JP3663286B2 - ケーブルの絶縁劣化診断方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケーブルの絶縁劣化、特に水トリー劣化の診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル(CVケーブル)などのゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐電圧寿命特性を決定する主要な絶縁劣化現象の一つとして、水トリー劣化がある。この水トリー劣化を診断する絶縁測定技術については従来から多くの方法が提案されてきており、近年では、6.6kVCVケーブルに対して交流印加時の直流成分電流を検出する直流分法や、交流電圧に直流低電圧を重畳して印加した場合の直流成分電流を検出する直流重畳法などが開発されている。しかし、ケーブルの使用電圧階級が高くなるとより軽微な劣化状態を検出する必要があり、上述の従来方法では22kV級以上CVケーブルの信頼性の高い劣化診断は困難であった。
【0003】
この22kV級以上CVケーブルの水トリー劣化を検出できる絶縁劣化診断方法としては、交流課電を用いた残留電荷測定(単に残留電荷測定と略称される場合がある)が提案されている。この方法では、まず最初に試料ケーブルに直流課電を行い、その後に接地(電極間を短絡)して直流印加電圧を除去し、さらにその後に交流電圧を印加して、この交流課電時に、試料絶縁体に流れる電流の中から直流電荷成分(残留電荷)のみを検出して、これを劣化信号に用いる。
【0004】
この方法は現在開発途上にあり、印加電圧の大きさや電圧印加方法の詳細については明確に規定されていない。おおむね、直流印加電圧の大きさは従来の直流もれ電流測定と同程度(22kVケーブルの場合は30kV)であり、直流課電・接地後の交流印加電圧の大きさはケーブルの対地使用電圧程度(22kVケーブルの場合は12.7kV)が採用されている。交流電圧の印加方法としては、電圧を約30秒以内程度で零から所定の値(22kVケーブルの場合は12.7kV)まで昇圧して、その後所定の電圧を1分間程度印加した後に零まで降圧する。また、交流昇圧開始から課電経過約1分後までに観測された残留電荷の増加分が劣化判定に用いられている。
【0005】
水トリー劣化絶縁体の残留電荷の発生機構は以下のように説明される。
すなわち、絶縁体中に水トリーが存在していると、直流課電によって水トリー部と健全絶縁体の界面に空間電荷が蓄積される。直流課電後に接地して直流印加電圧を除去すると、絶縁体内部には空間電荷が残留しており、これが自己の形成する直流電界(空間電荷電界)によって移動を開始し、最終的には消滅する。
【0006】
この空間電荷の移動・減衰に伴い、接地(短絡)を保っている場合には、時間とともに指数関数的に減衰する直流電流(逆吸収電流と称す)I(t)が接地回路に流れる。また、接地を開放した場合には、時間とともにある一定値に飽和するように直流電圧(残留電圧と称す)V(t)が開放された電極間に回復してくる。この逆吸収電流I(t)と残留電圧V(t)の発生は、直流課電後の接地という外部印加電圧の急変に対する絶縁体内部の空間電荷の応答遅れに原因しており、この様な余効現象を電荷として表したものが残留電荷である。
【0007】
従って、残留電荷Q(t)と逆吸収電流I(t)の関係は数1で表され、また残留電荷Q(t)と残留電圧V(t)の関係は数2で表される。つまり、数1と数2は同一の余効現象を各々接地(短絡)回路と電極間開放回路で観測した場合に対応し、数1、数2の残留電荷Q(t)は基本的には同じ値になる。
【0008】
【数1】
Figure 0003663286
【0009】
【数2】
Figure 0003663286
【0010】
ここに、I(t)は短絡回路に流れる逆吸収電流、V(t)は電極を開放した場合の残留電圧、Cxは試料絶縁体の静電容量、tは測定時間である。
この直流課電・接地後に回復してくる残留電荷も水トリー劣化信号の判定量に利用できる。しかし、水トリー劣化部の空間電荷の移動・消滅に要する時間が著しく長いので、外部回路に観測される残留電荷の回復してくる時間(以下、緩和時間と称す)が著しく遅くなり、測定時間が短いと大きな信号量が得られず、結果、水トリー劣化以外の要因による類似信号との区別が難しい問題があった。
