JP3647091B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は色相安定性、艶消し性及び耐熱性に優れたゴム強化スチレン系樹脂組成物及びその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム強化スチレン系樹脂は、優れた成形性、強度及び色相等外観性能により、家庭電気製品やOA機器のハウジングに使用されているが、自動車の内装部品及び玩具等用途においては艶消し調外観をもとめられることがある。艶消し調にするための手法として無機充填材を添加する方法が一般的におこなわれる。これら樹脂からなる成形品は、射出成形や真空成形によって成形され、その後セットメーカーに納入され最終製品として完成する。これら、成形品及び最終製品は梱包され販売までの間は、倉庫等にて保管されるがこの保管中に成形品の表面が部分的に黄色への色相変化を起こす不良現象即ち暗所黄変現象と云われる不良現象が発生する。この暗所黄変現象の発生挙動として、酸化チタンの光触媒作用による樹脂の酸化劣化によるもの(清野学,”酸化チタン”,175〜176頁,技報堂(1991))、或いは市販のゴム強化スチレン系樹脂中の酸化防止剤として通常500〜3000ppm添加されている2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノールに代表されるフェノール系酸化防止剤とNOXガスとのキノン化反応による着色化(K.C.Smertz,Textile Chemist and Colorist,15(4),17〜21(1983))によるもの等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
暗所黄変現象の対策としては、これらの現象が水分、酸素或いはNOX等塩基性ガスが必須条件であることからプラチックフィルム等の水分透過及びガス透過を遮断する梱包形態を採用することにより黄変を遅延させることができるが、梱包費用及び梱包作業量が増加する。
【0004】
更に、本対策は製品の保管状態では良好な結果が得られるが、その後の製品の使用時に黄変不良が発生することが予想され根本的な対策とはなり得ない。
また、前者の酸化チタンによる樹脂酸化劣化の根本的な対策としては、酸化チタンを予め脂肪酸金属塩等の滑剤にて表面処理を行うことが提案されているが、酸化チタン以外の無機充填剤への適用においては必ずしも有効ではなく、更に、多量の無機充填剤を含有する樹脂に対しては相対的に滑剤量が増加することで樹脂の耐熱性、塗装性等二次加工性が低下をきたし好ましくない。
【0005】
一方、後者のフェノール系酸化防止剤とNOXガスとのキノン反応による着色化については、キノン化構造をとりにくい酸化防止剤も提案されているが絶対的ではなく、またこの対策は前者には無効である。
このように従来の技術では満足できるものはなく、いずれの発生原因にも対応できる根本的な対策が求められていた。
【0006】
【問題を解決するための手段】
本発明者らは、この問題を克服すべく鋭意研究を重ねた結果、無機充填剤を含有するゴム強化スチレン系樹脂に関して、特有の構造を有する2級及び/又は3級アミンを配合することによって、暗所黄変性更には耐熱性に優れることを見出し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち、本発明は無機充填剤3重量%以上含むゴム強化スチレン系樹脂100重量部に対し下記一般式で示される2級及び/又は3級アミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を0.1〜3重量部含有してなることを特徴とする樹脂組成物である。
【化2】
Figure 0003647091
(但し、R1はH或いはC1〜C30のアルキル基又はアルケニル基、R2はC1〜C30のアルキル基又はアルケニル基でありR1、R2は同じであっても異なっていても良い。nの値は1〜20、mの値は1〜20。)
以下、本発明の内容を順を追って説明する。
本発明のゴム強化スチレン系樹脂としては、ゴム状重合体にスチレンをグラフト重合させた重合体を含む一般に耐衝撃性ポリスチレン(HI−PS)と呼ばれるゴム強化ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(MBS樹脂),アクリル酸エステル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合樹脂(AES樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合樹脂(AAS樹脂)、スチレン−ブタジエン系エラストマー等の何れかが50重量%以上、好ましくは80重量%以上含む樹脂を指し、この中ではゴム強化ポリスチレンに適用した場合に暗所黄変改良効果が大きく特に好ましい。
【0008】
次に、本発明の無機充填剤としては、実用プラスチック用語辞典(永井進監修,(株)プラスチックス・エージ発行,1989年)の表シ−4(293頁)の目的項に記載された目的で使用する無機物を指し、シリカ、タルク、酸化チタン、ガラス繊維及びベンガラ等があげられるが特にこれらに限定するものではない。
無機充填剤の含有量は、3重量%以上であり、好ましくは5重量%以上含有する樹脂にて暗所黄変改良の効果が顕著である。3重量%未満では樹脂組成物の成形品の艶消しの程度は低く好ましくない。
【0009】
また、本願発明に用いる2級及び/又は3級アミンから選ばれる少なくとも1種の化合物は下記化学構造式で表される。
【化3】
Figure 0003647091
(但し、R1はH或いはC1〜C30のアルキル基又はアルケニル基、R2はC1〜C30のアルキル基又はアルケニル基でありR1、R2は同じであっても異なっていても良い。nの値は1〜20、mの値は1〜20。)
【0010】
