JP3661896B2 - 固定式消火設備の散水方法及び消火用散水ノズル - Google Patents

固定式消火設備の散水方法及び消火用散水ノズル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スプリンクラー消火設備などの固定式消火設備の散水方法及び消火用散水ノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のスプリンクラー消火設備に使用される消火用散水ノズルとしては、防護範囲全体に均一に散水させるため、水をデフレクタで分散させて粒状に散水しており、例えば図15に示すようなものがある(特開平5−7633号)。
図15はヒュージブルリンク式の消火用散水ノズルであり、ノズル本体1に放水口2が形成され、放水口2に設けた栓3とデフレクタ4との間に一対のレバー5A,5Bを接触点6a,6b,6cによって係止し、栓3を閉鎖状態に支持している。レバー5Aとレバー5Bは感熱体としてのヒューズ7aで固着された一対のリンク7が装着され、栓3の閉鎖状態を維持している。
【0003】
火災の発生による温度上昇でヒューズ7aが溶けると、一対のリンク7が矢印で示すように分解し、レバー5A,5Bの係止が解除され、水圧によってレバー5A,5Bがはじけ、放水口2から栓3が脱落して加圧水が放水口2から噴出し、散水が開始される。このとき放水口2から噴出した水は、デクレクタ4に当たって防護範囲全体に均一に散水される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の消火用散水ノズルにあっては、1個のノズル当り例えば80リットル/分以上という所定流量の連続放射となっていたため、火災消火能力に対して比較的多くの消火液あるいは水の量が必要であり、当然、消火する対象物以外のものにも放射されるため、放射した消火液あるいは水による二次災害、いわゆる水損が大きくなるという問題があった。
【0005】
また、設備的には水槽、ポンプが大容量となるうえ、配管サイズも大きくなり、設備全体の費用が高くなるという問題があった。また、従来の消火用散水ノズルでは、防護範囲全体に均一に散水させるため、水をデフレクターに当てて粒状に分散させているため、火災の勢いが強い場合には、分散された水は粒径が小さく、火災の気流に負けて火災の深部に達する前に蒸発してしまう。このため、火災の抑制に時間がかかり、また全く消火できないこともある。また水の量も多くなり、水損による被害も大きくなる。
【0006】
更に、防護範囲内のある一点から見ると、粒状の水により、一瞬その一点の火災の炎が弱まったとしても、その地点の付近の炎により一度かかった水が蒸発し、付近の炎によって再び燃え始める。このため完全に消火するまでに時間がかかる。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、火災消火能力を確保しながら、消火用散水ノズル1個当りの放射量を低減することで、水損を減らし、ポンプなどの容量を小容量とし、全体の設備費用を低減することができる固定式消火設備の散水方法及び消火用散水ノズルを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は、次のように構成する。
まず本発明は、消火配管に接続された消火用散水ノズルから火災時に所定の防護範囲に消火液または消火用水を散水して消火を行う固定式消火設備の散水方法として、1つの消火用散水ノズルに複数のスポット状の散水穴を並べて形成し所定の防護範囲内の特定の消火対象面に、スポット状の散布パターンを複数連続して並ぶよう同時に散水し且つ複数並んだスポット状の散布パターンが消火対象面に当った際に飛散することにより隣接するスポット状散布パターンがくっつきあって帯状の散布パターンが形成されるよう集中的に散水し、複数のスポット状散布パターンを有する帯状の散布パターンを防護範囲内で走査して所定の防護範囲内全域に散水させることを特徴とする。
【0008】
ここで、連続したスポット状の散布パターンは、隣接する散布パターン同士の間隔が略30cm以下となるように散水することが望ましい。また消火対象面に当たるスポット状の散布パターンの侵入角度の隣接する同士の角度差が、略5度以下となるように散水することが望ましい。
