JP3656674B2 - 係止具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、据付部の下孔に筒部材を挿着する一方、軸形状のピン部材を筒部材の筒孔に挿入していくと、ピン部材の先端部に形成された大径部が、筒部材の筒壁の内周に形成された抜け止め部を筒外側へ押し広げ、前記筒部材の抜け止め部が、前記大径部に連続した形成された小径部に弾撥的に係合して、ピン部材が筒部材を介して前記据付部に取り付けられるようにした係止具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の係止具としては、例えば、実開平5−45217号公報に開示されたものがある。
すなわち、筒部材である雌部材と、ピン部材である雄部材とから構成され、雌部材はその先端が開放しており、雌部材の先端部には先端係止部が形成され、先端係止部が、雄部材のテーパ係止部に係合し、雄部材が雌部材に固定されるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の係止具では、例えば、雄部材にせん断荷重がかかると、せん断荷重に対して弱いテーパ係止部が破断し、雄部材の先端が脱落して、車の走行中の振動などで雄部材の先端部が車体に当たって、異音を発生する要因になるという問題点があった。
【0004】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、筒部材の筒壁の先端に脱落防止部を形成して、小径部で破断されて落下しようとする大径部を脱落防止部が、受ける止めることができ、異音発生の要因をなくすことができ、また、前記ピン部材の大径部から前記小径部に至る部位は、せん断強さにおいては、前記小径部が最も低くなるように形成して、せん断荷重がかかったときには、確実に小径部で破断するようにした係止具を提供することを目的としている。さらに、前記筒部材の腕部は一対設けられ、前記腕部と腕部との間の開口部の上縁は、抜け止め部に成っていて、筒部材の筒壁をピン部材の大径部に沿わせて膨らませる必要がなく、筒壁の外径が大きく成らないで、筒部材を小型にすることができ、さらに、フランジを摘まんで、スリット幅を縮めると、一対の係止部の間隔が狭まって、据付部の下孔の孔縁から外れるようにして、筒部材を容易に据付部から外すことができる係止具を提供することを目的としている。
【0005】
さらに、前記脱落防止部の嵌合部は、前記筒部材の開口部と大径部との筒軸方向の寸法差より大きな筒軸方向の深さを有するようにし、ピン部材の大径部の先端を嵌合部に嵌合する際の嵌合代を調整することで、筒部材の開口部と大径部との筒軸方向の寸法差を吸収することができ、ピン部材の大径部を開口部の上縁である抜け止め部に確実に係止することができる係止具を提供することを目的としている。
さらに、前記筒部材の脱落防止部の嵌合部を凹形状にする一方、前記ピン部材の大径部の先端部を凸形状にして、大径部の剛性を低下しないようにし、ピン部材を抜こうとする際の抜け力を高いものに維持することができ、さらに、筒部材の開口部の上縁と下縁とで前記ピン部材の拡径部を上下から挟み込むようにして、前記大径部の倒れを防止することができ、脱落しようとする大径部が傾くことなく脱落前の姿勢にほぼ維持され、開口部を通って脱落するのを防止することができる係止具を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
1 据付部(11)の下孔(12)に筒部材(30)を挿着する一方、軸形状のピン部材(40)を筒部材(30)の筒孔に挿入していくと、ピン部材(40)の先端部に形成された大径部(44)が、筒部材(30)の筒壁(32)に形成された抜け止め部(33)を筒外側へ押し広げ、前記筒部材(30)の抜け止め部(33)が、前記大径部(44)に連続して形成された小径部(47)に弾撥的に係合して、ピン部材(40)が筒部材(30)を介して前記据付部(11)に取り付けられるようにした係止具において、
前記筒部材(30)の筒壁(32)の先端に、筒軸と平行な方向へ延びる腕部(35)を形成し、該腕部(35)の先端に、前記小径部(47)で破断して前記大径部(44)が脱落しようとする前方に対峙する脱落防止部(36)を形成し、
前記筒部材(30)の筒壁(32)は、筒外側へ広がるフランジ(31)と、前記据付部(11)の下孔(12)に挿入した際に下孔(12)の孔縁に弾撥的に係止する一対の係止部(34)とを有し、
該一対の係止部(34)は、筒部材(30)の筒穴を挟んで対向するように設けられており、
