JP3653564B2 - 安定な測定試薬及び測定方法 - Google Patents
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Description
本発明は、酸化酵素により生じた過酸化水素の検出反応系を使用し、色原体として電子供与基を有するアニリン誘導体を用いる、試料中の被検物質の測定試薬及び測定方法であり、前記色原体を含有する第1の試薬のpHが7.5以上であり、第2の試薬のpHが第1の試薬のpH未満である測定試薬及び測定方法に関し、開封状態においても長期間安定に使用することができる測定試薬及び測定方法に関するものである。
本発明は、特に、化学、生命科学、及び臨床検査等の分野において有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
試薬には、不安定なものが多く、保存中に劣化して使用できなくなってしまうことが多々ある。
特に、臨床検査試薬を自動分析装置で使用するといった、試薬を開封状態で使用せざるを得ない場合には、開封状態とすることにより生じる種々の要因により、試薬の劣化は著しい。
【0003】
例えば、空気中の酸素が試薬に溶け込むことにより、試薬中の成分が酸化され、劣化してしまうことがある。
また、空気中の二酸化炭素が試薬中に溶け込むことにより、試薬のpHが低下し、本来の機能が果たせなくなってしまうことがある。
更に、試薬中に二酸化炭素が溶け込むことにより、被検物質(測定しようとする物質)が二酸化炭素により阻害を受けてしまい、正確な測定が出来なくなってしまう場合もある。
【0004】
最近、近傍の他の試薬中の成分が気化し、その気化した成分が試薬に溶け込むことにより、試薬が劣化してしまうという問題が生じてきた。
【0005】
例えば、酸化酵素により生じた過酸化水素を4−アミノアンチピリン等の色原体とアニリン誘導体等のカプラーとパーオキシダーゼにより色素に導く検出反応系を使用する試料中の被検物質の測定試薬(いわゆるトリンダー試薬)においては、他の試薬に防腐剤として含有させたアジ化ナトリウムがアジ化水素として気化し、その近傍のトリンダー試薬に溶け込み、被検物質が存在しないにもかかわらず、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリンナトリウム(HDAOS)、N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(HDAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(DAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(DAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシ−4−フルオロアニリン(FDAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシ−4−フルオロアニリン(FDAPS)、又はN−(2−カルボキシエチル)−N−エチル−3,5−ジメトキシアニリン(CEDB)等の電子供与基を有するアニリン誘導体を発色させてしまい、測定に用いることが出来なくなることが知られている。
【0006】
更に、自動分析装置においては、アジ化物等の試薬に含まれる成分が自動分析装置等の試薬プローブ(試薬採取口)に付着することにより、この試薬プローブが次の試薬を採取した際に、試薬プローブに付着したアジ化物等がその試薬に混入し、上記等の電子供与基を有するアニリン誘導体を発色させてしまい、測定に用いることが出来なくなることが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように従来の試薬は、アジ化物等の近傍の試薬に含まれる成分が気化し、これが試薬に溶け込み、試薬を劣化させ、機能を低下させるものであった。
【0008】
更に、従来の試薬は、アジ化物等の試薬に含まれる成分が自動分析装置等の試薬プローブ(試薬採取口)に付着することにより、この試薬プローブが次の試薬を採取した際に、試薬プローブに付着したアジ化物等がその試薬に混入し、試薬を劣化させ、機能を低下させるものであった。
【0009】
本発明者らは、この従来の酸化酵素により生じた過酸化水素の検出反応系を使用し、色原体として電子供与基を有するアニリン誘導体を用いる被検物質の測定試薬及び測定方法が有する問題点の解決を目指して鋭意検討を行った結果、色原体を含有する第1の試薬のpHが7.5以上であり、且つ第2の試薬のpHが第1の試薬のpH未満になるように測定試薬を構成することにより、試薬の劣化や機能の低下を防止できることを見出し、開封状態においても長期間安定に使用することができる測定試薬及び測定方法を完成するに至った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、酸化酵素により生じた過酸化水素の検出反応系を使用し、色原体として電子供与基を有するアニリン誘導体を用いる、試料中の被検物質の測定試薬において、(イ)前記色原体を含有する第1の試薬のpHが7.5以上であり、(ロ)もう一方の試薬である第2の試薬のpHが第1の試薬のpH未満である、ことを特徴とする、2試薬系の試料中の被検物質の測定試薬である。
【0011】
そして、本発明の測定試薬においては、色原体を含有する第1の試薬のpHが7.8以上であることが好適である。
【0012】
更に、本発明の測定試薬においては、色原体を含有する第1の試薬のpHが8.0以上であることが特に好適である。
【0013】
なお、本明細書におけるpHの値は、特に言及していない限り20℃における値である。
【0014】
また、本発明は、酸化酵素により生じた過酸化水素の検出反応系を使用し、色原体として電子供与基を有するアニリン誘導体を用いる、試料中の被検物質の測定方法において、(イ)前記色原体を含有する第1の試薬のpHが7.5以上であり、(ロ)もう一方の試薬である第2の試薬のpHが第1の試薬のpH末満である、2試薬系の測定試薬を用いることを特徴とする、試料中の被検物質の測定方法である。
