JP3659067B2 - 排気微粒子除去装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気通路に2系統のフィルタを設け、この2系統のフィルタにより交互に排気ガス中のパティキュレートを捕集する排気微粒子除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中には、カーボンを主成分とするパティキュレート(排気微粒子)が含まれている。
このため、ディーゼルエンジンを搭載した自動車では、排気通路にセラミック製の円柱状のディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、単にフィルタという)を設けて、このフィルタで排気ガス中のパティキュレートを捕集して、パティキュレートの大気への排出を抑制している。
【0003】
ところで、フィルタ内にパティキュレートが堆積していくと、このパティキュレートによりフィルタ内が目詰まりして通気性が損なわれてしまう。このため、定期的にフィルタ内のパティキュレートを除去してフィルタの再生を図る必要がある。
フィルタを再生するには、フィルタ内のパティキュレートを燃焼させる手法が一般に良く知られているが、このようなフィルタの再生時には、フィルタはパティキュレートを捕集することができなくなる。そこで、従来より、一対(2つ)のフィルタを並行に設け、これらの2つのフィルタにより交互にパティキュレートを捕集するようにした排気微粒子除去装置が開発されている。
【0004】
つまり、いずれか一方のフィルタによりパティキュレートの捕集を行ない、このパティキュレートを捕集中のフィルタの再生が必要になったときには、他方のフィルタによりパティキュレートの捕集を行ないながら、上記の一方のフィルタの再生を行なうようにして、これを交互に繰り返すことにより、パティキュレートの捕集を継続して行なえるようにしているのである。
【0005】
なお、フィルタ再生の要否は、フィルタの排気ガス上流側と下流側との差圧に基づいて判定される。これは、フィルタ内にパティキュレートが堆積していくとフィルタ内の通気性が低下して、フィルタの上流側と下流側との差圧が上昇するからである。
以下、このような排気微粒子除去装置の構成の一例について図5を用いて説明すると、排気通路上には、排気ガスの流れ方向の下流側に向かって2方向に分岐したフロントパイプ1が設けられており、このフロントパイプ1の途中で分岐した2つの通路1a,1bにそれぞれケース2a,2bが介装されている。また、各ケース2a,2bの後方(下流側)には、2つの通路3a,3bを有するテールパイプ3が接続されており、このテールパイプ3を介して排気ガスは大気に排出される。
【0006】
そして、各ケース2a,2b内には、電気ヒータ(以下、単にヒータという)24と、パティキュレートを捕集するフィルタ25とが設置されている。ヒータ24は、フィルタ25内に堆積したパティキュレートを燃焼させるための加熱手段であり、図示しない制御手段(コントローラ)により、その作動が制御されるようになっている。
【0007】
また、フロントパイプ1の各通路1a,1b上には、それぞれ開閉弁9a,9bが設けられており、これらの開閉弁9a,9bは、いずれもコントローラからの制御信号に基づいて全閉又は全開の何れかの状態に切り換えられる。つまり、開閉弁9a,9bの作動状態を制御することにより、通路1a,1bが連通状態又は遮断状態に選択的に切換可能に構成されている。
【0008】
そして、上述の開閉弁9a,9bの開閉状態を制御することにより、並列に設けた2つのフィルタ25,25でパティキュレートの捕集を交互に行なって、パティキュレートの捕集を継続して行なうのである。つまり、ケース2a内のフィルタ25によりパティキュレートを捕集するときは、開閉弁9aを全開且つ開閉弁9bを全閉にして、排気ガスの全量をケース2aに流すようにし、一方、ケース2b内のフィルタ25によりパティキュレートを捕集するときは、開閉弁9aを全閉且つ開閉弁9bを全開にして、排気ガスの全量をケース2bに流すようにするのである。
