JP3665510B2 - 放電ランプ装置用アークチューブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極棒とモリブデン箔とリード線が直列に接続一体化された電極アッシーの少なくともモリブデン箔を含む領域が両端ピンチシール部に封着されて、発光物質等を封止した中央の密閉チャンバー部内に前記電極棒が対設された放電ランプ装置用アークチューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は従来の放電ランプ装置であり、アークチューブ5の前端部は絶縁性ベース1の前方に突出する一本のリードサポート2によって支持され、アークチューブ5の後端部はベース1の凹部1aで支持され、アークチューブの後端部寄りが絶縁性ベース1の前面に固定された金属製支持部材Sによって、把持された構造となっている。アークチューブ5から導出する前端側リード線8は、溶接によってリードサポート2に固定され、一方、後端側リード線8は、ベース1の凹部1a形成底面壁1bを貫通し、底面壁1bに設けられている端子3に、溶接により固定されている。符号Gは、アークチューブ5から発した光の中で、人体に有害な波長域の紫外線成分をカットする円筒形状の紫外線遮蔽用グローブで、アークチューブ5に溶着一体化されている。
【0003】
そしてアークチューブ5は、前後一対のピンチシール部5b,5b間に、電極棒6,6を対設しかつ発光物質を封入した密閉チャンバー部5aが形成された構造となっている。ピンチシール部5b内には、密閉チャンバー部5a内に突出する電極棒6とピンチシール部5bから導出するリード線8とを接続するモリブデン箔7が封着されており、ピンチシール部5bにおける気密性が確保されている。
【0004】
即ち、電極棒6としては、耐久性に優れたタングステン製が最も望ましいが、タングステンはアークチューブを構成する石英ガラスと線膨張係数が大きく異なり、石英ガラスとのなじみも悪く気密性に劣る。したがって、タングステン製電極棒6に、線膨張係数がガラスに近く、ガラスと比較的なじみの良いモリブデン箔7を接続し、モリブデン箔7をピンチシール部5bで封着することで、ピンチシール部5bにおける気密性を確保するようになっている。
【0005】
またこのアークチューブ5の製造方法としては、まず図7(a)に示されるように、直線状延出部w1 の途中に球状膨出部w2 の形成されている円筒形ガラス管Wの一方の開口端側から、電極棒6とモリブデン箔7とリード線8を接続一体化した電極アッシーAを挿入し、球状膨出部w2 の近傍位置q1 を一次ピンチシールする。次いで、図7(b)に示されるように、他方の開口端側から、球状膨出部w2 に発光物質P等を投入し、つづいて図7(c)に示されるように、他の電極アッシーAを挿入した後、発光物質等が気化しないように球状膨出部w2 を液体窒素で冷却しながら、球状膨出部w2 の近傍位置q2 を加熱しつつ二次ピンチシールして、球状膨出部w2 を密封することで、チップレス密閉チャンバー部5aをもつアークチューブ5が完成する。なお、図7(b)に示す一次ピンチシール工程は、電極アッシーAが酸化されないように、不活性ガス(一般には、安価なアルゴンガスまたは窒素ガス)をフォーミングガスとしてガラス管W内へ供給しつつ、ピンチシールを行なう。また図7(c)に示す二次ピンチシール工程では、発光物質等を気化させないように、開口端を閉じ、液体窒素で冷却するため、真空に近い状態でピンチシールが行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のアークチューブでは、アークチューブの点灯時と消灯時での温度差が大きく、線膨張係数が大きく異なる電極棒とガラス層間には、点灯時に熱応力が生じる。特に、近年のアークチューブは瞬時点灯ができるように構成されており、温度上昇率が大きく、熱応力が急激に生じる。そして、この状態が繰り返されると、電極棒6を封着するピンチシール部(ガラス層)にクラックが発生し、封止物質がリークし、点灯不良や寿命の低下につながるという問題があった。
【0007】
そこで発明者は、前記した従来技術の問題点につき実験と考察を重ねた結果、アークチューブの製造過程においてピンチシール部5bに生じた圧縮歪が所定の領域にわたって残っている場合の方が、アークチューブの点灯に伴う温度上昇に伴ってピンチシール部のガラス層に生じる熱応力が分散されるので、それだけピンチシール部のガラス層にクラックが生じにくく、アークチューブの寿命が延びる、ということを確認し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
