JP5209825B2 - はんだ付け用フラックスおよびはんだペースト組成物 - Google Patents

はんだ付け用フラックスおよびはんだペースト組成物 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、回路基板に対して回路部品等をはんだ接続する際に使用されるはんだ付け用フラックスおよびはんだペースト組成物に関する。
従来から、電子回路部品等をはんだ接続する際に、種々のはんだ付け用フラックスおよびはんだペースト組成物が使用されている。特に、フラックスは、はんだおよび基板表面の金属酸化物を除去するとともに、はんだ付け時の金属の再酸化を防止し、はんだの表面張力を低下させ、はんだ付けを良好に行なうためには必要不可欠である。
ところが、従来のフラックスおよびはんだペースト組成物では、はんだ付けを行った後のフラックス残渣に亀裂が発生し、この亀裂部に水分が浸入して部品リード間の短絡不良を招くといった問題を生じることがあった。この問題は、特に、使用時の寒暖差が大きく、また振動も大きい車載用基板上で発生する可能性が高い。
この問題を改善する方法として、これまでに以下のような亀裂防止手段が提案されている。すなわち、a)ロジンをベース樹脂とするはんだペーストにおいて、高沸点可塑剤であるトリメリット酸のエステルを添加する方法(特許文献1参照)のように、高沸点の可塑剤を添加してはんだ付け後の残渣中に可塑剤を残留させる手段、b)エチレン−アクリル共重合体を使用したはんだ付け用フラックス(特許文献2参照)や、ガラス転移温度が−50〜−35℃の範囲のアクリル樹脂を使用したはんだ付け用フラックス(特許文献3参照)のほか、エチレンあるいはプロピレンの重合体等のように、柔軟性を有するよう設計した合成樹脂をベース樹脂とする手段、c)はんだ付け後に洗浄を行い、フラックス残渣を取り除く手段、である。
特開平9−234588号公報 特開平9−122975号公報 特開2001−150184号公報
しかしながら、前記a)の手段では、フラックス残渣の亀裂発生が低減される一方で、液状物質の残留による信頼性低下が懸念されるという問題があった。
前記b)の手段では、合成樹脂の使用により、ロジン系フラックスと比較して、はんだのぬれ性の確保が難しくなり、はんだ付け性が低下するという問題があった。
前記c)の手段では、洗浄のための後工程や洗浄設備の増設等が必要になることで製品コストが高騰したり、洗浄に用いる溶剤によって環境汚染が懸念されるという問題があった。
加えて、前記b)の手段が開示された特許文献3では、−30℃から80℃までの冷熱衝撃を1000サイクル加えた後のフラックス残渣の亀裂を抑制できたことが報告されており、該公報の方法によって、例えば、自動車の車室内のように寒暖差はあるものの、車載環境の中では比較的穏やかな環境下(寒暖差は70〜80℃程度)でのはんだ付けは良好に行なわれていた。しかし、近年、車載基板が増加していくなか、例えばエンジンルーム内のエンジン付近のように、寒暖差が非常に大きい(おおよそ120℃以上)雰囲気下で、しかも激しい振動がかかるといった、より過酷な環境への実装基板の配置が増えており、特許文献3の方法では、このようなより過酷な環境下で充分な亀裂抑制効果を発揮できないといった問題があった。現状では、寒暖差が非常に大きく、しかも振動も負荷される過酷な環境において、充分な性能(信頼性確保、亀裂防止性等)を発揮しうるフラックスおよびはんだペーストは、未だ開発されていないが、その要望は今後ますます大きくなるであろうことが予想される。
そこで、本発明は、寒暖差が非常に大きいといった過酷な環境においても、はんだ付け後のフラックス残渣の亀裂発生を充分に抑制することができるとともに、信頼性が高く、良好なはんだ付け性を有し、製造コストや環境に対する負荷は従来と同等である、はんだ付け用フラックスおよびはんだペースト組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、はんだ付け用フラックスのベース樹脂として、特定温度以下のガラス転移温の熱可塑性アクリル樹脂を使用することにより、例えば−40℃から125℃までの過酷な低温高温サイクルを負荷した場合であっても、フラックス残渣の亀裂を効果的に抑制できる、という新たな事実を見出し、前記課題を一挙に解決しうることを確認して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)ベース樹脂と活性剤と有機溶剤とを含んでなるはんだ付け用フラックスであって、前記ベース樹脂の含有量は、フラックス総量に対して8.7〜71重量%であり、前記活性剤の含有量は、フラックス総量に対して0.1〜20重量%であり、前記有機溶剤の含有量は、フラックス総量に対して26.7〜90.0重量%であり、前記ベース樹脂として、ガラス転移温度が−50℃未満の熱可塑性アクリル樹脂を、フラックス総量に対して5.7〜56重量%含有し、前記ベース樹脂がアクリル化ロジンを含有することを特徴とするはんだ付け用フラックス。
(2)上記(1)に記載のはんだ付け用フラックスとはんだ合金粉末とを含有することを特徴とするはんだペースト組成物。
(3)上記(2)に記載のはんだペースト組成物によるはんだ付部を備える電子回路基板。
本発明によれば、例えば、冬季あるいは寒冷地での自動車のエンジンルームのように、振動や寒暖差が大きい低温高温サイクルが頻繁に起こる環境下においても、はんだ付け後のフラックス残渣の亀裂発生を充分に抑制することができるとともに、高信頼性と良好なはんだ付け性を得ることができる。そして、これにより、水分の浸入によって起こる残存活性剤のイオン化を防ぎ、電気絶縁不良や腐食発生を回避することができる。このように、フラックス残渣の亀裂に起因する短絡やはんだ付け不足による接合部品の脱落、腐食による断線等を使用環境に関わらず防止することができるので、本発明によれば、信頼性が高く、高品質な電子機器を容易に製造できる、という効果が得られる。また、本発明によれば、従来のように、はんだ付け後の残留フラックスを洗浄する必要がないので、製品コストの高騰させるおそれがなく、洗浄溶剤が人体や環境に悪影響を及ぼすおそれもない。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
本発明のはんだ付け用フラックス(以下、単に「フラックス」と称することもある)は、ベース樹脂として、ガラス転移温度が−50℃未満の熱可塑性アクリル樹脂(以下「低Tgアクリル樹脂」と称することもある)を含有する。低Tgアクリル樹脂は、柔軟性が極めて高く、優れた耐亀裂性や耐剥離性を有する。したがって、このような低Tgアクリル樹脂をベース樹脂とすることにより、−40℃から125℃までの過酷な低温高温サイクルを負荷した場合であっても、はんだ付け後のフラックス残渣中に亀裂が発生するのを効果的に抑制しつつ、良好なはんだ付け性と高信頼性を得ることができるのである。ガラス転移温度が−50℃以上であると、例えば−40℃から125℃までの過酷な低温高温サイクルを負荷した場合には、残渣中の亀裂の発生を抑制するという本発明の効果が不充分になる。
なお、本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、各種ホモポリマーのTgを用いて下記計算式により算出されるものである。
Figure 0005209825
低Tgアクリル樹脂は、好ましくは、酸価が50mgKOH/g以上であるのがよい。これにより、活性作用をさらに助長させることができる。また、低Tgアクリル樹脂は、好ましくは、重量平均分子量が1万以下であるのがよい。これは、はんだ付け時のフラックス粘度を低くする方が、はんだのぬれ性が向上する傾向があるからである。
このような低Tgアクリル樹脂は、例えば、重合性不飽和基を有するモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、その各種エステル、クロトン酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸およびそのエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。)を、過酸化物等の触媒を用いて、塊状重合法、液状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等のラジカル重合により重合させることにより得ることができる。
低Tgアクリル樹脂の含有量は、フラックス総量に対して0.5〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは、2〜60重量%であるのがよい。低Tgアクリル樹脂が0.5重量%未満であると、はんだ付け時において金属に活性剤を均一に塗布することが難しくなり、はんだ付け不良が発生したり、はんだ付け後の皮膜性が低下して高温耐久性が低下したりするおそれがある。一方、低Tgアクリル樹脂が80重量%を超えると、フラックス自体の粘度が高くなり、フラックスの厚膜化によってはんだ付け性が低下するおそれがある。
本発明のはんだ付け用フラックスには、ベース樹脂として、さらに必要に応じて、従来から一般的にフラックスに用いられているロジンおよびその誘導体や、ガラス転移温度が−50℃以上である熱可塑性アクリル樹脂などを含有させることができる。その場合には、前述した低Tgアクリル樹脂のベース樹脂中に占める割合が充分に確保できるような範囲で(具体的には、ベース樹脂総量に対して低Tgアクリル樹脂が60重量%以上となるような範囲で)含有させるのがよい。例えば、ロジンおよびその誘導体は、金属に活性剤を均一に塗布するためのバインダーとして作用する。