【0015】
そして、本発明の測定方法においては、色原体を含有する第1の試薬のpHが7.8以上であることが好適である。
【0016】
更に、本発明の測定方法においては、色原体を含有する第1の試薬のpHが8.0以上であることが特に好適である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明による試料中の被検物質の測定方法及び測定試薬は、酸化酵素により生じた過酸化水素の検出反応系を使用し、色原体として電子供与基を有するアニリン誘導体を用い、試料中の被検物質の測定を行うものであり、▲1▼前記色原体を含有する第1の試薬のpHが7.5以上であり、▲2▼もう一方の試薬である第2の試薬のpHが第1の試薬のpH末満である、ことを特徴とするものである。
【0018】
本発明における、電子供与基を有するアニリン誘導体としては、例えば、アニリンのアミノ基の1つ又は2つの水素原子が置換されたアニリン誘導体からなり、前記アニリン誘導体のベンゼン環の3位又は5位の水素原子の一方又は両方が電子供与基で置換されていて、場合により、前記アニリン誘導体のベンゼン環の4位の水素原子がハロゲン原子で置換されている化合物である。
なお、上記の電子供与基を有するアニリン誘導体において、置換している官能基は、アニリン誘導体の4位の炭素原子が活性化される官能基、又はマイナスI効果を有する官能基であることが好ましい。
また、本発明の電子供与基を有するアニリン誘導体における電子供与基としては、例えば、メトキシ基[−O−CH3]、エトキシ基[−O−CH2−CH3]、プロポキシ基[−O−(CH2)2−CH3]、イソプロポキシ基[−O−CH(CH3)2]、エチル基[−CH3−CH3]、プロピル基[−(CH2)2−CH3]、イソプロピル基[−CH(CH3)2]等が挙げられる。
また、本発明の電子供与基を有するアニリン誘導体のアミノ基の水素原子を置換する官能基としては、炭素数が1〜5のアルキル基又は炭素数が1〜5のアミノアルキル基等を挙げることができ、このアルキル基又はアミノアルキル基の水素原子は1つ又は2つ以上の水酸基、カルボキシル基、スルホン基、アシル基、サクシニル基、又はこれらの塩等で置換されていてもよい。
そして、本発明の電子供与基を有するアニリン誘導体のベンゼン環の4位の水素原子を置換するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等を挙げることができる。
【0019】
本発明における、電子供与基を有するアニリン誘導体である色原体としては、例えば、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリンナトリウム(HDAOS)、N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(HDAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(DAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(DAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシ−4−フルオロアニリン(FDAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシ−4−フルオロアニリン(FDAPS)、又はN−(2−カルボキシエチル)−N−エチル−3,5−ジメトキシアニリン(CEDB)等を挙げることができる。
【0020】
また、本発明において、測定を行う試料としては、被検物質が存在する可能性があり、且つその被検物質の存在の有無の確認又は定量を行おうとするものをいう。
例えば、ヒト又は動物の血液、血清、血漿、尿、精液、髄液、唾液、汗、涙、腹水、羊水等の体液;ヒト若しくは動物の肝臓、胃、脳等の臓器、毛髪、皮膚、爪、筋肉、又は神経組織等の抽出液;ヒト又は動物の糞便の抽出液又は懸濁液;細胞或いは菌体の抽出液;植物の抽出液等が挙げられる。
【0021】
本発明において、測定を行う被検物質としては、酸化酵素により生じた過酸化水素の検出反応系により測定が行えるものであればいずれのものでもよい。
例えば、総コレステロール、遊離型コレステロール、エステル型コレステロール、HDL−コレステロール、LDL−コレステロール、レムナント様リポタンパク−コレステロール、β−リポタンパク質、トリグリセライド(TG)、リン脂質(PL)、遊離脂肪酸(NEFANFFA)、グルコース、乳酸、ピルビン酸、ガラクトース、2・3−DPG、シアル酸、クエン酸、フルクトサミン、1,5−アンヒドロ−D−グルシトール、グリコーゲン、フコース、総ビリルビン、直接ビリルビン、間接ビリルビン、抱合型ビリルビン、非抱合型ビリルビン、クレアチニン、クレアチン、尿酸(UA)、ナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム、無機リン、マグネシウム、胆汁酸、リパーゼ、リポタンパクリパーゼ(LPL)、コリンエステラーゼ(Ch−E)等が挙げられる。
【0022】
本発明における第1の試薬は、前記の電子供与基を有するアニリン誘導体である色原体を含有するものであり、且つpHが7.5以上であるものである。
なお、後に実施例に示すように、本発明における測定試薬及び測定方法の開封状態における安定性は、pHに依存している。即ち、この第1の試薬のpHが、7.5を過ぎてアルカリ側に傾くにつれて、開封状態における安定性が向上していくので、安定性の面から言うと、第1の試薬のpHは、7.5以上であって、より高い方が望ましい。この第1の試薬のpHは、7.8以上であることが好ましく、特に8.0以上であることが好ましい。
但し、pHがあまり高すぎると、後記のようなこの第1の試薬に含まれている、色原体、酵素の基質、共役酵素、補酵素、又はタンパク質等が、変性、劣化、分解する恐れがあり好ましくない。
