JP3664866B2 - コーティング用皮膚化粧料及びコーティング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーティング用皮膚化粧料及びコーティング方法、特に耐水性、耐洗浄性に優れた被膜を形成して皮膚を保護することのできる皮膚保護コーティング用化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
水や洗剤による肌荒れや爪割れ、皮膚障害に悩む人は多く、特に美容師や医療従事者、主婦等は度重なる洗浄や水仕事によって、爪のひび割れや手荒れが慢性化しやすく、深刻な悩みとなっている。また、皮膚が弱い人は、ひげ剃りなどの際に剃刀負け等を起こしやすいという問題を抱えている。
このような外部からの刺激から爪や皮膚を保護するために、その部分をコーティングする方法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これまでコーティング用皮膚化粧料では、その耐水性、耐洗浄性などにおいて未だ満足の行くものは得られていないのが現状であった。
本発明は、このような従来技術の課題に鑑み成されたものであり、その目的は、耐水性、耐洗浄性を有する被膜を形成して皮膚を保護することのできる皮膚保護コーティング用化粧料及び皮膚保護コーティング方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、少なくとも一つの反応性官能基が結合したシリル基、例えば三官能性シリル基を有するモノマーを構成モノマーとして有する共重合体を皮膚に塗布後、加水分解して架橋せしめると、耐水性、耐洗浄性に優れる被膜が塗布面上に形成され、これにより外部からの刺激や接触に対する保護作用が持続して発揮されることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明にかかる皮膚保護コーティング用化粧料は、少なくとも一つの反応性官能基が結合したシリル基を有する共重合体であって、下記一般式 (I) で示されるモノマー(A)、下記一般式 (II) で示されるモノマー(B)、及び下記一般式( III )で示されるモノマー(C)を構成モノマーとして有する共重合体を配合したことを特徴とする。
なお、本発明において反応性官能基が結合したシリル基とは、後述するように、加水分解によってシロキサン結合Si−O−Siを形成し、これにより共重合体分子間を架橋し得るものを意味する。
【0007】
【化7】
(一般式(I)中、R1は水素原子あるいはメチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3、R4、R5はそれぞれ加水分解せしめることにより該共重合体分子間を架橋し得る反応性官能基を意味する。)
【0008】
【化8】
(一般式(II)中、R6は水素原子あるいはメチル基、R7は炭素数1〜18のアルキル基を意味する。)
【0009】
【化9】
(一般式(III)中、R8は水素原子あるいはメチル基、R9は炭素数1〜6のアルキレン基を意味する。Xは下記一般式(IV)〜(VI)の何れかで表される基を意味する。)
【0010】
【化10】
(一般式(IV)中、R10は炭素数1〜6のアルキル基を意味する。)
【化11】
(一般式(V)中、R11は炭素数1〜6のアルキル基、x1は正の整数を意味する。)
【化12】
(一般式(VI)中、R8、R9は前記定義の通りである。R12は炭素数1〜6のアルキル基、x2は正の整数を意味する。)
【0011】
また、本発明の化粧料において、モノマー(A)の割合が、共重合体中25〜99重量%であることが好適である。
また、本発明の化粧料において、モノマー(B)の割合が共重合体中1重量%以上であることが好適である。
また、本発明の化粧料において、モノマー(C)の割合が共重合体中1重量%以上であることが好適である。
また、R3、R4及びR5が炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好適である。
また、本発明にかかる皮膚保護コーティング方法は、前記皮膚保護コーティング用化粧料を皮膚に塗布後、加水分解せしめ、該共重合体分子間を架橋することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の化粧料に配合される共重合体は、少なくとも一つの反応性官能基が結合したシリル基を有するものである。このような共重合体として、1〜3官能性シリル基を有する共重合体が挙げられるが、効果の点から三官能性シリル基を有していることが好ましい。
【0013】