【0009】
また、上記の通路1aと通路1bとの間には、通路10が設けられている。ここで、この通路10の一端は、開閉弁9aとケース2aとの間に接続され、また、その他端は、開閉弁9bとケース2bとの間に接続されている。
また、この通路10には、制御弁11が介装されている。この制御弁11は、ここではコントローラからの制御信号に基づいてその開度が調整可能な制御弁として構成されている。
【0010】
また、各ケース2a,2b内のフィルタ25,25の排気ガス上流側にはフィルタ入口圧力センサ5が、排気ガス下流側にはフィルタ出口圧力センサ6が、それぞれ付設されている。そして、これらの圧力センサ5,6からの検出情報は図示しないコントローラに出力されるようになっており、コントローラでは、圧力センサ5,6からの検出情報に基づきフィルタ25の再生の要否を判定するようになっている。
【0011】
つまり、圧力センサ5,6からの検出情報によりフィルタ25の出入口での差圧ΔPn が演算されて、この差圧ΔPn が所定値以上になった場合には、パティキュレートが所定量よりも堆積したためにフィルタ25の通気性が低下したものと判定され、フィルタ25の再生が行なわれるのである。なお、このような圧力センサ5,6を、1つの差圧センサに置き換えてもよい。
【0012】
さらに、各ケース2a,2bには、フィルタ25の排気ガス上流側に、フィルタ入口温度センサ15が、排気ガス下流側にフィルタ出口温度センサ16が付設されており、フィルタ入口圧力センサ5に検出された圧力情報は、フィルタ入口温度センサ15により検出された温度情報により補正され、フィルタ出口圧力センサ6により検出された圧力情報は、フィルタ出口温度センサ16により検出された温度情報により補正される。
【0013】
そして、各ケース2a,2b内のフィルタ25のうち、一方のフィルタ(例えばケース2a内のフィルタ)25にパティキュレートが堆積した場合には、以下のように、フィルタ25の再生が行なわれるとともに、他方のフィルタ(例えばケース2b内のフィルタ)25により、パティキュレートの捕集が行なわれるようになっている。
【0014】
まず、開閉弁9aを全閉状態にするとともに開閉弁9bを全開状態にして、ケース2a内への排気ガスの流入を遮断する。これにより、フロントパイプ1内の排気ガスは、全量通路1b側に流入し、排気ガス内に含まれるパティキュレートは他方のフィルタ(例えばケース2b内のフィルタ)25で捕集されるようになる。
そして、この状態でケース2a内のフィルタ25をヒータ24により加熱して、パティキュレートの主成分であるカーボンを燃焼させるのである。
【0015】
また、このときには、制御弁11が所定開度となるように制御されて、パティキュレートの燃焼に必要な酸素が通路10側からケース2a内に供給される。
一方、ケース2b内のフィルタ25にパティキュレートが堆積した場合には、上述とは逆に、開閉弁9aを全開状態にするとともに開閉弁9bを全閉状態にして、ケース2a内のフィルタ25により排気ガス中のパティキュレートを捕集するとともに、ケース2b内のヒータ24により加熱してケース2b内のフィルタ25に堆積したパティキュレートを燃焼させるのである。
【0016】
なお、図5中の符号21は排気ガス分散用パイプ、符号22はバッフル、符号23は反射板、符号30はエンジン(内燃機関)、符号31はエアフローセンサ(AFS)である。排気ガス分散用パイプ21の排気ガス下流側の端部は閉塞され、また、その周面には、複数の小径孔が全体にわたって設けられている。したがって、排気管より直進して流れてくる排気ガスは、排気ガス分散用パイプ21の周面の孔から排気ガス分散用パイプ21の径方向に向かって流出し、これにより、排気ガスを外側(ケース2a,2bの内周面側)に分散させて、排気ガスの流れがフィルタ25の中心軸線付近に集中するのを防止している。そして、分散した排気ガスは、バッフル22によって整流されてフィルタ25に流入する。また、反射板23は、ヒータ24からの放射熱をフィルタ25側に反射させて、フィルタ25内に堆積したパティキュレートを効率よく燃焼させるためのものである。