JP3657423B2 - 繊維混合不織布並びにその製造方法 - Google Patents

繊維混合不織布並びにその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、合成皮革や人工皮革の用途に適した繊維混合不織布に関し、更に詳しくは熱処理により収縮して緻密かつ柔軟な風合いを発現し、合成皮革や人工皮革の基布として好適に使用する事ができる繊維混合不織布及びその製造方法に関する物である。
【0002】
【従来の技術】
従来から、天然皮革に類似した合成繊維からなる不織布を製造する試みが多くなされているが、この不織布には、通常、緻密さと柔軟さとが要求される。
【0003】
その一法として、高収縮性繊維と分割性複合繊維とからなるウエブに交絡・収縮処理及び分割処理を施す方法(特開昭53−122875号公報)が開示され、これにより、不織布を構成する繊維を細デニール化する事が図られている。しかしながら、この方法だと不織布の緻密さは発現するものの極細繊維を得るためにアルカリもしくは溶剤処理を必要とするためコストが上昇し、しかも得られる不織布は収縮性能の経時安定化に欠けるという課題があった。
【0004】
上記課題を解決するために、極細ナイロン(2dr以下)とイソフタル酸変性ポリエステルとを使用して、経時安定化の優れた、緻密で柔軟な不織布を得る方法(特開平3−146752号公報)が開示されている。しかしながら、この方法も、イソフタル酸変性をすると高収縮物性の経時変化は抑制されるものの、共重合されていないポリエステル繊維を使用した不織布より触感が硬くなり、実際製品にすると品位が天然皮革に及ばない物となってしまうという課題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題を解決し、合成皮革のみならず、合成皮革よりー層機能・触感・風合いの点で天然皮革、特にスエードに近い人工皮革の用途に適した、緻密かつ柔軟な風合いを発現し、合成皮革や人工皮革を基布として好適に使用する事が出来る繊維混合不織布とその製造法を提案しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明に達した。すなわち、本発明は、ポリメタクリル酸とポリエステルとが重量比で0.1/99.9〜5/95の割合でブレンドしたポリメタクリル酸ブレンドポリエステル繊維Aと、単糸繊度が2デニール以下のナイロン繊維Bとが混合され、交絡処理されてなる不織布であって、ポリメタクリル酸ブレンドポリエステル繊維Aと、単糸繊度が2デニール以下のナイロン繊維Bとの混綿比率が20/80〜80/20の範囲を満足し、かつ交絡点間での両繊維A、Bは、該ポリエステル繊維Aに対してナイロン繊維Bの繊維長が長く屈曲状を呈し、主として、該繊維Aより表面部に位置するように構成されてなる繊維混合不織布である。また本発明は、ポリメタクリル酸とポリエステルとが重量比で0.1/99.9〜5/95の割合ブレンドされた組成からなり、かつ70℃の温水中で30%以上の収縮率を有するポリメタクリル酸ブレンドポリエステル繊維Aと、単糸繊度が2デニール以下のナイロン繊維Bとが混綿比率20/80〜80/20の範囲で混合された繊維混合ウエブに交絡処理を施し、次いで加熱収縮処理を施す事を特徴とする繊維混合不織布の製造方法である。
【0007】
本発明の不織布並びにその製造方法の第―の特徴は、高収縮性PMMAブレンドポリエステル繊維Aを使用する点にあり、この高収縮性ポリエステル繊維Aとは、PMMAとポリエステルとが重量比で0.1/99.9〜5/95の割合でブレンドされた組成からなり、且つ70℃の温水中で30%以上の収縮率を有する点である。
【0008】
このような高収縮特性を得るためのポリエステル繊維Aの製造方法においては、通常の方法でブレンドした後、常法に従って溶融紡糸し、得られた未延伸繊維糸条を通常より低い温度(50〜60℃)で延仲ローラーを使用して1.5〜4倍に延伸する事により製造する事が出来る。この時、この繊維の高収縮性を発揮させるために、延仲後の熱セットは行わないか、または、熱セットを行うとしても低温で行う。
【0009】
