JP3644782B2 - エポキシ樹脂水分散物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂水分散物、詳しくは、特定のポリエーテル化合物を乳化剤として使用してなり、保存安定性に優れ、塗料、接着剤、繊維処理剤として有効に用いることのできるエポキシ樹脂水分散物に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
エポキシ樹脂は、各種基材に対する接着性、耐熱性、耐食性、耐薬品性、電気特性、機械特性に優れるため、塗料、接着剤、繊維処理剤等の広範な用途に用いられている。
【0003】
エポキシ樹脂を上述の用途に使用する場合には、取扱いを容易にするためにエポキシ樹脂を、各種の低沸点溶媒に溶解した溶剤タイプのものが一般的であったが、火災の危険性、人体への有害性、地球環境への悪影響等の問題から、低沸点溶媒の使用が制限される様になり、近年、エポキシ樹脂に乳化剤を使用して水中に分散させたエポキシ樹脂水分散物が開発され実用化されている。
【0004】
このとき使用される乳化剤としては、ノニルフェノールのポリエチレンオキサイド付加物、オクチルフェノールのポリエチレンオキサイド付加物あるいはポリプロピレングリコールのポリエチレンオキシド付加物などのノニオン系界面活性剤が知られているが、これらの乳化剤を使用した場合においては、エマルジョンとしての安定性が十分満足できるものではなかった。
【0005】
また、ポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂にガラス繊維をブレンドして得られるガラス繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)が強度、剛性に優れることから伸長が目ざましいが、そのガラス繊維の集束剤としてエポキシ樹脂水分散物が使用された場合、成型時にかなりの高温に曝されて着色するという問題がある。
【0006】
水分散物の保存安定性の問題に関しては種々の検討がなされており、例えば、特開昭50−131878号公報には、ポリエーテルウレタンを乳化分散剤として使用する方法が記載され、特開昭54−15956号公報にはアルキルフェノールのポリエチレンオキシド付加物および/またはソルビタン脂肪酸エステルのポリエチレンオキシド付加物とグリセロールボレートのポリエチレンオキシド付加物を含有してなるエポキシ樹脂乳剤の製造方法が記載され、特開昭58−111831号公報には、ポリアルキレングリコールと多価フェノールのポリグリシジルエーテルの縮合生成物を水性エポキシ樹脂用の分散剤として使用することが記載され、特開平3−157445号公報には、分子量7000以上の高分子型乳化剤、分子量7000以下でHLB17以上のノニオン性乳化剤またはアニオン性乳化剤および分子量7000以下でHLB14〜17のノニオン性乳化剤の混合乳化剤をエポキシ樹脂エマルジョンに使用することが記載されているが、これらに記載されているエポキシ樹脂エマルジョンを製造するための乳化剤を使用した場合には未だ水分散物の保存安定性は不十分である。
【0007】
また、特開昭54−77633号公報には、水酸基含有多価カルボン酸樹脂、水溶性アミノ樹脂および(水添)ビスフェノールAのポリエチレンオキシド付加物からなる熱硬化型水性ハイブリット塗料の塗装方法が提案されており、特開平7−188606号公報には、酸価10〜100かつ水酸基価1〜20のアクリル樹脂、ビスフェノールAのポリアルキレンオキシド付加物およびアミノ樹脂からなる水性塗料組成物が提案されているが、これらの公報に記載されたポリエーテル化合物は、いずれも樹脂成分中に組み込むことを目的とするものであり、エポキシ樹脂水分散物の乳化剤として用いることは示唆されていない。
【0008】
さらに、特開平7−277778号公報には、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物および帯電防止剤を含有してなるガラス繊維集束剤が提案されているが、ここで使用されるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物はガラス繊維に潤滑性を付与するために配合されるものであり、これをエポキシ樹脂水分散物の乳化剤としての使用することを示唆する記載もなく、実際にここで使用されるビスフェノールAのエチレンオキシド2〜40モル付加物を乳化剤として用いた場合には分散性、保存安定性が全く不十分である。
【0009】
従って、本発明の目的は、保存安定性に優れ、硬化物の熱による着色がなく、塗料、接着剤、繊維処理剤として用いることのできるエポキシ樹脂水分散物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ビスフェノール化合物のポリアルキレンオキシド付加物あるいは該付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなる特定のポリエーテル化合物を乳化剤として使用したエポキシ樹脂水分散物が、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0011】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、エポキシ樹脂100重量部に、下記〔化3〕(前記〔化1〕と同じ)の一般式(I)で表されるビスフェノール化合物のアルキレンオキシド80〜800モル付加物あるいは該付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなるビスフェノール系ポリエーテル化合物の少なくとも一種0.01〜30重量部および水20〜700重量部を配合してなるエポキシ樹脂水分散物を提供するものである。