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の排気微粒子除去装置では、並列に設けた各フィルタの出入口差圧を検出するためには、各フィルタの入口及び出口にそれぞれ圧力センサを設置するので計4つの圧力センサが必要となる。又、各フィルタの入口と出口とに圧力センサを設ける代わりに差圧センサを設けた場合でも、合計2つの差圧センサが必要となって、センサにかかるコストが比較的高くなってしまうという課題がある。また、センサ数に応じて、コントローラの入力ポート数や演算処理が増加するので、制御系が複雑になるという課題もある。
【0018】
また、エンジンから排出される排気ガスの圧力は、各排気行程の初期に直前の膨張行程の影響を受けて上昇するため、周期的に変動する。したがって、図6(a)に示すように、フィルタ入口の排気ガス圧力P1にも、エンジンのサイクルに応じて周期的な変動(脈動)が生じる。これに対し、フィルタ出口では、排気ガスはヒータやフィルタ等を通過するので、このような脈動が減衰して、フィルタ出口の排気ガス圧力P2は、図示するように変動のないものとなる。このため、図6(b)に示すように、排気ガス圧力P1,P2の差である差圧ΔPn (ΔPn =P1−P2)は、脈動を有するものとなって、差圧ΔPn に基づいて行なわれるフィルタの切換制御が不安定になってしまうという課題もある。
【0019】
ところで、特開平1−92510号公報には、排気管の途中に直列に配設されたフィルタトラップ及び消音器をそなえたフィルタトラップシステムにおいて、1つの差圧センサにより、フィルタトラップの前後の差圧と、消音器の前後の差圧とを検出できるようにした技術が開示されている。
この技術では、差圧センサは、2つのパイロット管を有しており、一方のパイロット管はフィルタトラップと消音器との間の排気管に接続されている。また、他方のパイロット管は、方向切換弁を介して、2つの分岐管に切換可能に接続されており、一方の分岐管は、フィルタトラップ上流側の排気管に接続され、他方の分岐管は、消音器下流側の排気管に接続されている。これにより、方向切換弁を切り換えることにより、1つの差圧センサによりフィルタトラップの前後の差圧と消音器の前後の差圧とを検出することができる。
【0020】
この技術は、上述のような並列に配設された2つのフィルタをそなえて構成される排気微粒子除去装置(図5参照)にも適用可能であり、例えば、差圧センサが有する2つのパイロット管のうち、一方のパイロット管を、各フィルタの排気ガス下流側の排気ガス合流部に接続し、他方のパイロット管を方向切換弁及び2つの分岐管を介して、各フィルタの排気ガス上流側に接続すればよい。
【0021】
これにより、1つの差圧センサによって2つのフィルタの出入口差圧を計測することができるので、差圧センサが削減されて、差圧センサにかかるコストの低減及び制御系の簡素化を行なうことができる。
しかしながら、切換弁の設置,切換弁回りの配管のシール性の確保及び切換弁の制御が新たに必要となるため、排気微粒子除去装置全体としては、コストの低減及び制御系の簡素化を図ることができない。
【0022】
また、フィルタ入口の排気ガス圧力P1の脈動に起因してフィルタの切換制御が不安定になってしまうという課題を解決するものでもない。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、コストの低減を図るとともに制御系を簡素化することができるようにした、排気微粒子除去装置を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の排気微粒子除去装置では、内燃機関の排気通路に設けられた2系統のフィルタにより交互に排気ガス中のパティキュレートの捕集が行なわれ、一方のフィルタが、排気ガスが流入して排気ガス中のパティキュレートを捕集する使用状態のときには、他方のフィルタは、排気ガスの流入しない待機状態となる。
【0024】
