JP3660238B2 - 時計用文字板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属感が現れて複雑な模様を有する時計用文字板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
時計用文字板に各種の模様を施して装飾性を高めたり、或いは模様の種類を変えてバリエーションを増やしたりすることが行われている。また、それらの模様を金属板に施して金属感を出現させ、高級感を持たせることも行われている。そして、これら各種の模様としては旭光模様,梨地模様,ストライプ模様,サークル模様などの比較的単純模様から格子模様,編み目模様,幾何学模様などの複雑な模様まで各種幅広く選択使用されている。
【0003】
従来時計用文字板に、これらの模様を形成する方法としては色々な方法が取られている。特に複雑な形状の模様を形成する場合の一つの方法としては図9及び図10に示す製造方法が取られている。図9及び図10は模様を有する文字板の製造方法を説明する工程図であり、要部断面の拡大図を示している。
【0004】
先ず図9(a)は上面に模様101aを有するプラスチック板101を射出成形方法で形成した図を示している。これは、射出成形装置と金型を使って形成するが、模様101aは金型に形成した模様を転写することによって得られる。
【0005】
次に、図9(b)はプラスチック板101の模様101a上に蒸着方法によって金属蒸着膜102を形成した図を示している。これは、蒸着装置を使って金属、例えばニッケル金属などを1000Å位の厚みに蒸着を施して金属蒸着膜102を形成する。
【0006】
次に、図9(c)は、前記図9(b)において形成した金属蒸着膜102の上に離型剤103を塗布した図を示している。この離型剤103は離型剤液に浸漬することによって形成される。
【0007】
次に、図9(d)は離型剤103を塗布した金属蒸着膜102の上に厚メッキを施して電鋳層104を形成した図を示している。この電鋳層104はニッケルメッキや銅メッキなどの金属メッキを長時間施することによって得られ、概ね400〜500μm位の厚みに形成する。
【0008】
次に、図9(e)は、前記図9(d)で形成した電鋳層104の上面を切削し、上面を平坦面104aに仕上げた図を示している。切削工具を使って上面を切削し平坦な面に仕上げる。切削方法以外の方法としては研削方法で平坦な面に仕上げることも行われている。
【0009】
次に、図9(f)は電鋳層104をプラスチック板101から剥離して、上記図9(e)で切削して形成した平坦面104aを下面側に向けた状態を示した図である。電鋳層104は離型剤103によって容易に剥離することができる。また、図9(f)に示した電鋳層104の剥離した面、即ち上面側にはプラスチック板101に形成した模様101aの転写模様104bが転写によつて形成される。
【0010】
次に、図10(g)はプレス方法によって文字板の中心孔104cや植字用小孔104e、文字板の外形104dなどの文字板形状を形成した図を示している。この中心孔104cや植字用小孔104e、外形形状104dは電鋳層104をプレスすることで形成する。
【0011】
次に、図10(h)は電鋳層104の下面、即ち、平坦面104aの所定の2箇所に足105を溶接固定した図を示している。この足105は文字板を時計のムーブメントに固定するために設けるもので、電気溶接方法などで足105を溶接する。
【0012】
次に、図10(i)は前記図10(h)において、足105を固定した電鋳層104にメッキ106を施したものである。このメッキ106は防錆目的や装飾目的に施すもので、ニッケルメッキやパラジウムメッキ、金メッキなどの各種のメッキが選択され、0.数μ〜数μの厚みに施される。
【0013】
次に、図10(j)は電鋳層104の模様104bを形成した上面側、メッキ106の上に透明或いは着色を施した透過性の有る塗料膜107を形成し、更に、この塗料膜107の上面を研磨して光沢のある平滑面に仕上げた図を示している。この塗料膜107は印刷方法や塗装方法などで形成する。また、上面の平滑面は研磨装置を用いて研磨することによって得られる。
【0014】
次に、図10(k)は塗料膜107の平滑な上面に時字やマークなどの指標108を形成した図を示している。この指標108は印刷方法や金属から出来た指標を接着或いは植字方法などで形成する。
【0015】
以上のような方法で形成された時計用文字板100は図10(k)に示すように電鋳層104の上面に模様104bが転写によって形成され、更にその上に装飾目的のメッキ106や透過性塗料膜107を形成していることから模様に金属感が現れる。また、その模様も金型からの転写方法によって形成しているため非常に綺麗な模様が形成され、さらに複雑で微細な形状の模様であっても正確に精度良く転写形成される。この方法は、金型に形成した模様から転写する方法を取っていることから、金型に精度の良い模様を1個形成するだけで良く、その金型から非常に多くの生産量を得ることがてきるので量産性に適した製造方法である。
