JP2020152640A - 抗菌又は抗真菌ペプチド及び抗菌又は抗真菌薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】塩濃度に左右されない強い抗菌又は抗真菌活性を有し、かつ、真核細胞に対して極めて毒性が低い低分子量のペプチド、及び、それを用いた抗菌又は抗真菌薬の提供。【解決手段】以下の(a)、(b)又は(c)のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。(a)特定のアミノ酸配列を含むペプチド。(b)特定のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは、付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗菌又は抗真菌活性を有するペプチド。(c)特定のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、抗菌又は抗真菌活性を有するペプチド。【選択図】なし
Description
本発明は、抗菌又は抗真菌作用を有するペプチド及びそれを用いた抗菌又は抗真菌薬等に関する。
薬剤耐性菌や薬剤耐性真菌の蔓延は、現代社会の大きな問題であり、その対策には新規抗菌又は抗真菌薬の開発が急務である。
動物、植物を含めた多くの生物は、細菌の感染から逃れるために抗菌作用をもつペプチド(抗菌ペプチド)を産生する(非特許文献1)。これまでに様々な抗菌ペプチドが同定、解析されてきた。抗菌ペプチドは速やかに作用し幅広い抗菌スペクトルをもつ。抗菌ペプチドの大部分は細菌の細胞膜をターゲットにするため(非特許文献1、2)、膜の構造や組成が異なる真核細胞に対してはほとんど影響がない。さらに、細菌が抗菌ペプチドに耐性を獲得するためには、細胞膜の脂質組成を変えなくてはならないため、耐性菌の出現が極めて起こり難いと考えられる。このように、抗菌ペプチドは多くの優れた特徴を有しているが、抗菌薬へ応用するにはまだ多くの障害が存在する。天然の抗菌ペプチドは抗菌効果がそれほど強くない。また分子量が大きいため、抽出・精製や化学合成には時間や労力、費用がかかる(非特許文献3、4)。さらに、多くの抗菌ペプチドは、生理的塩濃度で活性が減弱するといった問題点がある(非特許文献5、6)。また、同様の問題点が、上記の細菌に対する抗菌ペプチドや抗菌薬においてのみならず、真菌に対する抗真菌ペプチドや抗真菌薬においても存在する。
動物、植物を含めた多くの生物は、細菌の感染から逃れるために抗菌作用をもつペプチド(抗菌ペプチド)を産生する(非特許文献1)。これまでに様々な抗菌ペプチドが同定、解析されてきた。抗菌ペプチドは速やかに作用し幅広い抗菌スペクトルをもつ。抗菌ペプチドの大部分は細菌の細胞膜をターゲットにするため(非特許文献1、2)、膜の構造や組成が異なる真核細胞に対してはほとんど影響がない。さらに、細菌が抗菌ペプチドに耐性を獲得するためには、細胞膜の脂質組成を変えなくてはならないため、耐性菌の出現が極めて起こり難いと考えられる。このように、抗菌ペプチドは多くの優れた特徴を有しているが、抗菌薬へ応用するにはまだ多くの障害が存在する。天然の抗菌ペプチドは抗菌効果がそれほど強くない。また分子量が大きいため、抽出・精製や化学合成には時間や労力、費用がかかる(非特許文献3、4)。さらに、多くの抗菌ペプチドは、生理的塩濃度で活性が減弱するといった問題点がある(非特許文献5、6)。また、同様の問題点が、上記の細菌に対する抗菌ペプチドや抗菌薬においてのみならず、真菌に対する抗真菌ペプチドや抗真菌薬においても存在する。
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このような状況下において、塩濃度に左右されない強い抗菌又は抗真菌活性を有し、かつ真核細胞に対して極めて毒性が低い低分子量のペプチド、及びそれを用いた抗菌又は抗真菌薬の探索・開発が望まれていた。
本発明は、上記状況を考慮してなされたもので、以下に示す、ペプチド(抗菌又は抗真菌ペプチド)、抗菌又は抗真菌薬、医薬組成物、並びに細菌感染症及び真菌感染症等の治療及び予防方法等を提供するものである。
(1)以下の(a)、(b)又は(c)のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
(a) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
(b) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗菌又は抗真菌活性を有するペプチド。
(c) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、抗菌又は抗真菌活性を有するペプチド。
(a) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
(b) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗菌又は抗真菌活性を有するペプチド。
(c) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、抗菌又は抗真菌活性を有するペプチド。
(2)上記(1)記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含む、抗菌又は抗真菌薬。
(3)グラム陽性菌に対して抗菌作用を有するか、及び/又は真菌に対して抗真菌作用を有する、上記(2)記載の抗菌又は抗真菌薬。
(4)上記(1)記載のペプチド、その誘導体若しくはこれらの塩を含む、医薬組成物。
(5)細菌感染症及び/又は真菌感染症の治療又は予防に用いられる、上記(4)記載の医薬組成物。
(3)グラム陽性菌に対して抗菌作用を有するか、及び/又は真菌に対して抗真菌作用を有する、上記(2)記載の抗菌又は抗真菌薬。
(4)上記(1)記載のペプチド、その誘導体若しくはこれらの塩を含む、医薬組成物。
(5)細菌感染症及び/又は真菌感染症の治療又は予防に用いられる、上記(4)記載の医薬組成物。
(6)前記細菌がグラム陽性菌である、上記(5)記載の医薬組成物。
(7)対象となる被験動物の細菌感染症及び/又は真菌感染症を治療又は予防する方法であって、上記(4)〜(6)のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
(8)前記細菌がグラム陽性菌である、上記(7)記載の方法。
(7)対象となる被験動物の細菌感染症及び/又は真菌感染症を治療又は予防する方法であって、上記(4)〜(6)のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
(8)前記細菌がグラム陽性菌である、上記(7)記載の方法。
本発明によれば、塩濃度に左右されない強い抗菌又は抗真菌活性を有し、かつ真核細胞に対して極めて毒性が低い低分子量のペプチド、及びそれを用いた抗菌又は抗真菌薬を提供することができる。
本発明のペプチド及び抗菌又は抗真菌薬は、例えば、細菌感染症や真菌感染症の治療又は予防に用いることができる点で、極めて有用なものである。
本発明のペプチド及び抗菌又は抗真菌薬は、例えば、細菌感染症や真菌感染症の治療又は予防に用いることができる点で、極めて有用なものである。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
なお、以下、本明細書において、「抗菌」との文言は、便宜上、細菌に対する「抗菌」と、真菌に対する「抗真菌」とのどちらの意味にも適宜理解し得るものとする。また、「抗菌ペプチド」や「抗菌薬」との文言についても、同様に、細菌に対する「抗菌ペプチド」及び「抗菌薬」と、真菌に対する「抗真菌ペプチド」及び「抗真菌薬」とのどちらの意味にも適宜理解し得るものとする。
なお、以下、本明細書において、「抗菌」との文言は、便宜上、細菌に対する「抗菌」と、真菌に対する「抗真菌」とのどちらの意味にも適宜理解し得るものとする。また、「抗菌ペプチド」や「抗菌薬」との文言についても、同様に、細菌に対する「抗菌ペプチド」及び「抗菌薬」と、真菌に対する「抗真菌ペプチド」及び「抗真菌薬」とのどちらの意味にも適宜理解し得るものとする。
1.本発明の概要
