JP3661549B2 - 抗菌及び抗真菌ペプチド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌及び/又は抗真菌活性を有するペプチド、並びに該ペプチドを含有する抗菌剤及び抗真菌剤に関するものである。より詳細には、本発明は、センチニクバエ(Sarcophaga peregrina)由来で抗菌活性を示す26-kDaプロテアーゼ(26-kDa protease)の部分ペプチド、並びに該部分ペプチドを含有する抗菌剤及び抗真菌剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
昆虫の体腔内に細菌や真菌が侵入すると、該細菌等に対して殺菌作用又は増殖阻害作用を示すタンパク質あるいはペプチドが体液中に誘導生産されることが知られている。
従来より、上記のような昆虫類の独自の生体防御機構に着目し、昆虫由来のタンパク質及びペプチドの研究開発が盛んに行われてきた。例えば、セクロピン又はディフェンシンは、カブトムシに由来する抗菌ペプチドとして既に報告されている(BioEssays 第13巻pp657〜pp663 1991年,Proceedings of the National Academy of Science of U.S.A.第8576 pp262〜266 1989年,Biochimica Biophysica Acta 第1132巻 pp203〜pp206 1992年)。
殊に最近においては、耐性菌や新種細菌の増加に伴い、新たな抗菌剤並びに抗真菌剤の開発に対するニーズが医薬品、化粧品及び食品等を含む広範囲の産業界から高まっており、研究対象も多岐に亘っている。
【0003】
本発明者らはこれまでに、ニクバエ科のセンチニクバエ(Sarcophaga peregrina)の蛹中期のみに出現し、中腸内に局在するタンパク質としてグラム陽性菌に対して強い抗菌活性を示すタンパク質(本明細書中以下において26-kDaプロテアーゼと称する)を抽出及び同定した(The Journal of Biological Chemistry, Vol.272, No.38, pp.23805-23810, 1997)。またこのタンパク質のcDNAクローニングの結果、この26-kDaプロテアーゼは全部で239アミノ酸残基から構成されるタンパク質であることが分かっている(The Journal of Biological Chemistry, Vol.272, No.38, pp.23805-23810, 1997)。26-kDaプロテアーゼは、トリプシン様のプロテアーゼ活性を有すると同時にグラム陽性細菌に選択的な抗菌活性を有することから、蛹中期に起きる幼虫中腸の崩壊と、その際に漏出する幼虫腸内細菌の排除という2つの機能を併有するタンパク質であると考えられている(FEBS Letters, 425 (1998), 131-133)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、26-kDaプロテアーゼを構成するアミノ酸配列の一部から成る部分ペプチドの抗菌活性に関する報告はなされておらず、いかなる部分ペプチドが抗菌活性又は抗真菌活性を示すか否かについては不明であった。
また、26-kDaプロテアーゼは、グラム陽性菌に対して選択的な抗菌活性を示したが、グラム陰性菌や真菌に対しては効果的な抗菌活性を示さなかったため、より広い抗菌スペクトルを有する新規な抗菌・抗真菌ペプチドの研究開発が望まれていた。
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明が解決しようとする課題は、上記26-kDaプロテアーゼの部分ペプチドから成り、優れた抗菌活性及び/又は抗真菌活性を有する新規なペプチドを提供するとともに、該ペプチドを含有する抗菌剤又は抗真菌剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは26-kDaプロテアーゼのアミノ酸配列を12個の部分ペプチドに分割し、各ペプチドの抗菌活性を検討した結果、優れた抗菌スプクトルを示す20アミノ酸残基からなるペプチド(26-kDaプロテアーゼの部分配列から成るペプチド)を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明によれば、少なくとも下記のアミノ酸配列の何れかを含むペプチド、上記ペプチドの修飾ペプチドであって、上記ペプチドと同様の抗菌及び抗真菌活性を有する修飾ペプチド、又はその塩が提供される。
(a)配列番号1〜12の何れかに記載のアミノ酸配列:又は
(b)配列番号1〜12の何れかに記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列であって、抗菌活性及び/又は抗真菌活性を示すアミノ酸配列。
本発明の好ましい態様では、少なくとも下記のアミノ酸配列の何れかを含むペプチド、上記ペプチドの修飾ペプチドであって、上記ペプチドと同様の抗菌及び抗真菌活性を有する修飾ペプチド、又はその塩が提供される。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列:又は
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列であって、抗菌活性及び/又は抗真菌活性を示すアミノ酸配列。
本発明の好ましい態様では、少なくとも配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むペプチド、上記ペプチドの修飾ペプチドであって、上記ペプチドと同様の抗菌及び抗真菌活性を有する修飾ペプチド、又はその塩が提供される。