【0011】
ところが、残留電荷測定中に交流電圧を印加すると、劣化部に存在していた空間電荷の移動速度が速められて、劣化に原因する残留電荷を短時間で顕在化させられるとの知見が得られた。これが、交流課電を用いた残留電荷測定であり、直流課電・接地後の残留電荷測定中に交流課電を行い、交流課電期間中に回復した残留電荷を劣化診断の判定量に用いる。
【0012】
交流課電下で残留電荷を測定する方法としては、数1と数2に対応する二つの方法がある。図1はこれら測定方法の原理図を示したものであり、いずれも交流印加電源1と試料2を接続する試験回路中に直流電荷(残留電荷)検出回路3を挿入する。これら測定回路を直流信号検出として見た場合には、交流印加電源1の内部インピーダンスは零として取り扱える。
【0013】
図1(a)は第1の残留電荷測定方法を示すものであり、残留電荷を直流電流信号(逆吸収電流)Is(t)として検出する。検出回路の基本構成としては交流バイパス用の大容量のコンデンサCsと検出抵抗Rsが並列に接続される。直流電流成分Is(t)は検出抵抗Rsによって直流電圧成分V´s(t)として検出され、逆吸収電流Is(t)の数3の時間積分から残留電荷Qi(t)が求められる。
【0014】
【数3】
Figure 0003663286
【0015】
ここに、Is(t)は直流電流成分、tは測定時間、V´s(t)は検出抵抗Rsの電位差である。
この方法において検出抵抗Rsを無限小にすれば、直流電流成分Is(t)は数1に示した逆吸収電流I(t)に等しくなる。従って、検出された残留電荷Qi(t)は真の残留電荷Q(t)に等しくなる。しかし、実際の電流測定においては、有限の大きさの検出抵抗Rsを挿入する必要があり、また、大きな検出信号V´s(t)を得るためには検出抵抗Rsを大きな値に選定するする必要がある。この場合、検出される残留電荷Qi(t)は測定回路の応答時定数数4の影響を受けて、測定値Qi(t)の短時間側では真値Q(t)に追従できず、残留電荷Q(t)が変歪して検出される。実験室での短尺ケーブルの測定においては試料の静電容量Cxが小さいために大きなコンデンサCsを用いないで済むが、実線路の長尺ケーブルの場合にはコンデンサCsとして例えば数100μF程度の大きな静電容量を必要とされるので、電荷検出感度を上げるために検出抵抗Rsを10kΩ程度の値に選択すると、この応答遅れ問題は無視出来なくなる。つまり、この測定方法は、急変する電荷の測定には適さない。
【数4】
Figure 0003663286
【0016】
図1(b)は交流課電下で残留電荷を測定する第2の方法を示したものである。この方法は上述の第1の方法の応答遅れ問題を改良するために本発明者らが発明したものであり、基本的には数1に示した接地開放後の残留電圧測定を応用している。検出回路の基本構成としては、交流バイパス用の大容量のコンデンサCsのみとして検出抵抗Rsを取り除き、試料絶縁体内部での空間電荷の移動・消滅に伴って試料電極表面に現れてくる直流電荷(残留電荷)Qv(t)を交流バイパス用コンデンサCsに蓄積させて、この交流バイパス用コンデンサCsの電極間に表れる直流電圧成分Vs(t)を検出し、数5から残留電荷Q(t)を算出する。
【0017】
【数5】
Figure 0003663286
【0018】
ここにCxは試料の静電容量、Csは交流バイパス用コンデンサの静電容量(Cs>>Cx)である。
この第2の方法は、測定期間中に電荷が漏洩すると測定される残留電荷Qv(t)は真の残留電荷Q(t)よりも小さくなる。従って、電圧Vs(t)の測定には電荷の漏洩を避けるために内部インピーダンスが非常に高い直流電圧計を必要とし、また、長時間の連続測定には適さない。しかし、交流バイパス用コンデンサの静電容量Csが大きいので、数分程度の短時間測定においては電荷の漏洩は殆ど問題にならず、また、第1の方法で問題になる測定回路の応答遅れは原理的に存在しないので残留電荷Q(t)の急変が正確に検出される。さらに、電荷を一旦微分した電流信号として検出する第1の方法に比較すると、電荷を微分することなく電圧信号として直接検出するので、原理的に高感度測定が容易に行える。