JP3665417B2 - 流体シール構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピストンあるいはシリンダチューブに設けられる流体シール構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、流体圧シリンダ装置では、シリンダチューブ内に収容されるピストンの外周面に、ピストンにて区画形成される両圧力室を密封する流体シール構造が設けられている。比較的小型のシリンダ装置では、シール構造として周溝にOリング等のスクイーズパッキンを収容したものが多い。なぜなら、スクイーズパッキンは、リップパッキンに較べて、周溝の運動方向の幅を小さくすることができるため、ピストンの幅、ひいては、シリンダチューブの長さを小さくすることができるためである。又、スクイーズパッキンは、リップパッキンに較べて使い勝手が良いためである。
【0003】
ところが、スクイーズパッキンは、パッキン全体の圧縮変形により予圧(流体圧力によらない初期圧力)及び接面圧力(流体圧力により発生する圧力)を発生するようになっているため、予圧及び接面圧力からなる全接面圧力がリップパッキンよりも高くなっている。このため、リップパッキンよりも摩擦抵抗が大きくなっているため、ピストンの動作特性が劣る問題がある。
【0004】
そこで、摩擦抵抗を小さくするため、図8に示すように、Oリング50の外周側にシールリング51を設けたシール構造がある。
Oリング50はピストン52の周溝53の底面53aとシールリング51の内周面51aとの間で挟持された状態で予圧を発生する。そして、周溝53内に作動流体が導入されると、Oリング50が変形して接面圧力を発生する。このとき、シールリング51が全接面圧力により、シリンダチューブ54の内周面54aに押圧されることにより、内周面54aとシールリング51との間が密封されるようになっている。同時に、Oリング50は、周溝53及びシールリング51の内周面51aとの間をそれぞれ密封する。
【0005】
従って、Oリング50の代わりに摩擦抵抗が小さいシールリング51がシリンダチューブ54の内周面54aに摺接するため、ピストン52の動作特性が向上する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、流体圧シリンダが長期間に渡って繰り返し使用されると、シールリング51の外周面51bが摩耗する。すると、シールリング51が自己の弾性により拡開するため、その内周面51aの内径が次第に大きくなる。従って、シールリング51の内周面51bと、周溝53の底面53aとの距離が大きくなるため、シールリング51にOリング50から加えられる予圧さらに接面圧力がその初期値から減少する。その結果、シールリング51がシリンダチューブ54の内周面54aに押圧される圧力が不足し、シールリング51と内周面54aとの間の気密性が徐々に低下していた。このため、ピストン52の動作特性を長期間に渡って高い状態で維持することができなかった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、シールリングと環状弾性シール部材との組合せで構成されるシール構造において、密封性能が長期間に渡って高い状態で維持されるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、請求項1に記載の発明は、互いに相対移動する一方の部材の摺動面に相対向する他方の部材の対向面に設けられる周溝の底側に配設される環状弾性シール部材と、前記周溝の開口側に配設され、前記環状弾性シール部材にて開口側に付勢されて前記摺動面に圧接されるシールリングとを備え、前記環状弾性シール部材と前記シールリングとにより、前記周溝の両側で両部材間を密封する流体シール構造であって、前記環状弾性シール部材は、前記周溝内に導入される流体の圧力により開口側に弾性変形して、前記シールリングを開口側に付勢する環状付勢部と、前記環状付勢部と同じく流体の圧力により弾性変形して周溝の内側面に圧接する環状リップとを備え、前記環状リップと前記周溝の底面との間には隙間が設けられているものとした。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、環状弾性シール部材は、前記環状付勢部から前記シールリングに対して予圧を与えるように形成した。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記環状弾性シール部材は、断面がほぼ「L」字形状に一体成形されている。
