JP3651162B2 - 甘味料組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高甘味度甘味料であるN−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン 1−メチルエステル(以下「MII」と略記する。)とアセスルファムK(以下「AceK」と略記する)とを含有することを特徴とする自然な甘味を有する甘味料に関する。
【0002】
【従来の技術】
高甘味度甘味料であるMIIの甘味強度はスクロースと比較して、重量比で10,000倍(特表平8−503206)と報告されている。
【0003】
MIIの甘味質特性の詳細は報告されていないが、本発明者の知見によれば、さき味(スクロースと同じ様に甘味を早く感じること)が極端に弱く、あと味(スクロースより甘味が遅く出現し感じられること)が極端に強い。又、渋味が強い。従って、スクロースに比べて甘味質のバランスが悪く、スクロースを自然な甘味とする場合には、さき味が弱く、あと味が強い違和感のある甘味特性を有する。
【0004】
【発明が解決しょうとする課題】
本発明の課題は、前項に記載のMIIの甘味質特性に鑑み、先味を強め、あと味を弱め、渋味を弱めることにより、MIIをスクロースに類似した甘味質の高甘味度甘味料として提供するにある。
【0005】
【課題を解決する為の手段】
本発明者は、前記課題を達成する為、鋭意検討の結果、高甘味度甘味料MIIとAceKとを特定の量比で組み合わせることにより、さき味を強め、あと味を弱め、かつ渋味を弱めた、甘味質のバランスが改良された甘味料が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
さき味の改善は、さき味の強い甘味料(例えば、グリチルリチン等)を併用すれば可能との類推は容易であるが、実際には、苦味等が強く、甘味質のバランスが崩れ、それほど単純ではない。MIIに、甘味換算で少量のAceKを組合せることにより、MII単独の場合よりも、さき味、後味、渋味が改善され、全体としてバランスの良い、スクロースにより近い甘味質の高甘味度甘味料が得られることは、従来の知見からは、予想が困難である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の甘味料組成物は、MIIとAceKを含有してなるが、MIIとAceKの量比は、両者の合計重量に占めるMIIの比率が3〜80重量%である。MIIの比率が3%を下回る又は80%を上回る組成物の場合、併用効果、即ち、各々単独の場合に比べてのさき味、後味、渋みの改善効果に欠ける。従って、MIIが、MIIとAceKの合計重量に占める比率は、3%〜80重量%で、甘味特性の改善された甘味料組成物が得られ、更に好ましくは3.5%〜60重量%含有すると、極めて甘味質のバランスがとれたスクロースに類似した甘味料組成物が得られる。
【0008】
本発明の甘味料組成物は、卓上甘味料、飲料、冷菓、ゼリー、ケーキ、パン、キャンディー、チューインガムをはじめとする各種の飲食品、歯磨き剤をはじめとする口腔用組成物、医薬品等に配合され、従来の高甘味度甘味料に比べて、よりスクロースに近い、自然でバランスのとれた甘味質を与えることができる。
【0009】
[実験例1]
市水をイオン交換した後、蒸留した水(以降、純水と称する)を用いて実験した。
スクロース10%相当の甘味強度(以降、PSE10%と称する)を有するMII水溶液を調製し、先味、くせ、しつっこさ、刺激、苦味、あと味、渋味、すっきり、まろやかの9項目について、スクロース10%水溶液と比較評価した。先味が極端に弱く、あと味が極端に強く、渋味が強い。更に、くせ、しつっこさが強く、味のバランスが極端に崩れ、悪かった。
一方、MIIとAceKを甘味強度比で9:1〜1:9の割合で変化させ、しかし、PSE10%は一定として、水溶液を調製し、スクロース10%水溶液と比較評価した。甘味強度比で9:1〜6:4までは、先味が強まり、後味が弱まり、渋味が低減され、くせ、苦味はややあるも、大幅に呈味性が改善され、バランスの取れた良い呈味を示した。又、甘味強度比6:4を越えると、すなわちAceKの比率が甘味強度比で40%を越えると、先味は強まるが、後味、苦味、渋味、くせが、極端に強まり、甘味質のバランスが大幅に崩れた。AceK単独の強烈なくせのある甘味質が現出した。
【0010】
[実験例2]
PSE10%のMIIの炭酸コーラ溶液を調製し、スクロース10%炭酸コーラ溶液と比較評価した。水溶液での比較評価結果よりは、くせ、しつっこさが弱まっているが、先味が弱く、後味が強く、渋味が強かった。同様にPSE10%相当のAceKの炭酸コーラ溶液を調製し、スクロース10%炭酸コーラ溶液と比較評価したところ、強烈なくせのある呈味を示し、先味が強まるが、後味、渋味、苦味、しつっこさ、くせが極端に強く、まろやか、すっきりが極端に弱かった。
