JP3656213B2 - リフローはんだ付用ソルダーペースト組成物及び回路基板 - Google Patents

リフローはんだ付用ソルダーペースト組成物及び回路基板 Download PDF

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Description

【0001】
【産業用の利用分野】
本発明は、特に、寒暖の差の大きい過酷な環境下においても高信頼性を長期に亘って要求される電子機器に用いられる電子部品搭載基板において、回路基板に電子部品をはんだ付する際に用いるソルダーペースト及びそのはんだ付後のフラックスの残さ膜を有する回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器には電子部品を搭載した回路基板が一つの機能を有する回路を構成する部品として用いられているが、その回路基板として例えば銅張積層基板に回路配線のパターンを形成したプリント回路基板に電子部品としてコンデンサや抵抗等を搭載するには、その回路配線パターンの銅箔ランド、すなわちはんだ付ランドにこれらの部品をはんだ付して接続、固定している。
このようにプリント回路基板に電子部品をはんだ付するには、プリント回路基板の所定箇所に両端に電極を有する、いわゆるチップ部品をはんだ付するはんだ付ランドを設け、各はんだ付ランドにソルダーペーストを塗布し、チップ部品をその両端の電極がはんだ付ランドに位置するように仮留めし、次いで加熱し、ソルダーペースト膜のはんだ粉末を溶融してはんだ付するリフローはんだ付方法が行われている。
近年、プリント回路基板における表面実装は、電子部品を小型化してその実装密度を高める、いわゆる高密度化の方向にあり、微小で軽量な例えば1005チップ(縦1mm、横0.5mm)が多数使用されている。
【0003】
リフローはんだ付方法を用いる場合には、連続的に搬送されるプリント回路基板に電子部品を自動的に供給し、その電極あるいはリードをはんだ付ランドにはんだ付する自動はんだ付が行われており、その前工程ではんだ付ランドに、ソルダーペーストを印刷することが行われている。
ソルダーペーストとしては、はんだ粉末とフラックスを含有するペースト状の組成物が用いられるが、そのフラックスとしては、ロジンあるいはロジン変性樹脂をベースとし、これに少量のアミン塩酸塩のようなアミンハロゲン塩や有機酸類等の活性剤、硬化ひまし油等のチクソ剤、さらにその他目的に応じて種々の材料を溶媒に溶解させたものが一般的に用いられている。
一般にロジンやロジン変性樹脂のロジン類は、電気絶縁性や耐湿性に優れ、高温ではんだ付する場合でもはんだ付ランドの酸化を防止し、しかも溶融はんだの熱により溶融して銅箔面に溶融はんだが接触することを可能にするなど、はんだ付性能が良く、古くからはんだ付用フラックスとして用いられてきている。そのため、ソルダーペーストのバインダー等の樹脂成分として、ロジンやロジン変性樹脂のロジン類を用いることが多く、一般にはんだ粉末とロジン類を用いたフラックスを混合してソルダーペーストを製造することが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ロジン類は硬くて脆い性質があるため、直接プリント回路基板のはんだ付ランドに設けられるソルダーペーストの印刷膜はリフローはんだ付方法により加熱することで生じる溶融はんだと分離して流動し、溶融はんだが覆う以外のはんだ付ランドにも残留する。はんだ付後のフラックスの残さ膜(ソルダーペーストの印刷膜はリフローはんだ付方法により加熱すると、溶融はんだの金属部分と、樹脂分に分かれ、そのはんだ金属膜とその樹脂分による残さ膜からなるはんだ付膜が構成されるが、その樹脂膜を言う。)は、−30℃と、+80℃に繰り返し曝す温度サイクル試験を行う場合のように、寒暖の激しい環境下におかれると、ミクロン単位の亀裂を生じる微小な割れである、いわゆるマイクロクラックが多数生じるという問題がある。さらにマイクロクラックが進行し、大きなクラックを発生したり、上記のフラックスの残さの樹脂膜や上記の溶融はんだと分離した残さ膜の剥離を引き起こすことにもなる。
このように、マイクロクラックが多数生じると、そのクラックを通して水分がプリント回路基板の回路部分に浸透し、回路を短絡させたり、その回路の金属を腐食したりする。特に、電子部品の小型化とプリント回路基板に対するその高密度実装化により回路配線の密度が高くなっており、はんだ付ランドのピッチも狭くなっている、いわゆる狭ピッチ(0.3mmより大きくない)のプリント回路基板においてはその問題が生じやすい。