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは上述の第2の方法を用いて、劣化状況の異なる多数の6.6kV〜22kVCVケーブルの交流課電下における残留電荷の回復過程を詳細に測定した。結果、水トリー劣化によって交流破壊電圧が著しく低下した試料ケーブルの場合には、交流電圧を零から所定の値まで昇圧を完了するまでの短時間(数秒以内)で残留電荷が急増し、昇圧完了後には交流電圧を連続課電していても電荷が殆ど増大しない結果を得た。即ち、破壊電圧の明確な低下を伴う劣化ケーブルに観測される残留電荷の緩和時間は極めて短く、1秒程度の時間領域では交流電圧印加と殆ど同時に印加電圧の大きさに対応した残留電荷が回復し尽くしてしまうことが判明した。以後、この様な電荷を緩和時間の短い残留電荷Q0と記述する。
【0020】
一方、劣化が軽微で交流破壊電圧の低下が著しくないケーブルの場合にも、交流昇圧開始から課電完了までの期間中に時間とともにゆっくりと回復してくる残留電荷が検出された。以後、このような電荷を緩和時間の長い残留電荷QEと記述する。
また、劣化とは無関係要因による誤差電荷に関する確認実験を行った結果においても、著しく吸水したテープ巻直線接続部から緩和時間の長い残留電荷QEの発生が確認され、さらにケーブルの気中終端部においても高湿度条件下では表面の帯電電荷に原因する緩和時間が著しく長い残留電荷QEの発生が確認された。
【0021】
以上の説明のように、交流課電を用いた残留電荷測定による劣化診断においては、交流電圧の昇圧過程にのみ回復する緩和時間の短い残留電荷Q0の検出が重要になる。しかし、実際の測定結果には誤差要因になる緩和時間の長い残留電荷QEが優勢に存在しており、信頼性の高い劣化診断を行うためには誤差電荷QEの除去が重要課題になる。
【0022】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、交流課電を用いた残留電荷測定による劣化診断方法において、劣化とは無関係要因による類似信号の区別を容易にして、高感度かつ信頼性の高い水トリー劣化診断手法を提供することを目的としている。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明のケーブルの絶縁劣化診断手法は、ケーブル絶縁体に直流電圧を印加した後に接地し、その後に交流電圧を印加して残留電荷を測定する絶縁劣化診断方法において、交流電圧を零から所定の値まで、劣化とは無関係な残留電荷の緩和時間よりも短い時間で昇圧した後に、電圧を保持することなく零まで降下させて、この交流短時間課電による残留電荷の増加分ΔQを測定する操作を連続して2回繰り返して行い、第1回目の交流課電による残留電荷の増加分をΔQ1とし、第2回目の交流課電による残留電荷の増加分をΔQ2とし、第3回目の交流課電による残留電荷の増加分をΔQ3とし、ΔQ1からΔQ2×(ΔQ2/ΔQ3)を差し引いた電荷Q0=ΔQ1−ΔQ2×(ΔQ2/ΔQ3)を劣化判定量に用いることを特徴とする。
【0024】
【作用】
従来の交流課電を用いた残留電荷測定においては、交流電圧の印加方法として、交流電圧を零から所定の値までに昇圧し、その後所定の電圧を連続印加し、交流昇圧開始から約1分後までの残留電荷の増加分を劣化判定に用いている。
しかし、前述の実験結果にて説明のように、交流昇圧後に電圧を保持していると、劣化とは無関係要因による緩和時間の長い残留電荷QEがゆっくりと回復してくる場合があり、従来の交流電圧昇圧開始1分後程度経過した残留電圧測定結果を劣化判定に用いると、健全なケーブルを劣化発生と誤判定する可能性が強くなる。
【0025】
このような誤差電荷の影響を避けるためには、交流電圧の昇圧時間をできるだけ短くして、昇圧完了時点で検出される残留電荷を劣化判定に用いる方法が考えられる。しかし、電圧の昇圧時間の短縮には限度があり、また、昇圧を速めて短時間の残留電荷測定を行う場合には、電圧昇圧時にパルス性の電源ノイズが発生すると真の残留電荷と区別しにくい問題も発生する。
【0026】
