JP3665157B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤユニフォミティを向上しうる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
図8に示すように、トレッド面tに、ブロックbとこのブロックbに隣り合った1つの横溝cとからなるピッチdをタイヤ周方向に並べたピッチ列eを有する空気入りタイヤは、走行中に前記ピッチdが周期的な繰り返しで路面に接地することにより、特定周波数の音圧レベルが増大するピッチノイズと称される耳障りな不快音を発生させることがある。
【0003】
従来、このようなピッチノイズは、前記ピッチ列e中に、タイヤ周方向長さが異なる複数種類のピッチを含ませるいわゆるピッチバリエーション手法により、前記音圧レベルを広い周波数帯域に分散してホワイトノイズ化することが知られている。
【0004】
ところが、ピッチバリエーション手法を採用すると、各ピッチのタイヤ周方向長さが非均一となるため、ピッチの剛性差などによりタイヤユニフォミティの悪化を招きやすくなる。
【0005】
そこで、ピッチバリエーション手法を採用した場合には、前記ピッチdのタイヤ周方向長さLを変化させつつも、ピッチ毎に見たピッチの周方向長さLに対するブロックの周方向長さBLを一定とすることによって、タイヤユニフォミティを悪化させるフォースバリエーション、特にタイヤ半径方向の荷重変動成分であるラジアルフォースバリエーション(以下、「RFV」という)が大きくなるのを防止している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記ブロックdには、その剛性を適度に柔軟化し、とりわけ氷雪路での走行性能を高めるために、実質的に溝巾を有しない複数本のサイピングfが設けられることが多い。
【0007】
ところが、前記サイピングfは、実質的な溝巾を有しないとはいえ、各ピッチにおいて全て同一の溝巾で形成されるのが現状である。この場合、ピッチdのタイヤ周方向長さLが小さいものほど、ピッチdに占めるサイピングを含めたトータルの溝容積の割合が大きくなる。
【0008】
本発明者は、上記のようなサイピングfを形成すると、各ピッチ毎に見たピッチのタイヤ周方向長さLに対するブロックの周方向長さBLを実質的に非一定にすることと同様の結果を招き、タイヤユニフォミティが悪化するという問題を突き止めた。
【0009】
そしてこのような問題は、1ブロック当たり2本、さらには3本以上のサイピングが設けられることが多いオールシーズン用タイヤ、スノータイヤ、スタッドレスタイヤにおいてはとりわけ顕著に現れ、しかも同一長さのピッチが連続する場合には、タイヤユニフォミティの悪化が顕著に現れるという問題がある。
【0010】
本発明者は、以上のような問題点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ブロックbに複数本のサイピングfを形成した場合であっても、サイピングfの周方向投影面積の総和を、ピッチの周方向長さLが変化する変化の比率に関連づけて変化させると、各ピッチの均一化を図りうるとの知見を得て本発明を完成させた。
【0011】
以上のように、本発明は、ピッチバリエーション手法を採用しかつブロックに複数のサイピングを形成した場合であってもユニフォミティを向上しうる空気入りタイヤ、とりわけRFVが大きくなるのを防止しうる空気入りタイヤの提供を目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド面に、ブロックと、このブロックに周方向一方で隣り合う横溝とからなるピッチがタイヤ周方向に並ぶピッチ列を形成するとともに、このピッチ列は、タイヤ周方向長さLiが小なる順から比率Piで増す複数種類nのピッチを含んだ空気入りタイヤであって、
前記ピッチのブロックと横溝との各周方向長さはピッチの周方向長さLiの前記比率Piと略等しく変化するとともに、前記ピッチのブロックに、実質的に溝巾を有しない複数本のサイピングが形成され、かつこのブロックのサイピングの周方向投影面積の総和が、該ピッチの周方向長さLiの前記比率Piに略等しく変化することを特徴とする。
【0013】
