の凹部3a,4aの肉厚(凹部3a,4aの底面からローラ側内面までの距離)は図1と同様に変形のし易さと強度保持の観点から1〜5mmの範囲とすることが良い。
【0038】
【実施例】
図1及び図4に示す糸状体のガイドローラを試作し、繊維の製造工程で使用される延伸仮撚機に取り付け、上記ガイドローラに5kg/cm2 の圧縮空気を供給するとともに、糸条の加工速度を800m/分とし、ポリエステルフィラメント糸を150d/48fの条件にて加工し、その時のローラ1の回転数が10000rpm以上あるか否かを調べた。
【0039】
なお、各ガイドローラを構成するローラ1、軸体2、スラスト部材3,4はいずれも純度99.5%程度のアルミナセラミックスにより形成するとともに、各部材の寸法は以下の通りとした。
【0040】
ローラ1の外径36m、内径15mm、肉厚20mm、軸体2の外径14.980mm、長さ20.020mm、スラスト部材3,4の外径30mm、肉厚5mm、スラスト部材3,4の凹3a,4aの直径20mm、肉厚3mm(ただし、図4の構造のものはスラスト部材3,4の凹3a,4aの直径を12.5mmとした。)
この場合、ローラ1と軸体2の隙間5及びローラ1とスラスト部材3,4の隙間6は仮固定した時はいずれも隙間幅が10μmあり、固定用ネジ11の締めつけにより調整した。
【0041】
この結果、いずれのガイドローラも12500rpm程度の回数数が得られ、回転ムラや振動もなく滑らかに回転させることができた。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、糸状体の案内溝を備えたローラと、該ローラに遊嵌された軸体と、上記ローラの両側面に隙間を設けてそれぞれ配置されたスラスト部材と、上記各スラスト部材を包囲するカバー部材と、上記スラスト部材とカバー部材との間に配置されたシール部材と、上記軸体、各スラスト部材、及び各カバー部材を一体的に固定する固定用ネジとからなり、上記軸体の外周面に備える流体噴射口より流体を噴出させて前記ローラと軸体との隙間に静圧流体膜を形成するとともに、上記スラスト部材の内面に備える流体噴射口より流体を噴出させて前記ローラとスラスト部材との隙間に静圧流体膜を形成することにより上記ローラを回転自在に支承してなるガイドローラであって、上記スラスト部材を変形可能に構成することとともに、上記固定用ネジの締め付け度合いにより前記ローラとスラスト部材の上記隙間幅が前記軸体から隙間開口部に向かって次第に拡長又は縮長するよう調整可能に構成したことから、糸条体をこのガイドローラにより案内すると、ローラが滑らかに回転し、糸状体を高速度で案内することができる。また、ローラがスラスト部材と接触したとしても従来のように面当たりではなく、点又は線当たりとすることができるため、ローラの回転速度の低下や回転ムラを極力抑えることができ、以て、糸状体とローラとの摺動抵抗を極力低減し、高品質の糸状体を安定して提供することができる。
【0043】
特に、本発明は、上記スラスト部材の外側中央に凹部を形成するか、あるいは上記スラスト部材の内側中央に凹部を形成して変形可能に構成してあることから、上記固定用ネジの締め付け量を調整することによりローラとスラスト部材の隙間幅を容易に管理することができるとともに、熟練者でなくても組み立て、メンテナンスを施すことができる。
【0044】
さらに、本発明によれば、上記スラスト部材を多孔質体により形成し、該スラスト部材の内面に開口する気孔を流体噴射口としてあることから、スラスト剛性を高めることができ、ローラの振動を防いでニューマティックハンマー現象を防止することができる。
【0045】
また、本発明は、上記軸体を多孔質体により形成し、該軸体の外周面に開口する気孔を流体噴射口としてあるととから、均一な静圧流体膜を形成することができ、ローラの振動や回転ムラをより一層低減することができる。
【0046】
かくして、本発明に係る糸状体のガイドローラを、繊維製造工程のガイドローラとして用いることにより、糸条とローラとの摺動による摩擦抵抗が大幅に減少され、糸へのダメージが少なくなり、摩擦抵抗が少なくしかも安定することにより、糸条の走行時の糸張力の変動も少なくなり、品質の良い糸を製作することができるとともに、糸条の加工速度をより早めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る糸状体のガイドローラの一例を示す斜視図、(b)はその縦断面図である。
【図2】図1に示すガイドローラの分解斜視図である。