各フィルタは出口側で接続されているので、使用状態のフィルタ出口での排気ガス圧力と、待機状態のフィルタ出口での排気ガス圧力は当然等しくなり、又、待機状態のフィルタにおいては、出口側の圧力と、入口側の圧力とは等しくなる。したがって、2系統のフィルタの各入口側との間にそなえられた差圧センサにより差圧を検出することにより、使用状態のフィルタの出入口の差圧が検出される。
【0025】
請求項2記載の排気微粒子除去装置では、請求項1記載の排気微粒子除去装置において、2系統のフィルタの入口を連結するように設けられたパイプ内に流入した排気ガスの圧力変動が、パイプに形成されたチャンバにより減衰して、これにより、内燃機関のサイクルに起因した排気ガスの圧力変動の影響を受けることなく、パイプ内に設けられた差圧センサによりフィルタの出入口の差圧が検出される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明の第1実施形態としての排気微粒子除去装置について図1〜図3を参照しながら説明する。なお、以下では、従来技術として説明した部材と同一の部材については、同一の符号を付しその説明を一部省略する。
【0027】
本発明の第1実施形態としての排気微粒子除去装置は、図1に示すように、並行に設けられた一対(2つ)のフィルタ25,25をそなえて構成され、各フィルタ25,25の排気ガス出入口差圧(以下、単にフィルタ差圧という)に基づいて、フィルタ25,25の切換制御を行なうことにより、2つのフィルタ25,25で交互にパティキュレートを捕集するようになっている。そして、1つの差圧センサ8で、各フィルタ差圧を検出できるようにするとともに、各フィルタ差圧の脈動に起因してフィルタ25,25の切換制御が不安定となってしまうことを防止できるようになっている。
【0028】
具体的には、本実施形態の排気微粒子除去装置は、図1に示すように、内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)30の排気通路32の途中に介装され、上流側からフロントパイプ1,ケース2a,2b及びテールパイプ3をそなえて構成されている。このうちフロントパイプ1は、排気ガス流れ方向下流側に向かって2つの通路1a,1bに分岐し、各通路1a,1bの下流端はケース2a,2bにそれぞれ接続されている。また、各ケース2a,2bの下流側には、2つの通路3a,3bを有するテールパイプ3が接続されている。
【0029】
また、フロントパイプ1の各通路1a,1b上には、開閉弁9a,9bが設けられている。また、通路1aと通路1bとの間には、通路10が設けられ、この通路10には制御弁11が介装されている。
さて、ケース2a,2bの内部は、略同様に構成されており、排気ガス分散用パイプ21,バッフル22,反射板23,ヒータ24及びフィルタ25が、排気ガス上流側からこの順に並べて設けられている。
【0030】
さらに、各フィルタ25,25の排気ガス入口近傍(入口もしくは入口に近い部分,入口側)の相互間には通路(パイプ)7が設けられ、この通路7には、図示しないコントローラに接続された差圧センサ8が介装されている。そして、上述したように1つの差圧センサ8により各ケース2a,2b内のフィルタ差圧ΔPn をそれぞれ検出することができるようになっている。
【0031】
ここで、1つの差圧センサ8により、各ケース2a,2bのフィルタ差圧ΔPn を検出できる理由を説明する。
本発明の排気微粒子除去装置は、上述したように各ケース2a,2b内のフィルタ25,25により交互にパティキュレートを捕集するものであり、例えば、ケース2b内のフィルタ25により排気ガス中のパティキュレートを捕集するときには、ケース2a側の開閉弁9aは全閉、ケース2b側の開閉弁9bは全開、制御弁11は全閉に制御されるようになっている。これにより、排気ガスの全量がケース2bに流入してケース2b内のフィルタ25により、パティキュレートの捕集が行なわれるようになっている。
【0032】