また、請求項1記載の発明は、前記ピッチの周方向長さLが最小となる順からi番目の周方向長さLiのブロックの前記サイピングの周方向投影面積の総和の、前記基準となるピッチの周方向長さのブロックのサイピングの周方向投影面積の総和に対する比である増加比Ziと、このピッチの周方向長さLiの前記比率Piとの差を10%以内としたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
本実施形態の空気入りタイヤは、図1に示す如く、トレッド面2に、タイヤ周方向にのびる縦溝3と、前記縦溝3と交わりかつ本例ではタイヤ軸方向にのびる横溝4とを設けることにより、該トレッド面に、ブロック5と、このブロック5に周方向一方で隣り合う前記横溝4とからなるピッチ6がタイヤ周方向に並ぶピッチ列7を形成している。
【0015】
なお前記縦溝3、横溝4は、排水性、排雪性を確保するために、例えばタイヤに正規内圧を充填した状態でトレッド表面にて測定した溝巾が5mm以上であることが望ましく、また、溝深さは例えば6mm以上とすることが望ましい。
【0016】
前記ピッチ列7は、タイヤ周方向長さLiが小なる順から比率Piで増す複数種類nのピッチを含む。本例では、n=3とした3種類のピッチS、M、L(S<M<L)を含むものを例示している(なお、サイズを特定してピッチを特定する場合には「ピッチS」、「ピッチM」などということがある)。
【0017】
本実施形態では、各ピッチS、M、Lのタイヤ周方向長さL1、L2、L3は、次のように設定されている。
L1(基準)=1.00=比率P1
L2/L1 =1.25=比率P2
L3/L1 =1.50=比率P3
このように、前記記載の比率Piとは、ピッチの周方向長さL1,L2,L3の最小となるピッチの周方向長さL1を基準として、その基準となるピッチの周方向長さL1に対する比、即ち前記比率P1,P2,P3を意味している。
【0018】
また、前記ピッチ6のブロック5と横溝4との各周方向長さBLi、GLiは、ピッチの周方向長さLiの前記比率Piに略等しく変化するように設定される。
【0019】
すなわち、本例では、ピッチSのブロックの周方向長さBL1と、ピッチMのブロックの周方向長さBL2との比(BL2/BL1)は前記比率P2の1.25と略等しく設定される。またピッチLとピッチSでは、(BL3/BL1)が前記比率P3の1.5と略等しく設定される。これによって各ピッチ毎に見た場合、ピッチのタイヤ周方向長さLiに対するブロック(又は横溝)の周方向長さBLiの比率を一定としうる。
【0020】
次に、前記ピッチ6の各ブロック5には、実質的に溝巾を有しない複数本、本例では3本のサイピング9A、9B、9Cが形成される。サイピング9は、特に氷路でのワイピング効果とエッジ効果とを発揮するべくタイヤ軸方向成分を有し、またウエット路での水分吸収効果をも発揮しうる。
【0021】
なお本例では、各ピッチ列毎において、タイヤ周方向に並ぶ各ブロック5に、同一形状かつ同一本数のサイピングがほぼ相似的な位置に配される。これにより、同一ピッチ列に含まれる各ブロックは、表面に略同一のサイピング模様を構成する。
【0022】
本実施形態では、サイピング9は、いずれも一端がブロック5のタイヤ軸方向側縁に達して開口し、かつ他端がブロック5の内部で終端するセミオープンタイプのものを示している。また前記サイピング9A、9B、9Cは、ブロック5の側縁に達するオープン側9oを、ブロック5の左右の側縁に交互に位置させることにより、ブロックの左右剛性を均一化しうる好ましい態様を示している。
【0023】
さらに本実施形態では、3本のサイピング9A、9B、9Cの形状が、いずれも直線でタイヤ軸方向に平行にのびるとともに、いずれも等しい溝巾で形成されたものを例示している。前記サイピング9は、実質的に溝巾を有しない寸法で形成するのがよく、例えば溝巾を1.5mm以下とするのが好ましいが、さらに製造上の観点より0.6mm以上かつ1.2mm以下で形成することが望ましい。
【0024】
そして、本発明では、各ブロック5に設けられたサイピング9の周方向投影面積SA、SB、…の総和Siが、該ピッチ6の周方向長さLiの前記比率Piと略等しく変化することを特徴の一つとしている。
【0025】
先ず、ピッチSのブロック5に形成されているサイピング9A、9B、9Cの各周方向投影面積をS1A、S1B、S1Cとし、その総和S1(=S1A+S1B+S1C)の増加比Z1を1(基準)とすると、ピッチMのブロックに形成されているサイピングの周方向投影面積の総和S2(=S2A+S2B+S2C)の増加比Z2(=S2/S1)は約1.25となるように設定される。