そのために、砂漠のように40℃以上にもなる環境や零下の温度になる寒冷地の環境にも適用できるように設計されている例えば自動車に搭載される電子機器に用いられるプリント回路基板では、はんだ付後のフラックスの残さを洗浄液(水、有機溶剤、界面活性剤等からなる)で洗浄し、コンフォーマルコーティング(プリント回路基板、電子部品の防湿絶縁保護コーティング)を施す等の処理が行われている。しかし、このような洗浄を行うと、フロンあるいはその他の有機溶剤を多量に使用することになり、地球環境保護の点から問題があるのみならず、その洗浄工程を設けることによる生産コストの増大につながるという問題もあるので、その洗浄を行わず、プリント回路基板に残留させた状態でも上記のような温度サイクル試験に合格できるようなフローはんだ付用のフラックスが開発され、そのフラックスは特開平9−186442号公報に開示されている。
しかしながら、リフローはんだ付用として上記の問題点を解決できるソルダーペーストは未だ開発されておらず、その開発が望まれていた。
【0005】
本発明の第1目的は、寒暖の差の大きい環境下においても、ソルダーペーストを用いたリフローはんだ付方法により生じる樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜にマイクロクラックを生じない回路基板はんだ付用ソルダーペースト、及びそのはんだ付後の樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜を有する回路基板を提供することにある。
本発明の第2の目的は、寒暖の差の大きい環境下においても、特に狭ピッチのプリント回路基板の回路の短絡や腐食を生じさせないような回路基板はんだ付用ソルダーペースト、及びそのはんだ付後の樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜を有する回路基板を提供することにある。
本発明の第3の目的は、従来のロジン類を含有するソルダーペースト、従来の回路基板とほぼ同様に製造、使用できるリフローはんだ付用ソルダーペーストおよびそのはんだ付後の樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜を有する回路基板を提供することにある。
本発明の第4の目的は、第1〜第3の目的を同様に達成できる無洗浄型の樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜がよりよく達成されるリフローはんだ付用ソルダーペースト、およびそのはんだ付後の樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜を有する回路基板を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、(1)、回路基板に電子部品をはんだ付する際に用いる、はんだ粉末と樹脂成分を少なくとも含有するソルダーペーストにおいて、該樹脂成分にガラス転移温度が−50℃〜−42℃のアクリル系樹脂を含有するリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物を提供するものである。
また、本発明は、(2)、回路基板に電子部品をはんだ付する際に用いる、はんだ粉末とソルダーペースト用フラックスを少なくとも含有するソルダーペーストにおいて、該フラックスは樹脂成分と溶剤成分を少なくとも含有し、該樹脂成分はガラス転移温度が−50℃〜−42℃のアクリル系樹脂を含有するリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物、(3)、ソルダーペースト用フラックスに、アクリル系樹脂と共にロジン系樹脂を含む上記(2)のリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物、(4)、ソルダーペースト用フラックスに、アクリル系樹脂30〜45%、ロジン系樹脂10〜20%を含む上記(3)のリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物、(5)、アクリル系樹脂は分子量が3000〜60000、酸価が30〜500の少なくとも1つを有する上記(1)ないし(4)のいずれかのリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物、(6)、アクリル系樹脂がアクリル酸、メタアクリル酸およびアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルの少なくともいずれか1つを含有するモノマーの共重合体である上記(1)ないし(5)のいずれかのリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物、(7)、上記(1)ないし(6)のいずれかのリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物を用いたリフローはんだ付方法によるはんだ付後の上記(1)記載の樹脂成分又は上記(2)記載のフラックスの残さ膜を有する電子部品実装後の回路基板、(8)、アクリル系樹脂を含有する樹脂成分からなるソルダーペーストによるはんだ付後の上記(1)記載の樹脂成分又は上記(2)記載のフラックスの残さ膜を有する上記(7)の回路基板、(9)、上記(1)記載の樹脂成分又は上記(2)記載のフラックスに含有されるアクリル系樹脂がアクリル酸、メタアクリル酸およびアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルの少なくともいずれか1つを含有するモノマーの共重合体であって、その分子量が3000〜60000、酸価が30〜500であり、該フラックス中に該アクリル系樹脂を30〜45%、ロジン系樹脂を10〜20%含有する上記(8)の回路基板を提供するものである。
【0007】
次に本発明を詳細に説明する。
本発明のソルダーペーストには樹脂成分を含有し、この樹脂成分にはアクリル系樹脂を含有する。アクリル系樹脂とは、いわゆるアクリル系モノマーを重合成分に有するポリマーからなる樹脂である。アクリル系モノマーとしては、酸性基を有する例えばアクリル酸、メタアクリル酸、エステル基を有するアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられ、これらのアクリル系モノマーのみを用いたポリマーからなる樹脂でも良い。
本発明において、ソルダーペーストに上記アクリル系樹脂を含有するソルダーペースト用フラックスを含有することも好ましく、アクリル系樹脂はソルダーペースト用フラックス中の樹脂の量、ソルダーペーストの粘度、皮膜強度やソルダーペーストのはんだ付後のフラックスの残さ膜としての酸素の遮断性、その他のアクリル系樹脂を含有しないロジン類等を含有するプリント配線板のはんだ付ランドに対するソルダーペーストの溶融はんだの広がり性(濡れ性)等を適度にする点で、分子量が3000〜60000(GPC法(Gel permeation chromatography法(ゲルパミエーションクロマトグラフ法))であることが好ましい。
また、アクリル系樹脂のガラス転移温度は、寒暖の差の激しい雰囲気におかれることによる衝撃である、いわゆる冷熱衝撃にも耐えることができるリフローはんだ付後の樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜を得る点で重要である。フローはんだ付後の樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜の場合には10℃以下が好ましく、−50℃〜−35℃が特に好ましい。その下限より低いと、ソルダーペーストのはんだ付後の樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜はべとつき易く、上限より高いとこれらの樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜にクラックが入り易い。
このアクリル系樹脂の重合方法、その重合度の調整による分子量の調整も既に知られている方法が適用でき、さらにガラス転移点は例えばエステル系モノマーのエステルのアルコール(水酸基)基の長さ、そのエステル系モノマーの重合比等により調整することができ、これも既に知られている方法を用いることにより容易に得られる。例えばアクリル酸の単独重合体のガラス転移温度は106℃、エチルアクリレートの単独重合体のガラス転移温度は−22℃、ブチルアクリレートの単独重合体のガラス転移温度は−55℃であるから、これらやその他のガラス転移温度を有するモノマーの共重合によりアクリル系樹脂のガラス転移温度を調整できる。
【0008】
また、本発明において用いられるアクリル系樹脂成分としては、酸価は30〜500がが好ましい。アクリル系樹脂を含有するソルダーペースト用フラックスを使用したソルダーペーストは、従来のロジン類を含有するソルダーペーストと同様に製造、使用しやすく、さらに冷熱衝撃にも耐えられることから、上記の物性値の範囲外のものより優れている。
これらの点から、ソルダーペースト用のフラックスの場合には、アクリル系樹脂はアクリル酸、アクリル酸エステルを主成分とし、これらに他の、メタアクリル酸系、メタアクリル酸エステル系、その他ビニル系モノマーを共重合成分に有する共重合体が好ましく、アクリル酸、アクリル酸エステル及びメタアクリル酸、メタアクリル酸エステルの共重合体が更に好ましい。
【0009】