本発明の好適な共重合体の一つとして、前記一般式(I)で示されるモノマー(A)を構成モノマーとして有する共重合体が挙げられる。モノマー(A)は三官能性シリル基−SiR3R4R5を含有するアクリル酸若しくはメタアクリル酸のエステル体であり、一般式(I)においてR1は水素原子又はメチル基である。また、R2は炭素数1〜6のアルキレン基を意味し、好ましくはプロピレン基である。
【0014】
R3、R4、R5は、加水分解することによってシロキサン結合Si−O−Siを形成し、これにより本発明の共重合体分子間を架橋し得る反応性官能基であり、例えば、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アミノ基等が挙げられるが、共重合体の安定性や、加水分解により生じる副生成物の安全性、後述する架橋反応の反応性等の点から好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。なお、R3、R4、R5は同一又は異なっていても良い。また、本発明の共重合体においては上記モノマー(A)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
【0015】
本発明の共重合体は、その効果の点から前記モノマー(A)のような反応性シリル基含有モノマーとともにその他の構成モノマーを有することが好ましい。このようなモノマーとして種々のものが考えられるが、好ましいものとして前記一般式(II)で示されるモノマー(B)が挙げられる。
【0016】
モノマー(B)はアクリル酸若しくはメタアクリル酸のアルキルエステルである。一般式(II)において、R6は水素原子、若しくはメチル基であり、R7は炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基を意味するが、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。なお、本発明の共重合体においては上記モノマー(B)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
【0017】
また、本発明の共重合体においては、前記一般式(III)のモノマー(C)を構成モノマーとして有することが好ましい。モノマー(C)はシロキサン含有(メタ)アクリル酸エステルである。一般式(III)において、R8は水素原子又はメチル基である。R9は炭素数1〜6のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基、プロピレン基、2−ヒドロキシプロピレン基である。Xは前記一般式(IV)〜(VI)の何れかで表されるシロキサンを意味する。一般式(IV)〜(VI)において、R10、R11、R11'、R12は炭素数1〜6の直鎖又は分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表す。なお、各一般式中にR10、R11、R12がそれぞれ複数存在するが、これらは同一又は異なっていてもよい。R10、R11、R12として好ましくはメチル基である。R11'として好ましくはブチル基が挙げられる。Xが一般式(V)、又は一般式(VI)の場合、モノマー(C)の分子量は1,000〜100,000、好ましくは2,000〜20,000である。なお、本発明の共重合体においては上記モノマー(C)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
【0018】
なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記モノマー(A)〜(C)以外のモノマーを本発明の共重合体の構成モノマーとして有することも可能である。例えば、下記一般式(VII)で示されるアミン含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー(D)を構成モノマーとして有することができる。
【0019】
【化13】
(一般式(VII)中、R13は水素原子あるいはメチル基、R14は炭素数1〜6のアルキレン基を意味する。Yは−N+(R15)3又は−N(R15)2で示される基であり、R15は炭素数1〜6のアルキル基を意味する。)
【0020】
一般式(VII)中、R13は水素原子あるいはメチル基である。R14は炭素数1〜6のアルキレン基を意味し、好ましくはエチレン基、プロピレン基が挙げられる。Yは−N+(R15)3又は−N(R15)2で示される基であり、R15は炭素数1〜6のアルキル基を意味する。また、−N+(R15)3基の場合にはハロゲンや無機酸、有機酸等を対イオンとした塩であってもよい。