一方、水トリー劣化の著しい絶縁体に観測される残留電荷の場合には、数秒以内の交流電圧昇圧期間中にほぼ全ての電荷が出尽くしており、このような緩和時間の短い残留電荷Q0の測定に対しては、昇圧完了後に電圧を保持している必要性は殆どない。すなわち、緩和時間の短い残留電荷Q0を検出する場合には、交流昇圧完了後に電圧を保持することなく直ちに電圧を降下させても問題は生じない。また、この電圧昇降期間中にパルス性の電源ノイズが発生した場合においても、電圧昇圧直前と電圧降圧直後の直流電荷の大きさを測定さえすれば、それらの差から交流課電による残留電荷の増加分を検出できる。つまり、交流の昇降圧をできるだけ短時間で行い、かつ、交流電圧昇降前後の電荷の大きさの差ΔQを正確に測定しておけば、劣化と無関係な残留電荷QEの影響を低減しつつ、劣化に関係する緩和時間の短い残留電荷Q0を検出できることになる。
【0027】
しかし、上述の短時間の交流電圧昇降操作による残留電荷測定を行っても、劣化と無関係な残留電荷QEを完全には除去できない。そこで、上述の交流電圧昇降操作による残留電荷測定を全く同様に2回繰り返して実施した場合を考える。第1回目の交流昇降操作によって得られた残留電荷の増加分ΔQ1には、緩和時間の短い残留電荷Q0と緩和時間の長い残留電荷QEによる成分が含まれている。一方、緩和時間の短い残留電荷Q0は第1回目の交流課電時に出尽くしている(緩和が完了している)ので、第2回目の交流昇降操作によって得られた残留電荷の増加分ΔQ2には劣化と無関係な残留電荷QEのみしか存在しない。
【0028】
ここに、残留電荷の増加分ΔQ1と残留電荷の増加分ΔQ2の測定時間は同じであり、かつ、劣化と無関係な残留電荷QEの緩和時間に比して充分短いことを考慮すると、残留電荷の増加分ΔQ1と残留電荷の増加分ΔQ2中に含まれる劣化と無関係な残留電荷QEの大きさはほぼ等しくなると思われる。そこで、第1回目の測定結果から第2回目の測定結果を差し引くと、ΔQ1−ΔQ2=Q0+QE−QE=Q0になり、劣化に関係のある緩和時間の短い残留電荷Q0のみが得られることになると思われる。すなわち、第1回目の課電と第2回目の課電による残留電荷の増加分ΔQ1とΔQ2中に含まれる緩和の遅い誤差電荷成分の大きさQE1とQE2とは近似的に等しいと考えているのである。
【0029】
しかし、厳密には、誤差電荷成分にはQE1≧QE2なる関係があり、Q0≡ΔQ1−ΔQ2に基づいて緩和の速い劣化信号Q0を検出する方法を採用すれば、緩和の遅い誤差電荷成分の除去は不完全になる。
実験室における短尺ケーブルの検討結果においては、緩和の遅い誤差電荷は殆ど無視できる大きさであり、Q0≡ΔQ1−ΔQ2に基づいて緩和の速い劣化信号Q0を検出する方法で問題はないと考えられていた。しかし、本願発明者が実際に実施した現場測定では、緩和の遅い誤差電荷が極めて大きく、この方法では、誤差電荷の除去が不完全であることが判明した。
【0030】
この問題に対処する方法として、本願発明者は、交流短時間課電による測定回数を3回に設定して誤差電荷の除去の精度を高め、緩和の速い劣化信号Q0の精度を高める方法を見出した。
さらに詳細に説明する。
交流課電下において残留電荷Q(t)が回復してくる現象を単一の緩和時間(時定数)τで近似すると、Q(t)は数6の通りに表される。
【0031】
【数6】
Figure 0003663286
【0032】
ここに、QAはt→∞に回復してくる残留電荷の大きさ、τは緩和時間、tは交流課電開始後の経過時間である。
したがって、交流課電開始後の時刻tn-1=(n−1)Δtからtn=nΔt間に回復してくる電荷の大きさΔQnは、数7になる。
【0033】
【数7】
Figure 0003663286
【0034】
同様にして、交流課電開始後の時刻t(n-k)-1={(n−k)−1}Δtからtn-k=(n−k)Δt間に回復してくる電荷の大きさΔQn-kを算出し、数6に代入すると、数8になる。
【0035】
【数8】
Figure 0003663286
【0036】
k=1の場合は、数9になる。
【0037】
【数9】
Figure 0003663286
【0038】
