JP3664026B2 - ワークのドライエッチング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークの表面のエッチングやクリーニングなどを行うためのワークのドライエッチング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウェハ表面のエッチングやプリント基板表面のクリーニングなどのためにプラズマ処理を施すことが知られている。プラズマ処理装置は、真空チャンバに上部電極部と下部電極部を設けて構成されており、下部電極部上にウェハやプリント基板などのワークを載置し、上部電極部と下部電極部の間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させ、イオンをワークの表面に衝突させるなどして作用させてプラズマ処理を行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種プラズマ処理装置において、安定したプラズマ処理を行うためには、ワークを下部電極部上にしっかり固定しておく必要がある。このため従来、ワークは静電チャック手段により下部電極部上に吸着して固定されていた。静電チャック手段は、静電気による吸着力を利用してワークを固定するものである。しかしながら静電チャック手段はきわめて高価であり、プラズマ処理装置の高価格化の主因の1つになっていた。
【0004】
そこで本発明は、安価な手段でワークを下部電極部上に確実に固定できるワークのドライエッチング方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のワークのドライエッチング方法は、真空チャンバと、この真空チャンバに設けられた上部電極部と、この上部電極部の下方に設けられ且つワークを真空吸着する吸着孔が形成された下部電極部と、前記吸着孔内を真空吸引する第1の真空ポンプと、前記真空チャンバ内を真空吸引する第2の真空ポンプとを備え、前記真空チャンバにプラズマ発生用ガスを送り、且つ前記第2の真空ポンプで前記真空チャンバ内の圧力を処理圧力範囲で維持した状態で前記上部電極部と前記下部電極部の間に高周波電圧を印加してプラズマを発生させ、このプラズマによりワークのエッチングを行うワークのドライエッチング方法であって、前記第1の真空ポンプにより前記吸着孔を真空吸引してワークを前記下部電極部上に真空吸着し、次いで前記吸着孔内の圧力が前記処理圧力範囲よりも低い設定圧まで低下した後、前記第2の真空ポンプにより前記真空チャンバ内を真空吸引し、前記吸着孔内の真空圧を前記真空チャンバ内の真空圧よりも小さく保った状態で、プラズマ発生用のガス供給部から前記真空チャンバにプラズマ発生用ガスを供給するとともに前記処理圧力範囲の圧力を維持し、前記上部電極部と前記下部電極部の間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させてワークをエッチングし、プラズマ処理が終了した後、まず前記真空チャンバの真空状態を破壊し、次いで前記吸着孔の真空状態を破壊するようにしたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態におけるプラズマ処理装置の全体構成図、図2は同プラズマ処理装置の下部電極部の側面図、図3は同真空圧の変化図である。
【0009】
まず、図1を参照してプラズマ処理装置の全体構成を説明する。真空チャンバ1の内部には、2つの電極部として上部電極部2と下部電極部3が上下に間隔Tをおいて互いに対向して配設されている。上部電極部2はアース部4に接地されており、また真空チャンバ1も接地されている。
【0010】
上部電極部2は、真空チャンバ1の上壁を上下動自在に貫通する垂直なシャフト5の下端部に連結されている。シャフト5の上端部は、アーム6を介してシリンダ7のロッド8に連結されている。したがってシリンダ7のロッド8が突没すると、シャフト5と上部電極部2は上下動し、上部電極部2と下部電極部3の間隔Tの大きさが変更される。すなわち、シリンダ7は上部電極部2の下部電極部3に対する相対的な高さを調整することにより、上記間隔Tの大きさを変更する間隔変更手段となっている。勿論、上部電極部2を上下動させる手段としては、シリンダ7以外にも、送りねじ機構なども適用できる。また本形態では、下部電極部3に対して上部電極部2を上下動させることにより、間隔Tを変更しているが、上部電極部2に対して下部電極部3を上下動させるようにしてもよい。また、真空チャンバに上部電極部を兼務させてもよいものであるが、この場合には、下部電極部を上下動させて間隔Tを変更する。
