JP3656513B2 - 軸用クランプ継手 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ステアリング装置において、例えば中間シャフトにセレーション嵌合等した自在継手のヨークの外周面に装着する軸用クランプ継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用ステアリング装置において、例えば、ステアリングシャフトの下端に連結した自在継手のヨークに、中間シャフトがセレーション嵌合又はスプライン嵌合してあると共に、このヨークの外周面には、セレーション嵌合等に起因する「ガタ付き」等を防止するための軸用クランプ継手が装着してある。
【0003】
例えば、特開平10−205544号公報では、複数のスリットを形成したヨークの連結端部の外周面に、締付ベルトが外嵌してあり、この締付ベルトは、その両端に支軸を有し、この支軸に取付けたレバーを作業者が回動することにより、軸挿入部を弾性収縮して中間シャフトに押圧して、セレーション嵌合等に起因する「ガタ付き」等を防止するようになっている。
【0004】
しかしながら、締付ベルトそれ自身は、弾性力を備えていないと共に、ヨークの連結端部に固定していないため、脱落又は抜け落ちる虞れがあり、却って作業時間を要するといったことがある。また、部品点数が多く、レバーを取付けるための溶接をも必要とし、製造コストの高騰を招くといったことがある。
【0005】
このようなことから、特開平11−105716号公報では、中間シャフトをスプライン嵌合したパイプ部材の連結端部に、複数のスリットを設けて、この連結端部を縮径可能にしている。この連結端部の外周面には、リング状の弾性緊締部材が外嵌してあり、この弾性緊締部材は、その端部にホルダーを装着すると、拡径する一方、このホルダーを解除すると、自身の弾性力により縮径するようになっている。
【0006】
これにより、ステアリング装置の組付時には、弾性緊締部材の端部にホルダーを装着して、弾性緊締部材を拡径することにより、中間シャフトに対するパイプ部材の摺動抵抗を低くしている。そのため、中間シャフトをパイプ部材に対して自由に摺動させることができ、両者の軸方向長さの調整が容易であり、組付時の作業性を向上することができる。
【0007】
一方、ステアリング装置の組付後には、ホルダーを解除して、弾性緊締部材を自身の弾性力により縮径し、この弾性緊締部材の弾性力により、パイプ部材の連結端部を縮径して中間シャフトに押圧し、中間シャフトに対するパイプ部材の摺動抵抗(緊締力)を高くしている。そのため、セレーション嵌合等に起因する「ガタ付き」等を防止することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平11−105716号公報の構造では、軸用クランプ継手それ自体に全く関係はないが、パイプ部材の他端に設けたフランジを自在継手に取付ける必要があり、工数が多く、製造コストの高騰を招くと共に、2ジョイント間が短い場合には適用できないといった課題がある。
【0009】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、セレーション嵌合等に起因する「ガタ付き」等を防止すると共に、自在継手のヨークと中間シャフトとの結合を簡易に且つコスト安価に行うことができる軸用クランプ継手を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る軸用クランプ継手は、複数のスリットを形成したヨークと一体の連結端部に、シャフトをセレーション嵌合又はスプライン嵌合し、この連結端部の外周面に装着する軸用クランプ継手において、
前記連結端部の外周面に外嵌してあり、弾性力により前記連結端部を縮径して前記シャフトに押圧するリング状の弾性緊締部材を具備し、
前記連結端部には、孔が形成してあり、
前記弾性緊締部材には、当該孔に係合する突起が設けてあることを特徴とする。
本発明の請求項2に係る軸用クランプ継手は、前記孔は、前記スリットの根元部に形成してあることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る軸用クランプ継手は、前記シャフトには、前記突起が係合する切欠き溝が形成してあることを特徴とする。
【0011】
このように、本発明によれば、リング状の弾性緊締部材がヨークの連結端部の外周面に外嵌してあり、この弾性緊締部材の弾性力によって、この連結端部を縮径してシャフトに押圧するように構成しているため、ヨークとシャフトとの結合を簡易に且つコスト安価に行うことができ、また、セレーション嵌合等に起因する「ガタ付き」等を防止することができる。
