JP3665502B2 - エチレン性二重結合含有単量体の重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明はエチレン性二重結合を有する単量体を重合器内において重合することにより重合体を製造する方法において、重合器内壁面などへの重合体スケールの付着を防止し、品質の良好な重合体を製造することができる重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
重合器内で単量体を重合して重合体を製造する方法においては、重合体が重合器内壁面などにスケールとして付着する問題が知られている。
重合体スケールが重合器内壁面などに付着すると、重合体の収率低下、重合器内の冷却能力の低下、及び付着した重合体スケールが剥離して重合体製品に混入することにより製品の品質低下を招き、更に重合体スケールの除去に多大の労力と時間が必要となるなどの不利が生じる。
その上、重合体スケールは未反応単量体を含んでいるので、作業者がこれにさらされ、身体的な障害を引き起こす恐れもある。
【0003】
このため、エチレン性二重結合を有する単量体の重合においては、重合器内壁面などへの重合体スケールの付着を防止する目的で、例えば重合器内壁及び攪拌機などに、アミン化合物、キノン化合物、アルデヒド化合物などの極性有機化合物、或いは染料、顔料などを塗布する方法(特公昭45−30343、特公昭45−30835);極性有機化合物或いは染料を金属塩で処理したものを塗布する方法(特公昭52−24953);電子供与性化合物と電子受容性化合物との混合物を塗布する方法(特公昭53−28347);1−ナフトールとホルムアルデヒトとの縮合反応生成物を塗布する方法(特開昭57−164107);フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合反応生成物を塗布する方法(特開昭57−192413);ポリ芳香族アミンを塗布する方法(特公昭59−16561);多価フェノールの自己縮合生成物や多価ナフトールの自己縮合生成物を塗布する方法(特開昭54−7487);ケトン樹脂とフェノール化合物との縮合反応生成物を塗布する方法(特開昭62−236804);芳香族アミンと芳香族ニトロ化合物との縮合反応生成物及びこれをベ−ス化したものを塗布する方法(特公昭60−30681);芳香族アミン化合物とキノン化合物との縮合反応生成物を塗布する方法(特開昭61−7309)等の1段塗布による重合体スケール付着防止方法(以下、1段塗布方法という)が提案されている。この1段塗布方法で得られる重合スケール付着防止性塗膜では、重合中に重合器内の気液界面付近にスケールが付着しやすかったり、重合反応液の組成によってはスケールが壁面全面に付着することがあるため、これを防止するために重合体スケール付着防止剤の塗布液に、アニオン性高分子化合物、両性高分子化合物、カチオン性高分子化合物、ヒドロキシル基含有高分子化合物等の水溶性高分子化合物;無機コロイド;アルカリ金属塩のような無機塩等の、単量体に対して親和性を有しない物質(以下、重合体スケール付着防止助剤という)を混合することも知られている。これらの1段塗布方法はエチレン性二重結合を有する単量体の重合器内における重合において、重合体スケール付着防止に有効である。
【0004】
上記1段塗布方法では、重合体スケール付着防止効果が十分に得られない場合は、(a)上記のような重合体スケール付着防止剤を含む塗布液を塗布して第一層を形成し、更にその上に、(b)上述の重合体スケール付着防止助剤を含有する塗布液を塗布して第二層を形成するという2段塗布による重合体スケール付着防止方法(以下、2段塗布方法という)(特開平03−74404、特開平02−80403、特開平02−80402、特開平02−80401、特開平02−47102)が提案されている。
前記に説明した1段塗布による重合体スケールの付着防止方法も2段塗布による重合体スケールの付着防止方法も、塗布方法としては、作業性の点などの生産性の面からスプレー塗布方法が通常用いられている。
【0005】
スプレー塗布方法による重合体スケール付着防止剤の1段塗布法における塗膜の形成は、
ステップ1:スプレー塗布方法により、重合体スケール付着防止剤を含む塗布液を重合器内壁面及びその他の単量体が接触する部分に塗布する、
ステップ2:塗布面を乾燥させて乾燥塗膜を形成する、
ステップ3:形成された塗膜面を洗浄して余分な塗布液を除去する、
のステップ1〜3を有するものである。
また、スプレー塗布方法による、重合体スケール付着防止剤の塗布及び重合体スケール付着防止助剤の塗布からなる2段塗布方法は、2段目の塗布においても上記と同様のステップ1〜3からなる塗膜形成作業が行われる。
【0006】
上記のスプレー塗布方法を用いた場合、バッフル、攪拌翼の重合器内壁面に対面している面は、スプレーノズルから見て死角となっている。このようなスプレーノズルから見て陰になっていたり隠れている部分の表面には塗布液が到達しにくいため重合体スケール付着防止剤をその他の陰にならない表面と同様に塗布することはできない。したがって、陰になる表面と陰にならない表面とに均一な塗膜を形成することは難しい。また、陰になる表面にスケールの付着を防止するのに有効量の塗膜を形成しようとすると他の表面よりも多量の重合体スケール付着防止剤を含む塗布液を使用せざるを得ない。陰にならない表面には必要以上の過剰なスケール防止剤を適用することになる。そのため、こうして形成される塗膜は、塗布ムラがあり、塗膜は部分的に必要以上に厚いものであった。
【0007】
さらに、スプレー塗布方法を用いたスケール防止性塗膜の形成には次のような問題もあった。
▲1▼重合体スケール付着防止剤の塗膜は、通常重合バッチごとにその前に形成される。重合体スケール付着防止剤は一般に着色しているので、重合バッチの繰り返し数が多くなると、重合体スケール付着防止剤が繰り返し塗布される結果、塗膜が厚い部分が生じ得る。このような塗膜の厚い部分が剥離して反応混合物に取り込まれたり、スケール防止剤が重合器の内壁等に既に生じている重合体スケールの上に塗布されてスケールの一部とともに剥離して、得られる重合体製品中に混入し、その成型品中に着色異物或いはフィッシュアイをもたらす原因となったり、成形品の初期着色を高めるなど製品の品質低下を招く欠点がある。
▲2▼上記のように、スプレーノズルから見て死角になっている重合器内の隠れた部分又は陰になっている表面での重合体スケール付着防止効果は、他の表面に比してかなり多量の重合体スケール付着防止剤を適用した割には十分とはいえるものではない。
▲3▼スプレー塗布方法は、塗布後、その塗布面を乾燥する乾燥工程を必要とし、重合体スケール付着防止剤の塗膜形成に要する時間がかかる。そこで、生産性向上の面から、その塗膜形成に要する時間の短縮が望まれている。
【0008】
上記スプレー塗布方法の欠点を解決する方法として、キャリアーとして水蒸気を用いて重合体スケール付着防止剤の塗布液を塗布する方法(以下、スチーム塗布という)(特公平01−5044)が提案されている。この場合の塗布液としては、重合体スケール付着防止剤単独の塗布液や、これに前記重合体スケール付着防止助剤を添加した塗布液が使用されている。
【0009】
このスチーム塗布方法は、次のような利点がある。
▲1▼少量の塗布液で、スケールの付着を効果的に防止するのに必要な重合体スケール付着防止剤を薄い均一な塗膜として形成することができる。
▲2▼少量の塗布液の使用量で、スプレーノズルから見て死角になっている重合器内の隠れた部分、又は陰になっている部分にも、スケール付着防止効果を得る上で必要な重合体スケール付着防止剤の塗膜を形成することができるので、これらの部分でも重合体スケール付着防止効果を得ることができる。
▲3▼塗膜形成工程での乾燥工程が不要となり、重合体スケール付着防止剤等の塗膜形成に要する時間が短縮される。
【0010】
ところで、スチーム塗布方法では塗布液とスチームとを混合し、スチームにより運ばれる形で塗布液を重合器内壁面などに適用される。従って、塗布液中の重合体スケール付着防止剤の濃度は、スチームで稀釈されることを考慮して設定される。通常、塗布液中の重合体スケール付着防止剤の濃度は、スチーム塗布用はスプレー塗布用の4〜40倍である。但し、スチーム塗布で必要な重合体スケール防止剤の量はスプレー塗布の場合とほぼ同じである。
【0011】
スチーム塗布方法には上記の利点がある反面、次の点において問題がある。
▲1▼スチーム塗布では重合器内の均一な塗布が可能であるが、重合器内の気液界面付近のスケール付着防止効果は不十分である。
▲2▼重合器内の気液界面付近におけるスケール付着防止効果が不十分である為、重合バッチの繰り返し数が多くなると気液界面付近で重合体スケールの堆積が成長し、堆積したスケールが重合中に剥離して重合体製品中に混入し、フィッシュアイ発生の原因となることがある。
▲3▼また、重合バッチの繰り返し数が多くなると、重合体スケール付着防止剤が繰り返し塗布される結果、重合体スケール付着防止剤層が次第に厚くなり、この層が部分的に剥離して重合体製品中に混入して着色異物の原因となり、重合体製品の抗初期着色性が低下する(特に明度指数が低下する)という問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、重合体スケール付着防止剤等の塗膜形成時間を短縮して生産性を高めると共に、重合体スケール付着防止効果を向上し、これにより得られる重合体製品への着色異物の混入を低減し、成形品のフィッシュアイ及び初期着色性を低減し、重合体及びその加工製品の品質を向上できる、エチレン性二重結合を有する単量体の重合による重合体の製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、
エチレン性二重結合を有する単量体を重合器内において重合することからなる重合体の製造方法であって、
前記重合器はその内壁面及び重合中に前記単量体が接触するその他の表面に重合体スケール付着防止性の塗膜を有するものであり;
該塗膜は前記内壁面及びその他の表面の上に形成された第一層と、該第一層の上に形成された第二層とからなり、
前記第一層は共役π結合を5個以上有する芳香族化合物及び共役π結合を5個以上有する複素環式化合物からなる群から選ばれた化合物を含有する第一塗布液を、キャリアーとして水蒸気を用いて塗布して形成されたものであり;
前記第二層は第一層の上に第二塗布液をキャリアーとして水蒸気を用いて塗布して形成されたものであり;
前記第二層は、その表面を水と塩化ビニル単量体とを重量比1/1で含む混合溶液と50℃で1時間接触させた後に水接触角が60°未満である表面を有するものである;
ことを特徴とするエチレン性二重結合を有する単量体の重合方法によって達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。以下において、重合体スケール付着防止剤を「スケール防止剤」と略称する。
本発明の方法で使用されるスケール防止性の塗膜は重合器内壁面などの表面上に形成される第一層とその上に形成される第二層とからなる。
【0015】
[塗膜の第一層]
第一層形成用塗布液に使用される芳香族化合物及び複素環式化合物は、共役π結合を5個以上有する。本明細書において「π結合」とは二重結合及び三重結合を意味し、例えば、C=C、C≡C、N=N、C=N、C=S、C=O等が挙げられ、「共役π結合」とは、一連のπ結合であって、その中のどの一対の隣り合う2つのπ結合も単結合で連結されていて、すべてのπ結合が相互に共役関係にあるものを意味する。また、共役π結合を5個以上有する芳香族化合物及び共役π結合を5個以上有する複素環式化合物を合わせて一般的に「共役π結合化合物」と称する。該共役π結合化合物に含まれる5個以上のπ結合は1群の共役関係を形成してもよいし、2群以上の共役関係を形成してもよい。
【0016】
・共役π結合を5個以上有する芳香族化合物:
共役π結合を5個以上有する芳香族化合物としては、ベンゼン誘導体、ナフタリン誘導体、多核芳香族化合物、キノン類、非ベンゼン系芳香族化合物、芳香族化合物の縮合物であって重量平均分子量(本明細書では、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する)が500以上であるもの等が挙げられる。
【0017】
まず、ベンゼン誘導体としては、フェノール類及びそれらの誘導体、例えば、3,7−ジヒドロキシ10−メチルキサンテン、ヒドロキシアントラキノン;芳香族アミン類及びそれらの誘導体、例えば、キノリン、カルバゾール、o−フェナントロリン、p−フェナントロリン、3,6−ジアミノアクリジン、3、−アミノフェノチアジン、2−アミノフェナジン、フェノチアジン、2−ヒドロキシ4−メチルキノリン、;ニトロ及びニトロソ誘導体、例えば、フェナジン、フェナジンオキシド、1−フェニルアゾ−2−ナフトール、トリフノジオキサジン、4−ニトロキサントン、;芳香族アルデヒド、例えば、ベンゾフラビン;アルデヒド基以外に更に1種の置換基を有するベンゼン誘導体、例えば、1−ヒドロキシ2,4−メチルフルオロン、3−フェニルクマロン、クマリン−3−カルボン酸エチルエステル、3−アセチルクマリン、5−クロール3−(4−ヒドロキシフェニル)アントラニル、3−ニトロアクリドン;アシル基以外に更に1種の置換基を有するベンゼン誘導体、例えば、キサントン、2−ベンゾイルキサントン、キサンテン、フルオレン、;3種類以上異なった置換基を有するベンゼン、トルエン誘導体、例えば、7−アセトキシ−8−メトキシ−3−(2−ニトロフェニル)カルボステリル;アラールキル化合物、例えば、9−ベンジルアクリジン;ジアゾ化合物及びアゾ化合物、例えば、1,1’−アゾナフタリン、アゾキシフェノール等を挙げられる。
【0018】
次にナフタリン誘導体としては、
アルキル、アルケニル及びフェニルナフタリン類、例えば、2−メチルナフタリン、1−エチルナフタリン、2−エチルナフタリン、1,2−ジメチルナフタリン;ジナフチル類、例えば、1,1’−ジナフチル、1,2'−ジナフチル、2,2'−ジナフチル;
ナフチルアリールメタン類、例えば、1−ベンジルナフタリン、2−ベンジルナフタリン、1−(α,α−ジクロールベンジル)ナフタリン、ジフェニル−α−ナフチルメタン、ジフェニル−β−ナフチルメタン、ジ−α−ナフチルメタン;ナフチルアリールエタン類、例えば、1,2−ジ−α−ナフチルエタン、1,2−ジ−β−ナフチルエタン;
ヒドロナフタリン類、例えば、1,2−ジヒドロナフタリン、1,4−ジヒドロナフタリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタリン;