本発明のさらに好ましい態様では、少なくとも配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩が提供される。
【0007】
本発明の別の側面によれば、上記した本発明のペプチド、修飾ペプチド又はその塩を有効成分として含有する医薬が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明のペプチド、修飾ペプチド又はその塩を有効成分として含有する抗菌剤、並びに抗真菌剤が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施態様及び実施方法について詳細に説明する。
ニクバエ科のセンチニクバエ(Sarcophaga peregrina)の蛹中期における幼虫中腸内でのみ出現するポリペプチドである26-kDaプロテアーゼは、セリンプロテアーゼの1つであるトリプシンに類似した酵素活性を有するとともに、グラム陽性細菌に対して選択的な抗菌活性を発揮する全部で239個のアミノ酸から構成される直鎖上のポリペプチドである。
【0009】
本発明のポリペプチドは26-kDaプロテアーゼの部分ペプチド又はその変異体に関するものであり、具体的には、(a)配列番号1〜12(好ましくは配列番号1)に記載のアミノ酸配列:又は(b)配列番号1(好ましくは配列番号1)に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列であって、抗菌活性及び/又は抗真菌活性を示すアミノ酸配列;の何れかを少なくとも含むペプチド、又は上記ペプチドの修飾ペプチドであって、上記ペプチドと同様の抗菌及び抗真菌活性を有する修飾ペプチドである。
本明細書において、「少なくとも含む」とは、(a)配列番号1〜12(好ましくは配列番号1)に記載のアミノ酸配列:又は(b)配列番号1〜12(好ましくは配列番号1)に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列であって、抗菌活性及び/又は抗真菌活性を示すアミノ酸配列;の何れかのアミノ酸配列が本発明のペプチドのアミノ酸配列の一部として含まれていればよいことを意味し、抗菌活性又は抗真菌活性を発揮する限りは、上記(a)又は(b)に記載のアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に追加のアミノ酸配列が付加されていてもよいことを意味する。但し、本発明の一実施態様としては、上記(a)又は(b)に記載のアミノ酸配列のみから成るペプチドが提供される。
【0010】
配列番号1に記載のアミノ酸配列は、26-kDaプロテアーゼのN末端のアミノ酸であるイソロイシン(I)を第1番とし、C末端のアミノ酸であるグリシン(G)を第239番とした場合、第155番のアルギニン(R)から第174番のリジン(K)までの全部で20個のアミノ酸から成るアミノ酸配列である。従って、本発明のペプチドは、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端側に26-kDaプロテアーゼの第154番目以前の1又は複数のアミノ酸の配列を有しているものでもよく、及び/又は配列番号1に記載のアミノ酸配列のC末端側に26-kDaプロテアーゼの第175番目以降の1又は複数のアミノ酸の配列を有しているものでもよい。
配列番号1以外の配列番号に記載のアミノ酸配列についても同様に、それぞれのアミノ酸配列の前後のアミノ酸配列を含むものでもよい。
【0011】
本発明のペプチドが有するアミノ酸配列の一実施態様を配列番号1〜12(好ましくは配列番号1)に示すが、本発明の別の実施態様によれば、配列番号1〜12(好ましくは配列番号1)に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列であって、抗菌活性及び/又は抗真菌活性を示すアミノ酸配列を少なくとも含むペプチドが提供される。上記の「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から10個、好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
【0012】
上記した本発明のペプチドの修飾ペプチドであって、上記した本発明のペプチドと同様の抗菌及び抗真菌活性を有する修飾ペプチドも本発明の範囲内のものである。上記の修飾ペプチドにおいて、「修飾」という用語は、化学的修飾及び生物学的修飾を含めて最も広義に解釈しなければならない。修飾の例としては、例えば、アルキル化、エステル化、ハロゲン化、又はアミノ化などの官能基導入、酸化、還元、付加、又は脱離などによる官能基変換、糖化合物(単糖、二糖、オリゴ糖、若しくは多糖)又は脂質化合物などの導入、リン酸化、あるいはビオチン化などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0013】
上記した(b)配列番号1〜12に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列を含むペプチド、又は修飾ペプチドが抗菌活性又は抗真菌活性を有するかどうかは、本明細書の実施例に詳細かつ具体的に記載した試験方法によって、又は上記試験方法に適宜の改変や修飾を加えることにより、当業者が容易に確認可能である。
【0014】