【0021】
本発明にかかる共重合体は上記モノマーを公知の重合方法を用いて重合することにより得ることができ、例えば溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法等を用いることができる。例えば、溶液重合法の場合には、各モノマーを求めるモノマー組成にて溶媒に溶解し、窒素雰囲気下、ラジカル重合開始剤を添加して加熱撹拌することにより本発明の共重合体を得ることができる。
【0022】
重合の際に用いられる溶媒としては、モノマーを溶解又は懸濁し得るものであって、水を含まない有機溶媒であればいかなる溶媒でも用いることが可能であり、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、流動パラフィンなどの炭化水素系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩化物系溶媒などの他、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン等が挙げられる。これら溶媒は2種以上混合して用いても良い。通常、用いる重合開始剤の開始温度よりも沸点が高い溶媒を選択することが好適である。
【0023】
重合開始剤としては、ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、例えば、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物の他、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸系重合開始剤が挙げられる。なお、これらの重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射等によっても重合を行うことができる。
【0024】
重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常70℃程度とすればよい。
重合時間は特に制限されないが、通常2〜24時間である。比較的高分子量のポリマーを得たい場合には、1日程度反応させることが望ましい。反応時間が短すぎると未反応のモノマーが残存し、分子量も比較的小さくなることがある。
【0025】
本発明にかかる共重合体の平均分子量は特に制限されず、オリゴマー以上の重合度を有していれば目的とする効果を発揮し得る。ただし、重合度が小さくなると後述する架橋反応の速度が低下し、また、あまりに重合度が大きすぎると粘度が高くなって塗布性や作業性に劣ることから、その平均分子量は2,000〜150,000程度であることが好ましい。
【0026】
このようにして得られる本発明の共重合体は、官能性シリル基を分子中に有している。このため、これを加水分解することによって共重合体分子同士が架橋し、架橋体を形成することができる。従って、該共重合体を配合した本発明の皮膚保護コーティング用化粧料を皮膚に塗布し、架橋反応を行った場合には、耐水性、耐洗浄性に優れ、被接触物に対する付着もない被膜が形成され、塗布部が保護される。そして、該被膜は水や洗剤によっても非常に落ちにくいため、このような保護効果が持続して発揮される。また、使用感がごわついたり、フレーキングを生じたりすることがない。
例えば、本発明の皮膚化粧料をひげ剃り前のプレシェーブローションとして用いれば、剃刀負けを防止することができる。
【0027】
このような効果が発現する作用機作としては次のように考えられる。図1にモノマー(A)を構成モノマーとして有する共重合体の場合について、その反応を模式的に示す。すなわち、本発明にかかる共重合体はモノマー(A)に由来する三官能性シリル基−SiR3R4R5を有している。この三官能性シリル基は水、酸、アルカリ等により容易に加水分解され、トリヒドロキシシリル基−Si(OH)3となる。このトリヒドロキシシリル基は別のトリヒドロキシシリル基と反応して安定なシロキサン結合Si−O−Siを形成し、その結果、共重合体分子間が三次元網目状に架橋された架橋共重合体(本発明中、架橋体ということがある)となる。
【0028】
従って、該共重合体を塗布後、加水分解することにより、塗布部分で架橋が起こり、架橋体が塗布部を網目状に強固に被覆し、耐水性、耐洗浄性に優れる被膜を形成する。その結果、塗布部が均一に保護され、これにより皮膚保護効果が発揮されるものと推察される。
【0029】
なお、このような架橋反応を塗布後に行わず、予め架橋体を合成してこれを塗布しようとしても、架橋体がゲルもしくはプラスティックとなるので塗布することは非常に困難である。
