JP3652867B2 - 重荷重用空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤに関し、特に、トラックやバス等の重荷重用空気入りタイヤの寿命を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤの寿命を短くする原因となる偏摩耗を防止するために、より広幅の主溝を有するセンターリブとより狭幅の副溝(ディフェンスグルーブ)を有するショルダーリブを有するトレッドパターンを採用したトレッドにおいて、副溝の位置や深さを特定の範囲にする技術がある(特公平6−4364号公報参照)。
【0003】
この技術の作用機構は、ショルダーリブのうち副溝を形成した位置より外側が、犠牲的に偏摩耗することにより、主溝周辺の偏摩耗を遅らせ、さらに、負荷転動時の接地域で副溝の両側の壁が接触する溝幅とすることにより、副溝により分割されていたショルダーリブが一体化し、横力による剪断力を分散して、副溝のエッジ落ちを防止するというものである。
しかし、この場合、副溝は、タイヤの転動時、常に開閉運動を繰り返すことになるので、この部分のトレッドゴムは屈曲疲労が促進される。通常の走行条件では問題ないので、実用上は支障ないが、発熱耐久上、極度に厳しい条件での走行では、トレッド部が高温となって、ゴムの破断強度が低下することも影響して、副溝にクラックやティアが生じる可能性がある。
そこで、この不都合を回避するために、副溝の深さや形状等について設計上の配慮が払われている。このことは、換言すると、設計の自由度が制限されて、副溝本来の性能が充分に生かされていないことになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、トレッドゴム自体を改良することにより、副溝の設計の自由度を高めて、偏摩耗の防止効果を高め、結果として、重荷重用空気入りタイヤの寿命を向上させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の重荷重用空気入りタイヤは以下の構成とする。
(1)センターリブに主溝、ショルダーリブに副溝を有するパターンのトレッドを備えた重荷重用空気入りタイヤにおいて、トレッドのゴム組成物が、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を30〜70重量%含有し、残部が天然ゴム(NR)単独か天然ゴムとブタジエンゴム(BR)の混合物よりなるゴム成分100重量部に対して、シリカを5〜30重量部と、カーボンブラックを、前記シリカより多い割合(重量部)で、かつ前記シリカとの合計重量部で40〜60重量部配合してなることを特徴とする。
(2)上記(1)の特徴に加え、副溝が、ショルダーリブの幅の5〜40%の長さ分だけトレッド端からセンターリブよりの位置に形成されており、負荷転動時に接地域で、対向した両側副溝壁が互いに接触するような溝幅を有しているとすると好ましい。
(3)上記(1)または(2)の特徴に加え、シランカップリング剤を、シリカ重量の1/15〜1/8の割合で、さらに配合すると好ましい。
(4)上記(1)、(2)または(3)の特徴に加え、シリカが、120〜240m2/gの窒素吸着法比表面積(N2SA)および170〜250cc/100gのジブチルフタレート(DBP)吸油量の特性を有すると好ましい。
(5)上記(1)、(2)、(3)または(4)の特徴に加え、カーボンブラックが、70〜170m2/gの窒素吸着法比表面積(N2SA)および100〜200cc/100gのジブチルフタレート(DBP)吸油量の特性を有するとすると好ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明をより詳細に説明する。本発明の重荷重用空気入りタイヤは、図1に示すように、センターリブ1に主溝2、ショルダーリブ3に副溝4を有するパターンのトレッド5を備えており、副溝4が、ショルダーリブ3の幅Swの5〜40%の長さL分だけトレッド端Eからセンターリブ1よりの位置に形成されており、負荷転動時に接地域で、対向した両側副溝壁が互いに接触するような溝幅Gwを有する構成である。これは、前記の通り、ショルダーリブ3のうち副溝を形成した位置より外側3aが、犠牲的に偏摩耗することにより、主溝2周辺の偏摩耗を遅らせ、さらに、負荷転動時の接地域で副溝4の両側の壁が接触することにより、副溝4により分割されていたショルダーリブ3a,3bが一体化し、横力による剪断力を分散して、副溝4のエッジ落ちを防止するためである。なお、図中、Twはトレッド幅を示す。