また本発明は、消火液または消火用水が圧送される消火用配管に接続され、火災時に所定の防護範囲内に消火液または消火用水を散水する固定式消火設備の消火用散水ノズルを提供する。この消火用散水ノズルは、複数のスポット状の散水穴を並べて形成し、所定の防護範囲内の特定の消火対象面に、スポット状の散布パターンを複数連続して並ぶよう同時に散水し且つ複数並んだスポット状の散布パターンが消火対象面に当った際に飛散することにより隣接するスポット状散布パターンがくっつきあって帯状の散布パターンが形成されるよう集中的に散水するヘッド部と、ヘッド部走査して複数のスポット状散布パターンを有する帯状の散布パターンを所定の防護範囲内の全域に散水させる走査部とで構成される。
【0009】
消火用散水ノズルのヘッド部には、連続したスポット状の散布パターンの隣接する散布パターン同士の間隔が略30cm以下となるように複数の散水穴を設ける。また消火用散水ノズルのヘッド部から消火対象面に当たるスポット状の散布パターンの侵入角度の隣接する同士の角度差が、略5度以下となるように複数の散水穴を設ける。
【0010】
消火用散水ノズルのヘッド部による帯状の散布パターンは、防護範囲の少なくとも中心付近から外周部まで散水する散布パターンである。また帯状の散布パターンは、防護範囲の中心付近から外周面まで散水する渦巻形状である。更に、ヘッド部は、防護範囲の消火対象面上にスポット状の散布パターンが連続して並ぶように開口方向を適宜設定した複数の散水穴を設けてもよい。
【0011】
このような本発明の固定消火設備の散水方法及び消火用放水ノズルによれば、防護範囲内の特定部分に集中的に複数のスポット状の散布パターンが連続して並んで散水されるため、防護範囲内のある一箇所からみれば、瞬時的には散水量が増えると同時に、消火対象物に当たる水の打力及び粒子径も増すので、消火能力が増大する。
【0012】
即ち、本発明においては、水は分散された粒状ではなく、特定の部分に集中的に散水される打力の強いスポット状の水の塊として消火対象物に散水されるため、火災気流に負けることなく火災の深部まで到達して消火能力が高まり、火災抑制までの時間が短くて済み、従って鎮火までの水量も少なくて済む。
更に、本発明にあっては、連続するスポット状の散水パターンとなる水が消火対象面にあたった時に、飛散により広がって互いにくっつき合い、連続する帯状の散布パターンを形成する。このような帯状の散布パターンを走査すると、防護範囲内の水を散水して鎮火した場所と、これから散水する燃えている場所とを散布パターンで仕切ることができ、この結果、一度消火した部分が再び燃え上がることがなく、より早期に消火できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の消火用散水ノズルを用いたスプリンクラー消火設備の説明図である。図1において、天井11の裏側には消火用配管12が設置されている。消火用配管12には、例えば電動弁13を介して本発明の消火用散水ノズル14を接続している。
【0014】
消火用散水ノズル14は、ノズル本体14A、ノズル本体14Aに対し水平回りに回転自在に装着された半球状のヘッド部14G、及びヘッド部14Gを回転走査する走査部としてのモータ18で構成される。即ち、ノズル本体14Aの側面が電動弁13の二次側の消火配管12に接続され、火災時にスプリンクラー消火設備の消火ポンプの起動により加圧された消火用水の供給を受けるようになる。
【0015】
ノズル本体14Aの上部には走査部としてのモータ18が設置され、モータ18の回転軸18Aをヘッド部14G側に連結している。ノズル部14Gは上部に回転軸部14Mを一体に形成している。回転軸部14Mは、ノズル本体14Aの下端部に嵌め込まれ、ヘッド部14Gを回転自在に支持している。
回転軸部14Mのノズル本体14A内の外周には2条のリング溝14F,14Jが形成され、それぞれOリング19,20を嵌め込んでおり、ノズル本体14Aからの水の漏れ出しを防止している。
【0016】
また回転軸部14Mには上部に貫通して連通路14Hが複数形成され、ノズル本体14Aに消火用配管12から供給された水をヘッド部14Gに送れるようにしている。半球状のヘッド部14Gの半球面上には、半径方向に一列に並んで複数の散水穴26が形成されている。この散水穴26により、散水時、防護範囲内の特定の部分に集中的に散水して帯状の散布パターン24が形成される。
【0017】