即ち、本発明は前記した従来技術の問題点および発明者の知見に基づいてなされたもので、その目的は、点消灯時の熱応力の変化によってピンチシール部にクラックが生じるおそれのない放電ランプ装置用アークチューブを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用】
前記目的を達成するために、請求項1に係る放電ランプ装置用アークチューブにおいては、電極棒とモリブデン箔とリード線が直列に接続一体化された電極アッシーの少なくともモリブデン箔を含む領域が両端ピンチシール部に封着されて、発光物質等を封止した中央の密閉チャンバー部内に前記電極棒が対設されるとともに、両端ピンチシール部から前記リード線がそれぞれ導出する放電ランプ装置用アークチューブにおいて、前記ピンチシール部におけるガラス層の前記電極棒との密着面には、残留圧縮歪層が形成され、前記残留圧縮歪層は、電極棒のみに密着するガラス層領域の軸方向長さの約30%以上の長さにわたって、または/および電極棒の周方向約180度以上の角度範囲にわたって形成されされるとともに、前記残留圧縮歪層には、残留圧縮歪層の外周面に沿った境界クラックが形成されたことを特徴とする。
(作用)ピンチシール部におけるガラス層の電極棒との密着面に形成される残留圧縮歪層の構成としては、前記残留圧縮歪層を、電極棒のみに密着するガラス層領域の軸方向長さの約30%以上の長さにわたって形成する第1の構造と、前記残留圧縮歪層を、電極棒の周方向約180度以上の角度範囲にわたって形成する第2の構造と、前記残留圧縮歪層を、電極棒のみに密着するガラス層領域の軸方向長さの約30%以上の長さに、しかも電極棒の周方向約180度以上の角度範囲にわたって形成する第3の構造とがある。
ピンチシール直後のガラス層と電極棒間の境界には、熱応力が生じていないが、常温に戻ると、電極棒(タングステン)とガラス(石英ガラス)の境界には、両者の線膨張係数差に対応した熱応力(電極棒側には引張応力、ガラス層には圧縮応力)が作用し、ある程度の歪(電極棒には残留引張歪、ガラス層には残留圧縮歪)が生じたままの形態となる。そして、点灯時のアークチューブの温度は、ピンチシール部をピンチシールする時の温度以上には上昇しないので、ガラス層における残留圧縮歪層が広範囲にまたがって形成されている場合には、点灯によってアークチューブのガラス層に生じる熱応力は、軸方向,周方向のいずれの方向においても、予め非点灯時のピンチシール部のガラス層に残留している圧縮歪を低下させるように作用する。
即ち、点灯時のピンチシール部におけるガラス層には、この残留圧縮歪を緩和する方向の熱応力(引張熱応力)が作用する。そして、この残留圧縮歪層が小さい場合には、ここに熱応力が集中し、点灯と消灯が繰り返されることで熱応力が繰り返し作用し、封止物質のリークにつながるクラックが発生するおそれがある。詳細には、残留圧縮歪層の軸方向長さが電極棒のみに密着するガラス層領域の軸方向長さの30%より短いと、軸方向の熱応力を十分に吸収できず、残留圧縮歪層に応力が集中して、ガラス層に封止物質のリークにつながる縦クラックが生じるおそれがある。また残留圧縮歪層の電極棒周り周方向角度範囲が約180度より小さいと、周方向の熱応力を十分に吸収できず、残留圧縮歪層に応力が集中して、ガラス層に封止物質のリークにつながる縦クラックが生じるおそれがある。
しかし、ガラス層の電極棒との密着面には、予め圧縮歪層が軸方向または/および周方向の所定の広範囲な領域にわたって形成されており、この広範囲な圧縮歪層(残留圧縮歪層)が、温度上昇に伴ってガラス層に発生する熱応力を効率よく緩和(吸収)する。
換言すれば、所定の広範囲にわたって存在する残留圧縮歪層によって、繰り返し発生する熱応力が分散されてガラス層側に伝達されるため、ガラス層には封止物質のリークにつながる縦クラックが発生しない。
さらに、点灯時における電極棒とガラス層の境界に作用する熱応力は、境界クラックに沿ってガラス層が相対的に滑ることで、吸収される。
請求項2では、請求項1に記載の放電ランプ装置用アークチューブにおいて、前記ピンチシール部の少なくとも電極棒封着領域を、2000〜2300℃、好ましくは2100〜2200℃でピンチシールするように構成した。