ニトロナフタリンとその誘導体、例えば、ニトロメチルナフタリン、ニトロアルキルナフタリン、ニトロフェニルナフタリン、ハロニトロナフタリン、ハロジニトロナフタリン、ニトロソナフタリン、ジアミノナフタリン、トリアミノナフタリン、テトラアミノナフタリン;
ハロゲン化ナフタリン類、例えば、1−フルオルナフタリン、1−クロールナフタリン、1−クロール3,4−ジヒドロナフタリン;ナフチルヒドロキシルアミン、ナフチルピラジン及びナフチル尿素類、例えば、α−ナフチルヒドロキシルアミン、β−ナフチルチオヒドロキシルアミン、N−ニトロソ−α−ナフチルヒドロキシルアミン、α−ナフチルヒドラジン、1,2−ジベンゾカルバゾール;ナフタリン系アラールキル化合物、例えば、ジベンゾアントラセン、アセナフテン、ジフェニルナフチルクロールメタン、ニトロメチルナフタリン;ナフトアルデヒド類及びその誘導体、例えば、α−ナフトアルデヒド、2−(2,4−ジニトロフェニル)−1−(α−ナフチル)エチレン;
アセトナフテン、ベンゾイルナフタリン類、例えば、1,2;5,6−ジベンズアントラセン、2'−メチル−2,1'−ジナフチルケトン、2−メチル−1,1'−ジナフチルケトン、スチリル−2−ナフチルケトン、などが挙げられる。
【0019】
多核芳香族化合物としては、
アントラセン類及びその誘導体、例えば、アントラセン、1,2−ジヒドロアントラセン、1−クロールアントラセン、1,4−ジクロールアントラセン、1−ニトロアントラセン、9,10−ジニトロアントラセン、1−アミノアントラセン、2−ジメチルアミノアントラセン、2−アニリノアントラセン、9−メチルアミノアントラセン、1,4−ジアミノアントラセン;
フェナントレン類およびその誘導体、例えば、フェナントレン、9,10−ジヒドロフェナントレン、1,2,3,4−テトラヒドロフェナントレン、1−クロールフェナントレン;
フェナントレンキノン類、例えば、フェナントレン−1,2−キノン、フェナントレン−1,4−キノン;
ならびに、多核芳香族化合物及びその誘導体、例えば、ペンタセン、ヘキサセン、ベンゾフェナントレン、ベンゾ〔a〕アントラセン、ピレン、コロネン等が挙げられる。
【0020】
また、キノン類及びその誘導体としては、
ナフトキノン類及びその誘導体、例えば、1,2−ナフトキノン、3−ヒドロキシ2,2'−ビナフチル−1,4;3',4'−ジキノン、5,6−ベンゾキノキサリン、1,2−ベンゾフェナジン、2−ベンゼンアゾ−1−ナフトール、4−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,2−ジヒドロキシナフタリン、4−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−1,2−ジヒドロキシナフタリン、1,4−ナフトール;
ならびに、アントラキノン類およびその誘導体、例えば、1,2−アントラキノン、2,3−アントラキノン、1,4−アントラキノン、アリザリン、キニザリン、クリサジン、ヒスタザリン、アントラフラビン、イソアントラフラビン、アントラガロール、パープリン、ヒドロキシアントラールフィン、ヒドロキシクリサジン、ヒドロキシフラボパープリン、キナリザリン、アリザリペンタシアニン等が挙げられる。
【0021】
更に、非ベンゼン系芳香族化合物としては、例えば、アズレン、シクロデカペンタン、シクロテトラデカヘプタン、シクロオクタデカノナエン、シクロテトラコサドデカエン、ヘプタレン、フルバレン、セスキフルバレン、ヘプタフルバレン、ペリナフテン等が挙げられる。
【0022】
芳香族化合物の重量平均分子量が500以上である縮合物としては、重量平均分子量が好ましくは500から70,000、更には好ましくは1,500〜30,000である芳香族化合物の縮合物が適当である。
【0023】
このような芳香族化合物の縮合物として好ましいものを以下例示する。
<アルデヒド化合物/芳香族ヒドロキシ系化合物縮合生成物>
アルデヒド化合物/芳香族ヒドロキシ系化合物縮合生成物はアルデヒド化合物と芳香族ヒドロキシ系化合物との縮合生成物である。このようなアルデヒド化合物/芳香族ヒドロキシ系化合物縮合生成物を重合体スケール付着防止剤に用いることについては、例えば特開昭57−192413、特公平06−62709、特開昭57−164107、WO98/24820等に記載されている。
【0024】
アルデヒド化合物としては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール、フェニルアセトアルデヒド、3−フェニルプロピオンアルデヒド、2−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられるが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドが工業的、経済的に有利である。
【0025】
芳香族ヒドロキシ系化合物としては、例えばジヒドロキシビフェニル系化合物、ナフトール系化合物、フェノール系化合物、タンニン類、2,3−ジヒドロキシナフタレンの2量体化合物等が挙げられる。
【0026】
ジヒドロキシビフェニル系化合物の例としては、2,2′−ジヒドロキシビフェニル、2,2′−ジヒドロキシ−5,5′−ジメチルビフェニル、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′、5,5′−テトラメチルビフェニル、2,2′−ジヒドロキシ−5,5′−ジクロロビフェニル、2,2′−ジヒドロキシ−5,5′−ジクロロヘキシルビフェニル、2,2′−ジヒドロキシ−5,5′−ジ−tert−ブチルビフェニル等が挙げられ、なかでも工業的には2,2′−ジヒドロキシビフェニルがとくに好適である。
【0027】
ナフトール系化合物の例としては1−ナフトール、2−ナフトール、1,3−ジヒドロキシ−ナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレンおよび1,7−ジヒドロキシナフタレン、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−8−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0028】
フェノール系化合物の例としては、フェノール、クレゾール、ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、レゾールシン、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−メトキシ安息香酸、サリチル酸等が挙げられる。
【0029】
タンニン類の例としては、タンニン酸、五倍子タンニン、没食子タンニン、スマックタンニン、ケブラチョタンニン、カキ渋タンニン等が挙げられる。
【0030】
2,3−ジヒドロキシナフタレンの2量体化合物の例としては、2,3,2′,3′−テトラヒドロキシビナフチル等が挙げられる。
【0031】
上記アルデヒド化合物と芳香族ヒドロキシ系化合物との縮合生成物はこれらの反応成分を適当な媒体中、触媒存在下、通常、室温〜200 ℃で2〜100 時間、好ましくは30〜150 ℃で3〜30時間反応させることにより製造される。又、アルデヒド化合物及び芳香族ヒドロキシ系化合物の各々を1種単独でも2種類以上組合せて使用してもよい。
【0032】
上記の縮合反応を行う媒体としては、例えば、水、又はアルコール類、ケトン類、エステル類等の有機溶媒が挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類及び酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類が挙げられる。
上記縮合反応を行う媒体のpHは通常1〜13の範囲であり、pH調整剤は特に制約なく使用することができる。
上記縮合反応に使用される触媒としては例えば硫酸、塩酸、過塩素酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒;NaOH、KOH 、NH4 OH等の塩基性触媒等が用いられる。
【0033】
縮合反応を行う際のアルデヒド類と芳香族ヒドロキシ系化合物との比は、使用するアルデヒド化合物、芳香族ヒドロキシ系化合物、溶媒、及び触媒の種類、反応時間、反応温度等に影響されるが、通常、芳香族ヒドロキシ系化合物1モルに対してアルデヒド化合物を0.1 〜10モルとすることが好ましい。
【0034】
<ピロガロール/アセトン縮合生成物>
ピロガロール/アセトン縮合生成物は、ピロガロールとアセトンとの縮合生成物であり、通常、ピロガロール/アセトンのモル比が1/0.1 〜1/10の範囲にあり、通常、融点100 〜500 ℃である。融点は分子量が大きいほど高く、例えば、融点160 〜170 ℃は分子量1,450〜1,650に、融点200 〜220 ℃は分子量2,600〜4,000に相当する。このようなピロガロール/アセトン縮合生成物を重合体スケール付着防止剤に用いることについては、例えば特開平4−328104等に記載されている。
【0035】
ピロガロール/アセトン縮合生成物は、ピロガロールをアセトンに溶解し、縮合触媒の存在下で縮合させることにより製造される。このとき、ピロガロールは、アセトン100 重量部当り、通常、1〜100 重量部用いられ、縮合触媒としては例えば、オキシ塩化リン等が使用される。反応は、室温〜100 ℃で行えばよい。
<多価フェノール自己縮合生成物及び多価ナフトール自己縮合生成物>
多価フェノールは、例えばカテコール、レゾールシノール、クロロレゾールシノール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール等;ジヒドロキシトルエンおよび−キシレン;トリヒドロキシ−トルエンおよび−キシレン;エチル、プロピル、ブチルおよびペンチルジ−およびトリ−ヒドロキシベンゼン等であり、多価ナフトールは1,3−、1,4−、1,5−、又は1,7−ジヒドロキシナフタレン等のナフトール誘導体が例示される。このような多価フェノール自己縮合生成物又は多価ナフトール自己縮合生成物を重合体スケール付着防止剤に使用することについては、例えば特開昭54−7487等に記載されている。
【0036】
多価フェノールの自己縮合生成物又は多価ナフトールの自己縮合生成物は、多価フェノールもしくは多価ナフトールを窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気下200 〜350 ℃の温度範囲において4〜100 時間加熱することにより製造される。この反応には、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、水酸化ナトリウムなどの種々な触媒を使用できる。
【0037】
<芳香族アミン系化合物縮合生成物>
芳香族アミン系化合物縮合生成物としては、例えば、
▲1▼芳香族アミン系化合物の自己縮合生成物、
▲2▼芳香族アミン系化合物とフェノール系化合物との縮合生成物、
▲3▼芳香族アミン系化合物と芳香族ニトロ化合物との縮合生成物、及び
▲4▼芳香族アミン系化合物と芳香族ニトロ化合物との縮合生成物をアルカリ金属塩もしくはアンモニウム化合物によりベ−ス化したもの、
が挙げられる。このような芳香族アミン系化合物縮合生成物を重合体スケール付着防止剤に用いることについては、例えば特公昭59−16561、同60−30681等に記載されている。
【0038】
芳香族アミン化合物としては、アニリン、オルソ−,メタ−又はパラ−フェニレンジアミン、オルソ−,メタ−又はパラ−アミノフェノール、オルソ−,メタ−又はパラ−クロロアニリン、パラアミノアゾベンゼン、2,4−ジアミノアゾベンゼン、パラ−アミノアセトアニリド、オルソ−,メタ−又はパラ−メチルアニリン、N,N−ジメチル−パラ−フェニレンジアミン、4−クロロ−オルソ−フェニレンジアミン、4−メトキシ−オルソ−フェニレンジアミン、2−アミノ−4−クロロフェノール、2,3−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノフェノール、及び4−アミノジフェニルアミン、2−アミノジフェニルアミン、4,4′−ジアミノジフェニルアミン、4−アミノ−3′−メトキシジフェニルアミン、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルアミン等のジフェニルアミン類が例示される。
【0039】
フェノール系化合物は、具体的には、フェノール、ヒドロキノン、レゾールシノール、カテコール、ヒドロキシヒドロキノン、ピロガロール、オルソ、メタもしくはパラ−クロロフェノール、オルソ,メタもしくはパラ−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−、2,6−又は3,5−ジヒドロキシトルエン等が例示される。
【0040】
芳香族ニトロ化合物としては、ニトロベンゼン、オルソ−,メタ−又はパラ−ヒドロキシニトロベンゼン、オルソ−,メタ−又はパラ−ニトロアニソ−ル、オルソ−,メタ−又はパラ−ニトロフェネトール、オルソ−,メタ−又はパラ−クロロニトロベンゼン、オルソ−,メタ−又はパラ−アミノニトロベンゼン、オルソ−,メタ−又はパラ−ニトロ安息香酸、オルソ−,メタ−又はパラニトロベンゼンスルホン酸、オルソ,メタ又はパラニトロアニリン、2−ニトロ−パラ−フェニレンジアミン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、4−アミノ−2−ニトロフェノールなどが例示される。
【0041】
前記した芳香族アミン系化合物単独の自己縮合反応、芳香族アミン系化合物とフェノール系化合物との縮合反応、及び芳香族アミン系化合物と芳香族ニトロ化合物との縮合反応を行わせるには、鉱酸および縮合触媒が使用されるが、この鉱酸としては塩酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸および硫酸などが例示される。
【0042】
また好適な縮合触媒としては、過マンガン酸、過マンガン酸カリウムのような過マンガン酸およびその塩;三酸化クロム、重クロム酸カリウム、塩化クロム酸ナトリウムのようなクロム酸関連化合物;硝酸銀、硝酸鉛のような金属硝酸塩;ヨウ素、臭素のようなハロゲン;過酸化水素、過酸化ナトリウム、ベンゾイルパ−オキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酢酸、キュメンハイドロパ−オキサイド、過安息香酸、p−メンタンハイドロパ−オキサイドのような過酸化物;ヨウ素酸、ヨウ素酸カリウム、塩素酸ナトリウムのような酸素酸あるいは酸素酸塩;塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、酢酸鉛のような金属塩類;オゾンおよび酸化銅、酸化水銀、酸化セリウム、二酸化マンガン、オスミウム酸のような酸化物などが例示される。また、過酸化水素を塩化第一鉄と組み合せて使用することも有効である。