図2は図1のヘッド部14Gの下方から見た説明図であり、半球状のヘッド部14Gの半球面に半径方向に複数の散水穴26が一列に並んで形成されている。このような本発明の消火用散水ノズル14の天井11に対する設置場所の近傍には火災感知器22が設置される。火災感知器22は、信号線23を介して防災監視盤16に接続される。また消火用散水ノズル14に設けているモータ18は制御線21により防災監視盤16に接続されている。
【0018】
火災の発生により火災感知器22が発報すると、防災監視盤16が火災感知器22の発報信号を受信し、この発報信号に基づいて火災を判断すると、防災監視盤は電動弁13に制御信号を出力して開弁させると共に、モータ18に走査制御信号を出力してモータ18を回転させる。更に防災監視盤16は、図示しないスプリンクラー消火設備の消火ポンプを起動して消火用水の加圧供給を行わせる。
【0019】
このため、消火用配管12から供給された加圧水は電動弁13を介して消火用散水ノズル14のノズル本体14Aに供給され、回転軸部14Mの連通穴14Hからヘッド部14Gに送り込まれ、ヘッド部14Gに形成している一列に並んだ散水穴26から防護範囲に向けて散水される。このとき、ヘッド部14Gはモータ18により所定の速度で回転走査される。
【0020】
ヘッド部14Gの散水穴26から散水された水の散水パターンは、散水穴26のそれぞれに対応した棒状散水パターン24aと、棒状散水パターン24aの間に霧状に細かい水滴が飛散する水膜散水パターン24bとなる。また防護範囲の消火対象面に散水パターンが当たってできる散布パターン24は、棒状散水パターン24aに対応したスポット状散布パターン27が一列に連続して並び、且つスポット状散布パターン27が消火対象面に当たって飛散、および消火対象面を流れることにより、広がって繋がった飛散領域28をもつ帯状の散布パターン24を形成している。
【0021】
図3は図1の実施形態における防護範囲の消火対象面に対する散水パターンを示している。天井11側に設置した消火用散水ノズル14のヘッド部14Gの散水穴からの散水パターンは、散水軌跡29のように防護範囲の消火対象面30に散水される。このため消火対象面30には、ヘッド部14Gに設けている散水穴に対応したスポット状散布パターンが連続的に並び、さらに消火対象面に当ったとき飛散して、もしくは消火対象面を流れることにより、帯状散布パターン24が形成される。
【0022】
図4は図3の防護範囲の平面図であり、円形の防護範囲25に対しスポット状散布パターン27が連続的に並び、その間が飛散領域28として繋がった帯状散布パターン24が形成される。この帯状散布パターン24がモータ18の駆動によるヘッド部14Gの回転に伴って矢印Bのように防護範囲25内を回転走査して、防護範囲全域に散水するようになる。
【0023】
尚、この散布パターンの走査の速度は、帯状の散布パターンの形状が維持できる程度の比較的低速度にする必要がある。つまり、ヘッド部の回転数が高いと、ヘッド部から散水された塊状である棒状の散水パターン24aが分散して粒状態になってしまい、防護範囲内の特定部分に集中的に散水するスポット状の散布パターンを形成することができなくなり、当然、帯状の散布パターンが形成できなくなるためである。
【0024】
図5は図3の帯状散布パターン24のA部を拡大してその詳細を示す。ヘッド部14Gからの棒状散水パターンは、散水軌道29に示す方向から消火対象面に侵入して当たる。この消火対象面に当たったときの散布範囲が、斜線で示すスポット状散布パターン27となる。
消火対象面に当たったスポット状散布パターン27は、飛散して略楕円状に広がった飛散領域28を形成する。飛散領域28は、隣接するスポット状散布パターン27の間で相互に繋がり合うように、消火対象面におけるスポット状散布パターン27の間隔Lが設定されている。
【0025】
ここで図3における消火用散水ノズル14の設置高さをH、防護範囲の半径をrとすると、現在法的に要求されている最大の高さは2.7mであり、また最大の有効散水半径は2.6mとなる。このため、H=2.7m、r=2.6mの条件で図5のようなスポット状散布パターン27とその飛散領域28により繋がった帯状散布パターン24を形成するためのスポット状散布パターン27の間隔Lは、30cm以下となる。
【0026】