よって、第1の試薬のpHは、12以下とするのが好ましく、特にpH11以下とすることが好ましい。
【0023】
本発明におけるもう一方の試薬である第2の試薬は、pHが第1の試薬のpH未満であるものである。
そして、第2の試薬のpHを第1の試薬のpH未満とすることにより、試料、第1の試薬及び第2の試薬を混合した最終反応液のpHを第1の試薬のpH未満とすることができるので、第1の試薬のpHが測定反応の至適pH域より高かったとしても、最終反応液のpHを測定反応の至適pH域に設定することができる。
例えば、尿酸、総コレステロール等の測定試薬においては、測定反応の至適pHが6.5〜7.2であるので、第1の試薬のpHが7.5以上であっても、第1の試薬のpH未満である第2の試薬を混合することにより、最終反応液のpHを至適pH、即ち6.5〜7.2に設定することができるので、本発明の測定試薬及び測定方法は尿酸、総コレステロール等の測定試薬においては特に有用である。
但し、この第2の試薬において、pHがあまり低すぎると、後記のようなこの第2の試薬に含まれている、酵素の基質、共役酵素、補酵素、又はタンパク質等が、変性、劣化、分解する恐れがあり好ましくない。
よって、第2の試薬は、pH2以上とするのが好ましく、特にpH3以上とすることが好ましい。
【0024】
また、電子供与基を有するアニリン誘導体を色原体として用いることで、酸化酵素により生じた過酸化水素の検出反応系におけるビリルビンによる負誤差の影響を回避することができる。しかし、前記色原体を含有する試薬は、アジ化物等により、試薬が劣化、又は機能が低下してしまうものであった。
本発明による測定試薬及び測定方法によれば、前記色原体を含有する第1の試薬のpHを7.5以上に設定することで、アジ化物等による影響を回避することができるので、前記色原体を使用してビリルビンによる影響をも回避することができる。
なお、このビリルビンの影響を回避する場合には、最終反応液のpHを7.5以下、好ましくは7.0以下にすることが望ましい。
そこで、第2の試薬のpHを第1の試薬のpH未満とすることにより、試料、第1の試薬及び第2の試薬を混合した最終反応液のpHを第1の試薬のpH未満とすることができるので、第1の試薬のpHが7.5より高かったとしても、最終反応液のpHを7.5以下に設定することができる。
【0025】
なお、本発明の測定試薬及び測定方法において、最終反応液のpHを測定反応の至適pH域に設定するには、例えば、以下のように行えばよい。
まず、第1の試薬において、色原体の発色の抑制に効果のあるpH7.5以上のpHと緩衝剤濃度を選択する。
次に、第1の試薬のpH未満の数種類のpHを有し、適当な緩衝剤濃度の数種類の第2の試薬を、第1の試薬及び試料と所定の量比で混合し、最終反応液のpHを確認し、測定反応の至適pH域に入った第2の試薬のpHと緩衝剤濃度を選択する。
【0026】
ここで、pH7.5以上に緩衝能を持つ緩衝剤としては、例えば、Tris、リン酸緩衝液、イミダゾール、グリシルグリシン、PIPES、ACES、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、HEPPS、Tricine、Bicine、TAPS、CHES、CAPSO、CAPS等を挙げることができる。また、pH7.5未満に緩衝能を持つ緩衝剤としては、例えば、Tris、リン酸緩衝液、イミダゾール、MES、Bis−Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO等を挙げることができる。
更に、本発明における第1の試薬には、DIPSO又はTESを含有させることが好ましい。
【0027】
なお、試料はその量比が小さく、最終反応液のpHにほとんど寄与しないので、第1の試薬と第2の試薬の混合液のpHをもって、pHの確認を行ってもよい。
【0028】
また、本発明における第1の試薬及び第2の試薬には、酵素の基質、共役酵素、補酵素、金属イオン若しくはこれを含む金属塩、キレート剤、アルブミンなどのタンパク質、糖類若しくは高分子化合物などの安定化剤、アジ化ナトリウム若しくは抗生物質などの防腐剤、試料中に含まれる測定妨害物質の消去剤若しくは影響抑制剤、界面活性剤、賦形剤又は活性化剤等を適宜必要に応じて含有させることができる。
【0029】
本発明における、測定値に誤差を生じさせるアジ化物を含む試薬としては、例えば、防腐剤等の用途のためアジ化ナトリウムなどのアジ化物が処方されている各種の測定試薬等を挙げることができる。
【0030】
そして、このアジ化物が溶け込むことにより劣化し、機能が低下する試薬としては、前記の電子供与基を有するアニリン誘導体を色原体として用いる試薬を挙げることができる。
【0031】
この測定試薬及び測定方法により測定を行う場合、測定は反応速度法(レート法)又は終点法(エンドポイント法)のいずれによるものでも良く、測定ステップは第1の試薬及び第2の試薬を用いて2ステップ法により行えばよく、測定波長は紫外部、可視部、又は赤外部の適当な波長を使用することができ、測定反応の温度は30℃又は37℃等測定反応が進行し且つ測定反応に係わる酵素等の反応成分が熱により失活、又は変質しない範囲内の温度を設定すれば良く、測定反応の開始方法は基質を加えることにより行う方法又は試料を加えることにより行う方法等のいずれの方法でも良く、そして測定の手法は用手法又は自動分析装置などの装置による方法のいずれをも用いることができる。
【0032】
本発明における測定においては、試料、第1の試薬及び第2の試薬を混合する順序は、特に制限はなく、用いる測定試薬、測定装置に応じて適宜定めればよい。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に詳述するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
(気体の溶け込みによる試薬の劣化防止効果の実証)