【0043】
前記した芳香族アミン系化合物単独の自己縮合反応、芳香族アミン系化合物とフェノール系化合物との縮合反応、及び芳香族アミン系化合物と芳香族ニトロ系化合物との縮合反応は縮合触媒の存在下100 〜350 ℃で2〜100 時間行われる。
【0044】
芳香族アミン系化合物とフェノール系化合物との縮合反応、及び芳香族アミン系化合物と芳香族ニトロ系化合物との縮合反応における芳香族アミン系化合物、フェノール系化合物または芳香族ニトロ系化合物の割合は使用される芳香族アミン系化合物、フェノール系化合物、芳香族ニトロ系化合物及び触媒の種類、反応時間、反応温度等によるが、通常、芳香族アミン系化合物1モルに対してフェノール系化合物又は芳香族ニトロ系化合物0.1 〜10モルとすることが好ましい。
【0045】
芳香族アミン系化合物と芳香族ニトロ化合物との縮合生成物をアルカリ金属塩もしくはアンモニウム化合物によりベ−ス化するには、例えば芳香族アミン系化合物と芳香族ニトロ化合物との縮合生成物100 重量部を水に分散させ、これにNaOH、KOH 、Na2 CO3 、NH4 OH、(NH 4) 2 CO3 などのアルカリもしくはアンモニウム化合物10〜20重量部を加え、得られた混合物を90〜140 ℃で加熱処理する。アルカリもしくはアンモニウム化合物は縮合反応時に使用した鉱酸を中和するのに足りる量であればよい。
【0046】
<キノン系化合物縮合生成物>
キノン系化合物縮合生成物としては、
(A)キノン系化合物自己縮合生成物、または、(B)キノン系化合物と、芳香族ヒドロキシ系化合物及び芳香族アミン系化合物の中から選択される1種の化合物との縮合生成物が挙げられる。このようなキノン系化合物縮合生成物を重合体スケール付着防止剤に用いることについては、例えば特開平5−112603、同6−56911等に記載されている。
【0047】
キノン系化合物としては、例えば、オルソ−,メタ−もしくはパラ−ベンゾキノン、トル−パラ−キノン、オルソ−キシロ−パラ−キノン、チモキノン、2−メトキベンゾキノン、ゲンチシルキノン、ポリポ−ル酸、ユビキノンn等のベンゾキノン類及びこれらの誘導体;6−メチル−1,4−ナフトキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、α−ナフトキノン、ユグロン、ロ−ソン、プルンバギン、アルカンニン、エキノクロムA、ビタミンK1 、ビタミンK2 、シコニン、β,β′−ジメチルアクリルシコニン、β−ヒドロキシイソワレルシコニン、テラクリルシコニン等のナフトキノン類及びこれらの誘導体;テクトキノン、3−ヒドロキシ−2−メチルアントラキノン、アントラキノン、2−ヒドロキシアントラキノン、アリザリン、キサントプルプリン、ルビアジン、ムンジスチン、クリソフェン酸、カルミン酸、ケルメシン酸、ラッカイン酸A等のアントラキノン類及びこれらの誘導体;フェナントレンキノン等のフェナントレンキノン類が挙げられる。
【0048】
芳香族アミン化合物としては、具体的には、アニリン、オルソ−,メタ−もしくはパラ−フェニレンジアミン、オルソ,メタもしくはパラ−クロロアリニン、オルソ−,メタ−もしくはパラ−メチルアニリン、N,N−ジメチル−パラ−フェニレンジアミン、4−クロロ−オルソフェニレンジアミン、4−メトキシ−オルソ−フェニレンジアミン、2−アミノ−4−クロロフェノール、2,3−ジアミノトルエン、4−アミノ−2−アミノフェノール;o−、m−もしくはp−アミノフェノール、o−、m−もしくはp−アミノ安息香酸、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−もしくは4、6−ジアミノ安息香酸、3−もしくは4−アミノフタル酸、2−、4−もしくは5−アミノイソフタル酸、4,6−ジアミノイソフタル酸、2,5−もしくは2,6−ジアミノテレフタル酸、3−、4−もしくは5−アミノサリチル酸、4−ヒドロキシアントラニル酸、o−、m−もしくはp−アミノベンゼンスルホン酸、2,3−、2,4−,2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、2−アミノ−1−フェノール−4−スルホン酸、6−アミノ−4−クロロ−1−フェノール2−スルホン酸等が例示される。
【0049】
また、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、4−アミノ−1−ナフトール、1−アミノ−5−ナフトール、1,2−ナフチレンジアミン−7−カルボン酸、1,5−ナフチレンジアミン−2−カルボン酸、1,5−ナフチレンジアミン−4−カルボン酸、1,6−ナフチレンジアミン−4−カルボン酸、1,8−ナフチレンジアミン−4−カルボン酸、1,2−ナフチレンジアミン−3−スルホン酸、1,2−ナフチレンジアミン−4−スルホン酸、1,2−ナフチレンジアミン−5−スルホン酸、1,2−ナフチレンジアミン−6−スルホン酸、1,2−ナフチレンジアミン−7−スルホン酸、1,3−ナフチレンジアミン−5−スルホン酸、1,3−ナフチレンジアミン−6−スルホン酸、1,4−ナフチレンジアミン−2−スルホン酸、1,4−ナフチレンジアミン−7−スルホン酸、1,5−ナフチレンジアミン−2−スルホン酸、1,5−ナフチレンジアミン−4−スルホン酸、1,5−ナフチレンジアミン−7−スルホン酸、1,6−ナフチレンジアミン−2−スルホン酸、1,6−ナフチレンジアミン−4−スルホン酸、1,6−ナフチレンジアミン−7−スルホン酸、1,8−ナフチレンジアミン−4−スルホン酸、1,8−ナフチレンジアミン−3,6−ジスルホン酸、1,8−ナフチレンジアミン−4,5−ジスルホン酸、α−アミノ−β−ナフタレンプロピオン酸、α−アミノ−β−ナフタレンカルボン酸、2−ナフチルアミン−1−スルホン酸、8−ナフチルアミン−1−スルホン酸、5−ナフチルアミン−1−スルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸(γ酸)、2−アミノ−5−ナフトール7−スルホン酸(J酸)、1−アミノ−8−ナフトール3,6−ジスルホン酸(H酸)、4−アミノジフェニルアミン、2−アミノジフェニルアミン、4,4′−ジアミノジフェニルアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミン、4−アミノ−3′−メトキシジフェニルアミン、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルアミン、4−カルボキシジフェニルアミン、4−アミノ−4′−カルボキシジフェニルアミン、4−スルホジフェニルアミン、4−アミノ−4′−スルホジフェニルアミン等のジフェニルアミン類が例示される。
【0050】
また、芳香族ヒドロキシ系化合物としては、フェノール、ヒドロキノン、レゾールシノール、カテコール、ヒドロキシヒドロキノン、ピロガロール、オルソ−,メタ−もしくはパラ−クロロフェノール、オルソ−,メタ−もしくはパラ−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、(2,5−、2,6−,3,5−)ジヒドロキシトルエン等のフェノール誘導体が例示される。
【0051】
また、α−ナフトール、β−ナフトール、(1,3−、1,4−、1,5−、2,3−、2,6−、2,7−)ジヒドロキシナフタリン、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトール誘導体が例示される。
【0052】
前記したキノン系化合物単独の自己縮合反応、又はキノン系化合物と、芳香族ヒドロキシ系化合物及び/又は芳香族アミン系化合物との縮合反応は、有機溶媒系媒体中、必要に応じて縮合触媒の存在下で行われる。上記有機溶媒系媒体のpHは1〜13、好ましくは、pH4〜10である。pH調整剤は特に制約されることなく使用することができ、酸性化合物としては、例えば、リン酸、硫酸、フィチン酸、酢酸等が使用され、アルカリ性化合物としては、例えば、LiOH、KOH 、NaOH、Na2 CO3 、Na2 SiO 3 、Na2HPO 4 、NH4 OH等のアルカリ金属化合物或いはアンモニウム化合物;エチレンジアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン化合物等が使用される。
【0053】
縮合反応の媒体としては、有機溶媒、例えばアルコール類、ケトン類、エステル類等;水と混和性を有する親水性有機溶媒と水との混合溶媒が好ましい。親水性有機溶媒と混和性を有する媒体としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;及び酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類が使用できる。
【0054】
また、必要に応じて縮合触媒が使用されるが、縮合触媒としては、α,α′−アゾビスイソブチロニトリル、α,α′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ触媒;ヨウ素、臭素、塩素等の元素ないし分子状の単体ハロゲン;過酸化水素、過酸化ナトリウム、ベンゾイルパーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酢酸、キュメンハイドロパーオキサイド、過安息香酸、p−メンタンハイドロパーオキサイド等の過酸化物;ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム等の酸素酸あるいは酸素酸塩が例示される。なお、キノン化合物が縮合触媒として作用するので、特に縮合触媒を使用しなくても縮合反応は行われる。
縮合反応は、室温〜200℃で0.5〜100時間行われる。
【0055】
また、(a)成分と(b)成分との縮合反応は、芳香族アミン系化合物、キノン系化合物、芳香族ヒドロキシ系化合物の種類、及び反応温度、反応時間に影響される。(a)成分1モル当り、(b)成分0.01〜10.0モルが好ましい。
【0056】
<芳香族ヒドロキシ系化合物のスルフィド化合物>
芳香族ヒドロキシ系化合物のスルフィド化合物とは、芳香族ヒドロキシ系化合物と一塩化イオウまたは二塩化イオウのごとき塩化イオウとの縮合生成物である。このような芳香族ヒドロキシ系化合物のスルフィド化合物を重合体スケール付着防止剤に用いることについては、例えば、特開平4−311702、特開平4−339801、特開平5−155905、特開平6−9711等に記載されている。
芳香族ヒドロキシ系化合物としては、前記記載のナフトール系化合物、フェノール系化合物等の芳香族ヒドロキシ系化合物が挙げられる。
【0057】
該スルフィド化合物を得るには、種々の方法がある。例えば、前述のフェノール類と、一塩化イオウまたは、二塩化イオウのごとき塩化イオウとを、縮合反応させる方法である。この反応は、多価フェノール類を溶解させ、塩化イオウに不活性な有機溶媒中で行わしめる。該有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、クロールベンゼン等の芳香族炭化水素:二塩化エチレン、クロロホルム、酢酸エチル等である。 該フェノール類と、塩化イオウの比率は、前者1モルに対して、後者0.5〜2モル程度、好ましくは0.9〜1.2モル程度である。反応温度は、50℃〜150℃程度である。副生する塩化水素は、揮散させればよいが、密閉系ではトリエチレンアミンのごとき脱塩酸剤を用いてもよい。反応終了後は、反応生成物が、溶媒に溶存している場合は、溶媒を蒸発して除き反応生成物を取り出す。反応生成物が析出している場合には、ろ過のごとき固−液分離操作で反応生成物を取り出す。
【0058】
該スルフィド化合物を得るその他の方法として、多価フェノール類と少量の苛性アルカリとを加熱溶融し、これに硫黄粉末を徐々に加えて更に150℃〜200℃程度まで昇温し、発生する硫化水素を系外に放出させながら反応させ、冷却後、後述の溶剤に溶解して、不溶物をろ別し、それを希酸で中和し、水相を除去して、溶液の形態で得る方法がある。
【0059】
・共役π結合を5個以上有する複素環式化合物:
また、共役π結合を5個以上有する複素環式化合物としては、例えば、含酸素複素環式化合物、含窒素複素環式化合物、含イオウ複素環式化合物、窒素原子を二環が共有する二環式化合物、アルカロイド等が挙げられる。
次に、共役π結合を5個以上有する複素環式化合物の具体例としては、次の化合物が挙げられる。
【0060】
まず、含酸素複素環式化合物としては、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフランおよびその誘導体、例えば、フラノ[ 2’,3’−7,8]フラボン、9−フェニルアンスラセン、o−ヒドロキシメチルトリフェニルカルビノール、3,3’−ジフェニルフタリド、ルブレン、α−ソリニン、フェナゾン;
ピラン誘導体およびピロン誘導体、例えば、2−p−ヒドロキシフェニル−4,6−ジフェニルピリリウムフェリクロリド、アンヒドロベース、ベンゾピラン、6−フェニルクマリン;
クロメノール誘導体およびクロメン誘導体、例えば、6−メチル−2,3−ジフェニルクロモン、6−メチル−2,3−ジフェニル−4−(p−トリル)−1,4−ベンゾピラン−4−オール、クロマノール、γ−クロメン、ヒドロキシクマロン、クロメン、シアニジンクロリド、フィセチン、クリシニジン、アピゲニジン、ロトフラビニジン;
フラボン、フラボノールおよびイソフラボン誘導体、例えば、フラボノール、フラボン、フクゲチン;
クマリン、その誘導体、イソクマリンおよびその誘導体、例えば、7−ヒドロキシ3,4−ベンゾクマリン、ジクマロール、アンゲリシン、ブソラレン、ベルガプテン、ベルカプトール、キサントトキシン、キサントトキサール、イソピンピネリン、ピンピネリン、オロセロール、オロセロン、ペウセダニン、ヒドロキシペウセダニン、オストールトール、メダケニン、ノダケネチン、セセリン、キサンチレチン、キサントキシレチン;ならびに、
キサントンおよび関連化合物、例えば、ジキサンチレン、9−フェニルキサンテン、イソキサントン、1,2,7,8−ジベンゾキサンテン、3,9−ジフェニルキサンテン、9,9−ジフェニルキサンテン
等が挙げられる。
【0061】
次に、含窒素複素環式化合物としては、
インドール類、例えば、インドロ[3,2−c ]キノリン、インドロ[1,2−c]キナゾリン、2−(1−ナフチル)−3−トリフェニルメチルインドール、2−(2−ナフチル)−3−トリフェニルメチルインドール、3,3’−ジインドリル、3,2’−ジインドリル、;
