JP4607472B2 - 永久磁石型回転機の回転子及びそれを備えた永久磁石型回転機 - Google Patents

Description

この発明は、電動機、発電機等の永久磁石型回転機の回転子に関し、永久磁石を埋込んで磁極を形成した回転子、いわゆる永久磁石型回転機の回転子であって、埋め込んだ磁極が遠心力に耐えて鉄心に保持され、且つ永久磁石の漏洩磁束を著しく減じるようにした永久磁石型回転機の回転子及びそれを用いた永久磁石型回転機に関するものである。

従来の永久磁石型回転機の回転子では、回転子鉄心に磁石を埋め込む構成としている。回転子は、埋め込まれた磁石を回転時の遠心力に抗して、回転子鉄心に保持する強度（以下、遠心力強度という）を必要とする。この遠心力強度を得るために、回転子磁極の各極の磁石挿入スロットを回転軸と平行に２つのスロットに分割しており、２つのスロット間には回転軸と平行な鉄心材の壁が形成されている。

さらに、この構成において、分割したスロットには、それぞれ同極性に磁化された２つの直方体状の磁石が挿入され、２つの磁石の磁化方向は径方向としている。また、分割したスロット間の壁の幅は、磁気抵抗が高くなるようにするために、内径側と外径側が軸方向に一様に狭くなるように構成し、内径側と外径側との中間部は軸方向に一様に広い幅として、これを磁石止め部としている（例えば、特許文献１）。

特開２００２−２８１７００号公報（第３頁−第４頁、図１）

しかしながら、上記特許文献１の構造について、電磁界解析を用いて、分割したスロット間の鉄心材からなる壁における磁束の漏れの様子を調べた結果、各磁石のＮ極からの磁束は、スロット間の壁を通過し、それぞれ、磁石のＳ極に流れ、スロット間に設けた壁を高磁気抵抗としても、磁石の極間における磁束の漏れを十分に防ぐことができないという問題があることが判明した。

この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、遠心力強度を確保しつつ、磁石磁束の漏洩を著しく低減し、磁石磁束を有効に利用できる永久磁石型回転機の回転子及びそれを用いた永久磁石型回転機を提供することを目的とするものである。

この発明に係る永久磁石型回転機の回転子は、複数の永久磁石と、上記永久磁石を埋め込む複数のスロットを有する回転子鉄心とを備え、上記スロットに上記永久磁石を埋め込むことにより複数の回転子磁極を形成した永久磁石型回転機の回転子において、
上記各スロットを、上記回転子鉄心の部材からなる壁により分割され、断面が矩形で上記矩形の短辺が上記壁を介して対向するようにして連なって配置された複数の分割スロットに分け、
上記分割スロットのうちの少なくとも１つは、上記短辺が周方向に位置し長編が径方向に位置するように配置され、
上記永久磁石は直方体で長辺と平行な方向に磁化されており、
上記分割スロットに、上記壁を挟んで異なる磁極が対向するように上記永久磁石が埋め込まれたものである。

この発明に係る永久磁石型回転機の回転子の構成によれば、各スロットを、回転子鉄心の部材からなる壁により分割され、断面が矩形で上記矩形の短辺が上記壁を介して対向するようにして連なって配置された複数の分割スロットに分け、
上記分割スロットのうちの少なくとも１つは、上記短辺が周方向に位置し長辺が径方向に位置するように配置され、
上記永久磁石は直方体で長辺と平行な方向に磁化されており、
上記分割スロットに、上記壁を挟んで異なる磁極が対向するように上記永久磁石が埋め込まれたので、回転子鉄心の部材からの磁束の漏れが著しく低減され、永久磁石の磁束を有効に利用することができるとともに、永久磁石の磁化方向の長さの総和を大きくすることができるので、大きなトルクを出すことができる。

実施の形態１．
図１は、この発明に係る永久磁石型回転機の回転子の実施の形態１を説明するための断面図であり、回転子磁極の１極分を示している。図１に示したように、回転子磁極５の１極分のスロットが分割スロット１３Ａ、１３Ｂの２個に分割され、分割スロット１３Ａと分割スロット１３Ｂとの間に回転子鉄心１０の鉄心部材からなる壁１５が設けられている。そして、分割スロット１３Ａと分割スロット１３Ｂにはそれぞれ、直方体状の磁石４Ａと磁石４Ｂが挿入されている。この時、図１に示したように、磁石４Ａ及び磁石４Ｂの磁化の向きは、概略周方向であり、磁石４Ａと磁石４ＢはＮ極とＳ極が対向する（同極性）ようにしている。