【0030】
本発明の化粧料に配合される共重合体のモノマー組成としては、共重合体中のモノマー(A)の割合が25〜99重量%、さらには40〜85重量%であることが好適である。モノマー(A)が少なすぎると架橋反応部位が少ないため、耐水性や耐洗浄性が低く、皮膚保護作用が十分発揮されないことがある。一方、モノマー(A)が100重量%の場合にも、皮膚保護効果が低下する傾向にある。また、フレーキングも生じやすい。これは、架橋反応部位が多すぎて、しかも密な状態にあるため、架橋反応がきれいに進行せず、共重合体上に未反応部位が多量に残るためと考えられる。
【0031】
モノマー(B)は、上記モノマー(A)の割合を調整し、耐水性に寄与するとともに、フレーキングも抑制する。モノマー(B)の割合としては、共重合体中1重量%以上、好ましくは10重量%以上である。モノマー(B)の割合が高くなると他のモノマーの割合が低下し、また共重合体がアルコール系溶媒に難溶性となることがあるので、モノマー(B)は多くとも75重量%以下、好ましくは60重量%以下である。
【0032】
モノマー(C)はシロキサン部分を有し、これにより架橋体被膜の耐水性、耐洗浄性を高めるとともに、使用感を良好なものにすることができる。また、フレーキングも抑制する。本発明の共重合体中、モノマー(C)は1重量%以上、好ましくは5重量%以上であるが、モノマー(C)の割合が多すぎると、相対的にその他のモノマーの比率が低くなり、耐洗浄性等が劣る傾向があるので、多くとも70重量%以下、好ましくは60重量%以下である。
【0033】
また、上記モノマー(A)〜(C)とともに、さらにモノマー(D)を構成モノマーとして有する共重合体を用いる場合、モノマー(D)の割合としては、モノマー(A)〜(C)の総重量に対して100重量%以下、好ましくは50重量%以下である。モノマー(D)の割合が多すぎると、モノマー(D)が有するアミン部分によって被膜の親水性が高くなり耐水性、耐洗浄性等が劣るようになる。
本発明の共重合体の好適な例として、例えば一般式( IX )で示される共重合体を挙げることができる。
【0034】
【化15】
なお、一般式( IX )中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、Xは前記定義の通りである。n、m、lはそれぞれモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)のモル比を表す。
【0035】
本発明にかかるコーティング方法としては、本発明の化粧料を塗布後、加水分解し、該共重合体分子同士を架橋せしめることを特徴とする。架橋方法としては、水、酸、アルカリによる反応や熱による反応が挙げられる。具体的には、本発明の化粧料を塗布後、塗布部を水(水蒸気等でも可)、酸、又はアルカリに接触せしめたり、加熱することにより加水分解、架橋させる方法がある。また、予め水、酸又はアルカリで処理した被塗布部に、該化粧料を塗布して加水分解、架橋を行ってもよい。また、本発明の化粧料に、水、酸又はアルカリを混合し、直ちに塗布する方法も考えられるが、該化粧料と、水、酸、アルカリ等を別々に適用する方法がより好ましい。水、酸、アルカリによる反応の場合には加熱してもよいが、通常室温で処理すれば十分である。なお、架橋反応の進行が緩慢であっても良い場合には、特にこのような酸、アルカリ、水と接触せしめなくとも大気中の水分により自然架橋させることも可能である。また、何れの場合にも均一に塗布、処理するために必要に応じてはけ、くし、ブラシ等の器具を適宜用いることができる。
【0036】
本発明にかかるコーティング方法で用いられる酸、アルカリとしては、本共重合体を加水分解し架橋反応せしめることができるものであれば特に限定されず、有機・無機の酸、アルカリを用いることができる。もちろん、これらの酸、アルカリは、その1種又は2種以上を用いることができ、また、水との混合物であっても良い。
【0037】
本発明にかかる皮膚保護コーティング用化粧料は上記共重合体を必須成分として含有することを特徴とするものであるが、その好適な実施形態の一つとして、該共重合体を含有する非水系組成物が挙げられる。非水系組成物としては、例えば、該共重合体を親水性溶媒中に溶解もしくは分散せしめたものが挙げられ、このような親水性溶媒としては、炭素数1〜4の脂肪族1〜4価アルコール、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ジオキサン、酢酸メチル、ジホルムアミド等が挙げられる。なお、このうち化粧料原料として好ましいものは脂肪族1〜2価のアルコールであり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールが挙げられ、特に安全性の点からはエタノール、イソプロパノールが好ましい。