【0011】
図1において、シャフト5はガス供給部10にバルブ11を介して接続されている。シャフト5は中空のパイプであり、バルブ11を開くと、ガス供給部10からシャフト5の孔路5aを通して上部電極部2にプラズマ発生用のガスが供給され、このガスは上部電極部2の下面に複数個形成されたガス吹出孔9から下部電極部3へ向って吹出される。
【0012】
図1において、下部電極部3は、ジョイント部12に支持されている。ジョイント部12は真空チャンバ1の下壁に装着されている。13は冷却ユニットであり、パイプ14,15を通して下部電極部3の内部に形成された冷媒路(図示せず)に冷水などの冷媒を循環させ、プラズマ処理時に加熱される下部電極部3およびこれに載せられたワーク20を冷却する。16は上部電極部2と下部電極部3の間に高周波高圧を印加する高周波電源であり、下部電極部3に接続されている。
【0013】
ワーク20は下部電極部3上に載置される。下部電極部3の上面には吸着孔17が複数個形成されており、吸引路23を介して第1の真空吸引手段である第1の真空ポンプ21に接続されている。第1の真空ポンプ21にて吸着孔17を吸引することにより、ワーク20を下部電極部3上に真空吸着して固定する(図2)。22は第1の真空ポンプ21と下部電極部3の間の吸引路23に設けられたバルブであり、吸引路23を開閉する。
【0014】
24はバルブ25を介して吸引路23に接続された大気圧開放ユニットであり、バルブ25を開くと吸着孔17内の真空状態は破壊されて大気圧に戻り、吸着孔17によるワーク20の真空吸着状態は解除される。26は真空チャンバ1内を真空吸引する第2の真空吸引手段である第2の真空ポンプ、27は真空チャンバ1内を大気圧に戻すための大気圧開放ユニットであり、それぞれバルブ28,29を介して真空チャンバ1の吸引路30に接続されている。18は、吸引路30が接続される真空チャンバ1の孔部である。31は下部電極部3の吸着孔17内の真空圧を測定する第1の圧力測定器、32は真空チャンバ1内の真空圧を測定する第2の圧力測定器であり、それぞれ吸引路23,30に接続されている。33は制御部であり、圧力測定器31,32の測定信号が入力され、また必要な演算処理などを行い、また破線で接続された高周波電源16、真空ポンプ21,26などの各要素を制御する。
【0015】
図1において、真空チャンバ1の側壁にはワーク20を出し入れするための出し入れ口40が開口されている。出し入れ口40にはカバー板41が装着されている。カバー板41にはシリンダ42のロッド43が結合されており、ロッド43が突没するとカバー板41は上下動し、出し入れ口40を開閉する。すなわち、カバー板41とシリンダ42は出し入れ口40の開閉手段となっている。
【0016】
真空チャンバ1の側方にはワーク20を真空チャンバ1に出し入れするワーク出し入れ手段50が設けられている。ワーク出し入れ手段50は、可動ユニット51を備えている。可動ユニット51は、Xテーブル52、Yテーブル53、Zテーブル54から成っている。Zテーブル54には、ロッド55が立設されており、ロッド55の上端部に連結された水平なアーム56の先端部には保持ヘッド57が装着されている。保持ヘッド57は、その下面に形成された吸着孔にワーク20を真空吸着するなどしてワーク20を着脱自在に保持する。Xテーブル52とYテーブル53が駆動すると、保持ヘッド57はX方向やY方向へ水平移動し、またZテーブル54が駆動する上下動する。シリンダ42やワーク出し入れ手段50などの各要素も制御部33に制御される。
【0017】
このワークのプラズマ処理装置は上記のような構成より成り、次にプラズマ処理方法を説明する。まずシリンダ42のロッド43を引き込ませることにより、カバー板41を下降させて出し入れ口40を開き、保持ヘッド57を上部電極部2と下部電極部3の間に進入させて上下動作を行わせることにより、ワーク20を下部電極部3上に移載する。この場合、保持ヘッド57が上部電極部2と下部電極部3の間に進入して上下動作を行うことができるように、シリンダ7のロッド8を突出させて上部電極部2を上昇させ、上部電極部2と下部電極部3の間隔Tを大きくする。また保持ヘッド57はワーク20を下部電極部3上に移載したならば、先程と逆の動作を行って真空チャンバ1外に退去し、かつシリンダ42のロッド43を突出させてカバー板41を上昇させ、出し入れ口40を閉じる。上部電極部2は、シリンダ7の作動により元の位置に下降し、これにより間隔Tをプラズマ処理に適した間隔に切り換える。
