JP3651761B2 - メタノールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超臨界状態にて水素と二酸化炭素を含む混合ガスよりメタノールを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、メタノールは水素と酸化炭素類からなる原料ガスを、銅−亜鉛酸化物を主成分とする触媒に接触させ、気相反応にて工業的に製造されている。また、気相プロセスの問題点である反応熱の除去といった観点から、これに代わる液相プロセスの開発研究も数多く行われている。この液相プロセスにおいては反応器内に熱容量の大きな溶媒を共存させ、反応熱を液体溶媒に吸収させることにより、系外に除去させる方法である。この方法では反応熱の除去は気相プロセスの場合よりはるかに容易になり、原料ガスの転化率及びメタノール収率を向上させることが可能になると考えられ、液相プロセスによるメタノールの生産は大きく注目されている。
たとえば、エアプロダクツアンドケミカルズ社で開発中の方法(USP,4031123)は水不溶性溶媒に銅−亜鉛酸化物触媒を懸濁させ、200〜270℃、60気圧にて原料ガスを下方より吹き込み、生成したメタノールと未反応原料ガスとを反応器より上方へ気体状で排出させるものである。また、Catalyst Deactivation 1991の学会において、触媒が劣化した場合、触媒の一部を抜き出し、新品の触媒を補充することにより、メタノール生成量を維持しようとしている。このように、懸濁床の場合はメタノール生成量を維持するために操業したまま、触媒の一部を入れ替えることが可能であるが、初期のメタノール生成量を維持することは困難である。また、固定床の場合は操業を停止し、触媒を入れ替える必要がある。従って、いずれにしてもメタノール生成速度の経時変化が少ない製造方法が望まれる。
【0003】
水素と二酸化炭素を含む酸化炭素との混合ガスからメタノールを製造する場合、メタノールとともに水が生成するため、溶媒の存在下で反応させる液相プロセスでは、この生成した水が触媒に悪影響をもたらすことが知られている。この影響を低減するために、リーらは、その文献(FUEL SCIENCE AND TECHNOLOGY INT'L.,9(8),977(1991)において、銅酸化亜鉛系のメタノール合成触媒を二酸化炭素で前処理することにより、触媒に含有される酸化亜鉛を炭酸亜鉛にし、銅の結晶成長を抑制することが可能であると述べている。また、触媒を水熱処理、疎水性物質で処理する方法等も提案され、触媒の改良でメタノールの生成速度の安定化をはかっている。
しかしながら、従来の液相プロセスでは、メタノールの生成速度が未だ不満足である上、その経時変化が大きい等の問題を含むものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水素と二酸化炭素を含む混合ガスより有機溶媒の存在下でメタノールを製造する方法において、メタノール生成速度が大きくかつ経時変化が非常に少ない安定性に優れた製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、水素と二酸化炭素を含む原料ガスを触媒の存在下及び有機溶媒の存在下で反応させてメタノールを製造する方法において、
(i)該有機溶媒として水不溶性又は水難溶性溶媒を用いること、
( ii )該水素と二酸化炭素との反応を、反応容器内において、該有機溶媒を超臨界条件に保持する温度及び圧力の条件下で行うこと、
(iii )該反応容器底部から該有機溶媒とメタノールと水を含む液相混合物を抜出すこと、
( iv )該液相混合物を液液分離により、該有機溶媒とメタノール水溶液とに分離すること、
(v)該分離された該有機溶媒を該反応容器に循環使用すること、
を特徴とするメタノールの製造方法が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
二酸化炭素と水素を含む混合ガスを用いて下記反応式▲1▼によりメタノールを合成する場合、合成ガス(一酸化炭素と水素)を用いて下記反応式▲2▼によりメタノールを合成する場合とは異なり、メタノールと等モルの水が生成する。