【0016】
次に、図11に示す時計用文字板200は、上記とは異なる方法によって形成した従来の文字板の構成を示すものである。この時計用文字板200は、上記図9及び図10(g)における工程で形成した平坦な下面104aと上面に模様104bを有する電鋳層104に更に図10(i)、(j)におけるメッキ106と塗料膜107を形成し、これを足205が取付けられた金属基板201に接着固定し、最後に指標108を印刷方法や接着方法、或いは植字方法などによって形成したものである。この方法によって形成する電鋳層104は薄くて良く、100〜200μmの厚みがあれば良いものである。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べた方法で形成する時計用文字板の模様は金属感を有しており、非常に複雑な形状の模様や非常に微細な模様も精度良く、しかも量産性をもって形成することができる。しかしながら、上記で述べたごとく非常に工程数も多く、また、長時間の電鋳メッキを行うので文字板の製作手番が非常に長くなる。当然ながら、このことはコスト的にも高いものとなっていた。
【0018】
また、離型剤の塗布が不十分な場合などは電鋳層がうまく剥離されずに不良になることも多く、歩留まりの面でも問題を有していた。
【0019】
また、電鋳メッキ液の管理も大変で、電鋳層の硬度がHv200以上になってしまうと、プレス作業において植字用小孔明けにプレスの矢などが折れると云う問題も発生するものであった。
【0020】
また、足を溶接固定するのにスポット溶接方法を取る。これは、電鋳メッキで形成した文字板の光沢性をそのまま保持するためであるが、このスポット溶接法では溶接強度を高めようとすると溶接部分の文字板の表面側に凸部が発生し、外観上良くないと云う問題も有していた。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決することを目的にして成されたものである。そして、その目的を達成するために、本発明の請求項1に係る時計用文字板の製造方法は、プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に金属メッキ膜を形成する工程と、前記金属メッキ膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の請求項2に係る時計用文字板の製造方法は、プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に金属メッキ膜を形成する工程と、前記金属メッキ膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程と、前記時計用文字板を金属基板に貼合わせる工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の請求項3に係る時計用文字板の製造方法は、プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の請求項4に係る時計用文字板の製造方法は、プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程と、前記時計用文字板を金属基板に貼合わせる工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の請求項5に係る時計用文字板の製造方法は、プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に金属メッキ膜を形成する工程と、前記金属メッキ膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されるとともに、前記金属メッキ膜は、前記2箇所の突出部に形成された金属蒸着膜を電気接点とした電気メッキ法によって形成されることを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の請求項6に係る時計用文字板の製造方法は、プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に金属メッキ膜を形成する工程と、前記金属メッキ膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程と、前記時計用文字板を金属基板に貼合わせる工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されるとともに、前記金属メッキ膜は、前記2箇所の突出部に形成された金属蒸着膜を電気接点とした電気メッキ法によって形成されることを特徴とするものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る時計用文字板の要部断面図である。図2及び図3は図1における時計用文字板の製造方法を説明する工程説明図で、要部断面図を示している。
