JP3656436B2 - お好み焼き類、たい焼き類バッター用油脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、お好み焼き類及び/又はたい焼き類バッター用油脂組成物、並びに該油脂組成物を含有するお好み焼き類及び/又はたい焼き類用バッターに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、お好み焼きやたこ焼き、たい焼き、クレープ等のバッターは、小麦粉と水を主体とし、必要に応じて、油脂、卵、砂糖、油脂、山芋、調味料、香辛料、乳製品等を混合して調製されている。最近、これらのお好み焼き類、たい焼き類を簡便に調製するためのミックス類が普及している他、冷凍ないしはチルドのお好み焼き、クレープ、たこ焼き、たい焼き、ホットケーキ等も市販されている。ところで、従来のお好み焼き類の工業生産においては、所定の大きさ、形状のトレーないしは型枠を使用し、これにバッターを充填して焼成する方法が行われているが、成型性を向上するため、バッター中の小麦粉配合量を高めることや強力粉を併用すること、あるいは、吸水性の良いアルファ化澱粉、植物性蛋白等の添加を行っているのが現状である。それ故、成型性を向上したために製品の食感が硬く、粉っぽくなったり、ぱさついた、歯切れの悪い食感になり商品性が損なわれるという問題が生じていた。即ち、従来のバッターを使用した工業生産の場合、成型性と商品性との両者を満足することは困難であった。
【0003】
また、クレープ等の工業生産においても、お好み焼き類のバッターと同様、焼成時にドラムからの剥離性を向上するためにバッター中の小麦粉配合量を高めることや吸水性の良いアルファ化澱粉等の添加を行っているのが現状であり、食感が低下し、商品性が損なわれるという問題が生じていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、かかる成型性、剥離性といった工業生産時の作業性を十分満足しながら、ソフトで、しなやかな食感を有し、かつ、しっとりして歯切れの良い食感の得られるお好み焼き、クレープ、たこ焼き、たい焼き、今川焼き、ホットケーキ用等のバッターを提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、水、エタノール、糖類、及び乳化剤を含有する油脂組成物をお好み焼き類、たい焼き類用バッターに練り込んで使用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の第1は、水、エタノール、糖類、及び乳化剤を含有し、油中水型に乳化してなることを特徴とするお好み焼き類及び/又はたい焼き類バッター用油脂組成物に関する。好ましい実施態様としては、組成物100重量部中、エタノール0.5〜10重量部、糖類2〜50重量部、及び乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル0.1〜2重量部を含有することを特徴とするお好み焼き類及び/又はたい焼き類バッター用油脂組成物に関する。
【0007】
また、本発明の第2は、前記油脂組成物を含有することを特徴とするお好み焼き類及び/又はたい焼き類用バッターに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0009】
本発明の油脂組成物に用いられる食用油脂は、10℃以下で液状の油脂が好ましく、例えば、大豆油、コーン油、菜種油、オリーブ油等が使用できる。この食用油脂の使用量は、組成物100重量部中、40〜95重量部が適当であり、使用量が40重量部より少ないと乳化が満足にできない恐れがあり、一方、95重量部より多いと、効果が満足に発揮できない恐れがある。
【0010】
本発明に用いられるエタノールは、純品、製剤等純度を問わず使用できる。さらにエタノールを含有する酒類、即ち、ワイン、日本酒、洋酒、焼酎等をエタノールの代わりに使用しても差し支えない。添加量については、組成物100重量部中、0.5〜10重量部が好ましい。なお、0.5〜10重量部というのはエタノール純品としての添加量であり、製剤、酒類等を使用する場合には、エタノール含量として組成物100重量部中、0.5〜10重量部となるように添加量を調整する必要がある。エタノールの添加量が0.5重量部より少ないと効果が満足に発揮できない恐れがあり、また、10重量部より多いと、乳化安定性が低下し、水相が分離する等の乳化破壊現象が生じる恐れがある。