従来から一般的にフラックスに用いられているロジンおよびその誘導体としては、例えば、通常のガムロジン、トールロジン、ウッドロジン等が挙げられる。また、それらの誘導体としては、熱処理した樹脂、重合ロジン、アクリル化ロジン、水素添加ロジン、ホルミル化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂等が挙げられる。
本発明のはんだ付け用フラックスは、前述したベース樹脂とともに、活性剤をも含有する。この活性剤によって、はんだ付け時に金属表面の酸化膜を除去し、良好なはんだ付け性を確保するのである。
活性剤としては、例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン等のハロゲン化水素酸塩、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、アジピン酸、ジフェニル酢酸等の有機カルボン酸等が挙げられる。
活性剤の含有量は、フラックス総量に対して0.1〜20重量%であるのがよい。活性剤が0.1重量%未満であると、活性力が不足し、はんだ付け性が低下するおそれがある。一方、活性剤が20重量%を超えると、フラックスの皮膜性が低下し、親水性が高くなるので、腐食性および絶縁性が低下するおそれがある。
本発明のはんだ付け用フラックスは、前述したベース樹脂および活性剤のほかに、必要に応じてチキソ剤をも含有するものである。さらに、フラックスを液状にして使用する場合には、適当な有機溶剤を含有させることもできる。
チキソ剤としては、例えば、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等が挙げられる。チキソ剤の含有量は、フラックス総量に対して0.5〜25重量%であるのがよい。
有機溶剤としては、低Tgアクリル樹脂や活性剤、さらにはロジン等の成分を溶解して溶液とする極性溶剤が好ましく、通常、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール系溶剤が好ましく用いられる。また、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤や、トルエン、テレピン油等の炭化水素系溶剤等も有機溶剤として用いることができる。これらの中でも、揮発性や活性剤の溶解性の点でイソプロピルアルコールが好ましい。
有機溶剤の含有量は、フラックス総量に対して20〜99重量%であるのがよい。有機溶剤が20重量%未満であると、フラックスの粘性が高くなり、フラックスの塗布性が悪化するおそれがある。一方、有機溶剤が99重量%を超えると、フラックスとしての有効成分(アクリル樹脂等)が相対的に少なくなってしまうため、はんだ付け性が低下するおそれがある。
さらに、本発明のフラックスは、前述した各成分のほかに、本発明の効果を損なわない範囲で、一般にフラックスのベース樹脂として用いられている従来公知の合成樹脂(例えば、スチレン−マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂等)や、酸化防止剤、防黴剤、つや消し剤等の添加剤を含有させることもできる。
本発明のはんだペースト組成物は、前述した本発明のはんだ付け用フラックスとはんだ合金粉末とを含有する。
はんだ合金粉末としては、特に制限はなく、一般に用いられている錫−鉛合金、さらに銀、ビスマスまたはインジウムなどを添加した錫−鉛合金等を用いることができる。また、錫−銀系、錫−銅系、錫−銀−銅系等の鉛フリー合金を用いてもよい。なお、はんだ合金粉末の粒径は、5〜50μm程度であるのがよい。
本発明のはんだペースト組成物におけるフラックスとはんだ合金粉末との重量比(フラックス:はんだ合金粉末)は、特に制限されないが、5:95〜20:80程度であるのがよい。
本発明のはんだペースト組成物は、電子機器部品等をはんだ接続する際に、ディスペンサーやスクリーン印刷等により基板上に塗布される。そして、塗布後、例えば150〜200℃程度でプリヒートを行い、最高温度170〜250℃程度でリフローを行う。基板上への塗布およびリフローは、大気中で行ってもよく、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気中で行ってもよい。