本発明において、アクリル系樹脂のソルダーペースト用フラックス中における含有量は、30〜45%(フラックス中)が好ましい。また、45%を越えるとリフロー後のフラックスの残さのべた付きを起こすことがある。
本発明に用いられるアクリル系樹脂には、上記したマイクロクラックが生じない範囲でロジン系樹脂を併用することができる。ロジン系樹脂とはロジン、その他のロジン等の誘導体が挙げられ(ロジン類等)、これらは併用することもできるが、具体的には例えばガムロジン、ウッドロジン、重合ロジン、フェノール変性ロジンやこれらの誘導体が挙げられる。そのロジン系樹脂の含有量は、アクリル系樹脂に対して50%より多くないことが好ましい。これより多いと、ソルダーペーストのはんだ付後の樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜に上記したマイクロクラックが生じることがある。ソルダーペーストに使用されるフラックス中のロジン系樹脂の含有量は10〜20%が好ましい。
【0010】
本発明においては、ソルダーペースト用フラックス中に活性剤を含有しても良く、その活性剤としては、有機アミンのハロゲン化水素塩等のアミン塩(無機酸塩や有機酸塩)、有機酸塩、有機アミン塩が挙げられる。具体的にはジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。これらはフラックス中0.1〜5%が上記したフラックスの残さ膜による腐食性、絶縁抵抗を損なわない点から、さらにははんだ付性の劣化、はんだボールを生じないようにする点から好ましい。
【0011】
本発明のソルダーペーストは、アクリル系樹脂あるいはこれを含有するソルダーペースト用フラックスの他にはんだ粉末を少なくとも含有するが、そのはんだ粉末としては、有鉛のはんだ粉末の他に無鉛のはんだ粉末も使用する事ができる。この場合には、はんだ粉末とフラックスの合計に占めるそのフラックスの割合が9〜60%である事が好ましい。
また、無鉛のはんだ粉末としては、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sb等が挙げられる。
【0012】
本発明のソルダーペーストを製造するには、上記の樹脂成分又はソルダーペースト用のフラックスとはんだ粉末を撹拌混合すればよいが、はんだ粉末、アクリル系樹脂の他に、ロジン系樹脂等の他の樹脂成分、グリコールエーテル系、アルコール系、芳香族系、エステル系等の上記の溶剤、その他の溶剤の中から選択した溶剤を用い、その他活性剤、チクソ剤、沈殿分離防止剤等必要に応じてその他添加剤を撹拌混合して製造してもよい。
なお、特願平8−162460号明細書に記載されている事も準拠できる。
【0013】
本発明のソルダーペーストの印刷膜は、溶融はんだの温度により押し退けられ、溶融はんだを金属面に接触させる事ができる。
この様にして電子部品がはんだ付されたプリント回路基板が得られるが、本発明に係わる本来の樹脂成分又はフラックスの残さ膜を洗浄しない場合でも、アクリル系樹脂はロジン類に比べてその膜は強靭であり、その強靭さの程度も分子量を変えて設計する事ができ、その選択幅を大きくできるので、寒暖の差が大きい場合でもマイクロクラックの発生を防止できる。
【0014】
本発明のソルダーペーストは、銅張積層板をエッチング処理して回路配線パタンを形成した後、あるいはさらにそのパターン表面の銅酸化物を取り除くソフトエッチング処理を行った後、そのパターンを形成したプリント回路基板に印刷され、そのパターンをはんだ付作業まで酸化から保護する保護膜としても用いる事ができ、このような保護膜付きプリント回路基板も本発明は提供する。また、そのリフローはんだ付後のはんだ付樹脂成分の膜又ははんだ付けフラックスの残さ膜(はんだ接合部及びはんだ付後のフラックスの残さ膜)を有するプリント基板も提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を以下の実施例で説明する。
【0016】
【実施例】
次に本発明の実施例を説明する。
本発明に係わるソルダーペーストは、従来のソルダーペーストの様にして製造、使用され、プリント回路基板にソルダーペーストの印刷膜が形成され、リフローはんだ付方法によってはんだ付が行われる。以下にソルダーペーストを使用したリフローはんだ付回路基板に相当する実施例を示す。
【0017】
参考例
まず、参考例用のアクリル系樹脂を次の組成により公知の方法により製造した。
アクリル酸 16%
アクリル酸イソプロピルエステル(アクリル酸エステル) 42%
メタアクリル酸−n−オクチルエステル(メタアクリル酸エステル)42%