さらにまた、上記した本発明のペプチドの塩も本発明の範囲内のものである。本発明のペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸付加塩または塩基性塩が好ましい。酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との塩、あるいは酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウムなどの無機塩基との塩、あるいはカフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジンなどの有機塩基との塩が挙げられる。
塩は、塩酸などの適切な酸、あるいは水酸化ナトリウムなどの適切な塩基を用いて調製することができる。例えば、水中、又はメタノール、エタノール若しくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含む液体中で、標準的なプロトコルを用いて処理することにより調製することができる。なお、処理温度は通常0〜100℃であるが、室温が好ましい。
【0015】
本発明のペプチド又はその塩の化学合成を行う場合は、ペプチドの合成の常法手段によって合成できる。例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC 法、活性エステル法、カルボイミダゾール法、酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれをも適用することができる。すなわち、本発明のペプチド又はその塩を構成し得るアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とするペプチド又はその塩が合成される。縮合方法や保護基の脱離としては、公知のいずれの手法を用いてもよい[例えばBodanszky, M and M.A. Ondetti, PeptideSynthesis, Interscience Publishers, New York (1966)、Schroeder and Luebke, The Peptide, Academic Press, New York (1965)、泉屋信夫他, ペプチド合成の基礎と実験, 丸善(1975)等を参照]。
【0016】
反応後は、通常の精製法、例えば溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて本発明のペプチド又はその塩を精製することができる。また、本発明のペプチド又はその塩は、C末端が通常カルボキシル(-COOH)基又はカルボキシレート(-COO-)であるが、C末端がアミド(-CONH2)又はエステル(-COOR)であってもよい。ここで、エステルにおけるRとしては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基などが挙げられる。さらに、本発明のペプチド又はその塩には、N末端のアミノ基が保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合した糖ペプチドなどの複合ペプチド等も含まれる。
【0017】
本発明のペプチドの別の製造方法としては、本発明のペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子を利用して、遺伝子工学的手法により微生物細胞、植物細胞、動物細胞などの宿主において組み換えタンパク質(ペプチド)として生産する方法が挙げられる。得られた粗合成ペプチドは、ゲル濾過、逆相HPLC、イオン交換カラム精製など通常のタンパク質又はペプチド精製に用いられる手段を用いて精製することが可能である。
【0018】
本発明のペプチドは、例えば米飯、パンなどの腐敗を起こす枯草菌(Bacillus subtilis)、化膿性炎症や食中毒の原因菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)等のグラム陽性菌のほか、食中毒の原因菌として知られる大腸菌(Escherichia coli)、サルモレラ菌(Salmonella typhi)、赤痢菌(Shigella flexneri)、感染の原因菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)等のグラム陰性菌、さらには内因感染の原因となるカンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)やカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)などの真菌に対しても広く抗菌及び抗真菌スペクトルを有する(実施例の表3参照)。
なお、本発明のペプチドの抗菌活性又は抗真菌活性の測定は方法は特に限定されない。例えば、検定菌として上記した何れか1種以上の菌を用いて、平板培地での増殖阻止円の形成を指標としたり、あるいは液体培地中で適当な期間のインキュベーション後に培地の濁度を測定することなどにより抗菌活性や抗真菌活性を測定することができる。
【0019】
次に本発明のペプチドの抗菌特性及び該ペプチドを含有する抗菌剤又は抗真菌剤について説明する。