したがって図5のような帯状散布パターン24を得るためには、消火対象面においてL=30cm以下にスポット状散布パターン27が並ぶように、図2のヘッド部14Gに設けている散水穴26の間隔、放水方向、穴径を定めればよい。また図5におけるスポット状散布パターン27による帯状散布パターン24を形成するための条件をH=2.7m、r=2.6mとした場合の散水軌道29の侵入角度θ1,θ2,θ3に着目すると、隣接するスポット状散布パターン27の散水軌道29の間の侵入角度の角度数は5°以下であれば帯状の散布パターン24が形成される。即ち、侵入角度θ1と侵入角度θ2との差が5度以下、また侵入角度θ2と侵入角度θ3との角度差が5度以下とすると、帯状散布パターン24を形成することができる。
【0027】
消火用散水ノズル14からの散水により消火が完了した場合は、火災感知器22からの復旧信号の受信により、防災監視盤16は鎮火確認に必要な所定時間経過後に、電動弁13に閉制御信号を出力して閉鎖し、同時にモータ14に走査停止信号を出力して停止させてもよく、また、監視員が手動により停止させてもよい。
【0028】
図6は、防護範囲内の1箇所から見た散水量の時間的変化を従来例と本発明について示したグラフ図である。図6(A)は従来の消火用散水ノズルの散水量であり、防護範囲内のある1箇所から見て、従来は一定水量の水が放射される時間的変化となる。これに対し図6(B)の本発明による散水にあっては、防護範囲内の特定の部分に集中して放水することにより帯状散布パターンを形成して走査しているため、防護範囲内のある1箇所から見れば間欠的に大量の水が散水される。
【0029】
このため本発明の消火用散水ノズルにあっては、防護範囲のある一部分から見ると、火災に対して瞬間的には従来の散水ノズルよりも大量の水が散水されるため、一定水量を継続して散水する従来よりも瞬間的に集中して大量の水を散水した本発明の方がより高い消火能力が得られる。このため、従来80リットル/分の防護範囲全域放射の放射ノズルと、例えば40リットル/分の走査で1rpm程度の本発明の散水ノズルを比較すると、防護範囲全体的に見て少ない水量であるにも関わらず本発明の方がより高い消火能力が得られる。
【0030】
一方、防護範囲内のある1箇所から見れば、従来のように防護範囲内全体に散水するのと比べ本発明にあっては、瞬間的には散水量が増えると同時に消火対象物に当たる水の打力及び粒径も増すので消火能力が増大する。即ち本発明においては、水は分散された粒状ではなく特定の部分に集中して散水される打力の強い水の塊として消火対象物に散水されるため、火災の気流に負けることなく火災の深部まで到達して消火能力が高くなり、火災抑制までの時間が短くて済み、したがって鎮火までの水量も少なくて済む。
【0031】
更に本発明にあっては、連続するスポット状散布パターンとなる水が消火対象面に当たったときに飛散により広がって互いにくっつき合い、連続する帯状パターンを形成する。そして、このような帯状散布パターンが防護範囲全域を走査するため、防護範囲内の水を散水して鎮火した場所とこれから散水する燃えている場所とを帯状散布パターンで仕切ることができ、この結果、一度消火した部分が再び燃え上がることなく、より早期に消火できる。
【0032】
図7は本発明による帯状散布パターンを従来と対比して示している。図7(C)は従来の散布パターンであり、従来の散水ノズルでは防護範囲全体に均一に散水させるため、水をデフレクタで分散させて粒状にしており、防護範囲25内に比較的粒径の小さい様々な大きさを持った粒状の水によるスポット状散布パターン76がランダムに形成される。
【0033】
このため火災の勢いが強い場合には、分散された水は粒径が小さいため火災の気流に負けて炎72の深部に到達する前に蒸発し、火災の抑制に時間がかかり、また全く消火できないこともある。このため水の量も多くなり、水損による被害も大きくなる。
更に防護範囲25内のある一点から見ると、粒状の水により、一瞬その一点の火災の炎27が弱まったとしても、その地点の付近の炎72により一度かかった水が蒸発し、付近の炎によって再び燃え始める。このため完全に消火するまでに時間がかかる。
【0034】
図7(A)(B)は本発明の散水であり、防護範囲25内のある部分に集中的に大量の水を放水する帯状散布パターン24を形成している。このため瞬時的には散水量が増えると同時に、消火対象物に当たる水の打力及び粒径も増すため、消火能力が増大する。
