JP3645665B2 - 全領域酸素センサの温度制御方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの排気ガス中に含まれる酸素の濃度を検出する全領域酸素センサの温度制御方法及び温度制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンに供給する混合気の空燃比を目標値に制御し、排気ガス中のCO、NOx 、HCを軽減するために、排気系に酸素センサを設け、空燃比と相関関係を持つ排気中の酸素濃度に応じて、燃料供給量をフィードバック制御することが知られている。このフィードバック制御に用いられる酸素センサとしては、特定の酸素濃度(特に理論空燃比雰囲気)で出力がステップ状に変化するλセンサと、リーン領域からリッチ領域まで連続的に出力が変化する全領域酸素センサとが主に用いられている。全領域酸素センサは、上述したように排気ガス中の酸素濃度を連続的に測定でき、フィードバック制御の速度及び精度を向上させ得るため、より高速な高精度制御が要求される際に用いられている。
【0003】
全領域酸素センサは、酸素イオン伝導性固体電解質体の2つのセルを間隔を介して対向配設し、一方のセルを間隔内の酸素を周囲にくみ出すもしくは周囲から酸素をくみ込むポンプセルとして用い、また、他方のセルを酸素基準室と間隔との酸素濃度差によって電圧を生じる起電力セルとして用い、起電力セルの出力が一定になるようにポンプセルを動作させ、その時に該ポンプセルに流す電流を、測定酸素濃度比例値として測定する。この全領域酸素センサの動作原理は、本出願人の出願に係る特開昭62−148849号中に詳述されている。
【0004】
この全領域酸素センサを動作させるためには、該ポンプセル及び起電力セルを所定温度以上に加熱し、酸素イオン伝導性固体電解質体の活性を高める必要がある。このため、全領域酸素センサには、加熱用のヒータがポンプセル及び起電力セルの近傍に取り付けられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
現在、排気ガス中のCO、NOx、HC等の有害ガス成分を更に低減することが求められている。この有害ガスの除去には、酸素センサにて排気ガス中の酸素濃度を更に正確に測定し、空燃比のフィードバック制御を高速で行う必要がある。ここで、酸素センサの精度を高めるためには、酸素センサの温度を一定に保つことが要求される。一定温度を実現するために、ヒータの抵抗値を測定することにより、温度を測定し、測定温度をセル温度とほぼ等しいと見なして、ヒータの温度を一定に保つ方法が取られている。
【0006】
しかしながら、この方法では、排気ガスの温度が低いときや、ガスの流速が高いときには、セル温度とヒータ温度が一致しなくなり、高精度でセル温度を制御することができなかった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、温度を正確に一定に保ち得る全領域酸素センサの温度制御方法及び装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1の全領域酸素センサの温度制御方法では、加熱用ヒータによって加熱される酸素イオン伝導性固体電解質体の両面に多孔質電極が設けられた2つのセルを、間隔を介して対向配設し、一方のセルを前記間隔内の酸素を周囲にくみ出すもしくは酸素をくみ込むポンプセル、他方のセルを酸素基準室と前記間隔との酸素濃度差によって電圧を生じる起電力セルとしてそれぞれ使用し、酸素濃度を測定する全領域酸素センサの、前記2つのセルの温度を、前記加熱用ヒータを用いて制御する全領域酸素センサの温度制御方法であって、
前記起電力セルに一定の値を有する抵抗値測定用の電流もしくは電圧を印加し、
前記起電力セルの抵抗値を、該抵抗値に前記多孔質電極と前記固体電解質体の界面における抵抗成分が含まれない様にするために、前記抵抗値測定用電流もしくは電圧の印加開始から所定時間経過時に測定し、
