JP3659857B2 - 電磁弁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソレノイドの電磁力を利用して弁体を開閉駆動する電磁弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジン用の燃料噴射装置として、フィードポンプで圧力調整された燃料を各気筒毎に独立した電子制御式のユニットインジェクタに供給するようにしたものが知られている。
【0003】
この種のユニットインジェクタは、フィードポンプで圧力調整された燃料が供給される燃料通路を有し、この燃料通路の途中にエンジンに同期して駆動されるプランジャと、エンジンの運転状況に応じて燃料噴射時期を電子的に制御する電磁弁とが設置されている。
【0004】
電磁弁は、プランジャよりも燃料の供給方向に沿う上流側に位置されており、この電磁弁を閉じることで燃料通路が密閉空間に移行し、この燃料通路に供給された燃料がプランジャによって加圧されるようになっている。そして、この燃料の圧力がノズルニードルを閉じ方向に付勢しているばね力に打ち勝つと、このノズルニードルがリフトしてノズルボディの先端の噴孔を開き、この噴孔を通じて加圧された燃料がエンジンの燃焼室に噴射されるようになっている。
【0005】
ところで、図8および図9は、従来のユニットインジェクタに用いられる電磁弁1を開示している。この電磁弁1は、ユニットインジェクタのインジェクタボディ2に一体的に組み込まれている。インジェクタボディ2は、フィードポンプ3から燃料が供給される燃料通路4を有し、この燃料通路4の途中に形成された凹部5に電磁弁1が装着されている。
【0006】
電磁弁1は、ポペット弁6と、このポペット弁6を開閉駆動する駆動部7とを備えている。ポペット弁6は、弁体9を支持するハウジング10を有している。ハウジング10は、凹部5の開口端にねじ込まれた固定部材11を介してインジェクタボディ2に固定されている。
【0007】
ハウジング10は、その中央部にガイド孔12を有する中空の筒状をなしている。ハウジング10の外周面には、周方向に連続する燃料供給溝13が形成されており、この燃料供給溝13は燃料通路4の上流部分に連なっている。
【0008】
弁体9は、ハウジング10のガイド孔12内に軸方向に摺動可能に嵌合されている。弁体9の外周面には、周方向に連続する溝部14が形成されている。溝部14は、ガイド孔12の内周面と協働してリング状の燃料室15を構成しており、この燃料室15の上部は、複数の供給孔16を介して燃料供給溝13に連なっている。また、溝部14の下端の外周部には、テーパ状のシール部17が形成されている。
【0009】
燃料室15の底部には、弁体9の径方向に外側に向けて広がるように拡張された燃料溜り18が形成されている。燃料溜り18は、連通口19を介して燃料通路4の下流部分に連通されており、この燃料溜り18に臨むガイド孔12の角部には、上記弁体9のシール部17に対応する弁座20が形成されている。
【0010】
このため、弁体9は、シール部17が弁座20に着座する閉じ位置と、シール部17が弁座20から離脱する開き位置とに亙って昇降動可能にハウジング10に支持されている。そして、弁体9が閉じ位置に移動された状態では、燃料室15と燃料通路4の下流部分との連通が遮断され、この燃料通路4の下流部分が密閉空間に移行するようになっている。
【0011】
弁体9は、上向きに突出する弁軸22を備えている。弁軸22の外周部分には、プレッシャスプリング23が装着されており、このプレッシャスプリング23は、弁体9を常に開き位置に押し下げている。弁軸22は、固定部材11を貫通しており、この弁軸22の上端にアーマチュア24がねじ止めされている。
【0012】
駆動部7は、ソレノイド8を有している。ソレノイド8は、インジェクタボディ2の上面にスペーサ25を介して設置され、上記アーマチュア24と向かい合っている。ソレノイド8は、電磁コイル26と、この電磁コイル26を保持する鉄芯27とを備えている。鉄芯27はカバー28によって覆われており、この鉄芯27とカバー28との間、および鉄芯27と電磁コイル26との間には、夫々合成樹脂製の封止材29が充填されている。
【0013】