【0018】
次いで第1の真空ポンプ21で吸着孔17内の真空吸引を開始し(図3のタイミング[1])、設定圧1(例えば100Pa程度)まで圧力が低下した後、第2の真空ポンプ26で真空チャンバ1内の真空吸引を開始し(タイミング[2])、設定圧2(例えば500Pa程度)になるまで真空吸引する(タイミング[3])。このように設定圧1は設定圧2よりもやや低くしてあり、第1の真空ポンプ21による吸着孔17内の真空圧P1が、第2の真空ポンプ26による真空チャンバ1内の真空圧P2よりも小さくなるように(すなわち、第1の真空ポンプ21による吸着力が第2の真空ポンプ26による吸引力よりも大きくなるように)、これらの真空ポンプ21、26を制御部33で制御する。このようにすれば、安価な真空ポンプを用いてワーク20の下部電極部3上への固定を確実に行うことができる(図2も参照)。なお、第1の真空ポンプ21による吸着力が第2の真空ポンプ26による吸引力よりも小さければ、下部電極部3上のワーク20は浮き上るなどしてがたつき、安定したプラズマ処理を行うことはできない。
【0019】
吸着孔17内の真空圧P1や真空チャンバ1内の真空圧P2は、圧力測定器31,32によりモニターされており、制御部33は圧力測定器31,32の圧力測定結果をみながら真空ポンプ21,26を制御する。また設定圧1、設定値2の設定やプログラムの実行に必要な演算・判断なども制御部33で行われる。最終的には、吸着孔17内の真空圧を10Pa以下まで低下させる。
【0020】
またこれと前後して、プラズマ発生用ガスを上部電極部2のガス吹出孔9から下部電極部3へ吹き出し(タイミング▲3▼)、下部電極部3に高周波電圧を印加する。すると上部電極部2と下部電極部3の間にプラズマが発生し、イオン等はワーク20の上面に衝突するなどして作用してプラズマ処理が行われる。この場合、間隔Tを小さく設定することにより、上部電極部2と下部電極部3の間のプラズマ密度を上げることができ、これによりエッチングレート(エッチング力)を大きくして、短時間で速かに所定のプラズマ処理を完了できる。なおタイミング▲3▼からタイミング▲4▼へ移行する間に、真空圧P2が上昇するのは、プラズマ発生用ガスの供給を開始したためである。▲4▼〜▲5▼はガスを供給しながら、プラズマ処理が行われる間であり、この間、真空チャンバ1の真空圧P2は処理圧力範囲を維持する。
【0021】
プラズマ処理が終了した後、プラズマ発生用ガスの供給を停止し(タイミング[5])、真空圧P2が設定圧1になって真空チャンバ1内のプラズマ発生用ガスの排気が確認されたならば、バルブ28を開いて真空チャンバ1内の真空状態を破壊して大気圧に戻し(タイミング[6])、続いてバルブ22を開いて吸着孔17内の真空状態を破壊して大気圧に戻す(タイミング[7])。このように、まず真空チャンバ1内の真空状態を破壊し、次いで吸着孔17内の真空状態を破壊するようにすれば、下部電極部3上のワーク20ががたつくことはない。なおタイミング[5]からタイミング[6]へ移行する間に真空圧P2が低下するのは、プラズマ発生用ガスの供給を停止したことによる。
【0022】
次いでシリンダ7のロッド8を突出させて上部電極部2を上昇させ、下部電極部3との間隔Tをワーク20の搬送作業の障害にならない程度大きくする。またシリンダ42のロッド43を引き込ませてカバー板41を下降させ、出し入れ口40を開放する。
【0023】
次いで、保持ヘッド57は出し入れ口40から真空チャンバ1内に進入し、下部電極部3上で下降・上昇動作を行って下部電極部3上のワーク20をその下面に真空吸着してピックアップする。この場合、上部電極部2を上昇させて間隔Tを大きくしているので、保持ヘッド57は間隔T内への進入動作や間隔T内での上下動作を難なく行うことができる。以上のような保持ヘッド57の動作は可動テーブル50を作動させて、保持ヘッド57に水平移動や上下動を行わせることにより行われる。
【0024】
次いで、保持ヘッド57は後退して真空チャンバ1から脱出し、ワーク20を真空チャンバ1から取り出し、回収部(図外)に移載して回収する。次いで保持ヘッド57は供給部(図外)に待機する次回のワーク20をピックアップし、真空チャンバ1内に再び進入して下部電極部3上に移載する。次いで保持ヘッド57は真空チャンバ1外に後退し、カバー板41を上昇させて出し入れ口40を閉じ、上部電極部2を下降させて間隔Tをプラズマ処理に適した間隔に切り替える。これ以後、上述した動作が繰り返される。