【0007】
また、本発明の重荷重用空気入りタイヤのトレッドのゴム組成物は、SBRを30〜70重量%で、残部が天然ゴム単独か天然ゴムとブタジエンゴムの混合物よりなるゴム成分を規定する。SBRを配合するのは、SBRが耐偏摩耗性に優れるからであり、特に、ポリマー鎖の少なくとも一方の末端がスズ変性された溶液重合SBRが好ましく、これにより、SBR自体の発熱性を改良して、低発熱性とすることができる。このSBRの配合割合を30〜70重量%としたのは、これを配合した偏摩耗の効果を得つつ、発熱を抑えるためである。また、ゴム成分中、残部は天然ゴム単独か天然ゴムとブタジエンゴムの混合物より構成するが、これは、天然ゴムの伸長結晶性からくる耐破壊性、すなわち耐クラック、ティア性および、場合によりブタジエンゴムの耐屈曲疲労性を付加するためである。この観点から、ブタジエンゴムは40重量%以下が好ましい。また、天然ゴムのうち一部あるいは全部をイソプレンゴムで置換することも可能である。
【0008】
さらに、本発明では、ゴム成分100重量部に対して、シリカを5〜30重量部配合する。これは、耐屈曲疲労性および低発熱性を高めつつ、多量配合の際の分散不良による不都合を生じさせないためである。この観点から、シリカのコロイダル特性は、120〜240m2 /gの窒素吸着法比表面積(N2 SA)および170〜250cc/100gのジブチルフタレート吸収量(DBP)であることが好ましい。また、本発明に好適に使用できるシリカとしては、例えば、商品名:VN3SP(デグッサ社製)、商品名:ZEOZIL55(コフラン社製)、商品名:トクシールSR(トクヤマ社製)等が挙げられる。
【0009】
また、本発明では、カーボンブラックを前記シリカより多い割合(重量部)で、かつゴム成分100重量部に対して、前記シリカとの合計重量部で40〜60重量部配合する。これは、カーボンブラックの配合量をシリカの配合量より多くした理由は、カーボンブラックの方が補強効果が高いからであり、カーボンブラックの配合量を、ゴム100重量部に対して、前記シリカとの合計重量部で40〜60重量部としたのは、耐摩耗性を市場からの要求レベルで満足させつつ、多量配合の際の分散不良による不都合を生じさせないためである。同様の観点から、40〜55重量部が好ましく、カーボンブラックのコロイダル特性は、70〜170m2 /gの窒素吸着法比表面積(N2 SA)および100〜200cc/100gのジブチルフタレート(DBP)吸油量であることが好ましい。また、本発明に好適に使用できるカーボンブラックとしては、N234(旭カーボン社製の商品名:No.78、東海カーボン社製の商品名:シースト7HM)、N220(旭カーボン社製の商品名:No.100、東海カーボン社製の商品名:シースト600K)等が挙げられる。
補強充填剤として、上記のように、シリカを配合した場合には、同量のカーボンブラックを配合した場合に比べて、耐屈曲疲労性で30%以上、低発熱性で10〜20%の効果が得られる。
【0010】
また、本発明では、好ましくは、シランカップリング剤を、シリカ重量の1/15〜1/8の割合でさらに配合するが、これは、シリカの分散性を向上させるためと、シリカを配合したことによる作業性の低下や加硫阻害を防止するためである。同様の観点から、カップリング剤としては、分子中に硫黄原子が平均して2.5個連結したものが好ましい。この硫黄原子の連結個数は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法により得られるピーク面積から算出できる。本発明に好適に使用できるシランカップリング剤としては、商品名:ABC856(信越化学社製)等が挙げられる。
【0011】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
実験に使用したタイヤは、タイヤサイズ:11R22.5であり、トレッドパターンは、4本の主溝を備え、副溝がショルダーリブの幅の30%の長さ分だけトレッド端からセンターリブよりの位置に形成されたものであり、副溝の幅Gwは1.5mm、深さは12mmである。内部構造は、1層のスチールラジアルカーカス、4層のスチールベルト層を備えたものである。