【0012】
【化3】
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエポキシ樹脂水分散物について詳細に説明する。
本発明に使用される上記一般式(I)で表されるビスフェノール化合物のアルキレンオキシド80〜800モル付加物あるいは該付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなるビスフェノール系ポリエーテル化合物は、乳化剤として用いられ、本発明の効果である保存安定性等の向上に寄与するものである。
【0014】
上記一般式(I)中、R1およびR2で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどがあげられる。該R1およびR2としては、特に水素原子あるいはメチル基が好ましい。
【0015】
上記のビスフェノール化合物のアルキレンオキシド80〜800モル付加物(以下、単に「付加物」ということもある)に使用できるアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド、ヘプチレンオキシド、オクチレンオキシド、ノニレンオキシド、デシレンオキシドなどがあげられ、特にエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが好ましい。
【0016】
ここで、上記付加物として、特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドが共付加されたものは、分散性、保存安定性び優れ、しかも熱着色性にも優れるため好ましい。
【0017】
上記付加物は、アルキレンオキシドの80〜800モル付加物(好ましくは100〜400モル付加物)であり、特に、HLB値が16〜19の範囲であるものを用いることで、水との親和性が良好で、分散性および保存安定性に優れた水分散物となるため好ましい。ここでHLB値とは、HLB=(エチレンオキシド付加重量)×0.2×100/(総重量)により得られる値である。
【0018】
上記付加物は、前記一般式(I)で表されるビスフェノール化合物に、アルキレンオキシドを常法により付加することで容易に得られるが、その方法に関しては特に限定されるものではない。
【0019】
また、本発明に使用される上記ビスフェノール系ポリエーテル化合物としては、上述したように、上記付加物を更にポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物(ウレタン結合を有するポリエーテル化合物)も使用できる。
【0020】
また、上記縮合物は、その平均分子量が50000以下、特に20000〜35000のものが好ましい。該平均分子量が50000を越えるものを使用すると分散安定性が低下するおそれがある。また、HLB値が16〜19である該化合物を使用することが前記付加物の場合と同様の理由によって好ましい。
【0021】
ここで使用される上記ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環式および芳香族二価イソシアネート等があげられ、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートエステル、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等があげられる。
【0022】
また、前記付加物を上記ポリイソシアネート化合物で縮合する際に、少量の他のポリオール類又はモノオール類等を用いて得られた縮合物も、本発明において使用することができる。
【0023】
上記縮合物(ウレタン結合を有するポリエーテル化合物)を得る方法としては、通常のポリオール類とポリイシアネート類とからウレタン化合物を得るために用いられる方法がそのまま適用できるが、その方法に関しては特に限定されるものではない。
【0024】
上記ビスフェノール系ポリエーテル化合物の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対し、0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部である。該配合量が0.01重量部未満では乳化剤としての機能を十分に発揮することができず、30重量部よりも多いときには塗料に用いた場合の塗膜性能が低下する。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂水分散物には、更に別の乳化剤として、脂肪族一価もしくは多価アルコールまたはアルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物あるいは該付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなるアルコール系またはフェノール系ポリエーテル化合物の少なくとも一種を併用することができ、該アルコール系またはフェノール系ポリエーテル化合物の併用により、さらに分散安定性および熱着色性が向上するため好ましい。
【0026】
