JP3655036B2 - 空冷吸収式冷温水機の高温再生器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、Niろう付けで製作され、主成分としてLiBr,LiI,LiCl,LiNO3 を含む吸収液を使用する空冷吸収式冷温水機の高温再生器に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境に有害なフロンを冷媒に使用しない冷暖房システムとして、濃度50質量%以上の高濃度アルカリ性LiBr水溶液を吸収剤に使用する吸収式冷温水機が注目されている。
吸収冷暖房システムでは、たとえば図1に示すように、高温再生器2で加熱されたLiBr水溶液6は、濃厚吸収液11と水蒸気冷媒5に分離される。水蒸気冷媒5は凝縮器1に入り、冷却媒体7によって冷却され、凝縮して液冷媒8となり、蒸発器3に入る。ここで発生した凝縮熱は、冷却媒体7を介してクーリングタワー等により外部に放出される。液冷媒8は、蒸発器3で負荷媒体10から潜熱を奪い、水蒸気冷媒5’となって吸収器4に入る。熱を奪われ冷却された負荷媒体10は、冷房ルーム9内に循環され、室内の熱を奪って冷房する。
一方、高温再生器2で濃縮された濃厚吸収液11は、溶液熱交換器20を介して吸収器4に入り、熱交換器3から流入した水蒸気冷媒5’を吸収し、希薄吸収液12となり、溶液熱交換器20を介して高温再生器2に戻る。水蒸気冷媒5’の吸収により発生した吸収熱は、冷却媒体7’を介して外部に放熱される。
【0003】
この吸収式冷暖房システムに使用される高温再生器2は、たとえば図2に示すような構造をもっている。高温再生器2は、希薄吸収液流路及び燃焼排ガス流路が交互に積層されたプレート型の熱交換器14で構成されている。希薄吸収液12は、入り口16からプレート型熱交換器14内に送り込まれ、熱源として送り込まれた燃焼排ガスGによって加熱され、水蒸気冷媒と濃厚吸収液に分離される。水蒸気冷媒は蒸気出口17から凝縮器1に、濃厚吸収液は吸収液出口18から吸収器4に送り出される。燃焼排ガスGは、排気口15から送り出される。
プレート型熱交換器14は、希薄吸収液の漏洩,大気の混入等を防止するため、ろう付け構造となっており、ろう付け部19でフレーム13にろう付けされている。
【0004】
すでに実用化されている10冷凍トン以上の業務用大型機や中型機では、炭素鋼やキュプロニッケル等を構造材とする再生器が使用され、LiBrを主成分とする高濃度のアルカリ性ハロゲン吸収液を約150℃に加熱している。しかし、数冷凍トン級の一般家庭向けの用途では、更なる小型化,高性能化が要求されるため、凝縮器や吸収器における水蒸気及び吸収液の冷却を従来の水冷から空冷に切り替え、しかも運転効率を向上させることが必要となる。
そのため、小型空冷式の吸収式冷暖房機を実用化するには、再生器の運転温度を最高200℃程度まで上げる必要があり、従来の材料では十分な耐食性が得られ難い。そこで、従来の材料に代えて、耐食性及びコストの面からステンレス鋼の使用が検討されている。
【0005】
吸収式冷温水機用のフェライト系ステンレス鋼については、高濃度ハロゲン化物中での耐食性がAl,Co,Cr,Ni,Mo,Cu等の添加により向上することが特公平6−37692号公報,特公平5−34419号公報等で紹介されている。オーステナイト系ステンレス鋼については、Cr,Ni,Mo,Cu,Si等の添加が耐食性の改善に有効であることが特開平2−298237号公報に紹介されている。特開平7−35433号公報は、フェライト系,オーステナイト系を問わず、Si添加鋼が吸収式冷暖房機用材料として優れた耐食性を示すことを紹介している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
