JP3919920B2 - 油脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、どら焼き、饅頭等の和菓子生地に練り込んで使用し、ソフトでしっとりした皮が得られる和菓子生地を生産しうる油脂組成物及び該油脂組成物を含有してなる和菓子に関する。
【0002】
【従来の技術】
どら焼き、饅頭等の和菓子は日本では古来より広く親しまれており、和菓子の生命ともいえる餡と、ソフトでしっとりした口当たりの皮との絶妙な調和に特徴がある。ところが、皮については製造直後はソフトでしっとりした口当たりであるが、日数を経過するにしたがい皮が硬化し、ぱさついた口当たりになるという欠点がある。そこで、製造直後の優れた口当たりを長持ちさせ、しっとり感を向上させるために和菓子の生地中に粉末油脂を添加する方法が提案されている(特開平2−154642)が、油脂だけで和菓子の皮のしっとり感を向上させるには不十分である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、油脂だけに頼らないで、ソフトでしっとりした皮が得られる油脂組成物を提供せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、食用油脂中にエタノール、糖類を含有した水相を、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを用いて油中水型(W/O型)に乳化して微細水滴としたものを和菓子生地に練り込んで使用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明の第1は、水相中にエタノール、糖類を含有し、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有してなる油中水型乳化油脂組成物であって、前記組成物100重量部中、エタノール0.5〜10重量部、糖類2〜50重量部、及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル0.1〜2重量部を含有してなる和菓子用油脂組成物に関するものである。好ましい実施態様としては、前記糖類が、ソルビトール、オリゴ糖、還元澱粉糖化物および澱粉糖化物からなる群から選択される少なくとも1種である油中水型乳化油脂組成物に関するものである。
【0006】
また本発明の第2は、上記油中水型乳化油脂組成物を、粉原料100重量部に対して1〜60重量部の割合で生地に練り込んで製造してなる和菓子に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
本発明の油脂組成物に用いられる食用油脂は、10℃以下で液状の油脂が好ましく、例えば、大豆油、コーン油、菜種油、オリーブ油等が使用できる。この食用油脂の使用量は、組成物100重量部中、40〜95重量部が適当であり、使用量が40重量部より少ないと乳化が満足にできず、ややもするとO/W型に転相する恐れがあり、一方、95重量部より多いと、水相部が少なくエタノール、糖類の配合量が減り、効果が満足に発揮できない恐れがある。
【0008】
本発明に用いられるエタノールは、純品、製剤等純度を問わず使用できる。さらにエタノールを含有する酒類、即ち、日本酒、洋酒、焼酎等をエタノールの代わりに使用しても差し支えない。添加量については、組成物100重量部中、0.5〜10重量部が適当である。なお、0.5〜10重量部というのはエタノール純品としての添加量であり、製剤、酒類等を使用する場合は、エタノール含量として組成物100重量部中、0.5〜10重量部となるように添加量を調整する必要がある。エタノールの添加量が0.5重量部より少ないと効果が満足に発揮できない恐れがあり、また、10重量部より多いと、乳化安定性が低下し、水相が分離する等の乳化破壊現象が生じる恐れがある。
【0009】
本発明に用いられる糖類は、異性化液糖、ソルビトール、水飴、オリゴ糖、トレハロース、エリスリトール、キシリトール、澱粉糖化物、還元オリゴ糖、還元澱粉糖化物、還元水飴、乳糖、還元乳糖、蜂蜜、黒糖、果糖など、糖類であれば液状、粉体を問わず何を使用しても差し支えないが、好ましくは、保水力の強いソルビトール、オリゴ糖、還元澱粉糖化物、澱粉糖化物などが適当である。添加量については、組成物100重量部中、2〜50重量部が適当である。糖類の添加量が2重量部より少ないと効果が満足に発揮できない恐れがあり、また、50重量部より多いと、W/O乳化が満足にできず、乳化が破壊され糖類が分離してしまい容器の底に溜まって製品性を損なう恐れがある。
【0010】
本発明の油脂組成物に用いられる乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが挙げられるが、W/O乳化安定性をさらに高めるため、あるいは和菓子生地への乳化剤の浸透力をさらに高め、しっとり感を向上するためにショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等他の乳化剤を併用しても差し支えない。また、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの添加量については、組成物100重量部中、0.1〜2重量部が適当である。添加量が0.1重量部より少ないとW/O乳化安定性が低下し、乳化破壊により分離の恐れがある。また、2重量部より多いと、和菓子生地に乳化剤が多量に添加されるために乳化剤の悪い風味が出て和菓子としての商品性を損なう恐れがある。
【0011】
なお、本発明にかかる油脂組成物中には、上記の各種配合物の他、乳化を安定させる目的でセルロース及びその誘導体、ポリデキストロース、食物繊維、キサンタンガム等の増粘多糖類を使用しても差し支えない。さらに、香料、着色料、酸化防止剤等も適宜使用できる。
上記のような本発明にかかる油脂組成物は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、水にエタノール製剤、ソルビトールなどの糖類等を添加した後65℃まで加温し、これを水相とする。一方、菜種油にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、その他の乳化剤、香料等を添加した後65℃まで加温、溶解し、これを油相とする。上記油相を撹拌しながら、水相を徐々に加えてホモミキサーを用いてW/O型に乳化し、さらに撹拌しながら冷却して油脂組成物を得る。