以下、実施例、参考例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の各製造例や表中に示されるアクリル樹脂の平均分子量は、いずれも重量平均分子量である。
実施例、参考例および比較例で得られたフラックスおよびはんだペースト組成物の評価は、下記の方法で行なった。
<はんだ付け性試験>
20本のリードを持つ0.8mmピッチのSOP(Shrink Outline Package)パターンが15個存在するガラスエポキシ基板にフラックスを塗布した。フラックス塗布後の基板を噴流はんだ付け装置ではんだ付けした後(はんだ付けには、Sn−Ag−Cu合金(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(重量比))からなるはんだ合金粉末を使用)、目視観察によりSOPパターン部でのブリッジ不良の有無を判定し、ブリッジがあった場合、その数(不良発生数)をカウントし、全SOPパターン(300本)に対する不良発生数の割合を百分率で示した値を不良率(%)として求めることにより評価した。
<はんだボール試験>
0.8mmピッチのQFP(Quad Flat Package)パターンが存在する基板に、同じパターンを有する厚み200μmのメタルマスクを用いてはんだペースト組成物を印刷した。印刷後10分以内に、大気下において175±5℃で80±5秒間プリヒートを行い、最高温度235±5℃でリフローを行った。そして、はんだ付け性の指標となるはんだボールの発生状況を、20倍の実体顕微鏡を用いて80パッド(80個のはんだ付け部)の周囲に発生したはんだボール数(個)をカウントすることにより評価した。
<残渣亀裂試験>
上記のはんだ付け性試験またははんだボール試験を行った後の基板を試験片とし、該試験片に、−40℃×30分→125℃×30分を1サイクルとして1000サイクルの条件で冷熱サイクル負荷をかけた後、基板上のSOPパターンまたはQFPパターンのはんだ付け部における亀裂発生状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
○;亀裂が全く認められない。
△;亀裂は発生しているが、信頼性に悪影響を及ぼす亀裂、すなわち2つ以上の隣接するはんだ付け部にまたがるような亀裂(以下「連結亀裂」と称する)は認められない。
×;連結亀裂が発生している。
<絶縁抵抗試験>
1)液状フラックス:JIS−Z−3197に規定するくし形基板(II型)に、フラックスを塗布した。フラックス塗布後、噴流はんだ付け装置ではんだ付けを行った(使用したはんだ組成はSn96.5%−Ag3.0%−Cu0.5%)。はんだ付け後の基板に上記残渣亀裂試験と同じ条件で冷熱サイクル負荷をかけ、その後、85℃、85%の恒温恒湿槽内に放置して経時的に(初期、500時間後および1000時間後)抵抗値(Ω)を測定することにより電気的な信頼性として絶縁抵抗を評価した。
2)はんだペースト:JIS−Z−3197に規定するくし形基板(II型)に、同じパターンを有する厚み100μmのメタルマスクを用いてはんだペースト組成物を印刷した。印刷後10分以内に、大気下において175±5℃で80±5秒間プリヒートを行い、最高温度235±5℃でリフローを行った。リフロー後の基板に上記残渣亀裂試験と同じ条件で冷熱サイクル負荷をかけ、その後、85℃、85%の恒温恒湿槽内に放置して経時的に(初期、500時間後および1000時間後)抵抗値(Ω)を測定することにより電気的な信頼性として絶縁抵抗を評価した。
<腐食試験>
フラックスまたははんだペースト組成物を用いてJIS−Z−3197に規定する銅板腐食試験片を作製し、該試験片に上記残渣亀裂試験と同じ条件で冷熱サイクル負荷をかけた。その後、各試験片を40℃、85%の恒温恒湿槽内に放置して、500時間後および1000時間後に、目視観察により点食もしくは腐食発生の有無を確認した。
(製造例1)
イソオクチルアクリレート40重量部、ラウリルメタクリレート35重量部、ブチルアクリレート10重量部およびメタクリル酸15重量部からなるモノマー成分を、溶液重合法で重合して、熱可塑性アクリル樹脂Aを得た。
この熱可塑性アクリル樹脂Aは、ガラス転移温度(Tg)が−55℃、酸価が100mgKOH/g、平均分子量が約7000であった。
(製造例2)
2−エチルヘキシルアクリレート50重量部、ブチルアクリレート37重量部およびアクリル酸13重量部からなるモノマー成分を、溶液重合法で重合して、熱可塑性アクリル樹脂Bを得た。
この熱可塑性アクリル樹脂Bは、ガラス転移温度(Tg)が−60℃、酸価が100mgKOH/g、平均分子量が約6000であった。
(製造例3)
イソオクチルアクリレート75重量部、ブチルアクリレート17重量部およびメタクリル酸8重量部からなるモノマー成分を、溶液重合法で重合して、熱可塑性アクリル樹脂Cを得た。
