JP3660428B2 - 空気入りタイヤ及び空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents

空気入りタイヤ及び空気入りタイヤの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、操安性及び耐摩耗性を高度に維持した上に、市場が要望する優れた氷上性能の向上が可能な空気入りタイヤを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、氷雪上走行性能を向上させること目的として、トレッドに発泡ゴムを用いたスタッドレスタイヤが提案されている。
【0003】
また、気泡が独立して存在する発泡ゴムに比べ、表面にミクロ的な溝が形成されると氷上μが向上することが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ゴム表面にミクロ的な溝を形成する方法としては、特開平4−38207号公報に示されているような短繊維入り発泡ゴムが技術として開示されているが、その中で記述されているようなゴムと接着しない短繊維は、加硫時に熱収縮によりカールしたり、またモールドの溝部、サイプ部に繊維が押し込まれてトレッドゴム中で屈曲してしまう。このため、走行によりトレッドが摩耗してもゴムから繊維が離脱せず、当初の狙いのようなミクロ的な溝が形成されず、氷上μの向上が十分でなかった。なお、短繊維が離脱しない場合の氷上性能を詳細に解析したところ、配向方向に垂直な方向の氷上μは、表面に存在する繊維の引っかき効果により向上することが判明した。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、氷上μを確実に高めることによって市場が要望する優れた氷上性能の向上が可能な空気入りタイヤ及び空気入りタイヤの製造方法を提供することが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、一対のビードコア間にトロイド状をなして跨がるカーカス層のクラウン部外周にベルトとトレッドとを順次配置した空気入りタイヤであって、前記トレッドは、融点が加硫温度以下の低融点材料と融点が加硫温度よりも高い高融点材料とが対になった複合繊維と加硫時に気体を生成する発泡剤とを含むゴムが加硫されることにより形成される無数の略球状独立気泡及び外周部分に保護層が形成された長尺状独立気泡を含んだゴム層を、有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の空気入りタイヤのトレッドは、融点が加硫温度以下の低融点材料と融点が加硫温度よりも高い高融点材料とが対になった複合繊維と加硫時に気体を生成する発泡剤とを含むゴムが加硫されることにより形成される無数の略球状独立気泡及び外周部分に保護層が形成された長尺状独立気泡を含んだゴム層を有しているので、走行によってこのゴム層が摩耗すると略球状独立気泡による凹部と長尺状独立気泡による溝状の凹部が接地表面に形成され、これらの凹部が接地面内の水を吸収することにより氷上性能が向上する。特に、溝状の凹部は接地面内の水分を排水する作用があるため、水分吸収能力が飽和し難く、氷上μを確実に高めることができる。また、硬化した管形状の保護層が長尺状独立気泡の潰れを抑制することができるので、高荷重時においても排水性が確保される。
【0008】
なお、融点が加硫温度以下の低融点材料と融点が加硫温度よりも高い高融点材料とが対になった複合繊維と加硫時に気体を生成する発泡剤とを含むゴム層が加硫されると、発泡剤によるガスが発生しゴム中に独立気泡が生成し始める。このゴム組成物が低融点材料の融点に達すると低融点材料が融解する。低融点材料が融解すると、低融点材料の周囲のゴム中に生成した気泡は融解した低融点材料の中へと移動しやすくなるる。ゴム中に生成した気泡が融解した低融点材料の中へと移動するのは、融解した低融点材料の方がゴムよりも粘度が低いからである。
【0009】
最終的には、低融点材料の中へと移動した気泡同士が繋がって長尺状独立気泡が形成され、低融点材料から離れた部位で発生したガスはその位置に止まる。加硫が終了してタイヤが冷却されると、ゴム中に球状独立気泡と長尺状独立気泡とが形成される。
