JP3657115B2 - 黒色電極を持つディスプレイ用電磁波シールド - Google Patents

黒色電極を持つディスプレイ用電磁波シールド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電磁波シールドに関するものであり、さらに詳しくはプラズマディスプレイパネルに好適に用いられる電磁波シールドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、社会が高度化するに従って、光エレクトロニクス関連部品、機器は著しく進歩している。その中で、画像を表示するディスプレイは、従来のテレビジョン装置用に加えて、コンピューターモニター装置用等としてめざましく普及しつつある。従来から広く用いられてきたディスプレイとしては、CRTディスプレイが挙げられ、現在でもなお幅広く用いられているが、このCRTディスプレイからは、電磁波が放出される。
【0003】
また近年、ディスプレイの大型化及び薄型化に対する市場要求は高まる一方である。最近、大型かつ薄型化を実現することが可能であるディスプレイとしてプラズマディスプレイパネル(PDP)が、注目されている。しかし、プラズマディスプレイパネルは、原理上、強度の電磁波を装置外に放出することが知られている。
【0004】
電磁波は、計器に障害を及ぼすことが知られており、最近では、電磁波が人体にも障害を及ぼす可能性もあるとの報告もされている。このため、電磁波放出に関しては、法的に規制される方向になっている。例えば、現在日本では、VCCI
(Voluntarily Control Council for Interference by Data Processing Equipment Electronic Office Machine) による規制があり、米国では、FCC (Federal Communication Commission)による製品規制がある。
また、プラズマディスプレイパネルは、強い近赤外線を放出する。この近赤外線は、コードレス電話や赤外線方式のリモートコントローラー等の誤動作を引き起こす。特に問題となる波長は、800〜1000nmである。
【0005】
電磁波及び近赤外線放出を抑えるために、最近、電磁波遮断用光学フィルターまたは電磁波及び近赤外線遮断用光学フィルターに対する要請が高まっている。これら電磁波シールドは、フィルター全面に渡って導電性があり、しかも透明性に優れている必要がある。これらの要求を満たし、実用化された電磁波シールドは、大きく2種類に分けることができる。一つは、金属メッシュタイプと呼ばれているものであり、基体全面に細く金属を格子状に配置させたものである。これは、導電性に優れ、優れた電磁波遮断能力を持つが、近赤外線反射能力及び透明性が優れず、モワレ像が生じることからディスプレイフィルター用途に対して、あまり好ましくない。もう一つは、透明膜タイプと呼ばれているものであり、透明導電性薄膜を基体全面に配置したものである。透明導電性薄膜タイプの電磁波シールドは、金属メッシュタイプの電磁波シールドに比較して、電磁波遮断能力に劣るが、近赤外線遮断能力及び透明性に優れ、モワレ像の発生がない。
【0006】
上記電磁波シールドの電磁波遮断原理は、透明導電層部分にて電磁波を吸収し、電流として、外部に取り出すものである。このため、電磁波シールドには透明導電層部分から外部に電流を取り出すための電極(外周電極)が形成されている必要がある。通常は、透明導電層上、外周部分に導電性テープを貼り付けたり、導電性塗料を塗布する事によって形成される場合が多い。
電極から外部への電流の取り出し方法としては、ディスプレイ本体の表示部外周部分に電磁波シールドの電極接続部が設けられており、その部分に電極を接続する事により、装置外へ電流を取り出すことが通常行われる。この時、電磁波シールドの電極形成面の反対面が、視聴者側になる。
【0007】
電極の色は、用いる材料によって様々であるが、導電性塗料を用いる場合は、銀ペーストが用いられることが多く、この場合は、白色に近い銀色である。また、導電性テープを用いる場合は、銅テープが用いられる場合が多く、この場合は、銅色である。いずれにしても、電極は、有色であり、電磁波シールド自体が高透明性を有するため、電極形成面の反対面からも電極を視認することができる。また、電磁波遮断の効率を上昇させるために電極は、電磁波シールドのできるだけ内側に位置することが好ましい。
【0008】
