JP3657382B2 - 増幅用トランジスタの動作状態を切り換えるオートバイアス回路 - Google Patents

増幅用トランジスタの動作状態を切り換えるオートバイアス回路 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にFET、HEMT等を用いた増幅器の導通、非導通を切り換えるオートバイアス回路であって、アイソレーション特性を改善するための回路構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2には、従来の増幅器及びこの増幅器の動作状態を切り換えるオートバイアス回路の一例が示されており、この増幅器は受信装置のマイクロ波増幅器等として用いられる。図2において、増幅用トランジスタQ1 としてHEMT(High Electron Mobility Transistor)[又はFET(電界効果型トランジスタ)]が用いられ、信号入力側(ゲート側)に、カップリングコンデンサC1 、チョーク回路(帯域抑止型フィルタ)を構成するコイル1A及びマイクロストリップライン2Aが設けられ、このチョーク回路は信号ラインに接続する際に信号周波数帯域のみ影響しないインピーダンスで設計される。
【0003】
同様に、上記増幅用トランジスタQ1 の出力側(ドレイン側)にも、チョーク回路を構成するコイル1B及びマイクロストリップライン2B、カップリングコンデンサC2 が設けられる。なお、上記のチョーク回路を補足し、信号周波数帯以外の周波数の不具合を防止するために抵抗(51Ω)及びコンデンサ(1000pF)が設けられる。
【0004】
一方、オートバイアス回路4には、上記増幅用トランジスタQ1 のゲート側にコレクタを、ドレイン側にエミッタを配置したトランジスタQ2 と、抵抗R1 〜R4 が設けられる。このオートバイアス回路4では、上記増幅用トランジスタQ1 のゲート側の電源供給端子6に負電圧V- が与えられ、トランジスタQ1 へドレイン電流を供給する線路に、スイッチSW1を介して正電圧V+ が与えられる。そして、このスイッチSW1は、コンパレータ等から出力された制御信号(DC信号)で切換え動作される。
【0005】
上記図2の構成によれば、制御信号に基づきスイッチSW1 がオン(閉)、オフ(開)動作し、スイッチSW1 のオン時では、オートバイアス回路4によって増幅用トランジスタQ1 に所定のゲート電圧VG 及びドレイン電圧VD が与えられ、増幅用トランジスタQ1 は導通状態となる。一方、上記スイッチSW1 のオフ時では、電圧V+ の供給線路が断たれるので、増幅用トランジスタQ1 のドレイン電圧VD が0となって、ゲート電圧VG が所定の電圧まで下がることになる。これにより、ピンチオフ状態となり、増幅用トランジスタQ1 は非導通状態となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のオートバイアス回路では、増幅用トランジスタの非導通時のアイソレーションが十分でないという問題があった。即ち、このアイソレーションは、増幅用トランジスタQ1 のゲート・ドレイン電圧VGDを大きくすることにより高めることができる。しかし、上記のようにスイッチSW1 の開時に非導通状態とする構成では、ドレイン電圧VD が0Vとなり、ゲート電圧VG でゲート・ドレイン電圧VGDが決まることになる。例えば、HEMTの定格値まで下げ、VG =−2Vとした場合でも、ゲート・ドレイン電圧VGDは2Vとなり、十分なアイソレーションが得られなかった。
【0007】
ここで、非導通時の増幅用トランジスタQ1 のドレインに、所望のドレイン電圧VD を与え、上記ゲート・ドレイン電圧VGDを高くすることも可能ではあるが、この場合は、ドレイン側に別のスイッチ回路を配置しなければならず、回路が複雑化するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、回路を複雑化させずに、増幅用トランジスタの十分なアイソレーションが確保できる増幅用トランジスタの動作状態を切り換えるオートバイアス回路を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、増幅用トランジスタに対し電源供給を行うオートバイアス回路において、上記増幅用トランジスタのドレインの負荷抵抗値を異なる値に設定するための負荷抵抗と、この負荷抵抗を切換え設定するための