【0010】
なお、長尺状独立気泡の外周部分には、融解した低融点材料が固化して保護層が形成される。即ち、低融点材料は管形状に固化して保護層となり、外力による長尺状独立気泡の潰れを防止する。なお、高融点材料は融点が加硫温度よりも高いので融解せず、保護層に隣接して残る。特に、ゴムまたは保護層と固着した高融点材料は、路面(例えば、氷上)をひっかく効果がある。なお、ここでいう繊維とは、長さが外径に対して20倍以上の長尺状部材をいう。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記複合繊維を短繊維としたことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の空気入りタイヤでは、複合繊維を短繊維としたので、加硫後に形成される保護層の長さは短いものとなり、摩耗したゴム表面に表れる溝状の凹部は長さが短いものとなる。複合繊維を短繊維として加硫したゴムは、複合繊維を長繊維として加硫したゴムに比較してゴムの存在しない範囲が断続的になるため、偏摩耗が生じ難い。特に偏摩耗性を向上させる必要がある場合には複合繊維の方向をランダムにすることが好ましい。なお、本発明でいう短繊維とは、長さが5mm未満のものをいう。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記複合繊維を長繊維としたことを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の空気入りタイヤでは、複合繊維を長繊維としたので、加硫後に形成される保護層の長さは長いものとなり、摩耗したゴム表面に表れる溝状の凹部は長さが長いものとなる。また、長尺状独立気泡が長くなるので、多量の水を保持することができる。特に、主溝またはサイプに端部が連結された凹部は、吸収した水を主溝またはサイプまで排出できるので効果的である。なお、本発明でいう長繊維とは、長さが5mm以上のものをいう。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記複合繊維をタイヤ周方向に沿って配向したことを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載の空気入りタイヤでは、複合繊維の長手方向をタイヤ周方向に沿って配向したので、ゴム表面に表れる溝状の凹部は、長手方向がタイヤ周方向となり、接地面内の排水性が向上し、氷上ブレーキ性能を向上させることができる。
【0017】
請求項5に記載の空気入りタイヤの製造方法は、融点が加硫温度以下の低融点材料と融点が加硫温度よりも高い高融点材料とが対になった複合繊維と加硫時に気体を生成する発泡剤とを含む生トレッドを生タイヤケースのクラウン部に貼り付け、その後、前記生トレッドの貼り付けられた生タイヤケースを所定のモールドで加硫成形することにより無数の略球状独立気泡及び外周部分に保護層が形成された長尺状独立気泡を含んだトレッドを備えた空気入りタイヤを成形することを特徴としている。
【0018】
請求項5に記載の空気入りタイヤの製造方法では、先ず、融点が加硫温度以下の低融点材料と融点が加硫温度よりも高い高融点材料とが対になった複合繊維と加硫時に気体を生成する発泡剤とを含む生トレッドを生タイヤケースのクラウン部に貼り付ける。次に、この生トレッドを貼り付けた生タイヤケースを所定のモールドで加硫成形すると、発泡剤によってガスが発生しゴム中に独立気泡が生成し始める。このゴム組成物が低融点材料の融点に達すると低融点材料が融解する。低融点材料が融解すると、低融点材料の周囲のゴム中に生成した気泡は融解した低融点材料の中へと移動する。ゴム中に生成した気泡が融解した低融点材料の中へと移動するのは、融解した低融点材料の方がゴムよりも粘度が低いからである。
【0019】
最終的には、低融点材料の中へと移動した気泡同士が繋がって長尺状独立気泡が形成され、低融点材料から離れた部位で発生したガスはその位置に止まる。加硫が終了してタイヤが冷却されると、ゴム中に球状独立気泡と長尺状独立気泡とが形成される。
【0020】