幅広い抗菌スペクトルを持つ抗菌ペプチドは、細胞膜を標的とするため耐性菌の出現が起こり難い。しかしながら、動植物から単離される抗菌ペプチドは、高分子量、細胞毒性が高い、生理的な塩濃度では活性が減弱するといった問題点がある。また、既知のアミノ酸配列に基づいて設計・合成された抗菌ペプチドは、上述の問題点を改善するものもあるが、いずれも10アミノ酸より大きいものである。より低分子の抗菌ペプチドを発見できれば、合成効率はもとよりコスト面においてもさらなる改善が期待できる。
ところで、細菌が産生するトキシンには、分泌されずに細菌自身の増殖を停止させるものがある。これは、ストレス応答やバイオフィルム形成など細菌のさまざまな生理現象にかかわる。このトキシンの特徴として、その活性を抑えるアンチトキシンの遺伝子がトキシン遺伝子と並んで存在し、トキシン−アンチトキシン系(TA)を構成する。TAは細菌界に広く保存されており、染色体やプラスミド上には複数のTA遺伝子座が存在する。腸管出血性大腸菌O157:H7株のzorO-orzO TAの場合、29アミノ酸からなるZorOトキシン(配列番号6)が細菌内で発現すると、細胞膜に局在して膜損傷を引き起こすと考えられており、その結果、菌の増殖が阻害され、生存率が著しく低下する(Fozo E.M., et al., 2010. Nucleic Acids Res. 38:3743-3759; Wen J., et al., 2016. Nucleic Acids Res. 45:4006-4020)。
そこで、本発明者は、低分子量であるZorOトキシンが抗菌ペプチドとして作用し、新規抗菌薬のシーズとなり得るのではないかと考え、まず、ZorOトキシンによる細菌の増殖阻害(増殖停止)に、ZorO内部の5残基のアミノ酸配列、すなわち「Ala-Leu-Leu-Arg-Leu」(配列番号1)(以下、ALLRLペプチド)が重要であることを見出した。そして、これまでの抗菌ペプチドとは異なるアミノ酸配列で、かつ残基数がさらに少ない、前記ALLRLペプチドが、抗菌作用を有するのではないかという着想に至った。実際に、このALLRLペプチドを細菌に添加して、増殖能と生存率を測定し、その形態変化を観察したところ、生理的な塩濃度下において、増殖能と生存率の低下、及び細胞膜損傷が認められた。また、ALLRLペプチドは、真菌に対しても増殖能の低下が認められた。さらに、ALLRLペプチドは、動物由来の培養細胞には実質的に細胞毒性を示さないことも確認された。
加えて、本発明者は、ALLRLペプチドと同様に、細菌や真菌に対する殺菌作用(抗菌作用)を有するペプチドとして、「Ala-Leu-Leu-Arg-Leu-Ile」(配列番号2)(以下、ALLRLIペプチド)、「Ala-Leu-Leu-Arg」(配列番号3)(以下、ALLRペプチド)、「Leu-Leu-Arg-Leu」(配列番号4)(以下、LLRLペプチド)、「Leu-Arg-Leu-Leu-Ala」(配列番号5)(以下、LRLLAペプチド)も見出した。
以上の知見に基づいて、本発明は完成されたものである。
以上の知見に基づいて、本発明は完成されたものである。
2.抗菌ペプチド
本発明のペプチド(抗菌ペプチド)は、先に述べた通り、下記(a)のペプチドを含むものである。
(a) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列(すなわち、ALLRL(配列番号1)、ALLRLI(配列番号2)、ALLR(配列番号3)、LLRL(配列番号4)、LRLLA(配列番号5))を含むペプチド。
本発明において、「ペプチド」とは、少なくとも2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合して構成されたものを意味し、オリゴペプチド、ポリペプチドなどが含まれる。また、オリゴペプチドよりも多数のアミノ酸が結合したポリペプチドも、本発明でいう上記「ペプチド」に含まれ得るものとする。
上記(a)のペプチドとしては、最も好ましくは、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであるが、これに限定されるわけではない。
また本発明のペプチドは、先に述べた通り、前記(a)のペプチドと機能的に同等なペプチドとして、下記(b)のペプチドを含むものであってもよい。
(b) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗菌活性を有するペプチド。
当該(b)のペプチドとしては、限定はされないが、配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、抗菌活性を有するペプチドが好ましい。
また本発明のペプチドは、先に述べた通り、前記(a)のペプチドと機能的に同等なペプチドとして、下記(b)のペプチドを含むものであってもよい。
(b) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗菌活性を有するペプチド。
当該(b)のペプチドとしては、限定はされないが、配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、抗菌活性を有するペプチドが好ましい。
ここで、上記「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、例えば、1〜数個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が挙げられ、限定はされないが、当該欠失、置換又は付加の数は、一般的には小さい程好ましい。当該欠失、置換又は付加等の変異の導入は、当該変異導入前のアミノ酸配列をコードするDNAに対して、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えば、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社)、及びTaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Prime STAR(登録商標) Mutagenesis Basal kit、Mutan(登録商標)-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて、所望のアミノ酸変異が導入されるようにDNAを改変すること等で行うことができる。また、上記欠失、置換又は付加の変異が導入されたペプチドであるかどうかは、各種アミノ酸配列決定法、並びにX線及びNMR等による構造解析法などを用いて確認することができる。
また、前記(a)のペプチドと機能的に同等なペプチドとしては、例えば、下記(c)のペプチドも挙げられる。
(c) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性(相同性)を有するアミノ酸配列を有し、かつ、抗菌活性を有するペプチド。
当該(c)のペプチドとしては、限定はされないが、配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、抗菌活性を有するペプチドが好ましい。
さらに、当該(c)のペプチドとしては、配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列に対して、85%以上、90%以上、95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し(又は当該アミノ酸配列からなり)、かつ、抗菌活性を有するペプチドも好ましく挙げられる。上記同一性の数値は一般的に大きい程好ましい。
(c) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性(相同性)を有するアミノ酸配列を有し、かつ、抗菌活性を有するペプチド。
当該(c)のペプチドとしては、限定はされないが、配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、抗菌活性を有するペプチドが好ましい。
さらに、当該(c)のペプチドとしては、配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列に対して、85%以上、90%以上、95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し(又は当該アミノ酸配列からなり)、かつ、抗菌活性を有するペプチドも好ましく挙げられる。上記同一性の数値は一般的に大きい程好ましい。