即ち本発明の散布パターン24においては、水は図7(C)のように分散された粒状ではなく、特定の部分に集中的に打力の強い水の塊として消火対象物に散水される。このため、火災気流に負けることなく炎72の深部まで到達して消火能力が高くなり、火災抑制までの時間が短くて済み、したがって鎮火までの水量も少なくできる。
【0035】
また図7(B)のように、帯状散布パターン24で防護範囲25内の全域を走査して塊状の水で消火するため、一度消火した鎮火部分74が再び燃え上がることを抑制するため、より早期に消火できる。
また少ない放水量で消火できるため、水損の被害を小さくすることができる。また放水量が少ないため、スプリンクラー消火設備に設置する水槽の容量を小さくできる。また従来の消火能力と同等にした場合、従来よりも消火用配管の水圧を下げることができるため、スプリンクラー消火設備のポンプ容量を小容量とでき、これに伴い自家発電設備等のバックアップ設備も小型化でき、配管設備も小さくなるため、設備全体としてのコストを十分に低減することができる。
【0036】
更に防護範囲内のある部分に大量の水を放水するようにノズルを形成したため、防護範囲を従来の散水ノズルと比較して大きくした場合でも、走査時間を調整することにより、火災に対し瞬間的には大量の水を放水することができ、従来と同等以上の消火能力が得られることから、従来の散水ノズルと比較してノズルの設置数を減らすことができる。
【0037】
例えば従来2.3m間隔で防護範囲に8個の散水ノズルが設置されていた場合と比べ本発明にあっては、2.6mの設置間隔とすることができ、設置する散水ノズルの数を4個に減らすことができる。
図8は図1の消火用散水ノズル14に使用するヘッド部14Gの他の実施形態であり、ヘッド部14Gを下側から見た状態で示している。この実施形態にあっては、ヘッド部14Gの半球面の中央より径方向に散水穴26aの列と散水穴26bの列を二列に互い違いとなるように並べて配列している。
【0038】
図9は図8のヘッド部14Gを備えた消火用散水ノズル14の消火対象面30に対する散水方向の説明図である。ヘッド部14Gに形成された散水穴26aの列は、消火対象面30に対する放水中心線32の交点Pに右側から斜めに向かう方向の放水軌道29aとなるように穴加工を行っている。これに対し散水穴26b側にあっては、同じく放水中心線32と消火対象面30との交点Pに対し左側から斜めにP点に向かう方向の散水軌道29bをもつように穴加工されている。
【0039】
図10は図9のヘッド部14Gによる散布パターンであり、防護範囲25の所定方向に列の異なる散水穴26aと散水穴26bのスポット状散布パターン27a,27bを交互に並べた一列のスポット状散布パターンが形成される。そして交互に並んだスポット状散布パターン27a,27bの間は、消火対象面に当たったときの広がりによる飛散領域28によって繋がり、帯状散布パターン24を形成する。
【0040】
図11は図9の消火対象面30における帯状散布パターン24の一部分を取り出したもので、ヘッド部14Gに二列に並んだ散水穴26a,26bによる散水軌道29a,29bは異なった方向から消火対象面に侵入して、それぞれスポット状散布パターン27a,27bを形成する。スポット状散布パターン27a,27bのそれぞれは、消火対象面に当たって広がることにより飛散領域28を形成し、隣接する飛散領域28同士が繋がって帯状の散布パターン24が形成されることになる。
【0041】
このような図8〜図11のヘッド部14Gに二列に互い違いに散水穴26a,26bを形成する構造は、ヘッド部14Gに設けようとする散水穴の数が多い場合に有効である。即ち、図2のような一列の放水穴26では形成することのできる穴数が制限されるが、図8のように二列にすることで形成する穴数を増加することができ、防護範囲に対するスポット状散布パターンの数が多い場合に、必要とする散水穴をヘッド部14Gに形成できる。
【0042】
また、図8にあっては散水穴を二列に形成した場合を例にとっているが、防護範囲25に一列に並んだスポット状散布パターンを得るために必要な数の散水穴をヘッド部14Gに形成するため、三列、四列というように任意の複数列を形成するようにしてもよいし、列のように整列していなくとも、散水穴の穴加工を任意に設定して、最終的に消火対象面に当って広がることにより、帯状の散布パターンが形成できればよい。
【0043】