前記筒部材(30)の筒壁(32)の基端部には、各係止部(34)の筒周方向の両端位置に相当する筒壁(32)からフランジ(31)を通りフランジ(31)の外周縁に抜けていて、係止部(34)が含まれる筒壁(32)およびフランジ(31)を他の筒壁(32)およびフランジ(31)から独立させるスリット(38)が形成されており、
該スリット(38)は、前記一対の係止部(34)が対向する方向に沿って伸びる、互いに平行な一対であることを特徴とする係止具。
【0009】
次に、前記各号に記載された発明の作用について説明する。
請求項1記載の係止具では、
筒部材(30)の抜け止め部(33)が、ピン部材(40)の大径部(44)に連続して形成された小径部(47)に弾撥的に係止して、ピン部材(40)は、筒部材(30)を介して据付部(11)から抜けなくなる。
例えば、据付部(11)の下孔(12)と被据付部材(21)の下孔(22)とをずらすようなせん断荷重がかかると、せん断荷重に対して弱いピン部材(40)の小径部(47)が破断する場合がある。
【0010】
小径部(47)で破断すると、大径部(44)が、筒部材(30)の筒壁(32)の先端を抜けて脱落しようとするが、脱落しようとする前方に対峙するように脱落防止部(36)が形成されているので、大径部(44)は、脱落防止部(36)に受け止められ、脱落することがなくなる。その結果、例えば車の走行中の振動などで、大径部(44)が車体に当たらないで、異音の発生を防止することができる。
また、前記筒部材(30)の腕部(35)は一対設けられ、一対の腕部(35)と腕部(35)の間の開口部(39)の基端側の縁が抜け止め部(33)になっているので、筒部材(30)の筒壁(32)をピン部材(40)の大径部(44)に沿わせて膨らませる必要がなく、大径部(44)の外径に応じて、筒壁(32)の外径を大きくする必要がなく、筒部材(30)を小型にすることができる。
【0011】
請求項2記載の係止具では、スリット(38)を設けることにより、係止部(34)を含む筒壁(32)およびフランジ(31)を、他の筒壁(32)およびフランジ(31)から独立させて撓み易くなり、対向する係止部(34)の間隔を狭めるようにすれば、係止部(34)が据付部(11)の下孔(12)の孔縁から離脱して、筒部材(30)を据付部(11)から容易に外すことができる。
【0012】
請求項3記載の係止具では、前記脱落防止部(36)の嵌合部(37)は、前記筒部材(30)の開口部(39)と大径部(44)との筒軸方向の寸法差より大きな筒軸方向の深さを有するようにしたので、ピン部材(40)の縮径部(46)を嵌合部(37)に嵌合する際の嵌合代を調整すれば、筒部材(30)の開口部(39)と大径部(44)との筒軸方向の寸法差が有っても、その寸法差を吸収することができ、ピン部材(40)の大径部(44)を開口部(39)の上縁である抜け止め部(33)に確実に係止することができる。
【0013】
請求項4記載の係止具では、前記筒部材(30)の脱落防止部(36)の嵌合部(37)を凹形状にする一方、前記ピン部材(40)の大径部(44)の先端部を凸形状にしたので、大径部(44)の剛性が低下しないで済み、ピン部材(40)を抜こうとする際に、大径部(44)に大きな荷重がかかった場合に、大径部(44)はその過重に十分に耐えることができ、ピン部材(40)を抜こうとする際の力である抜け力を高いものに維持することができる。
請求項5記載の係止具では、ピン部材(40)の軸方向で対向する開口部(39)の両縁が、前記ピン部材(40)の拡径部(45)を挟むように形成されていて、前記大径部(44)の倒れを防止するようにしたので、脱落しようとする大径部(44)は、開口部(39)の両縁に挟まれて、傾くことなく脱落前の姿勢にほぼ維持され、したがって、大径部(44)が開口部(39)を通って脱落するのを防止することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の一実施の形態を説明する。
各図は本発明の一実施の形態を示している。
図1および図2に示すように、車体のサイドシルなどの据付部11には、取付用の下孔12が穿設され、下孔12には筒部材30が挿着されている。マットガードなどの被据付部材21には下孔22が穿設され、下孔22にはピン部材40が挿着されている。
【0015】
図1〜図5に示すように、筒部材30は、筒孔の周縁に広がるフランジ31と、筒壁32とから成り、筒壁32の先端部には、筒壁32の内壁から筒内側に突出する凸部である抜け止め部33が形成されている。筒壁32の基端部には、筒壁32の外壁から筒外側へ突出する一対の係止部34が形成されている。フランジ31と係止部34との間の隙間に、据付部11の下孔12の孔縁が挟まれるように成っている。