すなわち、1回の課電時間をΔtとする交流課電を繰り返して行う残留電荷測定においては、連続する2回の測定で得られた各々の残留電荷の増加分の比率ΔQn-1/ΔQnはexp(Δt/τ)に相当する。言い換えれば、緩和時間τが単一の場合には、連続する2回の測定結果によって得た残留電荷(の増加分)の比率は常に一定値exp(Δt/τ)になり、課電回数(課電履歴)には依存しない。つまり、ΔQn-1/ΔQnは、残留電荷の緩和時間に関係する量であり、観測された電荷の緩和過程を表す特性値になる。
【0039】
ΔQn-1/ΔQnは、1以上の値になり、大きな値を示すほど残留電荷の緩和時間τが小さいことを意味している。
数8に数9を代入すると数10になる。
【0040】
【数10】
Figure 0003663286
【0041】
ただし、n≧3、2≦k≦n−1である。
ここで、k=n−1とすると数11になる。
【0042】
【数11】
Figure 0003663286
【0043】
ただし、n≧3である。
また、k=n−1、n=3の場合は、数12になる。
【0044】
【数12】
Figure 0003663286
【0045】
すなわち、数12は、連続して3回の測定を行った場合、第2回目と第3回目の残留電荷の増加分から第1回目の残留電荷の増加分を推定できることを示している。
数5に示されるように、緩和時間τが交流課電時間Δtに比して十分小さい場合には、第1回目の交流課電時に電荷が回復し尽くして(ΔQ1=QA)、第2回目以降の課電では電荷の増加(ΔQ2、ΔQ3、・・・)が発生しない。本願の劣化診断手法においては、この緩和の速い電荷をQ0として、劣化判定信号に用いている。
【0046】
いま、連続する3回の繰り返し課電時に測定される残留電荷の増加分中に含まれる緩和の遅い誤差電荷成分を各々ΔQE1、ΔQE2、ΔQE3とで表すと、これらの電荷の関係は、数13のとおりになり、第1回目課電時の電荷増加分ΔQ1には真の劣化信号Q0にΔQE1が加算されている。
【0047】
【数13】
Figure 0003663286
【0048】
ここで、誤差電荷成分の緩和過程を単一緩和に近似すると、数13を用いることができるので、数14となる。
【0049】
【数14】
Figure 0003663286
【0050】
故に、課電時間をΔtとする連続した3回の交流課電を行えば、数15を用いて誤差信号を分離することができる。
【0051】
【数15】
Figure 0003663286
【0052】
ここに、ΔQ1、ΔQ2、ΔQ3は、第1回〜第3回の交流課電による残留電荷の増加分である。
したがって、数15を用いてQ0を算出することにより、緩和の速い劣化信号Q0の精度を高め、信頼性の高い劣化診断を達成することができる。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を図示の実施態様を参照しつつ説明する。
図2は本発明を実施するための測定回路のブロック図である。
図において、1は静電容量がCxなる試料ケーブルであり、2は直流電圧VDCを発生する直流課電装置である。これら試料ケーブル1と直流課電装置2の低圧側は接地Eに接続される。3は交流課電用の試験用変圧器であり、試験用変圧器3の一次巻線側には誘導電圧調整器4が接続されており、これによって試験用変圧器3の二次側の出力電圧を零からVACまでに変化させる。試験用変圧器3の二次側巻線の低圧端子Vと接地Eとの間には電荷検出回路5が接続される。この電荷検出回路5は、入力部を短絡するためのスイッチSWと交流電圧をバイパスするための大容量のコンデンサCs1、ならびに、ローパスフィルタとして使用するインダクタンスLsとコンデンサCs2、さらに残留電荷を検出するための高入力インピーダンス電圧計VMから構成されている。6は試料ケーブル1へ電圧印加を行うための切り替えスイッチであり、その固定端側は試料ケーブル1の高圧側(導体側)に接続されており、切り替え側の接点6aは保護抵抗RCを介して直流課電装置2に接続され、接点6bは保護抵抗RDを介して接地Eに接続され、さらに接点6cは試験用変圧器3の二次巻線の高圧端子Uに接続されている。なお、電荷検出回路5のコンデンサCs1は試料ケーブル1の静電容量Cxよりも充分大きな値に選択しておく。
【0054】
