JP3660040B2 - Rh真空脱ガス装置を用いた溶鋼の脱硫方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、RH真空脱ガス装置を用いて極低硫域まで効率よく迅速に溶鋼を脱硫する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶鋼の二次精錬に際し、RH真空脱ガス装置を用いて真空槽内の溶鋼表面に塊状の脱硫剤を自由落下させて脱硫する方法が知られている。この方法では、溶鋼と脱硫剤との反応界面積が小さいため脱硫効率が悪く、[S]≦5ppmの極低硫鋼を安定的に溶製することが困難であった。脱硫効率を上げるためには、脱硫剤の原単位を増やさざるを得ず、浸漬管,下部槽等を構築している耐火物の溶損が激しくなる。
また、脱硫効率を向上させるため、粉体インジェクションラインを接続したノズルや還流ガス吹込み用の浸漬ランスから粉体状の脱硫剤を溶鋼に吹き込む方法が採用されている。しかし、OBノズルや浸漬ランスの寿命が短く、それらの管理が困難であり、更に吹込みガスと脱硫剤の両方を安定的に吹き込むことが困難なため、操業管理が難しくなる。
【0003】
これらの欠点を補うため、特公昭61−59376号公報では、上吹きランスを用いて減圧下の溶鋼表面に脱硫剤を吹き付けることにより脱硫するVODプロセスを紹介している。特開平5−171253号公報,特開平6−73429号公報等では、RH真空脱ガス装置において脱硫剤を上吹きして脱硫する条件として、真空度,ランス−溶鋼表面間距離,粉体供給速度等を規定している。また、特開平5−287359号公報では、取鍋スラグの酸化鉄と酸化マンガンの合計濃度を規定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
RH真空脱ガス装置を使用して極低硫鋼を溶製するとき、種々の操業条件の影響が顕在化し、従来では検討されていなかった操業条件の管理が極低硫鋼の安定的製造で必要とされる。
たとえば、特公昭61−59376号公報のように減圧下の溶鋼表面に脱硫剤を吹き付けるとき、取鍋スラグの低級酸化物の濃度が脱硫反応に及ぼす影響や、安定操業上で問題となる吹込みランスへの還流溶鋼の付着等に付いても具体的に把握しておく必要があり、それがあって初めてRH真空脱ガス装置を使用した極低硫鋼の溶製が工業的に可能となる。
また、特開平5−171253号公報,特開平6−73429号公報等で規定される条件下で脱硫剤を上吹きした場合でも、スプラッシュによるランスへの溶鋼付着や粉体吹込み時間の延長に伴った耐火物の溶損等があり、実操業上で安定操業するためには解決すべき問題がある。
【0005】
更に、転炉スラグ流出量やスラグ改質状況にバラツキがあるため、特開平5−287359号公報のように取鍋スラグを規制しても、実操業上で安定的に所定濃度まで低減するためには、湯残し出鋼や多量のAl含有改質材の添加等、新たな問題が発生する。
しかも、ランス−溶鋼表面間距離に起因するランスへの地金付着,遅い脱硫剤吹込み速度に起因して脱硫処理時間が長くなること,それに伴って耐火物の溶損が激しくなること等の問題が発生する。また、取鍋スラグの酸化鉄と酸化マンガンの合計濃度が低いほど脱硫反応が良好に進行することは、一般的には知られているものの、実操業上安定的に得られるスラグ組成に関して最適条件を確立するまでには至っていない。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、脱硫剤の吹込み条件やスラグ組成等を総合的に調整することにより、RH真空脱ガス装置を使用した溶鋼脱硫を効率よく短時間に行わせ、極低硫鋼を安定的に溶製すること目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶鋼脱硫方法は、その目的を達成するため、酸化鉄及び酸化マンガンの合計濃度を10重量%以下に規制したスラグが浮遊している溶鋼を取鍋に収容し、RH真空脱ガス装置の上昇管及び下降管を溶鋼に浸漬し、溶鋼を取鍋から上昇管,真空度を30〜40トールに保持した真空槽及び下降管を経て取鍋に循環させ、真空槽内の溶鋼表面から下端までの距離を2.3〜3mに保持した上吹きランスを真空槽内の溶鋼表面に対向させ、50重量%以下のCaF2 及び20重量%以下のMgOをCaOに配合した脱硫剤を吹込み速度1〜2kg/分・トンで上吹きランスから真空槽内の溶鋼表面に吹き付けることを特徴とする。