アジ化物を気化するアジ化ナトリウム含有試薬、及び気化したアジ化物の溶け込みにより発色してしまうN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリンナトリウム(HDAOS)含有試薬の組み合わせにおける、HDAOS含有試薬の気化したアジ化物の溶け込みによる発色、劣化の度合いを確かめた。
【0034】
(1)試薬の調製
▲1▼アジ化ナトリウム含有試薬
下記の測定試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pHを5.2(20℃)に調整した。
【0035】
次に、試験管(容量10mL、長さ105mm、内径13mm)に、このアジ化ナトリウム含有試薬の3mLを注入し、これを「アジ化ナトリウム含有試薬」とした。
【0036】
▲2▼HDAOS含有試薬
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH6.5、7.0、7.5、8.0、8.5(20℃)のものをそれぞれ調製した。
【0037】
5種類のpHに調整した前記の試薬を各々試験管(容量10mL、長さ105mm、内径13mm)に3mLずつ注入し、これをpHの異なる5種類の「HDAOS含有試薬」とした。
【0038】
(2)試薬の保存
上記(1)で調製した、アジ化ナトリウム含有試薬、及びHDAOS含有試薬を下記の5種類の組み合わせでビニール袋(135mm×85mm;チャック付き)に入れ、チャックを閉めて密封し、5℃の冷蔵庫にて17日間保存した。なお、各試験管の口に栓はしなかった。
a)アジ化ナトリウム含有試薬 及び HDAOS含有試薬(pH6.5)
b)アジ化ナトリウム含有試薬 及び HDAOS含有試薬(pH7.0)
c)アジ化ナトリウム含有試薬 及び HDAOS含有試薬(pH7.5)
d)アジ化ナトリウム含有試薬 及び HDAOS含有試薬(pH8.0)
e)アジ化ナトリウム含有試薬 及び HDAOS含有試薬(pH8.5)
【0039】
(3)保存した試薬の発色の判定
保存開始時及び保存1日後、4日後、7日後、11日後、並びに17日後に、上記(2)で5℃の冷蔵庫にて保存した、pHの異なる5種類のHDAOS含有試薬が、発色しているか否かを目視で判定した。
【0040】
(4)判定結果
試薬の発色の判定結果を表1に示した。
【0041】
【表1】
【0042】
この表より、「アジ化ナトリウム含有試薬及びHDAOS含有試薬(pH6.5)」の組み合わせの場合は、保存1日後にして、「アジ化ナトリウム含有試薬及びHDAOS含有試薬(pH7.0)」の組み合わせの場合は、保存4日後で既に発色してしまっていることが分かる。
これに対して、「アジ化ナトリウム含有試薬及びHDAOS含有試薬(pH7.5)」の組み合わせの場合は、保存4日後でも発色しておらず、「アジ化ナトリウム含有試薬及びHDAOS含有試薬(pH8.0)」の組み合わせの場合は、保存7日後でも発色していないことが分かる。
更に、「アジ化ナトリウム含有試薬及びHDAOS含有試薬(pH8.5)」の組み合わせの場合は、保存17日後でさえも発色していないことが分かる。
【0043】
このことにより、HDAOS含有試薬(第1の試薬)のpHを7.5以上に設定すれば、アジ化ナトリウム含有試薬から気化したアジ化物がHDAOS含有試薬に溶け込んでもHDAOS含有試薬の発色を抑え、試薬の劣化、機能の低下を防ぐことが出来ることが確かめられた。
【0044】
[実施例2]
(アジ化物の混入による試薬の劣化防止効果の実証)
アジ化ナトリウムの混入により発色してしまうN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリンナトリウム(HDAOS)含有試薬にアジ化ナトリウムを添加して、試薬プローブ等よりアジ化ナトリウムが混入した場合の試薬を作り出し、HDAOS含有試薬のpHを変更したことによる発色、劣化の度合いを確かめた。
【0045】
(1)試薬の調製
▲1▼アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH6.5、7.0、7.5、8.0、8.5(20℃)のものをそれぞれ調整した。
【0046】
5種類のpHに調整した試薬を各々試験管(容量10mL、長さ105mm、内径13mm)に、3mLずつ注入し、これを「アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬」とした。
【0047】
(2)試薬の保存
上記(1)で調製した5種類の「アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬」を密栓して、5℃の冷蔵庫にて17日間保存した。
a)アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬(pH6.5)
b)アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬(pH7.0)
c)アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬(pH7.5)
d)アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬(pH8.0)
e)アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬(pH8.5)
【0048】
(3)試薬の発色の判定
保存開始時及び保存1日後、4日後、7日後、11日後、並びに17日後に、pHの異なる5種類の「アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬」が、発色しているか否かを目視で判定した。
【0049】
(4)測定結果
試薬の発色の判定結果を表2に示した。
【0050】
【表2】
【0051】
この表より、pH6.5の「アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬」は、保存1日後にして、pH7.0の「アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬」は、保存4日後で既に発色していることが分かる。