【0029】
上記図1において、この時計用文字板10は、2本の足11bが付いて上面に模様11aが設けられたプラスチック基板11と、上面の模様11a面に施した金属蒸着膜12と、この金属蒸着膜12の上に施した金属メッキ膜13と、この金属メッキ膜13上に形成した上面平滑な透過性保護膜14と、この透過性保護膜14の上面に設けた時字,マークなどから成る指標15とで構成される。
【0030】
上記プラスチック基板11はポリカーボネイト樹脂などからできており、射出成形方法で上面の模様11aと2本の足11bを一体に成形した状態で形成する。このプラスチック基板11は上記以外の材料としてガラスファイバー入りのエポキシ樹脂,アクリル樹脂,ABS樹脂,ナイロンなど各種の材料を選択することができる。また、上面の模様11aは金型に形成した模様から転写されて形成される。この模様11aは梨地模様,旭光模様,格子模様,編み目模様,幾何学模様など各種の模様を選択することができる。上記2本の足11bは文字板を時計用ムーブメントブロックに取付固定するためのものである。また、プラスチック基板11の中心部に小孔11cを形成するが、これは時計指針を取り付けるための小孔である。
【0031】
プラスチック基板11の模様11a上に施す金属蒸着膜12は、主として後述する金属メッキを施すために設けるもので、電気メッキを行う導通の役目を成す。この金属蒸着膜12は導電性の良い銀,銅などの金属材料を使用するのが好ましいが、ニッケル,錫,金などの各種の金属材料を選択することもでき、略1000Å位の厚みに施される。1000Å位の厚みの金属蒸着膜12は光沢感が現れる。
【0032】
金属蒸着膜12の上に施す金属メッキ膜13は、耐蝕目的や装飾目的、及び金属感を出す目的などのために施すもので、これもニッケルメッキや銀メッキ,クロムメッキ,パラジウムメッキ,金メッキなど各種のメッキを選択することができる。この金属メッキ膜厚は厚くても2μm有れば十分である。このように、金属蒸着膜12の上に金属メッキ13を形成したもとでは光沢感を持った金属感が現れる。
【0033】
金属メッキ膜13の上に施す透過性保護膜14は、模様11aを傷などから保護する目的と金属メッキ膜13の耐蝕性を良くする目的で設ける。この透過性保護膜14は透明或いは僅かに着色された透過性の保護膜で、ポリウレタン樹脂やアクリル樹脂などの樹脂が選択される。また、この透過性保護膜14の上面は研磨されて光沢のある平滑面に仕上げられる。
【0034】
時字やマークを成す指標15は印刷方法や金属指標を接着方法或いは植字方法などで形成する。
【0035】
以上の構成を成す時計用文字板10は、金属蒸着膜12と金属メッキ膜13によって光沢感のある金属感を十分に出現させる。また、形成されたその模様によって装飾性を非常に高める。また、その模様も金型からの転写方法によって形成されることから複雑な形状や微小な形状であっても精度良い形状が得られる。また、各種のメッキを施すことができるので貴金属感色なども出すことも容易である。模様の種類やメッキ金属色調も色々選択することができるので、そのバリエーションも非常に増やすことができる。そして、従来の電鋳メッキ方法で形成した時計用文字板と何ら遜色のない同等の外観品質を得ることができる。
【0036】
次に、上記構成の時計用文字板10の製造方法を図2及び図3によって説明する。図2(a)は、金型と射出成形装置を用い、射出成形方法によって下面に2本の足11bと上面に模様11aを一体に成形したプラスチック基板11のブランク11Aの断面図を示しており、図2(b)はその正面図を示している。模様11aは金型に施した模様から転写方法によって成形するが、上面一定の範囲の内周部に形成している。また、このブランク11Aは外周部の対向する位置2箇所に突出部11m、11nを形成している。この2箇所の突出部11m、11nは後述するメッキ工程において電気メッキするための引掛け金具に引掛けるために形成するものである。
【0037】
次に、図2(c)は蒸着方法によってブランク11Aの模様11a面側に金属蒸着を施し、金属蒸着膜12を形成した図を示している。金属蒸着膜12は突出部11m、11nの範囲をも含んで形成する。
【0038】
次に、図2(d)は、電気メッキ方法によって金属蒸着膜12の上に金属メッキを施し、金属メッキ膜13を形成した図を示している。ここでのメッキ厚は前述したように厚くても2μm位で良い。ブランク11Aの金属蒸着膜12を形成した2箇所の突出部11m、11n部分をメッキ用引掛け金具に引掛けてメッキ浴液層に浸漬し、引掛け金具を介して金属蒸着膜12に電流を導通させることによって金属蒸着膜12上に金属メッキを施す。従って、2箇所の突出部11m、11nに形成された金属蒸着膜12は金属メッキ膜13を形成するための電気接点の役目をなす。
【0039】