上記(b)や(c)のペプチド(いわゆる変異型のペプチド)は、該ペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子を用いて遺伝子工学的に作製することもできる。
本発明において、抗菌活性とは、細菌の増殖能や生存率を低下させる活性や、細菌の細胞膜損傷を引き起こす活性を意味する。当該活性は、例えば、増殖能や生存率の低下は、分光光度計、寒天培地、市販のキット、例えば、BacTiter-GloTM Microbial Cell Viability Assay kit(プロメガ)とルミノメーター等を用いて、細胞膜損傷の有無は、Propidium iodide(インビトロジェン)と蛍光顕微鏡等を用いて、測定・観察及び評価等することができる。
本発明において、抗菌活性とは、細菌の増殖能や生存率を低下させる活性や、細菌の細胞膜損傷を引き起こす活性を意味する。当該活性は、例えば、増殖能や生存率の低下は、分光光度計、寒天培地、市販のキット、例えば、BacTiter-GloTM Microbial Cell Viability Assay kit(プロメガ)とルミノメーター等を用いて、細胞膜損傷の有無は、Propidium iodide(インビトロジェン)と蛍光顕微鏡等を用いて、測定・観察及び評価等することができる。
本発明でいう前記(a)〜(c)のペプチドは、その構成アミノ酸の残基数は特に限定はされず、所定の活性(抗菌活性)を有する範囲内で適宜設定することができる。また、前記(a)〜(c)のペプチドは、天然物由来のペプチドであってもよいし、人工的に化学合成して得られたものであってもよく、限定はされないが、天然物由来のペプチドである場合は、動物細胞への細胞毒性等の悪影響や副作用等が少ない場合が多いため好ましい。
天然物由来のペプチドとしては、天然に存在するオリゴペプチドやポリペプチド、又はこれらを断片化した状態のもの等が挙げられる。天然物由来のペプチドは、天然物から公知の回収法及び精製法により直接得てもよいし、又は、公知の遺伝子組換え技術により、当該ペプチドをコードする遺伝子を各種発現ベクター等に組込んで細胞に導入し、発現させた後、公知の回収法及び精製法により得てもよい。あるいは、市販のキット、例えば、試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTMSystem(プロメガ)、合成装置のPG-MateTM(東洋紡)及びRTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)等を用いた無細胞タンパク質合成系により当該ペプチドを産生し、公知の回収法及び精製法により得てもよく、限定はされない。
また、化学合成ペプチドは、公知のペプチド合成方法を用いて得ることができる。合成方法としては、例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法及び酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれをも適用することができる。市販のペプチド合成装置を使用してもよい。合成反応後は、クロマトグラフィー等の公知の精製法を組み合わせてペプチドを精製することができる。
本発明においては、前記(a)〜(c)のペプチドとともに、又はそれに代えて、当該ペプチドの誘導体を含むことができる。当該誘導体とは、当該ペプチドに由来して調製され得るものをすべて含む意味であり、例えば、構成アミノ酸の一部が非天然のアミノ酸に置換されたものや、構成アミノ酸(主にその側鎖)の一部に化学修飾が施されたもの等が挙げられる。
また本発明においては、前記(a)〜(c)のペプチド、及び/又は、当該ペプチドの誘導体とともに、あるいはそれに代えて、当該ペプチド及び/又は当該誘導体の塩を含むことができる。当該塩としては、生理学的に許容される酸付加塩又は塩基性塩が好ましい。酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との塩、あるいは酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウムなどの無機塩基との塩、あるいはカフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジンなどの有機塩基との塩が挙げられる。
塩は、塩酸などの適切な酸、又は水酸化ナトリウムなどの適切な塩基を用いて調製することができる。例えば、水中、又はメタノール、エタノール若しくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含む液体中で、標準的なプロトコルを用いて処理することにより調製することができる。
3.DNA、組換えベクター、形質転換体
本発明においては、前記(a)〜(c)のペプチドを構成するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNAも包含される。当該DNAは、前記(a)〜(c)のペプチドをコードする塩基配列からなるDNAであってもよいし、あるいは、当該塩基配列を一部に含み、その他に遺伝子発現に必要な公知の塩基配列(転写プロモーター、SD配列、Kozak配列、ターミネーター等)を含んでなるDNAであってもよく、限定はされない。なお、前記(a)〜(c)のペプチドをコードする塩基配列では、コドンの種類は限定されず、例えば、転写後、各種細菌や酵母等の微生物、ヒト等の哺乳類、植物等において一般的に使用されているコドンを用いたものであってもよく、適宜選択又は設計することができる。
また本発明においては、前記(a)〜(c)のペプチドをコードする塩基配列を含むDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAであって、抗菌活性を有するペプチドをコードするDNAも包含される。ここで、ストリンジェントな条件とは、例えば、塩(ナトリウム)濃度が10〜1000mMであり、温度が37〜75℃、好ましくは塩(ナトリウム)濃度が100〜200mMであり、温度が50〜60℃での条件をいう。
また、本発明においては、上記DNAを適当なベクターに連結(挿入)して得られる組換えベクターや、当該組換えベクターを目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入して得られる形質転換体も、包含される。これら組換えベクターや形質転換体については、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press)等の記載を参照して適宜作製することができる。
また、本発明においては、上記DNAを適当なベクターに連結(挿入)して得られる組換えベクターや、当該組換えベクターを目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入して得られる形質転換体も、包含される。これら組換えベクターや形質転換体については、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press)等の記載を参照して適宜作製することができる。
4.抗菌薬
本発明の抗菌薬は、前述のとおり、有効成分として、前記(a)〜(c)のペプチド、その誘導体あるいはそれらの塩を含むものである。
本発明の抗菌薬を作用させる対象となる菌(細菌)は、実際に本発明の抗菌薬が抗菌活性を発揮し得る菌であればよく、特に限定はされないが、グラム陽性菌(例えば、黄色ブドウ球菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、枯草菌など)が好ましく挙げられる。
本発明の抗菌薬は、前記(a)〜(c)のペプチド、その誘導体あるいはこれらの塩からなるものであってもよいし、当該ペプチド、その誘導体又はこれらの塩と他の成分とを含むものであってもよく、限定はされない。他の成分としては、例えば、PBS及びTris-HCl等の緩衝液、並びにアジ化ナトリウム及びグリセロール等の添加剤などが挙げられる。他の成分を含む場合、その含有割合は、当該ペプチド、その誘導体又はこれらの塩による所定の活性(抗菌活性)が著しく妨げられない範囲で、適宜設定することができる。具体的には、上記ペプチドの溶液で用いる場合、ペプチド濃度は、特に限定はされず、例えば、100 nM以上が挙げられ、300〜500 nM、500〜1,000 nM、1,000〜2,000 nM、2,000〜5,000 nM、又は3,000〜5,000 nM以上であってもよい。
