JP3656685B2 - 永久磁石形回転機における界磁磁極の構成方法 - Google Patents

永久磁石形回転機における界磁磁極の構成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、界磁に永久磁石を用いた電動機や発電機等の永久磁石形回転機に適用される界磁磁極の構成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、界磁に永久磁石を用いた永久磁石電動機(永久磁石同期電動機)では、図9に示すように、鉄心30の中心線の左右両側の磁石MGを同一直線上ではなく、前記中心線に対し互いに若干の角度傾けて配置している(これを「スキュー」という)。これは、回転子の回転に伴って発生するいわゆるコギングトルクの低減や、軸方向のスラスト力を相殺させるためであり、スキューの態様としては、図9に示したV字形の他に、N字形、W字形、稲妻形等がある。ここで、図9は、鉄心30に永久磁石MGが取り付けられた回転子をその外側から半径方向に沿って眺めた状態を示している。
なお、上述したような磁石の配置によりコギングトルクの低減作用や軸方向スラスト力の相殺作用が最も効果的に働くのは、左右一対の磁石から構成される各磁極間の磁束密度が均一な場合である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら実際問題として、個々の磁石の起磁力には製作上、ばらつきがあるため、これらの磁石によって構成された各磁極間には磁束密度のアンバランスがある。このため従来では、磁極をスキューさせて配置しても、コギングトルクの低減や軸方向スラスト力の相殺が十分ではなかった。
【0004】
そこで本発明は、各磁極間の磁束密度をできるだけバランスさせてコギングトルクの低減や軸方向スラスト力の相殺が有効に達成されるようにした永久磁石形回転機における界磁磁極の構成方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、永久磁石を有する磁極をスキューして界磁を構成した永久磁石形回転機において、
複数個の磁石を4群に分類して同一個数の磁石からなる第1群〜第4群を構成し、これらの各群ごとにオープンフラックス量の大きさにより磁石を順に並べ替えると共に、各群につき同一個数の磁石からなるグループを複数構成する手順1と、
各群につき、各グループを構成する磁石をグループごとに所定順位だけ順次シフトさせ、全グループを横に並べた際に各グループの同一順位にある磁石のフラックス量が均等になるように操作する手順2と、
各群につき、各グループの同一順位にある磁石のフラックス量を計算する手順3と、
各群につき、各グループを回転機の軸方向に沿って並び替える手順4と、
手順4を経た第1群及び第3群について、磁石のフラックス量の大小の序列が互いに逆になるように第1群及び第3群を横に並べ、これらの第1群及び第3群に跨る横方向一列の磁石をN極の磁極を構成する磁石として選択する手順5と、手順4を経た第2群及び第4群について、磁石のフラックス量の大小の序列が互いに逆になるように第2群及び第4群を横に並べ、これらの第2群及び第4群に跨る横方向一列の磁石をS極の磁極を構成する磁石として選択する手順6と、手順5により構成されたN極の磁極、及び、手順6により構成されたS極の磁極のそれぞれについて、N極の中で磁束密度の二乗値が最も大きい磁極とS極の中で磁束密度の二乗値が最も小さい磁極とを組み合わせて一つの磁極ペアを構成し、次いで、N極の中で磁束密度の二乗値がその次に大きい磁極とS極の中で磁束密度の二乗値がその次に小さい磁極とを順次組み合わせて磁極ペアを構成していき、これらの磁極ペアごとの磁束密度の二乗値の合算値の大きさ順に磁極ペアを軸対称で円周上に配置する手順7と、
により界磁磁極を構成することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の界磁磁極の構成方法において、永久磁石形回転機が回転界磁形の永久磁石同期電動機であることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態は回転界磁形の永久磁石同期電動機に本発明を適用した場合のものである。
図1は、回転子40における磁極の配置及びスキュー形状を示している。図において、5はN極またはS極に着磁された磁石であり、6個の磁石5を並べて1個の磁極を構成している。10N,20NはN極の磁極、10S,20SはS極の磁極であり、磁極10N,20N、及び磁極10S,20Sは鉄心30の中心線に対して同一角度だけ傾けられており、平面から見てほぼV字形のスキュー形状となっている。ここで、便宜的に磁極10N,10Sの形状を形状B、磁極20N,20Sの形状を形状Aとする。
なお、スキュー形状はN字形、W字形等であっても良い。
また、N極の磁極10N,20NとS極の磁極10S,20Sとは、回転方向に沿って交互に配置されている。