インドールのオキソ誘導体、例えば、3−(4−エトキシ−1−ナフチル)オキシインドール、インドフェニン;
カルバゾール類、例えば、1−フェニル−1,2,3−ベンゾトリアゾール、2,2’−ジアミノジフェニル、1,1’ジカルバゾール;
ポリフィリン類、例えば、ポリフィラジン、マグネシウムオクタメチルテトラアザポルフィリン、アザジピロメチン、ジアザコプロポルフィリン、ポルフィン、メソテトラフェニルポルフィリン;
オキサゾール類、例えば、フェナントロオキサゾール;
チアゾール類、例えば、α−ナフトチアゾール、β−ナフトチアゾール、ナフト[1,2]チアゾール、2−メチル[1,2]チアゾール、2−フェニルナフト[1,2]チアゾール、2−メチルナフト[2,1]チアゾール、2−オキシナフト[2,1]チオゾール、2−アミノナフト[1,2]チアゾール、2−メルカプトナフト[1,2]チアゾール;
オキサジアゾール類、例えば、ナルト[1,2]フラザン;
キノリンおよび関連化合物、例えば、キノリン、キナルジン、キナルジン−N−オキシド、エチルキナリン、2−フェニルキナリン、3−メチルキナリン、4−フェニルキノリン、6−メチルキノリン、2,4−ジメチルキノリン;
イソキノリンおよび関連化合物、例えば、1−メチルイソキノリン、1−フェニルイソキノリン、4−フェニルイソキノリン、1,1’−ビイソキノリン、5,5’−ビイソキノリン;
アクリジンおよび関連化合物、例えば、アクリジン、1−メチルアクリジン、9−フェニルアクリジン、9−(3−ピリジニル)アクリジン、2−アクリジノール、アクリジン−3,6−ジオール、4−メトキシアクリジン、9−フェノキシアクリジン、1−ニトロアクリジン、4−アミノアクリジン、1−アミノアクリジン、9−フェニルアミノアクリジン、9−ヒドロキシアクリジン、3,6−ジアミノ−4,5−ジメチルアクリジン、;
フェナントリジン類、例えば、3,4−ベンゾキノリン、6−メチルフェナントリジン、6−アミノメチルフェナントリジン、6−フェニルフェナントリジン;
アントラゾリン類、例えば、ピリド[2,3−g]キノリン、2,7−ジフェニル[2,3−g]キノリン、2,8−ジフェニルピリド[3,2−g]キノリン;
フェナントロリンおよび関連化合物、例えば、1,7−フェナントロリン、1,10−フェナントロリン、;
ピリドインドール類、例えば、1,9−ピリドインドール、2,9−ピリドインドール、4,9−ピリドインドール;
ナフチリジンおよび関連化合物、例えば、1,5−ナフチリジン、1,7ナフチリジン、1,8−ナフチリジン、3−アミノ−1,5−ナフチリジン、2−アミノ−1,5−ナフチリジン、2−ヒドロキシ1,7−ナフチリジン;
オキサジンおよび関連化合物、例えば、フェノキサジノン、レサズリン、;
チアジンおよび関連化合物、例えば、フェノチアジン、ニトロフェノチアジン、4−アミノ−4’−アニリノジフェニルジスルフィド、2−クロール10−(3−ジメチルアミノプロピル)フェノチアジン、10−(1−メチル−3−ピペリジルメチル)フェノチアジン、2−アセチル−10−(3−ジメチルアミノプロピル)フェノチアジン;
ピリダジンおよび関連化合物、例えば、シンノリン、3−メチルシンノリン、4−クロールシンノリン、3−ブロムシンノリン、4−シンノリノール、4−アミノシンノリン、フタラジン、4−エチル−2−フェニルフタラジノン、フタラジンチオ−ル、;
ピリミジンおよび関連化合物、例えば、スルファジアジン、スルフイソミジン、プテリジン、2,4−プテリンジオール、2−アミノ−6−メチル−4−プテリジノール、キサントプテリン、キナゾリン、2,4−ジクロールキナゾリン、2,3−ジフェニル−4−キナゾリン;
ピラジン関連化合物、例えば、キノキサリン、2−メチルキノキサリン、
トリ−およびテトラ−ヘテロ六員環式化合物、例えば、1,2,4−ベンゾトリアジン、1,2,4−ベンゾトリアジン−3−オール、;
等が挙げられる。
【0062】
さらに、含イオウ複素環式化合物としては、
縮合チオフェン系化合物、例えば、ジヒドロナフト[2,1−b]チアナフテン、1,3−ジフェニルイソチアナフテン、ジベンゾチオフェン、
2個のヘテロ原子を含む五員単環化合物、例えぱ、3,4−ジヒドロナフト−2,1−トリチオン、チアフラボン、チアクマリン、チアキサンテン、チアキサントヒドロール、チアキサントン、ミラシルD、ビスチアキサンチレン;
2個以上のヘテロ原子を有する六員環式化合物、例えば、チアントレン、2,7−ジメチルチアントレン、1−チアントレニルリチウム、1−クロールチアントレン、フェノキサチイン、等が挙げられる。
【0063】
またさらに、その他の化合物として、窒素原子を共有する二環状化合物、例えば、2:3−ベンゾピロコリン、1,5,8−トリメチル−2:3,−ベンゾピロコリン、1−エチル−5,8−ジメチル−2:3−ベンゾピロコリン、;
アルカロイド類、例えば、カシミロイン、2−ペンチルキノリン、4−ヒドロキシ2−ペンチルキノリン、4−メトキシ−2−ペンチルキノリン、
等が挙げられる。
【0064】
共役π結合化合物の中、芳香族化合物の縮合物であって重量平均分子量が500以上であるものを用いることが好ましい。
芳香族化合物の縮合物の中でも、特にアルデヒド化合物/芳香族ヒドロキシ系化合物縮合生成物、及びキノン化合物縮合生成物が好ましい。
【0065】
形成された第一層は、その表面が水/塩化ビニル単量体(重量比)=1/1の混合溶液に50℃で1時間接触させて後の水接触角が60°以上であることが好ましく、70〜130°であることがより好ましく、80〜130°であることがさらに好ましい。したがって、そのような第一層が形成される第一塗布液を用いることが好ましい。水接触角が60°以上となる共役π結合化合物の選定は簡単な試験で行うことができる。
【0066】
この水接触角を60°以上にすることにより重合器の内壁表面(ステンレス等の金属又はガラスで構成されている)に対して接着力が高く耐久性のある第一層を形成することができる効果が得られる。この接触角が小さすぎると、第一層の内壁面等への接着力が弱く、得られた塗膜はスチームが凝集してできた水とともに流れ落ちてしまい易い。かくして接着力のある第一層が均一に形成されない。
【0067】
第一層形成用の第一塗布液は、上記の共役π結合化合物を適当な溶媒に溶解して調製される。この溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−ペンタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル等のエステル系溶剤;4−メチルジオキソラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;フラン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の非プロトン系溶剤等が挙げられる。これらは適宜単独で又は二種以上の混合溶媒として使用される。
【0068】
上記溶媒の中で好ましいものは、水、及び水と混和性を有する親水性有機溶媒と水との混合溶媒である。上記した有機溶媒の中で親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤が挙げられる。更には、上記溶媒の中でアルコール系溶剤を用いるのが好ましい。親水性有機溶媒と水との混合溶媒を使用する場合の親水性有機溶媒の含有量は、引火、揮発等の危険がなく、毒性等の取扱上の安全の問題がない量とするのが好ましく、具体的には、親水性有機溶媒が50重量%以下であることが好ましく、更に、30重量%以下であることが好ましい。
【0069】
第一塗布液のpHは、使用される共役π結合化合物の種類により適宜選択される。例えば、ピロガロール/アセトン縮合生成物、多価フェノール自己縮合生成物及び多価ナフトール自己縮合生成物については、pH=2.0〜6.5であることが好ましい。この場合のpH調整に使用されるpH調整剤としては、塩酸、硫酸、リン酸、ピロリン酸、硝酸等が例示される。また、アルデヒド化合物/芳香族ヒドロキシ系化合物縮合生成物、芳香族アミン系化合物縮合生成物、及びキノン系化合物縮合生成物については、pH7.5〜13.5であることが好ましく、特に、pH8.0〜12.5であることが好ましい。この場合のpH調整に使用するアルカリ化合物としては、例えば、LiOH、NaOH、KOH、Na2CO3、Na2HPO4、NH4OH等のアルカリ金属化合物或いはアンモニア化合物;エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン化合物等が使用可能である。
【0070】
第一塗布液中の共役π結合化合物の濃度は1.0〜25.0wt%の範囲が好ましく、より好ましくは、2.5〜15.0wt%、さらにより好ましくは4〜10wt%である。この濃度が低すぎると、有効量の第一層を形成するのに多量のスチームが必要となる等の不都合が生じる。濃度が高すぎると、塗布液が不安定となり、貯蔵タンク内で貯蔵中に沈殿を生じたり、また、内壁面などに塗布して得られる第一層は塗布ムラのあるものとなり、スケール付着防止効果の低下原因となる。全ての溶質は完全に溶媒に溶解し、第一塗布液は均一な溶液状態であることが好ましい。
第一塗布液には、共役π結合化合物の他に、塗布液の貯蔵安定性及び第一層の壁面に対する接着力、均一な塗膜形成性を損わない程度に水溶性高分子化合物、無機コロイドなどを添加してもよい。
【0071】
[塗膜の第二層]
第二層は上記のようにして形成された第一層の上に形成される。この第二層は染料及び/又は顔料を有し、その表面を水と塩化ビニル単量体とを重量比1/1で含む混合溶液と50℃で1時間接触させた後に水接触角が60°未満、好ましくは10〜55°である表面を有するものである。この水接触角が60°未満であると、第二層は第一層に対して良好な接着効果を示す。同時に、重合中に重合反応混合物に含まれる単量体や重合体が重合器内壁面などに付着することが防止され、スケール付着防止効果を得ることができる。他方、接触角が60°以上であると、重合中に単量体や重合体が塗膜に対して吸着し易くなり、十分なスケール付着防止効果を得ることができない。
【0072】
染料、顔料としては、例えばモノアゾおよびポリアゾ染料・顔料、金属錯塩アゾ染料・顔料、スチルベンアゾ染料、チアゾールアゾ染料等のアゾ系料・顔料;アントラキノン誘導体、アントロン誘導体等のアントラキノン染料・顔料;
インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体等のインジゴイド染料・顔料;
フタロシアニン染料・顔料;
ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料・顔料、キサンテン染料、マクリジン染料等のカルボニウム染料・顔料;
アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料等のキノンイミン染料;
ポリメチンまたはシアニン染料等のメチン染料;キノリン染料;
ニトロ染料;
ベンゾキノンおよびナフトキノン染料;
ナフタルイミド染料・顔料;
ペリノン染料;
硫化染料;
蛍光染料;
アゾイック染料;
および反応染料を挙げることができ、これらは1種単独でも2種以上の組合せでも使用できる。これらの染料・顔料をさらに具体的に例示すると次のとおりである。
【0073】
アゾ系染科および顔料としては、次のものが挙げられる。
モノアゾおよびポリアゾ染料として、例えば、C.I.ベイシックイエロー32、34および36;C.I.ベイシックオレンジ2、32、33および34;C.I.ベイシックレッド17、18、22、23、24、32、34、38、39および40;C.I.ベイシックバイオレット26および28;C.I.ベイシックブルー58、59、64、65、66、67および68;C.I.ベイシックブラウン1、4、11および12;C.I.ベイシックブラック8;C.I.アゾイックジアゾコンポーネント4、21、27および38;C.I.ディスパーズイエロー3、4、5、7、8、23、50、60、64、66、71、72、76、78および79;C.I.ディスパーズオレンジ1、3、5、13、20、21、30、32、41、43、45、46、49、50および51;C.I.ディスパーズレッド1、5、7、12、13、17、43、52、54、56、58、60、72、73、74、75、76、80、82、84、88、90、97、99、101、103、113、117、122、125、126、128、および129;C.I.ディスパーズバイオレット10、24、33、38、41、43および96;C.I.ディスパーズブルー85、92、94および106;C.I.ディスパーズブラウン3および5;C.I.ディスパーズブラック1、2、10、26、27、28、29、30および31;C.I.ソルベントイエロー2、6、14、15、16、19、21および56;C.I.ソルベントオレンジ1、2、5、6、14および45;C.I.ソルベントレッド1、3、23、24、25、27および30;C.I.ソルベントブラウン3、5および20;C.I.ソルベントブラック3;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73および83;C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、14、15、16、17、24および31;C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、112、114および163;C.I.ピグメントブルー25;C.I.ピグメントグリーン10;C.I.ピグメントブラウン1、および2;C.I.ピグメントブラック1;C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、28、33、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100および110;C.I.ダイレクトオレンジ1、6、8、10、26、29、39、41、49、51、57、102および107;C.I.ダイレクトレッド1、2、4、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、225、230および231;C.I.ダイレクトバイオレット1、7、9、12、22、35、51、63、90、94および98;C.I.ダイレクトブルー1、2、6、8、15、22、25、71、76、77、78、80、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、203、207、225、236、237、246、248および249;C.I.