通常、ディスプレイの表示部分は、表示画面のガラスや高分子成形体の外周からやや内側に位置しており、非表示部分は、黒色である。これに電磁波シールドを設置した場合、表示部分の外周ぎりぎりの位置に電磁波シールドの電極を位置させると、非表示部分位置で電磁波シールドの電極形成判定面が視聴者から視認できる。外観的に、この表示部分は、意匠上黒色であることが好ましく、電極形成部分の反対部分に黒色層を形成することが通常行われる。手法としては、黒色塗料を印刷したり、塗布したり、また黒色テープを貼り付けたりする事が通常行われる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
電磁波シールド上の電極形成部分反対部分への黒色層形成が、電磁波シールド生産において、一工程として存在し、生産コストを上昇させているという課題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属ペーストに黒鉛を含む黒色導電性粒子を混合させた黒色の導電性塗料を用いて電極を形成することによって意匠性を損ねることなく上記課題を解決することができることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、(1)透明成形体上に形成された透明導電層上の外周部分に、金属ペーストに黒鉛を含む黒色導電性粒子を混合させた黒色導電性塗料により電極が形成されていることを特徴とするディスプレイ用電磁波シールド、(2)該透明導電層の形成方法が透明導電性薄膜フィルムの貼り合わせであることを特徴とする(1)記載のディスプレイ用電磁波シールド、(3)該黒色導電性塗料が銀ペースト塗料に黒鉛粒子を分散させたものであることを特徴とする(1)または(2)に記載のディスプレイ用電磁波シールド、(4)該透明成形体が透明高分子成形体であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のディスプレイ用電磁波シールド、(5)該透明成形体がアクリル樹脂成形体であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のディスプレイ用電磁波シールド、(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用電磁波シールド、(7)アクリル樹脂成形体上に貼り合わせられた透明導電性薄膜フィルム上の外周部分に、金属ペーストに黒鉛を含む黒色導電性粒子を混合させた黒色導電性塗料により電極が形成されているプラズマディスプレイ用電磁波シールドにおいて、少なくとも透明導電性薄膜フィルムと防性フィルム、反射防止フィルム、反射防止防性フィルムとを、反射防止フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止フィルム、反射防止フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/防性フィルム、反射防止フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止防性フィルム、防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止フィルム、防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/防性フィルム、防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止防性フィルム、反射防止防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止フィルム、反射防止防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/防性フィルム、または反射防止防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止防性フィルムのいずれか構成で貼り合わせたことを特徴とするプラズマディスプレイ用電磁波シールド、である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明を添付図面でもって説明する。図1は、本発明によって製造されるディスプレイ用電磁波シールドの一例を示す断面図である。図1に示したディスプレイ用電磁波シールドにおいては、透明高分子成形体(A)10上に透明導電性薄膜フィルム(B)20を貼り合わせてあり、さらに、その上に防性フィルム(C)30を貼り合わせてある。また透明高分子成形体(A)の反対面上に反射防止フィルム(D)40を貼り合わせてある。透明導電性薄膜フィルム(B)上の外周部分に電極(E)50が形成されている。図2は、本発明により製造される電磁波シールドを電極側から見た平面図である。電極(E)50が外周部分に形成されている状態が示されている。
【0013】
