JP3649503B2 - 粉体塗料用樹脂およびその製造方法 - Google Patents

粉体塗料用樹脂およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉体塗料用樹脂およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
塗料には、顔料と高分子物質を有機溶剤で分散させた溶剤型塗料、加熱により不溶化する水溶性樹脂を使用した水溶性樹脂塗料、樹脂を水中に分散させたエマルション塗料、樹脂を粉末にして塗布し、加熱・造膜させる粉体塗料等があるが、塗膜の美麗さ、耐久性等の点から、溶剤型塗料が主として使用されている。
【0003】
しかしながら、近年、大気汚染、火災の危険性等の問題から、有機溶剤に対する規制が厳しくなり、無溶剤型塗料が注目されている。中でも粉体塗料は環境保護の観点から、特に脚光を浴びてきている。
【0004】
粉体塗料用樹脂の製造方法として、塊状重合、溶液重合、懸濁重合法等が提案されている(特開昭53−138437号公報、特開昭53−140395号公報)。ところで、粉体塗料において、平坦な塗膜を形成させるためには、樹脂の低分子量化を計ることが必要である。このために粉体塗料用樹脂の製造方法としては、上記の重合方法の中でもより低分子量化が計れる溶液重合法が広く採用されている。
【0005】
しかしながら、溶液重合法では、溶剤の除去工程が必要となるため工程が長く、生産性が劣ると共に、溶剤の完全除去が困難で、樹脂中に溶剤が残存する問題があった。また、無溶剤、かつ無触媒条件にて塊状重合する場合は、重合時の発熱の制御が困難であり、また、メルカプタン類等の連鎖移動剤を多量に添加する必要があり、コスト高になると共に、臭気、塗膜の耐候性の劣化が問題であった。
【0006】
さらに、懸濁重合法で連鎖移動剤を添加して分子量を低下させる方法もあるが、メルカプタン類の連鎖移動剤を使用する場合、製造した樹脂にメルカプタン類の臭気が残存し、粉体塗料で必要な高温での溶融混練工程の際、残存する臭気が問題となる可能性があると共に、得られた塗膜は耐候性が劣る傾向にあることが大きな問題であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産性が高く、樹脂臭気のない良好な性能を有する粉体塗料用樹脂およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、特定の組成からなる(メタ)アクリル系単量体を特定の条件下で重合させて得られる特定の物性を有するアクリル系樹脂が、上記の目的を達成しうることを見い出し、本発明に到ったものである。
【0009】
すなわち本発明は、テルピノレンを連鎖移動剤として、(メタ)アクリル酸メチル、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸グリシジルを必須成分として含む(メタ)アクリル系単量体を重合温度100℃以上、重合圧力2kg/cm2 上の条件下で懸濁重合して上記の粉体塗料用樹脂を得る製造方法にある。
【0010】
本発明の粉体塗料用樹脂は、テルピノレンを連鎖移動剤として(メタ)アクリル系単量体を重合して得たアクリル系樹脂よりなるものである。
【0011】
本発明の粉体塗料用樹脂においては、アクリル系樹脂中の揮発成分が1000ppm以下、また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が3000〜20000であることが好ましい。これは、揮発成分が1000ppmを超えると、粉体塗料で必要な高温での溶融混練工程の際、残存する揮発成分の臭気が問題となったり、形成される塗膜にピンホールが発生する可能性があるためである。より好ましくは700ppm以下である。また、重量平均分子量が3000未満であると塗膜硬度が劣る傾向にあり、また20000を超えると塗膜表面の平坦性に劣る傾向にあるためである。より好ましくは5000〜15000の範囲である。
【0012】
なお、本発明でいう揮発成分は、アクリル系樹脂中に含まれる揮発物質をいい、主として重合に用いられた残存単量体からなる。
【0013】
本発明の粉体塗料用樹脂は、テルピノレンを連鎖移動剤として、(メタ)アクリル酸メチル、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸グリシジルを必須成分として含む(メタ)アクリル系単量体を懸濁重合することにより得ることができる。
【0014】
本発明において用いられる(メタ)アクリル酸メチルは、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルから選ばれる少なくとも1種の単量体であり、その使用量は、アクリル系樹脂中、(メタ)アクリル酸メチル単位を10〜50重量%含有するように用いることが好ましい。これは、その使用量が10重量%未満では、塗膜の硬度、耐汚染性が劣る傾向にあり、また、50重量%を超えると塗膜の平坦性が劣る傾向にあるためである。
【0015】