【0011】
本発明に用いられる糖類は、異性化液糖、ソルビトール、水飴、オリゴ糖、トレハロース、エリスリトール、キシリトール、澱粉糖化物、還元オリゴ糖、還元澱粉糖化物、還元水飴、乳糖、還元乳糖、蜂蜜、黒糖、果糖など、糖類であれば液状、粉体を問わず何を使用しても差し支えないが、好ましくは、保水力の強いソルビトール、オリゴ糖、還元澱粉糖化物、澱粉糖化物などが適当である。添加量については、組成物100重量部中、2〜50重量部が好ましい。糖類の添加量が2重量部より少ないと効果が満足に発揮できない恐れがあり、また、50重量部より多いと、乳化が満足にできず、乳化が破壊され糖類が分離してしまい容器の底に溜まって製品性を損なう恐れがある。
【0012】
本発明の油脂組成物に用いられる乳化剤として好ましくはポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが挙げられるが、乳化安定性をさらに高めるため、あるいはお好み焼き類、たい焼き類用バッターへの乳化剤の浸透力をさらに高め、しっとり感を向上するため、あるいはバッターの安定性、機械耐性を向上するためにショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン等他の乳化剤を併用しても差し支えない。また、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの添加量については、組成物100重量部中、0.1〜2重量部が好ましい。添加量が0.1重量部より少ないと乳化安定性が低下し、乳化破壊により分離の恐れがある。また、2重量部より多いと、お好み焼き類、たい焼き類用バッターに乳化剤が多量に添加されるために乳化剤の悪い風味が出て商品性を損なう恐れがある。
【0013】
なお、本発明にかかる油脂組成物中には、上記の各種配合物の他、乳化を安定させる目的あるいはバッターの安定性、機械耐性を向上させる目的でセルロース及びその誘導体、ポリデキストロース、デキストリン、サイクロデキストリン、食物繊維、キサンタンガム、グアーガム等の増粘多糖類、蛋白質素材及びその分解物を使用しても差し支えない。さらに、香料、着色料、酸化防止剤等も適宜使用できる。
【0014】
本発明の油脂組成物の乳化形態は、油中水型(W/O型)、水中油型(O/W型)、または二重乳化型(W/O/W型又はO/W/O型)のいずれの乳化形態でも良いが、お好み焼き類、たい焼き類のしなやかでかつ歯切れの良い食感がより得られるという点で油中水型が好ましい。
【0015】
上記のような本発明にかかる油脂組成物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0016】
まず、水にエタノール製剤、ソルビトールなどの糖類等を添加した後65℃まで加温し、これを水相とする。一方、菜種油にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、その他の乳化剤、香料等を添加した後65℃まで加温、溶解し、これを油相とする。上記油相を撹拌しながら、水相を徐々に加えてホモミキサーを用いてW/O型に乳化し、さらに撹拌しながら冷却して油脂組成物を得る。
【0017】
このようにして得られたW/O型の油脂組成物は、バッターの種類によっても異なるが、穀粉100重量部に対して1〜60重量部、好ましくは3〜20重量部の割合でバッターに練り込んで使用する。なお、ここでいう穀粉とは、上新粉、餅粉などの米粉、小麦粉、コーンフラワー、ソバ粉、ライ麦粉等をいう。
【0018】
得られたバッターは、従来の成型法等により成型され、そのまま凍結、あるいは加熱(蒸し加熱、焼成、油調等)した後、凍結ないしは冷蔵により製品化する。
【0019】
本発明の油脂組成物を使用できるバッターとしては、お好み焼き、もんじゃ焼き、広島焼き、たこ焼き、クレープ等のお好み焼き類、ホットケーキ、パンケーキ、今川焼き、回転焼き、人形焼き、鈴カステラ、大判焼き、たい焼き等のたい焼き類が挙げられる。さらに、上記バッター類に準じて、ピザ、タコス、ナン等の薄皮生地にも使用することができ、お好み焼き類と同様の食感向上効果が期待できる。
【0020】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において、部は重量部である。
実施例1 油脂組成物の調製