ソレノイド8は、エンジンの運転状況を判断するエンジンコントローラ(図示せず)からの制御信号によって励磁される。すなわち、図10に示すように、ソレノイド8に制御信号Sが付与されると、電磁コイル26に電流が流れ、これにより電磁コイル26が励磁されて鉄芯27が磁化される。このため、アーマチュア24がプレッシャスプリング23に抗して吸引され、このアーマチュア24と一体化された弁体9が開き位置から閉じ位置にリフトされる。
【0014】
この結果、燃料通路4の下流部分が密閉空間に移行し、プランジャの作動に伴い燃料通路4の下流部分の燃料圧力が急激に上昇する。この燃料圧力がノズルニードルを閉じ方向に付勢しているばね力に打ち勝つと、このノズルニードルがリフトしてノズルボディの先端の噴孔を開き、この噴孔から加圧された燃料がエンジンの燃焼室に噴射される。
【0015】
電磁コイル26の励磁が解除されると、プレッシャスプリング23の付勢力により弁体9が閉じ位置から開き位置に戻され、燃料通路4が開放される。この結果、燃料通路4内の燃料圧力が一気に低下し、燃焼室への燃料の噴射が終了する。
【0016】
ところで、上記従来のユニットインジェクタでは、ポペット弁6の弁体9を開閉するタイミングや弁体9を閉じ位置に保持する時間をソレノイド8によって制御することで、燃焼室への燃料の噴射タイミングや噴射量をエンジンの運転状況に応じて設定している。この際、ポペット弁6は、燃料通路4を開放する開き位置又は燃料通路4を閉じる閉じ位置のいずれかの位置に保持されるのみであり、この燃料通路4内の燃料圧力を上昇させるタイミングおよび燃料圧力を下降させるタイミングを制御するに止まっている。
【0017】
すなわち、プランジャの作動により燃料通路4を流れる燃料は、弁体9が開き位置にある限り、図9に矢印で示すように弁座20とシール部17との間を通って燃料室15に流れ込む。この燃料は、溝部14の底に沿って上向きに流れた後、この溝部14の上端に突き当たり、その流れが供給孔16を向くように横方向に変化する。このため、弁体9は、燃料室15に流れ込む燃料により閉じ位置に向けて押し上げるような力を受けるので、電磁コイル26が励磁された時には、速やかに開き位置から閉じ位置にリフトされることになり、それ故、ポペット弁6は燃料通路4を開放するか閉じるかのいずれかの状態にしか切り換え操作することができない。
【0018】
よって、噴射行程中の燃料の噴射割合(噴射率)は、プランジャを作動させるカムのプロフィールによって一様に定まり、噴射行程中の前半と後半とで燃料の噴射圧力を自由に変化させることができなくなる。
【0019】
一方、近年のディーゼルエンジンは、低公害化への対応が強く求められており、特にNOx排出量の低減が課題となっている。このNOxの排出量を低減するためには、噴射行程の前半の燃料噴射圧力を後半の燃料噴射圧力よりも低く設定することが有効であることが知られている。
【0020】
噴射行程の前半に低い圧力で燃料を噴射すると、燃焼開始圧力が低く抑えられて燃焼が穏やかとなり、燃焼圧の急激な上昇が回避される。このため、燃焼温度が低くなり、NOxの発生が極めて少なくなるとともに、燃焼騒音(エンジン騒音)も低く抑えることができる。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、電子制御式のユニットインジェクタの噴射タイミング、噴射量の制御にはポペット弁が使われている。ポペット弁を閉じると、プランジャにより圧送される燃料の出口が閉じて圧力が上がり、開弁圧以上になると燃料噴射が開始される。また、ポペット弁を開くと、高圧燃料がハウジングから排出され、圧力が閉弁圧以下になると燃料噴射は終了する。このように、ポペット弁を閉じるタイミングで噴射開始時期を制御し、閉じている期間で噴射量を制御している。
【0022】
ユニットインジェクタをエンジンの制御に用いる場合、インジェクタが安定して噴射量を制御できる最小量の限界は、ポペット弁を閉じて直ちに開いた時の噴射量であり、その量はポペット弁の応答性により決定される。しかし、燃料の圧力、流れによる力がポペット弁動作時の抵抗となり、応答性の向上が困難であるという問題がある。
【0023】
本発明の目的は、応答性を向上させ、制御可能な最低噴射量の低減を図る電磁弁を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の電磁弁は以下の如く構成されている。
【0025】