(作用)石英ガラスは、その軟化点が1600℃、加工可能温度が1800℃であり、ガラス管(被ピンチシール部)の温度が2000℃以下では、ガラス層内部(電極棒に臨む側)の温度が電極棒との密着性を確保するに十分な温度とならず、電極棒の軸方向および周方向に広範囲な残留圧縮歪層を形成するには、ピンチシール部の少なくとも電極棒封着領域を、2000℃以上、好ましくは2100℃以上の温度でピンチシールすることが望ましい。
一方、ガラス管(被ピンチシール部)の温度が2300℃以上では、残留圧縮歪層を拡大する上で効果がなく、ガラス管をピンチシールするピンチャーやピンチシール工程の際のアークチューブ支持部材に対しての耐熱性の要求も厳しくなり、しかもガラス管を加熱するための熱カロリーもそれだけ多く必要となるため、無駄であり、熱効率よく広範囲な残留圧縮歪層を形成するには、ピンチシール部の少なくとも電極棒封着領域を、2300℃以下、好ましくは2200℃以下の温度でピンチシールすることが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図5は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明の一実施例である放電ランプ装置用アークチューブの縦断面図、図2は同アークチューブのピンチシール部の要部拡大断面図、図3はピンチシール部の横断面図(図2に示す線III−IIIに沿う断面図)、図4は圧縮歪層に形成された境界クラックに沿ってガラス層が滑る現象を説明する説明図、図5は本実施例に示すアークチューブの製造工程説明図である。
【0012】
これらの図において、アークチューブ10の装着される放電ランプ装置は、図6に示す従来構造と同一であり、その説明は省略する。
【0013】
アークチューブ10は、直線状延出部w1 の長手方向途中に球状膨出部w2 が形成された円パイプ形状の石英ガラス管Wの球状膨出部w2 寄りがピンチシールされて、放電空間を形成する楕円体形状のチップレス密閉チャンバー部12の両端部に横断面矩形状のピンチシール部13,13が形成された構造で、密閉チャンバー部12内には、始動用希ガス,水銀及び金属ハロゲン化物(以下、発光物質等という)が封入されている。
【0014】
また密閉チャンバー部12内には、放電電極を構成するタングステン製の電極棒6,6が対向配置されており、電極棒6,6はピンチシール部13に封着されたモリブデン箔7に接続され、ピンチシール部13,13の端部からはモリブデン箔7,7に接続されたモリブテン製リード線8,8が導出し、後端側リード線8は非ピンチシール部である円パイプ形状部14を挿通して外部に延びている。
【0015】
図1に示すアークチューブ10の外観構造については、図6に示す従来のアークチューブ5と一見したところ変わるものではないが、タングステン製の電極棒6の外周面には、石英ガラスとのなじみをもたせるために、強電解研磨によって微細な凹凸が形成されるとともに、ピンチシール部13のガラス層における電極棒6に密着する領域には、ガラス管を真空にした状態でピンチシールすることで、電極棒6との密着度が特に高い所定の大きさの残留圧縮歪層16が形成された構造となっている。
【0016】
残留圧縮歪層16は、図2,3に示すように、電極棒6に沿って、しかも電極棒6を取り囲むように延びており、その軸方向の長さL1は、電極棒6のみに密着するガラス層領域の軸方向長さL 2 の約30%以上あって、電極棒6の周方向約180度以上の角度範囲θ1にわたって形成されている。
【0017】
ピンチシールされた直後のガラス層15と電極棒6間の境界には、熱応力が生じていないが、常温に戻ると、電極棒(タングステン)6とガラス(石英ガラス)の境界には、両者の線膨張係数差(45×10-71/℃,5×10-71/℃)に対応した熱応力(電極棒側には引張応力、ガラス層には圧縮応力)が作用し、電極棒6には残留引張歪、ガラス層には残留圧縮歪が生じた形態となっている。
【0018】
そして、ガラス層における残留圧縮歪層16が広範囲にまたがって形成されており、しかも点灯時のアークチューブ10(ピンチシール部13)の温度は、ピンチシール部13をピンチシールする時の温度以上には上昇しないので、点灯によってピンチシール部13のガラス層15に生じる熱応力は、軸方向,周方向のいずれの方向においても、ピンチシール部13のガラス層15に残留している圧縮歪を低下させるように作用する。
【0019】