本発明のペプチドは、後述する実施例から明らかなように、グラム陽性菌のみならず、グラム陰性菌や真菌類に対しても抗菌活性を示す。また、本発明のペプチドが真核細胞に対して発揮する毒性は、原核細胞に比べて低いことからヒトを含む動植物への投与に適している。さらに、本発明のペプチドは、塩化ナトリウム濃度が上昇した場合であっても、抗菌活性は維持されることから、医薬品として使用した場合には嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis)の新たな感染症治療薬として期待できるものである。
【0020】
また本発明のペプチドは、そのままで又は医薬製造分野で通常使用される各種の固体担体、液体担体、乳化分散剤等に含有させた形で抗菌剤又は抗真菌剤として使用することができる。具体的には、本発明のペプチドを医薬組成物形態の抗菌剤又は抗真菌剤として使用する場合には、その製剤形態は、使用目的や使用対象に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)等の形態で用いることができる。
【0021】
また、錠剤形成に際して使用する担体としては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭化カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水又はアルコール類を含ませたデンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油糖の崩壊制御剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用することができる。さらに錠剤は必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖皮錠、ゼラチン被包錠、腸溶皮膜フィルムコーティング錠又は二重錠、多層錠とすることができる。
【0022】
また本発明のペプチドを注射剤として調製する場合には、液剤、乳剤及び懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であることが好ましく、これらの形態に成形するに際しては、希釈剤として水、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を使用することができ、また必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等の安定剤、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、モノステアリン酸アルミニウム等の懸濁化剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖、グリセリン等の等張化剤、パラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、クロロブタノール等の保存剤のほか、溶液補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を配合して使用することもできる。
【0023】
上記各形態の医薬組成物の中には、さらに必要に応じて慣用されている着色剤、香料、風味剤、甘味剤等を配合することができ、また他の医薬品有効成分を含有させても構わない。
本発明のペプチドを抗菌剤又は抗真菌剤として用いる場合、該ペプチドを一般的には0.001〜90重量%、好ましくは0.001〜80重量%の割合で包含させて使用する。
【0024】
本発明の抗菌剤及び抗真菌剤はヒトを含む哺乳動物に投与することができる。投与経路は経口投与でも非経口投与でもよい。本発明の抗菌剤及び抗真菌剤の投与量は患者の年齢、性別、体重、症状、及び投与経路などの条件に応じて適宜増減されるべきであるが、一般的には、有効成分量として成人一日あたり1μg/kgから1,000mg/kg程度の範囲であり、好ましくは10μg/kgから100mg/kg程度の範囲である。上記投与量は一日一回投与しても一日に数回に分けて投与してもよい。また投与期間及び投与間隔も特に限定されず、毎日投与してもよいしあるいは数日間隔で投与してもよい。
【0025】
さらに、本発明のペプチドは、医薬品としてのみならず、食品、飼料、化粧品等のように人又は動物の体内に摂取され、または体表面に適用される製品、その他一般に細菌又は真菌の増殖を防止又は抑制することが望まれるあらゆる製品に配合して使用することができる。また、本発明のペプチドを含む抗菌剤又は抗真菌剤を製品又は原料素材の表面処理に用いることもできる。
具体的には、食品(例えばチュウインガム、生菓子等)、医薬品(例えば、目薬、乳房炎治療薬、水虫薬等)、医薬部外品(例えば口中洗浄剤、制汗剤、養毛剤等)、各種化粧品(例えば整髪料、ハンドクリーム、乳液等)、各種歯磨用品(例えば、歯ブラシ等)、各種生理用品(例えばナプキン、タンポン等)、各種ベビー用品(例えば紙オムツ等)、各種高齢者用品(例えば入れ歯固定剤、成人用紙オムツ等)、各種洗剤(例えば石鹸、シャンプー、リンス、洗濯用洗剤等)、各種除菌用品(キッチン又はトイレ用除菌クリーナー等)、ペット飼料(例えば、ドッグフード、キャットフード等)、各種家畜試料、各種養魚飼料、各種建築材料、各種塗料、各種農園芸用品、並びにそれらの原料となる素材、その他一般に細菌、真菌等の微生物の増殖の防止、抑制が望まれるあらゆる物品に添加、配合、噴霧、付着、被覆、含浸等を行ってもよく、またその他一般に微生物の増殖防止、抑制が望まれるあらゆる物品の処理に用いることもできる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
実施例1: 26-kDa プロテアーゼ由来の部分ペプチドのスクリーニング