【0012】
このようにして得られたW/O型の油脂組成物は、和菓子の種類によっても異なるが、粉原料(小麦粉、米粉等を言い、砂糖、食塩等は含まない)100重量部に対して1〜60重量部、好ましくは3〜30重量部の割合で生地に練り込んで使用する。
本発明の油脂組成物を使用できる和菓子としては、どら焼き、もみじ饅頭、栗饅頭、薯蕷饅頭、利久饅頭等の饅頭類、桜餅、カステラ、羽二重餅、きんつば、月餅等が挙げられるが、どら焼き、饅頭類、桜餅、きんつばがソフトでしっとりとした皮がより強く求められている点で好ましい。
【0013】
【実施例】
以下に実施例、比較例、ならびにそれらを用いた試験例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例、試験例に何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例、ならびに試験例において、部は重量部である。(実施例1〜4)
表1に示す配合により、まず水にエタノール、糖類を添加した後、65℃まで加温し、これを水相とする。一方、菜種油にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、その他の乳化剤、香料を添加した後、65℃まで加温、溶解し、これを油相とする。上記油相を撹拌しながら、水相を徐々に加えてホモミキサーを用いてW/O型に乳化し、さらに撹拌しながら冷却して油脂組成物を作成した。
(比較例1)
表1に示す配合により、実施例1〜4と同様、前述の製造法に準じて油脂組成物を作成した。
【0014】
【表1】
Figure 0003919920
【0015】
(試験例1) どら焼き
以上のようにして得られた実施例1〜4及び比較例1の油脂組成物を用いて、下記の配合、方法にてどら焼きの皮を焼成した後、餡を包んでどら焼きとした。<配合>
全卵 1300g
上白糖 1300g
重曹 13g
水 600g
みりん 60g
蜂蜜 130g
薄力粉 1300g
ベーキングパウダー 10g
油脂組成物 100g
<方法>
全卵に上白糖を加え、軽く泡立てた後、油脂組成物、少量の水で溶いた重曹、蜂蜜、みりん、水400gを加えて混合する。これに薄力粉とベーキングパウダーをふるいに通して加え、軽く混合する。さらに、残りの水で生地の硬さを調節した後、平鍋で焼成しどら焼きの皮とした。
【0016】
得られたどら焼きをポリエチレン製の袋に密封して20℃にて3日間保存した後評価したところ、表2の結果を得た。
【0017】
【表2】
Figure 0003919920
【0018】
(試験例2) 栗饅頭
試験例1と同様に、実施例1〜4及び比較例1の油脂組成物を用いて、下記の配合、方法にて生地を調製し、栗饅頭を得た。
<配合>
全卵 800g
上白糖 1000g
水飴 100g
薄力粉 2000g
イスパタ 20g
油脂組成物 200g
<方法>
全卵に上白糖、水飴を加え、湯煎にかけて40℃程度に加熱し砂糖を十分溶解した後、冷却する。これに薄力粉とイスパタをふるいに通して加え、さらに油脂組成物を加えて混合し、こねる。これを1時間以上ねかしたものを栗饅頭の生地とした。この生地に包餡機によって栗餡を包餡した後表面に艶卵を2度塗りし、180℃のオーブンで焼成して栗饅頭を得た。
【0019】
得られた栗饅頭をポリエチレン製の袋に密封して20℃にて3日間保存した後評価したところ、表3の結果を得た。
【0020】
【表3】
Figure 0003919920
【0021】
(試験例3) 薯蕷饅頭
試験例1と同様に、実施例1〜4及び比較例1の油脂組成物を用いて、下記の配合、方法にて生地を調製し、薯蕷饅頭を得た。
<配合>
大和芋(正味) 500g
上白糖 800g
薯蕷粉 800g
油脂組成物 80g
<方法>
すりおろした大和芋を十分にすり混ぜた後、上白糖を2〜3回に分けて加え、さらに良くすり混ぜる。これに油脂組成物を加えて混合し、さらに薯蕷粉をふるいに通して加え、混合する。これを薯蕷饅頭の生地とした。
【0022】
この生地に包餡機によって小豆こしあんを包餡した後蒸し器に入れ、やや弱めの蒸気で13分程度蒸し、薯蕷饅頭を得た。
得られた薯蕷饅頭をポリエチレン製の袋に密封して20℃にて3日間保存した後評価したところ、表4の結果を得た。
【0023】
【表4】
Figure 0003919920
【0024】
(試験例4)羽二重餅
試験例1と同様に、実施例1〜4及び比較例1の油脂組成物を用いて、下記の配合、方法にてぎゅうひを調製し、羽二重餅を得た。
<配合>
羽二重粉 300g
水 1300g
上白糖 1000g
油脂組成物 12g
<方法>
羽二重粉に水を加え、火にかけて木しゃもじで練り、これに上白糖を4回に分けて加え、十分練り混ぜる。さらにこれに油脂組成物を加えて練り混ぜ、ぎゅうひとした。
このぎゅうひに、包餡機によって小豆こしあんを包餡し、羽二重餅を得た。
【0025】
得られた羽二重餅をポリエチレン製の袋に密封して20℃にて3日間保存した後評価したところ、表5の結果を得た。
【0026】
【表5】
Figure 0003919920
【0027】
【発明の効果】
表2〜表5の結果からも明らかなように、本発明の油脂組成物を和菓子生地に練り込んで使用することにより、ソフトでしっとりした皮を得ることができる。

Claims (3)

  1. 水相中にエタノール、糖類を含有し、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有してなる油中水型乳化油脂組成物であって、前記組成物100重量部中、エタノール0.5〜10重量部、糖類2〜50重量部、及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル0.1〜2重量部を含有してなる和菓子用油脂組成物。
  2. 前記糖類が、ソルビトール、オリゴ糖、還元澱粉糖化物および澱粉糖化物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の和菓子用油脂組成物。
  3. 請求項1又は2記載の油脂組成物を、粉原料100重量部に対して1〜60重量部の割合で生地に練り込んで製造してなる和菓子。
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