5.医薬組成物
本発明の抗菌薬は、医薬組成物に含まれる有効成分として有用である。なお、実質的には、前記(a)〜(c)のペプチド、その誘導体あるいはそれらの塩を当該有効成分ということもできる。
本発明の医薬組成物は、限定はされないが、例えば、細菌感染症及び/又は真菌感染症等の治療又は予防に用いる医薬組成物であることが好ましい。ここで、対象となる菌(細菌)としては、実際に本発明の抗菌薬が抗菌活性を発揮し得る菌であればよく、特に限定はされないが、グラム陽性菌(例えば、黄色ブドウ球菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、枯草菌など)が好ましく挙げられる。また真菌としては、特に限定はされないが、例えば、酵母様真菌であるカンジダ・アルビカンスなどのカンジダ属や、クリプトコックス属などが好ましく挙げられる。
本発明の医薬組成物は、本発明の抗菌薬を有効成分として含み、さらに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で提供され得る。
「薬学的に許容され得る担体」とは、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。そのような担体の1種以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口あるいは非経口的に投与することができる。非経口投与のためのその他の形態としては、1つ以上の活性物質を含み、常法により処方される注射剤などが含まれる。注射剤の場合には、生理食塩水又は市販の注射用蒸留水等の薬学的に許容される担体中に溶解または懸濁することにより製造することができる。
「薬学的に許容され得る担体」とは、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。そのような担体の1種以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口あるいは非経口的に投与することができる。非経口投与のためのその他の形態としては、1つ以上の活性物質を含み、常法により処方される注射剤などが含まれる。注射剤の場合には、生理食塩水又は市販の注射用蒸留水等の薬学的に許容される担体中に溶解または懸濁することにより製造することができる。
本発明の医薬組成物の投与量は、対象となる被験動物(ヒト又は非ヒト動物を含む各種哺乳動物)の年齢、性別、体重及び症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは医薬組成物に含有される本発明の表出抑制剤等の種類などにより異なっていてもよい。通常、成人一人あたり、一回につき100μg〜5000mgの範囲で投与することができるが、限定はされない。
例えば注射剤により投与する場合は、ヒト患者に対し、1回の投与において1kg体重あたり、1μg〜100mgの量を、1日平均あたり1回〜数回投与することができる。投与の形態としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射あるいは腹腔内注射などが挙げられるが、好ましくは静脈内注射である。また、注射剤は、場合により、非水性の希釈剤(例えばポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、エタノール等のアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として調製することもできる。そのような注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤の配合等により行うことができる。注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。すなわち、凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することができる。
なお、本発明の一態様としては、細菌感染症及び/又は真菌感染症等を治療又は予防する医薬(薬剤)を製造するための、本発明の抗菌薬(又は、前記(a)〜(c)のペプチド、その誘導体あるいはそれらの塩)の使用も含まれる。また、本発明の他の一態様としては、本発明の抗菌薬(又は、前記(a)〜(c)のペプチド、その誘導体あるいはそれらの塩)の有効量を用いること(すなわち、対象としての被験動物や患者に投与すること)を特徴とする、細菌感染症及び/又は真菌感染症等の治療又は予防方法も含まれる。ここで、被験動物としては、特に限定はされないが、ヒトを含む霊長類、マウス及びラット等を含むげっ歯類、魚類、鳥類のほか、牛、犬、馬、猫、山羊、羊、及び豚等の各種哺乳動物が含まれ、感染対象によっては、上記以外の動物種にまで拡張することもできる。さらに、本発明の他の一態様としては細菌感染症及び/又は真菌感染症等を治療又は予防するための、本発明の抗菌薬(又は、前記(a)〜(c)のペプチド、その誘導体あるいはそれらの塩)の使用も含まれる。以上の各々の態様において、対象となる菌(細菌)としては、上記本発明の医薬組成物の説明において述べたものと同様のものが好ましく挙げられる。
6.キット
本発明においては、構成成分として本発明の抗菌薬(又は、前記(a)〜(c)のペプチド、その誘導体あるいはそれらの塩)を含むことを特徴とする、抗菌用キットや、細菌感染症及び/又は真菌感染症等の治療又は予防用キットも提供される。ここで、対象となる菌(細菌)としては、前記本発明の医薬組成物の説明において述べたものと同様のものが好ましく挙げられる。
本発明のキットは、本発明の抗菌薬(又は、前記(a)〜(c)のペプチド、その誘導体あるいはそれらの塩)の他に、各種バッファー、滅菌水、各種反応容器(エッペンドルフチューブ等)、洗浄剤、界面活性剤、各種プレート、防腐剤、各種細胞培養容器、及び実験操作マニュアル(説明書)等を含んでいてもよく、限定はされない。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<材料・方法>
1.使用した細菌と真菌
以下の各種細菌又は真菌を、殺菌作用(抗菌作用)の有無を確認する対象とした。
黄色ブドウ球菌(S. aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、枯草菌(B. subtilis)、大腸菌(E. coli K-12株:BW25113またはTY0807、O157:H7株:ATCC43888)、カンジダ・アルビカンス(C. albicans)
1.使用した細菌と真菌
以下の各種細菌又は真菌を、殺菌作用(抗菌作用)の有無を確認する対象とした。
黄色ブドウ球菌(S. aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、枯草菌(B. subtilis)、大腸菌(E. coli K-12株:BW25113またはTY0807、O157:H7株:ATCC43888)、カンジダ・アルビカンス(C. albicans)
2.使用したプラスミド
後述するように、ZorOトキシンの毒性に必要なアミノ酸を調べるために、アラビノース誘導性のベクタープラスミドpBAD24に各種タンパク質をコードするDNAを挿入した、以下の各種プラスミドを構築し、使用した。
後述するように、ZorOトキシンの毒性に必要なアミノ酸を調べるために、アラビノース誘導性のベクタープラスミドpBAD24に各種タンパク質をコードするDNAを挿入した、以下の各種プラスミドを構築し、使用した。
pBAD24-zorO、pBAD24-zorO(ΔN4)、pBAD24-zorO(ΔN8)、pBAD24-zorO(ΔN13)、pBAD24-zorO(ΔC5)、pBAD24-zorO(ΔC10)、pBAD24-zorO(ΔALLRL)
3.使用したペプチド
以下の各種ペプチドを、殺菌作用(抗菌作用)の有無の確認に使用した。これらのペプチドは、Sigma-Aldrichに化学合成を依頼した。乾燥状態のペプチドをDMSOに溶解した。
以下の各種ペプチドを、殺菌作用(抗菌作用)の有無の確認に使用した。これらのペプチドは、Sigma-Aldrichに化学合成を依頼した。乾燥状態のペプチドをDMSOに溶解した。
MDTLTQKLTVLIAVLELLVALLRLIDLLK(配列番号6)
LELLVALLRL(配列番号13)
