JP3657201B2 - 緑化防音壁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、騒音を軽減するとともに植物を植栽して緑化を図ることのできる緑化防音壁に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車道路の沿線や工場敷地の外周などには、自動車の走行音や機械の作動音などの騒音が周辺地域に広がるのを防止するため防音壁が立設されている。従来の防音壁は、コンクリートブロックやレンガなどを積み上げて構築された単純な構造のものから、騒音を吸収するための複雑な音波減衰構造を有するものまで、多種多様である。
【0003】
一方、自然環境との調和が重視されるようになった今日、工場敷地の外周に沿って樹木や草花などを植えて隔壁としたり、コンクリート壁に蔦類を繁茂させて緑化を図ったりする例も増えている。
【0004】
また、従来より、植物の植栽による緑化機能および騒音防止機能を兼備した、様々な種類の緑化防音壁が開発されているが、本発明に関連する先行技術が特開平06−228919号公報、特開2000−34178号公報などに開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開平06−228919号公報に開示されている緑化防音壁は構造が複雑であるため、大量の資材を必要とし、施工にも手間がかかる。
【0006】
特開2000−34178号公報に開示されている複合コンクリートブロックは、透水性、保水性などを備えているため植栽が可能であるが、植栽用の培養土を保持する手段を設けなければならないので、実際に緑化防音壁を構築する場合、施工が困難である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、施工が容易で、植物の活着、生育が良好で緑化機能に優れ、高い防音機能を発揮する緑化防音壁を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の緑化防音壁は、垂直または傾斜状に立設された嵩比重0.4〜0.6の多孔質連続間隙構造の発泡ガラス製のボード材と、前記ボード材と同素材を用いて前記ボード材表面に設けられた培養土支持部材と、前記培養土支持部材および前記ボード材表面に付着させた植栽用培養土とを備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成とすることにより、多孔質連続間隙構造の発泡ガラス製のボード材および培養土支持部材が雨水などを吸水、保水するとともに保肥材としても機能し、植栽用培養土に植えられた植物に対して適度の水分および肥料分を長期間にわたって供給することができるので、植物の活着および生育が良好となって優れた緑化機能を発揮し、ボード材などが有する吸音性で高い防音機能が得られる。また、ボード材、培養土支持部材、および植栽用培養土からなる簡素な構造であるため、施工も容易である。
【0010】
本発明に用いるボード材は、ガラス材を粉砕して微粉末化し、この粉末に炭酸カルシウム、炭化珪素およびホウ素を含む添加剤を加えて形成された混合物を一定厚さの層状に敷き詰め、特殊反応炉内に装入し、800〜950℃に加熱することによって溶融、発泡、焼成してボード状の発泡ガラス材とし、この特殊反応炉内において400〜650℃の温度で0.1〜10時間程度焼鈍した後、常温まで徐冷することによって多孔質構造を備えたものである。
【0011】
さらに前記培養土支持部材を棚形状とすることにより、ボード材を90〜45度に立設した場合の植栽用培養土の滑落や剥離を防止し、雨水を効率良く吸水、保水することができ、箱形状とすることにより、蔦類、花類、低木類の植栽が容易となり、雨水を効率良く吸水、保水することができ、ベンチ形状とすることにより、前述と同様に植栽用培養土の滑落や剥離を防止し、蔦類、花類、低木類の植栽が容易となり、雨水を効率良く吸水、保水することができる。
【0012】
前記培養土支持部材を、前記ボード材に挿入された合成樹脂製の係止ピンを用いて固定することにより、緑化防音壁全体の重量増大を抑制しつつ、十分な強度を確保することができ、発錆、腐食のおそれもなく、施工後の耐久性も優れている。なお、係止ピンとしては、株式会社サカノ合成製のミラクルピン(商品名)などが好適である。このミラクルピンは、廃プラスチックを再利用した加熱成形温度145℃の再生品であり、引張強さ73MPa、曲げ強さ60MPa、曲げ弾性率340MPaを発揮する。
【0013】
前記植栽用培養土として、前記ボード材表面に厚層基盤材を吹き付けることにより、この厚層基盤材が雨水を効率良く吸水、保水し、植栽された植物に適度の水分を長期間供給するので、植物の生育が促進され、自然環境と融合した緑化防音壁を構築することができる。なお、厚層基盤材とは、土砂、接合剤および肥料などに、多孔質連続間隙構造の発泡ガラスで形成された粒状体を混合して形成された植栽用土壌材であり、植物種子を混入させることもできる。
【0014】
また、前記ボード材、培養土支持部材に肥料水溶液を含有させておけば、植栽された植物に対して適度の肥料分を長期間にわたって連続的に供給することができるので、植物の生育が促進されるだけでなく、生育期間中の施肥作業を簡略化することができる。