吸収式冷暖房機を数冷凍トン級の一般家庭向けの用途に適したものとするためには、高温再生器の運転効率を向上させるために再生器温度を約200℃程度まで上げることが必要である。また、再生器の性能向上を図るため、熱交換部位を複雑な形状にすることが好ましい。複雑形状の熱交換部位をもつ熱交換器の組立て作業には、ろう付けが適している。なかでも、吸収液環境での耐食性,接合強度を確保する上から、BNi−5によるニッケルろう付けが最も適している。
吸収液に関しても、従来の約60%濃度のLiBr吸収液を主成分とする場合には、200℃で運転すると室温冷却時に吸収液の晶析が生じる欠点がある。そのため、LiBr−LiI−LiCl−LiNO3 の四成分系高濃度吸収液が要求されるようになった。
【0007】
このような一般家庭向けの吸収式冷暖房機を製造する際、特公平6−37692号公報,特公平5−34419号公報等のフェライト系ステンレス鋼は、ニッケルろう付けによって結晶粒が粗大化するため使用できない。他方、オーステナイト系ステンレス鋼は、通常BNi−2,BNi−5等によるニッケルろう付けが可能である。しかし、BNi−2は、LiBr−LiI−LiCl−LiNO3 の四成分系高濃度吸収液中での耐食性が不十分である。また、BNi−5は、Si含有量が1質量%以上のオーステナイト系ステンレス鋼に対して十分な接合強度を示さない。
更に、LiBr−LiI−LiCl−LiNO3 の四成分系吸収液を使用する場合、吸収液中に僅かに存在するI2 が高温再生器の気相部に遊離するため、従来よりも過酷な腐食環境に高温再生器が曝される。この点、一般家庭向け吸収式冷暖房機の再生器構造材として使用されるステンレス鋼には、従来開示されている鋼材を凌駕する耐食性をもつことが要求される。
【0008】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、各合金成分の間に特定の相互関係をもたせた合金設計を採用すると共に、特定の研磨仕上げ又は混酸仕上げが施されたオーステナイト系ステンレス鋼を再生器構造材として使用することにより、LiBr−LiI−LiCl−LiNO3 の四成分系高濃度吸収液中においても十分な耐食性を呈し、高温運転にも十分耐える空冷吸収式冷温水機の高温再生器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の高温再生器は、その目的を達成するため、水を冷媒とし、主成分がLiBr,LiI,LiCl,LiNO3でありLiBr濃度が50質量%以下の四成分系高濃度吸収液を使用する空冷吸収式冷温水機の高温再生器であって、C:0.08質量%以下,Si:1.0〜5.0質量%,Mn:1.0質量%以下,P:0.045質量%以下,S:0.005質量%以下,Cr:16.0〜25.0質量%,Ni:6.0〜20.0質量%,Al:0.1質量%以下,N:0.005〜0.35質量%,残部がFe及び不可避的不純物で、(Cr+0.5Ni+3Si−5Al)≧30を満足する組成をもち、80〜600番手で研磨仕上げしたオーステナイト系ステンレス鋼を熱交換器部材,フレーム等の構造材としていることを特徴とする。
【0010】
本発明で使用するオーステナイト系ステンレス鋼は、(Cr+0.5Ni+3Si+3Mo−5Al)≧30を満足する条件下で更にCu:0.5〜3.0質量%及び/又はMo:0.5〜3.0質量%を含むこともできる。研磨仕上げに替え、HF濃度1〜20質量%のHF−HNO3 水溶液中で混酸仕上げで鋼材表面に酸化物として濃化するSiを除去しても良い。
【0011】
【作用】