ALLRL(配列番号1)
LRLLA(配列番号5)
VALLRL(配列番号14)
ALLRLI(配列番号2)
ALLR(配列番号3)
LLRL(配列番号4)
ALLKL(配列番号15)
ALLHL(配列番号16)
ALLRA(配列番号17)
ALLRI(配列番号18)
LELLVALLRL(配列番号13)
ALLRL(配列番号1)
LRLLA(配列番号5)
VALLRL(配列番号14)
ALLRLI(配列番号2)
ALLR(配列番号3)
LLRL(配列番号4)
ALLKL(配列番号15)
ALLHL(配列番号16)
ALLRA(配列番号17)
ALLRI(配列番号18)
4.細菌・真菌の増殖測定
(1)細菌
一晩培養した細菌をLuria-Bertani(LB)液体培地(DifcoTM LB broth, Miller, 244620, BD)で希釈して、小型振盪培養機(TVS062CA, ADVANTEC)を用いて37℃で振盪培養した。培養開始後にL-アラビノース(A3256-25G, Sigma-Aldrich)、DMSO(D-5879, Sigma-Aldrich)またはペプチドを加え、さらに培養した。20分おきにOD660の値を測定し、細菌の増殖能を調べた。
(1)細菌
一晩培養した細菌をLuria-Bertani(LB)液体培地(DifcoTM LB broth, Miller, 244620, BD)で希釈して、小型振盪培養機(TVS062CA, ADVANTEC)を用いて37℃で振盪培養した。培養開始後にL-アラビノース(A3256-25G, Sigma-Aldrich)、DMSO(D-5879, Sigma-Aldrich)またはペプチドを加え、さらに培養した。20分おきにOD660の値を測定し、細菌の増殖能を調べた。
(2)真菌
サブロー寒天培地(サブロー寒天培地(顆粒), 05701, ニッスイ)上で形成された真菌(C. albicans)のコロニーを2つとり、0.5 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS; 137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, 8 mM Na2HPO4, 1.5 mM KH2PO4, pH 7.4)に懸濁した。懸濁液0.05 mlを4 mlのサブロー液体培地(100 mlあたり1 g Glucose, 2 g Peptone, pH 5.5)に加え、小型振盪培養機(TVS062CA, ADVANTEC)を用いて37℃で振盪培養した。OD660が約0.1に到達した時、DMSOまたはペプチドを加え、さらに培養を続けた。20分おきにOD660の値を測定した。
サブロー寒天培地(サブロー寒天培地(顆粒), 05701, ニッスイ)上で形成された真菌(C. albicans)のコロニーを2つとり、0.5 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS; 137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, 8 mM Na2HPO4, 1.5 mM KH2PO4, pH 7.4)に懸濁した。懸濁液0.05 mlを4 mlのサブロー液体培地(100 mlあたり1 g Glucose, 2 g Peptone, pH 5.5)に加え、小型振盪培養機(TVS062CA, ADVANTEC)を用いて37℃で振盪培養した。OD660が約0.1に到達した時、DMSOまたはペプチドを加え、さらに培養を続けた。20分おきにOD660の値を測定した。
5.コロニー形成単位(CFU)測定
細菌培養液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈して、LB寒天培地(LB液体培地中に1.5%の寒天(BactoTM Agar, 214010, BD)を含む)に塗り広げた、もしくは各希釈液をLB寒天培地に5 μl滴下した。菌液が乾燥した後、37℃で一晩培養し、形成されたコロニー数を測定、観察した。
細菌培養液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈して、LB寒天培地(LB液体培地中に1.5%の寒天(BactoTM Agar, 214010, BD)を含む)に塗り広げた、もしくは各希釈液をLB寒天培地に5 μl滴下した。菌液が乾燥した後、37℃で一晩培養し、形成されたコロニー数を測定、観察した。
6.細菌の生存率測定
細菌の生存率測定にはBacTiter-GloTM Microbial Cell Viability Assay kit(G8230, Promega)を用いた。測定方法はキットのプロトコルに従い、発光量(RLU)はルミノメーター(Lumat LB9501, Berthold)を用いて定量した。
細菌の生存率測定にはBacTiter-GloTM Microbial Cell Viability Assay kit(G8230, Promega)を用いた。測定方法はキットのプロトコルに従い、発光量(RLU)はルミノメーター(Lumat LB9501, Berthold)を用いて定量した。
7.細菌の顕微鏡観察
一晩培養した細菌をLB液体培地で100倍希釈し、振盪培養した(例えば、黄色ブドウ球菌の場合は37℃で2時間、枯草菌の場合は2時間40分)。次に1 mlの菌液に対して、10 μlのDMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度200 μg/ml)を加えて、さらに30分間培養した。遠心(6000 rpm, 5分間, 室温, MRX-152, TOMY)により細菌を回収し、1 mlのPBSで懸濁した。20 μlのPropidium iodide(P3566, Invitrogen)を加えて室温で5分間処理した後、0.5 μlのDAPI (4’, 6-diamidino-2-phenylindole dihydrochloride)(最終濃度 2.5 μg/ml)(D21490, Invitrogen)を加えて、さらに室温で5分間処理した。遠心(6000 rpm, 5分間, 室温)により細菌を回収して、100 μlのPBSで再懸濁した。細菌は蛍光顕微鏡(BZ-9000, KEYENCE)を用いて観察した。
一晩培養した細菌をLB液体培地で100倍希釈し、振盪培養した(例えば、黄色ブドウ球菌の場合は37℃で2時間、枯草菌の場合は2時間40分)。次に1 mlの菌液に対して、10 μlのDMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度200 μg/ml)を加えて、さらに30分間培養した。遠心(6000 rpm, 5分間, 室温, MRX-152, TOMY)により細菌を回収し、1 mlのPBSで懸濁した。20 μlのPropidium iodide(P3566, Invitrogen)を加えて室温で5分間処理した後、0.5 μlのDAPI (4’, 6-diamidino-2-phenylindole dihydrochloride)(最終濃度 2.5 μg/ml)(D21490, Invitrogen)を加えて、さらに室温で5分間処理した。遠心(6000 rpm, 5分間, 室温)により細菌を回収して、100 μlのPBSで再懸濁した。細菌は蛍光顕微鏡(BZ-9000, KEYENCE)を用いて観察した。
8.細胞毒性(MTTアッセイ)
動物由来の細胞としてのVero、BHKまたはCHO細胞を、MEM培地(10% FBSを含む)で懸濁して、96 well plateを用いて24時間培養した。細胞が70〜90%コンフルエントであることを確認した後、MEM培地(1% FBSを含む)に置換し、培地100 μlに対して2 μlのDMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度 200, 100, 50, 25, 12.5, 6.25 μg/ml)を加え、さらに24時間培養した。その後、チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド(M2128-250MG, Sigma-Aldrich)で生細胞を染色し、マイクロプレートリーダー(iMark, BIO-RAD)を用いて560 nmの吸光度を測定した。