ここで、上記脂肪族一価アルコールとしては、例えは、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどがあげられ、また上記脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレンゴリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ソルビタン、ヒマシ油などがあげられ、また上記アルキルフェノールとしては、例えば、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどがあげられる。
【0027】
上記アルコール系またはフェノール系ポリエーテル化合物の中でも、とりわけポリプロピレングリコールのエチレンオキシド付加物あるいは該付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなるポリエーテル化合物を用いることが、特に優れた併用効果を示すため好ましい。
【0028】
上記アルコール系またはフェノール系ポリエーテル化合物の配合量は、好ましくは0.01〜30重量部である。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂水分散物には、更に、必要に応じて他の乳化剤を併用することができる。これらの他の乳化剤としては、例えば、脂肪酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、液体脂肪油の硫酸エステル塩、脂肪族アミンおよび脂肪族アマイドの硫酸塩、脂肪族アルコールのリン酸エステル、二塩基酸性脂肪酸エステルのスルホン酸塩、脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸、ホルマリン縮合ナフタリンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤、第一アミン塩、第二アミン塩、第三アミン塩、第四級アミン塩、ピリジニウム塩などのカチオン系界面活性剤、ベタイン型、硫酸エステル型、スルホン酸型などの両性界面活性剤、前記以外のノニオン系界面活性剤などがあげられる。
【0030】
本発明に使用されるエポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノールなどの単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルソクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノ−ルA)、イソプロピリデンビス(オルソクレゾール)、テトラブロムビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、レゾルシンノボラックなどの多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物などの多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類およびグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物等があげられる。
【0031】
上記エポキシ樹脂の中でも、特に、単核多価フェノールまたは多核多価フェノールのポリグリシジルエーテルおよび脂肪族ポリグリシジルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種のポリグリシジルエーテル化合物を用いた場合、とりわけ、下記〔化4〕(前記〔化2〕と同じ)の一般式(II)で表されるエポキシ樹脂(アルキリデンビスフェノールのポリグリシジルエーテル)を用いた場合に、耐食性、基材への密着性などに優れるエポキシ樹脂水分散物が得られるので好ましい。
【0032】
【化4】
【0033】
また、上記エポキシ樹脂として、エポキシ樹脂のリン酸、ウレタン、タンニン酸などの各種変性品を使用することもできる。
【0034】
また、本発明のエポキシ樹脂水分散物には、エポキシ樹脂100重量部に対し、水が20〜700重量部、好ましくは50〜300重量部配合される。水の配合量が20重量部よりも少ない時には粘度が高く取扱いが困難になり、700重量部よりも多い場合には塗料に用いた場合の塗膜の硬化性が低下し、このため塗膜の物性も低下する。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂水分散物を製造する方法は、例えば、上記ビスフェノール系ポリエーテル化合物をエポキシ樹脂または水の何方か一方あるいは両方に予め配合してこれを攪拌する方法、あるいは撹拌時に一括して行なう方法など種々の方法が用いられるが、その方法は特に限定されるものではない。
【0036】
ここで、上記撹拌に使用される攪拌機としては、例えば、ディスパー、ホモミキサー、回転型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどがあげられる。
【0037】