測定した前記起電力セルの抵抗値が一定値となるように、前記ヒータを制御し、
前記起電力セルの抵抗値を測定した後に、前記抵抗値測定用電流もしくは電圧の印加に引き続いて該電流もしくは電圧とは逆極性の、一定の電流もしくは電圧を所定時間印加することを特徴とすることを技術的特徴とする。
【0010】
上記の目的を達成するため、請求項2の全領域酸素センサの温度制御装置では、加熱用ヒータによって加熱される酸素イオン伝導性固体電解質体の両面に多孔質電極が設けられた2つのセルを、間隔を介して対向配設し、一方のセルを前記間隔内の酸素を周囲にくみ出すもしくは酸素をくみ込むポンプセル、他方のセルを酸素基準室と前記間隔との酸素濃度差によって電圧を生じる起電力セルとしてそれぞれ使用し、酸素濃度を測定する全領域酸素センサの、前記2つのセルの温度を、前記加熱用ヒータを用いて制御する全領域酸素センサの温度制御装置であって、
前記起電力セルに一定の値を有する抵抗値測定用の電流もしくは電圧を印加する第1の電流もしくは電圧印加手段と、
前記起電力セルの抵抗値を、該抵抗値に前記多孔質電極と前記固体電解質体の界面における抵抗成分が含まれない様にするために、前記抵抗値測定用電流もしくは電圧の印加開始から所定時間経過時に測定を行う抵抗値測定手段と、
前記起電力セルの抵抗値を測定した後、前記抵抗値測定用電流もしくは電圧の印加に引き続いて該電流もしくは電圧とは逆極性の一定の値を有する電流もしくは電圧を所定時間印加する第2の電流もしくは電圧印加手段と、
測定した前記起電力セルの抵抗値が一定値となるように、前記ヒータを制御する温度制御手段と、から成ることを特徴とする。
【0011】
上記の目的を達成するため、請求項3の全領域酸素センサでは請求項2の温度制御装置を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明では、ポンプセルにより一定雰囲気に保持されている間隔と一定酸素濃度である酸素基準室とに挟まれた起電力セルに電圧又は電流を印加して抵抗値を測定するため、全領域酸素センサの測定雰囲気中の酸素濃度とは無関係に、抵抗値を正確に測定することができる。また、該起電力セルの抵抗値を、該抵抗値に前記多孔質電極と前記固体電解質体の界面における抵抗成分が含まれない様に、電圧及び電流の印加を開始した時点から所定タイミングにて測定するため、低周波の電流又は電圧によって測定した際に含まれる起電力セルの多孔質電極と固体電解質体の界面の劣化等による該界面における抵抗成分の変化分を含まず、起電力セルの固体電解質体のバルク抵抗成分が正確に測定できる。従ってセルの温度を正確に反映した抵抗値を得ることができる。
【0013】
請求項1の発明では、起電力セルに電圧を印加する際に、前記抵抗測定用の電圧又は電流の印加に引き続いて該電流又は電圧に対して逆極性の一定の値を有する電圧又は電流を印加するため、大きな電流を流した場合に生じる酸素イオン伝導性固体電解質体の配向現象によって内部起電力が影響を受け本来の酸素濃度差を反映する内部起電力値を出力しない状態から復帰するまでの復帰時間を短縮でき、抵抗値の測定後に短時間で酸素濃度の測定を再開することが可能となる。
【0014】
請求項3の発明では、ポンプセルにより一定雰囲気に保たれた間隔と一定酸素濃度である酸素基準室とに挟まれた起電力セルに電圧又は電流を印加して抵抗値を測定するため、測定雰囲気中の酸素濃度とは無関係に、抵抗値を正確に測定することができる。また、該起電力セルの抵抗値を、該抵抗値に前記多孔質電極と前記固体電解質体の界面における抵抗成分が含まれない様に測定するため、低周波の電流もしくは電圧によって測定した際に含まれる起電力セルの多孔質電極と固体電解質体との界面の劣化等による該界面における抵抗成分の変化分を含まず、起電力セルの固体電解質体のバルク抵抗成分が正確に測定できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施態様について図を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る全領域酸素センサを示している。