吸収式冷暖房機の再生器では、高濃度LiBr−LiI−LiCl−LiNO3 を主成分とする濃度50質量%以上の吸収液が使用され、吸収液を約200℃の高温に加熱する。このとき、冷凍機内は、真空吸引後に密閉して運転が開始されるため、カソード反応を促進させる酸素量が少ない。しかし、吸収液成分のうちI2 が気相部に遊離するため、従来の吸収液環境と比較すると気相部がより厳しい腐食環境に曝される。
本発明者等は、Siの増量によって高濃度吸収液環境における気相部の耐孔食性,耐応力腐食割れ性を改善すると共に、合金成分間に特定の関係を成立させて孔食の成長を抑制することにより、過酷な腐食環境においても優れた耐食性を発揮するオーステナイト系ステンレス鋼が得られることを見い出した。更に、ステンレス鋼表面に酸化物として濃化しているSi(以下、Si濃化層という)を機械的又は化学的に除去すると、ニッケルろう付けによって良好な接合強度をもつろう付け継手が得られ、吸収式冷暖房機の再生器としての使用に十分耐えることを解明した。
このように特定された組成をもつオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の表面にあるSi濃化層を除去した鋼板を、熱交換器用のプレート,チューブ,フィン,フレーム等の高温再生器構成材料として使用するとき、最高到達温度が約200℃に達する高濃度LiBr−LiI−LiCl−LiNO3 系の過酷な腐食環境下においても耐孔食性や耐応力腐食割れ性が改善され、一般家庭向けの吸収式冷暖房機用再生器が得られる。
【0012】
以下、本発明で使用するオーステナイト系ステンレス鋼に含まれる合金成分,含有量等を説明する。
C:0.08質量%以下
オーステナイトを安定化する強力な合金成分であり、耐応力腐食割れ性,耐孔食性には大きな影響を及ぼさない。しかし、溶接部の粒界腐食感受性を高め
ることから、C含有量の上限を0.08質量%に設定した。
【0013】
Si:1.0〜5.0質量%
鋼材表面に安定な皮膜を形成すると共に、高濃度のLiBr−LiI−LiCl−LiNO3 四元系吸収液環境における気相部の耐孔食性,耐応力腐食割れ性を向上させる作用を呈する。このような作用は、1.0質量%以上のSiで顕著になる。更に、Si添加で向上した耐応力腐食割れ性は、一定量のMoを添加しても損なわれない。しかし、強力なフェライト生成元素であることから、Si含有量の上昇に伴って多量のNiを添加してオーステナイト相を安定化させる必要が大きくなり、鋼材のコストを上昇させる。そこで、本発明においては、高価なNiの添加量を最少限に抑えるため、Si含有量の上限を5.
0質量%に設定した。
【0014】
Mn:1.0質量%以下
腐食の起点になり易い硫化物を形成し、耐孔食性,耐隙間腐食性を劣化させるため、Mn含有量は少ないほど良い。しかし、Mn含有量を過度に低減させると、配合原料費が上昇し、製造コストを上昇させる。そこで、本発明におい
ては、経済性を考慮してMn含有量の上限を1.0質量%に設定した。
P:0.045質量%以下
熱間加工性等の製造性や耐応力腐食割れ性等に悪影響を及ぼす元素である。本発明においては、通常のステンレス鋼に許容される0.045質量%をP含
有量の上限に定めた。
S:0.005質量%以下
鋼中のMnと反応し、耐孔食性に有害な硫化物を形成する。そのため、S含有量ができるだけ低い方が好ましく、本発明ではS含有量の上限を0.005
質量%に設定した。
【0015】
Cr:16.0〜25.0質量%
ステンレス鋼においては必要不可欠な合金成分であり、特に高濃度のLiBr−LiI−LiCl−LiNO3 四元系吸収液環境で優れた耐食性を発揮させるために、16.0質量%以上のCrが必要である。耐食性は、Cr含有量が多いほど向上する。しかし、多量のCr含有に伴って、オーステナイト相の維持に必要なNi量が増加し、製造性や加工性も劣化する。そこで、本発明に
おいては、Cr含有量の上限を25.0質量%に設定した。
Ni:6.0〜20.0質量%