【0008】
本実施形態では、左右一対のN極の磁極10N,20Nを一つの磁極、同じく左右一対のS極の磁極10S,20Sを一つの磁極と考えると、回転方向に沿ってN極、S極合計で32の磁極を備えており、磁石5の総数は(6+6)×32=384となる。
これらの個々の磁石の起磁力にはばらつきがあるので、各磁極の磁束密度にもばらつきが生じ、その結果、コギングトルクの低減や軸方向スラスト力の相殺が不十分になる。
そこでこの実施形態では、各磁極の磁束密度がアンバランスにならないように、磁石5を適正に配置して図1に示すごとき磁極を構成するようにした。
【0009】
すなわち、まず手順1として、384個のすべての磁石を以下の4群に分類する。
(1)第1群:N極で形状Aのもの……6個×16=96個
(2)第2群:S極で形状Aのもの……6個×16=96個
(3)第3群:N極で形状Bのもの……6個×16=96個
(4)第4群:S極で形状Bのもの……6個×16=96個
次に、各群の磁石について、それぞれオープンフラックス量の大きい順に並べ、16個を1グループとしてそれぞれ6グループ(A〜Fグループ)に分類する。この様子を示したのが図2である。
【0010】
次いで、手順2として、各群ごとに各グループ単位で磁石のシャフリングを行う。具体的には、各グループの磁石の順位をシフトする。
磁石のシフト量は、(1グループ当たりの磁石数)/(一群当たりのグループ数)すなわち16/6≒2.7により、2個または3個が考えられるが、次の手順3において、各グループの同列(同一順位)にある6個の磁石のトータルフラックス量(または平均フラックス量)のばらつきが小さいのはシフト量が3個の場合であるため、ここではシフト量を3個とした。
【0011】
図3は手順2における第1群でのシャフリングの様子を示しており、AグループとBグループとの間、BグループとCグループとの間、……というように、磁石5の順位を3個ずつシフトさせている。なお、理解を容易にするために、各グループ内の16番目の磁石と1番目の磁石との境界線を太線で示してある。
この手順2は、他の第2群〜第4群に対しても同様に行う。
【0012】
手順3として、手順2でシャフリングした各グループの同列にある6個の磁石を一組として、各組のトータルフラックス量(または平均フラックス量)を計算する。図4は、第1群を対象として手順3を適用した様子を示している。
このとき、各組のトータルフラックス量(または平均フラックス量)が大幅に相違するようであれば手順2に戻り、磁石5のシフト量を適宜変更する。そして、各組のトータルフラックス量(または平均フラックス量)のばらつきが少ない方を採用する。
この手順3も、他の第2群〜第4群に対して同様に行う。
【0013】
手順4として、各グループ間で軸方向(図1に示した回転子40の軸方向)にシャフリングを行う。図5は第1群に対して軸方向のシャフリングを行った様子を示しており、シャフリング前にA,B,C,D,E,Fの順であったものが、シャフリング後はA,F,B,E,C,Dの順に変更されている。具体的なシャフリングの手順は、例えば、Aはそのままの位置に据え置き、残るB〜Fの中でもともと最右端にあったFをAの右側に置き、次にもともと最左端にあったBをFの右側に置き、以下同様にしてもともとFの左側にあったEをBの右側に置き、もともとBの右側にあったCをEの右側に置き、最後にDを最右端に移動させる。
ここでは、シャフリング後の最も右のグループ(グループD)の磁石を鉄心の中心線側に配置するが、最も左のグループの磁石を鉄心の中心線側に配置するようにしても良い。
この手順4も、他の第2群〜第4群に対して同様に行う。
以上までの操作で、各群ともにA〜Fグループに属する6個の磁石からなる組が16組できる。
【0014】
次に、N極については第1群と第3群、S極については第2群と第4群というように、N極、S極に分けて考える。
以下、手順5として、N極である第1群と第3群の場合を図6に基づいて説明する。
まず、横方向の6個1組の磁石について、第1群はトータルフラックス量(または平均フラックス量)の大きい順に、第3群はトータルフラックス量(または平均フラックス量)の小さい順に、横方向の6個1組の磁石を並べ替え、第1群と第3群の横方向に対応する一組ずつを選択して1極分の磁極(N極)を構成する。なお、図6では並べ替えの基準をトータルフラックス量の大小にとっている。
図6において、太線で囲まれた第1群の6個及び第3群の6個の磁石が1極分のN極を構成し、例えば図1における磁極10N,20N(両者で1極とする)に相当する。
【0015】
手順6として、上述したN極と同様の手順で、S極について第2群と第4群の磁石を対象として1極分の磁極(S極)を構成する。