本発明に用いられる透明成形体としては、透明性に優れ、十分な機械的強度持ち、できるだけ軽量であり、割れにくいものであることが好ましい。ここで、透明性に優れるとは、厚さ3mm程度の板にした時の波長400〜700nmの光に対する透過率が、50%以上であることを指す。透明成形体としては、透明高分子成形体が好適に用いられるが、ガラスが用いられる場合もある。
【0014】
透明高分子成形体に用いるに好ましい材料を例示すれば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を始めとするアクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等が挙げられるが、これらの樹脂に特定されるわけではない。中でもPMMAは、その広い波長領域での高透明性と機械的強度の高さから好適に使用することができる。高分子成形体の厚さに特に制限はなく、十分な機械的強度と、たわまずに平面性を維持する剛性が得られれば良い。通常は、1〜10mm程度である。
【0015】
また、透明高分子成形体には、表面の硬度または密着性を増す等の理由でハードコート層が設けられることが多い。ハードコート層材料としては、アクリレート樹脂またはメタクリレート樹脂が用いられる場合が多いが、特に限定されるわけではない。またハードコート層の形成方法は、紫外線硬化法または重合転写法が用いられる場合が多いが、特にこれに限定されるわけではない。重合転写法は、対象となる材料が、メタクリレート樹脂等セルキャスト重合ものに限定されるが、連続製版方式によって非常に生産性良く、ハードコート層を形成することができる。このため、重合転写法によるメタクリレート樹脂層形成は、最も好適に用いられるハードコート層形成手法である。
透明成形体としてガラスを用いる場合は、強化ガラスを用いることが好ましい。
【0016】
本発明において、透明導電性薄膜タイプ電磁波シールドにおける透明導電層の形成は、透明基体に直接透明導電薄膜層を形成する場合と透明導電性薄膜フィルムを透明基体に貼り合わせる場合とがある。後者の場合は、あらかじめ高分子フィルムに透明導電性薄膜を形成し、透明導電性薄膜フィルムを作製する。透明導電性薄膜層の形成は、通常真空成膜法で行われるが、透明基体として高分子成形体を用いる場合は、高分子成形体からのガス放出が多く、真空成膜用の基体として不向きなため、直接透明基体に透明導電性薄膜層を形成することは好ましくない。このため、透明基体として高分子成形体を用いる場合は、透明導電性薄膜フィルムを透明基体に貼り合わせる手法が通常用いられる。
【0017】
本発明において、電磁波シールドには、透明導電性薄膜層以外に目的に応じて様々な光学薄膜層が形成されている場合が多い。この場合も、透明高分子成形体を基体として用いる場合は、通常目的の光学薄膜層を有する光学フィルムをあらかじめ用意し、基体に貼り合わせる。この光学フィルムを具体的に例示すると、透明導電性薄膜フィルム、防性フィルム、ニュートンリング防止フィルム、反射防止フィルム、反射防止防性フィルム、色素フィルム等が挙げられる。
【0018】
透明導電性薄膜フィルムは、電磁波及び近赤外光を遮断する効果を持ち、本発明における電磁波シールドにとって必要不可欠である。この透明導電性薄膜フィルムは、高分子フィルム上に透明導電性薄膜層を形成することによって得られている。
【0019】
透明導電性薄膜フィルムの基材として用いられる高分子フィルムの材料は、透明性があれば特に制限はない。具体的に例示すると、ポリイミド、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン(PP)、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。中でもポリエチレンテレフタレート(PET)及びトリアセチルセルロース(TAC)は、特に好適に用いられる。
【0020】
透明導電性薄膜層は、透明高屈折率薄膜層と金属薄膜層との積層体である場合が多い。透明導電性薄膜単層でも電磁波遮断効果がある程度得られるが、充分でなく、通常透明高屈折率薄膜と金属薄膜とを、十分な透過率及び表面抵抗値が得られる膜厚組み合わせで積層して得られる。透明導電性薄膜層の好ましい透過率は、40%以上、99%以下、より好ましくは、50%以上、99%以下、さらに好ましくは、60%以上、99%以下である。また、好ましい表面抵抗値は、0.2(Ω /□)以上、100(Ω /□)以下、好ましくは、0.2(Ω /□)以上、10(Ω /□)以下、さらに好ましくは、0.2(Ω /□)以上、3(Ω /□)以下、さらにより好ましくは、0.2(Ω /□)以上、0.5(Ω /□)以下である。
【0021】