なお、長尺状独立気泡の外周部分には、融解した低融点材料が固化して保護層が形成される。即ち、低融点材料は管形状に固化して保護層となり、外力による長尺状独立気泡の潰れを防止する。なお、ここでいう繊維とは、長さが外径に対して20倍以上の長尺状部材をいう。
【0021】
融点が加硫温度以下の低融点材料と融点が加硫温度よりも高い高融点材料とが対になった複合繊維を発泡剤と共に生トレッドを形成するゴム組成物に所定量混練し、後は通常のタイヤ成形工程を行えば良く、無数の略球状独立気泡及び外周部分に保護層が形成された長尺状独立気泡を含んだトレッドを備えた空気入りタイヤを簡単に形成することができる。
【0022】
このようにして成形された空気入りタイヤを車両に装着して走行させゴム層が摩耗すると、略球状独立気泡による凹部と長尺状独立気泡による溝状の凹部が接地表面に形成される。氷上では、これらの凹部が接地面内の水を吸収するため氷上性能が向上する。特に、溝状の凹部は接地面内の水分を排水する作用があるため、水分吸収能力が飽和し難く、氷上μを確実に高めることができる。また、硬化した管形状の保護層が長尺状独立気泡の潰れを抑制することができるので、高荷重時においても排水性が確保される。なお、高融点材料は融点が加硫温度よりも高いので融解せず、保護層に隣接して残る。特に、ゴムまたは保護層と固着した高融点材料は、路面(例えば、氷上)をひっかく効果がある。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ10を図1乃至図6にしたがって説明する。
【0024】
本実施形態の空気入りタイヤ(サイズ:185/70R13)10は、一対のビードコア間にトロイド状をなして跨がるカーカスのクラウン部外周に補強層としてのベルトとトレッドとを順次配置したラジアル構造の空気入りタイヤである。なお、トレッド以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と変わりないので説明は省略する。
【0025】
図1に示すように、トレッド12には、複数本の周方向溝14及びこの周方向溝14と交差する複数本の横溝16とによって複数のブロック18が形成されている。また、ブロック18には、氷上でのブレーキ性能及びトラクション性能を向上させるために、タイヤ幅方向に沿って延びるサイプ19が形成されている。
【0026】
図2に示すように、トレッド12は、直接路面に接地する上層のキャップ部12Aと、このキャップ部12Aのタイヤ内方に隣接して配置される下層のベース部12Bとから構成されており、いわゆるキャップ・ベース構造とされている。
【0027】
図2及び図3に示すように、キャップ部12Aには、略球形の球状独立気泡22と、長尺状独立気泡24とを無数に含んだ発泡ゴムが使用され、ベース部12Bには低発熱性の発泡されていない通常のゴムが使用されている。
【0028】
図3に示すように、長尺状独立気泡24は、長手方向が実質的にタイヤ周方向(矢印A方向)とされており、外周部分が保護層26で補強されている。なお、長尺状独立気泡24の中には、後述する高融点材料30が配設されている。
(製造方法)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の製造方法を説明する。
【0029】
キャップ部12Aを形成する発泡ゴムは、特定のカーボンブラックを特定の重量部用いたゴム配合物に発泡剤と、図4に示すような融点が空気入りタイヤ10の加硫温度以下の高分子材料からなる低融点材料28と融点が加硫温度よりも高い高融点材料30とを対にした複合繊維32と、を加えて通常のタイヤ製造方にしたがって加熱加圧することで形成される。
【0030】
本実施形態の複合繊維32は、内層が高融点材料30からなり外層が低融点材料28からなる2層構造の短繊維であり、太さが6d、長さが2mmの短繊維である。また、本実施形態の空気入りタイヤ10の加硫温度は165°Cであり、低融点材料28にはポリエステル系共重合体(融点110°C)が、高融点材料30にはPET(融点250°C)が用いられている。なお、複合繊維32の含有量は10phrである。
【0031】
ここで、高融点材料30と低融点材料28との体積の比率は20:80〜80:20程度が好ましく、40:60〜60:40が更に好ましい。なお、高融点材料30と低融点材料28との体積の比率は、材料の種類、加硫温度、その他の条件によって適宜変更されるものである。