一方、MIIとAceKを甘味強度比で9:1〜1:9の割合で変化させ、しかし、PSE10%は一定として、炭酸コーラ溶液を調製し、スクロース10%炭酸コーラ溶液と比較評価した。甘味強度比で9:1〜6:4までは、先味が強まり、後味が弱まり、渋味が低減され、くせ、苦味はややあるも、大幅に呈味性が改善され、バランスの取れた良い呈味を示した。甘味強度比6:4を越えると、すなわちAceKの比率が甘味強度比で40%を越えると、先味は強まるが、後味、苦味、渋味、くせが、極端に強まり、甘味質のバランスが大幅に崩れた。AceK単独の強烈なくせのある甘味質が現出した。
【0011】
[実験例3]
実験例2と同様に、PSE5%のMIIの炭酸コーラ溶液を調製し、スクロース5%炭酸コーラ溶液と比較評価した。先味が弱く、後味が強く、渋味が強かった。
一方、MIIとAceKを甘味強度比で9:1〜1:9の割合で変化させ、しかし、PSE5%は一定として、炭酸コーラ溶液を調製し、スクロース5%炭酸コーラ溶液と比較評価した。甘味強度比で9:1〜6:4までは、先味が強まり、後味が弱まり、渋味が低減され、くせ、苦味はややあるも、大幅に呈味性が改善され、バランスの取れた良い呈味を示した。甘味強度比6:4を越えると、すなわちAceKの比率が甘味強度比で40%を越えると、先味は強まるが、後味、苦味、渋味、くせが、極端に強まり、甘味質のバランスが大幅に崩れた。AceK単独の強烈なくせのある甘味質が現出した。
【0012】
【発明の効果】
本発明の甘味料組成物は、MIIやAceKの単独使用では得られない良質のバランスの取れた呈味性を有する高甘味度甘味料を提供する。他の賦形剤(スクロース等も含む)との併用も勿論可能である。特に炭酸コーラではその優位性を発揮するが、これに限定されず、すべての用途で、改善された甘味質の組成物として適用可能である。
【0013】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に説明する。
【0014】
[実施例1]
スクロースの8000倍と想定して、PSE10%濃度になるように希釈したMIIの水溶液を調製した。スクロース濃度▲1▼6.94%、▲2▼8.33%、▲3▼10.0%、▲4▼12.0%、▲5▼14.4%の各水溶液を調製し、当該MIIの水溶液が、甘味強度について、どの番号のものと似ているか、試飲して官能評価した。パネラー20名(以降、n=20と表現)の平均点を求めた結果は2.4点であった。次の計算により、当該MIIの水溶液の甘味強度は9.0%であつた。
(10.0−8.33)×0.4+8.33=9.0
従って、MIIの甘味強度はスクロースの7200(=8000×9/10) 倍であった。
【0015】
この結果に基づいて、PSE10%のMII水溶液を調製(MII 13.9mgをとり、純水で1000mlにフィルアップ)した。 又、スクロース10%水溶液を調製(スクロース100gをとり、純水で1000mlにフィルアップ)した。
このPSE10%のMII水溶液を、スクロース10%水溶液をコントロールとして、先味、くせ、しつっこさ、刺激、苦味、後味、渋味、すっきり、まろやかの9項目について比較評価した(n=20)。その結果、MII水溶液の甘味質は先味が極端に弱く、後味が極端に強く、渋味が強かった(n=20)。
【0016】
MIIとAceK(PSE換算8:2)のPSE10%水溶液を調製した。 MII11mg(=8/7200(g/dl))とAceK49mgを100mlメスフラスコに採り、純水で10倍に希釈した。この水溶液(推定PSE10%)の甘味強度は、上記スクロース水溶液の何番に近いかを、パネラー20名(以降n=20と略記する)に問い、その官能評価の平均点を求めた。2.1点。従ってこの水溶液はPSE8.4%であった。
【0017】
そこで、PSE10%にすべく再度調製した。MII13.1mg、AceK58.3mgを採り、純水で1000mlにフィルアップした。
再度、官能評価し3.1点を得た(n=20)。従ってPSE10%であることを確認した。 このときのMIIとAceKの全重量に対するMII含量は18.3%である。AceKの重量と甘味強度(PSE%)の関係は次式を使用した(以降同じ)。
Y(甘味強度%)=19.09×(AceK重量g)0.424
このMIIとAceK(PSE換算8:2)のPSE10%水溶液を、スクロース10%水溶液をコントロールとして、先味、くせ、しつっこさ、刺激、苦味、後味、渋味、すっきり、まろやかの9項目について比較評価した。その結果、MIIとAceKの併用により甘味質は改善され、先味が強まり、後味が弱まり、渋味が弱まり、バランスのとれた呈味性を示すことが判明した(n=20)。
【0018】
[実施例2]
炭酸ガス入りの甘味強度を評価するのは大変難しいので、コーラベースで甘味強度を調製し(PSE10%)、その後、炭酸ガス入りのコーラ(通常)で甘味質比較を行った。