上記、透明高屈折率薄膜層(b)と金属薄膜層(c)との積層体を透明高分子成形体基体(a)上に積層する事によって得られる、透明導電性薄膜フィルムの積層構造を具体的に示すと、a/b/c/b、a/b/c/b/c/b、a/b/c/b/c/b/c/b、a/b/c/b/c/b/c/b/c/b、a/b/c/b/c/b/c/b/c/b/c/b等である。
【0022】
透明高屈折率薄膜層(b)に用いられる材料としては、できるだけ透明性に優れたものであることが好ましい。ここで透明性に優れるとは、膜厚100nm程度の薄膜を形成したときに、その薄膜の波長400〜700nmの光に対する透過率が60%以上であることを指す。また、高屈折率材料とは、550nmの光に対する屈折率が、1.4以上の材料である。これらには、用途に応じて不純物を混入させても良い。
【0023】
透明高屈折率薄膜層用に好適に用いることができる材料を例示すると、インジウムとスズとの酸化物(ITO)、カドミウムとスズとの酸化物(CTO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、亜鉛とアルミニウムとの酸化物(AZO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化トリウム(ThO)、酸化スズ(SnO)、酸化ランタン(La )、酸化シリコン(SiO)、酸化インジウム(In)、酸化ニオブ(Nb )、酸化アンチモン(Sb)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化セシウム(Cs )、酸化チタン(TiO)、酸化ビスマス(Bi )等である。また、透明高屈折率硫化物を用いても良い。具体的に例示すると、硫化亜鉛(ZnS)、硫化カドミウム(CdS)、硫化アンチモン(Sb)等があげられる。
【0024】
透明高屈折率材料としては、中でも、ITO、TiO2、ZnOが特に好ましい。ITO及びZnOは、導電性を持つ上に、可視領域における屈折率が、2.0程度と高くさらに可視領域にほとんど吸収を持たない。TiO2は絶縁物であり、可視領域にわずかな吸収を持つが、可視光に対する屈折率が2.3程度と大きい。
【0025】
本発明において用いられる、金属薄膜層の材料としては、できるだけ電気伝導性の良い材料が好ましく、銀、銅、金、白金、パラジウムまたはそれらの合金が用いられる。中でも銀は、比抵抗が、1.59×10-6(Ω・cm)であり、あらゆる材料の中で最も電気伝導性に優れる上に、薄膜の可視光線透過率が優れるため、最も好適に用いられる。但し、銀は、薄膜とした時に安定性を欠き、硫化や塩素化を受け易いという問題を持っている。この為、安定性を増すために、銀の替わりに銀と金の合金または、銀と銅の合金または銀とパラジウムの合金または銀と白金の合金等を用いてもよい。銅は、薄膜の可視光透過性が、銀に比較して劣るが、比抵抗が、1.67×10-6(Ω・cm)であり、銀に次いで電気伝導性に非常に優れているため、本発明における金属薄膜に好適に利用することができる。金も銅と同じように薄膜の可視光線透過率が銀に劣るが、比抵抗が、2.35×10-6(Ω・cm)と銀、銅に次いで電気伝導性に優れるため、本発明における金属薄膜として好適に利用することができる。
【0026】
高屈折率薄膜層及び金属薄膜層の形成には、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の従来公知の手法によればよい。
金属薄膜層の形成には、真空蒸着法またはスパッタリング法が、好適に用いられる。真空蒸着法では、所望の金属を蒸着源として使用し、抵抗加熱、電子ビーム加熱等により、加熱蒸着させることで、簡便に金属薄膜を形成することができる。また、スパッタリング法を用いる場合は、ターゲットに所望の金属材料を用いて、スパッタリングガスにアルゴン、ネオン等の不活性ガスを使用し、直流スパッタリング法や高周波スパッタリング法を用いて金属薄膜を形成することができる。成膜速度を上昇させるために、直流マグネトロンスパッタリング法や高周波マグネトロンスパッタリング法が用いられることも多い。
【0027】
透明導電性薄膜層の形成には、イオンプレーディング法または反応性スパッタリング法が好適に用いられる。イオンプレーティング法では、反応ガスプラズマ中で所望の金属または焼結体を抵抗加熱、電子ビーム加熱等により真空蒸着を行う。反応性スパッタリング法では、ターゲットに所望の金属または焼結体を使用し、反応性スパッタリングガスにアルゴン、ネオン等の不活性ガスを用いてスパッタリングを行う。例えば、ITO薄膜を形成する場合には、スパッタリングターゲットにインジウムとスズとの酸化物を用いて、酸素ガス中で直流マグネトロンスパッタリングを行う。
【0028】