オーステナイト相を保持するために主要な合金成分であり、最低でも6質量%のNiが必要である。しかし、20質量%を超える含有量では、高価なNiを多量に消費することから、鋼材コストが上昇する。そのため、本発明においては、Ni含有量を6.0〜20.0質量%の範囲に設定した。Niは、この範囲で耐孔食性の改善に有効に作用する。特に耐孔食性が要求される部位では
、Ni含有量10質量%以上の鋼材を使用することが好ましい。
【0016】
Al:0.1質量%以下
溶製時に脱酸剤として働くと共に、ステンレス鋼表面に濃縮して不動態皮膜を強化し、中性塩化物中における耐食性を向上させる作用を呈する。しかし、I2 を含む酸性の凝縮水による腐食環境となる高温再生器の気相部では、Al皮膜が優先的に溶解し、孔食発生の起点となる。この点、Alの添加量は少な
い程よく、本発明においては0.1質量%に上限を設定した。
N:0.005〜0.35質量%
強力なオーステナイト形成元素であると共に、オーステナイト系では耐食性の改善に有効な合金成分である。N添加の効果は、0.005質量%以上で顕著になる。しかし、0.35質量%を超える多量のNを添加すると、製造性,加工性が劣化するばかりでなく、耐応力腐食割れ性を低下させることにもなる
。
【0017】
Cu:0.5〜3.0質量%
必要に応じて添加される合金成分であり、ハロゲン化物を含む水溶液中における耐応力腐食割れ性を改善する作用を呈する。耐応力腐食割れ性の改善効果は、Cu含有量0.5質量%以上で現れ、Cu量の増加に従って著しく改善される。しかし、Cu含有量3.0質量%で改善効果が飽和し、却って熱間加工
性が低下する傾向がみられる。
Mo:0.5〜3.0質量%
必要に応じて添加される合金成分であり、不動態皮膜を強化し、高濃度ハロゲン化物水溶液中における耐孔食性を改善する作用を呈する。Mo添加の効果を十分発揮させるためには、0.5質量%以上,好ましくは0.7質量%以上のMo添加が効果的である。しかし、Moは高価な元素であることから、本発
明においてはMo含有量の上限を3.0質量%に設定した。
【0018】
(Cr+0.5Ni+3Si+3Mo−5Al)≧30
LiBr−LiI−LiCl−LiNO3 の四成分系吸収液を使用する高温再生器では、I2 が気相部に遊離し、再生器の気相部に当るステンレス鋼に孔食が発生し易い。本発明者等は、この孔食に及ぼす各合金成分の影響を調査した結果、後述する実施例でも説明しているようにX=Cr+0.5Ni+3Si+3Mo−5Alで定義されるX値を30以上に維持することが有効であることを見い出した。なお、Moを含まない鋼種の場合、前掲の条件式からMo
の項が除外される。
X値が耐孔食性を改善する詳細な理由は明らかでないが、X値を30以上に調整することによって孔食の自己触媒的な成長が抑制されることに原因があるものと推察される。すなわち、ステンレス鋼の孔食には、一般に臨界孔食深さといわれている値があり、臨界値以下の孔食では再不動態化により不動態皮膜が修復され、臨界値を超える孔食は自己触媒的に成長する。この自己触媒的な孔食の成長は、X値を30以上にすることにより抑えられる。他方、30未満のX値では、成長性の孔食が発生し、時間経過と共に大きな孔食となる。
【0019】
研磨仕上げ:80〜600番手
前述した組成をもつステンレス冷延鋼板を再生器の構造材として使用するとき、耐食性,鋼板製造性,加工性及びコスト面で有利となる。しかし、冷延後のステンレス鋼板をBNi−5でろう付けすると、1.0質量%以上のSiを含む鋼の2B,2D製品材には表面にSi濃化層が形成されているため、接合界面に脆弱なニッケル化合物が形成される。そのため、十分な接合強度をもつ
ろう付け継手が得られない。