ダイレクトグリーン1、6、8、28、30、31、33、37、59、63、64および74;C.I.ダイレクトブラウン1A、2、6、25、27、44、58、59、101、106、173、194、195、209、210および211;C.I.ダイレクトブラック17、19、22、32、38、51、56、71、74、75、77、94、105、106、107、108、112、113、117、118、132、133および146;C.I.アシッドイエロー11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、61、70、72、75、76、78、79、110、127、131、135、141、142、164、および165;C.I.アシッドオレンジ1、7、8、10、19、20、24、28、33、41、43、45、51、56、63、64、65、67および95;C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、57、75、77、85、88、89、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、249、252、254、257、262、265、266、274、276、282、283および303;C.I.アシッドバイオレット7、11、97および106;C.I.アシッドブルー29、60、92、113、117および120;C.I.アシッドグリーン19、20および48;C.I.アシッドブラウン2、4、13、14、20、53、92、100、101、236、247、266、268、276、277、282、289、301および302;C.I.アシッドブラック1、7、24、26、29、31、44、76、77、94、109および110;C.I.モーダントイエロー1、3、5、23、26、30、38および59;C.I.モーダントオレンジ1、4、5、6、8、29および37;C.I.モーダントレッド7、9、17、19、21、26、30、63および89;C.I.モーダントバイオレット5および44;C.I.モーダントブルー7、13、44、75および76;C.I.モーダントグリーン11、15、17および47;C.I.モーダントブラウン1、14、15、19、21、33、38、40、52および87;C.I.モーダントブラック1、3、7、9、11、17、26、32、38、43、44、51、54、65、75、77、84、85、86および87;C.I.フードイエロー3および4;C.I.フードレッド7および9;
【0074】
金属錯塩アゾ染料として、例えば、
C.I.ソルベントイエロー61および80;C.I.ソルベントオレンジ37、40および44;C.I.ソルベントレッド8、21、83、84、100、109および121;C.I.ソルベントブラウン37;C.I.ソルベントブラック23;C.I.アシッドブラック51、52、58、60、62、63、64、67、72、107、108、112、115、118、119、121、122、123、131、132、139、140、155、156、157、158、159および191;C.I.アシッドイエロー59、98、99、111、112、114、116、118、119、128、161、162および163;C.I.アシッドオレンジ74、80、82、85、86、87、88、122、123および124;C.I.アシッドレッド180、183、184、186、194、198、199、209、211、215、216、217、219、256、317、318、320、321および322;C.I.アシッドバイオレット75および78;C.I.アシッドブルー151、154、158、161、166、167、168、170、171、175、184、187、192、199、229、234および236;C.I.アシッドグリーン7、12、35、43、56、57、60、61、65、73、75、76、78および79;C.I.アシッドブラウン19、28、30、31、39、44、45、46、48、224、225、226、231、256、257、294、295、296、297、299および300;C.I.ダイレクトイエロー39;C.I.ダイレクトバイオレット47および48;C.I.ダイレクトブルー90、98、200、201、202および226;C.I.ダイレクトブラウン95、100、112および170;
【0075】
スチルベンアゾ染料として、例えば、
C.I.ダイレクトブラック62;
チアゾールアゾ染料として、例えば、
C.I.ダイレクトレッド9および11が挙げられる。
【0076】
アントラキノン染料・顔料としては、次のものが挙げられる。
アントラキノン誘導体として、例えば、
C.I.ベイシックバイオレット25;C.I.ベイシックブルー21、22、44、45、47、54および60;C.I.アゾイックジアゾコンポーネント36;C.I.バットイエロー2、3、10、20、22および33;C.I.バットオレンジ13および15;C.I.バットレッド10、13、16、31、35および52;C.I.バットバイオレット13および21;C.I.バットブルー4、6、8、12、14、64、66、67および72;C.I.バットグリーン8、13、43、44および45;C.I.バットブラウン1、3、22、25、39、41、44、46、57、68、72および73;C.I.バットブラック8、14、20、25、27、36、56、59および60;C.I.ディスパーズオレンジ11;C.I.ディスパーズレッド4、9、11、15、53、55、65、91、92、100、104、116および127;C.I.ディスパーズバイオレット1、4、8、23、26、28、30および37;C.I.ディスパーズブルー1、3、5、6、7、20、26、27、54、55、56、60、61、62、64、72、73、75、79、81、87、90、91、97、98、99、103、104および105;C.I.ディスパーズイエロー51;C.I.ソルベントバイオレット13および14;C.I.ソルベントブルー11、12、35および36;C.I.ソルベントグリーン3;C.I.ピグメントレッド83および89;C.I.ピグメントブルー22;C.I.アシッドバイオレット31、34、35、41、43、47、48、51、54、66および68;C.I.アシッドブルー23、25、27、40、41、43、45、54、62、72、78、80、82、112、126、127、129、130、131、138、140、142、143、182、183、203、204および205;C.I.アシッドグリーン25、27、28、36、40、41および44;C.I.アシッドブラウン27;C.I.アシッドブラウン48および50;C.I.モーダントレッド3および11;C.I.モーダントブルー8および48;C.I.モーダントブラック13;C.I.ピグメントバイオレット5;
【0077】
アントロン誘導体として、例えば、
C.I.バットイエロー1および4;C.I.バットオレンジ1、2、3、4および9;C.I.バットバイオレット1、9および10;C.I.バットブルー18、19および20;C.I.バットグリーン1、2、3および9;C.I.バットブラック9、13、19および57;C.I.バットレッド13;C.I.アシッドレッド80、82および83が挙げられる。
【0078】
インジゴイド染料・顔料としては、次のものが挙げられる。
インジゴ誘導体として、例えば、
C.I.バットブルー1、3、5、35および41;C.I.レデュースド・バットブルー1;C.I.ピグメントバイオレット19および122;C.I.アシッドブルー74および102;C.I.ソリュービライズド・バットブルー5および41;C.I.ソリュービライズド・バットブラック1;C.I.フードブルー1;
チオインジゴ誘導体として、例えば、
C.I.バットオレンジ5;C.I.バットレッド1、2および61;C.I.バットバイオレット2および3;C.I.ピグメントレッド87および88;C.I.バットブラウン3が挙げられる。
【0079】
フタロシアニン染料・顔料として、例えば、C.I.ソルベントブルー55;C.I.ピグメントブルー15、16および17;C.I.ピグメントグリーン36、37および38;C.I.ダイレクトブルー86および199;C.I.モーダントブルー58が挙げられる。
カルボニウム染料・顔料としては、次のものが挙げられる。
ジフェニルメタン染料として、例えば、
C.I.ベイシックイエロー2;
【0080】
トリフェニルメタン染料として、例えば、
C.I.ベイシックレッド9;C.I.ベイシックバイオレット1、3および14;C.I.ベイシックブルー1、5、7、19、26、28、29、40および41;C.I.ベイシックグリーン1および4;C.I.ソルベントバイオレット8;C.I.ソルベントブルー2および73;C.I.ピグメントバイオレット3;C.I.ピグメントブルー1、2および3;C.I.ピグメントグリーン1、2および7;C.I.ダイレクトブルー41;C.I.アシッドバイオレット15および49;C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、83、90、93、100、103および104;C.I.アシッドグリーン3、9および16;C.I.モーダントバイオレット1;C.I.モーダントブルー1、29および47;C.I.フードバイオレット2;C.I.フードブルー2;C.I.フードグリーン2;
【0081】
キサンテン染料として、例えば、
C.I.ベイシックレッド1;C.I.ソルベントレッド49;C.I.ピグメントレッド81および90;C.I.ピグメントバイオレット1、2および23;C.I.アシッドレッド51、52、87、92および94;C.I.モーダントレッド15および27;C.I.フードレッド14;
アクリジン染料として、例えば、
C.I.ベイシックオレンジ14および15が挙げられる。
キノンイミン染料としては、次のものが挙げられる。
アジン染料として、例えば、
C.I.ベイシックレッド2;C.I.ベイシックブラック2;C.I.ソルベントブラック5および7;C.I.アシッドブルー59;C.I.アシッドブラック2;
オキサジン染料として、例えば、
C.I.ベイシックブルー3;C.I.ダイレクトブルー106および108;
チアジン染料として、例えば、
C.I.ベイシックイエロー1;C.I.ベイシックブルー9、24および25が挙げられる。
【0082】
メチン染料としては、次のものが挙げられる。
ポリメチン(またはシアニン)染料として、例えば、
C.I.ベイシックイエロー11、13、14、19、21、25、28、33および35;C.I.ベイシックオレンジ21および22;C.I.ベイシックレッド12、13、14、15、27、29、35、36および37;C.I.ベイシックバイオレット7、15、21および27が挙げられる。
キノリン染料としては、例えば、
C.I.ベイシックグリーン6;C.I.ディスパーズイエロー54および56;C.I.ソルベントイエロー33;C.I.アシッドイエロー3が挙げられる。
ニトロ染料としては、例えば、
C.I.ディスパーズイエロー1、33、39、42、49および54;C.I.アシッドイエロー1が挙げられる。
ベンゾキノンおよびナフトキノン染料としては、例えば、
C.I.ディスパースブルー58および108;C.I.アシッドブラウン103、104、106、160、161、165および188が挙げられる。
ナフタルイミド染料・顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド123;C.I.バットバイオレット23および29;C.I.アシッドイエロー7が挙げられる。
ペリノン染料としては、例えば、
C.I.バットオレンジ7および15が挙げられる。
【0083】
硫化染料としては、例えば、
C.I.ソリュービライズド・サルファーイエロー2;C.I.サルファーイエロー4;C.I.サルファーオレンジ3;C.I.サルファーレッド2、3、5および7;C.I.ソリュービライズド・サルファーブルー15;C.I.サルファーブルー2、3、4、6、7、9および13;C.I.サルファーグリーン2、3、6、14および27;C.I.ソリュービライズド・サルファーブラウン1および51;C.I.サルファーブラウン7、12、15および31;C.I.サルファーブラック1、2、5、6、10、11および15;C.I.バットイエロー35、42および43;C.I.バットブルー43および56が挙げられる。
蛍光塗料としては、例えば、
C.I.フルオレセント・ブライトニング・エイジェント14、22、24、30、32、37、45、52、54、55、56、84、85、86、87、90、91、104、112、121、134、135、153、162、163、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176および177が挙げられる。
【0084】
アゾイック染料としては、例えば、
C.I.アゾイックジアゾコンポーネント17、20、22、24、26、31、35、41、47、48、109および121;C.I.アゾイックカップリングコンポーネント2、3、4、5、7、8、10、11、12、14、15、16、17、18、19、20、23、26、28、29、35、36、37、41および108;C.I.アゾイックブラウン2、7、11および15;C.I.アゾイックブラック1および5;C.I.アゾイックイエロー1および2;C.I.アゾイックオレンジ2、3および7;C.I.アゾイックレッド1、2、6、9、16および24;C.I.アゾイックバイオレット1、2、6、7、9および10;C.I.アゾイックグリーン1が挙げられる。
【0085】
反応染料としては、例えば、
C.I.リアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37および42;C.I.リアクティブオレンジ1、2、4、5、7、13、14、15、16、18、20、23および24;C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63および64;C.I.リアクティブバイオレット1、2、4、5、8、9および10;C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44および46;C.I.リアクティブグリーン5、6、7および8;C.I.リアクティブブラウン1、2、5、7、8、9、10、11、14および16;C.I.リアクティブブラック1、3、4、5、6、8、9、10、12、13、14および18が挙げられる。