【0019】
コーラベースの基本レシピー:クエン酸(結晶)0.25g、クエン酸ナトリウム0.1g、85%リン酸 0.3g、コーラベース2ml、コーラエッセンス1ml(甘味料を適宜を加え、純水で1000mlにフィルアップした(pH2.8))。
【0020】
スクロースコーラベース溶液の調製:1000mlのメスフラスコに、スクロース▲1▼69.4g、▲2▼83.3g、▲3▼100g、▲4▼120g、▲5▼144gを各々採り、上記コーラベース量を加えて、純水でフィルアップした。
【0021】
MIIのPSE10%コーラベース溶液の調製:MII13.9mgを100mlメスフラスコに採り、純水でフィルアップした(推定PSE100%)。その10mlを、上記のコーラベース量と共に1000mlに希釈した(推定PSE10%)。
このMIIコーラベース溶液の甘味強度が、上記スクロースコーラベース溶液の何番の甘味強度に近いかを官能評価し、その平均点を求めた結果2.45点であり(n=20)。PSEの計算値は9.1%であった。従って、MIIの甘味強度は、コーラベース溶液中では、スクロースの6600倍であつた。
【0022】
そこでPSE10%液を再度調製した。MII15.2mgを100mlメスフラスコに採り、純水でフィルアップした(推定PSE10%)。その10mlを上記のコーラベース量と共に1000mlにフィルアップした。
このMIIコーラベース溶液の甘味強度が、上記スクロースコーラベース溶液の何番に近いかを官能評価し、その平均点を求めところ、2.75点であり(n=20)、PSE10%が確認できた。
【0023】
MIIとAceK(PSE換算8:2)のPSE10%コーラベース溶液の調製:MII11mg、AceK49mgを100mlメスフラスに採り、純水でフィルアップした(推定PSE100%)。その10mlを上記のコーラベース量と共に1000mlにフイルアップした(推定PSE10%)。このコーラベース溶液の甘味強度を、同様に求めたところ、3.1点であり、PSE10%が確認された。このときのMIIとAceKの全重量に対するMIIの含量は18.3%である。
【0024】
炭酸ガス入りコーラ溶液の調製:上記で得られた、各種コーラベース溶液1000mlを各々、炭酸ガス封入ボンベに入れ、炭酸ガスを入れる。冷蔵庫にて1夜放置した。充分冷えたところで、静置のまま、開栓し、直ちに、その液を240ml容の缶に封入した。
【0025】
甘味質評価: 上記で得られたPSE10%のMIIの炭酸コーラ溶液を、スクロース10%炭酸コーラ溶液をコントロールとして、先味、くせ、しつっこさ、刺激、苦味、後味、渋味、すっきり、まろやかの9項目について比較評価した結果、MII含有炭酸ガス入りコーラの甘味質は先味が極端に弱く、後味が極端に強く、渋味が強かった(n=20)。
【0026】
上記で得られたMIIとAceK(PSE換算8:2)のPSE10%炭酸コーラ溶液を、スクロース10%炭酸コーラ溶液をコントロールとして、先味、くせ、しつっこさ、刺激、苦味、後味、渋味、すっきり、まろやかの9項目について比較評価した。甘味質は改善され、先味が強まり、後味が弱まり、渋味が弱まり、バランスのとれた呈味性を示した(n=20)。
【0027】
[実施例3]
上記の実験方法を用いて下記の割合の炭酸コーラ溶液を調製した。
Figure 0003651162
【0028】
実験No.1,3,7の各炭酸コーラ溶液を、スクロース10%炭酸コーラ溶液をコントロールとして、先味、くせ、しつこさ、刺激、苦味、後味、渋味、
すっきり、まろやかの9項目について比較評価した。甘味質は改善され、先味が強まり、後味が弱まり、渋味が弱まり、バランスのとれた呈味性を示した。(n=20)。又、実験No.4〜6の各炭酸コーラ溶液(PSE換算比でAceKが5以上の場合)を、スクロース10%炭酸コーラ溶液をコントロールとして、同様に比較評価した。甘味質は改善され、各々、先味が強まるものの、後味、渋味、苦味、くせが極端に強く、すっきり、まろやかが極端に弱くなり、バランスの崩れた呈味性を示した。特にAceKの甘味強度比率が高まるにつれ、大きくバランスを崩した(n=20)。

Claims (1)

  1. N−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン 1−メチルエステルとアセスルファムKとを含有し、かつ、N−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン 1−メチルエステルが、N−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン 1−メチルエステルとアセスルファムKの全重量の3%〜80%であることを特徴とする甘味料組成物。
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