JP3664506B2 - D−乳酸及びl−ラクトアミドの製造法 - Google Patents

D−乳酸及びl−ラクトアミドの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、DL−ラクトアミドを生物化学的に不斉加水分解してD−乳酸及びL−ラクトアミドを製造する方法に関する。本発明で得られるD−乳酸は光学活性フェノキシプロピオン酸系あるいはジフェニルエーテル系除草剤の原料として有用な化合物である。また生分解性ポリマーの原料としての利用も見込まれている。
【0002】
【従来の技術】
光学活性乳酸は、従来糖質を原料とする発酵法で製造されているが、この方法では発酵終了までにかなりの時間を要し、その蓄積濃度は十数%以下と低く、また生成される乳酸の分離、精製等には煩雑な操作を必要とする。D−乳酸の発酵法による製造は特開昭63-173596号公報、特公平5-38593号公報等に記載されている。
【0003】
酵素学的方法による乳酸の製造法に関しては、ニトリル化合物を原料として、光学活性α−置換有機酸を製造する方法 (特開平2-84198号公報及び特開平3-224496号公報参照) 及び光学活性乳酸を製造する方法 (特開平4-99497号、特開平5-219987号公報参照) が知られている。
【0004】
また、α−ヒドロキシメチルエステル化合物を原料として、光学活性α−ヒドロキシカルボン酸誘導体を製造する方法 (特開昭63-63397号公報参照) 及び光学活性α−ヒドロキシカルボン酸を製造する方法 (特開平2-156892号公報参照) 、更に2−ハロゲノプロピオン酸から光学活性乳酸を製造する方法 (特開昭59-31690号公報参照) 、1,2−プロパンジオールからD−乳酸を製造する方法 (特開平4-271787号公報参照) 等が知られている。
【0005】
一方、アミド化合物を原料とする方法としては、微生物による光学活性α−オキシ酸の製法 (特開昭61-88894号公報参照) 、光学活性α−オキシ酸の製造法 (特開昭62-55098号公報参照) 、光学活性α−置換有機酸の製造方法 (特開平2-84198号公報参照) 及び光学活性α−置換有機酸を製造する方法 (特開平3-224496号公報参照) が知られている。
【0006】
上記の特開昭61-88894号、特開平2-84198号及び特開平3-224496号公報には一般論としてラセミのアミド体から対応する光学活性カルボン酸を生成させる可能性が示されているものの、DL−ラクトアミドから直接光学活性乳酸を製造することに関する具体的な記述はなく、DL−ラクトアミドから直接光学活性乳酸を製造しうるかどうか全く不明である。特開昭61-88894号公報には僅か2種の微生物により特定のα−ヒドロキシアミドから対応する光学活性α−ヒドロキシカルボン酸を製造する方法が記載されているに過ぎない。また、特開平2-84198号及び特開平3-224496号公報ではα−置換ニトリル及びα−置換アミドから微生物酵素の作用により対応するα−置換酸を製造するという方法が示されている。しかしながら、本公報で例示されている方法の大半はα−置換ニトリルからの光学活性なα−置換酸の製造であり、また、α−置換アミドからの対応するα−置換酸の製造に関する例示化合物はすべて光学活性炭素にハロゲン、アリール基、アリールオキシ基、複素環基等が結合したものであり、乳酸のようにヒドロキシ基と低分子のアルキル基の組み合わせを有するD−α−置換酸の製造についてはまだ知られていない。
【0007】
一方、特開昭62-55098号公報はDL−ラクトアミドからL−乳酸を製造する方法を開示しているが、DL−ラクトアミドから優位量のD−乳酸を製造する方法についてはまだ知られていない。
【0008】
また、これらの公知技術にはそれぞれの反応において酵素や菌体の効率的な利用方法については何等触れられていない。
さらに、これらの公知技術には光学活性体の蓄積濃度に関しても何等特別な記述はなく、開示されていたとしても数%以下の蓄積濃度の具体例があるのみである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、反応時の酵素や菌体を効率的に利用するとともに、D−乳酸及びL−ラクトアミドを高濃度に蓄積せしめることのできる工業的な製造法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、DL−ラクトアミドを原料として直接優位量のD−乳酸及びL−ラクトアミドを製造すべく、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は、アルカリゲネス属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、アシネトバクター属、コリネバクテリウム属、エンテロバクター属、ミクロコッカス属及びロドコッカス属に属し、DL−ラクトアミドを不斉加水分解する能力を有する微生物の培養液、菌体、菌体処理物、あるいは固定化物をDL−ラクトアミドに作用させることを特徴とするD−乳酸及びL−ラクトアミドの製造法である。
【0011】
また、本発明は、前記微生物の培養液、菌体、菌体処理物、あるいは固定化物をDL−ラクトアミドに作用させ、生成するD−乳酸を取得することを特徴とするD−乳酸の製造法、及び前記微生物の培養液、菌体、菌体処理物あるいは固定化物をDL−ラクトアミドに作用させ、残存するL−ラクトアミドを取得することを特徴とするL−ラクトアミドの製造法を包含する。
【0012】
本発明に用いる微生物としては、アルカリゲネス属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、アシネトバクター属、コリネバクテリウム属、エンテロバクター属、ミクロコッカス属及びロドコッカス属に属し、且つDL−ラクトアミドをD−乳酸に不斉加水分解する能力を有するものであれば、特に制限はない。
【0013】