次に、図3(e)は、金属メッキ膜13を形成した面側に透過性保護膜14を印刷方法または塗装方法によって形成した図を示している。金属メッキ膜13を形成した後、金属メッキ膜13の耐蝕性などを良くするために透過性保護膜14を印刷方法または塗装方法によって形成する。
【0040】
次に、図3(f)は、金型とプレス装置を用い、プレス方法によって中心孔11c及び外形11dをプレスして文字板形状のプラスチック基板11を形成した図を示している。この時、指標の植字用の小孔(図中略)も必要とする場合はプレスして成形する。透過性保護膜14を形成した後プレスして文字板の所定形状に形成する。
【0041】
次に、図3(g)は、研磨装置を用いて前記透過性保護膜14の上面14aを研磨し、平滑面に仕上げた図を示している。プレスした後研磨して平滑な上面に仕上げるので傷などのない綺麗な文字板表面が得られる。
【0042】
次に、図3(h)は、透過性保護膜14の平滑な上面14aに印刷方法または接着方法、或いは植字方法などで時字やマークなどの指標15を形成した図を示している。最後に指標などを形成して文字板を完成させる。
【0043】
以上説明した製造方法を取ることによって、図1に示した構成の時計用文字板10を得ることが出来る。このような製造方法では、従来行っていた数100μにも及ぶ電鋳メッキを行う必要もなく、従来と全く同じ外観品質の文字板が得られる。当然ながら工程数も少なくて製作コストも安いものが得られる。また、メッキ厚も薄いのでプレス作業においてプレスの矢が破損する心配もない。
【0044】
また、プラスチック基板に形成する模様も成形金型から転写して形成しているので、複雑な形状も微細な形状も全く同じ精度で転写形成することができ、従来の電鋳メッキで形成した模様と全く変わらぬ形状精度を得ることができる。
【0045】
また、メッキも各種のメッキや模様も各種の模様が選択できるので、それらを組み合わせたりして装飾性を高めたり、デザインバリエーションを増やすことができる。
【0046】
また、本実施の形態においては、透過性保護膜の上面を光沢のある平滑面に仕上げているが、単に透過性保護膜を形成した状態のままで使用することもできる。平滑面に仕上げると模様に深みを帯びて高級感を感じさせる。
【0047】
また、本実施の形態においては、プラスチック基板のブランクの外周部の対向した2箇所に突出部を設け、その突出部にも金属蒸着膜を形成して、この2箇所の突出部を利用してメッキ工程における引掛け金具への取付と電流の導通接点に利用している。このように突出部を設けると引掛け金具への取付易さが生まれて作業性を良くすることができる。
【0048】
また、プラスチック基板にはムーブメントとの取付け用の2本の足を射出成形時に一体的に形成している。このように2本の足まで一体的に設けたプラスチック基板そのものを使用することによって、従来のようにスポット溶接で接着固定する必要もなくなるので溶接による品質問題も発生せず、しかも安く足を形成することができる。
【0049】
以上説明した製造方法は、射出成形方法によってプラスチック基板11の模様11aを金型から転写した場合の製造方法を述べたものであるが、模様11aを形成する他の製造方法として図4に示した方法を取ることができる。即ち、プラスチック基板の模様をホットプレス方法によって形成する形成方法である。図4において、外周部の対向する2箇所に突出部を有するプラスチック基板のブランク21Aを平坦な下型30上に載置し、一定の加熱の下で、その下面に模様31aが形成された上型31を上方から一定の加圧力でブランク21A上に押し付けると、ブランク21Aの上面に上型31の模様31aが転写される。例えば、ポリカーボネイト樹脂で形成したプラスチック基板のブランク21を約160°〜180°C位に加熱した下型、上型で所定の圧力の基で所定時間プレスすることによってブランク21Aに模様が転写される。このホットプレス方法で形成したプラスチック基板のブランク21Aは、上記図2(a)及び(b)で説明したプラスチック基板11のブランク11Aと全く変わらぬ形状のものが得られる。
【0050】
図5は本発明の第2の実施形態に係わる時計用文字板の要部断面図である。また、図6及び図7はその製造方法を説明する工程図で、要部断面図を示している。
【0051】
図5において、この時計用文字板50は、2本の足56bを設けた金属基板56と、金属基板56に接着固定されてその上面に模様51aを形成したプラスチック基板51と、プラスチック基板51の模様51a上に施した金属蒸着膜52と、この金属蒸着膜52上に施した金属メッキ膜53と、この金属メッキ膜53上に形成した平滑面を有する透過性保護膜54と、この透過性保護膜54の平滑な上面に形成した時字やマークなどから成る指標55とで構成される。
【0052】
ここで、金属基板56は真鍮などの金属板をプレス方法によって所定の文字板形状に形成したもので、その下面2箇所に足を電気溶接法で溶接固定してある。
【0053】