以下の12種類の部分ペプチド(ペプチド1からペプチド12)を合成した。なお、アミノ酸番号については、26-kDaプロテアーゼのN末端のアミノ酸であるイソロイシン(I)を第1番とし、C末端のアミノ酸であるグリシン(G)を第239番として第1番から第239番までをN末端からC末端まで順番に付けた。
ペプチド1(Peptide 1):イソロイシン(I)からリジン(K)(第1番〜第20番)まで(配列番号2);
ペプチド2(Peptide 2):グリシン(G)からトレオニン(T)(第21番〜第41番)まで(配列番号3);
ペプチド3(Peptide 3):アラニン(A)からアスパラギン酸(D)(第42番〜第61番)まで(配列番号4);
ペプチド4(Peptide 4):アルギニン(R)からメチオニン(M)(第62番〜第78番)まで配列番号5);
ペプチド5(Peptide 5):ヒスチジン(H)からアスパラギン酸(D)(第79番〜第97番)まで(配列番号6);
ペプチド6(Peptide 6):トレオニン(T)からプロリン(P)(第98番〜第112番)まで(配列番号7);
ペプチド7(Peptide 7):アスパラギン(N)からグルタミン酸(E)(第113番〜第133番)まで(配列番号8);
ペプチド8(Peptide 8):グリシン(G)からグルタミン(Q)(第134番〜第153番)までを(配列番号9);
ペプチド9(Peptide 9):アルギニン(R)からリジン(K)(第155番〜第174番)まで(配列番号1)、
ペプチド10(Peptide 10):グルタミン(Q)からグリシン(G)(第175番〜第214番)まで(配列番号10);
ペプチド11(Peptide 11):アルギニン(R)からプロリン(P)(第195番〜第214番)まで(配列番号11);
ペプチド12(Peptide 12):グリシン(G)からグリシン(G)(第215番〜第234番)まで(配列番号12)
合成したペプチド1からペプチド12の配列の一覧表を以下の表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0003661549
【0028】
上記で合成したペプチド1からペプチド12の抗菌活性を次の方法により試験した。先ず、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(Cowan strain))を培養液(Triptic soy broth)中で、37℃、5時間〜16時間培養した後、対数増殖期に集菌して10mMリン酸緩衝液(pH5.5)中で1×104CFU/mlとなるように懸濁調整した。次いでこの溶液180〜360μlに各種のペプチド20〜40μlを加え、37℃で1時間インキュベートした。その後、各溶液をサンプリングして吸光光度計により吸光度(A650)を測定した。対象は、各種のペプチドを加える代わりに精製水を用いて行った。抗菌活性は、対象の菌体増殖と比較して10%有効量(ED10)を与えるときのペプチド濃度をもって示した。その結果を表2に示した。
【0029】
【表2】
Figure 0003661549
【0030】
表2から明らかなように、前記26-kDaプロテアーゼのアミノ酸配列のうち第155番から第174番までのアミノ酸を含むペプチド9が、最も高い抗菌活性を示すことが判明した。
【0031】
実施例2:ペプチド9の抗菌スペクトルの測定
ペプチド9の抗菌スペクトルについては、次の方法により評価した。
グラム陽性細菌として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(Cowan)又はStaphylococcus aureus(Smith))、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA(MS16526))、枯草菌(Bacillus subtilis(PCI219))及びコリネバクテリウム属(Corynebacterium boivis(1810))、グラム陰性細菌として大腸菌(Escherichia coli(NIHJ))、サルモレラ菌(Salmonella typhi(T-63))、赤痢菌(Shigella flexneri40(JS1811))、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa(A3))及び肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae(PCI102))を0.1%ポリペプトン中に、真菌類としてCandida pseudotropicalis、Candida albicans 3147、及びCandida albicans QC strainをSAAMF培養液中に各々106CFU/mlになるように懸濁し、各濃度のペプチド9を10μl加え、4時間〜24時間、最適温度でインキュベーションした。インキュベーション後に濁度を測定することにより、菌を増殖させない最小阻止濃度(MIC)を決定した。その結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
Figure 0003661549
【0033】
表3から理解されるように、ペプチド9はグラム陽性菌のみならず、グラム陰性菌や真菌に対しても抗菌作用を示し、26-kDaプロテアーゼよりも広い抗菌スペクトルを有することが分かった。
【0034】
実施例3:ペプチド9の抗菌活性に関与する部分構造の解析
ペプチド9の部分構造体の抗菌活性については、次の方法により評価した。