即ち、点灯時のピンチシール部におけるガラス層15には、この残留圧縮歪を緩和する方向の熱応力(引張熱応力)が作用する。そして、この残留圧縮歪層16における電極棒6の軸方向および周方向への広がりが小さい場合には、残留圧縮層16に熱応力が集中し、点灯が繰り返されることで熱応力が繰り返し作用し、ガラス層15には封止物質のリークにつながる縦クラックが発生するおそれがある。しかし、ガラス層15の電極棒6との密着面には、電極棒6との密着度の特に高い残留圧縮歪層16が、電極棒6の軸方向にL1≧0.3L 2 で、電極棒6の周方向にθ1≧180度という広範囲にわたって形成されており、この広範囲の圧縮歪層(残留圧縮歪層)16が、温度上昇に伴ってガラス層15に発生する熱応力を効率よく緩和(吸収)する。
【0020】
換言すれば、広範囲にわたって存在する残留圧縮歪層16によって、繰り返し発生する熱応力が分散されてガラス層15側に伝達されるため、ガラス層15には封止物質のリークにつながるような縦クラックが発生しないのである。
【0021】
また、残留圧縮歪層16には、電極棒6を取り囲み軸方向に円弧状(筒状)に延びる、肉眼でも観察できる境界クラック17が形成されており、点灯時における電極棒6とガラス層15の境界に作用する熱応力は、境界クラック17に沿ってガラス層15a,15bが相対的に滑ることで、吸収されるようになっている。
【0022】
即ち、点灯時には、ピンチシール部13におけるガラス層15と電極棒6間の境界に熱応力が発生するが、図4に拡大して示すように、電極棒6に密着一体化した境界クラック17内側のガラス層15bが、境界クラック17外側のガラス層15aに対し滑り、電極棒6とガラス層15の境界に作用する熱応力は、この境界クラック17で吸収されてしまうので、封止物質のリークにつながるような縦クラックがガラス層15に発生するおそれがない。
【0023】
また、ピンチシール部13のガラス層15内に軸方向長さL1≧0.3L 2 で、かつθ1≧180度という大きさの残留圧縮歪層16を形成するには、後述するアークチューブ製造工程において、ガラス管(被ピンチシール部)を2000〜2300℃、好ましくは2100〜2200℃の範囲でピンチシールすることが望ましい。
【0024】
また、発明者が行なったEUスイッチングモード加速試験によれば、L1≧0.3L 2 かつθ1≧180度の大きさの残留圧縮歪層16が形成されたアークチューブの平均寿命は、1156時間であったのに対し、残留圧縮層16の大きさがL1<0.3L 2 かつθ1<180度という比較例であるアークチューブの平均寿命は、483時間であった。
【0025】
即ち、このEUスイッチングモード加速試験によれば、本実施例のアークチューブでは、従来のアークチューブの寿命の3倍弱であることから、通常の使い方をした場合には、従来のアークチューブに比べてその寿命が著しく長いといえる。
【0026】
次に、図1に示すチップレス密閉チャンバー部12をもつアークチューブの製造工程を、図5に基づいて説明する。
【0027】
まず、直線状延出部w1 の途中に球状膨出部w2 の形成されたガラス管Wを予め製造しておく。そして、図5(a)に示されるように、ガラス管Wを垂直に保持し、ガラス管Wの下方の開口端側から、電極アッシーAを挿入して所定位置に保持するとともに、ガラス管Wの上方開口端に不活性ガス(アルゴンガスまたは窒素ガス)供給ノズル40を差し込む。さらに、ガラス管Wの下端部を不活性ガス(アルゴンガスまたは窒素ガス)供給パイプ50内に挿入する。
【0028】
ノズル40から供給される不活性ガスは、ピンチシール時の電極アッシーAが酸化されるのを防止するためのものである。ガス供給パイプ50から供給される不活性ガスは、ピンチシールの際、およびピンチシール後のリード線8が高温状態にある間、リード線8を不活性ガス雰囲気に保持して、リード線8の酸化を防止するものである。なお図5(a)における符号42,52は不活性ガスの充填されたガスボンベ、符号44,54はガス圧調整器、符号22はガラス管把持部材である。
【0029】
そして、図5(a)に示されるように、ノズル40から不活性ガスをガラス管W内に供給しつつ、さらに、パイプ50から不活性ガスをガラス管Wの下端部に供給しつつ、直線状延出部w1 における球状膨出部w2 の近傍位置(モリブデン箔を含む位置)をバーナ24aで2100℃に加熱し、ピンチャー26aでモリブデン箔7のリード線8接続側を仮ピンチシールする。
【0030】