動物由来の細胞としてのVero、BHKまたはCHO細胞を、MEM培地(10% FBSを含む)で懸濁して、96 well plateを用いて24時間培養した。細胞が70〜90%コンフルエントであることを確認した後、MEM培地(1% FBSを含む)に置換し、培地100 μlに対して2 μlのDMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度 200, 100, 50, 25, 12.5, 6.25 μg/ml)を加え、さらに24時間培養した。その後、チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド(M2128-250MG, Sigma-Aldrich)で生細胞を染色し、マイクロプレートリーダー(iMark, BIO-RAD)を用いて560 nmの吸光度を測定した。
<結果>
1.ZorOトキシンの毒性に必要なアミノ酸
ZorOトキシンの毒性を確認するために、ZorOトキシンをアラビノース誘導性のベクタープラスミド(pBAD24)にクローニングし、組換えプラスミド(pBAD24-zorO)を、大腸菌K-12株(TY0807)に導入して形質転換した。次に、5 mlのLB液体培地(2本)に、一晩培養した形質転換大腸菌(pBAD24-zorOプラスミドを持つK-12株TY0807)を50 μl加えて37℃で振盪培養を開始した。OD660が約0.2に到達した時、1本の細菌培養液にL-アラビノース(L-ara)を最終濃度0.1%になるように加え、さらに培養を続けた。(アラビノースはZorOの発現を誘導する。)細菌増殖は小型振盪培養機を用い、OD660の値を20分おきに測定した(図1(A):横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)。その結果、ZorOトキシンの発現誘導後30分以内に菌の増殖停止が観察された。
1.ZorOトキシンの毒性に必要なアミノ酸
ZorOトキシンの毒性を確認するために、ZorOトキシンをアラビノース誘導性のベクタープラスミド(pBAD24)にクローニングし、組換えプラスミド(pBAD24-zorO)を、大腸菌K-12株(TY0807)に導入して形質転換した。次に、5 mlのLB液体培地(2本)に、一晩培養した形質転換大腸菌(pBAD24-zorOプラスミドを持つK-12株TY0807)を50 μl加えて37℃で振盪培養を開始した。OD660が約0.2に到達した時、1本の細菌培養液にL-アラビノース(L-ara)を最終濃度0.1%になるように加え、さらに培養を続けた。(アラビノースはZorOの発現を誘導する。)細菌増殖は小型振盪培養機を用い、OD660の値を20分おきに測定した(図1(A):横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)。その結果、ZorOトキシンの発現誘導後30分以内に菌の増殖停止が観察された。
また、一晩培養した大腸菌(pBAD24-zorOプラスミドを持つK-12株TY0807)を、LB液体培地で30倍希釈し、37℃で振盪培養した。培養開始2時間後に培養液を2つに分け、一方にはL-アラビノース(L-ara)を最終濃度0.1%になるように加えた。培養開始0, 1, 1.5, 2, 2.5, 3, 4時間後に培養液を一部とりコロニー形成単位(CFU)を測定した(図1(B):横軸は培養時間、縦軸はCFU (x 108)の値を示す。)さらに、一晩培養した大腸菌(pBAD24-zorOプラスミドを持つK-12株TY0807)をLB液体培地で100倍希釈し、37℃で2時間振盪培養した。培養液を2つに分け、一方にはL-アラビノース(Ara)を最終濃度0.02%になるように加え、さらに30分間培養した。細菌培養液をLB液体培地で10倍希釈して、生菌の割合をBacTiter-GloTM Microbial Cell Viability Assay kitを用いて測定した(図1(C):縦軸は発光量(RLU)を表し、左のカラム(LB medium)はLB液体培地のみの値を示す。)。図1(B), (C)の結果から、ZorOトキシンの発現が顕著な生存率の低下をもたらすことがわかった。
そこで、ZorOトキシンの毒性に必要なアミノ酸を同定するために、図2に示すような、ZorOトキシン(配列番号6)のN末側からN末端のメチオニン残基を除いた4、8、13アミノ酸残基、C末側から5、10アミノ酸残基を欠失した変異タンパク質(それぞれ順に、配列番号7〜11)を発現するプラスミド(それぞれ順に、pBAD24-zorO(ΔN4)、pBAD24-zorO(ΔN8)、pBAD24-zorO(ΔN13)、pBAD24-zorO(ΔC5)、pBAD24-zorO(ΔC10))を構築し、毒性の有無を図1(A)と同じ方法で検討した(図2)。N末側のアミノ酸残基を欠失したタンパク質(配列番号7〜9)とC末側の5アミノ酸残基を欠失したタンパク質(配列番号10)は毒性を維持しているのに対し、C末側の10アミノ酸残基を欠失したタンパク質(配列番号11)は毒性を示さなかった。この結果は、C末側の6番目から10番目のアミノ酸Ala-Leu-Leu-Arg-Leu(配列番号1)が毒性に必要であること示唆したので、この5アミノ酸残基を欠失したタンパク質(配列番号12)を発現するプラスミド(pBAD24-zorO(ΔALLRL))を構築し、毒性の有無を図1(A)と同じ方法で調べたところ、予想どおり毒性は認められなかった。
2.ALLRLペプチドの抗菌作用
そこで、Ala-Leu-Leu-Arg-Leu(ALLRL)の5アミノ酸が抗菌ペプチドとして働くのではないかと考え、ALLRLペプチドを化学合成し、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌への抗菌作用を調べた。詳しくは、一晩培養した黄色ブドウ球菌をLB液体培地で400倍希釈し、37℃で振盪培養した。OD660が約0.2に到達した時、ALLRLペプチドを最終濃度0, 10, 20, 40, 80, 160 μg/mlになるように加え、さらに培養を続けた。小型振盪培養機を用いてOD660の値を20分おきに測定した(図3(A):横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)。その結果、黄色ブドウ球菌では、ALLRLペプチド(最終濃度160 μg/ml)を添加すると速やかに増殖能が低下した。80 μg/mlの濃度でも増殖速度のわずかな遅延が見られた。
そこで、Ala-Leu-Leu-Arg-Leu(ALLRL)の5アミノ酸が抗菌ペプチドとして働くのではないかと考え、ALLRLペプチドを化学合成し、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌への抗菌作用を調べた。詳しくは、一晩培養した黄色ブドウ球菌をLB液体培地で400倍希釈し、37℃で振盪培養した。OD660が約0.2に到達した時、ALLRLペプチドを最終濃度0, 10, 20, 40, 80, 160 μg/mlになるように加え、さらに培養を続けた。小型振盪培養機を用いてOD660の値を20分おきに測定した(図3(A):横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)。その結果、黄色ブドウ球菌では、ALLRLペプチド(最終濃度160 μg/ml)を添加すると速やかに増殖能が低下した。80 μg/mlの濃度でも増殖速度のわずかな遅延が見られた。
上記において、ALLRLペプチドを添加して1時間後にコロニー形成単位(CFU)を調べた。詳しくは、上記のように、ALLRLペプチドを最終濃度0, 10, 20, 40, 80, 160 μg/mlになるように加えて、さらに1時間培養した。培養液を10倍ずつPBSで希釈し、LB寒天培地上に5 μl滴下して、37℃で一晩培養した(図3(B):上の数字はペプチド濃度を、右の数字は希釈率を表している。)。その結果、生菌数がペプチドなしと比較して、80 μg/mlの濃度では約1/10に、160 μg/mlの濃度では10-4以下に低下した。