さらに顔料としては、クロム黄、亜鉛黄、ZTO型ジンククロメート、鉛丹、酸化鉄粉、亜鉛華、アルミニウム粉および亜鉛末のごとき無機顔料などが例示される。
【0086】
これらの染料、顔料の中で好ましいものは、アゾ系染料・顔料、アントラキノン染料・顔料、インジゴイド染料・顔料、キノンイミン染料及びナフトキノン染料であり、中でも酸性染料(アシッド染料)、直接染料(ダイレクト染料)及び塩基性染料(ベイシック染料)である。これらの染料を用いると、塗布後の表面の水接触角を60°未満にコントロールする事が容易である。
【0087】
第二層形成用の第二塗布液は、上記親水性化合物から選ばれる少なくとも1種を適当な溶媒に溶解もしくは分散して調製される。この溶媒としては、水、又は水と混和性を有する親水性有機溶媒と水との混合溶媒が使用される。上記溶媒の中で親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤が挙げられる。更には、上記溶媒の中で、アルコール系溶剤を用いるのが好ましい。水と親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する場合の親水性有機溶媒の含有量は、引火、揮発等の危険がなく、毒性等の取扱上の安全の問題がない量とするのが好ましく、具体的には、親水性有機溶媒が50重量%以下であることが好ましく、更に、30重量%以下であることが好ましい。
【0088】
また、第二塗布液のpHは6以下が好ましく、0.5〜4がより好ましい。そこで、必要に応じて、硫酸、りん酸、フィチン酸、タンニン酸、等の酸からなるpH調整剤を使用してもよい。また、さらに、コロイドシリカ等の無機コロイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子化合物等を添加することが好ましい。溶質は完全に溶解し、第二塗布液は均一な溶質状態であることが好ましい。
第二塗布液中の前記染料及び/又は顔料の濃度は、0.01〜20重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは0.1〜15重量%である。
【0089】
[水蒸気キャリアー]
本発明の方法によると、前記の第一層も第二層も塗布液をキャリアーとして水蒸気を使用して重合器内壁面に適用することにより形成される。使用される水蒸気は、通常の水蒸気であっても或いは過熱水蒸気であってもよく、2〜35kgf/cm2・Gの圧力を有するものが好ましく、2.8〜20kgf/cm2・Gの圧力を有するものが更に好ましい。水蒸気の温度は好ましくは120〜260℃であり、130〜200℃が更に好ましい。
上記の水蒸気の圧力及び温度は水蒸気が塗布液と混合される前、例えば後述の図1においてスチーム供給ライン6内において測定される値である。
【0090】
[塗膜の形成]
本発明方法による第一層及び第二層からなる塗膜の形成を図1の塗布装置に従って説明する。図1は重合装置の構成の概略を示す。
工程1.(スチームによる重合器内壁面等の予熱)
重合器1に取り付けられたジャケット2に熱水などを通して重合器内壁面の温度を50℃以上(好ましくは50〜95℃)に予め加熱する。この重合器の上部には環状のパイプからなり下方向きのノズル3aと上方向きのノズル3bを有する塗布リング4が設けられている。該塗布リング4には重合器1の外部からスチーム及び塗布液を供給するライン5が接続している。ライン5にはスチーム供給ライン6、第一塗布液供給ライン7及び第二塗布液供給ライン8がバルブを介して接続している。必要に応じて、この塗布リング4の塗布ノズル3a、3bから、スチーム(水蒸気又は過熱水蒸気)を器内に吹き込み、バッフル(図示せず)及び攪拌翼(図示せず)等も予め加熱する。この装置ではスチームはスチーム供給器9から流量計10を経てライン6と5を通って塗布リング4に供給される。
【0091】
工程2.(1段目塗布)
スチームを塗布リング4に供給し、第一塗布液タンク11内に収納された第一塗布液をポンプ12又はアスピレーターバルブ(図示せず)によりライン7と5を介して塗布リング4に供給する。Pは圧力計である。第一塗布液はスチームに運ばれてミスト状態で重合器内壁面、バッフル表面、攪拌翼表面等の重合中に単量体が接触する表面に適用され、塗布される。この塗布と同時にこれら表面上で塗布された第一塗布液は乾燥(同時乾燥)され、第一層が形成される。したがって、乾燥の為の特別の操作は必要ない。
スチーム(G)と塗布液(L)との混合割合(L/G)は、重量基準の流量比で0.005〜0.8が好ましく、0.01〜0.2が更に好ましい。
【0092】
工程3.(2段目塗布)
引き続きスチームを流したまま第二塗布液タンク13内に収納された第二塗布液をポンプ14を用いてライン8と5を介して同様に塗布リング4に供給し、第一層面上に塗布し、第二層(図示せず)を形成する。1段目塗布の場合と同様に、塗布と同時に第一層上に塗布された第二塗布液は乾燥(同時乾燥)され、第二層が形成されるので、特別の乾燥操作は必要はない。
この二段目塗布においても、スチーム(G)と塗布液(L)との混合比(L/G)は、重量基準の流量比で0.005〜0.8が好ましく、0.01〜0.2が更に好ましい。
【0093】
工程4.(水洗)
スチーム及び塗布液の供給を止めた後、水タンク15に収納された洗浄水で重合器1内の水洗を行う。洗浄水はポンプ16によりライン17を介してノズル18から重合器内に供給される。但し、品質への影響が少なければ水洗は行う必要はない。
このようにして形成される第一層の乾燥塗布量は0.0005〜3g/m2が好ましく、より好ましくは0.0005〜1g/m2である。第二層の乾燥塗布量は0.0005〜2g/m2が好ましく、より好ましくは0.0005〜1g/m2である。第一及び第二層の合計乾燥塗布量は、0.001〜5g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.001〜2g/m2である。
【0094】
重合
本発明方法は、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体の重合に適用される。この単量体の例としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのエステル又は塩;マレイン酸、フマル酸、及びこれらのエステル又は無水物;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン等のジエン系単量体;スチレン;アクリロニトリル;ハロゲン化ビニリデン;ビニルエーテル等が挙げられる。
【0095】
本発明方法が特に好適に実施される例としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル若しくはハロゲン化ビニリデン、又は、それらを主体とする単量体混合物の水性媒体中における懸濁重合若しくは乳化重合によるそれら重合体の製造がある。また本発明方法で形成される塗膜は、α−メチルスチレン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル等の従来の塗膜に対して高い溶解能を有する単量体に対しても、高い耐久性を示すので、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル等の重合体ビ−ズ、ラテックスの製造、SBR,NBR,CR,IR,IIR等の合成ゴムの製造(これら合成ゴムは通常乳化重合によって製造される。)、ABS樹脂の製造にも好適に実施することができる。
【0096】
これら単量体の1種又は2種以上の重合に際し、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、溶液重合等の重合形式にかかわらず、また、乳化剤、安定剤、滑剤、可塑剤、pH調整剤、連鎖移動剤等のいずれの添加剤の存在下であっても、スケール防止の目的が有効に達成される。例えば、ビニル系単量体の懸濁重合や、乳化重合では、重合系に必要に応じて種々の添加剤が加えられる。添加剤としては例えば、部分けん化ポリビニルアルコール、メチルセルロース等の懸濁剤;ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤;ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性乳化剤;三塩基性硫酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ジブチルすずジラウレート、ジオクチルすずメルカプチド等の安定剤;トリクロロエチレン、メルカプタン類等の連鎖移動剤;pH調整剤等が挙げられる。本発明の方法によれば、このような添加剤が重合系に存在しても効果的にスケールの付着が防止される。
【0097】
また、本発明の顕著な重合体スケール付着防止効果は重合触媒の種類に影響されることなく、いずれの触媒を使用した場合でも発揮される。触媒としては、具体的には、t−プチルパーオキシネオデカノエート、ビス(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、α−クミルパーオキシネオデカノエート、クメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−プチルパーオキシピバレト、ビス(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロールベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、α,α’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジ−2−エチルヘキシルジパーオキシイソフタレート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が例示される。
【0098】
重合の他の条件は、従来通常行われるとおりでよく、本発明の効果が損われない限り特に制約されない。以下、懸濁重合、溶液重合及び塊状重合の場合を例に挙げて、典型的な重合条件を具体的に説明するが、何らこれに限定するものではない。懸濁重合の場合には、まず、水及び分散剤を重合器に仕込み、その後、重合開始剤を仕込む。次に、重合器内を排気して0.1〜760mmHg(0.01〜101kPa)に減圧した後、単量体を仕込み〔この時、重合器の内圧は、通常0.5〜30kgf/cm2・G(150〜3040kPa)になる〕、その後、30〜150℃の反応温度で重合する。重合中には、必要に応じて、水、分散剤及び重合開始剤の1種又は2種以上を添加する。また、重合時の反応温度は、重合される単量体の種類によって異なり、例えば塩化ビニルの重合の場合には30〜80℃で行い、スチレンの重合の場合には50〜150℃で重合を行う。重合は重合器の内圧が0〜7kgf/cm2・G(100〜790kPa)に低下した時に、或いは重合器外周に装備されたジャケット内に流入、流出させる冷却水の入口温度と出口温度との差がほぼなくなった時(即ち重合反応による発熱がなくなった時)に、完了したと判断される。重合の際に仕込まれる水、分散剤及び開始剤は、通常単量体100重量部に対して、水20〜500重量部、分散剤0.01〜30重量部、重合開始剤0.01〜5重量部である。
【0099】
溶液重合の場合には、重合媒体として水の代わりに、例えばトルエン、キシレン、ピリジン等の有機溶媒を使用する。分散剤は必要に応じて用いられる。その他の重合条件は、一般に懸濁重合についての重合条件と同様である。
【0100】
塊状重合の場合には、重合器内を約0.01〜760mmHg(0.001〜101kPa)の圧力に排気した後、その重合器内に単量体及び重合開始剤を仕込み、−10〜250℃の反応温度で重合する。例えば、塩化ビニルの重合の場合には、30〜80℃で行い、スチレンの重合の場合には50〜150℃で重合を行う。
【0101】
【実施例】
以下実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、「部」は「重量部」を意味し、また表中の「助剤」は「重合体スケール付着防止助剤」を意味する。
縮合生成物の製造
以下の製造例において、得られた縮合生成物の重量平均分子量は次のようにして測定した。
【0102】
・重量平均分子量の測定
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により、下記の測定条件で、ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
【0103】
製造例1
縮合生成物 No.1 の製造
耐圧反応器にメタノール30,000モル(960kg)、1,8−ジアミノナフタレン100 モル(15.8kg)、パラベンゾキノン50モル(5.4kg) 、ピロガロール250 モル(31.5kg)を仕込み、撹拌しながら70℃に昇温した。70℃で10時間反応させた後、冷却し、縮合生成物(縮合生成物 No.1)のメタノール溶液を得た。縮合生成物 No.1の重量平均分子量は3,500 であった。
【0104】
製造例2
縮合生成物 No.2 の製造
特公平6−62709 の製造例3を参照してスケール防止剤を製造した。
耐圧反応器に2,2′−ジヒドロキシビフェニル30モル(5.59kg) 、純度95%のパラホルムアルデヒド30モル(0.948kg) 、パラトルエンスルホン酸0.19kg及びエチレングリコールジメチルエーテル10Lを仕込み、撹拌しながら130 ℃に昇温した。130 ℃で17時間反応させた後、50℃に冷却し、反応混合物を水50L中に投入した。水に投入することにより析出した樹脂を濾別、水洗後乾燥して、5.1kg の2,2′−ジヒドロキシビフェニル−ホルムアルデヒド縮合樹脂(縮合生成物No. 2)を得た。縮合生成物No. 2の重量平均分子量は5,400であった。
【0105】
製造例3
縮合生成物 No.3 の製造
特開昭57−164107 の製造例1を参照して重合体スケール付着防止剤を製造した。
耐圧反応器に1−ナフトール250 モル(36.0kg)と1規定NaOH水溶液(NaOH 180モル、7.2kg 含有) 180 Lを仕込み、撹拌しながら、70℃に昇温した。次に、反応混合物にホルムアルデヒド(38w/v %水溶液19.75 L、250 モル)を1.5 時間に亘って滴下した。この間反応器の内温が80℃を越えないようにした。次に撹拌を続けながら反応混合物を3時間かけて60℃に冷却した。次に、反応混合物を98℃に昇温し、98℃で1.5 時間反応させた。その後反応混合物を冷却し縮合生成物(縮合生成物 No.3)のアルカリ性溶液を得た。縮合生成物 No.3の重量平均分子量は2,400 であった。