抗菌活性の発現に必要なアミノ酸配列を特定する目的で、ペプチド9をさらに2つに分けたペプチドを合成した(図1参照)。
すなわち、後半部(C末端側)の疎水性アミノ酸部位を短くしたペプチドをP3.1(アミノ酸配列第155番〜第167番)とし、当該後半部の疎水性アミノ酸を含むペプチドをP3.2(アミノ酸配列第168番〜第174番)として、それぞれペプチド合成し、各抗菌活性を測定した。また、P3.1の前半部(N末端)にシステイン(C)を挿入したペプチドをcP3.1として合成し、P3.1との比較において抗菌活性を測定した。これらの測定結果を図2に示した。
【0035】
図2から明らかなように、P3.1の抗菌活性は保持されるものの減弱し、P3.2については抗菌活性は認められなかった。疎水性アミノ酸部位を短くするとペプチド9の抗菌活性が減弱することから、ペプチド9の抗菌活性の発現には後半部の疎水性アミノ酸部位の長さも必要であり、両親媒性構造であることが重要であることが示唆された。また、cP3.1については、P3.1より約10倍高い抗菌活性が認められたことから、N末端へのシステイン残基の付加は、抗菌活性の向上に寄与する可能性がある。
【0036】
実施例4:走査型電子顕微鏡によるペプチド9の抗菌作用の解析
ペプチド9の一次構造上の特徴は前半に塩基性アミノ酸が多く、後半に疎水性アミノ酸が多い両親媒性構造であることである。この特徴、並びに26-kDaプロテアーゼがブドウ球菌の細胞膜に対して傷害活性をもつことなどから、ペプチド9の作用点は細胞膜であると推測された。そこで、黄色ブドウ球菌と大腸菌にペプチド9を作用させた場合の膜に対する影響を以下の方法により評価した。
108CFU/mlの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(Cowan))及び大腸菌(Escherichia coli(ML35p))に35μg/mlのペプチド9を入れた後、37℃で1時間インキュベートした。次いでこれらの試料をポリ-L-リジン処理したカバーグラス上で、2.5%グルタルアルデヒド・2%パラホルムアルデヒド/PBSにより4℃で30分間固定した後、さらに2%OsO4で後固定し、エタノールで脱水処理した。次にこれらの試料を酢酸イソアミルで置換処理し、フレオン13を使用して臨界点乾燥をした後、銀ペーストで試料台に貼付け、オスミウムプラズマコートしてから、走査型電子顕微鏡により各菌の表面を観察した。ペプチド9作用後の各菌の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0037】
図3から理解されるように、ペプチド9の作用により黄色ブドウ球菌(図3の(a1)及び(a2))及び大腸菌(図3の(b1)及び(b2))の膜表面に複数の突起物が生じていることから(図3の(a1)(b1)参照)、ペプチド9は細菌膜に傷害を与えることにより抗菌作用を発現することが分かった。
【0038】
実施例5:ペプチド9による細菌膜の透過性亢進作用
実施例4の走査型電子顕微鏡による観察の結果から、ペプチド9は細菌膜を傷害する活性を有することが示されたので、ペプチド9の作用により細菌膜の透過性の亢進が生じることが推測され、ペプチド9の作用による大腸菌の外膜及び内膜の透過性の変化を検討した。
ペプチド9による細菌膜の透過性の変化については、LEHRERらの方法(Journal Immunol Methods 第108号 pp153〜pp158 1988,Journal Clin. Invest.第84号 pp553〜pp561)に従って行った。大腸菌(Escherichia coli(ML35p))は、プラスミドpBR322を保持し、ペリプラズムにβ-ラクタマーゼを発現している。サイトプラズムにβ-ガラクトシダーゼを発現しているが、ラクトースパーミアーゼを欠損しているためβ-ガラクトシダーゼの基質であるONPGを取りこめない。外膜と内膜の透過性の亢進は、それぞれPADAC、ONPGの分解を測定することにより測定できる。
【0039】
先ず、大腸菌(Escherichia coli(ML35p))を培養液(triptic soy broth)中で37℃、5時間又は16時間培養した後、集菌して10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中に1×108CFU/ml(OD(Optical densty)620=0.35)になるように懸濁した。次いで96穴マイクロタイタープレートを用いて37℃、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)150μl中に2.5mMのONPG又は50μMのPADAC、1×107CFU/mlの大腸菌(Escherichia coli(ML35p))、35μg/mlのペプチド9を含む条件下で懸濁してOD415を測定した。その結果を図4及び図5に示す。
【0040】
図4から分かるように、ペプチド9の添加量に依存して、β−ラクタマーゼ活性及びβ−ガラクトシダーゼ活性ともに増大したことから、ペプチド9の作用により大腸菌の外膜と内膜の透過性が亢進していることが判明した。また図5から分かるように、ペプチド9の作用により大腸菌全体の酵素活性は遥かに上昇しているものの、菌体の遠心上清ではほとんど酵素活性が検出されない。
図4及び図5に示す結果から、ペプチド9の作用点は細菌膜であり、細菌膜の透過性を亢進させることにより細菌内部の低分子物質等の流出等がおこり、細菌の致死作用が発現するものと考えられる。