これに対して、pH7.5の「アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬」は、保存4日後でも発色しておらず、pH8.0の「アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬」は、保存7日後でも発色していないことがわかる。更に、pH8.5の「アジ化ナトリウムを添加したHDAOS含有試薬」は、保存17日後でさえも発色していないことが分かる。
【0052】
このことにより、HDAOS含有試薬のpHを7.5以上に設定すれば、アジ化物が混入してもHDAOS含有試薬の発色を抑え、試薬の劣化、機能の低下を防ぐことが出来ることが確かめられた。
【0053】
[実施例3]
(尿酸測定試薬への応用例)
HDAOSを含有する尿酸測定用の第1試薬(第1の試薬)、及び4−アミノアンチピリンを含有する尿酸測定用の第2試薬(第2の試薬)より構成される尿酸測定用試薬を調製し、アジ化物を気化するアジ化ナトリウム含有試薬を近傍に置いた場合の安定性を検討した。
【0054】
(1)試薬の調製
▲1▼アジ化ナトリウム含有試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pHを5.2(20℃)に調整した。
【0055】
▲2▼本発明・尿酸測定用第1試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH8.5(20℃)に調整したものを調製した。
【0056】
▲3▼対照・尿酸測定用第1試薬の調製
pHを7.0(20℃)に調整すること以外は、上記▲2▼の本発明・尿酸測定用第1試薬と同じ試薬成分及び濃度で調製を行った。
【0057】
▲4▼尿酸測定用第2試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH7.0(20℃)に調整したものを調製した。
【0058】
(2)安定性検討のための試薬の保存
上記(1)で調製した、アジ化ナトリウム含有試薬、対照及び本発明尿酸測定用第1試薬、並びに第2試薬を、図1のようにそれぞれ試験管(容量10mL、長さ105mm、内径13mm)に充填し、下記の組み合わせでビニール袋(135mm×85mm;チャック付き)に入れ、チャックを閉めて密封し、5℃の冷蔵庫にて10日間保存した。なお、各試験管の口に栓はしなかった。
a)本発明・尿酸測定用第1試薬(pH8.5)、第2試薬及びアジ化ナトリウム含有試薬
b)対 照・尿酸測定用第1試薬(pH7.0)、第2試薬及びアジ化ナトリウム含有試薬
【0059】
(3)保存した試薬の安定性の判定
保存開始時及び、保存1日後、5日後、並びに10日後に、本発明及び対照の尿酸測定用第1試薬が発色しているか否かを目視で判定した。
【0060】
(4)安定性の判定結果
試薬の安定性について、発色の判定結果を表3に示した。
【0061】
【表3】
【0062】
この表より、対照・尿酸測定用第1試薬は、保存1日後にして既に発色してしまっているのに対して、本発明・尿酸測定用第1試薬は、保存10日後でさえも発色していないことが分かる。
【0063】
このことにより、本発明・尿酸測定用第1試薬では、アジ化ナトリウム含有試薬から気化したアジ化物が尿酸測定試薬に溶け込んでも試薬の劣化、機能の低下を防ぐことが出来ることが確かめられた。
【0064】
(5)相関の測定
本発明・尿酸測定用第1試薬及び対照・尿酸測定用第1試薬並びに尿酸測定用第2試薬にて、50検体のヒト血清試料の尿酸値を測定して、本発明試薬及び対照試薬の相関を確認した。
【0065】
ヒト血清試料中の尿酸の測定は、日立製作所製7150形自動分析装置にて行い、ヒト血清試料5μLに第1試薬として尿酸測定用第1試薬を320μL加え37℃で5分間反応させた後、第2試薬として尿酸測定用第2試薬を80μL添加し混合液(最終反応液)とした。この時の最終反応液のpHは、本発明及び対照・尿酸測定用試薬ともに7.0であった。37℃で反応を行わせ、主波長600nm及び副波長700nmにおける第2試薬添加直前(24ポイント)と、第2試薬添加5分目(50ポイント)の吸光度の増加分より、既知濃度の尿酸標準液を測定した時の吸光度との比例計算によって尿酸値を求めた。
なお、純水を試料とした時の吸光度を試薬盲検値として、各ポイントにおいて測定した吸光度より各ポイントの試薬盲検値を差し引いた吸光度を尿酸値の算出に用いた。
【0066】
(6)測定結果
本発明・尿酸測定用第1試薬及び対照・尿酸測定用第1試薬並びに尿酸測定用第2試薬を用いてヒト血清試料中の尿酸を測定した時の測定結果を図2に示した。この図において、横軸は対照試薬による測定値を表し、縦軸は本発明試薬による測定値を表す。
【0067】
【図2】
【0068】
この図より本発明試薬(y)と対照試薬(x)との回帰式がy=1.004x−0.074であり、相関係数がr=0.999であって、良好な相関を示していることがわかる。
【0069】
このことにより、本発明・尿酸測定用第1試薬及び尿酸測定用第2試薬による尿酸の測定は、アジ化物の溶け込み、混入を受けておらず誤差を生じていない対照・尿酸測定用第1試薬及び尿酸測定用第2試薬と測定値が同一であり、正確な尿酸値を得られることが確かめられた。
【0070】
[実施例4]
(総コレステロール測定試薬への応用例)
4−アミノアンチピリンを含有する総コレステロール測定用の第1試薬(第2の試薬)、及びHDAOSを含有する総コレステロール測定用の第2試薬(第1の試薬)より構成される総コレステロール測定用試薬を調製し、第2試薬にアジ化ナトリウムを添加した場合の安定性を検討した。
【0071】
(1)試薬の調製
▲1▼総コレステロール測定用第1試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH6.9(20℃)に調整した。
【0072】