かかる微生物としては、例えばアルカリゲネス sp. MR-2201株 (FERM P-13958)、アルカリゲネス・ファエカリス (Alcaligenes faecalis) IFO 13111、シュードモナス sp. MR-2301株 (FERM P-13959)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) IFO 12996、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens) IFO 3903、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) IAM 1037、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) ATCC 4720、アグロバクテリウム・ラディオバクター(Agrobacterium radiobacter) IFO 12607、アグロバクテリウム・ラディオバクター(Agrobacterium radiobacter) IAM 1526、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes) IFO 12072、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes) IAM 1645、アシネトバクター sp. MR-2302株(FERM P-14268)、コリネバクテリウム・ニトリロフィルス(Corynebacteirum nitrilophilus) ATCC21419、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae) IFO 3320、ミクロコッカス・バリアンス(Micrococcus varians) IAM 1099、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus) IFO 12708、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi) IFO 3730、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi) IFM152、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis) IFM 155、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis) IFO 12320、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis) IFO 12538、及びロドコッカス・ロドニィ(Rhodococcus rhodonii) IFM 148が挙げられる。
【0014】
これらのうち、アルカリゲネス sp. MR-2201株 (FERM P-13958)、シュードモナス sp. MR-2301株 (FERM P-13959)、及びアシネトバクターsp.MR-2302株(FERM P-14268)が好ましく用いられる。
【0015】
アルカリゲネス sp. MR-2201株、シュードモナス sp. MR-2301株、及びアシネトバクターsp. MR-2302株は、本発明者等が新たに土壌中より分離したもので、上記寄託番号にて通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されており、その菌学的性質はそれぞれ以下に示す通りである。
【0016】
アルカリゲネス sp. MR-2201株:
形態 桿 菌
グラム染色性 −
胞子 −
運動性 +
鞭毛 周 毛
オキシダーゼ +
カタラーゼ +
酸素に対する態度 好気性
OFテスト −
キノン系 Q−8
【0017】
シュードモナス sp. MR-2301株:
形態 桿 菌
グラム染色性 −
胞子 −
運動性 +
鞭毛 極 毛
オキシターゼ +
カタラーゼ +
酸素に対する態度 好気性
OFテスト O
キノン系 Q−8
メタノール資化性 −
pH 3.6での生育 −
【0018】
アシネトバクター sp. MR-2302株:
形態 短桿菌
グラム染色性 −
胞子 −
運動性 −
オキシダーゼ −
カタラーゼ +
酸素に対する態度 好気性
OFテスト −
GC含量(モル%) 38
【0019】
以上の菌学的性質をBergey's Manual of Systematic Bacteriology (1986) に基づいて分類すると、アルカリゲネス sp. MR-2201株はアルカリゲネス属に属する細菌、シュードモナス sp. MR-2301株はシュードモナス属に属する細菌、アシネトバクター sp. MR-2302株はアシネトバクター属に属する細菌であると同定された。
【0020】
本発明においては、通常これらの菌株の一種を用いるが、同様の能力を有する二種以上の混合菌体を用いることも可能である。
【0021】
また、さらに、本発明者らは、D−乳酸及びL−ラクトアミドの効率的な製造方法を鋭意検討した。まず、上記DL−ラクトアミドを不斉加水分解する能力を有する上記酵素を含む菌体を固定化して、得られた固定化菌体を不斉加水分解反応に用いることに着想し、最初にアクリルアミド系の重合体ゲルによって、酵素含有菌体を包括して固定化することを試みた。このアクリルアミド系の重合体ゲルを用いる固定化法は従来からよく研究されており〔例えば「発酵と工業」vol.35, No.3, P.281 〜293, (1977年) 参照〕、例えば酵素とアクリルアミドの混合液を調製して、これを重合させ、生成したゲル内に酵素を包括する方法等が挙げられる。
【0022】
しかしながら、この方法によって製造した固定化菌体は、繰り返しの使用による活性低下が著しく、また懸濁中にゲルが破損するという問題があった。