セル10は排気ガス系に配設される。該セル10は、排気ガス中の酸素濃度を測定すると共に該セル10の温度を測定するコントローラ50に接続されている。このセル10には、ヒータ制御回路60にて制御されるヒータ70が、図示しないセラミック製接合剤を介して取り付けられている。ヒータ70は、絶縁材料としてアルミナ等のセラミックから成りその内部にヒータ配線72が配設されている。ヒータ制御回路60は、コントローラ50により測定されるセル10の抵抗値を、目標値に保つようヒータ70へ電力を印加し、該セル10の温度を設定値に維持する。
【0016】
セル10は、ポンプセル14と、多孔質拡散層18と、起電力セル24と、補強板30とを積層することにより構成されている。ポンプセル14は、酸素イオン伝導性固体電解質材料である安定化または部分安定化ジルコニア(ZrO2 ) により形成され、その表面と裏面のそれぞれに主として白金で形成された多孔質電極12、16を有している。測定ガスに晒される表面側の多孔質電極12は、Ip+電流を流すためにIp+電圧が印加されるためIp+電極として参照する。また、裏面側の多孔質電極16は、Ip電流を流すためにIp−電圧が印加されるためIp−電極として参照する。
【0017】
起電力セル24も同様に安定化または部分安定化ジルコニア(ZrO2 )により形成され、その表面と裏面のそれぞれに主として白金で形成された多孔質電極22、28を有している。拡散室20側に配設された多孔質電極22は、起電力セル24の起電力VsのVs−電圧が生じるためVs−電極として参照し、また、基準酸素室26側に配設された多孔質電極28は、Vs+電圧が生じるためVs+電極として参照する。なお、基準酸素室26の基準酸素は多孔質電極22から一定酸素を多孔質電極28にポンピングする事により生成する。ポンプセル14と起電力セル24との間には、多孔質拡散層18により包囲された拡散室20が形成されている。即ち、該拡散室20は、多孔質拡散層18を介して測定ガス雰囲気と連通されている。なお、本実施態様では、多孔質物質を充填して成る多孔質拡散層18を用いるが、この代わりに小孔を配設することも可能である。
【0018】
ここで、測定ガスの酸素濃度と拡散室20の酸素濃度との差に応じた酸素が、拡散室20側に多孔質拡散層18を介して拡散して行く。ここで、拡散室20内の雰囲気が理論空燃比に保たれるとき、ほぼ酸素濃度が一定に保たれている基準酸素室26との間で、起電力セル24のVs+電極28とVs−電極22との間には、約0.45vの電位が発生する。このため、コントローラ50は、ポンプセル14に流す電流Ipを、上記起電力セル電位24の起電力Vsが0.45vとなるように調整することで、拡散室20内の雰囲気を理論空燃比に保ち、この理論空燃比に保つためのポンプセル電流量Ipに基づき、測定ガス中の酸素濃度を測定する。
【0019】
引き続き、コントローラ50の構成を示す図2を参照して制御動作について述べる。
コントローラ50は、セル10により酸素濃度を測定する動作と、セル10の起電力セル24のバルク抵抗を測定することで温度を測定する動作とを行っている。ここでは、まず、酸素濃度測定について説明する。
【0020】
オペアンプOP2は、一方の入力端子に+4Vが印加され、他方の入力端子はVCENT点に接続されており、出力端子にて、ポンプセル14を介して流れるIp電流が変化しても、VCENT点に於いて4Vに保っように動作する。PID制御を行うPID回路は起電力セル24の起電力Vsを検出し、抵抗R1を介して流すIp電流によってVsを一定(0.45V)に保つようにポンプセル14の電流Ipを決定する動作を行う。このように、PID回路にて起電力セル24の起電力が0.45Vに保持された状態で、ポンプセル14に流される電流Ipの量に比例する電圧がPID回路の出力端に現れ、この電圧を酸素濃度検出回路52で、図示しないA/D回路にてデェジタル値に変換した後、保持しているマップから対応する酸素濃度値を検索し、この値を図示しないエンジン制御装置側へ出力する。