【0007】
【実施の形態】
本発明では、溶鋼成分及びスラグ成分を調整し、図1に示すRH真空脱ガス装置を使用して脱硫する。RH真空脱ガス装置は、真空槽1の下部に設けた一対の上昇管2及び下降管3を取鍋4内の溶鋼5に浸漬する。真空槽1の上部に設けた排気口6から真空槽1を真空排気すると、取鍋4内の溶鋼5が真空槽1内に吸い上げられる。この状態で、上昇管2に組み込んだガスノズル7からArガス等を吹込むと、溶鋼5は、真空槽1と取鍋4との間を還流する。
RH処理中に上吹きランス8を真空槽1内に降下させ、上吹きランス8の下端を溶鋼9の湯面上方に臨ませる。そして、上吹きランス8の先端から脱硫剤10をArガス等のキャリアガスと共に溶鋼9の湯面に吹き付け脱硫する。なお、取鍋4に収容されている溶鋼5の湯面には、Al含有還元剤で改質した取鍋スラグ11及び脱硫剤12を浮遊させている。
【0008】
本発明は、[S]≦5ppmまでの極低S化をRH−TBフラックス上吹き法で安定的に実施するための条件を総合的に調整したものであり、溶鋼脱硫の高効率化により脱硫剤の捕捉効率を向上させ、脱硫剤の早期要求,取鍋スラグ酸化度の低減を図ると共に、RH耐火物の溶損を低減することにより脱硫時間の短縮を図り、スプラッシュを低減してTBランスへの地金付着を抑制する。
スラグ組成:酸化鉄及び酸化マンガンの合計濃度10重量%以下
溶鋼脱硫効率を向上させ復硫を防止するためには、(T.Fe)及び(MnO)の合計含有量を低減する必要がある。(T.Fe)及び(MnO)の合計含有量を低減するほど脱硫効率は向上するが、工業的に実施する場合、スラグ流出量,アルミ改質のバラツキ等のため、必要とされる低減度合いを定量的に把握しておくことが要求される。実機試験の結果から、本脱硫法を使用する場合、(T.Fe)+(MnO)≦10重量%まで低減させるとき、目標とする脱硫効果が得られる。
【0009】
真空槽の真空度:30〜40トール
真空槽の真空度を上げると還流量が増加し、脱硫剤捕捉効率の向上に有効な湯面高さや脱硫効率の向上が図られる。しかし、真空度の上昇に伴ってスプラッシュが増加し、ランスへの地金付着が激しくなる。このようなことから、30〜40トールの真空度が適正である。
脱硫剤:50重量%以下のCaF2 及び20重量%以下のMgO
脱硫効率を向上させるためには、脱硫剤を早期に溶融させ、CaF2 濃度を増加させる必要がある。しかし、CaOの割合を低減すると、逆に脱硫効率が減少する傾向がみられる。そのため、CaO−CaF2 の配合は、この兼ね合いで定められる。他方、MgOは、耐火物の溶損を低減する作用を呈することから、脱硫剤に配合される。しかし、MgOの配合割合が多すぎると、脱硫効率を低下させるので、上限が20重量%に設定される。
【0010】
溶鋼表面からランス下端までの距離:2.3〜3m
ランスの下端を湯面に近付けるほど、脱硫剤の捕捉効率が向上し、脱硫効率が向上する。その一方で、ランスへの地金付着量も増加し、場合によってはランスが溶損し、冷却水漏れが発生する虞れがある。このようなことから、溶鋼表面から2.3〜3mの高さ位置にランス下端が設定される。
脱硫剤吹込み速度:1〜2kg/分・トン
耐火物溶損を低減するためには、脱硫時間の短縮が必須である。同一原単位の脱硫剤を添加する場合、吹込み速度が早いほど脱硫時間が短縮される。しかし、早すぎる吹込み速度では、脱硫剤の溶鋼中滞留時間が短くなり、脱硫効率が減少してしまう。高脱硫効率を維持しながら脱硫時間を短縮するためには、脱硫剤の吹込み速度を1〜2kg/分・トンの範囲に設定することが必要となる。