このとき、通路1aは開閉弁9aにより遮断され、通路10は制御弁11により遮断された状態なので、排気微粒子除去装置の排気ガス系統は、図2(a)に示す状態と等価なものとなり、ケース2b内のフィルタ差圧ΔPn (通路7bでの排気ガス圧力と、通路3bでの排気ガス圧力との差)が検出できるようになっている。つまり、各ケース2a,2bの下流側は、テールパイプ3で接続されているので、図2(a)に示すような状態であれば、ケース2bの出口側(通路3b側)圧力とケース2aの出口側(通路3a側)圧力とは等しくなる。また、ケース2aに着目すると、このときケース2aは、フロントパイプ1の通路1aと遮断されているので、ケース2a内では入口側(通路7a側)圧力と出口側(通路3a側)圧力とは等しくなる。従って、ケース2aの入口側(通路7a側)圧力を検出することで、ケース2aの出口側(通路3a側)圧力、ひいてはケース2bの出口側(通路3b側)圧力を知ることができるのである。従って、差圧センサ8により通路7a,7bの差圧を検出することで、ケース2b内のフィルタ差圧ΔPn (通路7bでの排気ガス圧力と、通路3bでの排気ガス圧力との差)が検出できるのである。
【0033】
なお、ケース2bからの排気ガスは、テールパイプ3の合流部3cから排気通路32を通って流出し、通路3a,ケース2a及び通路7aにより形成される排気ガス流路は、排気ガス流れの殆どない状態となり、かかる排気ガス流路により圧力損失が生じることはない。但し、この排気ガス流路の圧力損失が無視できない場合には、コントローラにより、この圧力損失分を補正するようにすれば良い。
【0034】
一方、ケース2a内のフィルタ25により排気ガス中のパティキュレートを捕集するときには、開閉弁9aは全開、開閉弁9bは全閉、制御弁11は全閉とされるようになっている。したがって、通路1bは開閉弁9bにより遮断され、通路10は制御弁11により遮断された状態なので、このときの排気微粒子除去装置の排気ガス系統は、図2(b)に示す状態と等価なものとなって、差圧センサ8により、ケース2a内のフィルタ差圧ΔPn が検出できるようになっている。
【0035】
このように、本発明の排気微粒子除去装置では、1つの差圧センサ8を用いて2つのケース2a,2b内におけるフィルタ差圧ΔPn を、それぞれ検出することができるようになっているのである。
さて、従来技術の課題として既に述べたように、フィルタ差圧ΔPn には、図3中に実線で示すようにエンジン30のサイクルに応じて脈動が生じるため、本実施形態の排気微粒子除去装置では、コントローラにおいて、以下の式(1)により、前回の制御周期において検出されたフィルタ差圧(以下、前フィルタ差圧という)ΔPn-1 と、今回の制御周期において検出されたフィルタ差圧(以下、現フィルタ差圧という)ΔPn との指数平均(平均差圧)ΔPAV を演算し、このΔPAV に基づいて、フィルタ25,25の切換制御が行なわれるようになっている。
ΔPAV =(ΔPn +k×ΔPn-1 )/(k+1) ・・・(1)
【0036】
つまり、平均差圧ΔPAV は、前フィルタ差圧ΔPn-1 と現フィルタ差圧ΔPn との中間値となるので、図3中に一点鎖線で示すように、実際のフィルタ差圧ΔPn よりも変動が抑制され、このような平均差圧ΔPAV に基づいて、ヒータ24,開閉弁9a,9b及び制御弁11の作動を制御することにより、各ケース2a,2b内のフィルタ25の切り換えを安定して行なえるようにしているのである。
【0037】
なお、上式(1)のkは、指数平均(平均差圧ΔPAV )を演算するにあたり、前フィルタ差圧ΔPn-1 と現フィルタ差圧ΔPn との重みを決定する係数であって、平均差圧ΔPAV は、係数kが大きくなるほど、前フィルタ差圧ΔPn-1 の影響を強く受け、逆に、係数kが小さくなるほど、現フィルタ差圧ΔPn の影響を強く受けることになる。
【0038】
また、各ケース2a,2bのフィルタ25の排気ガス出入口には、フィルタ入口温度センサ15及びフィルタ出口温度センサ16がそれぞれ付設されており、これらの温度センサ15,16の検出値はコントローラに出力されるようになっている。そして、コントローラでは、この温度センサ15,16からの検出情報に基づいて、フィルタの入口ガス温度及び出口ガス温度の平均により、平均差圧ΔPAV を温度補正するようになっている。