▲2▼アジ化ナトリウムを添加した本発明・総コレステロール測定用第2試薬の調製下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH8.0、9.0(20℃)のものをそれぞれ調整した。
【0073】
▲3▼アジ化ナトリウムを添加した対照・総コレステロール測定用第2試薬の調製
pHを7.0(20℃)に調整すること以外は、上記▲2▼の本発明・総コレステロール測定用第2試薬と同じ試薬成分及び濃度で調製を行った。
【0074】
(2)安定性検討のための試薬の保存
上記(1)で調製した「第1試薬及びアジ化ナトリウムを添加した本発明及び対照の総コレステロール測定用第2試薬」を密栓して、室温(25℃)にて11日間保存した。
a)アジ化ナトリウムを添加した本発明・総コレステロール測定用第2試薬
(pH8.0)
b)アジ化ナトリウムを添加した本発明・総コレステロール測定用第2試薬
(pH9.0)
c)アジ化ナトリウムを添加した対照・総コレステロール測定用第2試薬
(pH7.0)
d)総コレステロール測定用第1試薬
【0075】
(3)保存した試薬の安定性の判定
保存開始時及び、保存2日後、4日後、7日後、9日後、並びに11日後に、本発明及び対照の総コレステロール測定用第2試薬が発色しているか否かを目視で判定した。
【0076】
(4)安定性の判定結果
試薬の安定性について、発色の判定結果を表4に示した。
【0077】
【表4】
【0078】
この表より、対照・総コレステロール測定用第2試薬(pH7.0)は、25℃保存2日後にして、既に発色してしまっているのに対して、本発明・総コレステロール測定用第2試薬(pH8.0及びpH9.0)は、保存11日後でさえも発色していないことが分かる。
【0079】
このことにより、本発明の第2試薬では、試薬プローブ等よりアジ化ナトリウムが総コレステロール測定用試薬に溶け込んでも試薬の劣化、機能の低下を防ぐことが出来ることが確かめられた。
【0080】
(5)相関の測定
総コレステロール測定用第1試薬並びに本発明(pH8.0)及び対照の総コレステロール測定用第2試薬にて、60検体のヒト血清試料の総コレステロール値を測定して、本発明試薬及び対照試薬の相関を確認した。
【0081】
ヒト血清試料中の総コレステロールの測定は、日立製作所製7150形自動分析装置にて行い、ヒト血清試料4μLに第1試薬として総コレステロール測定用第1試薬を300μL加え37℃で5分間反応させた後、第2試薬として総コレステロール測定用第2試薬を100μL添加し混合液(最終反応液)とした。この時の最終反応液のpHは、本発明及び対象・総コレステロール測定用試薬ともに7.0であった。37℃で反応を行わせ、主波長600nm及び副波長700nmにおける第2試薬添加直前(24ポイント)と、第2試薬添加5分目(50ポイント)の吸光度の増加分より、既知濃度の総コレステロール標準液を測定した時の吸光度との比例計算によって総コレステロール値を求めた。
なお、純水を試料とした時の吸光度を試薬盲検値として、各ポイントにおいて測定した吸光度より各ポイントの試薬盲検値を差し引いた吸光度を総コレステロール値の算出に用いた。
【0082】
(6)測定結果
本発明・総コレステロール測定用第2試薬及び対照・総コレステロール測定用第2試薬並びに総コレステロール測定用第1試薬を用いてヒト血清試料中の総コレステロールを測定した時の測定結果を図3に示した。この図において、横軸は対照試薬による測定値を表し、縦軸は本発明試薬による測定値を表す。
【0083】
【図3】
【0084】
この図より本発明試薬(y)と対照試薬(x)との回帰式がy=0.997x−0.702であり、相関係数がr=0.997であって、良好な相関を示していることがわかる。
【0085】
このことにより、総コレステロール測定用第1試薬及び本発明・総コレステロール測定用第2試薬による総コレステロールの測定は、アジ化物の溶け込み、混入を受けておらず誤差を生じていない総コレステロール測定用第1試薬及び対照・総コレステロール測定用第2試薬と測定値が同一であり、正確な総コレステロール値を得られることが確かめられた。
【0086】
[実施例5]
(尿酸測定試薬におけるビリルビンの影響回避効果の実証)
HDAOS含有第1試薬(第1の試薬)、及びpH7.0の4−アミノアンチピリン含有第2試薬(第2の試薬)より構成される本発明・尿酸測定用試薬、TOOS含有第1試薬、及びpH7.5の4−アミノアンチピリン含有第2試薬(第2の試薬)より構成される対照1・尿酸測定用試薬、並びにTOOS含有第1試薬、及びpH7.0の4−アミノアンチピリン含有第2試薬(第2の試薬)より構成される対照2・尿酸測定用試薬を調製し、ビリルビンによる負誤差の影響を検討した。
【0087】
(1)試薬の調製
▲1▼本発明・HDAOS含有第1試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH7.5(20℃)に調整した。
【0088】
▲2▼対照・TOOS含有第1試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH7.5(20℃)に調整した。
【0089】
▲3▼第2試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH7.0(20℃)に調整した。
【0090】
▲4▼第2試薬の調製
pHを7.5(20℃)に調整すること以外は、上記▲3▼の第2試薬と同じ試薬成分及び濃度で調製を行った。
【0091】
(2)ビリルビンの影響の測定
ヒト血清試料に干渉チェック・ビリルビン−C(国際試薬社製)を加えビリルビン濃度20及び50mg/dlの血清試料を作製した。
また、希釈血清試料を、ビリルビン濃度20及び50mg/dlの血清試料の調製と同様に、ヒト血清試料と生理食塩水を9:1の割合で混合し調製した。
この3種類の血清試料の尿酸値を、HDAOS含有第1試薬及びpH7.0の第2試薬(本発明)、TOOS含有第1試薬及びpH7.5の第2試薬(対照1)、TOOS含有第1試薬及びpH7.0の第2試薬(対照2)の各々の試薬にて5回ずつ測定し、本発明試薬、対照1試薬及び対照2試薬のビリルビンの影響を確認した。