また、本発明のエポキシ樹脂水分散物には、通常、エポキシ樹脂用の硬化剤を使用することができ、該硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等の鎖状脂肪族アミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキオサスピロ(5.5)ウンデカン、m−キシレンジアミン等の環状脂肪族アミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルフェニルメタン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族ポリアミンなどのポリアミン硬化剤、これらポリアミン類とダイマー酸などのジカルボン酸とを常法によって反応させて得られるポリアミドポリアミン硬化剤、または、これらポリアミン類にエポキシ樹脂を付加させたエポキシ付加変性ポリアミン硬化剤あるいはアクリロニトリル等を付加させたミカエル付加変性ポリアミン硬化剤などがあげられ、さらに、ジシアンジアミド、酸無水物、イミダゾール類などの潜在性硬化剤も使用できる。
【0038】
また、本発明のエポキシ樹脂水分散物には、エポキシ樹脂を溶解して分散性を向上させるために溶剤を使用することができ、該溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチル、2−エトキシエチルアセテート等のエステル系;ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテル系;ベンゼン、キシレン、トルエン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系;ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素系;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テルペン類などの溶剤が使用でき、これらの溶剤は、単独で用いることも、また任意に2種以上の混合溶剤として用いることも可能である。
【0039】
また、本発明のエポキシ樹脂水分散物には、ガラス繊維、セルロース、ケイ砂、セメント、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、ベントナイト、タルク、シリカ、微粉末シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、歴青物質等の充填剤;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤;顔料、潤滑剤、帯電防止剤、増粘剤、チキソトロピック剤、分散剤、難燃剤、消泡剤、反応性または非反応性の希釈剤などの常用の添加剤、さらにキシレン樹脂、石油樹脂等の併用剤を使用することもできる。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂水分散物の組成は、エポキシ樹脂100重量部、前記ビスフェノール系ポリエーテル化合物0.01〜30重量部(好ましくは0.1〜20重量部)および水20〜700重量部(好ましくは50〜300重量部)を含む組成である。
また、本発明のエポキシ樹脂水分散物の望ましい組成は、エポキシ樹脂100重量部、前記ビスフェノール系ポリエーテル化合物0.01〜30重量部(好ましくは0.1〜20重量部)、前記アルコール系またはフェノール系ポリエーテル化合物0.01〜30重量部および水20〜700重量部(好ましくは50〜300重量部)を含む組成である。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂水分散物は、例えば、コンクリート、セメントモルタル、各種金属、皮革、ガラス等に対する塗料あるいは接着剤;包装用粘着テープ、粘着ラベル、冷凍食品ラベル、リームバブルラベル、POSラベル、粘着壁紙、粘着床剤の粘着剤;アート紙、コート紙、軽量コート紙、キャストコート紙、塗工板紙、カーボンレス複写機、含浸紙等の加工紙;天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の集束剤、ほつれ防止剤、加工剤等の繊維処理剤;シーリング材、セメント混和剤、防水材等の建築材料などの広範な用途に使用することができる。
【0042】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の例において、エポキシ当量とはエポキシ基1個当たりのエポキシ樹脂の分子量で定義される。
【0043】
実施例1
(エポキシ樹脂水分散物の作成)
アデカレジンEP−4100(旭電化工業株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)100重量部および乳化剤(下記〔表1〕参照、数値は重量部を表す)を配合して60℃まで加温し、該乳化剤が上記エポキシ樹脂中に充分均一に分散するまで撹拌した。そして、室温に冷却し、これに水25重量部に加え、直ちにモーターにより撹拌した。約5分間撹拌し粘度が急激に上昇した後、85重量部の水を10分おきに4回に分けて添加してエポキシ樹脂水分散物を作成した。得られたエポキシ樹脂水分散物を用いて以下の試験を行なった。それらの結果を下記〔表1〕に示す。
【0044】
(保存安定性)
水分散物を試験管中に深さ30cmとなるように入れ、40℃で30日、60日および90日間放置した後、樹脂相と水相との分離状態を下記基準により4段階で評価した。
【0045】
1 : 分離が全く見られない。
2 : 僅かに分離が見られる。
3 : 分離が見られる。
4 : 完全に分離している。
【0046】
(平均粒子径)
レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。(単位μm)
【0047】
(被膜着色性)
水分散物をシャーレに1mmの厚さで流し込み、これを280℃で10分加熱処理したもの着色状態を観察した。評価基準は下記の4段階で行なった。
