JP3651893B2 - 壁面緑化構造及び壁面緑化工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、略直立あるいは傾斜したコンクリート製等の壁面に、植物を植生させて緑化するための壁面緑化構造及び壁面緑化工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、景観の向上や都市部のヒートアイランド現象を緩和するために、建物やコンクリート壁等の壁面を緑化する機運が急激に高まっている。このような壁面緑化の一例として、一般的に美しいと思う心を呼び覚まされるのは、石の家の壁面に絡み付いた夏蔦の緑であり、秋にはその見事な紅葉がまず第一に思い起こされる。年間を通して緑の蔦類なども石との調和で大変美しいものである。
【0003】
現在の壁面緑化に求められているのは、例えば、美しく壁面を彩ること、四季の温度変化から壁面を守ること、断熱効果により室内温度の変化を緩和し、エネルギーロスを少なくし、結果として壁面及び建物自体の寿命にも良い効果を発揮することなどである。
【0004】
これらの点を考慮した従来の壁面緑化としては、以下の三つの代表的な壁面緑化構造および方法・工法がある。
【0005】
▲1▼古い洋館などに見られるように、壁面に夏蔦などの植物を直接絡ませる方法により、壁面緑化構造とする。▲2▼蔦類の成長の早さ、紅葉の美しさをうまく利用するべく、壁面に、壁面から所定距離を置いて壁面と平行にネットやワイヤーなどを取り付け、そのネットやワイヤーに蔦類を絡ませ、最終的に壁面全体を蔦類で覆う方法により、壁面緑化構造とする。▲3▼壁面自体にコンクリート等の植樹桝を構造的に取り付け、その植樹桝に植樹する工法(例えば、特許文献1参照。)により、壁面緑化構造とする。この植樹桝としては、水耕栽培型と土壌栽培型がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−105070号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題 】
しかしながら、▲1▼では、蔦のみを用いているので、壁面緑化を薄くかつ軽量で行うことができるものの、壁面緑化が完全に蔦任せになるという問題がある。その他にも、植物の根による壁への侵入や吸着にびくともしないように、レンガ壁等の分厚い壁が必要である。たとえ壁自体が分厚くても、屋根や窓周りなどの接続部に管理的な配慮が必要であり、管理コストも高い。さらに蔦類全体に言えることだが、蔦類は非常に生長が早いので、見た目よりはるかに手間がかかる。それにもかかわらず、壁面全体を緑化するには数年もの時間が必要である。
【0008】
▲2▼では、蔦を案内するネットやワイヤーを使用しているので、壁面緑化が完全に蔦任せにならず、比較的安価で蔦の生育特性をうまく利用した方法だが、植物の種類が蔦類に限られるという問題がある。
【0009】
▲3▼では、コンクリート等の植樹桝を用いているので、蔦以外の植物を植樹できるが、施工コストが高く、重いので壁に負担がかかるという問題がある。また、ややもすると植物よりもベースの植樹桝の方が目立ち、全体に見苦しく軽快さに欠け、美しくないものが多い。さらにこの方法は多くの場合、植物のための専用スペースと厚さを必要とするので、特に直立した(垂直な)壁面を緑化する場合には、コストクオリティから見ても勧められない。さらに、植樹桝がない箇所には植樹できないので、植物の配置箇所に制限があるという問題もある。
【0010】
したがって、上記課題を解決すると共に、▲1▼と▲3▼の双方の長所を兼ね備えた壁面緑化構造および壁面緑化工法が望まれる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、特に直立した壁面を容易かつ自在に緑化でき、しかも薄型かつ軽量な壁面緑化構造および壁面緑化工法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、略直立あるいは傾斜したコンクリート製等の壁面に、植物を植生させて緑化するための壁面緑化構造において、上記壁面に取り付けられる内側メッシュシートと、内側メッシュシートから所定距離隔てて設けられた外側メッシュシートと、その内外のメッシュシート間に介設されると共に上下間隔を置いて配列された水平メッシュ筒と、その内外のメッシュシートと上下の水平メッシュ筒で区画された空間に充填され、植物の根部を植生させるための水苔層と、上記水平メッシュ筒の任意の段に、その水平メッシュ筒を挿通するように設けられ、水平メッシュ筒を通してその下方の水苔層に灌水するための灌水管とを備え、上記水苔層に植生された植物の幹および葉の部分を上記外側メッシュシートの網目より繁らせて壁面を緑化するように構成した壁面緑化構造である。
【0013】
請求項2の発明は、上記壁面と内側メッシュシート間、或いは内側メッシュシートの前面に防根シートが設けられる請求項1記載の壁面緑化構造である。
【0014】
請求項3の発明は、内外のメッシュシートとその間に介設される水平メッシュ筒とは、壁面に設けたアンカーで支持される請求項1または2記載の壁面緑化構造である。
【0015】
請求項4の発明は、任意の段の水平メッシュ筒内に、その水平メッシュ筒内に流下する水を濾過して浄化するための浄化材を充填した請求項1〜3いずれかに記載の壁面緑化構造である。
【0016】
請求項5の発明は、上記灌水管は、水平メッシュ筒を挿通するように設けられると共にその長さ方向に適宜間隔で給水孔が穿設された給水パイプと、その給水パイプを覆う多孔質のチューブとからなる請求項1〜4いずれかに記載の壁面緑化構造である。
【0017】
請求項6の発明は、上方から下方にかけた水平メッシュ筒の1本おきに灌水管を挿通すると共に、その間の水平メッシュ筒内に浄化材を充填して浄化層を形成し、上記灌水管の上下端部を連結管で順次連結すると共に最上段の灌水管を給水源に接続して上方の灌水管から下方の灌水管に順次給水する請求項1〜5いずれかに記載の壁面緑化構造である。
【0018】
請求項7の発明は、上下の水平メッシュ筒間に、格子状に垂直メッシュ筒を連結した請求項1〜6いずれかに記載の壁面緑化構造である。
【0019】
請求項8の発明は、格子状に区画されて分割区画形成された空間に水苔層を充填し、その水苔層の前面を覆う外側メッシュシートに開閉自在な開閉部を形成した請求項1〜7いずれかに記載の壁面緑化構造である。
【0020】
請求項9の発明は、上記水平メッシュ筒が合成樹脂製の多孔質管体から構成される請求項1〜8いずれかに記載の壁面緑化構造である。
【0021】
請求項10の発明は、略直立あるいは傾斜したコンクリート製等の壁面に、植物を植生させて緑化するための壁面緑化工法において、上記壁面にこれを保護する防根シートを重ね合わせ、該防根シートの前面に内側メッシュシートを設け、その内側メッシュシートから所定距離隔てて外側メッシュシートを設けると共にその内外のメッシュシート間に上下間隔を置いて水平メッシュ筒を配列してこれら内外のメッシュシートと水平メッシュ筒とを一体に連結して骨組み体を形成し、その内外のメッシュシートと上下の水平メッシュ筒で区画された空間に、植物の根部を植生させるための水苔層を充填し、上記水平メッシュ筒の任意の段に、その水平メッシュ筒を通してその下方の水苔層に灌水するための灌水管を設け、上記水苔層に、植物の幹および葉の部分を上記外側メッシュシートの網目より植生した壁面緑化工法である。
【0022】
請求項11の発明は、略直立あるいは傾斜したコンクリート製等の壁面に、植物を植生させて緑化するための壁面緑化工法において、内側メッシュシートと所定距離隔てて設けた外側メッシュシート間に上下間隔を置いて水平メッシュ筒を配列してこれら内外のメッシュシートと水平メッシュ筒とを一体に連結して骨組み体を形成し、その内外のメッシュシートと上下の水平メッシュ筒で区画された空間に、植物の根部を植生させるための水苔層を充填し、上記水平メッシュ筒の任意の段に、その水平メッシュ筒を通してその下方の水苔層に灌水するための灌水管を設け、上記水苔層に、植物の幹および葉の部分を上記外側メッシュシートの網目より植生し、さらにこの骨組み体を壁面に取り付けた壁面緑化工法である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0024】