図1、図2、図6および図7に示すように、ピン部材40は、基端側にそれぞれ矩形に成形された上下2枚のフランジ41,42と、先端側へ向けて延びるピン軸部43とを有しており、上側のフランジ41には、十字状のリブが設けられている。ピン部材40のピン軸部43の基端と先端との中間部には、前記抜け止め部33が弾撥的に係合する小径部47が形成されている。ピン軸部43の先端側には、大径部44が形成されている。大径部44は、基端側にその径を広げた拡径部45と、先端側にその径を縮めた縮径部46とを有している。大径部44は、ピン部材40を筒部材30の筒孔に挿入していくと、抜け止め部33をその復元力に抗して筒外側へ押し広げるものである。
【0016】
図3〜図7に示すように、筒部材30の筒壁32の先端には、一対の腕部35が筒軸と平行な方向へ延設されている。一対の腕部35の間には、開口部39が形成され、開口部39の上縁が抜け止め部33になっている。一対の腕部35の先端には脱落防止部36が形成されている。脱落防止部36は、一対の腕部35の先端をつなぐ連結部にもなっている。
開口部39の下縁が、脱落防止部36の上縁になっている。筒部材30の開口部39は、その上縁と下縁とにより、ピン部材40の拡径部45を上下から挟み込んで大径部44の倒れを防止している。
【0017】
筒部材30の筒壁32の基端部には、各係止部34の筒周方向の両側にスリット38がそれぞれ形成され、スリット38は、筒壁32の基端からフランジ31を通りその外周縁に抜けている。スリット38は、係止部34を含む筒壁32およびフランジ31を、他の筒壁32およびフランジ31から独立させて撓み易くしており、対向する係止部34の間隔を狭めて、筒部材30を据付部10から外し易くするものである。
脱落防止部36には、筒軸方向に挿入したピン部材40の凸形状の縮径部46を外嵌する凹形状の嵌合部37が形成されている。脱落防止部36の嵌合部37は、筒部材30の開口部39と大径部44との筒軸方向の寸法差より大きな筒軸方向の深さを有している。
【0018】
ピン部材40の大径部44から小径部47に至る部位は、せん断強さにおいては、小径部47が最も低くなるように形成されている。ピン部材40の基端には、据付部11の下孔12に対応して、ピン軸方向へ凹入するクビレ部48が形成されている。クビレ部48は、ピン部材40にせん断力がかかり、ピン部材40が筒部材30の筒孔より抜け出ようとすると、据付部11の下孔12の孔縁が筒部材30の筒壁32を押し込んで、筒壁32がクビレ部48に食い込むことで、ピン部材40が抜け不能になるようにしたものである。
【0019】
次に、発明の作用について説明する。
筒部材30が据付部11の下孔12に挿着され、据付部11の下孔12に被据付部材21の下孔22を合わせて、ピン部材40を下孔22に通すとともに、筒部材30の筒孔に通していくと、やがて、ピン部材40の大径部44が抜け止め部33をその復元力に抗して押し広げ、筒部材30の抜け止め部33が、ピン部材40の大径部44に連続して形成された小径部47に弾撥的に係止して、ピン部材40は、筒部材30の筒孔から抜けなくなり、被据付部材20がピン部材40および筒部材30を介して据付部11に取り付けられる。
【0020】
この取付状態においては、脱落防止部36の嵌合部に、ピン部材40の大径部44の先端である縮径部46が嵌入している。また、筒部材30の開口部39の上縁である抜け止め部33と、下縁である脱落防止部36の上縁とにより、ピン部材40の拡径部45が上下から挟み込まれている。
このとき、脱落防止部36の嵌合部の筒軸方向の深さは、筒部材30の開口部39と大径部44との筒軸方向の寸法差より大きくなるように設定されているので、筒部材30の開口部39と大径部44との筒軸方向の寸法差が多少有っても、ピン部材40の大径部44の先端である縮径部46を筒軸方向へ多少移動して、嵌合部37に嵌合する際の嵌合代を調整すれば、ピン部材40の大径部44は、開口部39の上縁である抜け止め部33を通り越して、抜け止め部33が復元し、大径部44は抜け止め部33に確実に係止することができる。
【0021】
開口部39の上縁である抜け止め部33に大径部44が係止して、抜け止めするようにしているので、筒部材30の筒壁32をピン部材40の大径部44に沿わせて膨らませる必要がなく、大径部44の外径に応じて、筒壁32の外径を大きくする必要がなく、筒部材30を小型にすることができる。
例えば、ピン部材40に抜け力がかかると、抜け止め部33に係止しているピン部材40の大径部44に過大な荷重がかかるが、筒部材30の脱落防止部36の嵌合部37は、凹形状にして、ピン部材40の大径部44の先端部は凸形状になっているので、大径部44の剛性が低下せず、大径部44に過大な荷重がかかった場合にも、大径部44はその過大な抜け力に十分に耐えることができる。