すなわち、第2群はトータルフラックス量(または平均フラックス量)の大きい順に、第4群はトータルフラックス量(または平均フラックス量)の小さい順に、横方向の6個1組の磁石を並べ替え、第2群と第4群の横方向に対応する一組ずつを選択して1極分のS極を構成する。これにより、例えば図1における磁極10S,20S(両者で1極とする)からなる1極分のS極が構成される。
こうして選択されたN極、S極の磁極を、各群のDグループが隣り合うように向きを変えてN極、S極を交互に配置すると、図7のようになる。
【0016】
更に、手順7として、N極、S極合わせて32個の磁極を回転子の外周面上に振り分ける。
図8は回転子40の外周面上の磁極の配置を示しており、円周上での磁束密度にアンバランスがあると、磁束密度の二乗の差が偏心力となってしまう。そこで、N極、S極は円周に沿って交互に配置されるため、まず各磁極につき磁束密度の二乗を計算し、N極の中でその値が最も大きい磁極とS極の中でその値が最も小さい磁極とを組み合わせて1個の磁極ペアとし、以下、順番に組み合わせて16個の磁極ペアを作る。
次に、各磁極ペアごとに磁束密度の二乗を合算してその値が大きい順に16個の磁極ペアを並び替え、これらを第1ペア〜第16ペアとして図8のごとく軸対称で鉄心30の外周面に順に配置していくことにより、回転子40が構成される。
【0017】
なお、上記実施形態では本発明を永久磁石同期電動機の回転子に適用した場合を説明したが、本発明は上記電動機における固定子や永久磁石同期発電機の回転子、固定子にも適用可能である。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の磁極構成及び磁極の配置方法をとることにより、個々の磁石の起磁力のばらつきに起因する磁極間の磁束密度のアンバランスをなくすことができ、この種の回転機におけるコギングトルクの低減や、軸方向のスラスト力の相殺をより効果的に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の回転子における磁極の配置及びスキュー形状を示した図である。
【図2】磁石の分類状態を示す図である。
【図3】磁石のシャフリング状態を示す図である。
【図4】トータルフラックス量(または平均フラックス量)の計算過程を示す図である。
【図5】各グループ間での軸方向のシャフリング状態を示す図である。
【図6】各グループから磁極構成磁石を選択する方法を示す図である。
【図7】手順6までの操作により構成された磁極配置の説明図である。
【図8】16個の磁極ペアを外周面上に配置した回転子の説明図である。
【図9】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
5 磁石
10N,10S,20N,20S 磁極
30 鉄心
40 回転子

Claims (2)

  1. 永久磁石を有する磁極をスキューして界磁を構成した永久磁石形回転機において、
    複数個の磁石を4群に分類して同一個数の磁石からなる第1群〜第4群を構成し、これらの各群ごとにオープンフラックス量の大きさにより磁石を順に並べ替えると共に、各群につき同一個数の磁石からなるグループを複数構成する手順1と、
    各群につき、各グループを構成する磁石をグループごとに所定順位だけ順次シフトさせ、全グループを横に並べた際に各グループの同一順位にある磁石のフラックス量が均等になるように操作する手順2と、
    各群につき、各グループの同一順位にある磁石のフラックス量を計算する手順3と、
    各群につき、各グループを回転機の軸方向に沿って並び替える手順4と、
    手順4を経た第1群及び第3群について、磁石のフラックス量の大小の序列が互いに逆になるように第1群及び第3群を横に並べ、これらの第1群及び第3群に跨る横方向一列の磁石をN極の磁極を構成する磁石として選択する手順5と、手順4を経た第2群及び第4群について、磁石のフラックス量の大小の序列が互いに逆になるように第2群及び第4群を横に並べ、これらの第2群及び第4群に跨る横方向一列の磁石をS極の磁極を構成する磁石として選択する手順6と、手順5により構成されたN極の磁極、及び、手順6により構成されたS極の磁極のそれぞれについて、N極の中で磁束密度の二乗値が最も大きい磁極とS極の中で磁束密度の二乗値が最も小さい磁極とを組み合わせて一つの磁極ペアを構成し、次いで、N極の中で磁束密度の二乗値がその次に大きい磁極とS極の中で磁束密度の二乗値がその次に小さい磁極とを順次組み合わせて磁極ペアを構成していき、これらの磁極ペアごとの磁束密度の二乗値の合算値の大きさ順に磁極ペアを軸対称で円周上に配置する手順7と、
    により界磁磁極を構成することを特徴とする、永久磁石形回転機における界磁磁極の構成方法。
  2. 請求項1記載の永久磁石形回転機における界磁磁極の構成方法において、
    永久磁石形回転機が回転界磁形の永久磁石同期電動機であることを特徴とする、永久磁石形回転機における界磁磁極の構成方法。
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