図1は、本発明の好適実施の形態を示す構造図である。
【0025】
図1に示すように、壁面Wは地盤Eに対して垂直な壁面である。このような壁面Wとしては、例えば、建物自体の壁面、あるいは建物や平面駐車場の周囲を囲むブロック塀やコンクリート塀等の壁面、建物の屋上の周囲壁がある。
【0026】
この建物の壁面としては、オフィスビルや駐車場ビルの壁面、或いは垣根や金網などの仕切などに使用される仕切壁等種々の形態がある。
【0027】
本発明に係る壁面緑化構造1は、上述したような壁面Wに、蔦2、草花3、芝4等の植物を植生させて緑化するためのものであり、壁面Wに重ね合わされてこれを保護する防根シート6と、この防根シート6の前面に重ね合わされる内側メッシュシート7と、その内側メッシュシート7に対して所定間隔を隔てて設けられる外側メッシュシート13と、その内外のメッシュシート7,13間に介設され、高さ方向に所定の間隔を隔てて略水平に横断するようにそれぞれ取り付けられる水平メッシュ筒8と、内外のメッシュシート7、13間と上下の水平メッシュ筒8間で区画された空間Sに水苔18を充填して形成した、植物の根部を植生させるための水苔層19と、水平メッシュ筒8の任意の段に、その水平メッシュ筒8を挿通するように設けられ、水平メッシュ筒8を通してその下方の水苔層19に灌水するための灌水管10と、他の段の水平メッシュ筒8に水を浄化する浄化材12bが充填された浄化層12とを備え、各水苔層19に植生された植物の幹および葉の部分を外側メッシュシート13の網目より繁らせて壁面Wを緑化するように構成したものである。
【0028】
以下これを順次説明する。
【0029】
先ず、図2〜図5により本発明に係る壁面緑化構造とその緑化工法を説明する。
【0030】
図2〜図5は、小規模施工法の例を示したものである。
【0031】
この小規模施工法は、壁面Wの緑化する部分の面積が比較的狭い場合(例えば、30m2 未満)に用いられ、壁面Wの緑化する部分を一括して緑化する工法であり、本例では、壁面Wの緑化する部分の面積が約15m2 (左右幅X約5m×高さH約3m)の例で説明する。
【0032】
図2に示すように、緑化すべき壁面Wの緑化する部分に、上下左右間隔を置いてアンカー5を取り付けるために格子状に墨出しbを行い、墨出しbの各格子点となる壁面Wに、壁面Wから垂直方向へ所定長さ突出するようにアンカー5をそれぞれ取り付ける。アンカー5は、例えば、上下間隔hを30cmとし、左右間隔xを50cmとし、その本数は1m2 当たり8.5本とする。
【0033】
アンカー5としては、例えばSUSネジアンカーを使用する。このSUSネジアンカー5の壁面Wからの突出長さは、例えば、100〜120mmとなるようにする。またアンカー5は、その太さにもよるが、その一本あたり、最大荷重で約3.5kgかかっても曲がらない強度のものを使用し、1m2 当たり約30kgの荷重を支えることができるものを用いる。
【0034】
次に、図3に示すように、アンカー5を取り付けた壁面Wに、植物の根による壁への侵入を防止して壁面Wを保護するための防根シート6を貼り付ける。防根シート6としては、例えば、ポリエチレンと発泡ポリエチレンシートをラミネートしたもの、あるいはポリ塩化ビニルを使用する。
【0035】
この防根シート6の貼り付け後、その前面に、内側メッシュシート7をアンカー5に貫通するように取り付ける。
【0036】
より具体的には、防根シート6から突出したアンカー5に、ロール状に巻かれたメッシュシート7を、壁面Wの上端よりも若干高い位置から余裕を持たせて巻き下ろしながら取り付けていき、壁面Wの下端に達したメッシュシート7をいったん袋状に巻き上げ、壁面Wの高さHを正確に調べ、余計な部分を切り取った後、巻き上げたメッシュシート7を下ろす。
【0037】
内側メッシュシート7の前面には、その上部より、上下間隔(図2のアンカー5の上下間隔h)を置いて水平に水平メッシュ筒8を複数本配置すると共にこれら水平メッシュ筒8をメッシュシート7から突出したアンカー5に貫通するように取り付ける。各水平メッシュ筒8の長さは、壁面Wの緑化する部分に合わせて加工しておく。