【0032】
本実施形態の複合繊維32では、高融点材料30と低融点材料28との体積の比率が60:40である。
【0033】
複合繊維32は、所定量のゴム、配合剤、発泡剤等と共に、例えば、バンバリーミキサーを用いて混練すれば良い。この複合繊維32の混練されたゴムを押出機に入れ、流路断面積が出口に向かって減少する口金から押し出すと、繊維の向き、即ち、繊維の長手方向が押出し方向に沿って除々に揃い、口金から出るときには繊維の長手方向が押出し方向に揃うので、その後、口金から押し出された生のゴム部材を所望の方向にカットすれば、繊維の方向の揃ったゴム部材を得ることができ、これをキャップ部12Aのゴムとして用いることができる。このようにして出来たゴム部材からなる生のキャップ部12Aを、予め生タイヤケースのクラウン部に貼り付けられた生のベース部12Bの上に貼り付け、所定の金型で所定温度、所定圧力のもとで加硫成形することにより本実施形態の空気入りタイヤ10を形成することができる。
【0034】
発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラアミンに尿素を併用した系、また、ベンゼンスルフォニルヒドラジド誘導体、中でもオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドなどが製造加工性を考慮すると好ましい。
【0035】
また、トレッド12が含有するゴム成分は、例えば天然ゴム、ポリイソプロピレンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、低スチレン含有のスチレン・ブタジエン共重合ゴムの単独、または、これからの重合物の2種以上の混合物である。これらの重合物を用いることによりトレッド12は低温において充分にゴム弾性を有することができる。
【0036】
複合繊維32、所定量のゴム、配合剤、発泡剤等とが混練されてできたゴム組成物が金型内で加熱されると、図5(A)に示すように、発泡剤によってガス34が発生し始める。
【0037】
ゴム組成物が低融点材料28の融点に達し、低融点材料28が融解すると、図5(B)に示すように低融点材料28の周囲に発生したガス34が融解した低融点材料28の中へと移動する。
【0038】
最終的には、溶解した低融点材料28のなかに移動したガス34の気泡同士がつながって長尺状の空間が形成され、低融点材料28から離れた部位で発生したガスはその位置に止まり、冷却後には図5(C)及び図5(D)に示すように外周部分が管状の保護層26で補強された長尺状独立気泡24と球状独立気泡22とが形成される。
【0039】
なお、発泡ゴムの発泡率Vsは、5〜50%の範囲が望ましく、好ましくは5〜30%である。発泡ゴムの発泡率Vsは、Vs=(ρ0 /ρ1 −1)×100(%)で表され、ρ1 は発泡ゴムの密度(g/cm3 )、ρ0 は発泡ゴムの固相部の密度(g/cm3 )である。発泡ゴムの発泡率Vsが5%未満では低温時の柔軟性が得られず、50%を超えると耐摩耗性が低下して乾燥路面での耐摩耗性が実用的に不十分となるため好ましくない。
【0040】
球状独立気泡22の平均気泡径は5〜150μmが望ましく、好ましくは10〜100μmである。球状独立気泡22の平均気泡径が5μm未満では氷雪性能の改良効果が少なく、150μmを超えると耐摩耗性能が大幅に低下し、いわゆる耐ヘタリ性が低下し、走行中にブロックの変形、サイプ19の目づまりなどを起こし、雪上性能が低下し、また、耐カット性が低下しブロック欠けが多くなり、さらに、製造時に安定した形状を得ることが困難になるため好ましくない。
【0041】
ここで、長尺状独立気泡24の平均中空径d(=保護層26の内径。図3参照)は、40μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0042】
長尺状独立気泡24の平均中空径dが40μm未満になると、吸水力が低下するため好ましくない。一方、長尺状独立気泡24の平均中空径dが300μmよりも大きくなると、乾燥路面での耐摩耗性や操縦安定性が悪化するため好ましくない。
【0043】