【0092】
上記(2)の血清試料中の尿酸の測定は、日立製作所製7150形自動分析装置にて行い、血清試料5μLに第1試薬を320μL加え37℃で5分間反応させた後、第2試薬として尿酸測定用第2試薬を80μL添加し混合液(最終反応液)とした。この時の最終反応液のpHは、本発明試薬及び対照1試薬では7.0であり、対照2試薬では7.5であった。37℃で反応を行わせ、主波長600nm及び副波長700nmにおける第2試薬添加直前(24ポイント)と、第2試薬添加5分目(50ポイント)の吸光度の増加分より、既知濃度の尿酸標準液を測定した時の吸光度との比例計算によって尿酸値を求めた。
なお、純水を試料とした時の吸光度を試薬盲検値として、各ポイントにおいて測定した吸光度より各ポイントの試薬盲検値を差し引いた吸光度を尿酸値の算出に用いた。
【0093】
(3)測定結果
HDAOS含有第1試薬及びpH7.0の第2試薬(本発明)、TOOS含有第1試薬及びpH7.5の第2試薬(対照1)、TOOS含有第1試薬及びpH7.0の第2試薬(対照2)の各々の試薬にて尿酸を測定した時の測定結果を表5に示した。
【0094】
【表5】
【0095】
この表より対照1試薬では、ビリルビン濃度20mg/dlで10.10%、ビリルビン濃度50mg/dlで28.87%の負誤差を示し、対照2試薬では、ビリルビン濃度20mg/dlで7.20%、ビリルビン濃度50mg/dlで21.19%の負誤差を示しているのに対し、本発明試薬では、ビリルビン濃度20mg/dlで1.70%、ビリルビン濃度50mg/dlでも4.47%の負誤差にとどまっていることが分かる。
【0096】
このことにより、本発明・尿酸測定用第1試薬及び尿酸測定用第2試薬による尿酸の測定は、ビリルビンによる影響を受けておらず、正確な尿酸値が得られることが確かめられた。また、本結果より最終反応液のpHが低いほど、ビリルビンの影響を受けないことも分かる。
【0097】
[実施例6]
(トリグリセライド測定試薬におけるアジ化物の混入による劣化防止効果の実証)
HDAOSを含有するトリグリセライド測定用の第1試薬(第1の試薬)において、緩衝剤としてMOPS、DIPSO又はBicineを使用したもの、及び4−アミノアンチピリンを含有するトリグリセライド測定用の第2試薬(第2の試薬)より構成されるトリグリセライド測定用試薬を調製し、アジ化物を気化するアジ化ナトリウム含有試薬を近傍に置いて、10℃及び25℃で保存した場合の安定性を検討した。
【0098】
(1)試薬の調製
▲1▼アジ化ナトリウム含有試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pHを5.2(20℃)に調整した。
【0099】
▲2▼本発明・DIPSO含有トリグリセライド測定用第1試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH7.5、8.0(20℃)のものをそれぞれ調製した。
【0100】
▲3▼本発明・MOPS含有トリグリセライド測定用第1試薬の調製
緩衝液をDIPSOからMOPSに変えること、及びpHを7.5(20℃)に調整すること以外は、上記▲2▼の本発明・トリグリセライド測定用第1試薬と同じ測定試薬成分、及び濃度で調製を行った。
【0101】
▲4▼本発明・Bicine含有トリグリセライド測定用第1試薬の調製
緩衝液をDIPSOからBicineに変えること、及びpHを8.0、8.5及び9.0(20℃)に調整すること以外は、上記▲2▼の本発明・トリグリセライド測定用第1試薬と同じ測定試薬成分、及び濃度で調製を行った。
【0102】
▲5▼対照・MOPS含有トリグリセライド測定用第1試薬の調製
緩衝液をDIPSOからMOPSに変えること、及びpHを6.5(20℃)及び7.0に調整すること以外は、上記▲2▼の本発明・トリグリセライド測定用第1試薬と同じ測定試薬成分、及び濃度で調製を行った。
【0103】
▲6▼対照・DIPSO含有トリグリセライド測定用第1試薬の調製
pHを7.0(20℃)に調整すること以外は、上記▲2▼の本発明・トリグリセライド測定用第1試薬と同じ測定試薬成分、及び濃度で調製を行った。
【0104】
▲7▼トリグリセライド測定用第2試薬の調製
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH
(20℃)に調製した。
【0105】
(2)安定性検討のための試薬の保存
上記(1)で調製した、アジ化ナトリウム含有試薬、対照及び本発明トリグリセライド測定用第1試薬、並びにトリグリセライド測定用第2試薬を、図1のようにそれぞれ試験管(容量10mL、長さ105mm、内径13mm)に充填し、下記の組み合わせでビニール袋(135mm×85mm;チャック付き)に入れ、チャックを閉めて密封し、10℃及び25℃にて11日間保存した。
a)本発明・MOPS含有トリグリセライド測定用第1試薬(pH7.5)、
第2試薬並びにアジ化ナトリウム含有試薬
b)本発明・DIPSO含有トリグリセライド測定用第1試薬(pH7.5)、
第2試薬並びにアジ化ナトリウム含有試薬
c)本発明・DIPSO含有トリグリセライド測定用第1試薬(pH8.0)、
第2試薬並びにアジ化ナトリウム含有試薬
d)本発明・Bicine含有トリグリセライド測定用第1試薬
(pH8.0)、第2試薬並びにアジ化ナトリウム含有試薬
e)本発明・Bicine含有トリグリセライド測定用第1試薬
(pH8.5)、第2試薬並びにアジ化ナトリウム含有試薬
f)本発明・Bicine含有トリグリセライド測定用第1試薬
(pH9.0)、第2試薬並びにアジ化ナトリウム含有試薬
g)対照・MOPS含有トリグリセライド測定用第1試薬(pH6.5)、
第2試薬並びにアジ化ナトリウム含有試薬
h)対照・MOPS含有トリグリセライド測定用第1試薬(pH7.0)、
第2試薬並びにアジ化ナトリウム含有試薬
i)対照・DIPSO含有トリグリセライド測定用第1試薬(pH7.0)、
第2試薬並びにアジ化ナトリウム含有試薬
【0106】
(3)保存した試薬の安定性の判定