本発明者らは、上記問題点の発生原因について究明したところ、活性低下に関しては、菌体から遊離した酵素がゲルから反応液側に漏出するために生じることが判った。ゲルからの酵素の漏失を防止するには、酵素分子を多官能性架橋剤で処理することにより、さらに高分子化してゲルの網目構造からの溶出を防止する方法が知られている(例えば特公昭58-36959号公報参照)。
【0023】
しかしながら、上記のように架橋剤で酵素を化学修飾する場合、酵素の活性を損なわないような架橋剤を選択する必要があり、いかなる酵素に対しても酵素の活性を損なうことなく安定した架橋処理が可能なものは現在のところ知られていない。DL−ラクトアミドを生物化学的に不斉加水分解してD−乳酸及びL−ラクトアミドを生成する能力を有する酵素についても同様であり、当該酵素に適した架橋剤及びその使用条件を見出す必要がある。
【0024】
上記課題に対して鋭意研究した結果、本発明者等は、DL−ラクトアミドを生物化学的に不斉加水分解してD−乳酸及びL−ラクトアミドを生成する能力を有する酵素を含む微生物の菌体又は菌体処理物に、アルデヒド基を有する多官能性架橋剤及びアクリルアミド系の単量体を含有する包括材を添加し、重合させた後、得られた重合物を任意の形状に成形した固定化物はその活性を損なうことなく、安定であることを見出した。また、DL−ラクトアミドを不斉加水分解してD−乳酸及びL−ラクトアミドを生成する能力を有する微生物菌体、アルデヒド基を有する多官能性架橋剤、及びアクリルアミド系の単量体を含有する包括材を所定の割合で、例えば微生物菌体1重量部/多官能性架橋剤0.01〜0.25重量部/包括材0.5〜10重量部の割合で均一に混合し、重合することにより、懸濁状態で繰り返し反応に使用しても酵素の漏失がなく、しかも破損の少ない固定化菌体が得られることを見出した。
【0025】
さらに、本発明者等は、DL−ラクトアミドを原料として高濃度のD−乳酸及びL−ラクトアミドを製造すべく、加水分解反応の諸要因の影響について鋭意検討を重ねた結果、反応系のDL−ラクトアミドが40重量%を超えると反応速度が極端に低下し、実質的なD−乳酸及びL−ラクトアミドの製造が困難になるが、DL−ラクトアミドの濃度を制御することにより、目的物をそれぞれ高濃度で蓄積できることがわかった。
【0026】
すなわち、DL−ラクトアミドに、DL−ラクトアミドを不斉加水分解する能力を有する微生物の培養物、菌体、菌体処理物、あるいは固定化物を作用させてD−乳酸及びL−ラクトアミドを生成させる際に、反応系内のDL−ラクトアミド濃度を40重量%以下となるように維持させることにより、D−乳酸及びL−ラクトアミドがそれぞれ10重量%以上の高濃度で蓄積できることを見出した。
【0027】
次に、本発明の一般的実施態様について説明する。
〔1〕菌体調製
本発明に使用される微生物の培養には、ラクトアミド、プロピオンアミド等のアミド化合物及びそれらの誘導物質を唯一炭素源、窒素源として用いるか、又は炭素源としては通常資化しうるものを、一方窒素源としては前記アミド化合物を用いるか、又は炭素源、窒素源双方とも通常資化しうるものを用いるかいずれかの栄養源に微生物の生育に必要な無機栄養源を添加した培地が用いられる。例えば、炭素源としてグリセロール、グルコース、シュークロース等、窒素源として酵母エキス、ペプトン、硫酸アンモニウム等、無機栄養源としてリン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、マンガン塩、亜鉛塩等が用いられる。
【0028】
培養は、好気的条件下、pH4〜10、温度20〜50℃、培養時間1〜7日間行えば良い。
更に、培養初期から中期にラクトアミド、プロピオンアミド等のアミド化合物及びそれらの誘導物質を酵素誘導物質として添加することにより高い酵素活性が得られる。
【0029】
このようにして得られた培養液、菌体またはその処理物 (破砕菌体、粗・精製酵素、固定化菌体・酵素等) はいずれの形でも反応に使用することができる。
菌体の固定化処理を行う場合について以下に説明する。
【0030】
〔2〕固定化菌体の調製
▲1▼ 架橋剤
本発明において使用する固定化架橋剤は、アルデヒド基を有する多官能性のものである。アルデヒド基を有する多官能性架橋剤とは、1分子中に2個以上のアルデヒド基を有する化合物を意味する。このような化合物としては、グルタルアルデヒドやグリオキサール等が挙げられ、それらの混合物を使用することもできるが、特にグルタルアルデヒドを使用するのが好ましい。
【0031】
▲2▼ 包括材
包括材としてはアクリルアミド系の単量体を含有するものを使用する。本明細書において包括材とは、重合することによってゲル化して、微生物の菌体を包括することのできるものをいう。
アクリルアミド系の単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N ’−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられ、1種又は2種以上を適宜使用すればよい。
【0032】
また、菌体との固定を強固にするために、さらにアクリルアミド系の単量体と共重合可能なエチレン系不飽和単量体を併用してもよい。エチレン系不飽和単量体としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルアミノプロピルメタクリルアミドや、これらの第4級化物等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を適宜使用することができる。
【0033】
エチレン系不飽和単量体を併用する場合、アクリルアミド系の単量体1重量部に対して、0.01〜0.5重量部、特に0.05〜0.2重量部の混合比で使用するのが好ましい。
【0034】
▲3▼ 混合