【0038】
アンカー5に各水平メッシュ筒8を取り付けた後、さらにアンカー5に外側メッシュシート13を取り付け、内側メッシュシート7と外側メッシュシート13とで各水平メッシュ筒8を挟み込む。この外側メッシュシート13は、上述した内側メッシュシート7と同じものであり、その取り付け方法も同じである。
【0039】
その後、図1に示すように、各アンカー5と外側メッシュシート13とをSUS番線あるいはアルミ番線などのワイヤ14でくくり、さらに各アンカー5に外側メッシュシート13をSUS座金15およびSUSナット16を用いて固定する。以上のようにして、内外のメッシュシート7,13と水平メッシュ筒8とを一体に連結して骨組み体を形成する。
【0040】
内側メッシュシート7と外側メッシュシート13は、例えば、ポリ塩化ビニルなどの樹脂で、網目の大きさが25mm×25mm、厚さが約2.8mmの碁盤目状に形成された剛性を有するシートであり、一枚の連続シートを使用してもよいし、所定の左右幅を有する複数枚のシートを使用して互いの網目が重なるようにして取り付けてもよい。
【0041】
各水平メッシュ筒8としては、例えば、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂からなる剛性を有する多孔質管体を使用し、その外径は、例えば70〜90mmのものを使用(本実施の形態では外径80mm)する。
【0042】
図3に示すように、各水平メッシュ筒8の両端部に、壁面Wの緑化する部分の高さHと同じ長さの補強用の垂直メッシュ筒9r,9lを垂直に配置し、これら垂直メッシュ筒9r,9lを、外側メッシュシート13にSUS番線やアルミ番線などのワイヤでくくって補強する。垂直メッシュ筒9r,9lとしては、例えば、水平メッシュ筒8と同じ径と材質のものを使用する。
【0043】
この垂直メッシュ筒9r,9lと同様の垂直メッシュ筒を、水平メッシュ筒8の長さによって、上下の各水平メッシュ筒8間に適宜垂直に配置してさらに補強してもよい。
【0044】
次に、図5に示すように、内側および外側メッシュシート7,13間で、かつ上下の各水平メッシュ筒8間で区画された空間Sに水苔18を充填して水苔層19を形成する。
【0045】
水苔18は、園芸などで慣用されているものであり、緑化する植物の土壌となるもので、その根に最も優しく、しかも、一般の土壌と違って軽量であり、しかも保水力を有する。
【0046】
この水苔18の充填は、外側メッシュシート13に、適度な間隔で適宜切り欠きを施して開閉部17を形成し、その開閉部17を通して充填する。この場合、充填後の水苔18の成長のために、ある程度の隙間が形成されるように、充填する水苔18と共にグラスファイバーなどの促成材を混ぜ込みながら、かつ、その水苔層19が一様な外観が出るように全体を眺めながら順次充填する。その後、開閉部17を閉じ、外側メッシュシート13本体にアルミ番線などの上記と同様のワイヤ14でくくって仮留めする。
【0047】
開閉部17をワイヤ14で仮留めすることにより、施行後においても、傷んだ水苔18や植物を容易に交換でき、植物のレイアウトの部分的変更も容易にできる。
【0048】
次に、水平メッシュ筒8に挿通する灌水管10と浄化層12を説明する。
【0049】
図1および図4に示すように、先ず、灌水管10と浄化層12とは、上下に配置された水平メッシュ筒8の1本おきに設けられる。図1〜図5では、灌水管10が設けられる段を水平メッシュ筒8を給水用水平メッシュ筒8aとして、浄化層12が形成される水平メッシュ筒8を浄化用水平メッシュ筒8bとして、以下説明する。
【0050】
灌水管10は、給水用水平メッシュ筒8aの内部に、その長さ方向に沿って挿通した塩ビ管などからなり、その長さ方向に適宜間隔で給水孔11hが穿設された給水パイプ11pと、その給水パイプ11pを覆う多孔質のチューブ11tとから構成される。
【0051】
先ず、多孔質のチューブ11tは、給水用水平メッシュ筒8a内に予め挿通して設けられ、給水パイプ11pは水平メッシュ筒8の取付後に多孔質のチューブ11t内に挿入して灌水管10とする。
【0052】