【0011】
【実施例】
転炉で溶製した[C]=0.05〜0.15重量%,[Si]=0.001〜0.02重量%,[Mn]=0.8〜1.5重量%,[P]≦0.015重量%,[S]=0.002〜0.15重量%の組成をもつ溶鋼90トンを、転炉から取鍋に出鋼した。
取鍋に流出したスラグは、Al含有還元剤によって改質し、(CaO)=40〜50重量%,(SiO2 )=10〜15重量%,(Al2 O3 )=20〜25重量%,(FeO+MnO)=2〜10重量%の組成になるように調整した。改質した取鍋スラグの量は、800〜1500kgであった。
取鍋に収容した溶鋼に、図1に示すようにRH真空脱ガス装置の上昇管2及び下降管3を浸漬し、4kg/トンの割合で54%CaO−36%CaF2 −10%MgOの脱硫剤10をキャリアガスと共に上吹きランス8の先端から真空槽1内の溶鋼9の表面に吹き付けた。
【0012】
脱硫剤吹込み条件は、溶鋼9の表面からランス8の下端までの距離を2.3〜3mに設定した。比較のため、吹込み速度を1.5kg/分・トンの一定値に設定し、溶鋼9の表面から2.3m未満の高さ位置にランス8の下端を保持して脱硫剤を吹き込んだが、この場合はランスに多量の地金が付着し、次ヒート以降の処理に支障を来した。他方、ランス8の下端を溶鋼9の表面から3mを超える高さに設定した場合、排気口6に吸い込まれる脱硫剤10の割合が多くなり、結果として脱硫効率が低下した。
溶鋼9の表面からランス8の下端までの距離を2.5mの一定値に設定し、脱硫剤の吹込み速度が脱硫効率に及ぼす影響を調査した。その結果、吹込み速度が1kg/分・トンに満たない場合では、脱硫時間が長くなり、その分だけ真空槽1,上昇管2,下降管3の溶損が激しくなった。他方、2kg/分・トンを超える吹込み速度では、脱硫剤の溶鋼滞留時間が短くなったことから、脱硫効率が低下した。これに対し、本発明で規定した1〜2kg/分・トンの範囲に吹込み速度を設定したものでは、何れも良好な脱硫効率が得られた。
ランス高さ及び吹込み速度が脱硫効率等に及ぼす影響を表1に示す。表1にみられるように、本発明で規定した条件下で脱硫剤を吹き込むとき、耐火物の溶損やランスへの地金付着を抑制し、短時間で[S]≦5ppmの極低硫領域まで溶鋼が脱硫されることが確認された。
【0013】
【0014】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、ランス高さ,脱硫剤吹込み速度,脱硫剤組成,取鍋スラグの組成,真空槽の真空度等を総合的に調整することにより、[S]≦5ppmの極低硫領域まで溶鋼を迅速に脱硫している。しかも、耐火物の溶損やランスへの地金付着が抑制されるため、安定した操業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で使用するRH真空脱ガス装置
【符号の説明】
1:真空槽 2:上昇管 3:下降管 4:取鍋 5:取鍋内の溶鋼
6:排気口 7:ガスノズル 8:上吹きランス 9:真空槽内の溶鋼
10:脱硫剤 11:取鍋スラグ 12:脱硫剤
Claims (1)
- 酸化鉄及び酸化マンガンの合計濃度を10重量%以下に規制したスラグが浮遊している溶鋼を取鍋に収容し、RH真空脱ガス装置の上昇管及び下降管を溶鋼に浸漬し、溶鋼を取鍋から上昇管,真空度を30〜40トールに保持した真空槽及び下降管を経て取鍋に循環させ、真空槽内の溶鋼表面から下端までの距離を2.3〜3mに保持した上吹きランスを真空槽内の溶鋼表面に対向させ、50重量%以下のCaF2 及び20重量%以下のMgOをCaOに配合した脱硫剤を吹込み速度1〜2kg/分・トンで上吹きランスから真空槽内の溶鋼表面に吹き付けることを特徴とするRH真空脱ガス装置を用いた溶鋼の脱硫方法。
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