このタイヤのトレッドゴムとして、表1および表2記載の配合のゴム組成物を使用して、通常の条件で加硫し、下記の測定方法により、ゴム組成物の物性およびタイヤ特性を調べた。その結果を、実験番号1の従来例を100として指数表示した。各測定項目とも、数値が大きい程良好であることを表す。
【0012】
ゴム組成物の物性(室内試験による)
耐屈曲疲労性
一般のフレックス・クラックテストに準拠し、破断するまでの時間を調べた。試験条件は、室温下である。
低発熱性
室温にて、2%の歪み入力下で、52Hzにおけるtanδを測定した。
タイヤ特性(実地走行試験による)
耐偏摩耗性
5万km走行し、ショルダーリブとセンターリブとの間に生じた段差を測定し、その最大値を求めた。
耐クラック・ティア性
良路を50000km走行したときのクラック・ティアの発生した総長さを測定した。
耐摩耗性
良路を50000km走行したときの摩耗量を測定した。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】
表中、「FSケミカルHX765」は、ファイアストンケミカル社製、Sn変性溶液重合SBRの商品名であり、「JSR♯1500」は、日本合成ゴム株式会社製、乳化重合SBR(Sn変性なし)の商品名である。また、シランカップリング剤は、信越化学社製、商品名:ABC856である。これは、前記の方法による測定の結果、分子中に、平均して、2.5個の連結した硫黄原子部分があることが分かった。さらに、加硫促進剤は、大内新興化学工業株式会社製の商品名:ノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)である。
【0016】
【発明の効果】
本発明は、トレッドゴム自体の耐屈曲疲労性および低発熱性を改良することにより、ゴムの破壊限界を向上させて、副溝部分のクラックおよびティアの発生を抑制し、これにより、副溝の設計自由度を高め、副溝本来の機能を充分に発揮させることを可能とし、結果として、トラック・バス等の重荷重用空気入りタイヤの耐摩耗性のみならず、耐偏摩耗性を向上させて、タイヤの寿命を延ばすことに成功した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の重荷重用空気入りタイヤのトレッドパターンの一部展開図である。
【符号の説明】
1 センターリブ
2 主溝
3 ショルダーリブ
4 副溝
Claims (5)
- センターリブに主溝、ショルダーリブに副溝を有するパターンのトレッドを備えた重荷重用空気入りタイヤにおいて、
トレッドのゴム組成物が、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを30〜70重量%含有し、残部が天然ゴム単独か天然ゴムとブタジエンゴムの混合物よりなるゴム成分100重量部に対して、シリカを5〜30重量部と、カーボンブラックを、前記シリカより多い割合(重量部)で、かつ前記シリカとの合計重量部で40〜60重量部配合してなることを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。 - 副溝が、ショルダーリブの幅の5〜40%の長さ分だけトレッド端からセンターリブよりの位置に形成されており、負荷転動時に接地域で、対向した両側副溝壁が互いに接触するような溝幅を有していることを特徴とする請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
- シランカップリング剤を、シリカ重量の1/15〜1/8の割合で、さらに配合することを特徴とする請求項1または2記載の重荷重用空気入りタイヤ。
- シリカが、120〜240m2/gの窒素吸着法比表面積(N2SA)および170〜250cc/100gのジブチルフタレート(DBP)吸油量の特性を有することを特徴とする請求項1、2または3記載の重荷重用空気入りタイヤ。
- カーボンブラックが、70〜170m2/gの窒素吸着法比表面積(N2SA)および100〜200cc/100gのジブチルフタレート(DBP)吸油量の特性を有することを特徴とする請求項1、2、3または4記載の重荷重用空気入りタイヤ。
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