【0022】
例えば、据付部11の下孔12と被据付部21の下孔22とをずらすようなせん断荷重がかかると、ピン部材40が破断する場合があるが、このとき、破断する場所は、せん断荷重に対して最も弱いピン部材40の小径部47になる。
小径部47で破断すると、小径部47から先の大径部44が、筒部材30の筒壁32の先端を抜けて脱落しようとするが、筒壁32の先端に脱落防止部36が形成されているので、大径部44は、脱落防止部36に受け止められ、脱落することがなくなる。
【0023】
このとき、車の走行中の振動などが、脱落防止部36内の大径部44にかかると、嵌合部37に嵌入している縮径部46を支点にして大径部44が倒れて、開口部39を通って脱落しようとするが、大径部44は、筒部材30の開口部39の上縁である抜け止め部33と、下縁である脱落防止部36の上縁とで上下から挟み込まれているので、大径部44の倒れが防止され、脱落しようとする大径部44は、傾くことなく脱落前の姿勢にほぼ維持され、したがって、大径部44は、開口部39を通って脱落することがない。
破断したピン部材40を新たなものに交換するには、係止部34を含む筒壁32およびフランジ31を摘まんで、一対の係止部34の間隔を狭めるようにすればよい。
【0024】
スリット38を設けることにより、係止部34を含む筒壁32およびフランジ31が撓み易くなっており、一対の係止部34の間隔が容易に狭まり、一対の係止部34が据付部11の下孔12の孔縁から簡単に外れて、筒部材30を据付部11から外すことができる。
このとき、大径部44は、筒部材30の抜け止め部33と、脱落防止部36の上縁とで上下から挟み込まれたままであり、大径部44は、開口部39を通って落下しないで、筒部材30とともに引き上げられ、回収される。
【0025】
【発明の効果】
本発明にかかる係止具によれば、ピン部材の小径部で破断されて大径部が落下しようとする前方に対峙するように脱落防止部を形成したので、ピン部材の小径部で破断されて落下しようとする大径部を脱落防止部が、受ける止めることができ、異音発生の要因をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す係止具の要部断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す係止具の要部断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す筒部材の平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV―V線断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態を示すピン部材の平面図である。
【図7】本発明の一実施の形態を示すピン部材の正面図である。
【符号の説明】
11…据付部
12…下孔
21…被据付部材
22…下孔
30…筒部材
31…フランジ
32…筒壁
33…抜け止め部
34…係止部
35…腕部
36…脱落防止部
37…嵌合部
38…スリット
39…開口部
40…ピン部材
41,42…フランジ
43…ピン軸部
44…大径部
45…拡径部
46…縮径部
47…小径部
48…クビレ部
Claims (1)
- 据付部の下孔に筒部材を挿着する一方、軸形状のピン部材を筒部材の筒孔に挿入していくと、ピン部材の先端部に形成された大径部が、筒部材の筒壁に形成された抜け止め部を筒外側へ押し広げ、前記筒部材の抜け止め部が、前記大径部に連続して形成された小径部に弾撥的に係合して、ピン部材が筒部材を介して前記据付部に取り付けられるようにした係止具において、
前記筒部材の筒壁の先端に、筒軸と平行な方向へ延びる腕部を形成し、該腕部の先端に、前記小径部で破断して前記大径部が脱落しようとする前方に対峙する脱落防止部を形成し、
前記筒部材の筒壁は、筒外側へ広がるフランジと、前記据付部の下孔に挿入した際に下孔の孔縁に弾撥的に係止する一対の係止部とを有し、
該一対の係止部は、筒部材の筒穴を挟んで対向するように設けられており、
前記筒部材の筒壁の基端部には、各係止部の筒周方向の両端位置に相当する筒壁からフランジを通りフランジの外周縁に抜けていて、係止部が含まれる筒壁およびフランジを他の筒壁およびフランジから独立させるスリットが形成されており、
該スリットは、前記一対の係止部が対向する方向に沿って伸びる、互いに平行な一対であることを特徴とする係止具。
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