図2にて、あらかじめ電荷検出回路5の入力部をスイッチSWにて短絡した状態にしておき、まず最初に切り替えスイッチ6を接点6a側に接続して試料ケーブル1に直流電圧VDCを所定時間印加する。この後に接点6bに切り替えて試料ケーブル1を接地する。次に、接点6cに切り替えて、残留電荷測定と交流課電が可能な回路状態にする。試験用変圧器3の巻線の直流抵抗は殆ど零とみなせるので、以上までの操作によって、試料ケーブル1は直流課電が完了して接地された状態になっている。
【0055】
交流課電開始の2〜3分前に電荷検出回路5のスイッチSWを開放し、高入力インピーダンス電圧計VMを用いて電荷検出回路5の端子間直流電圧Vs(t)の測定を開始する。この時、スイッチSWの開放によって試料ケーブル1の電極間は開放されたことになり、また同時に、直流回路として見た場合には試料ケーブル1の静電容量Cxに電荷検出回路5のコンデンサの静電容量Cs=Cs1+Cs2が並列に接続された状態になっている。
【0056】
従って、接地が開放された試料ケーブル1に回復してくる残留電荷は電荷検出回路5の端子間直流電圧Vs(t)として検出され、Vs(t)×Cs(=Cs1+Cs2)が数5に示した残留電荷の測定値Qv(t)になり、電荷の漏洩が無視できる範囲で測定を行うのでQv(t)は真の残留電荷Q(t)に等しくなる。すなわち、スイッチSWの開放と同時に交流課電を行わない状態で残留電荷測定が開始されたことになる。
【0057】
次に、上述のスイッチSWを開放した残留電荷測定状態下で試料ケーブル1に交流電圧を印加する。誘導電圧調整器4を操作して、試験用変圧器3の交流発生電圧を零からVACまでに短時間で昇圧し、昇圧完了後直ちに零まで降圧させる。電圧の昇降に要する時間としては約20秒以下程度であるが、短ければ短いほど良好な結果が得られる。
【0058】
第1回目の交流課電前後における残留電荷の増加分ΔQ1を測定した後に、第1回目と全く同様にして第2回目の交流課電を行い、第2回目の交流課電前後における残留電荷の増加分ΔQ2を測定し、次いで、第1回目と全く同様にして第3回目の交流課電を行い、第3回目の交流課電前後における残留電荷の増加分ΔQ3を測定する。以上の測定完了後、Q0=ΔQ1−ΔQ2×(ΔQ2/ΔQ3)として得られる緩和時間の短い残留電荷Q0の大きさを劣化判定に用いる。
【0059】
図3は、図2の測定回路を用い、上記のようにして残留電荷を測定したときの測定結果例を示している。
これら測定結果例が示すように、従来の交流課電時間が長い残留電荷測定手法を用いると誤差電荷を検出する危険性が強いが、本発明の緩和時間の短い残留電荷を劣化判定量に用いる方法を用いれば、誤差電荷の影響が著しく低減されて、信頼性の高い劣化診断が可能になる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明のように、本発明に係わる直流課電・接地後の交流課電下での残留電化測定を利用したケーブルの絶縁劣化診断方法では、交流電圧の印加直後に回復を完了してしまう緩和時間の短い残留電荷のみを劣化信号に用いるので、類似の緩和時間の長い残留電荷の除去が可能になり、信頼性の高い劣化診断を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】交流課電下での残留電荷測定の説明図である。
【図2】本発明を実施するための測定回路図である。
【図3】本発明の劣化診断方法の実施態様である。

Claims (1)

  1. ケーブル絶縁体に直流電圧を印加した後に接地し、その後に交流電圧を印加して残留電荷を測定する絶縁劣化診断方法において、交流電圧を零から所定の値まで、劣化とは無関係な残留電荷の緩和時間よりも短い時間で昇圧した後に、電圧を保持することなく零まで降下させて、この交流短時間課電による残留電荷の増加分ΔQを測定する操作を連続して3回繰り返して行い、第1回目の交流課電による残留電荷の増加分をΔQ1とし、第2回目の交流課電による残留電荷の増加分をΔQ2とし、第3回目の交流課電による残留電荷の増加分をΔQ3とし、ΔQ1からΔQ2×(ΔQ2/ΔQ3)を差し引いた電荷Q0=ΔQ1−ΔQ2×(ΔQ2/ΔQ3)を劣化判定量に用いることを特徴とするケーブルの絶縁劣化診断方法。
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