そこで、本発明者等は、ステンレス鋼表面を研磨仕上げすることにより、鋼材表面のSi濃化層を機械的に除去する方法に想い至った。表面からSi濃化層が除去されたステンレス鋼をろう付けすると、Si濃化層に起因した脆弱なニッケル化合物の生成がなく、熱交換器として使用するために十分な接合強度をもつろう付け継手が得られる。研磨仕上げによるSi濃化層の除去は、600番以下の研磨によって顕著になる。ろう付けの接合性は、研磨目が粗くなるほど向上する。しかし、80番以下の番手では、十分な耐食性が得られない。
【0020】
混酸仕上げ:HF濃度1〜20質量%のHF−HNO3 水溶液
ステンレス鋼表面のSi濃化層は、HF−HNO3 水溶液を使用した酸洗によっても除去される。HF−HNO3 水溶液中のHFにはステンレス鋼表面のSi濃化層を溶かす性質があり、HNO3 にはSi濃化層が溶かされたステンレス鋼の表面を不動態化し、皮膜を強化する働きがある。なかでも、HF濃度1〜20質量%のHF−HNO3 水溶液は、後述する実施例でも説明しているように、熱交換器として十分な接合強度を呈するレベルまでステンレス鋼表面のSi濃化層を低減する。Si濃化層の低減作用は、HF濃度3質量%以上で特に顕著となる。しかし、HF濃度の上昇に伴って設備の劣化,作業環境の悪化,コスト面での問題等が生じるため、本発明においてはHF濃度の上限を2
0質量%に設定した。
【0021】
吸収液のLiBr濃度:50質量%以下
従来から使用されている吸収液は、濃度50質量%以上のLiBrを主成分とするものであった。しかし、高性能化のため、吸収液濃度を高濃度にする必要があり、その吸収液で溶液をサイクルした場合、濃厚吸収液が低温部で晶析する。吸収液の晶析を防止するためには、吸収液成分を多成分系にすることが望ましく、なかでも特にLiBr−LiI−LiCl−LiNO3 の四成分系とし、且つLiBr濃度を50質量%以下にすることが有効であることを見い出した。
【0022】
【実施例】
表1に示す成分をもつステンレス鋼を溶製し、熱延,酸洗,冷延,中間焼鈍を経て板厚0.3mmの冷延焼鈍板を製造した。表1において、Aグループはフェライト系ステンレス鋼を、BグループはSi含有量が少ないオーステナイト系ステンレス鋼を、Cグループは本発明で規定した条件を満足するオーステナイト系ステンレス鋼を示す。
【0023】
【0024】
ステンレス鋼板B−1,B−2,C−1〜5から10mm×75mmのサイズに切り出し、表面を500番のエメリー紙で乾式研磨した後、曲げ半径8mmのUベンド試験片を作製した。LiBr:LiI:LiCl:LiNO3 =1:(0.5〜0.63):(0.2〜0.25):(0.2〜0.25)の組成をもつ濃度63質量%,アルカリ度0.3Nの四成分系吸収液を入れたオートクレーブの気相部及び液相部に各試験片をセットし、オートクレーブを密閉した。この状態で吸収液を200℃に2000時間加熱保持することにより、Si添加がステンレス鋼の耐応力腐食割れ性に及ぼす影響を調査した。
その結果、Si含有量が少ないステンレス鋼B−1,B−2では、1000時間が経過した時点で気相部に曝された試験片に応力腐食割れが発生した。他方、本発明で規定した量のSiを含むステンレス鋼C−1〜5では、何れの試験片も気相部及び液相部に曝された何れの試験片においても応力腐食割れが観察されなかった。この対比から明らかなように、1.0質量%以上のSiを添加したステンレス鋼を構造材とすることにより、気相部,液相部共に耐応力腐食割れに優れた再生器となることが確認された。
【0025】
また、次の試験により各ステンレス鋼の耐食性を調査した。
各ステンレス鋼から150mm×30mmの試験片を切り出し、500番のエメリー紙で乾式研磨し、MgO水溶液で脱脂した後、一晩以上にわたって乾燥させた。応力腐食割れ試験と同じ吸収液を収容したオートクレーブに乾燥処理後の各試験片を入れ、浸漬部深さが約30mmとなるように各試験片を吸収液に半浸漬した。オートクレーブを1.5mmHgに減圧して密閉し、吸収液を150℃に480時間加熱保持した。