次に、仮ピンチシールが終わると、図5(b)に示されるように、真空ポンプ(図示せず)によって、ガラス管W内を真空(400Torr以下の圧力)に保持し、バーナ24bで2100℃に加熱し、ピンチャー26bでモリブデン箔7を含む未ピンチシール部を本ピンチシールする。なお、ガラス管W内に作用させる真空度は、400Torr〜4×10-3Torrが望ましい。
【0031】
これにより、一次ピンチシール部13では、ガラス層15が電極アッシーAを構成する電極棒6とモリブデン箔7とリード線8に密着した状態となる。特に、本ピンチシールされた部位では、ガラス層15が電極棒6とモリブデン箔7に隙間なく密着して十分に馴染むため、ガラス層15とモリブデン箔7(電極棒6)間が強固に接合された形態となる。そして、この一次ピンチシール部が冷えると、所定の大きさの残留圧縮歪層16が形成され、この残留圧縮歪層16内には、境界クラック17が形成される。
【0032】
なお、この本ピンチシール工程においても、ガラス管Wの下方開口部を不活性ガス(アルゴンガスまたは窒素ガス)雰囲気に保持することで、リード線8の酸化を防ぐことができる。
次に、図5(c)に示されるように、ガラス管Wの上方の開口端側から、球状膨出部w2 に発光物質P等を投入し、電極棒6とモリブデン箔7とリード線8が接続一体化された他の電極アッシーA’を挿入して所定位置に保持する。
【0033】
リード線8には、長手方向途中にW字形状の屈曲部8bが設けられており、この屈曲部8bがガラス管Wの内周面に圧接された形態となって、直線状延出部w1の長手方向所定位置に電極アッシーA’を位置決め保持することができる。
【0034】
そしてガラス管W内を排気した後、図5(d)に示されるように、ガラス管W内にキセノンガスを供給しつつ、ガラス管Wの上方所定部位をチップオフすることで、ガラス管W内にリードワイヤ付電極アッシーA’を仮止めし、かつ発光物質等を封止する。符号W3は、チップオフ部を示す。
【0035】
その後、図5(e)に示すように、発光物質P等が気化しないように球状膨出部w2 を液体窒素(LN2 )で冷却しながら、直線状延出部w1 における球状膨出部w2 の近傍位置(モリブデン箔を含む位置)をバーナー24で2100℃に加熱し、ピンチャー26cで二次ピンチシールして、球状膨出部w2 を密封することで、電極6,6が対設され発光物質P等が封止されたチップレス密閉チャンバー部12をもつアークチューブができ上がる。
【0036】
なお、二次ピンチシール工程では、一次ピンチシール工程の本ピンチシールのように、真空ポンプでガラス管W内を負圧にするまでもなく、ガラス管W内に封止されているキセノンガスを液化させることによりガラス管W内は負圧(約400Torr)に保持されるので、二次ピンチシール13B部におけるガラス層の電極アッシーA’(電極棒6,モリブデン箔7,リード線8)への密着度は優れたものとなっている。
【0037】
即ち、一次ピンチシール工程における本ピンチシールの場合と同様、加熱されて軟化したガラス層には、ピンチャー26cの押圧力に加えて負圧も作用するため、ガラス層が電極棒6,モリブデン箔7,リード線8に隙間なく密着して馴染み、ガラス層と電極棒6,モリブデン箔7,リード線8間は強固に接合された形態となる。このため、この二次ピンチシール部13が冷えると、一次ピンチシール部13に形成されたと同様の残留圧縮歪層16や境界クラック17が形成される。
【0038】
そして最後に、アークチューブの端部を所定の長さだけ切断することにより、図1に示すアークチューブ10が得られる。そして、製造されたアークチューブのピンチシール部に設けられた残留圧縮歪層16の大きさを歪計(図示せず)で測定し、圧縮残留歪層16が所定の大きさ以上であれば、合格となり、所定の大きさ以下であれば、不合格となる。
【0039】
なお、前記実施例では、前後端側の両方のピンチシール部13におけるガラス層15の電極棒6に密着する側に所定の大きさの残留圧縮歪層16が形成され、さらに残留圧縮歪層16内には境界クラック17が形成された構造となっているが、残留圧縮歪層16内に境界クラック17が形成されていない構造であってもよい。
【0040】
また、前記実施例では、ピンチシール部13におけるガラス層15の電極棒6に密着する側に形成された残留圧縮歪層16は、軸方向に所定の長さL1をもち、かつ周方向にも所定の角度θ1をもつ、として説明したが、軸方向にのみ所定の長さL1をもつ場合や、周方向にのみ所定の角度θ1をもつ場合であってもよい。