本発明にかかるコーティング用化粧料を水分含有組成物とした場合には、製品中で架橋反応が起こるため、塗布時に適宜調製することが好適である。このような水分含有組成物もまた、本発明のコーティング用化粧料の範疇である。
【0038】
本発明にかかるコーティング用化粧料中における該共重合体の配合量は特に制限されないが、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。配合量が少なすぎると一回の処理で十分な効果が得られないことがあり、多すぎる場合には塗布性、伸展性等が劣ったり、フレーキングを生じることがある。
【0039】
本発明にかかる皮膚保護コーティング用化粧料の剤型は特に限定されず、本発明の効果を発揮し得る形態であればどのようなものでも良い。例えば、液状、乳液状、クリーム状、ジェル状、固形状、ムース、スプレー等が挙げられる。また、その用途としては、ハンドローション、プレシェーブローション等が挙げられる。
【0040】
本発明にかかるコーティング用化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲であれば通常化粧料に配合される成分を配合しても良い。例えば、界面活性剤、保湿剤、紫外線防御剤、pH調製剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、皮膜形成剤、油性成分、高分子化合物、噴射剤等が挙げられる。水、酸、アルカリは共重合体と別剤としておくことが好ましいが、塗布時に適宜調製するのであれば、前記のように本発明の共重合体とともに水、酸、アルカリを組成物中に配合することも可能である。
【0041】
以下に具体例を挙げて、さらに本発明を詳述する。なお、以下で用いた各モノマーの構造は次の通りである。
モノマーA1:
【化16】
モノマーA2:
【化17】
【0042】
モノマーB1:
【化18】
モノマーC1(分子量422):
【化19】
【0043】
モノマーC2(平均分子量12,000):
【化20】
モノマーC3(平均分子量5,000):
【化21】
モノマーC4:
【化22】
【0044】
共重合体の合成
共重合体1
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(モノマーA1)2.0g(8mmol)及びメタクリル酸メチル(モノマーB1)8.0g(80mmol)をエタノール100mlに溶解し、窒素気流下、70℃で1時間加熱撹拌した後、過硫酸カリウム0.05gを加え一晩反応させて、共重合反応を完結した。反応液を室温まで冷却し、減圧濃縮した。残渣をエタノール10mlに溶解し、n−ヘキサン500ml中に添加した。沈殿物を分取し、目的とする共重合体を得た。
【0045】
なお、得られた共重合体はそのNMRスペクトルデータ(溶媒CDCl3又はDMSO−d6)において、6〜7ppm付近に見られる原料モノマー由来のCH2=Cの水素原子のピークが認められず、このことから共重合体の生成が確認された。また、本発明においては、他の共重合体についても同様にして共重合体の生成を確認した。
【0046】
共重合体2
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン4.0g(16mmol)及びメタクリル酸メチル8.0g(80mmol)を用いた他は前記共重合体1と同様にして目的とする共重合体を得た。
【0047】
共重合体3
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン8.0g(32mmol)及びメタクリル酸メチル4.0g(40mmol)を用いた他は前記共重合体1と同様にして目的とする共重合体を得た。
【0048】
共重合体4
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン10.0g(40mmol)及びメタクリル酸メチル2.0g(20mmol)を用いた他は前記共重合体1と同様にして目的とする共重合体を得た。
【0049】
共重合体5
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン10.0g(40mmol)及びメタクリル酸メチル0.4g(4mmol)を用いた他は前記共重合体1と同様にして目的とする共重合体を得た。
【0050】
共重合体6