次に、機能について説明する。上記のように、磁石が分割されたため、磁石４Ａ及び磁石４Ｂに作用する遠心力は、それぞれブリッジ１４２及び壁１５で受けることになる。遠心力Ｆはよく知られた下記式（１）によって、大凡の値が計算できる。ここで、ｍは磁石４Ａ及び磁石４Ｂそれぞれの質量、ｒは回転子磁極５の回転中心Ｏから磁石の重心までの距離、そしてωは回転角速度である。

Ｆ＝ｍｒω^２ （１）

図２は、磁石が分割されていない場合を説明するための断面図であり、回転子磁極の１極分を示している。磁石を分割していない場合、ブリッジ１４２が受ける磁石の遠心力は下記式（２）によって、大凡の値が計算できる。ここで、ｍ_{（Ａ＋Ｂ）}は磁石４の質量である。

Ｆ＝ｍ_{（Ａ＋Ｂ）}ｒω^２ （２）

これに対し、図１に示す、本発明の回転子の場合、ブリッジ１４２及び壁１５が受ける、磁石４Ａ，４Ｂの遠心力は、それぞれ下記式（３）及び式（４）によって、大凡の値が計算できる。ここでｍ_Ａ、ｍ_Ｂはそれぞれ磁石４Ａ、磁石４Ｂの質量であり、ｒ_Ａ、ｒ_Ｂはそれぞれ回転子磁極５の回転中心Ｏから磁石４Ａ、磁石４Ｂの重心までの距離である。

Ｆ_Ａ＝ｍ_Ａｒ_Ａω^２ （３）
Ｆ_Ｂ＝ｍ_Ｂｒ_Ｂω^２ （４）

磁石４をそれぞれ１：１の割合で磁石４Ａ、磁石４Ｂに分割したとき、
ｍ_Ａ＝ｍ_{（Ａ＋Ｂ）}／２
ｍ_Ｂ＝ｍ_{（Ａ＋Ｂ）}／２
となる。

これに対してｒ_Ａ、ｒ_Ｂは磁石４の重心半径ｒとほぼ等しい。このため、ブリッジ１４２及び壁１５が遠心力により受ける力は、それぞれ磁石非分割の場合の１／２、１／２に低減されることがわかる。すなわち、磁石分割により遠心力が分割され、その結果、遠心力強度が向上する。

次に磁石磁束の挙動について説明する。
図３は、この実施の形態１の永久磁石式回転機の回転子における磁石磁束の流れを解析した結果である。この実施の形態１においては、壁１５を挟んで、磁石４ＡのＳ極と磁石４ＢのＮ極が対向することになる。このため、磁石４ＢのＮ極から流れ出た磁束は、磁石４ＢのＳ極に入るのではなく、壁１５を挟んで対向する磁石４ＡのＳ極に入る。この磁束の流れは、図４に示す非分割の磁石の磁束の流れとほぼ等しい。すなわち、この実施の形態１によると、耐遠心力強度を向上するために磁石を分割し、壁１５を設けた場合においても、壁１５における漏れ磁束の発生は極めて小さく、従来の永久磁石式回転機の回転子より、磁石磁束を有効に利用することができる。

なお、図１では永久磁石を２分割したが、図５に示すように、永久磁石を３分割してもよく、さらに、それ以上に分割してもよい。また、ブリッジ１４２に掛かる遠心力が低減されるので、図６に示すように、ブリッジ１４２をオープンブリッジとして、ブリッジの一部で磁石を押さえるようにしてもよい。永久磁石の表面の一部を回転子鉄心外周面において露出させ、ブリッジ１４２をオープンブリッジとすることによって、ブリッジでの漏れ磁束が低減されて、磁石の磁束をより有効に利用することができる。さらに、ｄ軸インダクタンスとｑ軸インダクタンスとの差が大きくなるので、リラクタンストルクも有効に利用することができる。

さらに、図７に示すように、磁石４Ａ及び磁石４Ｂの磁化の向きを概略半径方向とし、磁石４Ａと磁石４ＢのＮ極とＳ極を対向させるように磁石４Ａ及び磁石４Ｂを配置してもよい。

図８は、図７の場合の磁石磁束の流れを解析した結果を示す図である。図３に示した場合と同様に、磁石４ＢのＮ極から流れ出た磁束は、磁石４ＢのＳ極に入るのではなく、磁石挿入スロット間鉄心部１５を挟んで対向する磁石４ＡのＳ極に入る。すなわち、図７に示した実施の形態によれば、遠心力強度を向上するために磁石を分割し、壁１５を設けた場合においても、壁１５における漏れ磁束の発生は極めて小さくなる。

なお、この実施の形態１では、分割スロット１３Ａ及び分割スロット１３Ｂの形状並びに挿入する磁石の形状を直方体としたが、直方体以外の形状でもよい。

実施の形態２．
図９は、この発明に係る永久磁石型回転機の回転子の実施の形態２を説明するための平面図であり、回転子磁極の１極分を示している。また、同図において、図１と同一の符号は、同一部分または相当部分を示す。