【0048】
1 : 変色が全く見られない
2 : 僅かに変色が見られる。
3 : かなり変色している。
4 : 完全に変色している。
【0049】
【表1】
【0050】
【化5】
【0051】
*2:乳化剤6:乳化剤1とトリレンジイソシアネートとの2:1の縮合物
HLB=16.9
【0052】
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
実施例2
実施例1のアデカレジンEP−4100をアデカレジンEP−5100(旭電化工業株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量475)に変えた以外は実施例1と同様な試験を行なった。それらの結果を下記〔表2〕に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例3
実施例2−4〜実施例2−7および比較例2−3で製造した水分散物100重量部にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン7重量部、カチオン性脂肪酸アミド2重量部を加えて十分に分散させたものを集束剤とした。これを直径10μのガラス繊維に対し、強熱減量が0.3重量%となるように調整して塗布し、それらを1600本結束させて巻き取った後、130℃で10時間加熱した後13mmに切断した。
尚、実施例2−4、2−5、2−6、2−7および比較例2−3で製造した水分散剤を用いて得られた集束剤にて集束したガラス繊維を、それぞれガラス繊維No.1、No.2、No.3、No.4、およびNo.5とする(下記〔表3〕参照)。
【0058】
下記配合にて、二軸押出し機で300℃で混練し、ペレタイザーでペレットを作成し、これを成型温度300℃、金型温度80℃で射出成型法で試験片を作成し、着色を目視にて評価した。評価基準は実施例1と同様に1〜4の4段階で示した。その結果を下記〔表3〕に示す。
【0059】
配合 重量部
マレイン化ポリプロピレン樹脂 80
ガラス繊維(下記〔表3〕) 20
テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ第三ブチル 0.1
−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン
ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル) 0.2
ペンタエリスリトールジホスファイト
【0060】
【表3】
【0061】
上記の結果から明らかなように、ポリプロピレングリコールのポリエチレンオキシド付加物、ノニルフェノールのポリエチレンオキシド付加物などの通常使用される界面活性剤を用いた水分散物の保存安定性は不十分であり、硬化物が高温に曝された際に着色が大きい(比較例1−1〜1−3、2−1〜2−3、3−1参照)。また、ビスフェノールAのポリエチレンオキシド20モル付加物を使用した場合には、水分散物が得られなかった(比較例1−4参照)。
【0062】
これに対し、本発明に係る前記ビスフェノール系ポリエーテル化合物を使用してなる本発明のエポキシ樹脂水分散物は、保存安定性に優れ、高温に曝された際の着色も著しく改善されたものである(全実施例参照)。
【0063】
さらに、本発明に係る前記ビスフェノール系ポリエーテル化合物とともにポリプロピレングリコールのエチレンオキシド付加物等の脂肪族アルコールのアルキレンオキシドあるいはノニルフェノールのエチレンオキシド付加物等のアルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物を併用することで、高分子量のエポキシ樹脂を使用した場合においても優れた分散安定性を示す(実施例2−4〜2−8参照)。また、これにより得られたエポキシ樹脂水分散物をガラス繊維の集束剤に用いた場合にも熱着色が効果的に抑制できる(実施例3−1〜3−4参照)。
【0064】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂水分散物は、保存安定性に優れ、また、これから得られた塗膜は高温に曝した時の着色性に優れている等優れた物性を有し、塗料、接着剤、繊維加工剤、繊維集束剤などの広範囲の用途に有用に使用することができる。
Claims (5)
- 上記付加物におけるアルキレンオキシドが、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドである請求項1記載のエポキシ樹脂水分散物。
- 更に、脂肪族一価もしくは多価アルコールまたはアルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物あるいは該付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなるアルコール系またはフェノール系ポリエーテル化合物の少なくとも一種0.01〜30重量部を併用してなる請求項1または2記載のエポキシ樹脂水分散物。
- 上記のアルコール系またはフェノール系ポリエーテル化合物が、ポリプロピレングリコールのエチレンオキシド付加物あるいは該付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなるポリエーテル化合物である請求項3記載のエポキシ樹脂水分散物。
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