【0041】
実施例6:ペプチド9によるリポソーム膜の透過性の亢進作用
ペプチド9の作用点が細胞膜であることを検証する目的で、さらにグルコースをトラップした大腸菌型のリポソーム膜に対しての亢進作用を検討した。
リポソームは中嶋らの方法に従って調製した(Journal biological Chemisutry 第262号 pp1665〜pp1669)。すなわち、リン脂質の組成は大腸菌の内膜の組成に類似させたもの(フォスファチジルエタノールアミン(PE):ペプチドグリカン(PG):カルジオリピン(CL)=7:2:1)を用い、2μmolのリン脂質を試験管で乾燥させた後、0.3Mグルコース200μlを加え、ボルテックスミキサーにより多層ラメラ構造のリポソームを調製した。次いでこのリポソームを130mMの塩化ナトリウムを含むリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)で3回洗浄し、この緩衝液200μl中に分散させて、リポソーム溶液とした。リポソーム溶液10μl中に各種ペプチド溶液(ペプチド9、cP3.1、P3.1及びP3.2)10μlを加え、室温で1時間インキュベートした後、130mMの塩化ナトリウムを含むリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)20μlを加えて、8,000rpmで5分間遠心分離し、その上清(20μl)中のグルコース量をグルコースB-テスト(和光純薬工業)で測定した。測定結果を図6に示す。
【0042】
図6の結果から分かるように、ペプチド9の場合、添加量に依存してグルコースの放出が検出され、リポソーム膜の透過性が亢進していた。また、ペプチド9とその部分構造体の抗菌活性の強さ(ペプチド9>cP3.1>P3.1>P3.2)とリポソームの透過性亢進作用の強さ(ペプチド9>cP3.1>P3.1>P3.2)に相関関係が認められたことから、ペプチド9の作用点が細菌膜であることが強く示唆される。
【0043】
実施例7:ペプチド9の二次構造の解析
ペプチド9の二次構造から抗菌メカニズムを考察する目的で、CD及びNMRを用いてペプチド9の二次構造を解析した。
先ず、ペプチド9が特徴的な二次構造を形成するかどうかを調べる目的で、0.5mg/mlのペプチド9を水、疎水性環境を想定したMeOH溶液中及び膜環境を想定したSDSミセル(臨界ミセル濃度8mM×20,×60,×100:160,480,800mM)溶液に溶かし、200〜250nmの波長で円偏光二色性(CD)スペクトルを測定した。
次にペプチド9(3.4mg/400μlMeOH)をサンプルとして、DQF-COFY,TOCSY,NOESYを238KでNMR装置を用いて測定し、プロトンシグナルの部位特異的帰属を行った。主鎖プロトンの残基間のNOE(Nuclear Overhauser effect;核オーバーハウザー効果)パターンから、2次構造を決定した。
【0044】
その結果、円偏光二色性(CD)では、MeOH、SDSミセル溶液中において二層性のスペクトルが観察されたことから、ペプチド9がα-ヘリクス構造を有することが分かった。
さらにNMRにおけるNOEパターン解析から、ペプチド9は、疎水性環境を想定したMeOH中で第6番目のリジン(K)から第18番目のロイシン(L)にかけてα-ヘリクス構造をとることが確認できた。また、ペプチド9においては疎水性アミノ酸がα-ヘリクス構造の一方側に多く、親水性アミノ酸がα-ヘリクス構造の反対側に多い両親媒性α-へリックス構造を形成することが分かった。図7にペプチド9のα−ヘリックス断片(第6番目のリジン(K)から第18番目のロイシン(L))までのSchiffer-Edmundsonの車輪図を示す。
図7から分かるように射、車輪図の上半円側に疎水性アミノ酸(I,F,M,L,A,G,V)が、下半円側に親水性アミノ酸(N,K,D,C)がそれぞれ多く集中していることが明らかになった。従って、ペプチド9は両親媒性のα−ヘリックス構造を形成して細菌膜と相互作用することにより、膜の透過性を亢進させることが示唆された。
【0045】
実施例8:塩濃度のペプチド9の抗菌活性に与える影響
塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化マグネシウム(MgCl2)の濃度がペプチド9の抗菌活性に与える影響を以下の方法により評価した。
大腸菌(Escherichia coli(W3110))を培養液(LB both)中で、37℃、5時間〜16時間培養した後、集菌して10mMリン酸緩衝液(pH7.4)中で1×104CFU/mlとなるように懸濁調整した。次いでこの懸濁溶液180〜360μlにペプチド9 20〜40μlと所定濃度となるように塩化ナトリウム溶液又は塩化マグネシウム溶液を加え、37℃で1時間インキュベーションした。その後、これらの溶液100μlを各々摂取し、吸光光度計により吸光度(A650)を測定した。塩濃度と抗菌活性の関係を図8に示した。
図8から明らかなように、塩化ナトリウム又は塩化マグネシウム濃度の上昇に伴い、生存する大腸菌の数が増加しているが、塩化ナトリウムでは120mM、塩化マグネシウムでは3mMの濃度中においても50%の抗菌活性を維持できることが分かった。
これより本発明のペプチドは、塩素イオンの細胞内への出入りに関与する輸送機構の欠陥により正常値(80mM)より塩濃度が120mMまで上昇する嚢胞性線維症(Cystic fibrosis)の感染症治療薬としての用途の可能性が新たに見出された。
【0046】