CO2 + 3H2 = CH3OH + H2O ▲1▼
CO + 2H2 = CH3OH ▲2▼
従って、水素と二酸化炭素を含む酸化炭素の混合ガスよりメタノールを合成する場合には、生成する水の影響を受けて触媒の劣化が進むことから、安定なメタノール生成速度を維持することが難しい傾向にある。特に、液相法によるメタノール合成の場合には、水不溶性ないし水難溶性溶媒を用いることが多いため、生成した水が親水性である触媒に吸着されやすく、劣化を引き起こす大きな要因になる。
【0007】
また、液相法においては、溶媒中への水素と二酸化炭素の溶解度が異なるため、二酸化炭素が過剰状態になり、▲1▼式の水素と二酸化炭素の理論モル比とかけ離れ、気相法に比較し不利であるとともに、液相中の気体の拡散は気相中に比散し非常に小さく、メタノール合成反応において拡散の影響を大きく受ける。
気相と液相の中間的状態である超臨界流体中においては気体物質は高拡散性をもつために、固体触媒の細孔内まですばやく移動することが可脂である。しかも、伝熱速度が大きいので、反応熱の除去が比較的容易であるため、気相反応に比べて反応を制御しやすい。さらに、失活要因となる固体表面に付着する物質に対して超臨界流体が高い溶解性を示すことから、触媒表面を絶えず活性に保つことができる。
このように、超臨界流体は反応ガスの拡散、生成物の触媒表面からの除去、反応熱の除去といった気相及び液相反応の長所を兼ね備えたものである。
そこで、本発明者らは、触媒ではなく、反応の媒体である溶媒に着目し、溶媒について種々検討した結果、一般的なメタノール製造条件において、反応器内を超臨界状想になるような溶媒を用いることにより、メタノール生成速度の向上及びメタノール生成速度の安定性を改善できることを見いだした。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
本発明の場合、生成したメタノール及び水と分離しやすい溶媒、すなわち、水不溶性あるいは水難溶性溶媒を用いることにより、生成物であるメタノール及び水の回収が比重差を用いることにより容易に分離することが可能である。
【0009】
本発明における触媒としては、公知のメタノール合成触媒である銅−亜鉛酸化物を主成分とする触媒である。このような触媒としては、従来公知のもの、例えば、Cu/ZnO/Al2O3、Cu/ZnO/ZrO2、Cu/ZnO/ZrO2/Al2O3、Cu/ZnO/ZrO2/Al2O3/Ga2O3等があげられる。
【0010】
本発明においては反応ガスを触媒の存在下及び反応溶媒の存在下で、その溶媒が超臨界状態になる条件下で反応させる。この場合、その具体的反応条件は使用する溶媒種により決定される。一般的には、反応温度200℃〜300℃、反応圧力5MPa〜20MPaが採用されるが、溶媒種により異なる。
【0011】
本発明で用いる有機溶媒としては、炭素数が5〜9、好ましくは5〜7の炭化水素溶媒好ましくはパラフィン系溶媒が用いられる。その具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。反応溶媒の使用割合は、触媒1重量部当り10〜500重量部、好ましくは20〜150重量部の割合である。
このような炭化水素系溶媒は、反応後、得られるメタノールを有機溶媒から分離することが容易である。本発明で用いる有機溶媒の沸点は、通常、30〜160℃、好ましくは35〜100℃である。
【0012】
本発明における二酸化炭素の割合は、水素1モル当り0.05〜0.5モル、好ましくは0.05〜0.4モルの割合である。本発明で用いる原料混合ガスは、水素及び二酸化炭素の他、一酸化炭素の他のガスを含有していてもよい。この場合の他のガスの割合は、混合ガス中30モル%以下にするのがよい。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0014】
実施例1