【0010】
以下、上記各請求項に記載の発明の作用を記載する。
請求項1に記載の発明によれば、環状弾性シール部材が底側に、シールリングが開口側に収容される周溝に流体が導入されると、環状弾性シール部材の環状付勢部が流体の圧力により開口側に弾性変形してシールリングを開口側に付勢する。同時に、リップが流体の圧力により弾性変形して周溝の内周面に圧接する。従って、シールリングの押圧と、周溝とシールリング間の密封とが、スクイーズパッキンのようにパッキン全体の圧縮変形により行われるのではなく、独立して弾性変形する別部分で行われる。その結果、シールリングの摺動面側が摩耗してシールリングの環状シール部材との当接面が周溝の開口側に移動しても、基部からシールリングには流体の圧力に基づく接面圧力が加えられる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、環状付勢部からシールリングに予圧が与えられるため、シールリングが常時予圧以上の全接面圧力で摺動面に圧接される。その結果、作動流体の圧力が低いときにも、シールリングが流体の圧力以上の全接面圧力で摺動面に圧接される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をエアシリンダに具体化した一実施の形態を図1〜図5に従って説明する。
【0014】
図4は、エアシリンダ1の断面を示している。このエアシリンダ1は、シリンダチューブ2を備え、このシリンダチューブ2の両端にはヘッドカバー3及びロッドカバー4が固着されている。そして、ヘッドカバー3及びロッドカバー4にて、シリンダチューブ2の内側にピストン室5が形成されている。ピストン室5にはピストン6がシリンダチューブ2の中心軸線方向に往復移動可能に収容され、このピストン6によりピストン室5がヘッド側圧力室5A及びロッド側圧力室5Bに区画されている。ピストン6にはピストンロッド7が固定され、このピストンロッド7は前記ロッドカバー4を貫通して外部に導出されている。ヘッドカバー3には、ヘッド側圧力室5Aに連通するヘッド側ポート8が設けられ、ロッドカバー4にはロッド側圧力室5Bに連通するロッド側ポート9が設けられている。そして、各ポート8,9を介して一方の圧力室5A,5Bに流体を供給するとともに、他方の圧力室5A,5Bから流体を排気することにより、ピストン6がヘッド側またはロッド側に駆動される。
【0015】
ピストン6には一対の周溝10,11が形成され、各周溝10,11にはそれぞれシール構造が設けられている。以下、そのシール構造を詳述する。なお、各シール構造は、方向性があるだけで同一の構成であるため、一方のシール構造のみを説明し、他方のシール構造は同一の番号を付してその説明を省略する。
【0016】
図1に示すように、周溝10は、外側面10a、内側面10b及び底面10cとにより形成されている。周溝10の底面10c側には環状弾性シール部材(以下、単にシール部材とする)12が収容され、開口側にはシールリング13が収容されている。
【0017】
シールリング13はフッ素樹脂等で一体成形されている。図5に示すように、シールリング13は1箇所で鍵状に分断された環状に形成され、自然状態ではその外径がシリンダチューブ2の摺動面である内周面2aの内径よりもやや大きいように形成されている。従って、シールリング13は、その分断部14の両端が互いに近づくように弾性変形させることにより、その外径をシリンダチューブ2の内周面2aの内径と同じにした状態で周溝10に収容されている。
【0018】
前記シール部材12は、ウレタンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムであって、図2,3に示すように、断面がほぼ「L」字形状に一体成形されている。シール部材12は、外周側を構成するほぼ筒状の環状付勢部15と、同環状付勢部15の一側端部から内周側に拡がるように形成される環状リップ16とから構成されている。