以上の微生物の菌体、架橋剤、及び包括材を水性媒体中で均一に混合する。そのとき、微生物の菌体1重量部に対して、架橋剤を0.01〜0.25重量部、及び包括材を 0.5〜10重量部を添加するのが好ましい。架橋剤の使用量がこれより少ないと、微生物の固定化が不完全となり、漏失が起こる。一方、これより多量に添加すると、包括材の重合が阻害され、機械的強度の大きい重合体ゲルが得られにくい。また、包括材の使用量も生成する重合体ゲルの強度及び活性の発現に大きく影響を与え、使用量が上記よりも少ないと菌体の固定化が不完全となり、一方上記より多量に添加すると、菌体酵素の活性発現が不完全となる。特に好ましくは、菌体1重量部に対して架橋剤を0.03〜0.2重量部、及び包括材を0.8〜8重量部を添加する。
【0035】
水性媒体としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝液等の溶媒、又は前記溶媒を主成分とし、これに水に溶解しうる範囲で有機溶媒等を混合させた混合系を使用することができる。用いうる有機溶媒の代表的な例としては、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジオキサン等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
水性媒体の使用量としては、菌体、架橋剤及び包括材の合計1重量部に対して、1〜50重量部であるのが好ましく、特に2〜10重量部であるのが好ましい。
混合は、機械的手段、例えばプロペラ付き攪拌機、ホモジナイザー等を使用して行うのが好ましい。
【0037】
▲4▼ 重合
上記混合物を重合させるには、重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、特に制限されるものではないが、過硫酸カリや過硫酸アンモニウム等のレドックス系の開始剤を用いるのが好ましい。重合開始剤は、混合物(上記水性媒体は含まない)1重量部に対して、0.0001〜0.1重量部使用するのが好ましく、特に0.0005〜0.01重量部使用するのが好ましい。
【0038】
さらに重合を促進させるために、ジメチルアミノプロピオニトリルやトリエタノールアミン等の重合促進剤を使用してもよい。重合促進剤は、混合物(上記水性媒体は含まない)1重量部に対して、0.0001〜0.1重量部使用するのが好ましく、特に0.0005〜0.1重量部使用するのが好ましい。なお、この重合促進剤は、上記混合工程においてあらかじめ添加しておいてもよい。
【0039】
いずれの添加剤を使用する場合においても、重合反応系内の菌体の量を0.1〜50重量%、特に1〜20重量%の範囲に維持するのが好ましい。
重合は、特に制限されるものではないが、pH5〜10及び−10℃〜+30℃の温度下で行うのが好ましく、特にpH6〜8及び0〜20℃の温度の下で行うのが好ましい。また、雰囲気は、酸素を除去した雰囲気、例えば窒素ガス雰囲気とするのが重合を円滑に進めるために好ましい。この重合は、一般的には10秒〜10時間行う。
【0040】
▲5▼ 成形
重合終了後、得られた重合物を成形し、固定化菌体とする。その形状は特に制限されるものではないが、通常は粒状であり、球状、円柱状、角柱状等いずれの形状からなる粒状であってもよい。反応液からの生成物の回収の容易性や、菌体酵素の活性発現の度合い等を考慮して、粒径は 0.1〜2mmとするのが好ましく、特に 0.5〜1mmとするのが好ましい。成形手段としてはいかなる方法を使用してもよいが、例えば細断機(金網)で押し出した後、刃物で切断する方法がとられる。
【0041】
以上のようにして得られた固定化菌体において、菌体の酵素はアルデヒド基を有する多官能性架橋剤で架橋され、アクリルアミド系の重合体ゲル中に包括されていると考えられる。
【0042】
〔3〕不斉加水分解
このようにして得られた培養液、菌体またはその処理物 (破砕菌体、粗・精製酵素、固定化菌体・酵素等) を含む水性媒体中にDL−ラクトアミドを共存させることにより、速やかに加水分解が進行し、D−乳酸とアンモニアを生成する。反応系内でDL−ラクトアミド濃度は特に制限されるものではないが、一般には0.01〜60重量%を用いるとよい。しかし、円滑且つ効率的に加水分解反応を進行させるためには、菌体またはその処理物 (破砕菌体、粗・精製酵素、固定化菌体・酵素等) を含む水性媒体中でのDL−ラクトアミド濃度を40重量%以下、好ましくは5〜30重量%となるように調整維持することで、速やかに且つ高濃度にD−乳酸及びL−ラクトアミドを、それぞれ10重量%以上、さらには20重量%以上蓄積せしめることが可能である。
【0043】
本発明では、DL−ラクトアミドの反応系内の濃度を40重量%以下となるように調整維持することとは、反応初期から終期を通じてDL−ラクトアミドの濃度を40重量%以下に調整維持することである。DL−ラクトアミドの濃度が40重量%を超えると、酵素失活によると考えられる反応速度の低下が観察される。
反応が進行するに従ってDL−ラクトアミドの濃度は低下するが、当該濃度を40重量%、好ましくは30重量%を超えない範囲でDL−ラクトアミドを連続的又は間欠的に添加すればよい。勿論、反応開始時にDL−ラクトアミドを40重量%濃度以下で一括混合して、その後はDL−ラクトアミドを添加しない方法をとってもよいことはいうまでもない。
このようにDL−ラクトアミドの濃度を調整維持することによって、D−乳酸及びL−ラクトアミドをそれぞれ10重量%以上の高濃度で蓄積することができる。
【0044】
反応系中における微生物の培養液、菌体、菌体処理物の使用量は特に制限されるものではないが、例えば微生物菌体をそのまま用いる場合は、乾燥菌体として0.001〜10重量%になるようにするとよい。特に好ましくは0.01〜2重量%である。固定化菌体を用いる場合は、0.01〜10重量%使用すればよい。
【0045】
反応条件は、特に制限されるものではないが、酵素の安定性を考慮に入れ、反応媒体のpHは3〜12、好ましくは5〜9、反応温度は5〜70℃、好ましくは10〜50℃、反応時間は0.5〜120時間、好ましくは5〜24時間で反応させればよい。