本発明において用いられる防性フィルムは、0.1〜10μm程度の微小な凹凸を表面に有する可視光線に対して透明なフィルムである。具体的には、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型または光硬化型樹脂に、シリカ、メラミン、アクリル等の無機化合物または有機化合物の粒子を分散させインキ化したものを、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法等によって透明高分子フィルム上に塗布硬化させる。粒子の平均粒径は、1〜40μmである。または、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂を基体に塗布し、所望のヘイズ又は表面状態を有する型を押しつけ硬化する事によっても防性フィルムを得ることができる。さらには、ガラス板をフッ酸等でエッチングするように、基体フィルムを薬剤処理することによっても防性フィルムを得ることができる。この場合は、処理時間、薬剤のエッチング性により、ヘイズを制御することができる。上記、防性フィルムにおいては、適当な凹凸が表面に形成されていれば良く、作成方法は、上記に挙げた方法に限定されるものではない。防性フィルムのヘイズは、0.5%以上20%以下であり、好ましくは、1%以上10%以下である。ヘイズが小さすぎると防性が不十分であり、ヘイズが大きすぎると平行光線透過率が低くなり、ディスプレイ視認性が悪くなる。この防性フィルムは、多くの場合、ニュートンリング防止フィルムとして用いることができる。
【0029】
反射防止フィルムとは、高分子フィルム上に反射防止層を形成したフィルムであり、反射防止層が形成されている面の可視光線反射率が0.1%以上、2%以下、好ましくは、0.1%以上、1.5%以下、より好ましくは、0.1%以上、0.5%以下の性能を有することが望ましい。反射防止膜が形成されている面の可視光線反射率は、反対面(反射防止膜が形成されていない面)をサンドペーパーで荒らし、黒色塗装等により、反対面の反射をなくして、反射防止膜が形成されている面のみで起こる反射光を測定することにより知ることができる。
【0030】
反射防止層としては、具体的には、可視光域において屈折率が1.5以下、好適には、1.4以下と低い、フッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を、例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物窒化物、硫化物等の無機化合物又はシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したものがある。単層形成したものは、製造が容易であるが、反射防止性が多層積層に比べ劣る。多層積層したものは、広い波長領域にわたって反射防止能を有し、基体フィルムの光学特性による光学設計の制限が少ない。これら無機化合物薄膜の形成には、スパッタリング、イオンプレーティング、イオンピームアシスト、真空蒸着、室式塗工法等、従来公知の方法を用いればよい。
【0031】
反射防止層を形成する基体として、防性フィルムを用いても良い。この場合は、一枚のフィルムで防性機能と反射防止機能を合わせ持った光学フィルムを作製することができ、このフィルムは、使用する部材数低減に効果があるため、好適に用いられる。
【0032】
本発明において用いられる粘着材は、できるだけ透明なものが好ましい。使用可能な粘着材を具体的に例示すると、アクリル系粘着材、シリコン系粘着材、ウレタン系粘着材、ポリビニルブチラール粘着材(PVB)、エチレンー酢酸ビニル系粘着材(EVA)等である。中でもアクリル系粘着材は、透明性及び耐熱性に優れるために特に好適に用いられる。
【0033】
粘着材の形態は、大きく分けてシート状のものと液状のものに分けられる。シート状粘着材は、通常、感圧型であり、貼り付け後に各部材をラミネートする事によって貼り合わせを行う。液状粘着材は、塗布貼り合わせ後に室温放置または加熱により硬化させるものであり、粘着材の塗布方法としては、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ロールコート法等が挙げられ、粘着材の種類、粘度、塗布量等から考慮選定される。粘着材層の厚みに特に制限はないが、0.5〜50μm、好ましくは、1〜30μmである。粘着材を用いて貼り合わせを行った後は、貼り合わせた時に入り込んだ気泡を脱法させたり、粘着材に固溶させ、さらには部材間の密着力を向上させるために、加圧、加温条件下にて養生を行うことが好ましい。この時、加圧条件としては、一般的に数気圧〜20気圧程度であり、加温条件としては、各部材の耐熱性にも依るが、一般的には室温以上、80℃以下である。
【0034】