また、本発明に用いられるスチレン系単量体としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−フェニルスチレン、3,4−ジシクロシルスチレン等が挙げられる。中でもスチレンの使用が好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0016】
スチレン系単量体の使用量は、アクリル系樹脂中、スチレン系単量体単位を10〜50重量%含有するように用いることが好ましい。これは、その使用量が10重量%未満では、保存安定性、塗膜の平坦性が劣る傾向にあり、また、50重量%を超えると塗膜の耐衝撃性、耐候性が劣る傾向にあるためである。
【0017】
また、本発明において用いられる(メタ)アクリル酸グリシジルは、メタクリル酸グリシジルおよびアクリル酸グリシジルから選ばれる少なくとも1種の単量体である。この(メタ)アクリル酸グリシジルは、アクリル系樹脂のエポキシ当量が350〜1000g/eq.の範囲となるように使用することが好ましい。これは、エポキシ当量が350g/eq.未満では、塗膜の平坦性、保存安定性が劣る傾向にあり、また1000g/eq.を超えると、塗膜の硬度、耐溶剤性が劣る傾向にあるためである。
【0018】
なお、ここでいうエポキシ当量は、エポキシ基を1モル得るために必要な樹脂のグラム数であり、計算上[(メタ)アクリル酸グリシジルの分子量]/[(メタ)アクリル酸グリシジルの重合体中に占める割合]で表わされる数値である。
【0019】
本発明の粉体塗料用樹脂は、上記の(メタ)アクリル酸メチル、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸グリシジルの単量体を用いて構成されるが、必要に応じて他の共重合性単量体を併用することができる。
【0020】
例えば、さらに、塗膜の平坦性および硬度を向上させたい場合には、他の共重合性単量体として、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等の不飽和脂肪族二塩基酸ジアルキルエステル等が適宜使用できる。
【0021】
また、さらに、塗膜の硬度、耐溶剤性を向上させたい場合には、他の共重合性単量体として、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが適宜使用できる。
【0022】
これらの他の共重合性単量体の共重合比率は、上記の必須単量体の各々が上記範囲内で、かつ、得られるアクリル系樹脂のガラス転移温度が40℃以上となる範囲が好ましく、より好ましくは40〜70℃となる範囲である。これは、得られるアクリル系樹脂のガラス転移温度が40℃未満では、保存安定性が極端に低下する場合があり、また、70℃を超えると、塗膜特性、特に耐衝撃性が低下する傾向にあるためである。
【0023】
また、本発明の粉体塗料用樹脂においては、軟化温度が80〜150℃の範囲のものが好ましい。これは、軟化温度が80℃未満では塗膜硬度が劣る傾向にあり、一方、軟化温度が150℃を超えると、塗膜の平坦性に劣る傾向にあるためである。
【0024】
本発明の粉体塗料用樹脂を懸濁重合法により製造する場合には、重合開始剤としてアゾ系化合物を使用することが好ましい。これは、重合開始剤として過酸化物系開始剤を使用した場合、重合中に重合開始剤由来の酸成分によりエポキシ基が開環し、その結果高分子量物が生成し、塗膜の平坦性が劣る傾向にあると共に塗料化する際の硬化剤との架橋が不十分となり、塗膜の硬度が劣る傾向にあるためである。
【0025】
また、アゾ系化合物を重合開始剤として使用する場合には、10時間半減期温度が60℃未満および60℃以上のアゾ系化合物をそれぞれ1種以上を併用して使用することがより好ましい。これは、10時間半減期温度が60℃未満のアゾ系化合物は、得られる樹脂を低分子量化させ、そして60℃以上のアゾ系化合物は、補助的な重合開始剤として、得られる樹脂の重合率を高め、残存単量体を低減させる効果があるためである。
【0026】
10時間半減期温度が60℃未満のアゾ系化合物としては、例えば2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(52℃)(括弧内の数字は10時間半減期温度を示す。以下、同じ。)等が挙げられ、60℃以上のものとしては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(65℃)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(67℃)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカーボニトリル(87℃)等が挙げられる。これらアゾ系化合物の使用量は、上記(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用することが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量部の範囲である。
【0027】
本発明の粉体塗料用樹脂の製造においては、連鎖移動剤としてテルピノレン(1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセン)が使用される。これは、テルピノレンを連鎖移動剤として使用することにより、重合体の分子量が低分子量化して塗膜の平坦性に優れた粉体塗料用樹脂を得られ、また、得られた樹脂から臭気の問題が解消されるためである。