また、連結端部には、孔が形成してあり、弾性緊締部材には、この孔に係合する突起が設けてあることから、突起は、この孔に係合して、弾性緊締部材の脱落を防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る軸用クランプ継手について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係り、車両用ステアリング装置の自在継手と中間シャフトを結合した状態の側面図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。図3(a)は、図1のB−B線に沿った断面図であり、図3(b)は、図1のC−C線に沿った断面図である。図4は、自在継手に中間シャフト結合する前の状態の側面図である。図5(a)は、図4のD−D線に沿った断面図であり、図5(b)は、図4のE−E線に沿った断面図である。図6は、自在継手のヨークの部分切欠き側面図である。
【0013】
図1に示すように、ステアリングシャフト1の下端に、自在継手2が連結してある。この自在継手2のヨーク3には、円筒状の連結端部4が設けてあり、その内周面には、雌セレーションが形成してある。
【0014】
このヨーク3の連結端部4には、外周面に雄セレーションを形成した中間シャフト5が摺動自在に嵌合してある。この中間シャフト5の下端には、自在継手6のヨーク7が溶接により取り付けてあり、このヨーク7には、他方のヨーク8をを介して、ステアリングギヤのピニオン軸(図示略)が連結してある。
【0015】
なお、ヨーク3は、冷間鍛造と機械加工により形成してあり、その材料はJIS機械構造用炭素鋼S10C〜S38Cであり、軸受穴の中心から端面までの長さは、57〜85mmであり、軸受穴径は、約16mmであり、アーム間幅は、40〜43mmである。また、ヨーク3の円筒部3aの外径寸法は、20〜25mmであり、ヨーク3の円筒状の連結端部4は、円筒部3aより小径又は同径であり、その肉厚は、1.8〜3mmであり、また、この連結端部4の長さは、18〜35mmである。さらに、円筒部3aおよび円筒状の連結端部4は、必ずしも円筒でなくてもよく、例えば、楕円、略矩形、略正方形(断面形状)であってもよい。この場合、後述するリング状の弾性緊締部材の形状は、これら連結端部4と相似形状になっていればよい。
【0016】
上述したヨーク3の連結端部4には、4個のスリット10が形成してあり、この連結端部4を縮径可能にしている。これらスリット10の根元部には、4個の孔11が形成してある。なお、孔11の径は、8〜10mmである。
【0017】
中間シャフト5には、図2に示すように、雄セレーションの一部に、切欠き溝12が形成してある。
【0018】
さらに、本実施の形態では、ヨーク3の連結端部4の外周面に、リング状の弾性緊締部材13が外嵌してある。この弾性緊締部材13は、その両端端部にホルダー14を装着すると、拡径する一方、このホルダー14を解除すると、自身の弾性力により縮径するようになっている。
【0019】
なお、このホルダー14の装着時には、連結端部4の外径と弾性緊締部材13の内径との間には、微小隙間が形成されている。また、ホルダー14の解除時であって、弾性緊締部材13が自由状態のときには、その両端部は、特に図示しないが、略接触する状態になる。また、弾性緊締部材13は、金属板から形成してあり、好適には、JISみがき特殊帯鋼から形成してあり、その板厚は、0.7〜1.8mmである。さらに、ホルダー14は、樹脂から形成してある。
【0020】
さらに、リング状の弾性緊締部材13の両側面には、2個の突起15が設けてある。これらの突起15は、連結端部4のスリット10の根元部の孔11に係合して、脱落しないようになっている。なお、ホルダー14を弾性緊締部材13に装着している際には、弾性緊締部材13は、拡径しているため、これらの突起15は、中間シャフト5の雄セレーションに接触しないようになっている。
【0021】
以上のように構成してあるため、ステアリング装置の組付時には、ヨーク3の連結端部4に、中間シャフト5を挿入する。この際、弾性緊締部材13の両端部にホルダー14を装着して、弾性緊締部材13を拡径することにより、中間シャフト5に対するヨーク3の連結端部4の摺動抵抗を低くしている。そのため、中間シャフト5をヨーク3の連結端部4に対して自由に摺動させることができ、両者の軸方向長さの調整が容易であり、組付時の作業性を向上することができる。
【0022】
なお、この際、弾性緊締部材13の突起15は、中間シャフト5の雄セレーションに接触しないように構成してあるため、図2に示すように、中間シャフト5を容易に挿入することができる。また、この突起15が中間シャフト5の雄セレーションに接触する場合であっても、図2に示すように、弾性緊締部材13から突起15までの間は、斜めに折曲してあるため、中間シャフト5の挿入作業に支承をきたすことはない。
【0023】
一方、ステアリング装置の組付後には、ホルダー14を解除して、弾性緊締部材13を自身の弾性力により縮径し、この弾性緊締部材13の弾性力により、ヨーク3の連結端部4を縮径して中間シャフト5に押圧し、中間シャフト5に対するヨーク3の連結端部4の摺動抵抗(緊締力)を高くしている。そのため、セレーション嵌合に起因する「ガタ付き」等を防止して、ヨーク3を中間シャフト5に固定することができる。
【0024】