PMMAのチップブレンド率が0.1/99.9を下回った繊維とすると、原綿製作時に30%以上有った収縮率が経時変化し、温度40℃・湿度50%の雰囲気下では約2週間で15%迄収縮率が低下してしまう。このように、経時変化し収縮率が低下した原綿を使用すると緻密な不織布を製造する事が出来ない。又、PMMAのブレンド率が5/95を越えた組成とすると、紡糸性が極端に悪化すると共に、PMMAがヂメチルホルムアミド(DMF)に溶解する事から、人工皮革を作成する際のウレタン含浸時に、該ウレタンの溶媒に使われているDMFにPMMAが溶解し、残ったポリエステル成分繊維の繊度が小さいものとなるので、製品強度を劣化させてしまい好ましくない。
【0010】
該PMMAブレンドポリエステル繊維Aは、染色堅牢度、力学物性等からその繊度が0.1デニール(dr)以上が好ましく、風合上からは2dr以下が好ましいが、該繊維Aの繊度を規定するものではない。
【0011】
なお、本発明においては、ポリエステル中にPMMAを添加する事により、該PMMA側鎖の立体障害によりポリエステルの安定化を抑制させるものであり、PMMAはポリエステル中に存在する必要があり、それは共重合の状態であってもよい。
【0012】
本発明にいうナイロン繊維Bにおいては、単糸繊度が2dr以下、より好ましくは0.8dr以下である事が好適で、この単糸繊度が小さい程スエード調の人工皮革に近い触感を得る事が出来る。しかしカード通過性の点から言えば、0.1dr以上である事が好ましい。
【0013】
本発明での繊維Aおよび繊維Bのカット長については、21〜75mmが適当であるが、本発明はそのカット長に限定されるものではない。
【0014】
前記高収縮性PMMAブレンドポリエステル繊維Aと単糸繊度が2dr以下のナイロン繊維Bとからなる混合ウエブの、前者繊維Aと後者繊維Bとの混合割合は、その重量比で20/80〜80/20である。A/Bが20/80未満となると熱水での収縮効果が低下することとなり好ましくなく、逆に80/20を超える比率となると得られる不織布が固いものとなり、柔軟な風合いが低下してくるので好ましくない。
【0015】
両繊維A及びBを用いての混綿及びそれに続くウェブの作成は、この種公知の混綿手段並びにカード等ウェブ作成手段によって行うことができ、これら手段が特定されない。
また、得られたウェブへの交絡処理も、通常のニードルパンチ手段やウォータージェットによるパンチ手段等、これまでに公知のいかなる交絡手段をも採用することが出来る。
【0016】
交絡処理の後の加熱収縮処理は、温水処理浴槽での湿式方式又は熱風循環ドライヤー等での乾式方式など、いずれの方式によることも可能である。その加熱条件は、例えば、温水処理では80〜90℃で2〜3分、乾熱処理では160℃で5〜6分といった条件を採用することができる。なお、温水処理浴槽での収縮処理に際しては、湿潤時にナイロン繊維Bの弾性が失活するため、収縮後ネットではさみ込んで形態保持する事が好ましい。また熱風循環ドライヤー等での乾式収縮処理に際しては、低融点の方の繊維の融点以下の温度で処理を行えばよい。
【0017】
本発明の不織布において、使用するPMMAブレンドポリエステルには、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を共重合してもよく、また、艶消し材、安定剤、着色剤等の添加剤を添加してもよい。
【0018】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。実施例における各種特性は次のように測定した。
【0019】
〔相対粘度〕:フェノールと4塩化エタンの等重量混合溶液を溶媒とし、試料濃度0.5/dl、 温度20℃で測定した。
【0020】
〔風合い〕:5人のパネラーによる官能試験により、次の5段階で評価した。
1:柔らかい、2:やや柔らかい、3:普通、4:やや硬い、5:硬い
【0021】
〔製造直後の熱水収縮率S0〕:製造直後から1日以内経過の長さL0の繊維を70℃の温水処理槽で5分間処理した後室温迄冷却した後、試料の長さL1を測定し、次の式に従って収縮率S0を求めた。
0(%)=L0―L1/L0*100
【0022】
〔湿熱収縮率差ΔS〕:経時安定性の評価として湿熱収縮率差ΔSを測定した。すなわち、製造直後から温度40℃、相対湿度50%の条件下で5週間放置後の長さL2の繊維を温水70℃で5分間処理した後、室温迄冷却した。冷却後の試料の長さL3を測定し、次の式に従って収縮率S1を求めた。