【0106】
製造例4
縮合生成物 No.4 の製造
特開昭57−192413 の塗布化合物の合成2を参照してスケール防止剤を製造した。
耐圧反応器にピロガロール100 モル(12.6kg)及び水100 Lを仕込み、ピロガロールを水に溶解させた。次に、得られた溶液にベンズアルデヒド 200モル(21.2kg)及びリン酸 300モル(29.4kg)を加え、それらの混合物を95 ℃で10時間反応させたところ、水に不溶な赤褐色の生成物が得られた。この水不溶性生成物をエ−テルで洗浄後、該水不溶性生成物中からメタノールでメタノール可溶性成分を抽出し、次に抽出液からメタノールを乾燥により除去して残渣として縮合生成物No.4(ピロガロールベンズアルデヒド縮合物)を得た。この縮合生成物No.4の重量平均分子量は4,500であった。
【0107】
製造例5
縮合生成物 No.5 の製造
特公昭59−16561の製造例Iを参照してスケール防止剤を製造した。
耐圧反応器にm−フェニレンジアミン100 モル(10.8kg)、レゾールシノール200 モル(22.0kg)及び触媒として35%塩酸1.04kg(HClとして10モル) を仕込み、305 ℃に昇温した。反応容器内の混合物が305 ℃に達したら、直ちに冷却した。昇温及び反応の過程で生成した水蒸気は除去し、内圧は150kPa以下に保った。冷却後、得られたm−フェニレンジアミン−レゾールシノール縮合物を粉砕した後、水洗、濾過、乾燥して縮合生成物 No.5を得た。重量平均分子量は4,000であった。
【0108】
製造例6
縮合生成物 No.6 の製造
特公昭59−16561の製造例VIを参照してスケール防止剤を製造した。
耐圧反応器にp−アミノフェノール100 モル(10.9kg)及び30%塩酸0.99kg(HClとして9.5 モル) を仕込み、169 ℃に昇温した。169 ℃に達したら、キシレン18Lを徐々に添加した。キシレンの添加目的は縮合反応中に生成する水を共沸混合物として除去するためである。次に、反応混合物を222 ℃に昇温し、222 ℃で3時間反応させた。反応中に発生するキシレンと水との混合蒸気を除去し、内圧は150kPa以下に保った。3時間の反応後、反応混合物を冷却した。得られた反応生成物(縮合生成物No.6)は固体であった。次に、該反応生成物を粉砕し微粒状態にした後、水で洗浄し、濾過しそして乾燥した。縮合生成物 No.6の重量平均分子量は2,500であった。
【0109】
製造例7
縮合生成物 No.7 の製造
特開昭54−7487 の実施例1を参照してスケール防止剤を製造した。
反応器にレゾールシノール200 モル(22.0kg)を仕込み、窒素雰囲気下で加熱した。レゾールシノールを300 ℃に昇温し、300 ℃で8時間反応させた後、冷却した。得られた固体状の自己縮合レゾールシノール(縮合生成物No.7)を粉砕した。縮合生成物 No.7の重量平均分子量は1,700であった。
【0110】
製造例8
縮合生成物 No. 8の製造
(1)(2,3−ジヒドロキシナフタレンの2量体化合物の合成)
還流コンデンサー付きの3Lのフラスコに、メタノール1350mLを仕込み、次いで2,3−ジヒドロキシナフタレン144g(0.9mol)を溶解させた。溶解後、65℃に昇温して還流しながら、塩化第2鉄6水和物243g(0.9mol)をメタノール450mLに溶解させたものを、30分間かけて滴下した。滴下終了後、還流状態のまま、5時間反応を続けた。次いで、反応液を希塩酸4.5L中に移し、12時間撹拌し、2,3−ジヒドロキシナフタレンの2量体化合物を生成した。得られた反応液をろ過して溶媒を除去した後、残留物を2Lの純水で2時間水洗し、次いで、再びろ過して塩化第2鉄6水和物を除去した。
得られた2,3−ジヒドロキシナフタレンの2量体化合物を40℃の乾燥機内で乾燥した。
【0111】
(2)還流コンデンサー付の3Lフラスコに純水1Lを仕込み、次いで水酸化ナトリウム5g、及び上記の(1)で得られた2,3−ジヒドロキシナフタレン2量体化合物50gを仕込んだ。次いで、70℃に昇温した後、37%ホルムアルデヒド水溶液12.75gを蒸留水237.3gに溶解させたものを、30分間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で5時間反応させ、その後、95℃に昇温し、更に2時間反応を続け、縮合生成物 No.8を得た。なお、この反応は、すべてN2雰囲気中で行った。
反応終了後、得られた縮合生成物 No.8を25℃に冷却し、N2雰囲気中で保存した。重量平均分子量は、22,000であった。
【0112】
製造例9
縮合生成物 No. 9の製造
還流冷却器を備えた内容積2Lの反応器に、メタノール450g及び水450gの混合溶媒を仕込み、続いてキノン化合物としてα−ナフトキノン100gと、水酸化ナトリウム10gを添加した。次に、前記反応器内を50℃に昇温して、該反応器内の混合物を50℃で24時間反応させた後、室温まで冷却した。このようにして縮合生成物 No.9の溶液を得た。縮合生成物 No.9の重量平均分子量は、3,000であった。
【0113】
製造例 10
縮合生成物 No.10 の製造
還流冷却器を備えた内容積20Lの反応器に、1−ナフトール1.5kgとトルエン7.5Lを入れ、得られた混合物を攪拌しながらトルエンが還流するまで昇温し加熱した。この温度で還流下、一塩化硫黄930mlを6時間かけて滴下した後、1時間そのままの温度で保持した。反応混合物を冷却後、ヘキサン5Lを撹拌下で添加し、反応生成物を沈殿させた。その後、濾過し、そして乾燥して、縮合生成物No.10を得た。縮合生成物No.10の重量平均分子量は、1,200であった。
【0114】
製造例 11
縮合生成物 No.11 の製造
還流冷却器を備えた内容積20Lの反応器に、水6.7L、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸1,786g(9.5モル)、レゾールシノール55g(0.5モル)及び NaOH 620g(15.5モル)を投入した後、撹拌しながら50℃に昇温した。50℃に達したら、反応混合物にホルムアルデヒドの30w/v%水溶液1.0L(ホルムアルデヒド10モル)を1時間にわたって滴下した。この間反応器の内温が55℃を超えないようにした。次にこうして得られた反応混合物を85℃に昇温し、85℃で3時間反応させた。その後得られた反応混合物を冷却し、縮合生成物(縮合生成物 No.11)のアルカリ性溶液を得た。縮合生成物 No.11の重量平均分子量は、2,200であった。
【0115】
<第一塗布液の調製>
第一塗布液 No.101 〜 126 の調製
表1に示した条件〔共役π結合化合物(A)、助剤(B)、pH調整剤、(A)/(B)の重量比、(A)+(B)の合計濃度、溶媒組成、及びpH〕になるように、表1に示した共役π結合化合物、pH調整剤及び溶媒を用いて、第一層形成用の第一塗布液を調製した。
但し、塗布液 No.102はスプレー塗布用に低濃度に調製されたスケール防止剤含有塗布液である。なお、水溶性高分子化合物を使用する塗布液は室温では、水溶性高分子化合物(B)が溶解し難いので、約70℃に溶媒を加熱し、溶解した。
【0116】
塗布液 No.127 〜 131 の調製
共役π結合化合物として下記の化合物I〜V:
I :フェナントレン−1,2−キノン
II :フラボノール
III :フェノチアジン
IV :1,8−ジアミノナフタリン
V :アントラキノンアクリドリン
を使用し、表2に示す条件〔共役π結合化合物(A)、助剤(B)、pH調整剤、(A)/(B)の重量比、(A)+(B)の合計濃度、溶媒組成、及びpH〕となるように表1に示した化合物、pH調整剤及び溶媒を用いて第一塗布液を調整した。なお、以下の表では縮合生成物をCPと略記する。例えば、“CP 9”は「縮合生成物 No.9」を意味する。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
<第二塗布液の調製>
第二塗布液 No.201 〜 218 の調製
表3、表4に示した条件〔染料及び/又は顔料、その濃度、溶媒、pH調整剤及びpH〕になるように、表3、表4に示したpH調整剤及び溶媒を用いて、染料及び/又は顔料含有塗布液(第二塗布液)を調製した。
但し、塗布液 No.202は、スプレー塗布用に比較的低濃度に調製された塗布液である。
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
実施例1
図2は重合装置の構成の概略を示す。重合器については図1と共通する要素は同一番号で示す。図2に示す重合装置を用いて以下の実験を行った。図2において、内容積2m3の SUS 316 Lステンレス鋼製重合器1には攪拌翼20を有する撹拌装置21(攪拌モーターは図示せず)、加熱・冷却用ジャケット2、マンホール22、バッフル23及びその他塩化ビニル重合用の重合器に通常備わる付属設備(図示せず)が備えてある。重合器1の上部に接続されたライン24は原材料仕込用ラインであり、該ライン24に図示のように塩化ビニル単量体(VCM)仕込ライン24a、触媒溶液仕込ライン24b、懸濁剤溶液仕込ライン24c、純水仕込ライン24d等の分岐ラインが接続されている。この仕込ライン24及び24a〜24dには図示の位置にバルブV1、V2、V3、V4及びV5が設けられている。また、重合器1の上部に接続されたライン25は重合器1内の排気、単量体の回収等のために設けられ、ライン25から分岐したライン26を経てガスホルダー27に導かれる。ガスホルダー27から単量体回収ライン28が導出され、またガスホルダー27から導出されたライン29はライン25に接続され、後述の均圧操作に用いられる。これらのライン25、26、28及び29には、図示の位置にバルブV6、V7、V8、V9、V10、V11、V12及びV13が設けられている。ライン26は、重合器1内の排気、単量体の回収などのために使用される真空ポンプ30が設けられているライン26aとそのようなポンプが設けられていないライン26bに分岐した後再び一つのラインになってガスホルダー27に接続している。また、重合器1の上部には、重合器内の水洗を行うために、ライン31が接続されている。ライン31には図示の位置にバルブ14が設けられ、器内に導かれた先端にノズル32が設けられている。更に、重合器1の上部には、塗布液の供給ライン33に第一塗布液供給ライン34と第二塗布液供給ライン35が図示のようにバルブを介して接続している。さらに、ライン33にはスチーム供給ライン36がバルブを介して接続している。ライン33の器内にある先端には、塗布ノズル3a,3bが付設された塗布リング4が設けられている。これらのラインには図示の位置にバルブV15、V16、V17及びV18が設けられている。スチーム供給ライン36には、図示の位置にバルブ19が設けられている。重合器1の底にはライン37が接続され、これは重合体スラリーをブローダウンタンクへ導くライン38aと塗布液等や洗浄水を廃水タンクへ排出するライン38bとに分かれている。これらのライン38、38a、38bのそれぞれに図示の位置にバルブV20、V21及びV22が設けられている。
【0123】
各実験において使用した塗布液の No.を表5に示す。予め、後述する方法で重合器の内壁等の表面に塗布液を塗布し、必要ならば乾燥して塗膜を形成した重合器中で次のようにして塩化ビニル単量体の重合を繰返し行った。
(1) 塗布及び乾燥
図2に示す重合装置の重合器の内壁等に下記a),b),c)又はd)の方法で塗膜を形成する。なお、a),b)及びc)の方法は比較例の方法である。各方法の説明において、当初すべてのバルブは閉じているものとする。
【0124】
a).スプレー1段塗布及び乾燥
ジャケット2に熱水を通水して重合器1の内壁面を温度70℃に加熱しておく。(ジャケットでの予熱時間;10分)バルブV17、V16、V15、V20、V22を開き、スケール付着防止剤含有の第一塗布液を5L(リットル)/minの流量で1.5分間塗布する。バルブV17、V16、V15、V20、V22を閉じ、バルブV6、V8、V13、V9を開き、真空ポンプ30を起動し、−700mmHgに減圧し、湿潤状態の塗膜を乾燥し(乾燥が必要;乾燥時間:25分)、塗膜を形成する。その後、真空ポンプを停止し、バルブV8、V13、V9を閉じる。次に、バルブV7、V10を開け、重合器1の内圧をガスホルダー27の内圧と同圧にする。その後、バルブV6、V7、V10を閉じる。ジャケット2への熱水の通水を停止する。
【0125】
b).スプレー2段塗布及び乾燥
予めジャケット2に熱水を通水して重合器1の内壁面の温度を70℃に加熱しておく(ジャケットでの予熱時間:10分)。バルブV17、V16、V15、V20、V22を開き、スケール付着防止剤含有塗布液(下塗り)を5L/minの流量で1.5分間塗布する。バルブV17、V16、V15、V20、V22を閉じ、バルブV6、V8、V13、V9を開き、真空ポンプ30を起動し、−700mmHgに減圧し、塗布液を乾燥して(乾燥が必要;乾燥時間:25分)、第一層を形成する。その後、真空ポンプを停止し、バルブV8、V13、V9を閉じる。次に、バルブV7、V10を開いて重合器1の内圧をガスホルダー27の内圧と同圧にする。その後、V6、V7、V10を閉じる。次に、バルブV18、V16、V15、V20、V22を開き、重合体スケール付着防止助剤含有塗布液(上塗り)を5リットル/minの流量で1.5分間、上記第一層上に塗布する。バルブV18、V16、V15、V22、V20を閉じ、バルブV6、V8、V13、V9を開き、真空ポンプ30を起動し、−700mmHgに減圧し、塗布液を乾燥し(乾燥が必要;乾燥時間:25分)、第二層を形成する。その後、真空ポンプを停止し、バルブV8、V13、V9を閉じる。次にV7、V10を開いて重合器1の内圧をガスホルダー27の内圧と同圧にする。その後、V6、V7、V10を閉じる。ジャケット2への熱水の通水を停止する。
【0126】
c).スチーム1段塗布(及び同時乾燥)
予めジャケット2に熱水を通水して重合器1の内壁面を70℃に加熱しておく(ジャケットでの予熱時間:10分)。バルブV19、V22、V20、V15、V16を開き、4kgf/cm2G(143℃)のスチームを240kg/Hrの流量で3分間、重合器内に吹込み、器内を予熱後、バルブV17を開き、スケール付着防止剤を含有する塗布液を0.2 L/minの流量で2分間、前記スチームをキャリアーとして利用して塗布及び同時乾燥する。その後、バルブV19、V22、V20、V15、V16、V17を閉じる。 ジャケット2への熱水の通水を停止する。
【0127】
d).スチーム2段塗布(及び同時乾燥)
(1)塗布及び乾燥