上記構造においてR1がHの時は2級アミンであり、R1がC1〜C30のアルキル基又はアルケニル基の時は3級アミンであるが、好ましくはR1がH或いはC8〜C18のアルキル基、特に好ましくはHである。またR2はC1〜C30のアルキル基又はアルケニル基であるが、好ましくはH或いはC8〜C28のアルキル基であることが好ましい。このようなR1及びR2に代表されるアルキル基、アルケニル基としては、具体的にはオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等の直鎖アルキル基、メチルヘプチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、メチルデシル基、メチルウンデシル基、メチルドデシル基、メチルトリデシル基、メチルテトラデシル基、メチルペンタデシル基、メチルヘキサデシル基、メチルヘプタデシル基、メチルオクタデシル基、メチルノナデシル基、メチルイコシル基、メチルヘンイコシル基等のメチル基を有する分岐アルキル基、エチルヘプチル基、エチルオクチル基、エチルノニル基、エチルデシル基、エチルウンデシル基、エチルドデシル基、エチルトリデシル基、エチルテトラデシル基、エチルペンタデシル基、エチルヘキサデシル基、エチルヘプタデシル基、エチルオクタデシル基、エチルノナデシル基、エチルイコシル基、エチルヘンイコシル基等のエチル基を有する分岐アルキル基、オクテン基、ノネン基、デセン基、オクタデセン基等のアルケニル基等である。特に好ましくはドデシル基、デシル基、ヘキサデシル基である。また、nは1〜20であるが好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。同様に、mは1〜20であるが好ましくは1〜5、特に好ましくはm=1である。また本発明に用いる上記構造を有す化合物は単独或いは混合物で用いても良い。更にこの含有量は、無機充填剤3重量%以上を含むゴム強化スチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜3重量部であるが、0.1重量部未満では暗所黄変改良効果が少なく、3重量部より多い場合は樹脂の耐熱性を低下させる為好ましくない。
【0011】
上記成分の配合方法は特に制約はなく、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の混練装置を用いて溶融混合することができる。
【0012】
この他、本発明の樹脂組成物には、滑剤、可塑剤、離型剤、染料、顔料、帯電防止剤、難燃剤等の添加剤を必要に応じて添加することもできる。
【0013】
【実施例】
次に実施例、比較例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、評価試験方法は下記の通りである。
(1)ビカット軟化点:JIS K7206により荷重5kgで測定した。
(2)暗所黄変テスト:容積20lのポリエチレン袋に樹脂プレートを重なり合わないように並べたのち、この袋内に1500cc乗用車の廃棄ガスを置換充填し密封した。これを、100ルックスの照明下に3週間放置した後、色差計にてYI値(黄色度)を測定し処理前の値との差(△YI)を求める。
(3)光沢(艶消しの指標):JIS K7105に準拠した。
【0014】
実施例1
タルク10重量%を含むゴム強化ポリスチレン(電気化学工業社製、デンカスチロール HI−R−5)100重量部に対して、N−(2−ヒドロキシドデシル)−モノエタノールアミン(n=m=1,R1=H,R2=デシル基)とN−(2−ヒドロキシテトラデシル)−モノエタノールアミン(n=m=1,R1=H,R2=ドデシル基)の混合物(混合比1:1)を0.1重量部をヘンシェルミキサーにて混合した後、40mm押出機にて溶融混練したペレット形状の樹脂組成物を得た。
つづいて、射出成形法にて120×120×3mmのプレートを成形し、ビカット軟化点、暗所黄変テスト及び光沢を評価した。結果を表−1に示す。
【0015】
比較例1
実施例1においてアミン化合物を添加しない以外は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示すが暗所黄変性が劣っていた。
【0016】
実施例2〜4
実施例1においてアミン化合物の量を変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0017】
比較例2
実施例1においてアミン化合物を4重量部とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示すが暗所黄変性は優れるが耐熱性が劣っていた。
【0018】
実施例5
実施例1においてアミン化合物をN−(2−ヒドロキシドデシル)−モノエタノールアミン(n=m=1,R1=H,R2=デシル基)とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0019】
実施例6
実施例1においてアミン化合物をN−(2−ヒドロキシテトラデシル)−モノエタノールアミン(n=m=1,R1=H,R2=ドデシル基)とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0020】
実施例7
実施例1においてアミン化合物をN−(2−ヒドロキシオクタデシル)−モノエタノールアミン(n=m=1,R1=H,R2=ヘキサデシル基)とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0021】
実施例8
タルク3重量%を含むゴム強化ポリスチレン(電気化学工業社製、デンカスチロール HI−R−5)100重量部に対して、実施例1で用いたアミン化合物2重量部をヘンシェルミキサーにて混合した後、40mm押出機にて溶融混練したペレット形状の樹脂組成物を得た。
つづいて、射出成形法にて120×120×3mmのプレートを成形し、ビカット軟化点及び暗所黄変テストを実施した。結果を表−2に示す。
【0022】
比較例3
実施例8においてアミン化合物を添加しない以外は実施例8と同様に行った。結果を表−2に示すが実施例8に比較し暗所黄変性が劣っていた。
【0023】
実施例9〜10
実施例8においてタルクの量を変えた以外は実施例8と同様に行った。結果を表−2に示す。