【0028】
本発明の粉体塗料用樹脂の製造方法におけるテルピノレンの使用量は、(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは0.2〜3重量部の範囲である。これは、0.1重量部未満の場合、連鎖移動剤としての効果が薄れ、得られる重合体の分子量が高分子量化して塗膜の平坦性が劣る傾向にあるためであり、一方、5重量部を超えると、重合速度が低下し、生産性が劣ると共に、残存単量体量が増加し、溶融混練の際に残存単量体に起因する臭気が問題となる可能性があるためである。
【0029】
本発明の粉体塗料用樹脂の製造においては、連鎖移動剤はテルピノレンが用いられるが、必要に応じて他の連鎖移動剤を併用してもよい。併用できる連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0030】
これら連鎖移動剤の添加量は、テルピノレンの添加量と合わせて(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して10重量部以下であることが好ましい。これは、連鎖移動剤の総添加量が10重量部を超える場合、高コスト化すると共に、重合速度が低下し、生産性が劣るためである。
【0031】
ただし、併用する連鎖移動剤としてメルカプタン類を使用する場合、樹脂の臭気が問題となる可能性があると共に、塗膜の耐候性が劣る傾向にあるため、その添加量は0.2重量部以下であることが好ましく、この場合、分子量の調節はさらに他の連鎖移動剤との併用で行うことが望ましい。
【0032】
懸濁重合において使用される分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、(メタ)アクリル酸の単独重合体あるいは共重合体のアルカリ金属塩、カルボキシルセルロース、ゼラチン、デンプン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。これら分散剤は、水100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で使用することが好ましい。これは、分散剤の使用量が0.01重量部未満では、懸濁重合の安定性が低下して生成粒子の凝集によって重合体が固化する傾向にあり、逆に、5重量部を超えると、重合後の生成粒子が細粒化し、廃水の水質を悪化させると共に、生産性に劣る傾向にあるためであり、さらに好ましくは0.05〜2重量部の範囲である。また、必要に応じて、これら分散剤と共に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マンガン等の分散助剤を併用することもできる。
【0033】
懸濁重合は、単量体に対して好ましくは1〜10倍、さらに好ましくは1.3〜4倍程度の水と共に、重合開始剤、連鎖移動剤、分散剤、必要に応じて分散助剤等を添加して、所定の速度で所定の重合温度まで昇温して、重合が終了するまで加温を続けることによって行われる。
【0034】
さらに、懸濁重合を行う際の重合温度、および重合圧力については、本発明の場合、重合温度が100℃以上、および重合圧力が2kg/cm2 以上となる条件下で行うことが必要である。これは、重合温度が100℃未満、および重合圧力が2kg/cm2 未満の場合には、得られる共重合体の分子量を低分子量化させることができず、そのために平坦性に優れた粉体塗料用樹脂を得ることが困難となるためである。
【0035】
上記懸濁重合により得られる本発明の粉体塗料用樹脂におけるアクリル系樹脂中の揮発成分、特に残存単量体は、重合末期の熱処理、重合後の蒸留による残存単量体の除去等の手段により、揮発成分を1000ppm以下とすることができる。
【0036】
本発明の粉体塗料用樹脂は、50〜1500μmの平均粒子径を有し、硬化剤と配合して塗料として使用される。使用される硬化剤としては、多価カルボキシ化合物、多価フェノール等が挙げられる。硬化剤の使用量は、アクリル系樹脂の官能基と硬化剤の官能基の当量比が1/2〜2/1の範囲、好ましくは1/1となる量である。これは、当量比が1/2未満であると、塗膜の耐水性が低下する傾向にあるためであり、一方、当量比が2/1を超えると耐溶剤性が低下する傾向にあるためである。
【0037】
塗装できる被塗装体としては、例えば、金属、ガラス、耐熱性プラスチック等が挙げられる。
【0038】
塗装体の焼き付け温度は、150〜250℃の温度範囲で行われ、焼き付け時間は5〜30分の範囲である。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例および比較例における部は重量部を示す。
また、実施例および比較例における物性の評価は次の方法を用いて行った。
【0040】
(1)ガラス転移温度
サンプルを100℃まで昇温してメルトクエンチした後、DSC法(示差走査熱量測定法、昇温速度10℃/分)により求めた。
【0041】
(2)軟化温度
フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500型)を用い、昇温速度3℃/分、荷重30kgf、ノズル径1mmφ、ノズル長さ10mm、プランジャー断面積を1cm2 、サンプル量1gの条件で測定し、サンプルの1/2が流出した温度を採用した。