【0039】
本発明の第1実施形態としての排気微粒子除去装置は、上述のように構成されているので、ケース2a,2bによるパティキュレートの捕集の切り換えは、以下のように行なわれる。
例えば、ケース2b内のフィルタ25により、排気ガス中のパティキュレートの捕集が行なわれているときは、開閉弁9aは全閉、開閉弁9bは全開、制御弁11は全閉とされ、この状態では、上述したように、ケース2b内のフィルタ差圧ΔPn が、差圧センサ8により検出される〔図2(a)参照〕。
【0040】
そして、コントローラでは、上式(1)により、このフィルタ差圧ΔPn と前フィルタ差圧ΔPn-1 との指数平均(平均差圧)ΔPAV が演算され、この平均差圧ΔPAV が所定値以上になった場合には、ケース2b内のフィルタ25にパティキュレートが堆積したと判定されて、開閉弁9a,9bが切り換えられ、ケース2a内のフィルタ25によりパティキュレートの捕集が行なわれるとともに、ケース2b内のフィルタ25の再生が開始される。
【0041】
具体的には、コントローラにより、ケース2b内のヒータ24は作動状態、開閉弁9aは全開、開閉弁9bは全閉、制御弁11は所定開度となるように制御される。これにより、排気ガスのほとんどは、通路1aからケース2a内のフィルタ25に流入して、このフィルタ25でパティキュレートが捕集され、一方、ケース2b内のフィルタ25は、ヒータ24により加熱され、フィルタ25内に堆積したパティキュレートが燃焼する。このとき燃焼に必要な酸素は、制御弁11を介してケース2b内に供給される。
【0042】
一方、ケース2a内のフィルタ25により、排気ガス中のパティキュレートが捕集されているときは、開閉弁9aは全開、開閉弁9bは全閉、制御弁11は全閉とされ、この状態では、上述したように、ケース2aのフィルタ差圧ΔPn が、差圧センサ8により検出される〔図2(b)参照〕。そして、このフィルタ差圧ΔPn が所定値以上になったときには、ケース2a内のヒータ24は作動状態、開閉弁9aは全閉、開閉弁9bは全開、制御弁11は所定開度となるように制御される。そして、これ以外は上述と同様にしてフィルタ25の再生が行なわれる。
【0043】
このように、ケース2a,2b内のフィルタ25の各差圧ΔPn を、従来の排気微粒子除去装置では、上述したように4つの圧力センサまたは2つの差圧センサにより検出しているのに対し、本実施形態の排気微粒子除去装置によれば、1つの差圧センサ8により検出することができる。したがって、センサが削減されるので、コストが低減されるとともに制御系が簡素化されるという利点がある。
【0044】
また、前フィルタ差圧ΔPn-1 と現フィルタ差圧ΔPn との中間値となる平均差圧ΔPAV に基づいてフィルタ25の再生の要否が判定されるので、エンジン30のサイクルに応じて発生する実際のフィルタ差圧ΔPn の脈動に影響されずに、安定してフィルタ25の切換制御を行なうことができるという利点がある。また、例えば、従来技術の排気微粒子除去装置(図5参照)において、各フィルタのそれぞれに差圧センサを設けて各フィルタの差圧ΔPn を検出する場合は、各差圧センサには、それぞれセンサ固有値(それぞれのセンサが有する検出値のばらつき)があるため、このセンサ固有値差が、フィルタ差圧ΔPn に基づくフィルタの切換制御に影響する。これに対し、本実施形態の排気微粒子除去装置によれば、1つの差圧センサにより各フィルタの差圧ΔPn を検出するので、当然ながら、従来技術のようにセンサ固有値に差異がないため、フィルタ差圧ΔPn に基づいて、フィルタの切換制御を安定して行なえるという利点がある。
【0045】
なお、本実施形態では、平均差圧ΔPAV を、前フィルタ差圧ΔPn-1 と現フィルタ差圧ΔPn との指数平均として算出しているが、平均差圧ΔPAV は、実際のフィルタ差圧ΔPn よりも変動の抑制されたものであれば良く、指数平均の代わりに、例えば、以下の(2)式に示すような移動平均により平均差圧ΔPAVを算出してもよい。なお、(2)式中のΔPn-i は所定回数i前の制御周期において検出されたフィルタ差圧を示す。