なお、この際、弾性緊締部材13の突起15は、図2に示すように、中間シャフト5の切欠き溝12に係合しているため、中間シャフト5に抜き出し方向の荷重が作用したとしても、中間シャフト5の抜け出しを防止することができる。
【0025】
また、連結端部4の4個のスリット10の根元部には、4個の孔11が形成してあり、これら孔11同士の間の幅が小さくなっているため、弾性緊締部材13の弾性力により連結端部4を縮径して押圧する際、連結端部4は、容易に変形することができる。
【0026】
また、組付後には、トルクの伝達は、主として、ヨーク3の円筒部3aと中間シャフト5とのセレーション嵌合により行うようになっている。
【0027】
また、上述した組付時、具体的には、アッパーシャフト1と自在継手2は、予めステアリングコラム(図示略)に組付けてあり、先に車両に取り付ける。次いで、ヨーク7,8を含む中間シャフト5を自在継手2に挿入し、この段階では、弾性緊締部材13にホルダー14が装着してあり、中間シャフト5は、自在継手2のヨーク3に対して軽い摩擦抵抗により摺動することができる。次いで、下側の他方のヨーク8に、ステアリングギヤのピニオン軸(図示略)を固定する。その後に、弾性緊締部材13からホルダー14を解除して、中間シャフト5を自在継手2に固定する。
(第2実施の形態)
図7は、本発明の第2実施の形態に係り、車両用ステアリング装置の自在継手と中間シャフトを結合した状態の側面図である。図8は、図7のF−F線に沿った断面図である。
【0028】
本実施の形態では、ヨーク3は、管材より形成してあり、その材料は好適にはJIS機械構造用炭素鋼鋼管である。
【0029】
弾性緊締部材16は、ホルダーの装着が不要であり、弾性力によりヨーク3の筒状の連結端部4を縮径し、この状態のときに、連結端部4に中間シャフト5を挿入している。これにより、本実施の形態では、セレーション嵌合に起因する「ガタ付き」等を防止していると共に、この挿入後にも、中間シャフト5を連結端部4に対して摺動することができる。
【0030】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。特に、本発明では、弾性緊締部材は、上記実施の形態に示した形状等に限定されず、弾性力により連結端部を縮径するものであればよい。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、リング状の弾性緊締部材がヨークの連結端部の外周面に外嵌してあり、この弾性緊締部材の弾性力によって、この連結端部を縮径してシャフトに押圧するように構成しているため、ヨークとシャフトとの結合を簡易に且つコスト安価に行うことができ、また、セレーション嵌合等に起因する「ガタ付き」等を防止することができる。
また、連結端部には、孔が形成してあり、弾性緊締部材には、この孔に係合する突起が設けてあることから、突起は、この孔に係合して、弾性緊締部材の脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係り、車両用ステアリング装置の自在継手と中間シャフトを結合した状態の側面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】(a)は、図1のB−B線に沿った断面図であり、(b)は、図1のC−C線に沿った断面図である。
【図4】自在継手に中間シャフト結合する前の状態の側面図である。
【図5】(a)は、図4のD−D線に沿った断面図であり、(b)は、図4のE−E線に沿った断面図である。
【図6】自在継手のヨークの部分切欠き側面図である。
【図7】本発明の第2実施の形態に係り、車両用ステアリング装置の自在継手と中間シャフトを結合した状態の側面図である。
【図8】図7のF−F線に沿った断面図である。
【符号の説明】
1 ステアリングシャフト
2 自在継手
3 ヨーク
3a 円筒部
4 連結端部
5 中間シャフト
6 自在継手
7 ヨーク
8 他方のヨーク
10 スリット
11 孔
12 切欠き溝
13 弾性緊締部材
14 ホルダー
15 突起
20 弾性緊締部材
Claims (3)
- 複数のスリットを形成したヨークと一体の連結端部に、シャフトをセレーション嵌合又はスプライン嵌合し、この連結端部の外周面に装着する軸用クランプ継手において、
前記連結端部の外周面に外嵌してあり、弾性力により前記連結端部を縮径して前記シャフトに押圧するリング状の弾性緊締部材を具備し、
前記連結端部には、孔が形成してあり、
前記弾性緊締部材には、当該孔に係合する突起が設けてあることを特徴とする軸用クランプ継手。 - 前記孔は、前記スリットの根元部に形成してあることを特徴とする請求項1に記載の軸用クランプ継手。
- 前記シャフトには、前記突起が係合する切欠き溝が形成してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸用クランプ継手。
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