加熱保持後、オートクレーブから試験片を取り出し、80℃に保持した30%HNO3 水溶液中に各試験片を浸漬して腐食生成物を除去し、最大孔食深さを測定した。測定結果を示す図3にみられるように、X=Cr+0.5Ni+3Si+3Mo−5Alで定義されるX値と最大孔食深さとの間に密接な関係があることが判った。すなわち、X値を30以上に調整するとき、最大孔食深さが0.02mm以下となり、再不動態化によって孔食部分が修復された。他方、30未満のX値では、最大孔食深さが0.02mmを超える成長性の孔食部となっていた。
【0026】
次いで、混酸仕上げがろう付け性に及ぼす影響を次のように調査した。
C−4の組成をもつ板厚1mmのステンレス冷延鋼管を55℃に保持したX質量%HF+9質量%HNO3 (X:0.5質量%,2.5質量%,5質量%,10質量%)水溶液に30秒間浸漬し、JIS Z3192に準拠してBNi−5によりろう付けした引張試験片を作製した。HF濃度が異なる各混酸についてn=10で引張試験し、引張試験で得られた破断応力の最低値とHF濃度との関係を求めた。
図4の調査結果にみられるように、混酸のHF濃度が高くなるほど大きな破断応力が示された。再生器の熱交換部に要求される破断応力は200MPa以上であり、この要求を満足させるためにHF濃度1質量%以上で混酸仕上げする必要があることが判る。なかでも、HF濃度が3質量%以上になると、破断応力は大きく改善されていた。
【0027】
更に、ステンレス鋼板B−1,B−2,C−4のそれぞれに表2に示す仕上げを施した後、プレート型熱交換器14を作製した。そして、BNi−5を用いて熱交換器14をフレーム13にろう付けすることにより、高温再生器を組み立てた。
得られた高温再生器を最高圧力10気圧の耐圧試験に供した。表2の試験結果にみられるように、Si含有量が1質量%以下のステンレス鋼C−4で作製した再生器では、0.5質量%HF+9質量%HNO3 水溶液で混酸仕上げした試験番号4の再生器はろう付け箇所で剥離が観察された。しかし、C−4でも400番研磨仕上げの試験番号3,2.5質量%HF+9質量%HNO3 で混酸仕上げした試験番号5、或いはSi含有量が1質量%未満のB−1,B−2で作製した他の再生器の耐圧試験結果では、何れもろう付け継手に破断や剥離等の異常が検出されず、良好な接合強度で熱交換器14がフレーム13に接合されていた。
【0028】
【0029】
耐圧試験結果が良好な試験番号1〜3,5の再生器について、耐応力腐食割れ試験と同じ吸収液を用い、最高温度190℃で2000時間の耐久性試験を行った(試験番号6〜9)。試験結果を示す表3にみられるように、X値が30未満のステンレス鋼B−1で作製した再生器では、熱交換器の気相部に孔食が発生していた。他方、その他の鋼種で作製した再生器は、孔食の発生が観察されなかった。また、ステンレス鋼B−1,B−2で作製した再生器では熱交換器の気相部に応力腐食割れが発生したが、Si含有量が1質量%以上のステンレス鋼C−4で作製した再生器は良好な耐応力腐食割れ性を呈した。この対比から明らかなように、本発明に従ったステンレス鋼で作製した再生器は、高温に加熱された四成分系の吸収剤に曝される過酷な腐食環境で運転してもトラブルを発生させることなく、長時間の運転に耐えることが判る。
【0030】