【図3】図1に示すガイドローラの組み立て時の状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る糸状体のガイドローラの他の例を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係る糸状体のガイドローラの他の例を示す縦断面図である。
【図6】従来のガイドローラを示す縦断面図である。
【符号の説明】
1・・・ローラ
2・・・軸体
2a・・・流体噴射口
2b・・・流体導入孔
2c・・・流体供給孔
3,4・・・スラスト部材
3a,4a・・・スラスト部材の凹部
3c,4c・・・流体供給孔
5・・・ローラと軸体との隙間
6・・・ローラとスラスト部材との隙間
7・・・シール部材
9・・・第1のカバー部材
10・・・第2のカバー部材
11・・・固定用ネジ
【発明の属する技術分野】
本発明は繊維や伸線の製造工程において、糸条や伸線などの糸状体を案内する気体軸受け方式のガイドローラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、繊維の製造工程において、糸条の加工速度は、紡糸工程で3000m/分〜5000m/分、延伸工程では300m/分〜1000m/分と速く、近年さらに加工速度の高速化が進んでいる。
【0003】
ところで、糸条の走行を案内するガイドは、これまで固定式のものが大半を占めていたが、固定式のガイドでは糸条との摩擦抵抗が大きすぎるため、糸に与えるダメージが大きく、糸品質を低下させる要因となっていた。また、糸品種の多様化に伴って糸条の単糸数(糸条を構成するフィラメントの数)も増加する傾向にあり、その結果、単糸一本当たりの太さはより細くなるため、ガイドと糸条の摩擦抵抗が糸品質により一層大きな影響を与える要因となっていた。
【0004】
その為、糸条との摩擦抵抗を小さくして糸品質を向上させるために、軸受を用いた回転式のガイドローラも用いられているが、軸受にころがり軸受を用いたものでは前述のような高速度で糸条を案内するとローラの焼き付きによって回転が抑制され、ローラと糸条との摩擦係数が増加する結果、糸条へのダメージが次第に大きくなるとともに、遂にはローラが焼き付いて動かなくなるといった課題があった。
【0005】
そこで、このような欠点を改善するガイドローラとして、ころがり軸受に代えて気体軸受を用いたものが提案されている。
【0006】
図6に気体軸受け方式の従来のガイドローラの構造を示すように、21は糸状体の案内溝21aを備えたローラ、22は上記ローラ21に遊嵌された軸体、23,24は上記ローラ21の両側面にそれぞれ隙間26を設けて配置された2つのスラスト部材であり、上記各スラスト部材23,24の外側はカバー部材27,28によってそれぞれ包囲されている。そして、上記軸体22の外周面に形成された流体噴射口22aより流体、例えば空気を噴出させてローラ21との間に静圧流体膜を形成し、上記ローラ21を回転自在に支承するとともに、上記流体噴射口22aより噴出された流体の一部をローラ21とスラスト部材23,24との隙間26にも供給し、各スラスト部材23,24のローラ側の内面に形成されたスラスト溝23b,24bによって静圧流体膜を形成し、ローラ21がスラスト方向に移動することを規制するようになっていた。
【0007】
このような気体軸受け方式のガイドローラは、前述のような高速度で糸条を案内してもローラ21の焼き付きがなく、高品質の糸を提供できるといった利点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図6のガイドローラは、ラジアル方向の剛性は高いものの、スラスト方向は組立時におけるローラ21とスラスト部材23,24との隙間26の管理が適正でないと、ローラ21とスラスト部材23,24との隙間26に形成される静圧流体膜が不均一となり、スラスト荷重が加わるとローラ21の回転特性が不安定となり、酷いときにはニューマティックハンマーと呼ばれる激しい振動を生じたり、あるいはローラ21がスラスト部材23,24のいずれか一方と接触すると、面当たりとなるためにローラ21の回転速度が急激に低下し、ローラ21と糸条との摺動抵抗が大きくなって糸品質が低下するとともに、酷いときにはローラ21が回転しないこともあった。
【0009】
さらに、このようなガイドローラを製作するにあたっては、ローラ21、軸体22、スラスト部材23,24等の各部材を高精度に加工するとともに、ローラ21とスラスト部材23,24との隙間26管理が十分になされていないと安定したローラ21の回転特性が得られないため、ガイドローラの製作には手間がかかり、製作費もかさむといった課題があった。しかも、このようなガイドローラは定期的なメンテナンスが必要であり、その度毎に分解、組み立てを行わなければならないことから、熟練者でなければ作業することが難しかった。