【0019】
前記環状付勢部15は、自然状態における外径が、周溝10に収容された状態のシールリング13の内径とほぼ同じに形成されている。環状付勢部15は、その中心軸線方向の長さが周溝10の溝幅よりも小さく形成されている。環状付勢部15は、周溝10にエアが流入すると、その圧力により径が拡大するように弾性変形可能に形成されている。
【0020】
前記環状リップ16は、周溝10に作動流体が導入されると、その圧力により内側面側にたわむように弾性変形可能に形成されている。環状リップ16の内周端の内径は、周溝10の底面10cの外径よりも大きく形成されている。
【0021】
従って、シール部材12は、周溝10に収容された状態で、シリンダチューブ2の中心軸線方向に移動可能になっている。
又、周溝11にも、環状弾性シール部材12及びシールリング13からなるシール構造が設けられている。但し、この周溝11のシール構造は、環状弾性シール部材12の向きが前記周溝10における環状弾性シール部材12の向きとは反対方向に配置されている。
【0022】
次に、以上のように構成されたシール構造の作用について説明する。
ヘッド側圧力室5Aにエアが供給されるとともにロッド側圧力室5Bからエアが排気されると、ピストン6がロッド側に駆動される。すると、周溝10にはヘッド側圧力室5Aからエアが流入する。このとき、シール部材12が周溝10の外側面10a側に配置された状態であっても、エアの圧力により環状リップ16が内側面10bに当接する位置に配置される。
【0023】
ヘッド側圧力室5Aから周溝10にエアが流入すると、環状付勢部15がエアの圧力により拡開するように弾性変形してシールリング13を外周側に付勢するため、シールリング13がエアの圧力による全接面圧力で内周面2aに圧接される。その結果、シールリング13の外周面13aとシリンダチューブ2の内周面2aとの間が密封されるとともに、シールリング13と環状付勢部材15との間が密封される。同時に、環状リップ16がエアの圧力により内側面10b側に弾性変形してその先端部16aが内側面10bに圧接され、周溝10とシール部材12との間が密封される。従って、周溝10に設けられるシール機構により、ヘッド側圧力室5Aからロッド側圧力室5Bへのエアの流出が規制される。
【0024】
反対に、ロッド側圧力室5Bにエアが供給されヘッド側圧力室5Aからエアが排気されるときには、周溝11側に設けられたシールリング13及びシール部材12にて構成されるシール構造によりロッド側圧力室5Bからヘッド側圧力室5Aへのエアの流入が規制される。
【0025】
又、シールリング13の外周面13aとシリンダチューブ2の内周面2aとが繰り返し摺接してシールリング13の外周面が摩耗すると、シールリング13は自己の弾性により径が拡大するように弾性変形する。その結果、シールリング13の内周面13bが外周側に移動する。
【0026】
この状態で、ヘッド側圧力室5Aから周溝10にエアが流入すると、環状付勢部15と環状リップ16とが独立した状態で弾性変形するため、エアの圧力により環状付勢部15が外周側にさらに弾性変形してシールリング13を外周側に付勢するとともに、環状リップ16が内側面10b側に弾性変形する。従って、シールリング13がエアの圧力による全接面圧力で内周面10bに圧接され、環状リップ16の先端部16aが内側面10bに圧接される。
【0027】
その結果、シールリング13の外周面13aとシリンダチューブ2の内周面2aとの間が密封されるとともに、シールリング13と環状付勢部材15との間が密封される。それとともに、周溝10と環状リップ16との間が密封される。ゆえに、シールリング13が摩耗した状態でも、圧力室5A,5B間の密封が確実に行われる。
【0028】
以上詳述したように本実施の形態のシール構造によれば、以下の効果を得ることができる。