【0021】
引き続き、コントローラ50の起電力セル24の温度(抵抗)測定動作について説明する。オペアンプOP1は、コンデンサC1と共にサンプルホールド回路を形成し、起電力セル24の温度測定のための電圧印加中において電圧印加直前の、該起電力セル24の起電力Vsを保ちPID回路に入力する役割を果たす。オペアンプOP3は、オペアンプOP1に保持されているホールド値(抵抗値測定用電圧印加直前の起電力セル24の起電力Vs)と、起電力セル24に抵抗値測定用の電流−Iconst を印加した際の電位値との差分をA/D回路へ出力する。
【0022】
スイッチSW1は、オペアンプOP1、即ち、サンプルホールド回路電圧ホールド動作を制御する。また、スイッチSW2は、起電力セル24の抵抗値測定用の一定電流−Iconst をオン・オフし、スイッチSW3は、スイッチSW2にて流される抵抗値測定用の電流−Iconstとは逆極性の一定電流+Iconst をオン・オフする。
【0023】
スイッチSW1、SW2、SW3のタイミングチャートと共に起電力セル24の起電力Vsを図3に示す。スイッチSW1は、上述したように所定のインターバルT5毎に設定された時間T6(約500μs)に渡りオフし、起電力セル24の抵抗測定を可能ならしめる。なお、このオフ時間T6においては、オペアンプOP1から成るサンプルホールド回路にて、PID回路への入力値は0.45Vに維持される。
【0024】
スイッチSW1がオフされてから時間T1が経過した後、スイッチSW2が時間T3(約100μs)に渡りオンし、抵抗値測定用の一定電流−Iconst が起電力セル24側に流される。この電流−Iconst の極性は、起電力セル24に生じる内部起電力と逆極性であって、この電流−Iconst によって起電力セル24の両端の電圧が、図中に示すようにΔVs分低下する。
【0025】
ここで、電流−Iconst の印加を開始した後、時間T2(約60μs)が経過してから、当該時点(印加開始から60μs経過時)でのオペアンプOP3の出力を、A/D変換回路がアナログ値からデェジタル値に変換してヒータ制御回路側60へ出力する。ヒータ制御回路60は、この測定された値、即ち、起電力セル24のバルク抵抗値と相関する値が目標値となるようにヒータ70への通電を制御する。この制御は実質的に、起電力セル24のバルク抵抗値が目標値よりも高いときには、電圧を高め、また、目標値よりも低いときには、電圧を下げることにより、酸素センサ素子10の温度を正確に目標温度(800°C)に保つよう機能する。
【0026】
なお、ここで、電流−Iconst の印加開始から60μs経過時の値を測定するのは、測定された抵抗値に前記多孔質電極と前記固体電解質体の界面における抵抗成分が含まれないようにするためである。これは、低周波の電流や電圧によって測定を行うと起電力セル24の多孔質電極22、28と固体電解質体との界面の劣化等による該界面における抵抗成分の変化分を含む値が検出されるため、この変化分によって正確に測定が行い得なくなるからである。逆に言えばこの測定の時間を変化させることにより劣化を含めた抵抗を測定し、劣化検出に用いることが可能となる。
【0027】
そして、時間T3の経過により、スイッチSW2をオフすると同時に、スイッチSW3をオンし、スイッチSW2をオンした時間とほぼ等しい時間T3に渡り、抵抗値測定用の上記電流−Iconst とは逆極性の一定電流+Iconst を起電力セル24側に印加する。これは、起電力セル24を構成する酸素イオン伝導性固体電解質体の配向現象によって内部起電力が影響を受け本来の酸素濃度差を反映する内部起電力値を出力しない状態から、正常な状態に復帰するまでの復帰時間を短縮させ、抵抗値の測定後に酸素濃度の測定を短時間で再開し得るようにするためである。