灌水管10への給水は、各段ごと給水源に接続するようにしてもよいが、図4に示すように、最上段の給水用水平メッシュ筒8aに挿入した給水パイプ11pを給水源に接続し、その他端部と下方の給水パイプ11pを、コ字状の給水パイプ11cで連結し、その下方の給水パイプ11pの他端とさらに下方の段の給水パイプ11pとをコ字状の給水パイプ11cで連結し、以下順次下方の段の給水パイプ11pをジグザグ状に連結して、最上段の給水パイプ11pから最下段の給水パイプ11pに蛇行して流れるようにする。
【0053】
なお、各給水パイプ11cは、図3で説明した垂直メッシュ筒9r,9l内に収納されるようにする。また、最下部の給水パイプ11pの終端は、閉じておく。
【0054】
各段の灌水管10から給水用水平メッシュ筒8aに流れる水量は、その下方の水苔層19を湿潤させる程度の水量となるようにされる。
【0055】
一方、浄化用水平メッシュ筒8bは、給水用水平メッシュ筒8a間に位置し、その内部に、木炭やベークライト等からなる浄化材12bを充填して浄化層12が形成される。
【0056】
この浄化層12は、その上方の水苔層19から流下する水を一時的に保水すると共に濾過して浄化し、その浄化した水を、下方に位置する水苔層19に給水する役目を果たす。
【0057】
浄化材12bの充填は、水平メッシュ筒8を取り付け後、浄化用水平メッシュ筒8bの上部をいったん切り取り、そこから細かく砕いた浄化材12bを充填して行う。また浄化用水平メッシュ筒8bの両端部は、浄化材12bの流出を防ぐために、ビニールテープなどで蓋をする。
【0058】
これにより、各浄化用水平メッシュ筒8bの上方に位置する各給水用水平メッシュ筒8aから滴り落ちた水や雨水の浄化に寄与でき、それらを一時的に保水することができる。
【0059】
最後に、各水苔層19(各空間S)をベースに、外側メッシュシート13を通して、蔦類2、草花3、芝4、あるいはビニールポット物、挿芽物などの様々な植物を各水苔層19の深くに植え、さらに適宜水苔18を補充するなどし、流出を防ぐように丁寧に内側および外側メッシュシート7,13間に挟み込んで壁面緑化構造1とする。
【0060】
なお、最上部の給水用水平メッシュ筒8a上には、補強用あるいは天端材(笠木材)用としての水平メッシュ筒8uを配置し、これをワイヤで固定しておくとよい。
【0061】
このように、本発明に係る壁面緑化構造1は、略直立あるいは傾斜したコンクリート製等の壁面を容易かつ自在に緑化できる点に特徴がある。
【0062】
壁面緑化構造1は、その厚さdが80〜100mmであり、ほぼ水平メッシュ筒8の外径と同じなので、全面植付型の壁面緑化の限界に近い薄型である。壁面緑化構造1は、薄型であるだけでなく、主な部品が合成樹脂と水苔なので、重量が湿潤時1m2 当たり約30kg、乾燥時1m2 当たり約8kgと非常に軽量である。すなわち、植物の植生を被壁面に対して軽量且つ層厚を薄く達成できる。
【0063】
また、壁面緑化構造1は、その形成に使用する部品が既存の製品ばかりであり、その既存の製品をうまく組み合わせた単純な構造なので、施工や植物の育成・維持が非常に容易かつ安価である。植物は主に各水苔層19と外側メッシュシート13近傍で成長するので、管理コストも安い。
【0064】
この壁面緑化構造1は、灌水管10が挿入された給水用水平メッシュ筒8aと浄化層12が形成された浄化用水平メッシュ筒8bを備えているので、構造自体に給水手段と浄化手段を備えていることになり、上水、中水、雨水の別なく各水苔層19への散水に利用できる。
【0065】
さらに、給水用水平メッシュ筒8aや浄化用水平メッシュ筒8b自体が壁面緑化構造1の構造材(骨組み体)を兼ねるため、部品の無駄が無く、安価で軽快で美しい壁面緑化が可能である。
【0066】
本発明は、蔦のみで壁面を緑化する従来技術で説明した▲1▼のように、薄くかつ軽量で壁面Wを緑化できる長所と、壁面にコンクリート等の植樹桝を取り付けて壁面を緑化する従来技術で説明した▲3▼のように、植物の種類に制限なく壁面Wを緑化できる長所とを兼ね備えた点、しかもこれら▲1▼と▲3▼の短所を克服した点も特徴である。
【0067】