(a) 周溝10内で、シールリング13とともにシール構造を構成する環状弾性シール部材12を、エアの圧力により弾性変形してシールリング13を周溝10の開口側に付勢する環状付勢部15と、エアの圧力により弾性変形して周溝10の内側面10bに圧接する環状リップ16とから構成した。従って、シールリング13の付勢と周溝10への圧接が、シール部材12において独立して弾性変形する別部分で行われる。その結果、シールリング13が摩耗したときにも、エアの圧力により環状付勢部15が弾性変形してシールリング13を内周面2aに圧接するとともに、環状リップ16がエアの圧力により弾性変形してその先端部16aが内側面10bに圧接する。ゆえに、シールリング13が摩耗した状態でも両圧力室5A,5B間の密封を確実に行うことができるため、ピストン6の動作特性を長期間に渡り維持することができる。
【0029】
又、シールリング13から内周面2aに作用する全接面圧力は、エアの圧力によるものであり予圧がほとんどないため、エアの圧力に応じた全接面圧力を得ることができる。従って、摩擦抵抗をエアの圧力に応じた大きさにすることができるため、ピストン6の動作特性をエアの圧力に応じて最適なものとすることができる。
【0030】
〔参考例1〕
次に、本発明の参考例1を図6に従って説明する。尚、本参考例1は、前記実施の形態において、その環状弾性シール部材12を環状弾性シール部材20に代えたことだけが異なる。従って、環状弾性シール部材20のみを詳述し、同一の構成のついては符号を同じにしてその説明を省略する。
【0031】
環状弾性シール部材(以下、シール部材)20は、図6に示すように、合成ゴムよりなり、その断面がほぼ「コ」字形状に一体成形されている。シール部材20は、円環状の基部21と、該基部21の外周端から一方に延びる環状付勢部22と、基部21の内周端から環状付勢部22と同方向に延びる環状リップ23とから構成されている。前記基部21は、周溝10の内側面10bに当接されている。
【0032】
前記環状付勢部22は、自然状態における外周端の外径が、周溝10に収容されたシールリング13の内径よりもやや大きく形成されており、周溝10に収容された状態では中心軸線方向にたわんだ状態となっている。環状付勢部22は、周溝10にエアが流入すると、その圧力によりその径が拡大するように弾性変形可能に形成されている。尚、環状付勢部22は、その中心軸線方向の長さが周溝10の溝幅よりも小さく形成されている。
【0033】
一方、前記環状リップ23は、自然状態におけるその先端部23aの内径が、周溝10の底面10cの径よりもやや小さく形成されており、周溝10に収容された状態では外周方向にたわんだ状態となっている。環状リップ23は、周溝10にエアが流入すると、その圧力により中心軸線側にたわむように弾性変形可能に形成されている。尚、環状リップ23も、その中心軸線方向の長さが周溝10の溝幅よりも小さく形成されている。
【0034】
従って、シール部材20は、周溝10に収容された状態では、シールリング13を外周側に付勢している。
又、周溝11にも、環状弾性シール部材20及びシールリング13からなるシール構造が設けられている。但し、この周溝11のシール構造においては、環状弾性シール部材20の向きが前記周溝10における環状弾性シール部材20の向きとは反対方向に配置されている。
【0035】
次に、以上のように構成されたシール構造の作用について説明する。
周溝10にエアが流入すると、環状付勢部22がエアの圧力により径が拡大するように弾性変形してシールリング13を外周側に付勢するため、シールリング13がエアの圧力による接面圧力及び予圧からなる全接面圧力で内周面2aに圧接される。同時に、環状リップ23がエアの圧力により底面10c側に弾性変形するため、その先端部23aがエアの圧力及び予圧からなる圧力で底面10cに圧接される。その結果、シール機構により、ヘッド側圧力室5Aからロッド側圧力室5Bへのエアの流出が規制される。
【0036】
反対に、ロッド側圧力室5Bにエアが供給されヘッド側圧力室5Aからエアが排気されるときには、周溝11側に設けられたシールリング13及びシール部材12にて構成されるシール構造によりロッド側圧力室5Bからヘッド側圧力室5Aへのエアの流入が規制される。
【0037】
このとき、環状付勢部22からはシールリング13に対して予圧が与えられ、環状リップ23から底面10cに対して予圧が与えられている。従って、エアの圧力が低いときでも、シールリング13が予圧以上の全接面圧力で内周面2aに圧接され、又、環状リップ23が底面10cに予圧以上の圧力で圧接されるため、両圧力室5A,5Bが確実に密封される。