【0046】
製造されたL−ラクトアミドはいったん単離後、化学的加水分解によりL−乳酸を生成せしめることもできる。従って、本発明はこれら一連の操作によりD体及びL体の双方の製造を可能にするものである。
【0047】
尚、前記反応は菌体または酵素を一般的な手法に従って固定化されたものを使用することもできる。反応方式に関してはバッチ式、連続式及び再使用式のいずれの方法でも可能である。
【0048】
反応液からの光学活性乳酸の分離は、遠心分離あるいは瀘過等により菌体または菌体処理物を除去後、抽出、イオン交換、電気透析、その他の公知の方法を利用することができる。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、DL−ラクトアミドを不斉加水分解する能力を有する微生物の作用により、D−乳酸及びL−ラクトアミドを効率よく得ることができる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を何等制限するものではない。
【0051】
〔実施例1〕
アルカリゲネス sp. MR-2201株を下記に示す培地により30℃で48時間振盪培養した。
培地組成
ペプトン 16g
酵母エキス 10g
塩化ナトリウム 5g
ラクトアミド 1g
水 1000ml
得られた培養液を遠心分離により集菌し、0.05Mリン酸緩衝液 (pH7) で洗浄した。同緩衝液中、洗浄菌体を乾燥菌体量として2重量%、DL−ラクトアミド5重量%となるように調整し、30℃で反応開始した。DL−ラクトアミド及び乳酸はHPLC (高速液体クロマトグラフィー) 法により分析した。反応40時間後、D−ラクトアミドからのモル収率約100%でD−乳酸(100% ee)が生成された。なお、D−乳酸の光学純度はダイセル化学工業株式会社製 CHIRALPAK WH カラムにより分析した。
【0052】
〔実施例2〕
アルカリゲネス・ファエカリス (Alcaligenes faecalis) IFO 13111 を実施例1に示す培地により30℃で48時間振盪培養した。得られた培養液を遠心分離により集菌し、0.05Mリン酸緩衝液 (pH7) で洗浄した。同緩衝液中、洗浄菌体を約10重量%、DL−ラクトアミド2重量%となるように調整し、30℃で反応開始した。DL−ラクトアミド及び乳酸をHPLC法により分析した。反応18時間後、D−ラクトアミドからのモル収率ほぼ 100%でD−乳酸 (60%ee) が生成された。なお、D−乳酸の光学純度はダイセル化学工業株式会社製 CHIRALPAK WH カラムにより分析した。
【0053】
〔実施例3〕
シュードモナス sp. MR-2301株を実施例1に示す培地により30℃で48時間振盪培養した。得られた培養液を遠心分離により集菌し、0.05Mリン酸緩衝液 (pH7) で洗浄した。同緩衝液中、洗浄菌体を乾燥菌体量として2重量%、DL−ラクトアミド5重量%となるように調整し、30℃で反応開始した。経時的にDL−ラクトアミド及び乳酸をHPLC法により分析した。結果を図1に示す。反応8時間後、D−ラクトアミドからのモル収率ほぼ100%でD−乳酸(96% ee)及びL−ラクトアミドが生成された。なお、D−乳酸の光学純度はダイセル化学工業株式会社製 CHIRALPAK WH カラムにより分析した。
【0054】
〔実施例4〕
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) IFO 12996を実施例1に示す培地により30℃で48時間振盪培養した。得られた培養液を遠心分離により集菌し、0.05Mリン酸緩衝液 (pH7) で洗浄した。同緩衝液中、洗浄菌体を約10重量%、DL−ラクトアミド1重量%となるように調整し、30℃で反応開始した。DL−ラクトアミド及び乳酸をHPLC法により分析した。反応15時間後、D−ラクトアミドからのモル収率ほぼ100%でD−乳酸 (80%ee) が生成された。なお、D−乳酸の光学純度はダイセル化学工業株式会社製 CHIRALPAK WH カラムにより分析した。
【0055】
〔実施例5〕
シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens) IFO 3903を実施例1に示す培地により30℃で48時間振盪培養した。得られた培養液を遠心分離により集菌し、0.05Mリン酸緩衝液 (pH7) で洗浄した。同緩衝液中、洗浄菌体を約10重量%、DL−ラクトアミド1重量%となるように調整し、30℃で反応開始した。DL−ラクトアミド及び乳酸をHPLC法により分析した。反応48時間後、D−ラクトアミドからのモル収率ほぼ100%でD−乳酸 (92%ee) が生成された。なお、D−乳酸の光学純度はダイセル化学工業株式会社製 CHIRALPAK WH カラムにより分析した。
【0056】
〔実施例6〕
アシネトバクター sp. MR-2302株を実施例1に示す培地により30℃で48時間振盪培養した。得られた培養液を遠心分離により集菌し、0.05M リン酸緩衝液(pH7 )で洗浄した。同緩衝液中、洗浄菌体を乾燥菌体量として1重量%、DL−ラクトアミド5重量%となるように調整し、30℃で反応開始した。DL−ラクトアミド及びDL−乳酸をHPLC法により分析した。反応6時間後、D−ラクトアミドからのモル収率ほぼ100%でD−乳酸(96%ee) 及びL−ラクトアミドが得られた。なお、D−乳酸の光学純度は株式会社住化分析センター製 SUMICHIRAL OA-5000 カラムにより分析した。
【0057】
〔実施例7〕