水6部に50%エタノール製剤4部、70%ソルビトール液8部を添加した後、70℃まで加温し、これを水相とする。一方、菜種油80.9部にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(阪本薬品工業(株)製、SYグリスターCRS−75)1部、バター香料0.1部を添加した後、70℃まで加温、溶解し、これを油相とする。上記油相を撹拌しながら、水相を徐々に加えてホモミキサーを用いてW/O型に乳化し、さらに撹拌しながら冷却して油脂組成物を作成した。
実施例2 お好み焼き
小麦粉(薄力粉)1kg、水1kg、全卵800gを混合しバッター状にしたものの中に実施例1の油脂組成物を100g加え混合した後、細切りしたキャベツ1.5kg、青ネギ、紅生姜、桜エビを少量加え、軽く混合しお好み焼用バッターとした。これを円板状に打ち出し、鉄板にて焼成加熱し、冷却した後凍結し、板状のお好み焼きを得た。
比較例1
実施例1の油脂組成物の代わりに、市販のサラダ油を100g加えたバッターを同様の製法により別途調製し、これを円板状に打ち出し、鉄板にて焼成加熱し、冷却した後凍結し、板状のお好み焼きを得た。
【0021】
得られたお好み焼きをポリエチレン製の袋に密封して−20℃にて2ヶ月間保存した後、電子レンジにて解凍後評価したところ、実施例2のお好み焼きは比較例1のお好み焼きに比べて口当たりが滑らかでぱさつかず、歯切れの良い食感であった。また、実施例2のお好み焼きはふっくらとしていて、ソフトであった。以上により、実施例2のお好み焼きと比較例1のお好み焼きとは食感、口当たり、ソフトさの点で大差が認められた。
実施例3 クレープ
全卵2kgに水3kg、牛乳2kg、実施例1の油脂組成物200gを加えて混合し、薄力粉1kg、強力粉1kgを少量ずつ添加し、混合する。これを1時間程度ねかしたものに溶かしバター500gを加えクレープ用バッターとした。これをドラム焼成機にかけて焼成し、クレープを得た。
比較例2
実施例1の油脂組成物の代わりに、市販のサラダ油を200g加えたバッターを同様の製法により別途調製し、これをドラム焼成機にかけて焼成し、クレープを得た。
【0022】
得られたクレープをポリエチレン製の袋に密封して−20℃にて2ヶ月間保存した後、電子レンジにて解凍後評価したところ、実施例3のクレープは比較例2のクレープに比べて口当たりが滑らかで非常に歯切れの良い食感であった。また、実施例3のクレープはしなやかな物性で、折り曲げても亀裂が生じなかったのに対し、比較例2のクレープは見た目に組織が荒れており、折り曲げたときに亀裂が生じたり、完全に破れたりした。以上により、実施例3のクレープと比較例2のクレープとは食感、口当たり、ソフトさ、しなやかさの点で大差が認められた。
実施例4 ホットケーキ
全卵1kgに砂糖500gを加え、強く撹拌し混合する。これに水1kg、牛乳1kg、実施例1の油脂組成物400gを加えて混合し、薄力粉2kgとベーキングパウダー40gとを合わせてふるったものを少量ずつ添加して混合し、ホットケーキ用バッターとした。これを鉄板にて焼成し、ホットケーキを得た。
比較例3
実施例1の油脂組成物の代わりに、市販のサラダ油を400g加えたバッターを同様の製法により別途調製し、これを鉄板にて焼成し、ホットケーキを得た。
得られたホットケーキをポリエチレン製の袋に密封して−20℃にて6ヶ月間保存した後、電子レンジにて解凍後評価したところ、実施例4のホットケーキは比較例3のホットケーキに比べてふっくらとしてボリュームがあり、ソフトで、歯切れの良い食感であった。以上により、実施例4のホットケーキと比較例3のホットケーキとは食感、ソフトさ、外観の点で大差が認められた。
【0023】
【発明の効果】
本発明の油脂組成物を用いたバッターは、ソフトでしっとりしていて、しかも歯切れの良い食感の製品を得ることができ、工業生産にも高い適応性を有するものである。

Claims (3)

  1. 水、エタノール、糖類、及び乳化剤を含有し、油中水型に乳化してなることを特徴とするお好み焼き類及び/又はたい焼き類バッター用油脂組成物。
  2. 組成物100重量部中、エタノール0.5〜10重量部、糖類2〜50重量部、及び乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル0.1〜2重量部を含有することを特徴とする請求項1記載の油脂組成物。
  3. 請求項1又は2記載の油脂組成物を含有することを特徴とするお好み焼き類及び/又はたい焼き類用バッター。
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