実施例9:ペプチド9のヒト乳癌細胞を用いた細胞毒性の検討
ペプチド9が真核細胞に対して毒性をもつかどうかを、ヒト乳癌細胞に対する毒性を代謝活性を指標にして調べた。
5%FCS-RPMI培地で培養したヒト乳癌細胞(MCF7)からRPMI培地を除去し、5mlのリン酸緩衝液食塩水で2回洗浄した後、0.2mMのEDTAを含有する0.05%トリプシン溶液0.2mlを加え、37℃で3分間インキュベーションした。次いで5%FCS-RPMI培地1mlを採取して15ml遠心チューブに回収した。1,000rpmで5分間の遠心分離し、上清を除去した後、5%FCS-RPMIに懸濁して1ウエル当り10,000個の菌数となるよう調整した。次いでこれを37℃で1日培養した後、ペプチド9(0、1、10μM)又はメリチン(Mellitin)(0、1、10μM)を100μl加えて、37℃で3日間培養した。上清を除去して1ウエル当り100μlの10%アラマブルーを添加し2又は5時間後に吸光度(A570−A600)を測定した。その測定結果を図9に示した。
【0047】
図9より明らかなように、メリチンはヒト乳癌細胞に対して強い代謝阻害作用を有するが、ペプチド9はヒト乳癌細胞に対して10μM(24μg/ml)においても代謝阻害を起こさないことが分かった。
ペプチド9の黄色ブドウ球菌と大腸菌に対する最小阻止濃度(MIC)値は、それぞれ1.56μg/ml、12.5μg/mlであることを考慮すれば(表3参照)、ペプチド9の真核細胞に対する毒性は原核細胞に比べてかなり低いことが明らかになった。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、グラム陽性菌、グラム陰性菌及び真菌に対して抗菌・抗真菌活性を有する新規なペプチド及び該ペプチドを含有する抗菌剤及び抗真菌剤を提供することができる。また、本発明のペプチドは高塩濃度下においても抗菌活性を維持することができるので、嚢胞性線維症(Cystic fibrosis)などの治療剤として有用である。さらに、本発明のペプチドは真核細胞に対する毒性が低いので人体に対して副作用の少ない抗菌剤及び抗真菌剤を提供することができる。
【0049】
【配列表】
Figure 0003661549
【0051】
Figure 0003661549
【0052】
Figure 0003661549
【0053】
Figure 0003661549
【0054】
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【0055】
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【0056】
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【0057】
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【0058】
Figure 0003661549
【0059】
Figure 0003661549
【0060】
Figure 0003661549
【0061】
Figure 0003661549

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のペプチドとその部分構造体のアミノ酸配列を示す図である。
【図2】本発明のペプチドとその部分構造体の抗菌活性を示すグラフである。
【図3】本発明のペプチドを作用させた場合と作用させない場合の黄色ブドウ球菌と大腸菌の細菌膜の状態を示す写真である。a−1)はペプチド9を作用させた黄色ブドウ球菌、a−2)はペプチド9を作用させない黄色ブドウ球菌、b−1)はペプチド9を作用させた大腸菌、b−2)はペプチドを作用させない黄色ブドウ球菌を示す。
【図4】本発明のペプチドによる大腸菌の外膜及び内膜の透過性亢進作用を表すグラフである。
【図5】本発明のペプチドによる大腸菌膜の透過性亢進作用(遠心上清の活性)を示すグラフである。
【図6】本発明のペプチドとその部分構成体によるリポソーム膜の透過性亢進作用を示すグラフである。
【図7】本発明のペプチドの一部のアミノ酸配列におけるSchiffer-Edmundsonの車輪図である。
【図8】本発明のペプチドの抗菌活性に対する塩濃度の影響を示すグラフである。
【図9】本発明のペプチドのヒト乳癌細胞に対する細胞毒性を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 下記の何れかのペプチド、又はその塩。
    (1)下記のアミノ酸配列からなるペプチド;
    Arg-Asn-Thr-Arg-Tyr-Lys-Asn-Lys-Ile-Phe-Asp-Val-Met-Leu-Cys-Ala-Gly-Leu-Val-Lys
    (2)下記のアミノ酸配列からなるペプチド;
    Arg-Asn-Thr-Arg-Tyr-Lys-Asn-Lys-Ile-Phe-Asp-Val-Met、又は
    (3)下記のアミノ酸配列からなるペプチド;
    Cys-Arg-Asn-Thr-Arg-Tyr-Lys-Asn-Lys-Ile-Phe-Asp-Val-Met
  2. 請求項1に記載のペプチド、又はその塩を有効成分として含有する医薬。
  3. 請求項1に記載のペプチド、又はその塩を有効成分として含有する抗菌剤。
  4. 請求項1に記載のペプチド、又はその塩を有効成分として含有する抗真菌剤。
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