【0026】
同様に、ピッチLのブロック5に形成されているサイピングの周方向投影面積の総和S3(=S3A+S3B+S3C)の増加比Z3(=S3/S1)は、約1.5となるように設定される。
【0027】
このように、前記ピッチの周方向長さLが最小となる順からi番目の周方向長さLiのブロック5の前記サイピングの周方向投影面積の総和Siの、前記基準となるピッチの周方向長さのブロックのサイピングの周方向投影面積の総和S1に対する比である増加比Ziを考慮する。即ち、各ピッチ列7に同様に配されたサイピングの周方向投影面積の総和Siが、該ピッチの周方向長さLiの前記比率Piに略等しく変化することにより、各ピッチのタイヤ周方向長さLに対するブロックの周方向長さBLを実質的に均一化することができ、ひいてはブロック5の剛性の均一化が可能となり、タイヤユニフォミティの悪化を防止することができる。
【0028】
又、前記増加比Ziと、このピッチの周方向長さLiの前記比率Piとの差を10%以内とする。即ち、例えば、前記ピッチ列7において、例えばピッチ6の周方向長さLが短い順に2番目であるピッチMのサイピングの周方向投影面積の総和S2の増加比Z2と、このピッチMの周方向長さL2の前記比率P2との差{(P2ーZ2)/P2}を±10%の範囲内とする事が好ましい。この例では前記ピッチMのサイピングの周方向投影面積S2の総和の増加比Z2が1.125〜1.375であることが望ましい。
【0029】
このように、ピッチ6の比率Piとサイピングの周方向投影面積の総和の増加比Ziとの差を10%以内とすることにより、サイピング9が多数、例えば1ブロック当たり3本以上のサイピングが形成されたピッチ列を有するスタッドレスタイヤなどにおいて、特に顕著にタイヤユニフォミティを維持しうる。なお前記差が、10%を越えると、特にサイピング本数の多いスタッドレスタイヤなどではタイヤユニフォミティを維持しえない傾向にある。
【0030】
図2には、ピッチS、M、Lの各サイピング9Aを、タイヤ周方向の投影面V(図1に示す)に投影した投影図を略示している。本実施形態では、各ブロック5のサイピングの周方向投影面積の総和は、サイピング9A、9B、9Cの長さWを変化させることなく、サイピングの深さをDS、DM、DLと変えることにより、各ピッチの比率Piと略等しく設定したものを示している。なお他のサイピング9B、9Cについても同様である。
【0031】
また本実施形態では、サイピング9の深さを変える際に、深さを一定としたものを例示したが、図3(A)、(B)に示すように、深さをDM1、DM2と違えることもできる。
【0032】
図4にも前記と同様にピッチS、M、Lの各サイピング9Aを周方向投影面Vに投影した投影図を略示している。この図のように、各ブロック5のサイピングの周方向投影面積の総和は、各サイピング9A、9B、9Cの長さをWS<WM<WLと変化させることに加え、サイピングの深さもDS<DM<DLと増すことによってもなし得る。なお、サイピング9の深さは、例えばブロック高さの0.3〜0.9倍程度とするのが望ましい。
【0033】
また、サイピング9は、図5に示す如く、タイヤ軸方向に対して角度αで傾斜するとともに、略中間に波状に屈曲した屈曲部10を有して設けることができる。この例では、サイピングのエッジ成分を増すことにより、氷雪路での走行性能が向上する。また、図5のごとく、サイピング9がタイヤ軸方向に対して傾斜するものでは、サイピング9の深さないし長さを変化させるものの他、これらを不変としてタイヤ軸方向に対する傾斜角度αのみを変化させても良い。この場合、サイピング9を形成するナイフブレードを共用しうる点で好ましい。なお、サイピング9は、両端がブロック内で終端するクローズドタイプとすることができる。
【0034】
【実施例】
タイヤサイズが205/60R15 91Hであり、図6に示すトレッパターンを採用した空気入りタイヤについて、FV試験機を用いてラジアルフォースバリエーション(以下、RFVという)を測定した。
【0035】