保護層26の硬度は、キャップ部12Aのゴムの硬度(JIS K6301に準拠し、室温にて測定したもの。)よりも10度以上高いことが好ましい。
【0044】
ここで、保護層26の硬度とキャップ部12Aのゴムの硬度との差が10度未満になると、接地圧による長尺状独立気泡24の潰れを抑制できなくなる。
【0045】
なお、保護層26の硬度がキャップ部12Aのゴムの硬度よりも20度以上高い場合には、保護層26のミクロ的な、いわゆるエッジ効果が発揮されるため更に好ましい。
【0046】
また、保護層26の厚さは、2μm以上とすることが好ましい。保護層26の厚さが2μm未満になると、長尺状独立気泡24の潰れ防止効果が低下する。
【0047】
本実施形態のキャップ部12Aのゴムは、発泡率Vsが20%、球状独立気泡22の平均発泡径が25μm、長尺状独立気泡24の平均中空径dが約60μm、保護層26の厚さが2.5μmである。
【0048】
次に本実施形態の作用を説明する。
本実施形態の空気入りタイヤ10を走行させると、図6に示すように、略球形の球状独立気泡22による凹部22Aと長尺状独立気泡24による溝状の凹部24Aとが摩耗の極めて初期の段階でトレッド12の接地面に現れる。
【0049】
この空気入りタイヤ10を氷上で走行させると、接地圧によってタイヤと氷上との間に水膜が生じるが、トレッド12の接地面に形成された無数の凹部22A,24Aによって接地面内の水分は素早く吸収される。さらに、長手方向が実質的にタイヤ周方向となっている溝状の凹部24Aによって接地面内のタイヤ回転方向後側への排水性が向上するため、特に氷上ブレーキ性能が向上する。
【0050】
また、この溝状の凹部24Aは、外周部分が保護層26で補強されているため高荷重時でも潰れ難く、吸水性及び高い排水性を常に維持することができる。
【0051】
さらに、本実施形態の空気入りタイヤ10では、接地面に露出した保護層26によって引っかき効果が生じるため、この引っかき効果によって横方向の氷上μが向上し、氷上ハンドリングが良好になる。
【0052】
また、特に、ゴムまたは保護層26と固着した短繊維状の高融点材料30は路面(例えば、氷上)をひっかく効果があるため、横方向での引っかき効果による氷上性能が向上する。
【0053】
ここで、所定長さの中空繊維をゴムに混練し、このゴムを加硫することで保護層26と同様のものをゴム中に存在させることも可能であるが、成形時の圧力、ゴム流れ、温度等によって中空繊維が潰れてしまい、実際には管形状を保つことができず、十分な吸水性能及び排水性能が得られない。
【0054】
一方、本発明の空気入りタイヤの製造方法によれば、成形時の高温、高圧下のもとで中側より管形状を形成するので、潰れのない管形状の保護層26を形成することができる。
【0055】
なお、前記実施形態では、キャップ部12Aのゴムに分散させた複合繊維32が長さ2mmの短繊維であったが、複合繊維32は長さが5mm以上の長繊維であっても良い。複合繊維32を長繊維とすることにより、長い長尺状独立気泡24を形成することができ、摩耗したゴム表面に表れる溝状の凹部24Aは長さが長いものとなり、多量の水を吸収し保持することができる。特に、周方向溝14、横溝16、サイプ19等に端部が連結された溝状の凹部24Aはは、吸収した水を周方向溝14、横溝16、サイプ19まで排出できるので効果的である。
【0056】
また、キャップ部12Aのゴムに分散させた複合繊維32の方向をタイヤ軸方向としても良く、ランダムにしても良い。
【0057】
複合繊維32の方向をタイヤ軸方向とすれば溝状の凹部24Aの方向がタイヤ軸方向となり、タイヤ軸方向のエッジ成分が増加するため氷上のトラクション性能を向上させることができる。
【0058】
また、前記実施形態の複合繊維32は、高融点材料30からなる断面円形の内層と低融点材料28からなる環状の外層とからなる2層構造であったが、複合繊維32は少なくとも融点が空気入りタイヤ10の加硫温度以下の高分子材料からなる低融点材料28と、融点が加硫温度よりも高い高融点材料30とが対になっていれば良く、例えば、図7に断面図で示すように高融点材料30を外層、低融点材料28を内層とした形状であっても良い。また、図8に断面図で示すように内層を星型等の円形以外の形状としても良く、図示はしないが外層の外形も円形以外の形状(例えば、四角形、6角形、楕円形等)としても良い。