このときの隣接したスポット状の散布パターン27の距離間隔は30cm以下が望ましい。尚、このスポット状散布パターン27は、完全に一列に並ぶ必要はなく、多少ずれていても、ほぼ並んだ状態であればよく、最終的に帯状の散布パターンが形成できれば良い。
図12は図1の消火用散水ノズル14に使用するヘッド部14Gの他の実施形態であり、この実施形態にあっては、ヘッド部14Gに下から見て1以上の渦巻形状に散水穴26を形成したことを特徴とする。
【0044】
図13は図12の渦巻状の散水穴26による防護範囲25の渦巻状の散布パターン33であり、渦巻状散布パターン33は図12の散水穴26に対応したスポット状散布パターンとその回りに広がった飛散領域の連続で渦巻状に繋がった一筋の渦巻散布パターン33を形成している。そしてヘッド部14Gは矢印方向に回転走査されることから、防護範囲25内で渦巻状散布パターン33も回転し、この回転走査によって防護範囲25の全域に水を散布することができる。
【0045】
尚、本発明の消火用散水ノズルで使用するヘッド部14Gの散水穴の配列は、防護範囲25のほぼ中心から外周部に一筆で連続する帯状散布パターンを形成できれば、適宜の散布パターンの形状を含むものである。また、図4に示した防護範囲25の半径長さの散布パターンを複数本設けても良いし、防護範囲25の直径長さの散布パターンでもよく、その組合せであっても良い。
図14は本発明の他の実施形態であり、この実施形態にあっては、走査部をノズル本体から分離配置したことを特徴とする。
【0046】
図14において、消火用散水ノズル14Aはノズル本体14Aの下部にヘッド部14Gを回転自在に装着している。即ち、フランジ状の回転軸部80をOリング78を介して回転自在に装着している。ヘッド部14Gには複数の散水穴26が図12に示したように渦巻状に形成されている。
走査部となるモータ18はノズル本体14Aの外部に設置されている。ヘッド部14Gの上部にはプーリ82が一体に形成され、モータ18の回転軸に設けたプーリ84との間にベルト86を掛け回している。このように走査部を構成するモータ18をノズル本体14Aから分離配置しても良い。これ以外の構成は図1の実施形態と同じである。またモータ18からヘッド部14Gに対する走査回転の伝達は、ベルト機構以外に適宜の駆動伝達機構を用いることができる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、1つの消火用散水ノズルに複数のスポット状の散水穴を並べて形成し所定の防護範囲内の特定の消火対象面にスポット状の散布パターンを複数連続して並ぶよう同時に散水し且つ複数並んだスポット状の散布パターンが消火対象面に当った際に飛散することにより隣接するスポット状散布パターンがくっつきあって帯状の散布パターンが形成されるよう集中的に散水し、複数のスポット状散布パターンを有する帯状の散布パターンを走査して防護範囲全域に散水させるため、防護範囲の特定部分に集中的に打力の強いスポット状の水の塊として散水でき、火災気流に負けることなく火災の深部まで到達して消火能力が高くなり、火災抑制までの時間が短くて済み、したがって鎮火までの水量が低減して水損被害を小さくできる。
【0048】
また本発明にあっては、複数のスポット状散布パターンを有する帯状に広がった散布パターンを防護範囲内で走査することから、防護範囲内に散水して鎮火した場所と、これから散水する燃えてい場所とを散布パターンで仕切ることができ、この結果、一度消火した部分が再び燃え上がることを抑えるため、より早期に消火することができる。
更に従来の散水ノズルと同等程度の消火能力にした場合には、消火用配管の水圧を抑えることができ、スプリンクラー消火設備の水槽、ポンプ等が小容量となり、配管サイズも小さくでき、設備コストを低減することができる。
【0049】
更に、防護範囲内のある部分に集中的に散水する帯状散布パターンを形成して防護範囲内を走査しているため、防護範囲を従来より広くしても従来と同程度の消火能力が維持でき、その結果、ノズルの設置数を減らすことができ、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の消火用散水ノズルの実施形態をスプリンクラー消火設備と共に示した説明図
【図2】図1のヘッド部に設けた散水穴の説明図
【図3】図1の消火用散水ノズルによる散布パターンの説明図
【図4】図2の散水穴による帯状散布パターンの平面図
【図5】図4の帯状散布パターンの詳細説明図