【0028】
この酸素イオン伝導性固体電解質体の配向現象と考えられる正規の起電力までの復帰時間について、図4を参照して説明する。図4(A)は、抵抗値測定用の上記電流−Iconst に相当する4.88mAの電流をパルス状に起電力セル24へ印加し、その後該電流を止めた場合の起電力セルの起電力Vsの変化を示し、図4(B)は、上記電流−Iconst に相当する4.88mAの電流をパルス状に印加した後、該電流の−Iconst と逆極性の電流+Iconst をパルス状に起電力セル24へ印加した場合、即ち、交番状に印加した場合の起電力セルの起電力Vsの変化を示している。図4(A)に示すように4.88mAの電流をパルス状に1回加えただけの場合には、復帰までに16msec必要となった。これに対して、図4(B)に示すように電流を交番状に加えた場合は、0.5msecで復帰することができた。この様に、本実施態様では、電流を交番状に加えることで起電力セル24を用いる酸素濃度の測定を短時間で再開し得るようにしいてる。
【0029】
この一定電流+Iconst の印加のための時間T3の経過後、スイッチSW3がオフとなった後、時間T4が経過したタイミングで、スイッチSW1がオンし、起電力セル24の起電力Vsが再び、オペアンプOP1を介してPID回路に加えられ、酸素濃度の測定が再開される。そして、インターバルT5の経過後スイッチSW1がオフし、再び起電力セル24の抵抗値を測定する。
【0030】
本実施態様では、ポンプセル14ではなく起電力セル24の抵抗値を測定することでセル10の温度を測定している。この作用について図5のグラフを参照して説明する。図5(A)は、起電力セル24側に交流電流を印加して抵抗値を測定した際のグラフであり、図5(B)は、ポンプセル14側に交流電流を印加して抵抗値を測定した際のグラフである。図中で縦軸には測定された抵抗値を、また、横軸にはセル10温度に相当するヒータ電圧を取っている。ここで、○は、A/F23(リーン状態)雰囲気中にて20Hz(低周波)で測定した際の値を、●は、A/F23(リーン状態)雰囲気中にて1KHz(高周波)で測定した際の値を、Δは、理論空燃比の雰囲気中にて20Hz(低周波)で測定した際の値を、■は、理論空燃比の雰囲気中にて1KHz(高周波)で測定した際の値を示している。
【0031】
本実施態様に相当する図5(A)のグラフでは、理論空燃比の雰囲気中で測定された抵抗値と、リーン雰囲気中で測定された抵抗値とがほぼ等しく、酸素基準室によらず正確に抵抗値が測定できることが分かる。これに対して、図5(B)のグラフでは、理論空燃比の雰囲気中で測定された抵抗値と、リーン雰囲気中で測定された抵抗値とが異なり、酸素基準室により抵抗値が正確に測定できないことが分かる。これは、起電力セル24(図1参照)に電流を印加した際に、該起電力セル24は、理論空燃比の雰囲気に固定されている拡散室20と、一定酸素濃度である酸素基準室26とに挟まれているので該起電力セルの両側の酸素濃度は常に一定である。これに対して、ポンプセル14は、酸素濃度の変化している測定ガスと、理論空燃比の雰囲気に固定されている拡散室20とに挟まれ、ポンプセルの両側の酸素濃度差は測定ガス中の酸素濃度によって常に変動するからである。
【0032】
【効果】
以上記述したように請求項1及び3の全領域酸素センサの温度制御方法及び装置では、理論空燃比の雰囲気である間隔と一定酸素濃度である酸素基準室とに挟まれた起電力セルに電圧又は電流を印加して抵抗値を測定するため、測定雰囲気中の酸素濃度とは無関係に、抵抗値を正確に測定することができる。また、該起電力セルの抵抗値を、多孔質電極と固体電解質体の界面の抵抗成分が含まれないように測定するため、低周波の電流や電圧によって測定した場合に含まれる起電力セルの多孔質電極と固体電解質体の界面の劣化等による抵抗の変化分によ影響を受けず、正確にセンサ素子の温度を測定できる。
【0033】