【0046】
【式2】
【0047】
次に、本発明の第2実施形態としての排気微粒子除去装置について図4を参照しながら説明する。なお、以下では、従来技術及び第1実施形態として説明した部材と同一の部材については、同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態の排気微粒子除去装置は、図4に示すように、第1実施形態の排気微粒子除去装置について、差圧センサ8の両側にチャンバ35a,35bを設けた構造のものである。
【0048】
つまり、第1実施形態では、実際のフィルタ差圧ΔPn よりも変動を抑制した平均差圧ΔPAV に基づいてフィルタ25,25の切換制御を行なうことにより、エンジン30のサイクルに応じて発生するフィルタ差圧ΔPn の脈動(排気ガス圧力の脈動)に影響を受けることなく、安定してフィルタ25,25の切換制御を行なえるようにしているのに対し、本実施形態の排気微粒子除去装置では、差圧センサ8の両側にチャンバ35a,35bを設けることにより、排気ガス圧力の脈動を減衰して、安定してフィルタ25,25の切換制御を行なえるようにしている。
【0049】
前述したように、フィルタ差圧ΔPn の脈動は、即ち、各フィルタ25の入口圧力P1の脈動である。本実施形態の排気微粒子除去装置は、第1実施形態と同様に、フィルタ2bの差圧を検出するときには差圧センサ8の通路7b側がフィルタ25の入口圧力P1の検出側となり〔図2(a)参照〕、一方、フィルタ2aの差圧を検出するときには差圧センサ8の通路7a側がフィルタ25の入口圧力P1の検出側となる〔図2(b)参照〕。
【0050】
つまり、差圧センサ8の両側が、フィルタ25の入口圧力P1の検出側となりうるため、差圧センサ8の両側にチャンバ35a,35bを設けて、入口圧力P1の脈動を減衰するようにしているのである。
また、本実施形態では、チャンバ35a,35bによりフィルタ差圧ΔPn の脈動が直接に抑制されるため、第1実施形態のように平均差圧ΔPAV に基づいて制御を行なう必要はない。従って、フィルタ差圧ΔPn に基づいて、コントローラにより、ヒータ24,開閉弁9a,9b及び制御弁11の作動が制御されるようになっている。
【0051】
本発明の第2実施形態としての排気微粒子除去装置は、上述のように構成されているので、フィルタ差圧ΔPn に基づいて、フィルタ差圧ΔPn が所定値以上になった場合、捕集中のフィルタ25にパティキュレートが堆積したとして、第1実施形態と同様にフィルタ25,25の切換制御が行なわれる。
したがって、平均差圧ΔPAVを演算する必要がなくなり、より簡素な制御システムで第1実施形態と同様の効果が得られるという利点がある。
【0052】
なお、本発明の排気微粒子除去装置は、上述の実施形態のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、各実施形態では、配管7に1つの差圧センサ8を介装しているが、各配管7a,7bにそれぞれ圧力センサを設けて、これらの2つの圧力センサによって1つの差圧センサを構成してもよい。このときには、2つの圧力センサからの圧力情報により、コントローラが差圧を演算するように構成する。この場合でも、従来の排気微粒子除去装置においては、圧力センサにより各ケース2a,2b内のフィルタ差圧ΔPn を検出するには4つの圧力センサが必要となるので、従来に較べ、本発明の排気微粒子除去装置は圧力センサの数量を半減できる。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明の排気微粒子除去装置では、内燃機関の排気通路に設けられた2系統のフィルタにより交互に排気ガス中のパティキュレートの捕集が行なわれ、一方のフィルタが、パティキュレートを捕集する使用状態のときには、他方のフィルタは、排気ガスの流入しない待機状態となる。各フィルタは出口側で接続されているので、使用状態のフィルタ出口での排気ガス圧力と、待機状態のフィルタ出口での排気ガス圧力は当然等しくなり、又、待機状態のフィルタにおいては、出口側の圧力と、入口側の圧力とは等しくなる。したがって、2系統のフィルタの各入口側との間に介装された差圧センサにより差圧を検出することにより、使用状態のフィルタの出入口の差圧が検出される。