図6に示すパターンは、ピッチ列B1、B1、B2、B2、B3、B3夫々に、ピッチS、M、Lの3ピッチ(S:M:L=1:1.19:1.38)によるピッチバリエーション手法を採用している。また、この空気入りタイヤはピッチ列B1、B2が、1ブロック5に1本のジグザグ状のサイピング9を設けるとともに、ピッチ列P3が、1ブロックに3本のサイピングを含むものを例示する。
【0036】
そして、前記合計6列のピッチ列について、サイピングの周方向投影面積の増加比をピッチS、M、Lに応じて変化させた本発明タイヤ(実施例)と、サイピングの周方向投影面積の総和が変化しない従来タイヤ(従来品)とを比較例とともに表1の仕様にて試作し性能を評価した。
【0037】
【表1】
【0038】
なお、各ピッチ列のピッチ配列は、以下の65ピッチの3周期配列とした。
MMLLLLLLLLMMMMSSSSSS
MMMLLLLMMMMMMMMSSS
MMMMMMMLLLLLLMMMMMMSSSSSSSS
テストの結果を図7に示している。
【0039】
テストの結果から明らかなように、実施例1、2のタイヤは、従来品に比べRFVのO.A.レベルが小さくなっていることが確認できる。
【0040】
また、本実施例のように、ピッチS、M、Lが3周期で配列されているような場合には、RFVの中でも特に3次成分レベルのピーク値が高くなる傾向にある。このようにRFVの中でも特定次数のレベルが増すと(本例では3次成分)、車両の車室共鳴、サスペンション部品等との共振、エンジン音との共鳴などの問題を引き起こす場合が多いため、タイヤユニフォミティを向上するためには、RFV中の特定次数レベルが上昇することを避けることも必要となる。
【0041】
本実施例品では、3周期配列のトレッドを具えているため、RFVの3次レベルが著大となる傾向にある。しかし、図7から明らかなように、本発明品では、サイピングの周方向投影面積の総和をピッチの増加する比率に関連づけて変化させたことにより、RFVの3次レベルを従来品に比べ半分以下に低減でき、これがRFVのO.A.レベルの低減にも関連していると考えられる。
【0042】
【発明の効果】
このように、本発明の空気入りタイヤは、サイピングの周方向投影面積の総和をピッチの増加する比率に関連づけて変化させたことにより、ピッチバリエーション手法を採用した場合であっても、RFVが大きくなるのを防止でき、タイヤユニフォミティを向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すトレッドパターンの展開図である。
【図2】(A)〜(C)は、ピッチS、M、Lのサイピングの周方向投影面積を示す投影図である。
【図3】(A)(B)は、ピッチS、M、Lのサイピングの周方向投影面積を示す投影図である。
【図4】(A)〜(C)は、ピッチS、M、Lのサイピングの周方向投影面積を示す投影図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示すトレッドパターンの展開図である。
【図6】本発明の実施例を示すトレッドパターンの展開図である。
【図7】実験結果を示すグラフである。
【図8】従来の技術を説明するための断面図である。
【符号の説明】
2 トレッド面
3 縦溝
4 横溝
5 ブロック
6 ピッチ
9 サイピング
C タイヤ赤道
Claims (1)
- トレッド面に、ブロックと、このブロックに周方向一方で隣り合う横溝とからなるピッチがタイヤ周方向に並ぶピッチ列を形成するとともに、このピッチ列は、タイヤ周方向長さLiが最小となる順から比率Piで増す複数種類nのピッチを含んだ空気入りタイヤであって、
前記比率Piは、最小となるピッチの周方向長さを基準として、その基準となるピッチの周方向長さに対する比であり、
かつ前記ピッチのブロックと横溝との各周方向長さはピッチの周方向長さLiの前記比率Piと略等しく変化するとともに、
前記ピッチのブロックに、実質的に溝巾を有しない複数本のサイピングが形成され、
かつ前記ピッチの周方向長さLが最小となる順からi番目の周方向長さLiのブロックの前記サイピングの周方向投影面積の総和の、前記基準となるピッチの周方向長さのブロックのサイピングの周方向投影面積の総和に対する比である増加比Ziと、このピッチの周方向長さLiの前記比率Piとの差を10%以内としたことを特徴とする空気入りタイヤ。
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