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) IAM 1037、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) ATCC 4720、アグロバクテリウム・ラディオバクター(Agrobacterium radiobacter) IFO 12607、アグロバクテリウム・ラディオバクター(Agrobacterium radiobacter) IAM 1526、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes) IFO 12072、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes) IAM 1645、コリネバクテリウム・ニトリロフィルス(Corynebacteirum nitrilophilus) ATCC21419、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae) IFO 3320、ミクロコッカス・バリアンス(Micrococcus varians) IAM 1099、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus) IFO 12708、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi) IFO 3730、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi) IFM152、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis) IFM 155、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis) IFO 12320、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis) IFO 12538、及びロドコッカス・ロドニィ(Rhodococcus rhodonii) IFM 148株を実施例1に示す培地により30℃で48時間振盪培養した。得られた培養液を遠心分離により集菌し、0.05Mリン酸緩衝液 (pH7) で洗浄した。同緩衝液中、洗浄菌体を10重量%、DL−ラクトアミド1重量%となるように調整し、30℃で反応開始した。D−乳酸をHPLC法により分析した。反応24時間後の結果を表1に示す。なお、D−乳酸の光学純度はダイセル化学工業株式会社製 CHIRALPAK WH カラムにより分析した。
【0058】
【表1】
Figure 0003664506
【0059】
〔実施例8〕
シュードモナス sp. MR-2301株を実施例1に示す培地により30℃で48時間振盪培養した。得られた培養液を遠心分離により集菌し、0.05M リン酸緩衝液(pH7) で洗浄し、凍結融解菌体(含水率87.9重量%)30gを得た。これに、ポリアクリルアミド8g、メチレンビスアクリルアミド0.4gを溶解した生理的食塩水10gを加え、ミキサーで十分に混合した。次いで、上記混合物48gに25重量%濃度のグルタルアルデヒド水溶液1g、5重量%濃度のジメチルアミノプロピオニトリル水溶液5g及び2.5重量%濃度の過硫酸カリ水溶液5gを加え、窒素雰囲気下で十分混合した後、5℃で約2時間重合反応を行った。反応終了後、得られた重合物を10メッシュの金網上で押しつぶし、この網目を通った破砕物を0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄して固定化菌体を得た。この湿潤状態の固定化菌体10gをイオン交換水180gに懸濁した後、DL−ラクトアミド10gを加え、30℃で24時間不斉加水分解反応を行った。
反応終了後、固定化菌体を60メッシュの金網を用いて回収して、再度上記と同一条件で反応を繰り返した。この繰り返し回数に対するD−乳酸の生成量の推移を調べた。結果を表2に示す。なお、反応生成物であるD−乳酸の定量は、HPLC法を使用して行った。
【0060】
〔比較例1〕
グルタルアルデヒド水溶液を添加しない以外、実施例8と同様にしてD−乳酸の生成量の推移を調べた。結果を併せて表2に示す。
【0061】
【表2】
Figure 0003664506
【0062】
表2から明らかなように、グルタルアルデヒドによって菌体の酵素を架橋した場合には、酵素の活性持続性が非常に優れている。
【0063】
〔実施例9〕
実施例8と同様の凍結融解菌体(含水率80.0重量%)450gを、0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)150gに懸濁し、これに27.5重量%濃度の単量体混合液〔アクリルアミド/N,N ’−メチレンビスアクリルアミド/ジメチルアミノエチルメタクリレートを10/1/1(重量比)で混合した単量体混合物を27.5重量%含有する0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)〕312g及び重合促進剤として5重量%濃度のジメチルアミノプロピオニトリル水溶液88gを加えてミキサーで混合し、菌体−単量体混合液1000gを調製した。得られた混合液1000gに対し、25重量%濃度のグルタルアルデヒド水溶液と、5重量%濃度の過硫酸カリ水溶液11gとを加え、窒素雰囲気中、5℃で混合した。このとき、グルタルアルデヒド水溶液の添加量を0.1〜16gまで変化させた。混合後、約20秒でゲル化した。この重合反応は、容器を氷水で冷却して重合物の中心部の温度を30℃以下に維持して行った。
【0064】
反応終了後、重合物を5℃の下で一晩放置し、その後10メッシュの金網から押し出して破砕した。得られた破砕物を0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)500mlで1時間洗浄したのち、60メッシュの金網で固液分離して、粒状の固定化菌体を調製した。得られた固定化菌体について、グルタルアルデヒドの仕込み量の変化に伴う漏失性を調べるため、酵素の漏失試験を行った。酵素の漏失試験は、湿潤状態の固定化菌体10gを0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)100mlに加え、25℃で15日間洗浄し、その状態における残存活性と未洗浄時における活性との比率を調べることによって行った。活性及び残存活性については、固定化菌体10gをイオン交換水180gに懸濁した後、DL−ラクトアミド10gを加え、30℃、pH7.0下で1時間反応させ、得られたD−乳酸の生成量から調べた。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