さらに、前記ボード材表面および培養土支持部材に付着させた植栽用培養土の支持のための網状体を備えることにより植栽用培養土の滑落および剥離を防止する。この網状体としては、ラス金網、植生用ネットなどが好適である。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は第1実施形態の緑化防音壁を示す斜視図、図2は図1に示す緑化防音壁の垂直断面図、図3は図1に示す緑化防音壁の側面図である。
【0016】
本実施形態の緑化防音壁1は、路面2に所定距離を隔てて設けられた2列のガードレール4の間に60〜80度に傾斜して立設されたボード材3と、ボード材3と同素材を用いてボード材3表面に設けられた培養土支持部材5と、ボード材3の表面および培養土支持部材5を被覆する網状体7と、網状体7を被覆するようにボード材3表面および培養土支持部材5に付着した植栽用培養土6と、を備えている。2枚のボード材3は、垂直断面が逆V字をなすように配置され、アルミニウム製の支柱9によって路面2に固定されている。なお、支柱9は、アルミニウム材のほか間伐材を利用して形成することも可能であり、間伐材は20〜30年の耐久性を有しているので実用上何ら問題はなく、間伐材の有効活用、省資源、コスト削減を図ることができる。
【0017】
ボード材3および板状の培養土支持部材5は嵩比重0.4〜0.6の多孔質連続間隙構造の発泡ガラスで形成され、培養土支持部材5は、ボード材3に挿入された合成樹脂製の係止ピン8で棚形状をなすように固定されている。植栽用培養土6は厚層基盤材を吹き付けることによってボード材3の表面に付着させたものであり、網状体7としてラス金網を用いている。
【0018】
このような構成とすることにより、植栽用培養土6に播種したり、苗を植えることにより、植栽用培養土6に植物10を植栽することができる。多孔質連続間隙構造の発泡ガラスで形成されたボード材3および培養土支持部材5は雨水を効率良く吸水、保水するとともに保肥材としても機能し、植栽用培養土6に植えられた植物10に対して適度の水分および養分を長期間にわたって供給できるので、植物10の活着および生育が良好であり、優れた緑化機能を発揮する。
【0019】
また、ボード材3および培養土支持部材5には、予め肥料水溶液を含有させているため、植栽された植物10に対して長期間にわたって適度の肥料分を供給し続けることができ、植物10の生育が促進されるだけでなく、生育期間中の施肥作業を簡略化することができる。
【0020】
また、ボード材3、植栽用培養土6および植物10などは音波のエネルギを減衰させる吸音機能を有しているため、高い防音機能が得られる。また、ボード材3、培養土支持部材5、植栽用培養土6および網状体7からなる簡素な構造であるため、施工も容易である。網状体7としてラス金網が全面的に張設され、ラス金網は植栽用培養土6の中央部にセットされるため、植栽用培養土6の滑落および剥離を防止することができる。
【0021】
また、培養土支持部材5を棚形状としているため、ボード材3を90〜45度程度の急角度に立設した場合でも、植栽用培養土6の滑落や剥離が発生せず、雨水を効率良く吸水、保水し、植物10に対して適度の水分を長期間供給することができる。
【0022】
さらに、培養土支持部材5を、ボード材3に挿入された合成樹脂製の係止ピン8を用いて固定しているため、緑化防音壁1の軽量化を図りつつ、十分な強度を確保することができ、発錆や腐食のおそれがないので、耐久性も優れている。なお、本実施形態では、係止ピン8として、株式会社サカノ合成製のミラクルピン(商品名)を用いている。
【0023】
植栽用培養土6は、土砂、接合剤および肥料などに多孔質連続間隙構造の発泡ガラスで形成された粒状体を混合して形成された厚層基盤材をボード材3表面に吹き付けて形成したものであり、雨水を効率良く吸水、保水し、植栽された植物10に適度の水分を長期間にわたって供給できるので、植物10の生育が促進され、自然環境と融合した緑化防音壁1を構築することができる。なお、本実施形態では、ボード材3としてミラクルソル協会の(商品名)ミラクルボードを使用し、発泡ガラスで形成された粒状体としてミラクルソル協会製のミラクルボール(商品名)を使用している。
【0024】
ボード材3を構成する多孔質連続間隙構造の発泡ガラスおよび厚層基盤材に混合されている多孔質連続間隙構造の発泡ガラス粒状体は、いずれも廃ガラスを利用して製造することができるので、資源の有効活用、廃棄物の削減にも寄与することができる。
【0025】
次に図4を参照して、第2実施形態の緑化防音壁20について説明する。なお、緑化防音壁20において、前述した緑化防音壁1と同様の機能、効果を発揮する部分は図1〜図3と同じ符号を付して説明を省略する。
【0026】
緑化防音壁20では、路面2の路肩部分に設けられたガードレール4の外側にボード材3が傾斜して立設され、このボード材3の表面に、箱形状の培養土保持部材21を複数取り付け、培養土支持部材21に収容された植栽用培養土6に植物10が植えられている。箱形状の培養土支持部材21は、合成樹脂製の係止ピン8によってボード材3の表面に固定されている。また図示していないが網状体7によって固定を補強することでより強固な構成となる。
【0027】