【図6】防護範囲内のある部分から見た本発明の散水量を従来と対比して示したグラフ
【図7】本発明の帯状散布パターンによる消火の様子を従来例と対比して示した説明図
【図8】散水穴を二列とした本発明の消火用散水ノズルの他の実施形態の説明図
【図9】図8の散水穴による散水方向の説明図
【図10】図8のヘッド部による帯状散布パターンの説明図
【図11】図10の帯状散布パターンの詳細説明図
【図12】散水穴を渦巻状とした本発明の消火用散水ノズルの他の実施形態の説明図
【図13】図12のヘッド部による散布パターンの説明図
【図14】ノズル本体に対し走査部を分離配置した本発明の他の実施形態の説明図
【図15】従来例を示した説明図
【符号の説明】
14:消火用散水ノズル
14A:ノズル本体
14G:ヘッド部
16:防災監視盤
18:モータ
22:火災感知器
24:帯状散布パターン
25:防護範囲
26,26a,26b:散水穴
27:スポット状散布パターン
28:飛散領域
29,29a,29b:散水軌道
33:渦巻状散布パターン

Claims (9)

  1. 消火配管に接続された消火用散水ノズルから火災時に所定の防護範囲に消火液または消火用水を散水して消火を行う固定式消火設備の散水方法に於いて、
    1つの消火用散水ノズルに複数のスポット状の散水穴を並べて形成し前記所定の防護範囲内の特定の消火対象面に、スポット状の散布パターンを複数連続して並ぶよう同時に散水し且つ複数並んだスポット状の散布パターンが消火対象面に当った際に飛散することにより隣接するスポット状散布パターンがくっつきあって帯状の散布パターンが形成されるよう集中的に散水し、
    前記複数のスポット状散布パターンを有する帯状の散布パターンを前記防護範囲内で走査して前記所定の防護範囲内全域に散水させることを特徴とする固定式消火設備の散水方法。
  2. 請求項1記載の固定式消火設備の散水方法に於いて、前記連続したスポット状の散布パターンは、隣接する散布パターン同士の間隔が略30cm以下となるように散水することを特徴とする固定式消火設備の散水方法。
  3. 請求項1記載の固定式消火設備の散水方法に於いて、前記消火対象面に当たるスポット状の散布パターンの侵入角度の隣接する同士の角度差が、略5度以下となるように散水することを特徴とする固定式消火設備の散水方法。
  4. 消火液または消火用水が圧送される消火用配管に接続され、火災時に所定の防護範囲内に消火液または消火用水を散水する固定式消火設備の消火用散水ノズルに於いて、
    複数のスポット状の散水穴を並べて形成し、前記所定の防護範囲内の特定の消火対象面に、スポット状の散布パターンを複数連続して並ぶよう同時に散水し且つ複数並んだスポット状の散布パターンが消火対象面に当った際に飛散することにより隣接するスポット状散布パターンがくっつきあって帯状の散布パターンが形成されるよう集中的に散水するヘッド部と、
    前記ヘッド部を走査して前記複数のスポット状散布パターンを有する帯状の散布パターンを前記所定の防護範囲内の全域に散水させる走査部と、
    を有することを特徴とする消火用散水ノズル。
  5. 請求項4記載の消火用散水ノズルに於いて、前記連続したスポット状の散布パターンは隣接する散布パターン同士の間隔が略30cm以下となるように前記ヘッド部に複数の散水穴を設けたことを特徴とする消火用散水ノズル。
  6. 請求項5記載の消火用散水ノズルに於いて、前記消火対象面に当たるスポット状の散布パターンの侵入角度の隣接する同士の角度差が、略5度以下となるように前記ヘッド部に複数の散水穴を設けたことを特徴とする消火用散水ノズル。
  7. 請求項4乃至6いずれかに記載の消火用散水ノズルに於いて、前記帯状の散布パターンは、前記防護範囲の少なくとも中心付近から外周部まで散水する散布パターンであることを特徴とする消火用散水ノズル。
  8. 請求項7記載の消火用散水ノズルに於いて、前記帯状の散布パターンは、前記防護範囲の中心付近から外周面まで散水する渦巻形状であることを特徴とする消火用散水ノズル。
  9. 請求項4乃至6いずれかに記載の消火用散水ノズルに於いて、前記ヘッド部は防護範囲の消火対象面上にスポット状態の散布パターンが連続して並ぶように開口方向を適宜設定した複数の散水穴を設けたことを特徴とする消火用散水ノズル。
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