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン10.0g(40mmol)のみを用いた他は前記共重合体1と同様にして目的とする共重合体を得た。
【0051】
試験例1 皮膚保護効果
前記共重合体1〜6を用いて、下記の処方1で試料液を調製した。また、コントロールとして共重合体の代わりにエタノールを配合したものも同様に調製した。これをそれぞれスプレー容器に充填したものを用い、皮膚保護効果について下記の試験方法で試験を行った。
【0052】
すなわち、20名の男性パネラーのひげ剃り部分に試料をスプレーし、水で洗浄後、タオルで水分を拭き取った。その後、剃刀にて髭を剃り、ひげ剃り後の肌の荒れ具合を評価した。評価基準は下記の通り。
◎:20名中、16名以上が肌の荒れが少ないと評価した。
○:20名中、12〜15名が肌の荒れが少ないと評価した。
△:20名中、6〜11名が肌の荒れが少ないと評価した。
×:20名中、0〜5名が肌の荒れが少ないと評価した。
【0053】
処方1:
グリセリルトリ-2-エチルヘキサン酸エステル 1.0重量%
1,3-ブチレングリコール 1.0
エタノール 96.0
共重合体1〜6 2.0
ビタミンAアセテート 適 量
【0054】
【表1】
【0055】
表1から解るように、モノマー(A)を構成モノマーとする共重合体は皮膚保護効果を有していることが理解される。
なお、共重合体中、モノマー(A)が少なすぎたり、多すぎると皮膚保護効果が低くなる傾向があり、共重合体中のモノマー(A)の割合は25〜99重量%、さらには40〜85重量%が好適であることが示唆された。
【0061】
試験例3
次に、表2のモノマー組成を有する共重合体を前記共重合体と同様に合成し、前記試験例1と同様に試験を行った。また、皮膚保護効果試験において、その使用感についても、下記の基準により評価した。
【0062】
◎:20名中、16名以上が使用感触がよいと回答した。
○:20名中、12〜15名が使用感触がよいと回答した。
△:20名中、6〜11名が使用感触がよいと回答した。
×:20名中、0〜5名が使用感触がよいと回答した。
【0063】
【表2】
【0065】
表2から解るように、モノマー(C)を導入することによって、皮膚保護効果とともに、その使用感を向上させることができる。また、モノマー(A)と(C)からなる共重合体13、14では共重合体がべたついて取扱いにくかったものの、皮膚保護効果、使用感においては十分満足いくものであった。
【0066】
以上のことから、共重合体中のモノマー(C)の割合は1重量%以上、さらには5重量%以上であることが好適である。また、共重合体中のモノマー(B)は共重合体のべたつき防止にも寄与し、共重合体中のモノマー(B)の割合は、1重量%以上、さらには10重量%以上が好適であることが示唆された。
【0076】
【発明の効果】
本発明にかかる皮膚保護コーティング用化粧料は、特定の共重合体を配合し、皮膚に塗布後、該共重合体を架橋することにより、耐水性、耐洗浄性の高い被膜を形成して皮膚保護効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる共重合体の架橋反応の一例を示す図である。
Claims (6)
- 少なくとも一つの反応性官能基が結合したシリル基を有する共重合体であって、下記一般式 (I) で示されるモノマー(A)、下記一般式 (II) で示されるモノマー(B)、及び下記一般式( III )で示されるモノマー(C)を構成モノマーとして有する共重合体を配合したことを特徴とする皮膚保護コーティング用化粧料。
- 請求項1記載の化粧料において、モノマー(A)の割合が、共重合体中25〜99重量%であることを特徴とする皮膚保護コーティング用化粧料。
- 請求項1又は2記載の化粧料において、モノマー(B)の割合が共重合体中1重量%以上であることを特徴とする皮膚保護コーティング用化粧料。
- 請求項1〜3の何れかに記載の化粧料において、モノマー(C)の割合が共重合体中1重量%以上であることを特徴とする皮膚保護コーティング用化粧料。
- 請求項1〜4の何れかに記載の化粧料において、R3、R4及びR5が炭素数1〜6のアルコキシ基であることを特徴とする皮膚保護用コーティング用化粧料。
- 請求項1〜5の何れかに記載の皮膚保護コーティング用化粧料を皮膚に塗布後、加水分解せしめ、該共重合体分子間を架橋することを特徴とする皮膚保護コーティング方法。
Priority Applications (7)
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