この熱可塑性アクリル樹脂Cは、ガラス転移温度(Tg)が−70℃、酸価が50mgKOH/g、平均分子量が約8000であった。
(製造例4)
イソオクチルアクリレート57重量部、エチルアクリレート32重量部およびアクリル酸11重量部からなるモノマー成分を、溶液重合法で重合して、熱可塑性アクリル樹脂Dを得た。
この熱可塑性アクリル樹脂Dは、ガラス転移温度(Tg)が−54℃、酸価が85mgKOH/g、平均分子量が約5000であった。
(製造例5)
2−エチルヘキシルアクリレート50重量部、イソステアリルアクリレート40重量部およびメタクリル酸10重量部からなるモノマー成分を、溶液重合法で重合して、熱可塑性アクリル樹脂Eを得た。
この熱可塑性アクリル樹脂Eは、ガラス転移温度(Tg)が−46℃、酸価が100mgKOH/g、平均分子量が約7500であった。
(製造例6)
イソオクチルアクリレート56重量部、n−ブチルメタクリレート39重量部およびアクリル酸5重量部からなるモノマー成分を、溶液重合法で重合して、熱可塑性アクリル樹脂Fを得た。
この熱可塑性アクリル樹脂Fは、ガラス転移温度(Tg)が−46℃、酸価が54mgKOH/g、平均分子量が約8500であった。
(参考例1〜4および比較例1、2)
ベース樹脂として上記各製造例で得られたアクリル樹脂A、B、Eおよびホルミル化ロジンのうちの1種以上と、活性剤としてアジピン酸およびアニリン臭化水素酸塩と、溶剤としてイソプロピルアルコールまたはブチルカルビトールとを、それぞれ表1に示す配合組成で混合し、均一になるように充分に熱を加えて溶解、拡散させ、フラックスをそれぞれ得た。
得られた各フラックスを用いて、はんだ付け性試験、残渣亀裂試験、絶縁抵抗試験および腐食試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005209825
(実施例1、参考例5〜7および比較例3、4)
ベース樹脂として上記各製造例で得られたアクリル樹脂C、D、F、水添ロジンおよびアクリル化ロジンのうちの1種以上と、活性剤としてジフェニル酢酸、アジピン酸およびモノエチルアミン塩酸塩のうちの1種以上と、チキソ剤として硬化ひまし油と、溶剤としてブチルカルビトールとを、それぞれ表2に示す配合組成で混合し、均一になるように充分に熱を加えて溶解、拡散させ、フラックスをそれぞれ得た。
次いで、得られた各フラックスと、Sn−Ag−Cu合金(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(重量比))からなる鉛フリーのはんだ合金粉末(粒径38〜25μm)とを、フラックス:はんだ合金粉末=12:88(重量比)の比率で混合して、はんだペースト組成物をそれぞれ得た。
得られた各はんだペースト組成物を用いて、はんだボール試験、残渣亀裂試験、絶縁抵抗試験および腐食試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 0005209825
表2から、低Tgアクリル樹脂Dを用いた実施例1は、はんだボールの発生が抑制されているとともに、−40℃から125℃までの過酷な冷熱サイクルを負荷した後も信頼性低下および腐食発生が抑制されており、従来のはんだペーストである比較例3、あるいはTgが−50℃以上のアクリル樹脂Fを使用した比較例4よりも優れた性能が得られていることがわかる。
以上から明らかなように、本発明によれば、はんだ付け性に優れ、低温高温サイクルや振動にさらされる環境下で使用される場合にも耐腐食性と高い電気絶縁性を保持でき、はんだ付け部の信頼性を向上させることができる。

Claims (3)

  1. ベース樹脂と活性剤と有機溶剤とを含んでなるはんだ付け用フラックスであって、
    前記ベース樹脂の含有量は、フラックス総量に対して8.7〜71重量%であり、
    前記活性剤の含有量は、フラックス総量に対して0.1〜20重量%であり、
    前記有機溶剤の含有量は、フラックス総量に対して26.7〜90.0重量%であり、
    前記ベース樹脂として、ガラス転移温度が−50℃未満の熱可塑性アクリル樹脂を、フラックス総量に対して5.7〜56重量%含有し、
    前記ベース樹脂がアクリル化ロジンを含有する、
    ことを特徴とするはんだ付け用フラックス。
  2. 請求項1に記載のはんだ付け用フラックスとはんだ合金粉末とを含有することを特徴とするはんだペースト組成物。
  3. 請求項2に記載のはんだペースト組成物によるはんだ付部を備える電子回路基板。
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