【0010】
【発明の目的】
本発明は、これらの課題を一掃し、ローラの回転バラツキが少なく、安定した高速回転が可能で、かつメンテナンス性に優れたガイドローラを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、請求項1に係る発明は、糸状体の案内溝を備えたローラと、該ローラに遊嵌された軸体と、上記ローラの両側面に隙間を設けてそれぞれ配置されたスラスト部材と、上記各スラスト部材を包囲するカバー部材と、上記スラスト部材とカバー部材との間に配置されたシール部材と、上記軸体、各スラスト部材、及び各カバー部材を一体的に固定する固定用ネジとからなり、上記軸体の外周面に備える流体噴射口より流体を噴出させて前記ローラと軸体との隙間に静圧流体膜を形成するとともに、上記スラスト部材の内面に備える流体噴射口より流体を噴出させて前記ローラとスラスト部材との隙間に静圧流体膜を形成することにより上記ローラを回転自在に支承してなるガイドローラであって、上記スラスト部材を変形可能に構成することとともに、上記固定用ネジの締め付け度合いにより前記ローラとスラスト部材の上記隙間幅が前記軸体から隙間開口部に向かって次第に拡長又は縮長するよう調整可能に構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、上記スラスト部材の外側中央に凹部を形成して変形可能に構成し、上記固定用ネジの締め付け度合いにより前記ローラとスラスト部材との上記隙間幅が上記軸体から隙間開口部に向かって次第に縮長するよう調整可能に構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、上記スラスト部材の内側中央に凹部を形成して変形可能に構成し、上記固定用ネジの締め付け度合いにより前記ローラとスラスト部材との上記隙間幅が上記軸体から隙間開口部に向かって次第に拡長するよう調整可能に構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、上記スラスト部材を多孔質体により形成し、該スラスト部材の内面に開口する気孔を流体噴射口としたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、上記軸体を多孔質体により形成し、該軸体の外周面に開口する気孔を流体噴射口としたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は本発明に係る糸条体のガイドローラを示す図で、(a)は斜視図、(b)は縦断面図、図2は図1のガイドローラを示す分解斜視図であり、1は外周面に糸条体の案内溝1aを備えた円筒状のローラ、2は上記ローラ1の内孔に遊嵌される円柱状の軸体、3,4は上記ローラ1の両側面にそれぞれ隙間6を設けて配置された多孔質体からなる円板状のスラスト部材、9は一方のスラスト部材3を包囲する第1のカバー部材、10は他方のスラスト部材4を包囲する第2のカバー部材、11は上記第1のカバー部材9、スラスト部材3、軸体2、スラスト部材4、第2のカバー部材10を一体的に固定する固定用ネジである。
【0018】
上記第1のカバー部材9、スラスト部材3,4、軸体2には軸方向に流体を供給する流体供給孔2c,3c,4c,9cをそれぞれ穿設するとともに、上記軸体2には流体供給孔2cから外周面まで連通する流体導入孔2bを穿設してあり、この流体導入孔2bの出口を流体噴射口2aとしてある。そして、上記流体噴射口2aより流体を噴出させ、ローラ1との隙間5に静圧流体膜を形成することで上記ローラ1を回転自在に支承するようになっている。なお、上記軸体2はローラ1の幅より若干長くなるように構成してある。
【0019】
また、上記スラスト部材3,4の外側中央にはそれぞれ軸体2の断面積より大きな円形の凹部3a,4aを形成するとともに、第1のカバー部材9とスラスト部材3との間及び第2のカバー部材10とスラスト部材4との間にそれぞれシール部材7としてOリングを介在させてあり、第1のカバー部材9の流体供給孔9cより供給された流体が第1のカバー部材9とスラスト部材3との間及び第2のカバー部材10とスラスト部材4との間より漏れることを防ぎ、各スラスト部材3,4の内面に開口する気孔(流体噴射口)より噴出させてローラ1との隙間6に静圧流体膜を形成するようにしてある。
【0020】
そして、固定用ネジ11を仮止めした状態では図3のようにローラ1とスラスト部材3,4との隙間6はほぼ一定幅に形成されることになるが、固定用ネジ11を締め付けると、図1(b)に示すようにスラスト部材3,4の中央が軸体2によって押され、結果としてスラスト部材3,4の周縁が第1のカバー部材9及び第2のカバー部材10によってそれぞれ押圧された状態となり内側に変形するため、ローラ1とスラスト部材3,4との上記隙間幅が軸体2から隙間開口部に向かって次第に縮長した構造とすることができる。