請求項1又は2の発明では、起電力セルに抵抗測定用の電圧もしくは電流を印加する際に、前記抵抗測定用の電圧もしくは電流の印加に引き続いて該抵抗測定用の電圧もしくは電流とは逆極性の電圧もしくは電流を印加するため、酸素イオン伝導性固体電解質体の配向現象によって内部起電力が影響を受け本来の酸素濃度差を反映する内部起電力値を出力しない状態から、正常な状態に復帰するまでの復帰時間を短縮でき、抵抗値の測定後に短時間で酸素濃度の測定を再開することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る全領域酸素センサ構成を示す説明図である。
【図2】図1に示すコントローラの回路図である。
【図3】スイッチSW1、SW2、SW3のタイミングチャートである。
【図4】図4(A)は、抵抗値測定用電流をパルス状に一回起電力セルへ印加した際の起電力セル起電力Vsを示し、図4(B)は、電流を交番状に印加した際の起電力セル起電力Vsを示している。
【図5】図5(A)は、起電力セルに交流電流を印加して抵抗値を測定したグラフであり、図5(B)は、ポンプセルに交流電流を印加して抵抗値を測定したグラフである。
【符号の説明】
10 セル
14 ポンプセル
20 拡散室
24 起電力セル
50 コントローラ
60 ヒータ制御回路
70 ヒータ
Vs 起電力セル電圧
Ip ポンプセル電流
Claims (3)
- 加熱用ヒータによって加熱される酸素イオン伝導性固体電解質体の両面に多孔質電極が設けられた2つのセルを、間隔を介して対向配設し、一方のセルを前記間隔内の酸素を周囲にくみ出すもしくは酸素をくみ込むポンプセル、他方のセルを酸素基準室と前記間隔との酸素濃度差によって電圧を生じる起電力セルとしてそれぞれ使用し、酸素濃度を測定する全領域酸素センサの、前記2つのセルの温度を、前記加熱用ヒータを用いて制御する全領域酸素センサの温度制御方法であって、
前記起電力セルに一定の値を有する抵抗値測定用の電流もしくは電圧を印加し、
前記起電力セルの抵抗値を、該抵抗値に前記多孔質電極と前記固体電解質体の界面における抵抗成分が含まれない様にするために、前記抵抗値測定用電流もしくは電圧の印加開始から所定時間経過時に測定し、
測定した前記起電力セルの抵抗値が一定値となるように、前記ヒータを制御し、
前記起電力セルの抵抗値を測定した後に、前記抵抗値測定用電流もしくは電圧の印加に引き続いて該電流もしくは電圧とは逆極性の、一定の値を有する電流もしくは電圧を所定時間印加することを特徴とする全領域酸素センサの温度制御方法。 - 加熱用ヒータによって加熱される酸素イオン伝導性固体電解質体の両面に多孔質電極が設けられた2つのセルを、間隔を介して対向配設し、一方のセルを前記間隔内の酸素を周囲にくみ出すもしくは酸素をくみ込むポンプセル、他方のセルを酸素基準室と前記間隔との酸素濃度差によって電圧を生じる起電力セルとしてそれぞれ使用し、酸素濃度を測定する全領域酸素センサの、前記2つのセルの温度を、前記加熱用ヒータを用いて制御する全領域酸素センサの温度制御装置であって、
前記起電力セルに一定の値を有する抵抗値測定用の電流もしくは電圧を印加する第1の電流もしくは電圧印加手段と、
前記起電力セルの抵抗値を、該抵抗値に前記多孔質電極と前記固体電解質体の界面における抵抗成分が含まれない様にするために、前記抵抗値測定用電流もしくは電圧の印加開始から所定時間経過時に測定を行う抵抗値測定手段と、
前記起電力セルの抵抗値を測定した後、前記抵抗値測定用電流もしくは電圧の印加に引き続いて該電流もしくは電圧とは逆極性の一定の値を有する電流もしくは電圧を所定時間印加する第2の電流もしくは電圧印加手段と、
測定した前記起電力セルの抵抗値が一定値となるように、前記ヒータを制御する温度制御手段と、から成ることを特徴とする全領域酸素センサの温度制御装置。 - 請求項2の温度制御装置を備えた全領域酸素センサ。
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