本発明の電磁弁は、流体が供給されるとともに、この供給された流体を加圧する加圧手段を有する流体通路に設置される電磁弁であって、上記加圧手段よりも流体の供給方向に沿う上流側に設置されたハウジングと、このハウジングに支持され、上記流体通路を閉じる閉じ位置と、上記流体通路を開放する開き位置とに亙って移動可能な弁体と、この弁体を上記開き位置に向けて押圧するスプリングと、電流値に応じて電磁力が変化するソレノイドを有し、このソレノイドが励磁された時の電磁力により上記弁体をスプリングの付勢力に抗して上記閉じ位置に移動させる駆動部と、を具備し、上記ハウジングと弁体との間に、上記弁体が開き位置にある限り上記流体通路を流れる流体が導かれる圧力室を形成し、この圧力室は、ハウジングにより流体の流れ方向を下向きに反転させることで上記弁体を上記開き位置に向けて押圧する流体圧を発生させるとともに、所定期間、上記弁体が流体から受ける力を上記開き位置の方向とする流体制御手段を有し、上記ソレノイドを所定の電流値で励磁させた時に、上記弁体が上記スプリングの付勢力および上記流体圧に抗して閉じ位置に移動される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図7に基づいて説明する。
【0027】
図1は、例えば発電機、舶用機械あるいは建設機械等に用いられるディーゼルエンジンの燃料噴射システムを開示している。この燃料噴射システムは、電子制御式のユニットインジェクタ31を備えている。ユニットインジェクタ31は、ディーゼルエンジンのシリンダヘッド32に取り付けられている。シリンダヘッド32は、ピストン33の頂部と協働して燃焼室34を構成しており、この燃焼室34にユニットインジェクタ31を通じて燃料が噴射されるようになっている。
【0028】
ユニットインジェクタ31は、インジェクタボディ36を備えている。インジェクタボディ36は、プランジャバレル37と、このプランジャバレル37と一体化された電磁弁取り付け部38とを含んでいる。プランジャバレル37の先端部には、リテーニングナット39を介してスプリングケージ40、ディスタンスピース41およびノズルボディ42が同軸状に固定されている。
【0029】
プランジャバレル37の内部には、シリンダ44と、このシリンダ44の底に連なる加圧室45とが形成されている。シリンダ44の内部には、プランジャ46が軸方向に摺動可能に嵌合されている。このプランジャ46の先端は、加圧室45に臨んでいる。プランジャ46の加圧室45とは反対側の端部には、タペット47が連結されている。タペット47は、プランジャバレル37に支持されているとともに、このプランジャバレル37の外方に突出されている。そして、タペット47は、プランジャスプリング48を介してプランジャ46を加圧室45から引き出す方向に付勢されている。
【0030】
タペット47は、ロッカアーム50、プッシュロッド51およびカムフォロア52を介して燃料噴射用カム軸53に連携されている。ロッカアーム50は、ロッカ軸54を介してシリンダヘッド32に支持されており、このロッカアーム50の一端がタペット47に突き当たっている。プッシュロッド51は、ロッカアーム50の他端とカムフォロア52との間に介在されている。カムフォロア52は、タペットローラ55を介して燃料噴射用カム軸53上のカム56に接している。燃料噴射用カム軸53は、エンジンのクランク軸(図示せず)によって図1の時計回り方向に回転駆動されるようになっている。
【0031】
そのため、燃料噴射用カム軸53が回転駆動されると、カムフォロア52がカム56の輪郭形状に応じて揺動運動を繰り返すとともに、このカムフォロア56の揺動運動がプッシュロッド51、ロッカアーム50およびタペット47を介してプランジャ46に伝えられ、これによりプランジャ46が軸方向に往復動するようになっている。
【0032】
図2に示すように、ノズルボディ42は、その先端に小径な円頂部58を有している。円頂部58は、燃焼室34に突出されているとともに、この燃焼室34に開口された複数の噴孔59を有している。
【0033】
ノズルボディ42の内部には、ガイド孔60が形成されている。ガイド孔60は、円頂部58に隣接された一端に燃料溜り室61を有し、この燃料溜り室61は、サック部62を通じて噴孔59に連なっている。また、ガイド孔60の燃料溜り室61とは反対側の他端は、スプリングケージ40の内部のスプリング収容室63に連なっている。
【0034】