【0021】
かくして、本発明のガイドローラにて糸条体を案内すると、ローラ1が滑らかに回転し、糸状体を高速度で案内することができる。また、何らかの拍子にローラ1がスラスト部材3,4と接触したとしても従来のように面当たりではなく、点又は線当たりになるのでローラ1の回転速度の低下や回転ムラを極力抑えることができる。
【0022】
また、本発明のガイドローラは、固定用ネジ11の締付け力を調整することで、ローラ1とスラスト部材3,4の隙間幅の拡長度合いを容易に制御することができるため、大きなスラスト剛性が得られるようにローラ1とスラスト部材3,4の隙間6の管理を容易に行うことができる。
【0023】
さらに、本発明のガイドローラでは、ローラ1、軸体2、スラスト部材3,4のそれほど厳密な寸法精度が不要であり、また、製作時やメンテナンス時において、高精度な組立て管理も不要であるため、熟練者でなくても容易に製作及びメンテナンスを施すことができる。
【0024】
ところで、上記スラスト部材3,4に形成した凹部3a,4aの穴径は、軸体2の断面積より大きく形成することが好ましく、スラスト部材3,4の変形による隙間6の管理を固定用ネジ11により容易に行うことができる。なお、スラスト部材3,4の凹部3a,4aの肉厚(凹部3a,4aの底面からローラ1側内面までの距離)は、変形し易くする観点から5mm以下とすることが良い。ただし、肉厚が薄くなり過ぎると強度を保つことが難しくなり、管理された変形度合いを維持することが難しくなるため、下限値は1mm以上とすることが良い。
【0025】
また、ローラ1の回転特性(回転バラツキ・耐荷重)を左右するローラ1と軸体2との隙間5及びローラ1とスラスト部材3,4との隙間6の幅はそれぞれ5〜20μmに管理するのが望ましい。なお、ローラ1とスラスト部材3,4との隙間6の管理においては最も狭い箇所で管理すれば良い。
【0026】
さらに、スラスト部材3,4は多孔質体により形成してあり、ローラ1側の内面に開口する気孔を流体噴射口とし、ローラ1とスラスト部材3,4との隙間6に静圧流体膜を形成するようにしてある。その為、スラスト部材3,4の内面からほぼ均一に流体を噴出させることができるためにローラ1のスラスト方向の剛性を高めることができ、以てローラ1の振動を防いでニューマティックハンマーの発生を防ぐことができる。
【0027】
このようなスラスト部材3,4を構成する多孔質体としては、平均粒径が5μm以下でかつ平均気孔径が0.4〜2μmの範囲にあるものが良く、これらの範囲にある多孔質体を用いれば前述したようなニーマティックハンマーの発生を効果的に防止することができる。
【0028】
また、ガイドローラを構成する部材のうち、ローラ1は案内溝1aが糸条体と摺動するとともに、内面が軸体2と、側面がスラスト部材3,4とそれぞれ摺動する恐れがあるため、高剛性で耐摩耗性に優れるとともに、高速回転させるために比重の小さな材料にて製作する必要があり、例えば、アルミナ、チタニア、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア等を主成分とするセラミックスを用いることができる。
【0029】
また、ローラ1と摺動する軸体2及びスラスト部材3,4も、ローラ1の回転精度に大きな影響を与える部材であることから、高精度に加工できるとともに、耐摩耗性に優れた材料により形成することが好ましく、アルミナ、チタニア、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア等を主成分とするセラミックスにより形成すれば良い。
【0030】
さらに、各カバー部材9,10は軸受けを構成するための機械的強度があれば良く、ステンレス、アルミニウム、真鍮などの金属材料であれば十分に機能を果たすことができる。
【0031】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
【0032】
図4は図1のガイドローラのうち、軸体2を多孔質体により形成したものである。このように、軸体2も多孔質体で形成することにより、軸体2の外周面に開口する気孔を流体噴射口とすることができ、ローラ1に向かって均一に流体を噴出させることができるため、均一な静圧流体膜を形成し、ローラ1の回転をより一層滑らかにすることができる。
【0033】