【0025】
ところで、ウェハの薄形化や、ウェハの機械研削面のストレス層(薄形化等のための機械研削によってクラックが発生した層)の除去等のためには、ウェハの全面を深く(例えば5μm程度)エッチングして除去する必要がある。ところが従来のプラズマ処理装置は、プラズマ密度が低く、エッチングレートが小さいため、このような深いエッチングを行うには長大な時間を要することから、このような用途には使用困難・不使不能であったものである。しかしながら本プラズマ処理装置によれば、上部電極部と下部電極部の間隔を5mm〜15mm程度まで小さくしてプラズマ密度を上げてエッチングレートを大きくすることができるので、このような用途にも使用できる。
【0026】
また、従来、ウェハのエッチングなどの半導体処理時には、真空チャンバの真空圧は1Pa程度のきわめて真空度の高い低圧に設定されていたものであり、このため容量の大きいきわめて大型の真空ポンプを必要としていたものであるが、本発明によれば、真空チャンバの真空圧を従来よりもかなり高めの1000Pa〜3000Paに設定することにより、従来よりも比較的小型・小容量の真空ポンプを用いて、プラズマ密度をより一層高くして高速エッチングを実現することができる。
【0027】
また従来のプラズマ処理装置では、ワークは静電チャック手段により下部電極部上に固定していたものであるが、静電チャック手段はきわめて高価であり、コストアップの主因になっていた。これに対し本プラズマ処理装置は、上述のように装置の運転を行うことにより、安価な真空ポンプ21,26を用いてワーク20の固定を行えるようにしたものである。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ドライエッチング中にはワークを下部電極部上にしっかり固定し、安定したドライエッチングを行うことができる。またワークをしっかり固定し、上部電極部と下部電極部の間隔を極力小さくしてプラズマ密度を上げてエッチングレートを大きくすることが可能となるので、ウェハの薄形化やストレス層の除去等のための深いエッチングを必要とするドライエッチング方法として特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態におけるプラズマ処理装置の全体構成図
【図2】本発明の一実施の形態におけるプラズマ処理装置の下部電極部の側面図
【図3】本発明の一実施の形態における真空圧の変化図
【符号の説明】
1 真空チャンバ
2 上部電極部
3 下部電極部
16 高周波電源
17 吸着孔
20 ワーク
21 第1の真空ポンプ
26 第2の真空ポンプ
31,32 圧力測定器
33 制御部
Claims (1)
- 真空チャンバと、この真空チャンバに設けられた上部電極部と、この上部電極部の下方に設けられ且つワークを真空吸着する吸着孔が形成された下部電極部と、前記吸着孔内を真空吸引する第1の真空ポンプと、前記真空チャンバ内を真空吸引する第2の真空ポンプとを備え、前記真空チャンバにプラズマ発生用ガスを送り、且つ前記第2の真空ポンプで前記真空チャンバ内の圧力を処理圧力範囲で維持した状態で前記上部電極部と前記下部電極部の間に高周波電圧を印加してプラズマを発生させ、このプラズマによりワークのエッチングを行うワークのドライエッチング方法であって、
前記第1の真空ポンプにより前記吸着孔を真空吸引してワークを前記下部電極部上に真空吸着し、次いで前記吸着孔内の圧力が前記処理圧力範囲よりも低い設定圧まで低下した後、前記第2の真空ポンプにより前記真空チャンバ内を真空吸引し、前記吸着孔内の真空圧を前記真空チャンバ内の真空圧よりも小さく保った状態で、プラズマ発生用のガス供給部から前記真空チャンバにプラズマ発生用ガスを供給するとともに前記処理圧力範囲の圧力を維持し、前記上部電極部と前記下部電極部の間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させてワークをエッチングし、プラズマ処理が終了した後、まず前記真空チャンバの真空状態を破壊し、次いで前記吸着孔の真空状態を破壊するようにしたことを特徴とするワークのドライエッチング処理方法。
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