ガイド孔60には、ノズルニードル65が軸方向に摺動可能に嵌合されている。ノズルニードル65の一端は、燃料溜り室61を貫通しており、このノズルニードル65の一端にサック部62を開閉するシール部66が形成されている。このため、ノズルニードル65は、サック部62を塞ぐ閉じ位置と、サック部62を開放する開き位置とに亙って往復動可能にノズルボディ42に支持されている。
【0035】
ノズルニードル65のシール部66とは反対側の端部は、ディスタンスピース41を貫通してスプリング収容室63に臨んでいる。スプリング収容室63には、リターンスプリング67が収容されている。リターンスプリング67は、スプリングリテーナ68を介してノズルニードル65をサック部62に向けて付勢しており、このノズルニードル65を常に閉じ位置に保持している。
【0036】
図1や図2に示すように、ユニットインジェクタ31のインジェクタボディ36は、流体通路としての燃料通路70を備えている。燃料通路70の上流端は、インジェクタボディ36の電磁弁取り付け部38に導かれているとともに、この燃料通路70の下流端は、燃料溜り室61に連なっている。また、燃料通路70は、プランジャバレル37の内部において加圧室45に連なっている。
【0037】
そのため、燃料通路70は、加圧室45を境として、この加圧室45の上流側に位置された燃料導入部70aと、加圧室45の下流側に位置された燃料吐出部70bとに区分けされている。
【0038】
燃料通路70の燃料導入部70aは、燃料導管71を介してフィードポンプ72に連なっている。フィードポンプ72は、燃料タンク73に貯えられた燃料(流体)を一定のフィード圧で燃料通路70に供給するためのものであり、このフィードポンプ72と燃料通路70とを結ぶ燃料導管71の途中には、上流側から順に燃料フィルタ74および減圧弁75が設置されている。
【0039】
燃料導管71は、減圧弁75の下流側で分岐された燃料戻し管76を有している。燃料戻し管76は、燃料タンク73に連なっており、この燃料戻し管76の途中には、燃料タンク73に戻される燃料の流通のみを許容する逆止弁77が設置されている。
【0040】
図1や図3に示すように、インジェクタボディ36の電磁弁取り付け部38には、上向きに開口された凹部78が形成されている。凹部78は、燃料通路70の燃料導入部70aに連なる第1および第2の連通口79a,79bを有している。第1の連通口79aは、燃料導入部70aの上流部分を介して燃料導管71に連なっている。第2の連通口79bは、燃料導入部70aの下流部分を介して加圧室45に連なっている。
【0041】
凹部78には、燃料噴射時期や噴射時間を制御するための電磁弁81が設置されている。この電磁弁81は、主にそのポペット弁82に関する構成が図8に示す従来の電磁弁1と相違しており、それ以外の電磁弁81の基本的な構成は従来の電磁弁1と同様である。そのため、本実施の形態の電磁弁81において、従来の電磁弁1と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0042】
図3に示すように、ポペット弁82は、凹部78に固定されたハウジング83と、このハウジング83に支持された弁体84とを備えている。ハウジング83は、その中央部にガイド孔85を有する筒状をなしている。ガイド孔85の内周面には、周方向に連続する溝部86が形成されている。溝部86は、ガイド孔85の軸線方向に沿う中央部に位置されている。
【0043】
このため、ガイド孔85は、溝部86を境として、凹部78の底側に位置された第1の孔部85aと、凹部78の開口側に位置された第2の孔部85bとに区分けされている。第1の孔部85aの口径D1は、第2の孔部85bの口径D2よりも大きく設定されている。
【0044】
弁体84は、ガイド孔85を貫通するような円柱状をなしている。この弁体84は、ガイド孔85の第1の孔部85aに対応する第1のジャーナル部87aと、ガイド孔85の第2の孔部85bに対応する第2のジャーナル部87bと、これら第1および第2のジャーナル部87a,87bの間に位置された中間部87cとを有している。
【0045】
第1のジャーナル部87aは、第1の孔部85aに液密を保って軸方向に摺動可能に嵌合されているとともに、第2のジャーナル部87bは、第2の孔部85bに液密を保って軸方向に摺動可能に嵌合されている。このため、第1のジャーナル部87aの直径は、第2のジャーナル部87bの直径よりも大きく設定されている。
【0046】