Figure 0003664506
【0066】
表3から明らかなように、菌体1重量部に対してグルタルアルデヒドを0.01〜0.25重量部用いると、耐漏失性に優れた固定化菌体が得られる。
【0067】
〔実施例10〕
実施例8と同様の凍結融解菌体(含水率80重量%)を、0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)150gに懸濁し、これに実施例8と同様の単量体混合液及び5.0重量%濃度のジメチルアミノプロピオニトリルを加えてミキサーで混合し、表4に示す仕込み比の6種の菌体−単量体混合液を調製した。このとき、5重量%濃度のジメチルアミノプロピオニトリル水溶液の添加量は、単量体混合液1重量部に対して0.3重量部の割合で添加したものである。得られた菌体−単量体混合液に、菌体1重量部に対しグルタルアルデヒドが0.11重量部となるように、25重量%濃度のグルタルアルデヒド水溶液を加えた。さらに、5重量%濃度の過硫酸カリ水溶液を、菌体−単量体混合液1重量部に対して0.35重量部となるように加え、実施例9と同様にして混合・重合した。得られた重合物について、単量体の仕込み量の変化に伴う漏失性を実施例9と同様にして調べた。結果を表4に示す。
【0068】
【表4】
Figure 0003664506
【0069】
表4から明らかなように、菌体1重量部に対して単量体(包括材)を0.5〜10重量部用いると、耐漏失性に優れた固定化菌体が得られる。
【0070】
〔実施例11〕
シュードモナス sp. MR-2301株を実施例1に示す培地により30℃で48時間振盪培養した。得られた培養液を遠心分離により集菌し、0.05Mリン酸緩衝液 (pH7) で洗浄した。同緩衝液中、洗浄菌体を乾燥菌体量として2重量%、及びDL−ラクトアミドを5、10、20、30、40及び50重量%となるように初期濃度を調整し、各々30℃の温度下で反応させた。反応開始から1時間経過後、不斉加水分解によって得られたD−乳酸をHPLC法により定量し、DL−ラクトアミドの初期濃度が反応初期速度に及ぼす影響を調べた。DL−ラクトアミドの初期濃度と、反応開始1時間経過後におけるD−乳酸の生成量との関係を図2に示す。また、図3〜5に30、40及び50重量%ラクトアミドによる反応経時変化を示す。なお、得られたD−乳酸の光学純度をダイセル化学工業株式会社製 CHIRALPAK WH カラムにより分析した結果、96%eeであった。
【0071】
図2から明らかなように、DL−ラクトアミドの初期濃度が40重量%を超えると反応速度が低下し、50重量%においては著しく低下する。また、図3〜5から明らかなように、DL−ラクトアミドの初期濃度が40重量%を超えると、D−乳酸の蓄積性が著しく低下する。
【0072】
〔実施例12〕
アシネトバクターsp. MR-2302 株を実施例1に示す培地により30℃で48時間振盪培養した。得られた培養液を遠心分離により集菌し、0.05Mリン酸緩衝液 (pH7) で洗浄した。同緩衝液中、洗浄菌体を乾燥菌体量として2重量%、及びDL−ラクトアミドを20、30、40及び50重量%となるように初期濃度を調整し、各々30℃の温度下で反応させた。反応開始から1時間経過後、不斉加水分解によって得られたD−乳酸をHPLC法により定量し、DL−ラクトアミドの初期濃度が反応初期速度に及ぼす影響を調べた。DL−ラクトアミドの初期濃度と、反応開始1時間経過後におけるD−乳酸の生成量との関係を図6に示す。
図6から明らかなように、DL−ラクトアミドの初期濃度が40重量%を超えると反応速度が低下し、50重量%においては著しく低下する。
【0073】
〔実施例13〕
実施例1と同様にMR-2301 洗浄菌体を調製した。0.05Mリン酸緩衝液 (pH7) 中、当該洗浄菌体を乾燥菌体量として2重量%、及びDL−ラクトアミドを30重量%となるように調整し、30℃の温度下で反応開始した。DL−ラクトアミドを、反応開始20時間経過後に10重量%量、40時間経過後に同じく10重量%量添加し、D-乳酸の蓄積状況を観察した。反応時間に対するD-乳酸の濃度とDL−ラクトアミドの濃度との関係を図7に示す。尚、反応65時間後、D−乳酸約25重量%の蓄積が確認された。
図7より明らかなように、DL−ラクトアミドを、15〜30重量%濃度に維持することにより、高濃度のD−乳酸を蓄積することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 シュードモナス sp. MR-2301株による反応を経時的にHPLC法で分析した結果を示す。
【図2】 シュードモナス sp. MR-2301株による反応において、DL−ラクトアミドの初期濃度と反応開始1時間経過後におけるD−乳酸の生成量との関係を示す。
【図3】 シュードモナス sp. MR-2301株による反応において、DL−ラクトアミドの初期濃度を30重量%とした場合の、反応時間に対するD−乳酸の濃度とDL−ラクトアミドの濃度との関係を示す。
【図4】 シュードモナス sp. MR-2301株による反応において、DL−ラクトアミドの初期濃度を40重量%とした場合の、反応時間に対するD−乳酸の濃度とDL−ラクトアミドの濃度との関係を示す。
【図5】 シュードモナス sp. MR-2301株による反応において、DL−ラクトアミドの初期濃度を50重量%とした場合の、反応時間に対するD−乳酸の濃度とDL−ラクトアミドの濃度との関係を示す。