【0059】
さらに、複合繊維32は、図9に示すように低融点材料28と高融点材料30とを撚り合わせたものでも良く、図10に断面図で示すように低融点材料28と高融点材料30とを交互に積層したものでも良く、図11に断面図で示すように低融点材料28の中に複数の高融点材料30を分散させたもの、或いは高融点材料30の中に複数の低融点材料28を分散させたものでも良く、図12に断面図で示すように断面半円形の低融点材料28と断面半円形の高融点材料30とが組み合わされたものでも良い。
【0060】
また、前記実施形態では、空気入りタイヤ10の加硫温度以下の低融点材料28としてポリエステル系共重合体を用いたが、空気入りタイヤ10の加硫温度以下で融解するものであればポリエステル系共重合体以外の材質でも良い。さらに、前記実施形態では、高融点材料30としてPETを用いたが、融点が空気入りタイヤ10の加硫温度よりも高いものであればPET以外の材質でも良い。
【0061】
なお、ポリエステル系共重合体は、共重合させる相手の種類を変更したり、共重合比を変えることによって融点を変更することができる。
【0062】
また、前記実施形態では、保護層26で補強された長尺状独立気泡24と球状独立気泡22とを含むゴムをキャップ部12Aに用いた例を示したが、保護層26で補強された長尺状独立気泡24と球状独立気泡22とを含むゴム層がトレッド12に少なくとも1層設けられていれば良く、配置部位は最外層でなくても良い。例えば、摩耗中期〜後期において長尺状独立気泡24と球状独立気泡22とを含むゴム層が露出するようにすれば、溝の減少による排水効果の減少を補うことも可能となる。
【0063】
また、前記実施形態の空気入りタイヤ10は、いわゆる乗用車用であったが、本発明は乗用車用タイヤ以外、例えば、トラック・バス用のタイヤにも適用できるのは勿論である。
【0064】
また、前記実施形態では、加硫温度が165°Cであったが、ゴムの材質、タイヤの種類等によって加硫温度は適宜変更される。例えば、トラック・バス用のタイヤの加硫温度は145°Cである。
【0065】
なお、本発明は、サイプ、ブロック形状等、タイヤ形状との組み合わせは自由である。
(試験例)
従来タイヤ、本発明の適用された実施例タイヤ6種、比較例タイヤ1種を用い、氷上ブレーキ性能及び氷上フィーリング性能を比較した。
【0066】
氷上ブレーキ性能の試験方法
タイヤを国産2000CCクラスの乗用車に装着して氷上平坦路を走行させ、時速30km/hの時点でブレーキを踏んでタイヤをロックさせ、停止するまでの距離を測定した。結果は、距離の逆数を従来タイヤを100として指数表示した。なお、数値が大きいほど氷上ブレーキ性能が良いことを示す。
【0067】
氷上フィーリング性能の試験方法
タイヤを国産2000CCクラスの乗用車に装着し、氷上テストコースを走行させ、氷上ハンドリングをフィーリングで評価した。
【0068】
結果は、従来タイヤを100として指数表示した。なお、数値が大きいほど氷上フィーリング性能が良いことを示す。
【0069】
次に、実施例タイヤ1〜6、従来タイヤ及び比較例タイヤを説明する。
各タイヤ共に、タイヤサイズは185/70R13であり、何れのタイヤのトレッドにも、タイヤ幅方向に4個のブロックが配列されており、ブロックのサイズはタイヤ周方向の寸法が35mm、タイヤ幅方向の寸法が30mmである。また、ブロックに形成されるサイプは、幅が0.4mmであり、タイヤ周方向の間隔が約7mmとされている。
【0070】
なお、その他の仕様と、氷上ブレーキ性能及び氷上フィーリング性能の試験結果を合わせて表1に示す。
【0071】
【表1】
Figure 0003660428
【0072】
上記の表1に示すように、本発明の適用された実施タイヤ1乃至6は、従来タイヤ及び比較例タイヤに比べて何れも高い氷上ブレーキ性能が得られ、さらに実施タイヤ2及び3は氷上フィーリング性能も向上した。
【0073】