弁体84の中間部87cは、ハウジング83の溝部86によって取り囲まれている。この中間部87cの外周面には、全周に亙ってガイド溝90が形成されている。ガイド溝90は、大径な第1のジャーナル部87aに連なる一端部の深さ寸法が最も大きく設定されており、このガイド溝90の一端部には、弁体84の径方向内側に向けて延びる受圧面91が形成されている。受圧面91は、弁体84の径方向内側に進むに従い第2のジャーナル部87bに近づく方向に傾斜されている。受圧面91の外周部は、リング状のシール部92を構成しており、このシール部92の外周縁部は、弁体84の第1のジャーナル部87aに連なっている。
【0047】
ガイド溝90の底は、受圧面91から弁体84の第2のジャーナル部87bに近づくに従い弁体84の径方向外側に向けて傾斜された第1のガイド面93をなしている。第1のガイド面93は、ハウジング83の溝部86と向かい合っており、この溝部86の内面は、第1のガイド面93と協働して圧力室95を構成している。圧力室95は、ハウジング83と弁体84との間に位置され、このハウジング83の供給孔16を通じて燃料供給溝13に連なっている。
【0048】
圧力室95は、大径な第1のジャーナル部87a側に位置された底部を有し、この底部に燃料溜り96が形成されている。燃料溜り96は、ハウジング83の溝部86を弁体84の径方向外側に向けて拡張することにより構成され、この燃料溜り96は、上記第2の連通口79bを通じて燃料導入部70aの下流部分に連なっている。
【0049】
ハウジング83の溝部86は、その燃料溜り96とは反対側の上部に円弧状に湾曲された第2のガイド面97を有している。第2のガイド面97は、第1のガイド面93に連なっているとともに、弁体84の受圧面91と向かい合うように圧力室95に露出されている。
【0050】
また、ハウジング83の溝部86は、弁体84のシール部92に向けて突出する壁部98を有している。壁部98は、弁体84のシール部92を周方向に連続して取り囲んでおり、この壁部98の先端は、シール部92が接離可能に接触する弁座99を構成している。
【0051】
そのため、弁体84は、シール部92が弁座99に接する閉じ位置(図4に示す)と、シール部92が弁座99から離脱する開き位置(図3に示す)とに亙って移動可能にハウジング83に支持されている。弁体84が開き位置にある状態では、圧力室95と燃料溜り96とが互いに連通されており、これにより燃料通路70の燃料導入部70aが開放されている。弁体84が閉じ位置にある状態では、圧力室95と燃料溜り96との連通が遮断されており、これにより燃料通路70の燃料導入部70aの下流部分、燃料吐出部70bおよび加圧室45が密閉空間に移行するようになっている。
【0052】
図3に示すように、弁体84の端部には、プレッシャスプリング23を受け止めるリング状のスプリングシート100が設置されている。スプリングシート100は、弁体84が開き位置にある状態においてハウジング83の端面に突き当たっており、このことにより、弁体84の弁軸22側の端面とスプリングシート100との間に隙間d1が形成されるようになっている。
【0053】
同様に、弁体84が開き位置にある状態において、弁体84のシール部92とハウジング83の弁座99との間には隙間d2が形成されている。隙間d2は、隙間d1よりも大きく設定され、この隙間d2を通じて燃料が流通するようになっている。
【0054】
なお、弁体84は、その軸線上に貫通孔101を有している。貫通孔101は、弁軸22と固定部材11との間の空間に開口されているとともに、ここから弁軸22の貫通部分を通じて上記アーマチュア24や電磁コイル26が収められたカバー28の下側の空間に連なっている。
【0055】
図1に示すように、電磁弁81のソレノイド8は、エンジンコントローラ103によって駆動されるようになっている。エンジンコントローラ103は、CPU104と、エンジンの運転状況に応じた最適な燃料噴射時期および噴射時間を記憶したROM105とを備えている。CPU104には、エンジン運転中、例えばエンジン回転数、スロットル開度あるいは吸入空気温度のような実際のエンジンの運転状況を示す各種の信号S1が入力される。そして、CPU104は、信号S1に基づいてその時のエンジンの運転状況を総合的に判断するとともに、この運転状況に最適な燃料噴射時期および噴射時間をROM105から読み出し、この燃料噴射時期および噴射時間を実現するような制御信号S2をソレノイド8に送出するようになっている。
【0056】