プラスチック基板51は、射出成形方法によって形成し、その上面には金型から転写した模様51aが形成される。尚、模様51aは前記図4において説明したホットプレス方法によって形成することもできる。
【0054】
金属蒸着膜52、金属メッキ膜53、透過性保護膜54、及び指標55は、前記第1の実施形態で説明したものと全く同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0055】
次に、上記構成の時計用文字板50の製造方法を図6及び図7に基づいて説明する。図6(a)は射出成形方法によって模様51aを有するプラスチック基板のブランク51Aを形成した図を示しており、図6(b)はその正面図を示している。外周部の対向する2箇所に突出部51m、51nも形成している。
【0056】
次に、図6(c)は、ブランク51Aの模様51a面側に蒸着方法によって金属蒸着膜52を形成した図を示している。射出成形方法によって形成したブランク51Aに蒸着装置で金属蒸着を施し、金属蒸着膜52を形成する。
【0057】
次に、図6(d)は、金属蒸着膜52上に金属メッキ膜53を形成した図を示している。金属蒸着膜52を形成したブランク51Aをメッキ用引掛け金具に引掛け、メッキ浴液漕に浸漬して電気メッキすることによって金属メッキ膜53が形成される。
【0058】
次に、図7(e)は、金属メッキ膜53を形成したブランク51Aに透過性保護膜54を形成した図を示している。透過性塗料を印刷または塗装することによって形成する。
【0059】
次に、図7(f)は、プレス方法によってブランク51Aを文字板形状のプラスチック基板51に仕上げた図を示している。プレス装置を使って中心孔51cや外形51dをプレスして文字板形状に仕上げる。
【0060】
次に、図7(g)は、文字板形状に仕上げたプラスチック基板51を金属基板56に接着固定した図を示している。金属基板56は金属板をプレスして文字板形状に仕上げ、2本の足を溶接固定して得られる。
【0061】
次に、図7(h)は、金属基板56に固定したプラスチック基板51の透過性保護膜54の上面54aを、研磨方法によって光沢のある平滑面に仕上げた図を示している。研磨装置を使って研磨することで平滑な上面54aが得られる。
【0062】
次に、図7(i)は、透過性保護膜54の平滑な上面54aに時字やマークの指標55を形成した図を示している。印刷方法や接着方法、或いは植字方法で指標55を形成することができる。
【0063】
以上説明した製造方法を取ることによって、金属板を備えた強固な時計用文字板50を得ることができる。このような製造方法では、従来行っていた数100μにも及ぶ電鋳メッキを行う必要もなく、従来と全く同じ外観品質の文字板が得られる。当然ながら工程数も少なくて製作コストも安いものが得られる。また、メッキ厚も薄いのでプレス作業においてプレスの矢が破損する心配もない。
【0064】
また、プラスチック基板に形成する模様も成形金型或いはホットプレス上型から転写して形成しているので、複雑な形状も微細な形状も全く同じ精度で転写形成することができ、従来の電鋳メッキで形成した模様と全く変わらぬ形状精度を得ることができる。
【0065】
また、メッキも各種のメッキや模様も各種の模様が選択できるので、それらを組み合わせたりして装飾性を高めたり、デザインバリエーションを増やすことができる。
【0066】
図8は本発明の第3の実施形態に係わる時計用文字板を示したものである。図8において、この時計用文字板60は、下面に2本の足61bと上面に模様61aを形成したプラスチック基板61と、模様61a面上に形成した金属蒸着膜62と、金属蒸着膜62上に形成した透過性保護膜64と、時字などの指標65とで構成されている。
【0067】
前記時計用文字板60は、前述した第1の実施形態や第2の実施形態で説明した金属メッキ膜を設けていない。ここでは、金属メッキ膜に代わって金属蒸着膜62がその役割を果たしている。例えば、銀蒸着膜或いは金蒸着膜などはそれ自体に貴金属感が現れるので、あえてその上に銀メッキや金メッキを施して貴金属感を出す必要はないからである。
【0068】
上記構成の時計用文字板60の製造方法は、前述の第1の実施形態において、図2(d)で説明したメッキ工程を省いたものである。
【0069】
同様に、前述の第2の実施形態においても、金属蒸着膜等の仕様によってはメッキ工程を省くこともできるものである。
【0070】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、成形金型或いはホットプレス金型から転写して模様を形成したプラスチック基板そのものを文字板形状に形成し、その模様上に金属蒸着膜や金属メッキ膜を形成して文字板を形成する製造方法を取れば、従来行っていた数100μにも及ぶ電鋳メッキを行う必要もなく、非常に安いコストで従来と全く同じ外観品質の文字板が得られる。また、メッキ厚も薄いのでプレス作業においてプレスの矢が破損する心配もない。
【0071】