【0042】
(3)重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)による測定値であり、テトラヒドロフランを溶剤とし、東ソー(株)製、HCL−8020により測定し、ポリスチレン換算により求めた。
【0043】
(4)揮発成分量
ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC−8A)により、樹脂中の残存単量体を測定し、その総量を揮発成分量とした。
【0044】
(5)平坦性
塗膜表面を目視し下記の基準にて評価した。
○:良好
△:やや不良
×:不良
【0045】
(6)硬度
塗膜を鉛筆こすり法にて評価し、塗膜が傷つかない最も硬い鉛筆を以て硬度とした。
【0046】
(7)耐衝撃性
JIS K−5400に準拠し、500gの錘りを塗膜上に落下させ、塗面に割れを生じない最大の高さを測定し、この値を耐衝撃性とした。
【0047】
(8)耐汚染性
油性赤インクを塗膜に塗り、室温で1時間乾燥した後、キシレンで拭き取り、インクの残存状態を目視にて下記の基準で評価した。
○:ほとんど存在しない
×:多く残存する
【0048】
[実施例1]
硫酸マンガン0.005部および4%水溶液の20℃での粘度が24cpsであるポリビニルアルコール(信越化学工業(株)製、LA−18)0.225部を十分に溶解させた脱イオン水200部を反応容器に投入した。次いで、その反応容器にスチレン16部、メタクリル酸メチル33部、メタクリル酸n−ブチル21部、メタクリル酸グリシジル30部、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(和光純薬工業(株)製、V−65)5部、2,2’−アゾビス−2ーメチルブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、V−59)1部およびテルピノレン(ヤスハラケミカル(株)製、ターピノーレン)3重量部からなる混合物を反応容器中に投入し、密閉系にて110℃で2時間の懸濁重合を行って懸濁重合物を得た。重合中の反応容器内の圧力は4.8kg/cm2 であった。
【0049】
次いで、その懸濁重合物を常圧で2時間の蒸留操作を行って、投入量の20%量の脱イオン水と共に残存単量体を留出させて除去した後40℃に冷却し、得られた重合体を十分に水洗し乾燥させて、平均粒子径が420μmであるアクリル系樹脂からなる粉体塗料用樹脂を得た。得られたその樹脂には残存臭気はなかった。
表1に得られた樹脂の特性の評価結果を示す。
【0050】
次いで、その樹脂80部と硬化剤(ドデカンジカルボン酸)20部とを100℃の温度で30分間溶融混練し、それを周知の方法でアルミニウム板に塗装し、180℃で20分焼き付けして80μm厚の塗膜を有する塗装板を得た。得られた塗装板の塗膜についての評価結果を表1に示す。塗膜は、平坦性、硬度、耐衝撃性、耐汚染性とも良好であった。
【0051】
[実施例2]
硫酸マンガン0.005部および4%水溶液の20℃での粘度が24cpsのポリビニルアルコール(信越化学工業(株)製、LA−18)0.225部を十分に溶解させた脱イオン水200部を反応容器に投入した。次いで、その反応容器にスチレン16部、メタクリル酸メチル33部、メタクリル酸n−ブチル21部、メタクリル酸グリシジル30部、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(和光純薬工業(株)製、V−65)5部、2,2’−アゾビス−2ーメチルブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、V−59)1部、テルピノレン(ヤスハラケミカル(株)製、ターピノーレン)1部およびα−メチルスチレンダイマー(日本油脂(株)製、ノフマーMSD)3部からなる混合物を反応容器中に投入し、密閉系にて110℃で2時間の懸濁重合を行って、懸濁重合物を得た。重合中の反応容器内の圧力は4.5kg/cm2 であった。
【0052】
次いで、その懸濁重合物を常圧で2時間の蒸留操作を行って、投入量の20%量の脱イオン水と共に残存単量体を留出させて除去した後40℃に冷却し、得られた重合体を十分に水洗し乾燥させて、平均粒子径が450μmであるアクリル系樹脂からなる粉体塗料用樹脂を得た。得られたその樹脂には残存臭気はなかった。
表1に得られた樹脂の特性の評価結果を示す。
【0053】
次いで、その樹脂80部と硬化剤(ドデカンジカルボン酸)20部とを配合し、実施例1と同様な操作を繰り返して焼き付け塗装板を得た。得られた塗装板の塗膜についての評価結果を表1に示す。塗膜は、平坦性、硬度、耐衝撃性、耐汚染性とも良好であった。
【0054】
[比較例1]