抵抗切換え用トランジスタとを設け、上記抵抗切換え用トランジスタの動作に基づいた上記負荷抵抗値の切換えにより上記増幅用トランジスタの導通及び非導通を実行し、この増幅用トランジスタの非導通時には、そのドレイン電圧を0値とせずに、当該トランジスタのゲート・ドレイン電圧を高い値に設定できるようにしたことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、増幅用トランジスタの非導通時には、抵抗切換え用トランジスタにより高い抵抗値が設定されるので、増幅用トランジスタのドレイン電圧を導通時のドレイン電圧に保ったまま、ドレイン電流を絞り込み、当該増幅用トランジスタをピンチオフ状態とすることができる。即ち、負荷抵抗値を適当な値に設定することにより、降伏電圧値を越えない範囲で増幅用トランジスタのゲート・ドレイン電圧を高くとることができ、これによりアイソレーションを改善することが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1には、本発明の実施形態の一例である増幅用トランジスタの動作状態を切り換えるオートバイアス回路の構成が示されており、この回路は水平偏波と水平偏波のマイクロ波を選んで受信する装置のマイクロ波増幅器等として用いられるものである。図において、この例の場合も、HEMTからなる増幅用トランジスタQ1 に対し、入力側のゲートに、カップリングコンデンサC1 、チョーク回路としてのコイル1A及びマイクロストリップライン2Aが設けられ、出力側のドレインに、チョーク回路としてのコイル1B及びマイクロストリップライン2B、カップリングコンデンサC2 が設けられる。同様に、上記のチョーク回路を補足するための抵抗(51Ω)及びコンデンサ(1000pF)も配置される。
【0012】
また、バイアス回路として、切換え型オートバイアス回路10が設けられており、この切換え型オートバイアス回路10内には、図2と同様に、トランジスタQ2 と、例えば220Ωの抵抗R1 、100kΩの抵抗R2 、3kΩの抵抗R3 、1.8kΩの抵抗R4 が図示のように配置される。そして、この切換え型オートバイアス回路10の上記抵抗R1 と電源供給端子7の間に、抵抗切換え用トランジスタQ3 と100kΩの抵抗R5 を追加し、この抵抗切換え用トランジスタQ3 のゲートに比較器等から出力される制御信号(DC信号)を入力し、この制御信号でオンオフ動作させるようにする。
【0013】
この抵抗切換え用トランジスタQ3 によれば、上記増幅用トランジスタQ1 のドレインの負荷抵抗値を、R1 の220Ωと(R1 +R5 )の約100kΩ(トランジスタQ3 の抵抗は無視できる値)の2値に切り換えることができる。なお、上記トランジスタQ2 のコレクタ側の電源供給端子6に例えば−2V、エミッタ側の電源供給端子7に例えば+5Vが与えられる。
【0014】
実施形態例は以上の構成からなり、上記切換え型オートバイアス回路10によれば、抵抗切換え用トランジスタQ3 はLow レベルの制御信号でオン(導通)し、 Highレベル制御信号によりオフ(非導通)し、増幅用トランジスタQ1 のドレイン側の負荷抵抗を切り換える。即ち、上記トランジスタQ3 のオン時では、抵抗R1 、R5 及びトランジスタQ3 の合成抵抗は、このトランジスタQ3 のベース・エミッタ電圧VBEを無視すれば、抵抗R1 の約220Ωとなり、トランジスタQ3 のオフ時では、抵抗R1 、R5 及びトランジスタQ3 の合成抵抗は、(抵抗R1 +抵抗R5 )で、約100kΩとなる。
【0015】
ここで、上記バイアス回路10内のトランジスタQ2 のベース・エミッタ電圧VBEは、約0.6Vとなるので、上記抵抗R1 、R5 及びトランジスタQ3 の上記2通りの合成抵抗の端子間電圧は一定となり、この合成抵抗は等価的に定電流源とみなすことができる。従って、この合成抵抗を切り換えることは定電流源の電流値を切り換えることになり、この電流値は増幅用トランジスタQ1 のドレイン電流ID となる。
【0016】
そうして、上記のように、抵抗切換え用トランジスタQ3 がオンして、上記合成抵抗が220Ω(R1 )となったとき、例えばトランジスタQ2 のエミッタ電圧VE を2.5V、トランジスタQ3 のベース・エミッタ電圧VBEを0.3Vとすると、(2.5V−0.3V)÷220Ω=0.01Aの計算により、上記ドレインID =10mAとなる。このとき、増幅用トランジスタQ1 のドレイン・ソース間に所定の動作電圧(例えば、約2V)が与えられることになり、増幅用トランジスタQ1 は導通状態となる。なお、このときのゲート電圧VG は、−0.5V程度である。