共沈法により調製したCu/ZnO/ZrO2/Al2O3(重量比:40/30/20/5)触媒にバインダーを添加し、粒子径1〜2mmとした触媒3.0g用いた。この触媒を目開きが0.5mmの金網により構成されるバスケットに詰め込み、これを内容積200mlのオートクレーブ(反応容器)の撹拌軸に取り付け、回転し得るようにした。このオートクレーブに溶媒としてノルマルヘキサン80mlを加え、H2/CO2=75/25の容積比からなる原料ガスをオートクレーブに圧入し、反応温度250℃、反応圧力15MPa、撹拌速度500rpmにて反応を行った。オートクレーブ底部より5.0ml/minにて連続的に反応液を抜き取り、液々分離槽に導入し、反応溶媒を液々分離槽上部から連続的に抜き取り、オートクレーブに戻した。一方、液々分離槽において相分離されたメタノール水溶液は、これを、液々分離槽下部から抜き取り、常圧に戻し、水とメタノール生成量を定量した。なお、前記反応においては、反応の進行とともに消費される分の原料ガスを一定圧力になるように圧力調製バルブを通じて連続的にオートクレーブ内に圧入した。反応の結果、反応初期のメタノール生成速度が620(g−CH3OH/kg−Cat・hr)で、200時間後のメタノール生成速度が615(g−CH3OH/kg−Cat・hr)となり、メタノール生成速度の変化はほとんどなく安定であった。また、反応後の触媒のCuの結晶子サイズは10.7ナノメータであり、後記する比較例1に示した方法に比較し、Cuの結晶成長が抑制されていることが判明した。表1にメタノール生成速度と反応時間の関係を示す。
【0015】
比較例1
溶媒として実施例1の条件(250℃)では超臨界状態にならないノルマルドデカンを用いた以外に実施例1と同様の反応条件及び方法で反応試験を実施した。その結果、反応初期のメタノール生成速度が620(g−CH3OH/kg−Cat・hr)と実施例1と同等であるが、約200時間後のメタノール生成速度は540(g−CH3OH/kg−Cat・hr)と徐々に低下し、メタノール生成速度の安定性は低い。また、反応後の触媒のCuの結晶子サイズは15.7ナノメータであり、実施例1に示した方法に比較し、Cuの結晶が成長している。
表1にメタノールの生成速度を示す。
【0016】
【表1】
【0017】
実施例2
実施例1において、触媒使用量を0.6gとし、反応圧力15MPa、反応温度を250℃とした以外は同様にして反応試験を行った。この場合、反応時間100時間でのメタノール生成速度は1620g−CH3OH/kg−Cat・hrであった。
【0018】
実施例3
実施例1において、触媒使用量を0.6gとし、反応溶媒としてn−ヘプタンを用い、反応条件としてn−ヘプタンが調臨界状態になる温度260℃及び反応圧力9MPaを用いた以外は同様にして反応試験を行った。この場合、反応時間100時間でのメタノール生成速度は889g−CH3OH/kg−Cat・hrであった。
【0019】
比較例2
実施例3において、反応温度として250℃を用いた以外は同様にして反応試験を行った。この場合、反応時間100時間でのメタノール生成速度は750g−CH3OH/kg−Cat・hrであった。
【0020】
比較例3
比較例2において、溶媒としてn−ドデカンを用いた以外は同様にして反応試験を行った。この場合、反応時間100時間でのメタノール生成速度は800g−CH3OH/kg−Cat・hrであった。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、水素と二酸化炭素を含む混合ガスから、高められた生成速度でかつ経時変化の少ない生成速度でメタノールを得ることができる。
Claims (2)
- 水素と二酸化炭素を含む原料ガスを触媒の存在下及び有機溶媒の存在下で反応させてメタノールを製造する方法において、
(i)該有機溶媒として水不溶性又は水難溶性溶媒を用いること、
( ii )該水素と二酸化炭素との反応を、反応容器内において、該有機溶媒を超臨界条件に保持する温度及び圧力の条件下で行うこと、
(iii )該反応容器底部から該有機溶媒とメタノールと水を含む液相混合物を抜出すこと、
( iv )該液相混合物を液液分離により、該有機溶媒とメタノール水溶液とに分離すること、
(v)該分離された該有機溶媒を該反応容器に循環使用すること、
を特徴とするメタノールの製造方法。 - 該有機溶媒が、ペンタン、ヘキサン又はヘプタンであることを特徴とする請求項1のメタノールの製造方法。
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