【0038】
又、シールリング13が摩耗してその内周面13bが外周側に移動したときにも、環状付勢部22と環状リップ23とが独立した状態で弾性変形するため、エアの圧力により環状付勢部22が外周側に弾性変形してシールリング13を外周側に付勢するとともに、環状リップ23が底面側10cに弾性変形する。従って、シールリング13がエアの圧力による全接面圧力で内周面2aに圧接され、環状リップ23の先端部23aが底面10cに圧接される。
【0039】
その結果、シールリング13の外周面13aとシリンダチューブ2の内周面2aとの間が密封されるとともに、シールリング13と環状付勢部材22との間が密封される。それとともに、周溝10と環状リップ23との間が密封される。ゆえに、シールリング13が摩耗した状態でも、圧力室5A,5B間の密封が確実に行われる。
【0040】
以上詳述したように、本参考例1のシール構造によれば、以下の効果を得ることができる。
(a) 環状弾性シール部材20を、内側面10bに当接する環状の基部21と、基部21の外周端から延びる環状付勢部22と、基部21の内周端から延びる環状リップ23とから構成する。そして、環状付勢部22はエアの圧力により弾性変形してシールリング13を周溝の開口側に付勢し、環状リップ23はエアの圧力により弾性変形して周溝10の底面10cに圧接するように形成した。従って、環状付勢部22及び環状リップ23が独立して弾性変形し、環状付勢部22がシールリング13の付勢及びシールリング13との間の密封を行い、環状リップ23が周溝10との間の密封を行う。その結果、シールリング13が摩耗したときにも、エアの圧力により環状付勢部22が弾性変形してシールリング13を内周面10bに圧接するとともに、環状リップ23がエアの圧力により弾性変形してその先端部23aが底面10cに圧接する。ゆえに、シールリング13が摩耗した状態でも両圧力室5A,5B間の密封を確実に行うことができるため、ピストン6の動作特性を長期間に渡って良好に維持することができる。
【0041】
(b) 環状付勢部22からシールリング13に予圧を与えるとともに、環状リップ23から底面10cに予圧を与えるように形成したので、エアの圧力が低いときでも予圧以上の接面圧力でシールリング13及び環状リップ23を圧接することができる。その結果、エアの圧力が低いときでも確実な密封を行うことができるため、低い圧力におけるピストン6の動作特性を高めることができる。
【0042】
〔参考例2〕
次に、本発明の参考例2を図7に従って説明する。尚、本参考例2は、前記実施の形態において、ピストン6の周溝10を1本とし、環状シール部材30を両方向で密封可能な形状としたことのみが異なる。従って、環状シール部材30のみを詳述し、同一の構成については符号を同じにしてその説明を省略する。
【0043】
環状シール部材(以下、シール部材)30は、図7に示すように、合成ゴムにて一体成形されている。シール部材30は、環状付勢部31と、該環状付勢部31の内周面中央から内周側に延びるリップ部32とから構成されている。
【0044】
前記環状付勢部31は、シールリング13の内周面13bに当接されている。環状付勢部31は、自然状態における外径が、周溝10に収容されたシールリング13の内周面13bの内径よりもやや大きく形成されており、周溝10に収容された状態では中心軸線方向に圧縮変形した状態となっている。環状付勢部31は、周溝10にエアが流入すると、その圧力によりその径が拡大するように弾性変形可能に形成されている。尚、環状付勢部31は、その中心軸線方向の長さが周溝10の溝幅よりもやや小さく形成されている。
【0045】
一方、前記リップ部32は、互いに反対方向に延びる一対の環状リップ33,34を備えている。第1の環状リップ33は、自然状態におけるその先端部33aの外径が、周溝10の底面10cの径よりもやや小さく形成されており、周溝10に収容された状態では外周方向にたわんだ状態となっている。同様に、第2の環状リップ34は、自然状態におけるその先端部34aの外径が、底面10cの径よりもやや小さく形成されており、周溝10に収容された状態では外周方向にたわんだ状態となっている。第1の環状リップ33は、周溝10にエアが流入すると、その圧力により中心軸線側にたわむように弾性変形可能に形成され、第2の環状リップ34は周溝10にエアが流入すると、その圧力により中心軸線方向にたわむように弾性変形可能に形成されている。尚、各環状リップ33,34の先端部33a,34a間の長さは、溝幅よりも小さく形成されている。