【0041】
また、前記実施例では、球状膨出部w2の形成されたガラス管Wを一次ピンチシール後に二次ピンチシールすることで、電極6,6の対設されたチャンバー部12を密封して、チップレス密閉チャンバー部12をもつアークチューブを製造するように説明され、このチップレスアークチューブに本発明を適用した構成について説明しているが、本発明は、チップ部付アークチューブにも同様に適用することができる。即ち、排気管を連成した球状膨出部が長手方向途中に形成されたガラス管の両端部をピンチシールすることで、電極の対設された球状膨出部(チャンバー部)を形成し、次いで、この排気管を介して球状膨出部(チャンバー部)内に発光物質等を供給後、この排気管をチップオフすることで、チャンバー部を密封して、チップ付アークチューブを製造することができるが、このチップ部付チャンバー部をもつアークチューブについても本発明を適用できる。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る放電ランプ装置用アークチューブによれば、ピンチシール部のガラス層内において電極棒を取り囲むように形成されている残留圧縮歪層によって、アークチューブの点灯に伴ってガラス層の電極棒との境界に発生する熱応力(引張応力)が吸収、分散されるので、ピンチシール部のガラス層にはクラックが発生せず、封止物質がリークしたり、アークチューブの点灯不良や寿命が低下するなどの不具合が解消される。
さらに、アークチューブ点灯時の電極棒とガラス層の境界に作用する熱応力は、残留圧縮歪層によって吸収分散される他、境界クラックにおいても吸収分散されるので、ガラス層にクラックが発生し、封止物質がリークしたり、アークチューブの点灯不良や寿命が低下するなどの不具合が確実に解消される。
請求項2によれば、熱エネルギーを無駄にすることなく、ピンチシール部の残留圧縮歪層を所定の大きさに形成することで、長寿命のアークチューブを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である放電ランプ装置用アークチューブの縦断面図
【図2】同アークチューブのピンチシール部の要部拡大断面図
【図3】ピンチシール部の横断面図(図2に示す線III−IIIに沿う断面図)
【図4】圧縮歪層に形成された境界クラックに沿ってガラス層が滑る現象を説明する説明図
【図5】(a)一次ピンチシール工程説明図
(b)発光物質等の投入工程説明図
(c)チップオフ工程説明図
(d)二次ピンチシール工程説明図
【図6】従来の放電ランプの断面図
【図7】従来のアークチューブの製造工程説明図
【符号の説明】
6 電極棒
7 モリブデン箔
8 リード線
10 アークチューブ
12 チップレス密閉チャンバー部
13 ピンチシール部
15 ピンチシール部におけるガラス層
16 残留圧縮歪層
17 境界クラック
A,A’ 電極アッシー
L 電極棒のみに密着するガラス層領域の軸方向長さ
L1 残留圧縮歪層の電極棒に沿った軸方向長さ
W アークチューブ用ガラス管
w1 ガラス管の直線状延出部
w2 ガラス管の球状膨出部
θ1 残留圧縮歪層の電極棒周りの周方向角度
Claims (2)
- 電極棒とモリブデン箔とリード線が直列に接続一体化された電極アッシーの少なくともモリブデン箔を含む領域が両端ピンチシール部に封着されて、発光物質等を封止した中央の密閉チャンバー部内に前記電極棒が対設されるとともに、両端ピンチシール部から前記リード線がそれぞれ導出する放電ランプ装置用アークチューブにおいて、前記ピンチシール部におけるガラス層の前記電極棒との密着面には、残留圧縮歪層が形成され、前記残留圧縮歪層は、電極棒のみに密着するガラス層領域の軸方向長さの約30%以上の長さにわたって、または/および電極棒の周方向約180度以上の角度範囲にわたって形成されるとともに、前記残留圧縮歪層には、残留圧縮歪層の外周面に沿った境界クラックが形成されたことを特徴とする放電ランプ装置用アークチューブ。
- 前記ピンチシール部の少なくとも電極棒封着領域が、2000〜2300℃、好ましくは2100〜2200℃でピンチシールされたことを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ装置用アークチューブ。
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