すなわち、本発明によれば、直立した壁面W際に、壁面Wの緑化する部分あるいは壁面Wの略全面に各水苔層19が設けられた薄型かつ軽量の壁面緑化構造1を容易に形成でき、その壁面緑化構造1の各水苔層19に蔦はもちろん、様々な植物を自由に選択して植樹できるので、壁の厚さ、植物の種類、植物の配置箇所に制限なく、景観を向上できる。
【0068】
従来技術で説明した▲1▼〜▲3▼では、壁面Wを全面緑化するにはかなりの日数がかかるが、本発明によれば、空間Sに植樹する植物の種類によっては、一日で壁面Wを全面緑化できる。
【0069】
次に、図6〜図9により本発明の他の実施の形態を説明する。
【0070】
図6は、本発明に係る植樹用ブロックの概略図である。
【0071】
図1〜図5の例では、小規模施工法の例であるが、本例では、例えば、壁面Wの緑化する部分の面積が比較的広い(例えば、30m2 以上)場合に適用される。
すなわち、図1〜図5の実施の形態では、壁面Wにアンカー5を取り付け、そのアンカー5に壁面緑化構造1を形成する例で説明したが、本例では、壁面緑化構造1を形成する際に、予め植樹用ブロック61aを形成し、その植樹用ブロック61aを壁面Wに取り付けるようにしたものである。
【0072】
図6に示すように、植樹用ブロック61aは、所定寸法に形成した内側メッシュシート7の内側に防根シート6を重ねると共に所定間隔を隔てて外側メッシュシート13を設け、その間に水平メッシュ筒8a,8bを上下に並べて配置すると共に、その水平メッシュ筒8a,8bを垂直メッシュ筒8cで連結し、これらをワイヤで一体に連結した骨組み体から構成される。
【0073】
また、図6では、詳細は示していないが、給水用水平メッシュ筒8aには、図1〜5で説明したように灌水管10が設けられ、同様に浄化用水平メッシュ筒8bには浄化層12が形成され、さらに水平メッシュ筒8間と防根シート6と外側メッシュシート13及び垂直メッシュ筒8cで区画された空間Sに、水苔18が充填されて水苔層19が形成される。水苔層19には、植物の幹および葉の部分を外側メッシュシート13の網目より植生しておく。
【0074】
なお、植樹用ブロック61aの周縁は、上下が水平メッシュ筒8が位置し、左右端に垂直メッシュ筒8cが位置するように形成される。
【0075】
植樹用ブロック61aの寸法は、例えば、縦Y6が4m、横X6が4m、厚さが80mmとし、これを緑化する建物の壁に取り付けて、壁面緑化構造を形成する。
【0076】
図7は、図6の植樹用ブロック61aを用いてさらに大規模の壁面を緑化する例を示したものである。
【0077】
図7は、壁面W7の緑化する部分の面積が約384m2 (左右幅X7約24m×高さH7約16m)の例であり、壁面W7には予めアンカー5を取り付けておき、そのアンカー5を挿通するように、図6に示した植樹用ブロック61aをそれぞれ縦4枚、横6枚整列するように取り付けて一体化した植樹用ブロック61を形成し、壁面緑化構造71を形成する。
【0078】
なお、植樹用ブロック61a同士は、ワイヤ等で相互に連結するが、灌水管10は、適宜隣接する植樹用ブロック61a同士で接続して、一箇所乃至複数箇所から給水できるようにされる。
【0079】
次に、本発明に係る壁面緑化構造の一例を図8および図9を用いて説明する。
【0080】
図8は、植樹用ブロック61aを、それぞれ縦、横に整列させて一体化した植樹用ブロック61とし、これを、駐車場ビル(タワー型立体駐車場)81(高さH8が20m前後)の壁面W8の緑化する部分に、移動型クレーン車82で吊り上げて取り付けて壁面緑化構造71を構成したものである。なお、駐車場81の壁面W8にはアンカーを予め取り付け、そのアンカーにて植樹用ブロック61を固定する。
【0081】
植樹用ブロック61としては、植樹用ブロック61の強度および取り付け作業性をより向上させるため、図6で説明した垂直メッシュ筒8c、水平メッシュ筒8は、例えば、金属製のメッシュ管を使用してもよい。また、植樹用ブロック61の外枠に、金属管を用いて、植樹用ブロック61を形成するようにしてもよい。
【0082】
図9は、駐車場ビル91の壁面W9を緑化する例を示したものである。