ここで、実施例タイヤ2及び実施例タイヤ3の氷上ブレーキ性能及び氷上フィーリングが高くなった理由は、融点が高くなる程保護層26の硬度が高くなり、保護層26の補強効果及び引っかき効果が向上したためである。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、氷上μを確実に高めることによって市場が要望する優れた氷上性能の向上が得られる、という優れた効果を有する。
【0075】
請求項2に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、偏摩耗を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0076】
請求項3に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、接地面に形成された凹部に多量の水を保持することができ、水分の吸収性能を向上できる、という優れた効果を有する。また、主溝またはサイプに端部が連結された凹部は、吸収した水を主溝またはサイプまで排出できるのでより効果的である。
【0077】
請求項4に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、接地面内の排水性が向上し、氷上ブレーキ性能を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0078】
請求項5に記載の空気入りタイヤの製造方法によれば、氷上μを確実に高めた空気入りタイヤを簡単に製造できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【図2】ブロックのタイヤ周方向に沿った断面図である。
【図3】キャップ部を構成するゴムの拡大断面図である。
【図4】複合繊維の一例を示す斜視図である。
【図5】(A)乃至(C)は気泡の生成過程を説明する断面図であり、(D)は長尺状独立気泡の軸直角断面図である。
【図6】摩耗したトレッド接地面付近の拡大断面図である。
【図7】複合繊維の他の一例を示す断面図である。
【図8】複合繊維のさらに他の一例を示す断面図である。
【図9】複合繊維のさらに他の一例を示す斜視図である。
【図10】複合繊維のさらに他の一例を示す断面図である。
【図11】複合繊維のさらに他の一例を示す断面図である。
【図12】複合繊維のさらに他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
12 トレッド
22 球状独立気泡
24 長尺状独立気泡
28 低融点材料
30 高融点材料
32 複合繊維

Claims (5)

  1. 一対のビードコア間にトロイド状をなして跨がるカーカス層のクラウン部外周にベルトとトレッドとを順次配置した空気入りタイヤであって、
    前記トレッドは、融点が加硫温度以下の低融点材料と融点が加硫温度よりも高い高融点材料とが対になった複合繊維と加硫時に気体を生成する発泡剤とを含むゴムが加硫されることにより形成される無数の略球状独立気泡及び外周部分に保護層が形成された長尺状独立気泡を含んだゴム層を、有することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記複合繊維を短繊維としたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記複合繊維を長繊維としたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記複合繊維をタイヤ周方向に沿って配向したことを特徴とした請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 融点が加硫温度以下の低融点材料と融点が加硫温度よりも高い高融点材料とが対になった複合繊維と加硫時に気体を生成する発泡剤とを含む生トレッドを生タイヤケースのクラウン部に貼り付け、その後、前記生トレッドの貼り付けられた生タイヤケースを所定のモールドで加硫成形することにより無数の略球状独立気泡及び外周部分に保護層が形成された長尺状独立気泡を含んだトレッドを備えた空気入りタイヤを成形することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
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