得られたコポリマーのアクリル系樹脂の分子量(GPC法)は10000、酸価は100、ガラス転移温度は−36℃(コポリマーのガラス転移温度は、1/Tg=W1/Tg1 + W2/Tg2 + ・・・ + Wn/Tgn (但し、Tgはコポリマーのガラス転移温度(絶対温度)、Tg1〜Tgnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度、W1〜Wnは各モノマーの質量分率を表す。)の計算式の値を使用した。)である。
次に、容器にブチルカルビトールを入れ、これに下記配合により、上記で得られたアクリル系樹脂と水添ロジンを加えて撹拌し、活性剤としてジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、チクソ剤として硬化ひまし油を加熱しながら加え、均一になる様に撹拌混合し、放冷した。
上記のアクリル樹脂 41.0%
水添ロジン 10.0%
ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩 1.5%
硬化ひまし油 7.0%
ブチルカルビトール 40.5%
合計 100.0%
このようにして得られたソルダーペースト用フラックス10.0%に、Sn63/Pb37の共晶はんだ粉90.0%を加え、1時間混練した。これを用いて次の試験を行った。
また、その他の実施例、参考例2の各ソルダーベーストも表1に示すそれぞれの組成のフラックスを用いて同様に公知の方法により製造し、これを用いて同様に次の試験を行った。
【0018】
(a)冷熱衝撃試験
JIS C 6480(プリント配線板用銅張積層板通則)に規定するガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層基板に上記で得られたソルダーペーストを印刷し、その塗布膜に0.5mmピッチのリードのQFP(電子部品)を載置し、エアーリフローによりはんだ付を行い、これを試験片とする。
この試験片に、80℃、30分間と、−30℃、30分間を1サイクルとして、1000サイクルの冷熱衝撃を加えた後、はんだ付後のフラックスの残さ中のクラック発生の有無を顕微鏡(64倍)を使用して観察した。その結果、クラックは発見されなかった。これを表1に○で表示した(以下、同様)。
(b)はんだ広がり試験
銅板(0.3mm×30mm×30mm)を11%硫酸、3.8%過酸化水素水を含む水溶液中に20±1℃で60秒間浸漬してソフトエッチングを行った後取り出し、30秒間イオン交換水で洗浄する。この後、イソプロピルアルコール、酢酸エチルで順次洗浄し、表面を十分脱水した後、自然乾燥した。
この銅板に上記のソルダーペーストを塗布し、JIS Z 3197によりはんだ広がり試験を行った。その結果を表1に示す。
【0019】
(c)銅板腐食試験
上記(b)のソルダーペーストのリフローはんだ付方法によって形成した銅板について、JIS Z 3197により試験を行った。その結果を表1に示す。○は腐食が無いことを示す。
(d)絶縁抵抗試験
上記(b)の方法で処理したJIS Z 3197に規定する2形のくし型電極基板にソルダーペーストを印刷し、リフローはんだ付によって形成した試験片ついて、その電極間の絶縁抵抗を85℃、85%R.H.(相対湿度)の条件下で測定した。その結果を表1に示す。
【0020】
(e)電圧印加耐湿性試験
上記(b)の方法で処理したJIS Z 3197に規定する2形のくし型電極基板にソルダーペーストを印刷し、リフローはんだ付によって形成した試験片ついて、その電極間の絶縁抵抗を85℃、85%R.H.(相対湿度)、印加電圧16V直流の条件下で測定した。その結果を表1に示す。
(f)電圧印加後の腐食
上記(e)の試験後のはんだ付残さ膜について、上記(c)と同様の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0021】
参考例3、4
表1に参考例3、4を記載した。アクリル系樹脂と水添ロジンとの比率を変えて使用したこと以外は参考例1と同様にしてソルダーペーストを製造し、参考例1と同様に試験した結果を表1に示す。なお、表1中、冷熱衝撃試験の欄の△はクラックが1〜2ヶ所発生したことを、また×は多数発生したことを示す。
【0022】
比較例1
表1に比較例1を記載した。樹脂は、アクリル系樹脂を使用せず、水添ロジンのみを使用したこと以外は参考例1と同様にしてソルダーペーストを製造し、参考例同様に試験した結果を表1に示す。なお、表1中、冷熱衝撃試験の欄の×はクラックが多数発生したことを示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003656213
【0024】
以上の結果から、本発明の実施例のソルダーペーストのリフローはんだ付方法によるはんだ付後のフラックスの残さ膜は、マイクロクラックを発生せず、銅板を腐食せず、絶縁抵抗値が3×1013Ω以上(少なくとも3×1013Ω)であり、電圧印加後の抵抗値も3×109Ω以上(少なくとも3×1013Ω)であり、電圧印加後の銅板の腐食も発生しない。