この点について具体的に述べると、図5の(a)に示すように、ソレノイド8の電磁コイル26は、トランジスタ106を介して電源としてのバッテリ107に電気的に接続されている。トランジスタ106のベースは、エンジンコントローラ103のCPU104に接続されている。トランジスタ106のベースに制御信号S2が入力されると、電磁コイル26にバッテリ107から電流が流れ、この電磁コイル26が励磁されて弁体84を閉じ位置にリフトするための電磁力が発生する。この電磁コイル26に流れる電流値I、つまり電磁コイル26の導通度は、エンジンコントローラ103から出力される制御信号S2によって適宜設定される。
【0057】
すなわち、制御信号S2は、図5の(b)に示すように特定の周期でON・OFFを繰り返すので、本実施の形態では制御信号S2の一周期のうちのON期間とOFF期間とのデューティ比を変更することで電磁コイル26の導通度を設定している。ON期間では、電磁コイル26の抵抗値、バッテリ107の電圧等によって定められる値を上限として、電磁コイル26に流れる電流値Iは増加し続ける。これに対し、OFF期間では、電流値Iは0にならない限り減少していく。このため、制御信号S2のデューティ比を大きく設定することで、一周期中のON期間の割合をOFF期間よりも十分多くすると、電流値Iの増加時間が減少時間よりも長くなり、一周期を通じて見ると、電流値Iは増加していく。よって、図6に示すように、電磁コイル26を流れる電流値Iが増加し、この電流値Iの立ち上がり角度θが大きくなる。
【0058】
逆に制御信号S2のデューティ比を小さく設定することで、一周期中のON期間に対するOFF期間の割合を増やしていくと、電磁コイル26を流れる電流の一周期当りの増加量が小さくなる。よって、電流値Iの立ち上がり角度θが小さくなる。
【0059】
そして、エンジンの運転状況に促した最適な制御信号S2のデューティ比は、エンジンコントローラ103のROM105にデータとして予め記憶されているので、CPU104は、刻々と変化する実際のエンジンの運転状況に最適なデューティ比をROM105から読み出してトランジスタ106のベースに出力する。これにより弁体84を閉じ位置にリフトさせるに必要な電磁力が定まるようになっている。
【0060】
次に、上記燃料噴射システムの作動について説明する。
【0061】
エンジンのクランク軸によって燃料供給用カム軸53が回転駆動されると、カム56の輪郭形状に基づいてカムフォロア52が揺動運動する。このカムフォロア52の揺動運動は、プッシュロッド51、ロッカアーム50およびタペット47を介してプランジャ46に伝えられ、このプランジャ46が往復運動を繰り返す。
【0062】
プランジャ46が加圧室45に向けて押し下げられていくと、加圧室45の容積が次第に減じられる。この加圧室45の容積は、プランジャ46が下死点位置に押し下げられた時点で最も小さくなる。プランジャ46が上昇に転じてシリンダ44から引き抜かれていくと、加圧室45の容積が次第に増大し、この加圧室45が負圧となる。
【0063】
この際、燃料通路70の電磁弁81は、ソレノイド8が励磁されない限り燃料通路70の燃料導入部70aを開放しているので、上記負圧となった加圧室45にフィードポンプ72から供給された燃料が満たされ、加圧室45や燃料溜り室61内の燃料圧力が一定のフィード圧に保たれる。
【0064】
この状態において、プランジャ46が再び下降に転じて加圧室45の容積が減じられても、燃料通路70の燃料導入部70aは開放されたままであるので、加圧室45内の燃料は、燃料通路70の燃料導入部70aに押し戻され、ここから燃料導管71や燃料戻し管76を通じて燃料タンク73に戻される。よって、加圧室45や燃料通路70に満たされた燃料の圧力の上昇は少ない。
【0065】
上記燃料噴射システムにおいて、ポペット弁82が閉じる間際には、ポペット弁82が十分に加速されていて動作が速いため、燃料通路70が絞られる時間は比較的短時間である。それに対して、ポペット弁82が開く間際には、ポペット弁82は加速されておらず動作が遅いため、燃料通路70が絞られる期間は長くなる。フローフォースはポペット弁82の開時、閉時共に働くが、ポペット弁リフト期間のうち、燃料通路が絞られている状態では、ポペット弁82が開く時の方がフローフォースが働く時間が長いため、閉じる時の応答性の悪化以上に、開く時の応答性が向上し、噴射量の最低限界を広げることができる。