また、ATP産生量を指標とした細菌の生存率測定も行った。詳しくは、一晩培養した黄色ブドウ球菌をLB液体培地で100倍希釈し、37℃で2時間振盪培養した。次に0.2 mlの菌液に対して、2 μlのDMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度 200, 50 または12.5 μg/ml)を加えて、さらに30分間培養した。BacTiter-GloTMMicrobial Cell Viability Assay kitを用いて、生菌の割合を測定した(図3(C):縦軸は発光量(RLU)を表し、NoはDMSOおよびALLRLペプチドを加えていない細菌培養液の値を示す。)。その結果、200 μg/mlと50 μg/mlのALLRLペプチドの添加量で生存率の顕著な低下が見られた。
以上の結果より、ALLRLペプチドは黄色ブドウ球菌に対して抗菌作用(殺菌作用)をもつことがわかった。また、LB液体培地は1%の塩化ナトリウムを含んでいるため、ALLRLペプチドによる抗菌作用は、生理的塩濃度でも失われないことが分かった。
次に、別のグラム陽性菌である枯草菌に対しても同様の実験を行ったところ、上述の黄色ブドウ球菌の場合と同じく、160 μg/mlのALLRLペプチドでは速やかな増殖停止、80 μg/mlでも増殖速度の遅延が見られた(図4(A))。なお、この実験では、OD660が約0.1に到達した時に様々な濃度のALLRLペプチドを添加した。さらに、CFU測定やATP産生量による生存率測定でも、黄色ブドウ球菌と同様に、ALLRLペプチドの添加により生菌数の著しい低下が観察された(図4(B), (C))。なお、ATP産生量による生存率測定では、黄色ブドウ球菌の場合は37℃で2時間振盪培養したところを、枯草菌では同温度で2時間50分振盪培養した以外は、同様に行った。また、ALLRLペプチドによる枯草菌への抗菌作用は、黄色ブドウ球菌の場合と同じく、生理的塩濃度でも失われないことが分かった。
さらに、薬剤耐性菌の1つであるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌作用も調べた。詳しくは、一晩培養したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)をLB液体培地で400倍希釈し、37℃で振盪培養を開始した。OD660が約0.1に到達した時、4 mlの菌液に対して、20 μlのDMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度 200 μg/ml)を加えて、さらに培養を続けた。小型振盪培養機を用いてOD660の値を20分おきに測定した(図5(A):横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)。その結果、ALLRLペプチドは速やかな増殖の停止をもたらした。よって、MRSAに対しても抗菌作用を示すことがわかった。
以上の結果より、ALLRLペプチドは、生理的な塩濃度下において、グラム陽性菌に対して抗菌作用を示すことが強く示唆された。
以上の結果より、ALLRLペプチドは、生理的な塩濃度下において、グラム陽性菌に対して抗菌作用を示すことが強く示唆された。
他方、グラム陰性菌である大腸菌(K-12株(BW25113)とO157:H7株(ATCC43888))に対しても、黄色ブドウ球菌、枯草菌と共に、ALLRLペプチドの抗菌作用を検討した。詳しくは、一晩培養した黄色ブドウ球菌、枯草菌、大腸菌(K-12株、O157:H7株)をLB液体培地で希釈し、37℃で振盪培養した。OD660が約0.2に到達した時、ALLRLペプチドを最終濃度200 μg/mlになるように加えて、さらに培養を続けた。小型振盪培養機を用いてOD660の値を20分おきに測定した(図5(B):横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)。
3.ALLRLペプチドによる細菌の細胞膜損傷
これまでに同定された抗菌ペプチドの多く(例えば、ナイシン等)は、細胞膜をターゲットにして損傷を引き起こす。そこで、ALLRLペプチドが黄色ブドウ球菌と枯草菌の細胞膜に損傷を引き起こすかどうか検討した。詳しくは、一晩培養した黄色ブドウ球菌と枯草菌をそれぞれLB液体培地で100倍希釈し、37℃で振盪培養(黄色ブドウ球菌は2時間、枯草菌は2時間40分)した。次に1 mlの菌液に対して、10μlのDMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度 200 μg/ml)を加えて、さらに30分間培養した。その後、細菌の細胞膜損傷を検出するための試薬Propidium iodide(PI)と全ての菌を検出するための試薬DAPIで染色して蛍光顕微鏡で観察した(図6、7)。両細菌共に、DMSO処理(コントロール)ではPI染色による赤い蛍光を発する細菌は検出されないのに対し(図6(A), 図7(A))、ALLRLペプチドで処理した場合では赤い蛍光を発する細菌が多く検出された(図6(B), 図7(B))。この結果は、ALLRLペプチドが細菌の細胞膜に損傷を与えることを強く示唆する。
これまでに同定された抗菌ペプチドの多く(例えば、ナイシン等)は、細胞膜をターゲットにして損傷を引き起こす。そこで、ALLRLペプチドが黄色ブドウ球菌と枯草菌の細胞膜に損傷を引き起こすかどうか検討した。詳しくは、一晩培養した黄色ブドウ球菌と枯草菌をそれぞれLB液体培地で100倍希釈し、37℃で振盪培養(黄色ブドウ球菌は2時間、枯草菌は2時間40分)した。次に1 mlの菌液に対して、10μlのDMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度 200 μg/ml)を加えて、さらに30分間培養した。その後、細菌の細胞膜損傷を検出するための試薬Propidium iodide(PI)と全ての菌を検出するための試薬DAPIで染色して蛍光顕微鏡で観察した(図6、7)。両細菌共に、DMSO処理(コントロール)ではPI染色による赤い蛍光を発する細菌は検出されないのに対し(図6(A), 図7(A))、ALLRLペプチドで処理した場合では赤い蛍光を発する細菌が多く検出された(図6(B), 図7(B))。この結果は、ALLRLペプチドが細菌の細胞膜に損傷を与えることを強く示唆する。
4.ALLRLペプチドの細胞毒性
ALLRLペプチドを抗菌薬へ応用するためには、動物細胞や植物細胞に対する細胞毒性を検討する必要がある。そこで、動物由来の培養細胞3種類(Vero、CHO、BHK)に対するALLRLペプチドの細胞毒性を調べた(図8)。詳しくは、70〜90%コンフルエントな培養細胞を、DMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度 200, 100, 50, 25, 12.5, 6.25 μg/ml)で24時間処理し、その後、MTTアッセイにより生細胞の割合を定量した(図8(A)〜(C))。Vero細胞(図8(A))とCHO細胞(図8(C))では、DMSO処理(コントロール)と比較して、生菌数の割合はほとんど変化しなかった。BHK細胞(図8(B))では、200 μg/mlのALLRLペプチドで処理した場合、生菌数の割合が著しく減少したが、コントロールであるDMSO処理でも同程度の減少がみられることから、この減少はペプチドではなく溶媒であるDMSOが原因であると考えられる。なお、本実験ではALLRLペプチドの濃度と同じく、溶媒であるDMSOの量も1/2ずつ段階希釈されている。以上の結果より、ALLRLペプチドは動物由来の培養細胞に対して強い毒性を示さないことが確認された。
ALLRLペプチドを抗菌薬へ応用するためには、動物細胞や植物細胞に対する細胞毒性を検討する必要がある。そこで、動物由来の培養細胞3種類(Vero、CHO、BHK)に対するALLRLペプチドの細胞毒性を調べた(図8)。詳しくは、70〜90%コンフルエントな培養細胞を、DMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度 200, 100, 50, 25, 12.5, 6.25 μg/ml)で24時間処理し、その後、MTTアッセイにより生細胞の割合を定量した(図8(A)〜(C))。Vero細胞(図8(A))とCHO細胞(図8(C))では、DMSO処理(コントロール)と比較して、生菌数の割合はほとんど変化しなかった。BHK細胞(図8(B))では、200 μg/mlのALLRLペプチドで処理した場合、生菌数の割合が著しく減少したが、コントロールであるDMSO処理でも同程度の減少がみられることから、この減少はペプチドではなく溶媒であるDMSOが原因であると考えられる。なお、本実験ではALLRLペプチドの濃度と同じく、溶媒であるDMSOの量も1/2ずつ段階希釈されている。以上の結果より、ALLRLペプチドは動物由来の培養細胞に対して強い毒性を示さないことが確認された。