本発明において透明高分子成形体への光学フィルムの貼り合わせ方法に特に制限はない。通常は、高分子成形フィルムに粘着材を貼り付け、その上を離型フィルムで覆ったものをロール状態であらかじめ用意しておき、ロールから高分子成形フィルムを繰り出しながら、離型フィルムをはがしていき、高分子成形体基板上へ貼り付け、ロールで押さえつけながら貼り付けていく。貼り合わせられたフィルム上に重ねて貼り合わせる場合も同様である。
【0035】
本発明において電極の形状に特に制限はないが、ディスプレイ用フィルターと電磁波遮断を必要とする機器との間に電磁波が漏洩する隙間がないことが好ましく、電極と透明導電層との間に空気層が存在しないことが好ましい。従って、透明導電層の導電面上及び周辺部に連続的に電極を形成することが好ましい。すなわち、ディスプレイからの光線透過部である中心部分を除いて、枠状にかつ凹凸がないように電極を形成することが通常行われる。
【0036】
電極に用いる材料は、形成される電極の色が黒色であれば特に制限はない。ここで黒色であるとは視感反射率が10%以下のことである。金属ペーストは、黒鉛等の黒色導電性粒子を混合させることにより容易に黒色化させることができるために本発明において好適に用いられる。用いられる金属としては、銀、金、銅、白金、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、亜鉛等の単体もしくは2種以上からなる合金等が挙げられる。中でも銀または銀を含む混合物からなる銀ペーストは、導電性に最も優れるため、本発明において最も好適に用いられる。また、金属粒子の溶液も黒鉛等の黒色導電性粒子を混合させることによって容易に黒色化させることができるため本発明において用いることが可能である。合成樹脂と金属との混合物や金属テープもその製造過程において容易に黒鉛等の黒色導電性粒子を混合させ黒色化させることができるため本発明において用いることができる。
【0037】
電極を形成するための方法としては、印刷法、塗工法、メッキ法、真空蒸着法、スパッタ法等従来公知の手段を用いることができる。特に印刷法は、金属ペーストを材料として、導電膜上に空気層を作らずになめらかに電極を効率よく作製することができるため本発明において最も好適に用いられる。
電極の厚さに関しては、特に制限はないが、通常は、数μmから数mm程度である。
【0038】
上記の方法により作製した、電磁波シールドの層構成及び各層の状態は、断面の光学顕微鏡測定、走査型電子顕微鏡(SEM)測定、透過型電子顕微鏡測定(TEM)を用いて調べることができ、電極の色は、反射スペクトルを測定することによって調べることができる。電極の成分は、断面または表面を赤外吸収分光顕微鏡測定またはX線顕微鏡(XMA)によって測定し、特定することができる。
【0039】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
透明高分子フィルム(a)としてポリエチレンテレフタレートフィルム[ 厚さ75μm]を使用し、その一方の主面に、直流マグネトロンスパッタリング法を用いて、インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層(b)、銀薄膜層(c)をa/b[厚さ40nm]/c[厚さ10nm]/b[厚さ80nm]/c[厚さ15nm]/b[厚さ80nm]/c[厚さ10nm]/b[厚さ40nm]なる順に積層し、透明導電性薄膜フィルム(B)を形成した。インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層は、透明高屈折率薄膜層を構成し、銀薄膜層は、金属薄膜層を構成する。インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層の形成には、ターゲットとして、酸化インジウム・酸化スズ焼結体[In23:SnO2=90:10(重量比)]、スパッタリングガスとしてアルゴン・酸素混合ガス(全圧266mPa、酸素分圧5mPa)を用いた。また、銀薄膜層の形成には、ターゲットとして銀を用い、スパッタガスにはアルゴンガス(全圧266mPa)を用いた。
【0040】
透明導電性薄膜フィルム(B)の透明導電薄膜層形成面反対面をアクリル系粘着材を介して、透明高分子成形体(A)上に、貼り付けた。貼り付け面圧は、0.3MPaとした。
【0041】
反射防止フィルム(D)[厚さ100μm]を、フィルム上反射防止層形成面とは、反対面に貼り付けられてある粘着材を介して、透明高分子成形体(A)の透明導電性薄膜フィルム貼り付け面反対面上に貼り付けた。貼り付け面圧は、0.3MPaとした。
【0042】
性フィルム(C)[厚さ50μm]の防性層形成面反対面をアクリル系粘着材を介して、透明高分子成形体(A)上の透明導電性薄膜フィルム(B)の透明導電性薄膜層上の内側部分に透明導電性薄膜フィルムの透明導電性薄膜部分が枠状に10mm幅でむき出しになるように貼り合せた。貼り付け面圧は、0.3MPaとした。