【0066】
以下、図6の(a)〜(d)を基に、ポペット弁が開く時の応答性が向上することにより最低噴射量を低減できる理由を説明する。なお図6の(a)〜(d)では、それぞれ、電磁コイル26に流れる電流、ポペット弁82のリフト量、燃料通路70の断面積、噴射圧の各時間変化を示している。各図のグラフ上では、従来の状態を細線で、本実施の形態の状態を太線で示している。
【0067】
ポペット弁82を閉じている期間の長さで噴射量を制御する際には、ポペット弁82を閉じて直ちに開いた時の噴射量が安定して制御できる最小の噴射量となる。この時、図6の(d)に示すtF1、tF2に相当する期間では、ポペット弁82が完全に閉じる前から、排出される流量に対して出口通路が小さすぎるため、圧力の上昇が始まり、噴射が開始される。また、ポペット弁が開き始める際には、ポペット弁82の通路面積が小さいので、圧力は急激には低下せず、噴射が継続する。
【0068】
そのため、ポペット弁82を閉じて直ちに開いただけでも、図6の(d)にtF1、tF2で示すように一定期間燃料は噴射される。この時の噴射量がポペット弁82で制御できる最低噴射量となる。この最低噴射量を低減するためには、図6の(c)にtA1、tA2で示すポペット弁の動作中に通路が絞られる期間を短くする必要がある。その方法としては、ポペット弁82の全開から全閉までの動作速度を向上することと、全閉から全開までの動作速度を向上することの2点が挙げられる。
【0069】
本実施の形態では、燃料がハウジングから排出される時にポペット弁が流体から受ける力(流体力)をポペット弁の開き位置の方向になるように弁、ホルダの形状、及び寸法を工夫したため、ポペット弁が開く際の動作速度を向上させることができる。ポペット弁を閉じる際には動作速度が遅くなる方向に流体力が働くが、その時間は開く時と比較して小さく、全体としてはポペット弁の応答性を向上させることができる。
【0070】
このようにポペット弁の応答性を向上させることで、ポペット弁を開くと直ちに十分な通路面積を確保でき、直ちに圧力を低下させて噴射を終了させることができる。すなわち、ポペット弁の応答性を向上させれば、より少ない噴射量までポペット弁を用いた制御が可能となる。
【0071】
以下、図7を基に、本実施の形態における燃料噴射システムの動作を説明する。以下の説明にて示す各番号(1)〜(5)は、図7に示した各番号(1)〜(5)に対応している。
【0072】
CPU104により電磁コイル26の通電期間を延ばしていくと、ポペット弁82の挙動は以下の様に変化する。
【0073】
(1).弁体84は途中まで磁力で引き上げられ、慣性でさらに途中までリフトし、ばね力で元の状態に戻る。
【0074】
(2).弁体84は途中まで磁力で引き上げられ、慣性によりちょうどポペット弁82が閉じる位置までリフトし、一瞬ポペット弁82は閉じられる。その後、弁体84はばね力により元の状態に戻る。
【0075】
(3).弁体84は途中まで磁力で引き上げられ、慣性でリフトしてポペット弁82は一瞬閉じられる。その後、弁体84はばね力により元の状態に戻る。(2)の場合よりも弁体84が磁力により引き上げられる時間が延びるため、ポペット弁82が開いてから閉じるまでにかかる時間は短くなる。
【0076】
(4).ポペット弁82が閉じるまで弁体84は磁力により引き上げられ、閉じた瞬間に磁力を無くす。弁体84が慣性でリフトする期間がない。
【0077】
(5).ポペット弁82が閉じ、一定期間後、磁力を無くす。弁体84はばね力により元の状態に戻る。
【0078】
上記の(1),(2),(3)を比較すると、ポペット弁82の通路が絞られている時間が最も長くなるのは(2)である。したがって、(1)〜(3)の間では、(2)の状態で噴射量は最大となる。
【0079】
また、(2)〜(4)の間では、通電期間を延ばすほど弁体84が磁力で引き上げられる期間が増え、慣性でリフトする期間が減る。そのため、ポペット弁82が開いている状態から閉じるまでにかかる時間が短くなり、ひいては燃料通路70が絞られている時間が短くなる。したがって、(2)〜(4)の間では通電期間を延ばすほど噴射量は減り、(4)の状態で噴射量が最小となる。
【0080】
また、(5)のように(4)の状態より通電期間を延ばすと、ポペット弁82の閉じている期間が増加し、噴射量もそれに応じて単調増加する。
【0081】