1(%)=L2―L3/L2*100
【0023】
更に、下記の式を用いて、ΔSを求めた。
ΔS(%)=S0―S1

【0024】
〔面積収縮SA〕:不織布の加熱収縮処理前の面積A0と処理後の面積A1を測定し、下記の式によって、面積収縮率SAを求めた。
SA(%)=A0―A1/A0*100
【0025】
実施例1;ブレンド比が0.5/99.5のPMMAとポリエステルからなる相対粘度0.65のブレンドポリエステルを常法により溶融紡糸した後、65℃で3倍延伸した。延伸繊維は熱セットする事なく切断して、単糸繊度が1.5dr、長さ51mmmのステープルを作成した。この短繊維の収縮率S0は、45.4%、収縮率差ΔSは、4.5%であった。
【0026】
一方常法に従い、単糸繊度0.8dr、長さ51mmのナイロン6繊維を製造した。
【0027】
次いで、これらのブレンドポリエステル繊維とナイロン繊維とを30:70の混綿比率で混綿し、カードに通して目付100/m2のウエブとした後、ニードルパンチで絡合処理を行い、70℃の熱水中で5分間処理して不織布を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。この不織布は、緻密な構造と柔軟な触感を有するものであった。
【0028】
実施例2;PMMA/ポリエステルのブレンド比率を2/98とした以外は実施例1と同様条件で不織布を製造した。
【0029】
比較例1〜2;PMMA/ポリエステルのブレンド比率を0.1/99.9の場合と30/70の場合にした以外は実施例1と同様条件で不織布を製造した。
PMMAブレンド比を0.5/99.5以下にすると、PMMAのブレンド効果が認められず、経時変化の大きな原綿となった。そのため、面積収縮率も低下し緻密さに欠ける不織布となった。又、PMMA/ポリエステルのブレンド比率を30/70より大きいものとすると、紡糸時の曳糸性が無くなり試料を採取することが出来なかった。
【0030】
【表1】
Figure 0003657423
【0031】
【発明の効果】
本発明の不織布は、緻密で柔軟な風合いを有するものである。これは、高収縮特性を有するPMMAブレンドポリエステル繊維(A)が高収縮して緻密さを発現し、かつ該PMMAブレンドポリエステル繊維(A)との収縮率差により、柔軟さに優れたナイロン繊維(B)が不織布の表面部分に現出するためである。また、高収縮性PMMAブレンドポリエステル繊維(A)は、製造直後から有る程度の期間放置しても加熱収縮しにくい。すなわち、経時変化が少なく、経時安定性がよいため、不織布製造ロット間に不織布の緻密さや柔軟さのバラッキが生じず、品質的に安定した不織布となる、大きな特徴を有する。また本発明の不織布を、合成皮革や人工皮革の基布として使用した時、緻密かつ柔軟な風合いを発現し、又、経時変化の少ないブレンドポリエステル繊維を使用するため、常に安定した品質の不織布を製造する事が出来る。

Claims (2)

  1. ポリメタクリル酸とポリエステルとが重量比で0.1/99.9〜5/95の割合でブレンドしたポリメタクリル酸ブレンドポリエステル繊維Aと、単糸繊度が2デニール以下のナイロン繊維Bとが混合され、交絡処理されてなる不織布であって、ポリメタクリル酸ブレンドポリエステル繊維Aと、単糸繊度が2デニール以下のナイロン繊維Bとの混綿比率が20/80〜80/20の範囲を満足し、かつ交絡点間での両繊維A、Bは、該ポリエステル繊維Aに対してナイロン繊維Bの繊維長が長く屈曲状を呈し、主として、該繊維Aより表面部に位置するように構成されてなる繊維混合不織布。
  2. ポリメタクリル酸とポリエステルとが重量比で0.1/99.9〜5/95の割合ブレンドされた組成からなり、かつ70℃の温水中で30%以上の収縮率を有するポリメタクリル酸ブレンドポリエステル繊維Aと、単糸繊度が2デニール以下のナイロン繊維Bとが混綿比率20/80〜80/20の範囲で混合された繊維混合ウエブに交絡処理を施し、次いで加熱収縮処理を施す事を特徴とする繊維混合不織布の製造方法。
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