【図6】 アシネトバクターsp. MR-2302 株による反応において、DL−ラクトアミドの初期濃度と、反応開始1時間経過後におけるD−乳酸の生成量との関係を示す。
【図7】 シュードモナス sp. MR-2301株による反応において、反応時間に対するD−乳酸の濃度とDL−ラクトアミドの濃度との関係を示す。

Claims (7)

  1. アルカリゲネス属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、アシネトバクター属、コリネバクテリウム属、エンテロバクター属、ミクロコッカス属及びロドコッカス属に属し、DL−ラクトアミドを不斉加水分解する能力を有する微生物の培養液、菌体、菌体処理物、あるいは固定化物をDL−ラクトアミドに作用させることを特徴とするD−乳酸及びL−ラクトアミドの製造法。
  2. アルカリゲネス属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、アシネトバクター属、コリネバクテリウム属、エンテロバクター属、ミクロコッカス属及びロドコッカス属に属し、DL−ラクトアミドを不斉加水分解する能力を有する微生物の培養液、菌体、菌体処理物、あるいは固定化物をDL−ラクトアミドに作用させ、生成するD−乳酸を取得することを特徴とするD−乳酸の製造法。
  3. アルカリゲネス属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、アシネトバクター属、コリネバクテリウム属、エンテロバクター属、ミクロコッカス属及びロドコッカス属に属し、DL−ラクトアミドを不斉加水分解する能力を有する微生物の培養液、菌体、菌体処理物、あるいは固定化物をDL−ラクトアミドに作用させ、残存するL−ラクトアミドを取得することを特徴とするL−ラクトアミドの製造法。
  4. 上記微生物が、アルカリゲネス sp. MR-2201株 (FERM P-13958)、アルカリゲネス・ファエカリス(Alcaligenes faecalis) IFO 13111、シュードモナス sp. MR-2301株 (FERM P-13959)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) IFO 12996、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens) IFO 3903、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) IAM 1037、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) ATCC 4720、アグロバクテリウム・ラディオバクター(Agrobacteriumradiobacter) IFO 12607、アグロバクテリウム・ラディオバクター(Agrobacterium radiobacter) IAM 1526、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes) IFO 12072、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes) IAM 1645、アシネトバクター sp. MR-2302株 (FERM P-14268)、コリネバクテリウム・ニトリロフィルス(Corynebacteirum nitrilophilus) ATCC 21419、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae) IFO 3320、ミクロコッカス・バリアンス(Micrococcus varians) IAM 1099、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus) IFO 12708、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi) IFO 3730、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis) IFO 12320、及びロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis) IFO 12538であることを特徴する請求項1〜3いずれかに記載のD−乳酸及び/又はL−ラクトアミドの製造法。
  5. 上記微生物が、アルカリゲネス sp. MR-2201株 (FERM P-13958)、シュードモナス sp. MR-2301株 (FERM P-13959)、及びアシネトバクター sp. MR-2302株(FERM P-14268)であることを特徴する請求項1〜3いずれかに記載のD−乳酸及び/又はL−ラクトアミドの製造法。
  6. 上記の固定化物が、DL−ラクトアミドを不斉加水分解してD−乳酸及びL−ラクトアミドを生成する能力を有する微生物の菌体又は菌体処理物に、アルデヒド基を有する多官能性架橋剤及びアクリルアミド系の単量体を含有する包括材を添加し、重合させた後、得られた重合物を任意の形状に成形したものであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のD−乳酸及び/又はL−ラクトアミドの製造法。
  7. DL−ラクトアミドに、DL−ラクトアミドを不斉加水分解する能力を有する微生物の培養液、菌体、菌体処理物、あるいは固定化物を作用させてD−乳酸及びL−ラクトアミドを生成させる際に、反応系内のDL−ラクトアミド濃度を40重量%以下となるように維持させることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のD−乳酸及び/又はL−ラクトアミドの製造法。
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