【0031】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の吸収式冷暖房機の再生器は、特定量のCr,Ni,Si及び必要に応じMo,Cuを含み、X=Cr+0.5Ni+3Si+3Mo−5Alで定義されるX値が30以上となるように成分設計した組成を持ち、研磨仕上げ又は混酸仕上げで表層のSi濃化層を除去したオーステナイト系ステンレス鋼を構造材として使用している。このように特定された構造材の使用により、吸収式冷温水機を小型化,高性能化する際に問題となっていた再生器の製造性や耐食性,耐応力腐食割れ性が改善され、ニッケルろう付けによって良好な接合強度をもつろう付け継手が形成される。その結果、一般家庭向けに吸収式冷温水機を数冷凍トン程度の規模まで小型化,高性能化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 吸収式冷暖房システムの概念図
【図2】 吸収式冷暖房システムに使用される再生器の内部構造を示す図
【図3】 X=Cr+0.5Ni+3Si+3Mo−5Alで定義されるX値と最大孔食深さとの間に密接な関係があることを示すグラフ
【図4】 酸洗仕上げに用いたHF濃度がろう付け部の破断応力最低値に及ぼす影響を示したグラフ
【符号の説明】
1:凝縮器 2:高温再生器 3:蒸発器 4:吸収器 5,5’:水蒸気冷媒 6:LiBr水溶液 7,7’:冷却媒体 8:液冷媒
9:冷房ルーム 10:負荷媒体 11:濃厚吸収液 12:希薄吸収液
13:フレーム 14:熱交換器 15:排気口 16:吸収液入口
17:蒸気出口 18:吸収液出口 19:ろう付け部 20:溶液熱交換器 G:燃焼排ガス
Claims (3)
- 水を冷媒とし、主成分がLiBr,LiI,LiCl,LiNO3でありLiBr濃度が50質量%以下の吸収液を使用する空冷吸収式冷温水機の高温再生器であって、C:0.08質量%以下,Si:1.0〜5.0質量%,Mn:1.0質量%以下,P:0.045質量%以下,S:0.005質量%以下,Cr:16.0〜25.0質量%,Ni:6.0〜20.0質量%,Al:0.1質量%以下,N:0.005〜0.35質量%,残部がFe及び不可避的不純物で、(Cr+0.5Ni+3Si−5Al)≧30を満足する組成をもち、80〜600番手で研磨仕上げしたオーステナイト系ステンレス鋼を構造材とする空冷吸収式冷温水機の高温再生器。
- 水を冷媒とし、主成分がLiBr,LiI,LiCl,LiNO3でありLiBr濃度が50質量%以下の吸収液を使用する空冷吸収式冷温水機の高温再生器であって、C:0.08質量%以下,Si:1.0〜5.0質量%,Mn:1.0質量%以下,P:0.045質量%以下,S:0.005質量%以下,Cr:16.0〜25.0質量%,Ni:6.0〜20.0質量%,Al:0.1質量%以下,N:0.005〜0.35質量%,残部がFe及び不可避的不純物で、(Cr+0.5Ni+3Si−5Al)≧30を満足する組成をもち、HF濃度1〜20質量%のHF−HNO3水溶液中で混酸仕上げを施したオーステナイト系ステンレス鋼を構造材とする空冷吸収式冷温水機の高温再生器。
- (Cr+0.5Ni+3Si+3Mo−5Al)≧30を満足する条件下で更にCu:0.5〜3.0質量%及び/又はMo:0.5〜3.0質量%を含むオーステナイト系ステンレス鋼を構造材とする請求項1又は2記載の空冷吸収式冷温水機の高温再生器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01082097A JP3655036B2 (ja) | 1997-01-24 | 1997-01-24 | 空冷吸収式冷温水機の高温再生器 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01082097A JP3655036B2 (ja) | 1997-01-24 | 1997-01-24 | 空冷吸収式冷温水機の高温再生器 |
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