また、プラスチック基板に形成する模様も成形金型或いはホットプレス金型から転写して形成するので、複雑な形状も微細な形状も全く同じ精度で転写形成することができ、従来の電鋳メッキで形成した模様と全く変わらぬ形状精度を得ることができる。
【0072】
また、メッキや模様を各種の中から選択し、またそれらを組み合わせることで装飾性が高められると共に、デザインバリエーションを増やすことができる。
【0073】
また、金属蒸着膜や金属メッキ膜の仕様によっては金属メッキを省くこともできるので更にコストを安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る時計用文字板の要部断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る時計用文字板の製造方法の前半部分を示す工程説明図である。
【図3】第1の実施形態に係る時計用文字板の製造方法の後半部分を示す工程説明図である。
【図4】プラスチック基板に模様を形成する他の製造方法を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る時計用文字板の要部断面図である。
【図6】第2の実施形態に係る時計用文字板の製造方法の前半部分を示す工程説明図である。
【図7】第2の実施形態に係る時計用文字板の製造方法の後半部分を示す工程説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る時計用文字板の要部断面図である。
【図9】従来における時計用文字板の製造方法の前半部分を示す工程説明図である。
【図10】従来における時計用文字板の製造方法の後半部分を示す工程説明図である。
【図11】他の製造方法によって形成した従来の時計用文字板の構成図である。
【符号の説明】
10、50、60 時計用文字板
11、51、61 プラスチック基板
11A、51A ブランク
11a、51a、61a 模様
11b、56b、61b 足
11m、11n、51m、51n 突出部
12、52、62 金属蒸着膜
13、53 金属メッキ膜
14、54、64 透過性保護膜
14a、54a 上面
15、55、65 指標
56 金属基板

Claims (6)

  1. プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に金属メッキ膜を形成する工程と、前記金属メッキ膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されることを特徴とする時計用文字板の製造方法。
  2. プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に金属メッキ膜を形成する工程と、前記金属メッキ膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程と、前記時計用文字板を金属基板に貼合わせる工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されることを特徴とする時計用文字板の製造方法。
  3. プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されることを特徴とする時計用文字板の製造方法。
  4. プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程と、前記時計用文字板を金属基板に貼合わせる工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されることを特徴とする時計用文字板の製造方法。
  5. プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に金属メッキ膜を形成する工程と、前記金属メッキ膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されるとともに、前記金属メッキ膜は、前記2箇所の突出部に形成された金属蒸着膜を電気接点とした電気メッキ法によって形成されることを特徴とする時計用文字板の製造方法。
  6. プラスチック基板の片面に模様が形成されたブランクを形成する工程と、前記ブランクの模様形成面に金属蒸着膜を形成する工程と、前記金属蒸着膜上に金属メッキ膜を形成する工程と、前記金属メッキ膜上に透過性保護膜を形成する工程と、前記透過性保護膜が形成されたブランクを時計用文字板に形成する工程と、前記時計用文字板を金属基板に貼合わせる工程とを有し、前記プラスチック基板のブランクは、外周部の対向した2箇所に突出部を形成しており、この2箇所の突出部にも前記金属蒸着膜が形成されるとともに、前記金属メッキ膜は、前記2箇所の突出部に形成された金属蒸着膜を電気接点とした電気メッキ法によって形成されることを特徴とする時計用文字板の製造方法。
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