【0017】
一方、上記抵抗切換え用トランジスタQ3 がオフして、合成抵抗が約100kΩ(R1 +R5 )となったときは、2.5V÷1×105Ω =2.5×10-5Aの計算により、ドレイン電流ID =25μAとなり、ピンチオフして非導通状態となる。但し、上記のように、ドレイン電流を25μAまで絞ることで、トランジスタQ2 に流入する電流が無視できなくなるため、実際の電流は25μAよりも小さくなる。
【0018】
ここで、仮に上記のドレイン電流ID が15μAであったとすると、抵抗R1 の電圧降下は、100kΩ×(25μA−15μA)=1Vとなり、このときのゲート電圧VG は−1Vとなる。そして、この場合よりもドレイン抵抗が低い増幅用トランジスタ(HEMT)Q1 であれば、上記ドレイン電流ID は増加して逆に抵抗R1 の電流が減少し、ゲート電圧VG を下げる。一方、ドレイン抵抗が高いトランジスタQ1 であれば、上記ドレイン電流ID は減少して逆に抵抗R1 の電流が増加し、ゲート電圧VG を上げる。従って、当該回路構成によれば、通常のオートバイアス回路と同様に負帰還回路が構成されることになり、ドレイン電圧VD を維持したまま、増幅用トランジスタQ1 はピンチオフし、ドレイン電流ID がほほ一定の動作点に設定される。
【0019】
このような切換え型オートバイアス回路10によれば、上述のように、増幅用トランジスタQ1 の非導通時のゲート電圧VG が例えば−1Vで、ドレイン電圧VD が約2Vであるから、ゲート・ドレイン電圧VGDは、VGD=|VD −VG |≒3Vとなる(このVGDは、ゲート電圧VG を更に低下させれば3Vより大きくすることができる)。即ち、ドレイン電圧VD を0Vとせずに、動作中の電圧に保ったことにより、ゲート・ドレイン電圧VGDを高く設定することが可能となり、従って従来の図2の回路構成に比べ、非導通時のアイソレーションが改善されることになる。
【0020】
上記実施形態例では、従来の図2のオートバイアス回路4に存在していた抵抗R1 ,R3 を利用し、抵抗R5 を加えることにより、ドレインの負荷抵抗値を異なる値に設定する抵抗群を構成したが、抵抗切換え用トランジスタQ3 のオフ抵抗値との関係で、従来から既に取り付けられている抵抗のみを利用して、切り換える所望の抵抗値を設定することも可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、オートバイアス回路において抵抗切換え用トランジスタを設け、増幅用トランジスタのドレインの負荷抵抗値を異なる値に切り換えることにより、当該増幅用トランジスタの導通、非導通を設定するようにしたので、増幅用トランジスタのドレイン電圧を動作中の電圧に保ったままピンチオフさせることができ、この結果、回路を複雑化させずに十分なアイソレーションを確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態例に係る増幅用トランジスタの動作状態を切り換えるオートバイアス回路の構成を示す図である。
【図2】従来の増幅器及びオートバイアス回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
10 … 切換え型オートバイアス回路、
Q1 … 増幅用トランジスタ、
Q2 … トランジスタ、
Q3 … 抵抗切換え用トランジスタ、
R1 〜R5 … 抵抗。

Claims (1)

  1. 増幅用トランジスタに対し電源供給を行うオートバイアス回路において、
    上記増幅用トランジスタのドレインの負荷抵抗値を異なる値に設定するための負荷抵抗と、
    この負荷抵抗を切換え設定するための抵抗切換え用トランジスタとを設け、
    上記抵抗切換え用トランジスタの動作に基づいた上記負荷抵抗値の切換えにより上記増幅用トランジスタの導通及び非導通を実行し、この増幅用トランジスタの非導通時には、そのドレイン電圧を0値とせずに、当該トランジスタのゲート・ドレイン電圧を高い値に設定できるようにしたことを特徴とする増幅用トランジスタの動作状態を切り換えるオートバイアス回路。
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