予めジャケット2に熱水を通水して重合器1の内壁面の温度を70℃に加熱しておく(ジャケットでの予熱時間:10分)。バルブV19、V22、V20、V15、V16を開き、4kgf/cm2G(143℃)のスチームを240kg/Hrの流量で3分間、重合器1内に吹込み、器内を予熱後、バルブV17を開き、スケール付着防止剤含有第一塗布液(下塗り用)を0.2L/minの流量で2分間、前記スチームをキャリアーとして塗布及び同時乾燥して第一層を形成する。その後、バルブV17を閉じる。次にバルブV18を開き、助剤含有第二塗布液(上塗り用)を0.2リットル/minの流量で1分間、第一層上に前記スチームキャリアーを利用して塗布及び同時乾燥し、第二層を塗布する。その後、バルブV19、V22、V20、V15、V16、V18を閉じる。 ジャケット2への熱水の通水を停止する。
【0128】
(2)器内第2水洗
バルブV14、V20、V22、V6、V7、V10を開き、器内を水洗し、水洗後の水を廃水タンクに排出する。バルブV14、V20、V22を閉じる。
上記a)またはb)の方法を用いた場合はこの水洗時間は4分間である。上記c)又はd)の方法を用いた場合はこの水洗時間は1分間である。
【0129】
(3) 仕込み
バルブV1、V2、V3を開き、純水200重量部、部分ケン化ポリビニルアルコール0.022重量部、ヒドロキシメチルセルロース0.028重量部を重合器1内に仕込む。バルブV1、V2、V3、V6、V7、V10を閉じる。
次にバルブV1、V5を開き、塩化ビニル単量体(VCM)100重量部を仕込み、バルブV5を閉じる。次に仕込んだ原材料を攪拌しながら、バルブV4を開き、t−ブチルパーオキシネオデカネート0.03重量部を仕込み、バルブV1、V4を閉じる。
(4) 重合
仕込んだ原材料を攪拌しながら、ジャケット2に熱水を通水して昇温し、内温が52℃に到達した時点でジャケット2に冷却水を通して内温を52℃に維持し重合を行った。器内の圧力が5kgf/cm2に降圧した時点で重合を終了した。
(5) 排ガス
バルブV6、V8、V12、V9を開とし、器内圧がほぼ大気圧となるまで、ガスホルダー27に排ガスする。その後バルブV12、V8、V9を閉じる。バルブV11、V10を開いてガスホルダー27内に回収された単量体をライン28を介してVCM回収工程へ送り、その後、バルブV11、V10を閉じる。
【0130】
(6) 均圧
バルブV7、V10を開き、重合器1の内圧とガスホルダー27の内圧とを同圧(均圧)にする。
(7) スラリー抜出し
バルブV20、V21を開き、重合体スラリーを器内からブローダウンタンク(図示せず)に抜出す。ブローダウンタンクに抜出された重合体スラリーは、その後、脱水乾燥されて塩化ビニル重合体製品となる。
(8) 器内第1水洗
バルブV14を開き重合器1内を水洗し、洗浄水をブローダウンタンクに送る。その後バルブV14、V20、V21、V6、V7、V10を閉じる。この器内の水洗中に、ジャケット2に熱水を通して重合器壁面の温度を70℃にしておく。
上記の塗布及び乾燥(1)から重合終了後の第1水洗(8)までの操作を1バッチとして、同じ操作を表6に示すバッチ数繰返した。
【0131】
<評価>
・塗膜形成所要時間
実施例及び比較例で塗膜の形成に要した所要時間を表5に示す。
・重合体スケール付着量の測定
各実験で、最終バッチ終了後に重合器内液相部の重合体スケール付着量、攪拌翼及びバッフル表面及び気相部と液相部との界面付近の重合体スケール付着量を下記の方法で求めた。
対象表面の10cm×10cmの区域に付着したスケールを、肉眼で確認し得る限り完全にへらで掻き落として、天秤で計量した。その計量値を100倍することにより、1m2当たりのスケール付着量を求めた。その結果を表7に示す。
・フィッシュアイの測定
また、各実験で最終バッチ終了後に得られた重合体をシ−トに成形したときのフィッシュアイを、下記の方法で測定した。結果を表8に示す。
重合体100 重量部、ジオクチルフタレート50重量部、ジブチルすずジラウレート1重量部、セチルアルコール1重量部、酸化チタン0.25重量部及びカーボンブラック0.05重量部を、6インチロールを用いて150 ℃で7分間混練した後、厚さ0.2mm のシートに成形した。得られたシートの100cm2当たりに含まれるフィッシュアイの個数を光透過法により調べた。
【0132】
・明度指数(L値)の測定
重合体をシ−トに成形した時の、初期着色を評価するため、明度指数(L値)を下記の方法で測定した。その結果を表8に示す。
得られた重合体100 重量部、ジブチル錫ラウレ−ト系安定剤(昭島化学(株)製、TS−101) 1重量部及びカドミウム有機複合体系安定剤(勝田化工(株)製、C−100J) 0.5 重量部並びに可塑剤としてジオクチルフタレ−ト50重量部の混合物を、2本ロールミルを用いて160℃で5分間混練した後、厚さ1mmのシ−トに成形した。得られたシ−トを4×4×1.5cm の型枠に入れ、次いで160℃の温度で65〜70kgf/cm2に加圧することにより、測定用試料を作製した。この試料の明度指数Lを、以下のようにして求めた。
【0133】
まず、JIS Z 8722に従い、標準光C及び光電色彩計〔日本電色工業(株)製、Z−1001 DP 型測色色差計〕を用いて、刺激値直読方法により、XYZ 表色系の刺激値Yを求めた。ここで、照明及び受光の幾何学的条件は、JIS Z 8722の4.3.1 項に記載の条件dを採用した。
次いで、得られた刺激値Yを、JIS Z 8730(1980)に記載のハンタ−の色差式:
L=10Y1/2
に代入して、L値を算出した。なお、L値が大きいほど白色度が高い、すなわち、初期着色が良好であることを示す。
【0134】
・着色粒子の測定
各実験で最終バッチ終了後に得られた重合体100重量部、安定剤として〔日東化成(株)製、TVS N−2000E〕2重量部、及び可塑剤としてジオクチルフタレート20重量部の混合物を、十分に混錬した後、160mm×130mm×3mmの型枠に入れ、175℃の温度、35kgf/cm2の圧力で加圧成形することにより、測定用試料を作製した。この試料について、着色粒子の個数を目視により調べた。その結果を表8示す。
・塩化ビニル単量体浸漬後の水接触角の測定
第一塗布液の塗布後に得られた第一層の表面、及び第二塗布液の塗布後に選られた第二層の表面の塩化ビニル単量体浸漬後の水接触角を下記の方法で求めた。結果を表6に示す。
【0135】
a−1)スプレー1段塗布の場合のサンプル作成
重合器の内壁面の気液界面付近の円周に沿ってステンレス鋼製(SUS316L)の20mm×20mm×厚さ1mmのテストピ−ス6ヶを等間隔で貼り付ける。その後、前記塗膜形成法a)に従い、重合器内にスプレー1段塗布で塗膜を形成させる。その後、重合器内よりテストピ−スを取り出す。これをスプレー1段塗布塗膜のテストピ−スとする。
a−2)スプレー2段塗布の場合のサンプル作成
イ)スプレー2段塗布の第一層のサンプル作成
a−1)と同様にしてテストピ−スを重合器内壁面に6ヶ貼り付ける。その後、塗膜形成法b)に従い、しかし重合器内に第一層のみを形成させる。その後、重合器内よりテストピ−スを取り出し、これをスプレー2段塗布の第一層のテストピ−スとする。
ロ)スプレー2段塗布の2段目塗布塗膜のサンプル作成
a−1)と同様にして、テストピ−スを重合器内壁面に6ヶ貼り付ける。その後、塗膜形成法b)に従い重合器内に第一層を形成し、更に重合器内に第二層を形成させる。その後、重合器内よりテストピ−スを取り出し、これをスプレー2段塗布の場合の塗膜のテストピ−スとする。
【0136】
a−3)スチーム1段塗布の場合のサンプル作成
a−1)と同様にしてテストピ−スを重合器内壁面に6ヶ貼り付ける。その後、前記塗膜形成法c)に従い、重合器内に塗膜を形成させる。その後、重合器内よりテストピ−スを取り出し、これをスチーム1段塗布塗膜のテストピ−スとする。
a−4)スチーム2段塗布の場合のサンプル作成
イ) スチーム2段塗布の第一層のサンプル作成
a−1)と同様にしてテストピ−スを重合器内壁面6ヶに貼り付ける。その後、塗膜形成法d)に従い、しかし重合器内に第一層のみを形成させる。その後、重合器内よりテストピ−スを取り出し、これをスチーム2段塗布の第一層のテストピ−スとする。
ロ)スチーム2段塗布の2段目塗布塗膜のサンプル作成
a−1)と同様にしてテストピ−スを重合器内壁面に6ヶ貼り付ける。その後、前記塗膜形成法d)に従い重合器内に第一層を形成し次いで第二層させる。その後、重合器内よりテストピ−スを取り出し、これをスチーム2段塗布の場合のテストピ−スとする。
【0137】
塗膜形成テストピ−スの塩化ビニル単量体への浸漬
内壁面にテストピ−スを固定することのできる溝を設けてある撹拌機付きの2L耐圧容器を用いる。上記のようにして塗膜を形成したテストピ−スを該耐圧容器の溝に差し込んで、該耐圧容器内壁面に塗膜形成表面が内側になるよう(表に出るよう)にテストピ−スを取り付ける。
【0138】
このように内壁面にテストピ−スが取り付けた耐圧容器内に水600g及び塩化ビニル単量体600gを仕込み、テストピ−スをこれらの内容物に浸漬させる。次に攪拌しながら耐圧容器の内容物を50℃に昇温し、50℃に維持して1時間撹拌を続ける。次に内容物を室温まで冷却する。また、同時に耐圧容器内にある塩化ビニル単量体の回収を開始する。塩化ビニル単量体の回収後、水を耐圧容器内より抜き出す。次にテストピ−スを耐圧容器の内壁面から取りはずして、真空乾燥器中、乾燥温度は50ア1℃、乾燥時間2時間で乾燥する。乾燥後、テストピースをデシケータに移し、20℃で一昼夜放置する。こうして、水接触角測定用テストピースを得る。
【0139】
水接触角の測定
上記得られた水接触角測定用テストピ−ス上の塗膜表面の空気中、20℃の室内で水に対する接触角を接触角計〔協和界面科学(株)製 CA−A型〕を用いて、液滴法で求めた。テストピ−ス1片につき5ヶ所測定し、テストピ−ス6片測定値の平均値を求め、当該実験で得られた塗膜の水接触角とした。
【0140】
【表5】
【0141】
【表6】
*:比較例
【0142】
【表7】
*:比較例
【0143】
【表8】
*:比較例
【0144】
【発明の効果】
本発明の重合方法によれば、スケール防止剤等の塗膜形成工程時間を短縮して生産性を向上すると共に、塩化ビニル単量体を重合する際に、重合器内の液相部壁面ばかりでなく、攪拌装置、壁面に対面しているバッフル表面、気相と液相との界面付近などにおいても、重合体スケールの付着を効果的に防止することができる。このため、得られる重合体製品の品質が向上し、重合体中の着色粒子を従来より極めて少なくすることができる上、該重合体をシ−ト等に成形した成形物には、フィッシュアイが極めて少なく、且つ初期着色も極めて少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施する重合装置の概略図である。
【図2】本発明の方法を実施する別の重合装置の概略図である。
【符号の説明】
1.重合器
4.塗布リング
6.スチーム供給ライン
7.第一塗布液供給ライン
8.第二塗布液供給ライン
17.洗浄水供給ライン
20.撹拌翼
23.バッフル
24.原材料供給ライン
27.ガスホルダー
31.洗浄水供給ライン
34.第一塗布液供給ライン
35.第二塗布液供給ライン
36.スチーム供給ライン
Claims (8)
- エチレン性二重結合を有する単量体を重合器内において重合することからなる重合体の製造方法であって、
前記重合器はその内壁面及び重合中に前記単量体が接触するその他の表面に重合体スケール付着防止性の塗膜を有するものであり;
該塗膜は前記内壁面及びその他の表面の上に形成された第一層と、該第一層の上に形成された第二層とからなり、
前記第一層は共役π結合を5個以上有する芳香族化合物及び共役π結合を5個以上有する複素環式化合物からなる群から選ばれた化合物を含有する第一塗布液を、キャリアーとして水蒸気を用いて塗布して形成されたものであり、前記第二層は第一層の上に第二塗布液をキャリアーとして水蒸気を用いて塗布して形成されたものであり;
前記第二層は、染料及び顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、その表面を水と塩化ビニル単量体とを重量比1/1で含む混合溶液と50℃で1時間接触させた後に水接触角が60°未満である表面を有するものである;
ことを特徴とするエチレン性二重結合を有する単量体の重合方法。 - 請求項1に記載の方法であって、形成後の第一層が、その表面を水と塩化ビニル単量体とを重量比1/1で含む混合溶液と50℃で1時間接触させた後に水接触角が60°以上である表面を有するものであることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法であって、第一塗布液に含まれる前記の共役π結合含有化合物が、芳香族化合物の重量平均分子量500以上である縮合生成物であることを特徴とする方法。
- 請求項3に記載の方法であって、前記の縮合生成物の重量平均分子量が500〜70,000であることを特徴とする方法。
- 請求項3に記載の方法であって、前記の芳香族化合物の縮合生成物が、アルデヒド化合物/芳香族ヒドロキシ系化合物縮合生成物、ピロガロール/アセトン縮合生成物、多価フェノール自己縮合生成物及び多価ナフトール自己縮合生成物、芳香族アミン系化合物縮合生成物、キノン系化合物縮合生成物、および芳香族ヒドロキシ系化合物のスルフィド化合物からなる群から選ばれることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法であって、前記第一塗布液が、水、又は水と混和性を有する親水性有機溶媒と水との混合溶媒中にピロガロール/アセトン縮合生成物、多価フェノール自己縮合生成物及び多価ナフトール自己縮合生成物からなる群から選ばれる化合物を含み、pH=2.0〜6.5の溶液であることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法であって、前記第一塗布液が、水、又は水と混和性を有する親水性有機溶媒と水との混合溶媒中にアルデヒド化合物/芳香族ヒドロキシ系化合物縮合生成物、芳香族アミン系化合物縮合生成物、及びキノン系化合物縮合生成物からなる群から選ばれる化合物を含み、pH7.5〜13.5の溶液であることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法であって、第一塗布液の塗布及び第二塗布液の塗布のいずれの場合も、キャリアーとして使用される水蒸気(G)と塗布液(L)との混合比(L/G)が重量基準の流量比で0.005〜0.8であることを特徴とする方法。
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