【0046】
次に、以上のように構成されたシール構造の作用について説明する。
圧力室5Aから周溝10にエアが流入すると、シール部材13が周溝10の圧力室5Aに近い側に配置された状態であっても、エアの圧力により環状付勢部31が内側面10bに当接する位置に配置される。
【0047】
すると、環状付勢部31がエアの圧力により径が拡大するように弾性変形してシールリング13を外周側に付勢するため、シールリング13がエアの圧力による接面圧力及び予圧からなる全接面圧力で内周面10bに圧接される。同時に、第1の環状リップ33がエアの圧力により中心軸線方向に弾性変形し、その先端部33aが周溝10の底面10cに圧接される。その結果、シール機構により、ヘッド側圧力室5Aからロッド側圧力室5Bへのエアの流出が規制される。
【0048】
このとき、環状付勢部31からシールリング13には予圧が与えられ、環状リップ33,34から底面10cに対して予圧が与えられている。従って、エアの圧力が低いときでもシールリング13が予圧以上の接触圧力で内周面2aに圧接され、又、環状リップ33,34が予圧以上の圧力で底面10bに圧接されるため、両圧力室5A.5Bが確実に密封される。
【0049】
以上の作用は、ロッド側圧力室5Bから周溝10にエアが流入した場合でも同様である。
シールリング13が摩耗してその内周面13bが外周側に移動したときでも、環状付勢部31と環状リップ33,34とが独立した状態で弾性変形するため、エアの圧力により環状付勢部31が外周側に弾性変形してシールリング13を外周側に付勢するとともに、第1の環状リップ33が底面10c側に弾性変形する。その結果、シールリング13がエアの圧力による全接面圧力で内周面2aに圧接され、第1の環状リップ33の先端部33aが底面10cに圧接される。
【0050】
従って、シールリング13の外周面13aとシリンダチューブ2の内周面2aとの間が密封されるとともに、シールリング13と環状付勢部材31との間が密封される。それとともに、周溝10と第1の環状リップ33との間が密封される。ゆえに、シールリング13が摩耗したときにも、圧力室5A,5B間の密封が確実に行われる。
【0051】
以上詳述したように、本参考例2のシール構造によれば、以下の効果を得ることができる。
(a) 環状弾性シール部材30を、環状付勢部31とリップ部32とから構成する。そして、環状付勢部31は、エアの圧力により弾性変形してシールリング13を周溝10の開口側に付勢するように形成し、リップ部32の各環状リップ33,34は、それぞれエアの圧力により弾性変形して周溝10の底面10cに圧接するように形成した。従って、環状付勢部31及び各リップ33,34が、それぞれ独立して弾性変形し、環状付勢部31がシールリング13の付勢及びシールリング13との間の密封を行い、各環状リップ33,34が周溝10との間の密封を行う。その結果、シールリング13が摩耗したときにも、エアの圧力により環状付勢部31が弾性変形してシールリング13を内周面2aに圧接するとともに、各環状リップ33,34がエアの圧力により弾性変形してその先端部33a,34aが底面10cに圧接する。ゆえに、シールリング13が摩耗した状態でも両圧力室5A,5B間の密封を確実に行うことができるため、ピストン6の動作特性を長期間に渡って良好に維持することができる。
【0052】
(b) ヘッド側圧力室5Aからのエアの流入を密封する第1の環状リップ33と、ロッド側圧力室5Bからのエアの流入を密封する第2の環状リップ34とからなるリップ部32を設けたので、周溝10のいずれの側からエアが流入する場合にも、エアを密封することができる。従って、1個のシール構造で、両方向のエアの流れを密封することができるため、ピストン6しいてはシリンダチューブ2の小型化を図ることができる上、部品点数及び組付工数を削減することができる。
【0053】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、以下のように構成することもできる。