このように、通電期間に応じて噴射量が単調増加する(4)以降の状態が、エンジンの制御に用いられる。この時、(4)の状態が制御可能な最低噴射量となる。以上のようにポペット弁の応答性(開閉時の速度)を向上することで、この時の噴射量を低減することができる。
【0082】
なお、上記した図6の(a)〜(d)は、図7の(4)の状態の電流、ポペット弁リフト、ポペット弁部通路面積、噴射圧の各時間変化を示したものである。フローフォースはポペット弁が開く方向に働くため、図6の(b)に示すように、従来のものと比較して全閉〜全開の速度は流体力により速くなっているが、全開〜全閉の速度は低下している。しかし、流体力の影響はポペット弁が開く時の方が大きく、全開〜全閉〜全開にわたって、ポペット弁の応答速度は向上している。そのため本実施の形態によれば、燃料通路70が絞られる期間を従来のものより短縮でき(tA2<tA1)、噴射期間も短縮できる(tF2<tF1)ため、噴射量を低減できる。
【0083】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されず、要旨を変更しない範囲で適宜変形して実施できる。
【0084】
【発明の効果】
本発明の電磁弁によれば、流体力を利用し電磁弁が流体から受ける力をポペット弁の開き位置の方向とすることで、電磁弁の開時の速度を上げて応答性を向上でき、安定した制御が可能な燃料の最低噴射量をさらに低減し、ディーゼルエンジン等を安定して制御できる運転可能領域を拡大することができる。これにより、エンジンのアイドル回転数を落として消費燃料を低減したり、アイドル時の制御幅に余裕をもたせ、より安定したエンジン制御を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る燃料噴射システムの断面図。
【図2】ノズルボディの部分を拡大して示すユニットインジェクタの断面図。
【図3】ポペット弁の弁体が開き位置に移動された状態を示す電磁弁の断面図。
【図4】ポペット弁の弁体が閉じ位置にリフトされた状態を示す電磁弁の断面図。
【図5】(a)は、ソレノイドの駆動回路を示す回路図。
(b)は、ソレノイドを駆動するトランジスタに印加される電圧のデューティ比を示す特性図。
【図6】時間に対する電流、ポペット弁リフト、ポペット弁部通路面積、噴射圧を示した図。
【図7】時間に対する噴射量、ポペット弁リフトを示した図。
【図8】従来のユニットインジェクタに用いられる電磁弁の断面図。
【図9】ポペット弁の弁体が開き位置にリフトされた状態を示す電磁弁の断面図。
【図10】ポペット弁を閉じ位置に動作させるタイミングとポペット弁のリフト量および燃料の噴射圧力との関係を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
7…駆動部
8…ソレノイド
23…スプリング(プレッシャスプリング)
34…燃焼室
46…プランジャ
59…噴孔
70…燃料通路(流体通路)
72…フィードポンプ
81…電磁弁
82…ポペット弁
83…ハウジング
84…弁体
93,97…第1および第2のガイド面
95…圧力室

Claims (1)

  1. 流体が供給されるとともに、この供給された流体を加圧する加圧手段を有する流体通路に設置される電磁弁であって、
    上記加圧手段よりも流体の供給方向に沿う上流側に設置されたハウジングと、
    このハウジングに支持され、上記流体通路を閉じる閉じ位置と、上記流体通路を開放する開き位置とに亙って移動可能な弁体と、
    この弁体を上記開き位置に向けて押圧するスプリングと、
    電流値に応じて電磁力が変化するソレノイドを有し、このソレノイドが励磁された時の電磁力により上記弁体をスプリングの付勢力に抗して上記閉じ位置に移動させる駆動部と、を具備し、
    上記ハウジングと弁体との間に、上記弁体が開き位置にある限り上記流体通路を流れる流体が導かれる圧力室を低圧流体通路側に形成し、この圧力室は、ハウジングにより流体の流れ方向を下向き反転させることで上記弁体を上記開き位置に向けて押圧する流体圧を発生させるとともに、所定期間、上記弁体が流体から受ける力を上記開き位置の方向とする流体制御手段を有し、上記ソレノイドを所定の電流値で励磁させた時に、上記弁体が上記スプリングの付勢力および上記流体圧に抗して閉じ位置に移動されることを特徴とする電磁弁。
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