硫酸マンガン0.005部および4%水溶液の20℃での粘度が24cpsのポリビニルアルコール(信越化学工業(株)製、LA−18)0.225部を十分に溶解させた脱イオン水200部を反応容器に投入した。次いで、その反応容器にスチレン16部、メタクリル酸メチル33部、メタクリル酸n−ブチル21部、メタクリル酸グリシジル30部、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(和光純薬工業(株)製、V−65)5部、2,2’−アゾビス−2ーメチルブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、V−59)1部、およびα−メチルスチレンダイマー(日本油脂(株)製、ノフマーMSD)3部および2−エチルヘキシルチオグリコレート(淀化学工業(株)製、OTG)0.5部からなる混合物を反応容器中に投入し、密閉系にて110℃で2時間の懸濁重合を行って、懸濁重合物を得た。重合中の反応容器内の圧力は4.6kg/cm2 であった。
【0055】
次いで、その懸濁重合物を常圧で2時間の蒸留操作を行って、投入量の20%量の脱イオン水と共に残存単量体を留出させて除去した後40℃に冷却し、得られた重合体を十分に水洗し乾燥させて、平均粒子径が380μmであるアクリル系樹脂からなる粉体塗料用樹脂を得た。得られたその樹脂は、洗浄時および乾燥した後においてもOTGの臭気が残存していた。
【0056】
次いで、その樹脂80部と硬化剤(ドデカンジカルボン酸)20部とを配合し、実施例1と同様な操作を繰り返して焼き付け塗装板を得た。得られた塗装板の塗膜についての評価結果を表1に示す。
塗膜性能は良好であったが、塗膜生成時に臭気が認められた。
【0057】
[比較例2]
硫酸マンガン0.005部および4%水溶液の20℃での粘度が24cpsのポリビニルアルコール(信越化学工業(株)製、LA−18)0.225部を十分に溶解させた脱イオン水200部を反応容器に投入した。次いで、その反応容器にスチレン16部、メタクリル酸メチル33部、メタクリル酸n−ブチル21部、メタクリル酸グリシジル30部、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(和光純薬工業(株)製、V−65)5部、2,2’−アゾビス−2ーメチルブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、V−59)1部、および2−エチルヘキシルチオグリコレート(淀化学工業(株)製、OTG)3部からなる混合物を反応容器中に投入し、密閉系にて110℃で2時間の懸濁重合を行って、懸濁重合物を得た。重合中の反応容器内の圧力は4.7kg/cm2 であった。
【0058】
次いで、その懸濁重合物を常圧で2時間の蒸留操作を行って、投入量の20%量の脱イオン水と共に残存単量体を留出させて除去した後40℃に冷却し、得られた重合体を十分に水洗し乾燥させて、平均粒子径が410μmであるアクリル系樹脂からなる粉体塗料用樹脂を得た。得られたその樹脂は、洗浄時および乾燥した後においてもOTGの臭気が強く残存していた。
【0059】
次いで、その樹脂80部と硬化剤(ドデカンジカルボン酸)20部とを配合し、実施例1と同様な操作を繰り返して焼き付け塗装板を得た。得られた塗装板の塗膜についての評価結果を表1に示す。得られた塗膜は耐汚染性に劣っており、塗膜の形成時に臭気が認められた。
【0060】
【表1】
Figure 0003649503
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば樹脂臭気がなく、良好な塗膜性能を有する粉体塗料用樹脂を得ることができる。
また、本発明の粉体塗料用樹脂は、懸濁液重合法で製造されるため、他の重合法に比べ環境の汚染がなく、低コストで得ることができる。

Claims (8)

  1. テルピノレンを連鎖移動剤として、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸グリシジルを含有する(メタ)アクリル系単量体を懸濁重合して得たアクリル系樹脂よりなる粉体塗料用樹脂。
  2. アクリル系樹脂中の揮発成分が1000ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の粉体塗料用樹脂。
  3. アクリル系樹脂の重量平均分子量が3000〜20000であることを特徴とする請求項1記載の粉体塗料用樹脂。
  4. アクリル系樹脂がスチレン系単量体単位を10〜50重量%含有してなることを特徴とする請求項1記載の粉体塗料用樹脂。
  5. アクリル系樹脂のエポキシ当量が350〜1000g/eq.の範囲であることを特徴とする請求項1記載の粉体塗料用樹脂。
  6. テルピノレンを連鎖移動剤として、(メタ)アクリル酸メチル、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸グリシジルを必須成分として含む(メタ)アクリル系単量体を重合温度100℃以上、重合圧力2kg/cm2 以上の条件下で懸濁重合することを特徴とする請求項1記載の粉体塗料用樹脂の製造方法。
  7. テルピノレンの使用量が(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して0.1〜5重量部であることを特徴とする請求項6記載の粉体塗料用樹脂の製造方法。
  8. 重合開始剤としてアゾ系化合物を使用することを特徴とする請求項6記載の粉体塗料用樹脂の製造方法。
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