5.ALLRLペプチドの改変による抗菌作用
ALLRLペプチドを様々に改変したペプチドを化学合成して、黄色ブドウ球菌と枯草菌に対する抗菌作用を調べた。詳しくは、一晩培養した黄色ブドウ球菌と枯草菌をLB液体培地で400倍希釈し、37℃で振盪培養した。OD660が約0.1に到達した時、各ペプチド(MDTLTQKLTVLIAVLELLVALLRLIDLLK(配列番号6)、LELLVALLRL(配列番号13)、LRLLA(配列番号5)、VALLRL(配列番号14)、ALLRLI(配列番号2)、ALLR(配列番号3)、LLRL(配列番号4)、ALLKL(配列番号15)、ALLHL(配列番号16)、ALLRA(配列番号17)、ALLRI(配列番号18))を最終濃度200 μg/mlになるように加え、さらに培養を続けた。小型振盪培養機を用いてOD660の値を20分おきに測定した。ALLRLIペプチドとALLRペプチドは、黄色ブドウ球菌に対して弱い増殖阻害作用を示した。また、枯草菌に対しては、上記のALLRLIペプチドとALLRペプチドに加えて、LLRLペプチドとALLRLペプチドのアミノ酸配列を逆にしたLRLLAペプチドも阻害作用を示した(図9:横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)。なお、ここで見られた阻害作用はどれもALLRLペプチドに比べると弱い。また、これら以外のペプチドは、両細菌に対して阻害作用を示さないことも確認された。
ALLRLペプチドを様々に改変したペプチドを化学合成して、黄色ブドウ球菌と枯草菌に対する抗菌作用を調べた。詳しくは、一晩培養した黄色ブドウ球菌と枯草菌をLB液体培地で400倍希釈し、37℃で振盪培養した。OD660が約0.1に到達した時、各ペプチド(MDTLTQKLTVLIAVLELLVALLRLIDLLK(配列番号6)、LELLVALLRL(配列番号13)、LRLLA(配列番号5)、VALLRL(配列番号14)、ALLRLI(配列番号2)、ALLR(配列番号3)、LLRL(配列番号4)、ALLKL(配列番号15)、ALLHL(配列番号16)、ALLRA(配列番号17)、ALLRI(配列番号18))を最終濃度200 μg/mlになるように加え、さらに培養を続けた。小型振盪培養機を用いてOD660の値を20分おきに測定した。ALLRLIペプチドとALLRペプチドは、黄色ブドウ球菌に対して弱い増殖阻害作用を示した。また、枯草菌に対しては、上記のALLRLIペプチドとALLRペプチドに加えて、LLRLペプチドとALLRLペプチドのアミノ酸配列を逆にしたLRLLAペプチドも阻害作用を示した(図9:横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)。なお、ここで見られた阻害作用はどれもALLRLペプチドに比べると弱い。また、これら以外のペプチドは、両細菌に対して阻害作用を示さないことも確認された。
6.真菌に対するペプチドの効果
真菌の1種であるCandida albicansに対するALLRLペプチドの効果も調べた。詳しくは、まず、サブロー寒天培地上で形成されたC. albicansのコロニーを2つとり、0.5 mlのPBSに懸濁した。次に、懸濁液0.05 mlを4 mlのサブロー液体培地に加え、小型振盪培養機を用いて37℃で振盪培養した。OD660が約0.1に到達した時、40 μlのDMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度200 μg/ml)を加えて、さらに培養した。20分おきにOD660の値を測定した(図10(A):横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)。その結果、ALLRLペプチド添加後速やかに、C. albicansの増殖が阻害された。よって、ALLRLペプチドは、細菌だけでなく真菌に対しても、増殖阻害作用を持つことが強く示唆された。また、ALLRLペプチドを改変した様々なペプチドの効果についても、図10(A)の実験と同様に検討したところ(図10(B) :横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)、ALLRLIペプチド(配列番号2)とALLRペプチド(配列番号3)が、ALLRLペプチドと同等とまではいえないが、C. albicansに対して増殖阻害作用を持つことが確認された。
真菌の1種であるCandida albicansに対するALLRLペプチドの効果も調べた。詳しくは、まず、サブロー寒天培地上で形成されたC. albicansのコロニーを2つとり、0.5 mlのPBSに懸濁した。次に、懸濁液0.05 mlを4 mlのサブロー液体培地に加え、小型振盪培養機を用いて37℃で振盪培養した。OD660が約0.1に到達した時、40 μlのDMSOまたはALLRLペプチド(最終濃度200 μg/ml)を加えて、さらに培養した。20分おきにOD660の値を測定した(図10(A):横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)。その結果、ALLRLペプチド添加後速やかに、C. albicansの増殖が阻害された。よって、ALLRLペプチドは、細菌だけでなく真菌に対しても、増殖阻害作用を持つことが強く示唆された。また、ALLRLペプチドを改変した様々なペプチドの効果についても、図10(A)の実験と同様に検討したところ(図10(B) :横軸は培養時間、縦軸はOD660の値を示す。)、ALLRLIペプチド(配列番号2)とALLRペプチド(配列番号3)が、ALLRLペプチドと同等とまではいえないが、C. albicansに対して増殖阻害作用を持つことが確認された。
配列番号1〜5:ペプチド
配列番号7〜18:ペプチド
配列番号7〜18:ペプチド
Claims (8)
- 以下の(a)、(b)又は(c)のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
(a) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
(b) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗菌又は抗真菌活性を有するペプチド。
(c) 配列番号1〜5に示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、抗菌又は抗真菌活性を有するペプチド。 - 請求項1記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含む、抗菌又は抗真菌薬。
- グラム陽性菌に対して抗菌作用を有するか、及び/又は真菌に対して抗真菌作用を有する、請求項2記載の抗菌又は抗真菌薬。
- 請求項1記載のペプチド、その誘導体若しくはこれらの塩を含む、医薬組成物。
- 細菌感染症及び/又は真菌感染症の治療又は予防に用いられる、請求項4記載の医薬組成物。
- 前記細菌がグラム陽性菌である、請求項5記載の医薬組成物。
- 対象となる被験動物の細菌感染症及び/又は真菌感染症を治療又は予防する方法であって、請求項4〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
- 前記細菌がグラム陽性菌である、請求項7記載の方法。
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CN113150064B (zh) * | 2021-04-14 | 2023-04-11 | 中山大学 | 一种抗菌抗虫肽的人工合成方法及其应用 |
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JP2005318829A (ja) * | 2004-05-07 | 2005-11-17 | Shigeru Kinoshita | 抗菌性ペプチド、該抗菌性ペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びに該抗菌性ペプチドを含有する抗菌剤、抗菌性医薬、点眼薬及び眼感染症疾患検査薬 |
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