【0043】
各フィルム貼り付け後、室温条件下にて5時間放置し、粘着材を養生させた。黒鉛のイソプロピルアルコール分散溶液(固体含有率23%)を銀ペーストに質量比1:1の割合で混合させ黒鉛粒子含有銀ペーストを用意し、透明導電性薄膜むき出し部分にスクリーン印刷により印刷した。印刷後、室温にて3時間乾燥させた。
【0044】
上記により、3枚の高分子フィルムを透明高分子成形体に貼り合わせ、電極を印刷する事により、プラズマディスプレイパネル用電磁波シールドを作製した。上記により作製した電磁波シールドを、プラズマディスプレイパネルに装機し、視聴者側からパネルを見た場合の表示画面内の表示部分外側部分の色を調べた。
【0045】
(比較例1)
銀ペーストに黒鉛のイソプロピルアルコール分散溶液を混合せずにその他は、実施例1と同様に実施した。
以上の結果を表1に掲げる。
【0046】
【表1】
Figure 0003657115
表1から、実施例1において、電磁波シールドをプラズマディスプレイパネルに装機したときに、比較例において灰色に見えた、表示部分外側部分が黒色に見えるようになり意匠性を損なっていないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディスプレイ用電磁波シールドの一例を示す断面図である。
【図2】ディスプレイ用電磁波シールドの電極側から見た平面図である。
【符号の説明】
10 透明高分子成形体(A)
20 透明導電性薄膜フィルム(B)
30 防性フィルム(C)
40 反射防止フィルム(D)
50 電極(E)

Claims (7)

  1. 透明成形体上に形成された透明導電層上の外周部分に、金属ペーストに黒鉛を含む黒色導電性粒子を混合させた黒色導電性塗料により電極が形成されていることを特徴とするディスプレイ用電磁波シールド。
  2. 該透明導電層の形成方法が透明導電性薄膜フィルムの貼り合わせであることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ用電磁波シールド。
  3. 該黒色導電性塗料が銀ペースト塗料に黒鉛粒子を分散させたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のディスプレイ用電磁波シールド。
  4. 該透明成形体が透明高分子成形体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のディスプレイ用電磁波シールド。
  5. 該透明成形体がアクリル樹脂成形体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のディスプレイ用電磁波シールド。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用電磁波シールド。
  7. アクリル樹脂成形体上に貼り合わせられた透明導電性薄膜フィルム上の外周部分に、金属ペーストに黒鉛を含む黒色導電性粒子を混合させた黒色導電性塗料により電極が形成されているプラズマディスプレイ用電磁波シールドにおいて、少なくとも透明導電性薄膜フィルムと防性フィルム、反射防止フィルム、反射防止防性フィルムとを、反射防止フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止フィルム、反射防止フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/防性フィルム、反射防止フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止防性フィルム、防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止フィルム、防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/防性フィルム、防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止防性フィルム、反射防止防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止フィルム、反射防止防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/防性フィルム、または反射防止防性フィルム/透明導電性薄膜フィルム/アクリル樹脂成形体/反射防止防性フィルムのいずれか構成で貼り合わせたことを特徴とするプラズマディスプレイ用電磁波シールド。
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