保存開始時及び、保存1日後、2日後、4日後、6日後、7日後、8日後、並びに11日後に、各々のトリグリセライド測定用第1試薬が発色しているか否かを目視で判定した。
【0107】
(4)安定性の判定結果
試薬の安定性について、10℃における発色の判定結果を表6に示した。
【0108】
【表6】
【0109】
この表6より、対照試薬の「緩衝剤としてMOPSを用いたトリグリセライド測定用第1試薬(pH6.5及びpH7.0)」では、いずれも2日後にして、既に発色してしまっている。「緩衝剤としてDIPSOを用いたトリグリセライド測定用第1試薬(pH7.0)」でも、保存6日後で、既に発色してしまっているのが分かる。
これに対して、本発明試薬の「緩衝剤としてMOPSを用いたトリグリセライド測定用第1試薬(pH7.5)」では、保存4日後でも発色していないことが分かる。更に、「緩衝剤としてDIPSOを用いたトリグリセライド測定用第1試薬」では、pH7.5の場合には、保存7日後でも発色しておらず、pH8.0の場合には、保存11日後でも発色していないことが分かる。また、「緩衝剤としてBicineを用いたトリグリセライド測定用第1試薬」では、pH8.0の場合には、保存8日後でも発色しておらず、pH8.5及びpH9.0の場合には、保存11日後でも発色していないことが分かる。
【0110】
次に、25℃における発色の判定結果を表7に示した。
【0111】
【表7】
【0112】
この表7より、対照試薬の「緩衝剤としてMOPSを用いたトリグリセライド測定用第1試薬(pH6.5及びpH7.0)」では、いずれも2日後にして、既に発色してしまっている。「緩衝剤としてDIPSOを用いたトリグリセライド測定用第1試薬(pH7.0)」でも、保存4日後で、既に発色してしまっているのが分かる。
これに対して、本発明試薬の「緩衝剤としてMOPSを用いたトリグリセライド測定用第1試薬(pH7.5)」では、保存2日後でも発色していないことが分かる。更に、「緩衝剤としてDIPSOを用いたトリグリセライド測定用第1試薬」では、pH7.5の場合には、保存4日後でも発色しておらず、pH8.0の場合には、保存6日後でも発色していないことが分かる。また、「緩衝剤としてBicineを用いたトリグリセライド測定用第1試薬」では、pH8.0の場合には、保存4日後でも発色しておらず、pH8.5の場合には、保存8日後でも発色していないことが分かる。更にpH9.0の場合には、保存11日後でも発色していないことが分かる。
【0113】
これらのことにより、本発明・トリグリセライド測定用第1試薬及びトリグリセライド測定用第2試薬では、近傍の試薬に含まれるアジ化ナトリウムが気化し、これがトリグリセライド測定用試薬に溶け込むことにより起こる発色を抑制し、試薬の劣化や、機能の低下を防ぐことが出来ることが確かめられた。また、本結果より第1試薬のpHが高いほど、アジ化ナトリウムによる試薬の劣化、機能の低下を防ぐことができることも分かる。同一のpHにおいても、緩衝剤がDIPSOの場合には、アジ化ナトリウムの影響を更に抑制することができることが明らかとなった。
【発明の効果】
本発明の試料中の被検物質の測定試薬及び測定方法は、色原体を含有する第1の試薬のpHが7.5以上であり、且つ第2の試薬のpHが第1の試薬のpH未満になるように測定試薬を構成することにより、アジ化物等の近傍の試薬に含まれる成分が気化し、これが試薬に溶け込むことにより起こる発色を抑制し、試薬の劣化や、機能の低下を防止することができる。即ち、測定試薬を開封状態においても長期間安定に使用することができるものである。
また、本発明の試料中の被検物質の測定試薬及び測定方法によれば、アジ化物等の試薬に含まれる成分が自動分析装置等の試薬プローブ(試薬採取口)に付着することにより、この試薬プローブが次の試薬を採取した際に、試薬プローブに付着したアジ化物等がその試薬に混入することにより起こる発色を抑制し、試薬の劣化や、機能の低下を防止することができる。即ち、プローブ方式の自動分析装置においても長期間安定に使用することができるものである。
更に、本発明の試料中の被検物質の測定試薬及び測定方法によれば、ビリルビンによる負誤差の影響を回避できるので、正確な測定値が得られるものである。そして、本発明の試料中の被検物質の測定試薬及び測定方法は、上記の測定試薬の劣化や機能低下を防止することと、最終反応液のpHを測定反応の至適pH域に設定することの両立が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】安定性検討のための試薬の保存方法を示した図面。
【図2】本発明及び対照尿酸測定用試薬の相関を示す図面。
【図3】本発明及び対照総コレステロール測定用試薬の相関を示す図面。
Claims (6)
- 酸化酵素により生じた過酸化水素の検出反応系を使用し、色原体として電子供与基を有するアニリン誘導体を用いる、試料中の被検物質の測定試薬において、
(イ)前記色原体を含有する第1の試薬のpHが7.5以上であり、
(ロ)もう一方の試薬である第2の試薬のpHが第1の試薬のpH未満である、ことを特徴とする、2試薬系の試料中の被検物質の測定試薬。 - 色原体を含有する第1の試薬のpHが7.8以上である、請求項1に記載の測定試薬。
- 色原体を含有する第1の試薬のpHが8.0以上である、請求項1に記載の測定試薬。
- 酸化酵素により生じた過酸化水素の検出反応系を使用し、色原体として電子供与基を有するアニリン誘導体を用いる、試料中の被検物質の測定方法において、
(イ)前記色原体を含有する第1の試薬のpHが7.5以上であり、
(ロ)もう一方の試薬である第2の試薬のpHが第1の試薬のpH未満である、2試薬系の測定試薬を用いることを特徴とする、試料中の被検物質の測定方法。 - 色原体を含有する第1の試薬のpHが7.8以上である、請求項4に記載の測定方法。
- 色原体を含有する第1の試薬のpHが8.0以上である、請求項4に記載の測定方法。
【0001】
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