【0083】
図9において、車93が駐車する各階の駐車フロア94の周囲の壁面W9とその壁面W9と上部の駐車フロア94間の開口部92に、植樹用ブロック61を設けて、壁面緑化構造71とする。
【0084】
この駐車場ビル91の壁面は、消防法上一定の開口を必要とするため、壁面緑化構造71は、その全面を緑化するのではなく、適宜緑化した部分に開口が形成されるように、ある空間には水苔を充填しないようにすると共にその空間に位置した前後の内外のメッシュシートを切り取って開口を形成するようにする。
【0085】
また本発明によれば、図8、図9に示した駐車場ビル81,91だけでなく、各階に一台の車が駐車収容される昇降型の立体駐車場の開口部を有する壁面を緑化することもできる。
【0086】
図7〜図9で説明したように、建造物の壁面W7〜W9に本発明に係る壁面緑化構造71を採用した場合、防音壁あるいは消音壁としての機能を充分に達成することができると共に、壁面を植物によって覆うことができるために、断熱効果を高めることで冷暖房効率を高めることができる。
【0087】
このように、本発明に係る壁面緑化工法は、工法を単純化しているので、大面積の壁から小面積の壁まで緑化でき、さらに壁から屋根への連続する緑の流れも形成できる。また、小面積の壁面Wに壁面緑化構造1を直接取り付けることもでき、植樹用ブロック61aを地上で組み立て後、移動型クレーン車等で吊り上げて目的とする大面積の壁面W7〜W9に取り付けることもできるので、壁面の現場状況に合わせて、例えば高さ2〜20mの壁まで自在に緑化できる。
【0088】
上記実施の形態では、壁面Wは地盤Eに対して垂直な壁面として説明したが、本発明に係る壁面緑化構造1及び壁面緑化工法は、略直立な壁面、あるいは高さ方向に対して傾斜した斜面である壁面にも形成及び施工できるので、例えば、河川の堤防や土砂崩れを防止するコンクリート壁等の壁面であってもよい。壁面Wの材質についても、コンクリート製のみならず、例えば、モルタル製、タイル製であってもよい。
【0089】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
【0090】
(1)特に直立したコンクリート製等の壁面を容易かつ自在に緑化できる。
【0091】
(2)植物の植生を被壁面に対して軽量且つ層厚を薄く達成できる。
【0092】
(3)壁面緑化構造自体に給水手段と浄化手段とを備えているので、上水、中水、雨水の別なく散水に利用できる。
【0093】
(4)給水用や浄化用の水平メッシュ筒自体が構造材を兼ねるため、無駄が無く、安価で軽快で美しい壁面緑化が可能である。
【0094】
(5)建造物の壁面に本発明を採用した場合に、防音壁あるいは消音壁としての機能を充分に達成することができると共に、壁面を植物によって覆うことができるために、断熱効果を高めることで冷暖房効率を高めることができる。
【0095】
(6)工法を単純化しているので、大面積の壁から小面積の壁まで緑化でき、さらに壁から屋根への連続する緑の流れも形成でき、壁面の現場状況に合わせて自在に緑化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す構造図である。
【図2】本発明に係る壁面緑化工法の一工程を示す概略図である。
【図3】本発明に係る壁面緑化工法の一工程を示す概略図である。
【図4】本発明に係る壁面緑化工法の一工程を示す正面図である。
【図5】本発明に係る壁面緑化工法の一工程を示す断面図である。
【図6】本発明に係る植樹用ブロックの概略図である。
【図7】本発明に係る壁面緑化構造の一例を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る壁面緑化構造の一例を示す概略図である。
【図9】本発明に係る壁面緑化構造の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 壁面緑化構造
5 アンカー
6 防根シート
7 内側メッシュシート
8a 給水用水平メッシュ筒
8b 浄化用水平メッシュ筒
10 灌水管
10p 給水パイプ
11t 多孔質のチューブ