また、上記の発明において、「アクリル系樹脂」を「低温側(0℃以下(0℃を越えない温度))と高温側(0℃以上(0℃を下回らない温度))の温度の寒暖の差が110℃までの雰囲気下においてマイクロクラック(微小割れ(ミクロン単位の亀裂))を生じないフラックスの残さ膜を生じるアクリル系樹脂」とすることもでき、また、用途を「自動車搭載用」としても良い。
なお、上記説明中「%」の表示は重量百分率で示す。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂成分又はこれを含有するフラックスを含有するソルダーペーストにおいて、樹脂成分にガラス転移温度が−50℃〜−42℃のアクリル系樹脂を含有するようにしたので、寒暖の差の大きい環境下においても、リフローはんだ付方法によるはんだ付後の樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜にマイクロクラックを生じさせず、特に狭ピッチのプリント回路基板の回路の短絡や腐食を生じさせないようにでき、しかも従来のロジン類を含有するソルダーペースト、従来の回路基板とほぼ同様に製造、使用できる回路基板はんだ付用ソルダーペースト及びそのはんだ付後の樹脂成分の膜又はフラックス残さ膜を有する回路基板を提供することができる。
このようにはんだ付性が良く、はんだ付ランドを腐食しない本発明のソルダーペーストによる樹脂成分の膜又はフラックスの残さ膜はプリント回路基板のはんだ付ランドの保護膜として有効であり、従来と同様な機能を有する電子部品搭載後のはんだ付ランドを保護膜により保護したプリント回路基板を提供することができる。

Claims (9)

  1. 回路基板に電子部品をはんだ付する際に用いる、はんだ粉末と樹脂成分を少なくとも含有するソルダーペーストにおいて、該樹脂成分にガラス転移温度が−50℃〜−42℃のアクリル系樹脂を含有するリフローはんだ付用ソルダーペー スト組成物。
  2. 回路基板に電子部品をはんだ付する際に用いる、はんだ粉末とソルダーペースト用フラックスを少なくとも含有するソルダーペーストにおいて、該フラックスは樹脂成分と溶剤成分を少なくとも含有し、該樹脂成分はガラス転移温度が−50℃〜−42℃のアクリル系樹脂を含有するリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物。
  3. ソルダーペースト用フラックスに、アクリル系樹脂と共にロジン系樹脂を含む請求項2記載のリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物。
  4. ソルダーペースト用フラックスに、アクリル系樹脂30〜45%、ロジン系樹脂10〜20%を含む請求項3記載のリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物。
  5. アクリル系樹脂は分子量が3000〜60000、酸価が30〜500の少なくとも1つを有する請求項1ないし4のいずれかに記載のリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物。
  6. アクリル系樹脂がアクリル酸、メタアクリル酸およびアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルの少なくともいずれか1つを含有するモノマーの共重合体である請求項1ないし5のいずれかに記載のリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のリフローはんだ付用ソルダーペースト組成物を用いたリフローはんだ付方法によるはんだ付後の請求項1記載の樹脂成分又は請求項2記載のフラックスの残さ膜を有する電子部品実装後の回路基板。
  8. アクリル系樹脂を含有する樹脂成分からなるソルダーペーストによるはんだ付後の請求項1記載の樹脂成分又は請求項2記載のフラックスの残さ膜を有する請求項7に記載の回路基板。
  9. 請求項1記載の樹脂成分又は請求項2記載のフラックスに含有されるアクリル系樹脂がアクリル酸、メタアクリル酸およびアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルの少なくともいずれか1つを含有するモノマーの共重合体であって、その分子量が3000〜60000、酸価が30〜500であり、該フラックス中に該アクリル系樹脂を30〜45%、ロジン系樹脂を10〜20%含有する請求項8に記載の回路基板。
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