(1) 上記実施の形態で、環状付勢部15の外側面10a側の端部にも環状リップを設けてもよい。この構成では、1つのシール構造で周溝10のいずれの側からエアが流入しても、エアを密封することができる。
【0054】
(2) ピストン6に設けられる周溝10に形成したが、図4に示すように、ロッドカバー4に設けた周溝40に環状弾性シール部材41及びシールリング42からなるシール構造を設けてもよい。このシール構造は、ピストンロッド7の摺動面7aとロッドカバー4との間を密封する。
【0056】
(3) 上記参考例3で、各環状リップ33,34が底面10cの代わりに外側面10a及び内側面10bに当接するように構成してもよい。この構成は本発明に係る実施の形態に相当するものであり、この構成によってシールリング13の摩耗に拘らず高い密封性能を得ることができる。
【0057】
(4) エアシリンダ1に実施したが、他の気体圧シリンダに実施してもよい。さらに、液体圧シリンダ等の流体圧シリンダに実施してもよい。
(5) 流体圧シリンダに限らず、その他、ポンプ等の摺動部分に使用してもよい。
【0058】
前記実施の形態から把握できる請求項以外の技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(1) 請求項1〜請求項3に記載のシール構造は、エアシリンダ用とする。
【0059】
このような構成によれば、エアシリンダにおけるシール構造の密封性能を長期間に渡って高い状態で維持することができる。
【0060】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、シールリングと環状弾性シール部材とで構成されるシール構造において、密封性能を長期間に渡り高い状態で維持させることができる。
【0061】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、流体の圧力が低いときでも、高い密封性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 エアシリンダに設けたシール機構の断面図。
【図2】 環状弾性シール部材の前方からの斜視図。
【図3】 環状弾性シール部材の後方からの斜視図。
【図4】 エアシリンダの断面図。
【図5】 シールリングの斜視図。
【図6】 参考例1のシール機構の断面図。
【図7】 参考例2のシール機構の断面図。
【図8】 従来例のシール機構の断面図。
【符号の説明】
1…部材としてのシリンダチューブ、6…部材としてのピストン、10…周溝、12…環状弾性シール部材、13…シールリング、15…環状付勢部、16…環状リップ、22…環状付勢部、23…環状弾性シール部材、31…環状付勢部、33…第1の環状リップ、34…第2の環状リップ。
Claims (3)
- 互いに相対移動する一方の部材(2)の摺動面(2a)に相対向する他方の部材(6)の対向面に設けられる周溝(10)の底側に配設される環状弾性シール部材と、
前記周溝(10)の開口側に配設され、前記環状弾性シール部材にて開口側に付勢されて前記摺動面に圧接されるシールリング(13)とを備え、
前記環状弾性シール部材と前記シールリング(13)とにより、前記周溝(10)の両側で両部材間を密封する流体シール構造であって、
前記環状弾性シール部材は、
前記周溝(10)内に導入される流体の圧力により開口側に弾性変形して、前記シールリング(13)を開口側に付勢する環状付勢部(15)と、
前記環状付勢部(15)と同じく流体の圧力により弾性変形して周溝(10)の内側面(10b)に圧接する環状リップ(16)と
を備え、
前記環状リップ(16)と前記周溝(10)の底面(10c)との間には隙間が設けられているものである流体シール構造。 - 前記環状弾性シール部材は、前記環状付勢部(15)から前記シールリング(13)に対して予圧を与えるように形成した請求項1に記載の流体シール構造。
- 前記環状弾性シール部材は、断面がほぼ「L」字形状に一体成形されている請求項1又は請求項2に記載の流体シール構造。
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