培養土支持部材21が箱形状であるため、ツタ類、花類、低樹木類などを容易に植栽することができ、培養土支持部材21はボード材3と同一材料であるため、吸水性、保水性に優れ、植栽された植物10に適度の水分を長期間にわたり安定供給することができる。その他の構造、機能については、前述した緑化防音壁1と同様である。
【0028】
次に図5および図6を参照して、第3実施形態の緑化防音壁30について説明する。なお、緑化防音壁30において、前述した緑化防音壁1,20と同様の機能、効果を発揮する部分は図1〜図4と同じ符号を付して説明を省略する。
【0029】
緑化防音壁30は、路面31に所定間隔ごとに打ち込まれたH型鋼製の支柱32の間にボード材3を垂直に立設し、ボード材3の表面に培養土支持部材5,21,33を取り付け、ボード材3および培養土支持部材5,21,33が網状体7で覆われ、培養土支持部材5,21,33の上に積載された植栽用培養土6に植物10が植えられている。培養土支持部材5,21,23は係止ピン8および網状体7によってボード材3の表面に固定されている。なお、H型鋼の支柱32の代わりに、全国的に余剰状況にある間伐材を用いることも可能であり、間伐材を採用することにより、資源の有効活用、コスト削減を図ることができる。
【0030】
培養土支持部材33はベンチ形状であるため、植物10の根が早期に植栽用培養土6中へ伸長することができ、活着性、生育性に優れており、植栽用培養土6の滑落、剥離を防止する機能も優れている。
【0031】
また、緑化防音壁30は垂直に立設されるため、傾斜した緑化防音壁に比べ平面占有スペースが小さく、面積が狭い場所でも設置できるという利点がある。
【0032】
【発明の効果】
本発明により、以下に示す効果を奏する。
【0033】
(1)垂直または傾斜状に立設された嵩比重0.4〜0.6の多孔質連続間隙構造の発泡ガラス製のボード材と、前記ボード材と同素材を用いて前記ボード材表面に設けられた培養土支持部材と、前記培養土支持部材および前記ボード材表面に付着させた植栽用培養土とを備えた構成とすることにより、施工は容易で、植物の活着、生育が良好となり、優れた緑化機能および高い防音機能を発揮する。
【0034】
(2)培養土支持部材を棚形状とすることにより、ボード材を90〜45度に立設した場合でも植栽用培養土の滑落や剥離を防止し、雨水を効率良く吸水、保水することができ、箱形状とすることにより、蔦類、花類、低樹木類の植栽が容易となり、雨水を効率良く吸水、保水することができ、ベンチ形状とすることにより、前述と同様に植栽用培養土の滑落や剥離を防止し、蔦類、花類、低木類の植栽が容易となり、雨水を効率良く吸水、保水することができる。
【0035】
(3)培養土支持部材を、ボード材に挿入された合成樹脂製の係止ピンを用いて固定することにより、緑化防音壁全体の重量増大を抑制しつつ、十分な強度を確保することができ、施工後の耐久性も優れたものとなる。
【0036】
(4)植栽用培養土として、ボード材表面に厚層基盤材を吹き付けることにより、雨水を効率良く吸水、保水し、植栽植物に適度の水分を長期間供給できるようになるので、植物の生育が促進され、自然環境と融合した緑化防音壁を構築することができる。
【0037】
(5)ボード材、培養土支持部材に、肥料水溶液を含有させておくことにより、植栽された植物に対し、長期間にわたって適度の肥料分を連続的に供給可能となるため、植物の生育が促進され、施肥作業を簡略化することができる。
【0038】
(6)ボード材表面および前記培養土支持部材に付着された植栽用培養土の滑落および剥離を防止する網状体を備えることにより植物によって緑化された景観を長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態の緑化防音壁を示す斜視図である。
【図2】 図1に示す緑化防音壁の垂直断面図である。
【図3】 図1に示す緑化防音壁の側面図である。
【図4】 第2実施形態の緑化防音壁を示す縦断面図である。
【図5】 第3実施形態の緑化防音壁を示す側面図である。
【図6】 図5に示す緑化防音壁の垂直断面図である。
【符号の説明】
1,20,30 緑化防音壁
2,31 路面
3 ボード材
4 ガードレール
5,21,33 培養土支持部材
6 植栽用培養土
7 網状体
8 係止ピン
9,32 支柱
10 植物
Claims (5)
- 垂直または傾斜状に立設された嵩比重0.4〜0.6の多孔質連続間隙構造の発泡ガラス製のボード材と、前記ボード材と同素材を用いて前記ボード材表面に設けられた培養土支持部材と、前記培養土支持部材および前記ボード材表面に付着させた植栽用培養土とを備え、
前記ボード材と前記培養土支持部材に肥料水溶液を含有させたことを特徴とする緑化防音壁。 - 前記培養土支持部材が、棚形状、箱形状、ベンチ形状のいずれかである請求項1記載の緑化防音壁。
- 前記培養土支持部材を、前記ボード材に挿入された係止ピンを用いて固定した請求項1または2記載の緑化防音壁。
- 前記植栽用培養土として、前記ボード材表面に厚層基盤材を吹き付けた請求項1〜3のいずれかに記載の緑化用防音壁。
- 前記ボード材表面および前記培養土支持部材に付着させた植栽用培養土の滑落および剥離を防止する網状体を備えた請求項1〜4のいずれかに記載の緑化防音壁。
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