図９においては、回転子磁極５の１極分の磁石が複数個存在し、それに伴い、磁石を挿入するスロットが複数個あり、それぞれのスロットが分割され、分割スロット間に壁１５が形成されている。そして、分割スロットにはそれぞれ、壁１５を挟んで分割された磁石４Ａ及び磁石４Ｂ、磁石４Ｃ及び磁石４Ｄ並びに磁石４Ｅ及び磁石４Ｆが挿入されている。分割された磁石の対向する磁極は、異なる磁極となるように、磁石が挿入されている。この時、壁１５を挟んで対向する磁石の磁化の向きは、図８に示したように、対向する磁石の方向に向かう。

このように、分割された磁石の対向する磁極が異なる磁極となるようにし、対向する磁石の磁化の向きを対向する磁石の方向とすることによって、壁１５における漏れ磁束の発生は極めて小さくなる。

また、磁石４Ａ及び磁石４Ｃは、磁束の方向を概略半径方向とし、磁石４Ｅ及び磁石４Ｆは磁束の方向を概略周方向としている。さらに、磁石４Ｂ及び磁石４Ｄは磁束の方向を概略周方向及び径方向以外の方向としている。

このように、複数個の磁石で構成し、磁束の方向（磁化の方向）を変化させることにより、図１の構成に対して自由に磁束の流れを形成することができる、即ち、磁石の形成する空隙磁束の波形を任意に設定することができる。なお、磁石の構成は図１０に示すように、概略径方向の磁束方向を有する磁石４Ｅ、４Ｆだけで構成してもよい。

図１０のように構成することで、図９と比較して、磁石スロット間鉄心部１５が少なくなり、その結果、全体の磁石体積を増加することができるので、磁石の磁束を大きくすることができる。この結果、同じ電流値に対して、磁石の発生するトルクを増加することができる。

通電時のトルクリップルや無通電時のコギングトルクは、空隙磁束の高調波成分により発生する。従って、通電時の空隙磁束の高調波成分低減するような磁石配置とすることによって、トルクリップルの低減が可能となる。

この発明に係る永久磁石型回転機の回転子における実施の形態１を説明するための断面図である。 実施の形態１の効果を説明するための補足図である。 実施の形態１の動作原理を説明するための図である。 実施の形態１の動作原理を説明するための補足図である。 実施の形態１の別形態の概略構成を説明するための回転子磁極１極分を示す断面図である。 実施の形態１の別形態の概略構成を説明するための回転子磁極１極分を示す断面図である。 実施の形態１の別形態の概略構成を説明するための回転子磁極１極分を示す断面図である。 図７の実施の形態における動作原理を説明するための回転子磁極１極分を示す断面図である。 この発明に係る永久磁石型回転機の回転子における実施の形態２を説明するための断面図である。 この発明に係る永久磁石型回転機の回転子における実施の形態２の別の例を説明するための断面図である。

符号の説明

１ 回転子、４，４Ａ，４Ｂ，４Ｃ，４Ｄ，４Ｅ，４Ｆ 永久磁石（磁石）、
５ 回転子磁極、１０ 回転子鉄心、１３ スロット、１３Ａ，１３Ｂ 分割スロット、
１５ 壁、１４２ ブリッジ。

Claims (4)

1. 複数の永久磁石と、上記永久磁石を埋め込む複数のスロットを有する回転子鉄心とを備え、上記スロットに上記永久磁石を埋め込むことにより複数の回転子磁極を形成した永久磁石型回転機の回転子において、
   上記各スロットを、上記回転子鉄心の部材からなる壁により分割され、断面が矩形で上記矩形の短辺が上記壁を介して対向するようにして連なって配置された複数の分割スロットに分け、
   上記分割スロットのうちの少なくとも１つは、上記短辺が周方向に位置し長辺が径方向に位置するように配置され、
   上記永久磁石は直方体で長辺と平行な方向に磁化されており、
   上記分割スロットに、上記壁を挟んで異なる磁極が対向するように上記永久磁石が埋め込まれたことを特徴とする永久磁石型回転機の回転子。
2. 上記回転子磁極それぞれに、上記永久磁石の磁化の方向を上記回転子鉄心の径方向としたものを設けたことを特徴とする請求項１に記載の永久磁石型回転機の回転子。
3. 上記回転子磁極それぞれに、上記永久磁石の磁化の方向を上記回転子鉄心の径方向としたものと、上記永久磁石の磁化の方向を周方向及び径方向以外の方向としたものとを設けたことを特徴とする請求項１に記載の永久磁石型回転機の回転子。
4. 上記１ないし３のいずれか１項に記載の永久磁石型回転機の回転子を備えたことを特徴とする永久磁石型回転機。

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