図5は、図1のガイドローラのうち、スラスト部材3,4に形成する凹部3a,4aを内側中央に設けたものであり、固定用ネジ11を締め付けることによりスラスト部材3,4の周縁を外側に変形させるようにし、ローラ1とスラスト部材3,4の隙間幅を軸体2から隙間開口部に向かって次第に拡長するように構成したものである。
【0034】
このような構造としてもローラ1が何らかの拍子にスラスト部材3,4と摺動したとしても面当たりではなく、点又は線当たりとすることができるため、ローラ1の回転速度の低下や回転ムラを極力抑えることができるとともに、固定用ネジ11の締付け量を調整することで、大きなスラスト剛性が得られるようにローラ1とスラスト部材3,4の隙間6の幅を容易に制御することができる。
【0035】
なお、図5に示すガイドローラの場合、その構造上の問題からネジ11の締付け力を大きくすると、ローラ1とスラスト部材3,4の間隔が内側から外側に向かって大きくなり過ぎるため、軸体2の材質にはセラミックスに比べて剛性(ヤング率)の小さなガラスや金属材料を用いたり、あるいはセラミックスや焼結金属等の多孔質体を用いることが良く、これらの材料を用いれば固定用ネジ11の締め付け力によって軸体2を若干収縮させ、ローラ1とスラスト部材3,4の隙間が大きくなり過ぎることを防ぐことができる。
【0036】
また、スラスト部材3,4の周縁を有効的に変形させるためには、スラスト部材3,4に形成する凹部3a,4aの穴径を軸体2の断面積より小さくすることが必要であり、さらに、凹部3a,4aの穴径を小さくし、ネジ11の締め付け力を大きくすることで、軸体2の収縮度合いを大きくすることができるため、結果としてローラ1とスラスト部材3,4の隙間幅を管理し易くすることができる。
【0037】
なお、スラスト部材3,4の凹部3a,4aの肉厚(凹部3a,4aの底面からローラ側内面までの距離)は図1と同様に変形のし易さと強度保持の観点から1〜5mmの範囲とすることが良い。
【0038】
【実施例】
図1及び図4に示す糸状体のガイドローラを試作し、繊維の製造工程で使用される延伸仮撚機に取り付け、上記ガイドローラに5kg/cm2 の圧縮空気を供給するとともに、糸条の加工速度を800m/分とし、ポリエステルフィラメント糸を150d/48fの条件にて加工し、その時のローラ1の回転数が10000rpm以上あるか否かを調べた。
【0039】
なお、各ガイドローラを構成するローラ1、軸体2、スラスト部材3,4はいずれも純度99.5%程度のアルミナセラミックスにより形成するとともに、各部材の寸法は以下の通りとした。
【0040】
ローラ1の外径36m、内径15mm、肉厚20mm、軸体2の外径14.980mm、長さ20.020mm、スラスト部材3,4の外径30mm、肉厚5mm、スラスト部材3,4の凹3a,4aの直径20mm、肉厚3mm(ただし、図4の構造のものはスラスト部材3,4の凹3a,4aの直径を12.5mmとした。)
この場合、ローラ1と軸体2の隙間5及びローラ1とスラスト部材3,4の隙間6は仮固定した時はいずれも隙間幅が10μmあり、固定用ネジ11の締めつけにより調整した。
【0041】
この結果、いずれのガイドローラも12500rpm程度の回数数が得られ、回転ムラや振動もなく滑らかに回転させることができた。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、糸状体の案内溝を備えたローラと、該ローラに遊嵌された軸体と、上記ローラの両側面に隙間を設けてそれぞれ配置されたスラスト部材と、上記各スラスト部材を包囲するカバー部材と、上記スラスト部材とカバー部材との間に配置されたシール部材と、上記軸体、各スラスト部材、及び各カバー部材を一体的に固定する固定用ネジとからなり、上記軸体の外周面に備える流体噴射口より流体を噴出させて前記ローラと軸体との隙間に静圧流体膜を形成するとともに、上記スラスト部材の内面に備える流体噴射口より流体を噴出させて前記ローラとスラスト部材との隙間に静圧流体膜を形成することにより上記ローラを回転自在に支承してなるガイドローラであって、上記スラスト部材を変形可能に構成することとともに、上記固定用ネジの締め付け度合いにより前記ローラとスラスト部材の上記隙間幅が前記軸体から隙間開口部に向かって次第に拡長又は縮長するよう調整可能に構成したことから、糸条体をこのガイドローラにより案内すると、ローラが滑らかに回転し、糸状体を高速度で案内することができる。また、ローラがスラスト部材と接触したとしても従来のように面当たりではなく、点又は線当たりとすることができるため、ローラの回転速度の低下や回転ムラを極力抑えることができ、以て、糸状体とローラとの摺動抵抗を極力低減し、高品質の糸状体を安定して提供することができる。
【0043】