【0054】
つまり、何れのフィルタにより排気ガス中のパティキュレートの捕集が行なわれている場合にも、常に使用状態のフィルタの出入口差圧が検出されるので、2系統のフィルタの出入口差圧を、1つの差圧センサにより検出できるのである。従って、例えば、2つの差圧センサにより2系統のフィルタの出入口の差圧を検出していた従来技術に対して、差圧センサが半数となって、コストの低減を図るとともに制御系を簡素化することができるという利点がある。
【0055】
また、各フィルタのそれぞれに差圧センサを設けて各フィルタの出入口差圧を検出するような従来技術では、各差圧センサには、それぞれセンサ固有値があるため、このセンサ固有値差が、フィルタの出入口差圧に基づくフィルタの切換制御に影響する。これに対し、請求項1記載の本発明の排気微粒子除去装置によれば、1つの差圧センサにより各フィルタの出入口差圧を検出するので、当然ながらセンサ固有値に差異がないため、フィルタの切換制御を安定して行なえるという利点がある。
【0056】
請求項2記載の本発明の排気微粒子除去装置では、2系統のフィルタの入口を連結するように設けられたパイプ内に流入した排気ガスの圧力変動が、パイプに形成されたチャンバにより減衰し、これにより、内燃機関のサイクルに起因した排気ガスの圧力変動の影響を受けることなく、パイプ内に設けられた差圧センサにより各フィルタの出入口の差圧が検出されるので、この差圧に基づいて2系統のフィルタの切り換えを安定して行なうことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としての排気微粒子除去装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態としての排気微粒子除去装置の各フィルタの出入口差圧の検出方法を説明するための模式図であって、(a)は下方のフィルタの出入口差圧の検出状態を示す図、(b)は上方のフィルタの出入口差圧の検出状態を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態としての排気微粒子除去装置におけるフィルタ出入口の平均差圧の挙動の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態としての排気微粒子除去装置の構成を示す模式図である。
【図5】従来の排気微粒子除去装置の構成を示す模式図である。
【図6】従来の排気微粒子除去装置のフィルタの出入口圧力及び差圧の挙動を示す模式図であって、(a)はフィルタの入口圧力及び出口圧力を示す図、(b)はフィルタの出入口差圧を示す図である。
【符号の説明】
7 通路(パイプ)
8 差圧センサ
25 フィルタ
30 エンジン(内燃機関)
32 排気通路
35a,35b チャンバ
ΔPn フィルタ差圧
Claims (2)
- 内燃機関の排気通路に並列に2系統のフィルタを設け、該2系統のフィルタにより交互に排気ガス中のパティキュレートを捕集するとともに、該2系統のフィルタの下流側で該排気ガスの流れが合流するように構成された排気微粒子除去装置において、
該2系統のフィルタの各入口側との間に差圧を検出する差圧センサをそなえて構成されている
ことを特徴とする、排気微粒子除去装置。 - 該差圧センサが、該2系統のフィルタの入口を連結するように設けられたパイプ内に設けられ、該パイプに該排気ガスの圧力変動を減衰させるためのチャンバが形成されている
ことを特徴とする、請求項1記載の排気微粒子除去装置。
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