【0024】
比較例4
実施例9においてアミン化合物を添加しない以外は実施例9と同様に行った。結果を表−2に示すが実施例9に比較し暗所黄変性が劣っていた。
【0025】
比較例5
実施例10においてアミン化合物を添加しない以外は実施例10と同様に行った。結果を表−2に示すが実施例10に比較し暗所黄変性が劣っていた。
【0026】
比較例6、7
実施例8においてタルクを添加しない及び2重量部添加以外は実施例8と同様に行った。結果を表−2に示すが実施例8に比較して光沢が高く艶消し効果が認められなかった。
【0027】
実施例11
実施例8においてアミン化合物をN−(2−ヒドロキシドデシル)−モノエタノールアミン(n=m=1,R1=H,R2=デシル基)とした以外は実施例8と同様に行った。結果を表−3に示す。
【0028】
実施例12
実施例8においてアミン化合物をN−(2−ヒドロキシテトラデシル)−モノエタノールアミン(n=m=1,R1=H,R2=ドデシル基)とした以外は実施例8と同様に行った。結果を表−3に示す。
【0029】
実施例13
実施例8においてアミン化合物をN−(2−ヒドロキシオクタデシル)−モノエタノールアミン(n=m=1,R1=H,R2=ヘキサデシル基)とした以外は実施例8と同様に行った。結果を表−3に示す。
【0030】
実施例14
酸化チタン(石原産業社製CR−60)7重量%を含むABS樹脂(電気化学工業社製、デンカABS GR−2000)100重量部に対して実施例1で用いたアミン化合物0.1重量部用いヘンシェルミキサーにて混合した後、40mm押出機にて溶融混練したペレット形状の樹脂組成物を得た。
つづいて、射出成形法にて120×120×3mmのプレートを成形し、ビカット軟化点、暗所黄変テスト及び光沢を評価した。結果を表−4に示す。
【0031】
比較例8
実施例14においてアミン化合物を添加しない以外は実施例14と同様に行った。結果を表−4に示すが実施例14に比較し暗所黄変性が劣っていた。
【0032】
実施例15〜17
実施例14においてアミン化合物の量を変えた以外は実施例14と同様に行った。結果を表−4に示す。
【0033】
比較例9
実施例14においてアミン化合物を4重量部添加した以外は実施例14と同様に行った。結果を表−4に示すが耐熱性が劣っていた。
【0034】
実施例18
実施例14においてアミン化合物をN−(2−ヒドロキシドデシル)−モノエタノールアミン(n=m=1,R1=H,R2=デシル基)とした以外は実施例14と同様に行った。結果を表−4に示す。
【0035】
実施例19
実施例14においてアミン化合物をN−(2−ヒドロキシテトラデシル)−モノエタノールアミン(n=m=1,R1=H,R2=ドデシル基)とした以外は実施例14と同様に行った。結果を表−4に示す。
【0036】
実施例20
実施例14においてアミン化合物をN−(2−ヒドロキシオクタデシル)−モノエタノールアミン(n=m=1,R1=H,R2=ヘキサデシル基)とした以外は実施例14と同様に行った。結果を表−4に示す。
【0037】
比較例10
実施例1においてアミン化合物をN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデシルアミン(n=m=1,R1=ドデシル基,R2=H)とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表−5に示すが実施例1に比較して暗所黄変性が劣っていた。
【0038】
比較例11
実施例1においてアミン化合物をN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデシルアミン(n=m=1,R1=デシル基,R2=H)とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表−5に示すが実施例1に比較して暗所黄変性が劣っていた。
【0039】
比較例12〜14
実施例1においてアミン化合物を、比較例12では、m+n=15,R1=ドデシル基,R2=H、比較例13では、m+n=16,R1=ヘキサデシル基,R2=H、比較例14では、m+n=20,R1=オクタデシル基,R2=Hの構造を有する化合物を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表−5に示すが実施例1に比較して暗所黄変性が劣っていた。
【0040】
【表1】
Figure 0003647091
【0041】
【表2】
Figure 0003647091
【0042】
【表3】
Figure 0003647091
【0043】
【表4】
Figure 0003647091
【0044】
【表5】
Figure 0003647091
【0045】
【発明の効果】
本発明で得られる無機充填剤を含有するゴム強化スチレン系樹脂組成物及びその成形品は、特有の構造を有するアミン化合物を所定量配合することにより、アミン化合物の無添加系と比較して暗所黄変性が改良された色相安定性、艶消し性に優れ、且つ耐熱性にも優れたものである。

Claims (2)

  1. 無機充填剤3重量%以上含むゴム強化スチレン系樹脂100重量部に対し下記一般式で示される2級及び/又は3級アミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を0.1〜3重量部含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
    Figure 0003647091
    (但し、R1はH或いはC1〜C30のアルキル基又はアルケニル基、R2はC1〜C30のアルキル基又はアルケニル基でありR1、R2は同じであっても異なっていても良い。nの値は1〜20、mの値は1〜20。)
  2. ゴム強化スチレン系樹脂がゴム強化ポリスチレンである特許請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
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