特に、本発明は、上記スラスト部材の外側中央に凹部を形成するか、あるいは上記スラスト部材の内側中央に凹部を形成して変形可能に構成してあることから、上記固定用ネジの締め付け量を調整することによりローラとスラスト部材の隙間幅を容易に管理することができるとともに、熟練者でなくても組み立て、メンテナンスを施すことができる。
【0044】
さらに、本発明によれば、上記スラスト部材を多孔質体により形成し、該スラスト部材の内面に開口する気孔を流体噴射口としてあることから、スラスト剛性を高めることができ、ローラの振動を防いでニューマティックハンマー現象を防止することができる。
【0045】
また、本発明は、上記軸体を多孔質体により形成し、該軸体の外周面に開口する気孔を流体噴射口としてあるととから、均一な静圧流体膜を形成することができ、ローラの振動や回転ムラをより一層低減することができる。
【0046】
かくして、本発明に係る糸状体のガイドローラを、繊維製造工程のガイドローラとして用いることにより、糸条とローラとの摺動による摩擦抵抗が大幅に減少され、糸へのダメージが少なくなり、摩擦抵抗が少なくしかも安定することにより、糸条の走行時の糸張力の変動も少なくなり、品質の良い糸を製作することができるとともに、糸条の加工速度をより早めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る糸状体のガイドローラの一例を示す斜視図、(b)はその縦断面図である。
【図2】図1に示すガイドローラの分解斜視図である。
【図3】図1に示すガイドローラの組み立て時の状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る糸状体のガイドローラの他の例を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係る糸状体のガイドローラの他の例を示す縦断面図である。
【図6】従来のガイドローラを示す縦断面図である。
【符号の説明】
1・・・ローラ
2・・・軸体
2a・・・流体噴射口
2b・・・流体導入孔
2c・・・流体供給孔
3,4・・・スラスト部材
3a,4a・・・スラスト部材の凹部
3c,4c・・・流体供給孔
5・・・ローラと軸体との隙間
6・・・ローラとスラスト部材との隙間
7・・・シール部材
9・・・第1のカバー部材
10・・・第2のカバー部材
11・・・固定用ネジ
Claims (5)
- 糸状体の案内溝を備えたローラと、該ローラに遊嵌された軸体と、上記ローラの両側面に隙間を設けてそれぞれ配置されたスラスト部材と、上記各スラスト部材を包囲するカバー部材と、上記スラスト部材とカバー部材との間に配置されたシール部材と、上記軸体、各スラスト部材、及び各カバー部材を一体的に固定する固定用ネジとからなり、上記軸体の外周面に備える流体噴射口より流体を噴出させて前記ローラと軸体との隙間に静圧流体膜を形成するとともに、上記スラスト部材の内面に備える流体噴射口より流体を噴出させて前記ローラとスラスト部材との隙間に静圧流体膜を形成することにより上記ローラを回転自在に支承してなるガイドローラであって、上記スラスト部材は変形可能に構成され、上記固定用ネジの締め付け度合いにより前記ローラとスラスト部材の上記隙間幅が前記軸体から隙間開口部に向かって次第に拡長又は縮長するよう調整可能に構成されていることを特徴とする糸状体のガイドローラ。
- 上記スラスト部材の外側中央に凹部を形成して変形可能に構成され、上記固定用ネジの締め付け度合いにより前記ローラとスラスト部材との上記隙間幅が上記軸体から隙間開口部に向かって次第に縮長するよう調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の糸状体のガイドローラ。
- 上記スラスト部材の内側中央に凹部を形成して変形可能に構成され、上記固定用ネジの締め付け度合いにより前記ローラとスラスト部材との上記隙間幅が上記軸体から隙間開口部に向かって次第に拡長するよう調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の糸状体のガイドローラ。
- 上記スラスト部材を多孔質体により形成し、該スラスト部材の内面に開口する気孔を流体噴射口としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の糸状体のガイドローラ。
- 上記軸体を多孔質体により形成し、該軸体の外周面に開口する気孔を流体噴射口としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の糸状体のガイドローラ。
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