12 浄化層
12b 浄化材
13 外側メッシュシート
18 水苔
19 水苔層
S 空間
W 壁面
Claims (11)
- 略直立あるいは傾斜したコンクリート製等の壁面に、植物を植生させて緑化するための壁面緑化構造において、上記壁面に取り付けられる内側メッシュシートと、内側メッシュシートから所定距離隔てて設けられた外側メッシュシートと、その内外のメッシュシート間に介設されると共に上下間隔を置いて配列された水平メッシュ筒と、その内外のメッシュシートと上下の水平メッシュ筒で区画された空間に充填され、植物の根部を植生させるための水苔層と、上記水平メッシュ筒の任意の段に、その水平メッシュ筒を挿通するように設けられ、水平メッシュ筒を通してその下方の水苔層に灌水するための灌水管とを備え、上記水苔層に植生された植物の幹および葉の部分を上記外側メッシュシートの網目より繁らせて壁面を緑化するように構成したことを特徴とする壁面緑化構造。
- 上記壁面と内側メッシュシート間、或いは内側メッシュシートの前面に防根シートが設けられる請求項1記載の壁面緑化構造。
- 内外のメッシュシートとその間に介設される水平メッシュ筒とは、壁面に設けたアンカーで支持される請求項1または2記載の壁面緑化構造。
- 任意の段の水平メッシュ筒内に、その水平メッシュ筒内に流下する水を濾過して浄化するための浄化材を充填した請求項1〜3いずれかに記載の壁面緑化構造。
- 上記灌水管は、水平メッシュ筒を挿通するように設けられると共にその長さ方向に適宜間隔で給水孔が穿設された給水パイプと、その給水パイプを覆う多孔質のチューブとからなる請求項1〜4いずれかに記載の壁面緑化構造。
- 上方から下方にかけた水平メッシュ筒の1本おきに灌水管を挿通すると共に、その間の水平メッシュ筒内に浄化材を充填して浄化層を形成し、上記灌水管の上下端部を連結管で順次連結すると共に最上段の灌水管を給水源に接続して上方の灌水管から下方の灌水管に順次給水する請求項1〜5いずれかに記載の壁面緑化構造。
- 上下の水平メッシュ筒間に、格子状に垂直メッシュ筒を連結した請求項1〜6いずれかに記載の壁面緑化構造。
- 格子状に区画されて分割区画形成された空間に水苔層を充填し、その水苔層の前面を覆う外側メッシュシートに開閉自在な開閉部を形成した請求項1〜7いずれかに記載の壁面緑化構造。
- 上記水平メッシュ筒が合成樹脂製の多孔質管体から構成される請求項1〜8いずれかに記載の壁面緑化構造。
- 略直立あるいは傾斜したコンクリート製等の壁面に、植物を植生させて緑化するための壁面緑化工法において、上記壁面にこれを保護する防根シートを重ね合わせ、該防根シートの前面に内側メッシュシートを設け、その内側メッシュシートから所定距離隔てて外側メッシュシートを設けると共にその内外のメッシュシート間に上下間隔を置いて水平メッシュ筒を配列してこれら内外のメッシュシートと水平メッシュ筒とを一体に連結して骨組み体を形成し、その内外のメッシュシートと上下の水平メッシュ筒で区画された空間に、植物の根部を植生させるための水苔層を充填し、上記水平メッシュ筒の任意の段に、その水平メッシュ筒を通してその下方の水苔層に灌水するための灌水管を設け、上記水苔層に、植物の幹および葉の部分を上記外側メッシュシートの網目より植生したことを特徴とする壁面緑化工法。
- 略直立あるいは傾斜したコンクリート製等の壁面に、植物を植生させて緑化するための壁面緑化工法において、内側メッシュシートと所定距離隔てて設けた外側メッシュシート間に上下間隔を置いて水平メッシュ筒を配列してこれら内外のメッシュシートと水平メッシュ筒とを一体に連結して骨組み体を形成し、その内外のメッシュシートと上下の水平メッシュ筒で区画された空間に、植物の根部を植生させるための水苔層を充填し、上記水平メッシュ筒の任意の段に、その水平メッシュ筒を通してその下方の水苔層に灌水するための灌水管を設け、上記水苔層に、植物の幹および葉の部分を上記外側メッシュシートの網目より植生し、さらにこの骨組み体を壁面に取り付けたことを特徴とする壁面緑化工法。
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