JP4349693B2 - 硬化性エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化性エポキシ樹脂組成物、詳しくは、保存安定性に優れ、且つ、硬化性、接着性、硬化物物性等に優れた一成分系加熱硬化性エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
エポキシ樹脂は、各種基材への接着性に優れており、また、エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させた硬化物は、耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械特性等が比較的優れているため、広い分野、特に、塗料或いは接着剤の分野で賞用されている。
【0003】
従来、エポキシ樹脂組成物は、使用直前に硬化剤や硬化促進剤を添加する二成分系が主流であった。二成分系は、常温或いは低温において硬化させることができる特徴を有しているが、その反面、使用直前に計量、混合しなければならならず、更に可使時間が短く、自動機械への適用が困難である等その使用条件が制限されるという欠点を有している。このような問題点を解消するために一成分系硬化性エポキシ樹脂組成物が望まれている。
【0004】
このような一成分系硬化性樹脂組成物を得るためには、室温では反応しないが、加熱により反応を開始し硬化する性質を有する硬化剤、いわゆる潜在性硬化剤が必要である。潜在性硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、二塩基酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、グアナミン類、メラミン、イミダゾール類等が提案されている。しかし、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、グアナミン類をエポキシ樹脂と混合したものは貯蔵安定性は優れているが、150℃以上の高温長時間の硬化条件を必要とする欠点を有している。また、これらと硬化促進剤を併用して硬化時間を短縮することも広く行われているが貯蔵安定性が著しく損なわれるという欠点が生じてしまう。一方、二塩基酸ジヒドラジドやイミダゾール類は比較的低温で硬化はするが貯蔵安定性に乏しい。三フッ化ホウ素アミン錯塩は貯蔵安定性に優れ硬化時間は短いという長所があるが、耐水性に劣り、そして金属に対する腐食性を持つ等それぞれに欠点を有している。
【0005】
これらを解決する目的で、例えば、特開昭56−155222号公報及び特開昭57−100127号公報には、ジアルキルアミンとエポキシドとの反応生成物、特開昭59−53526号公報には、第三アミノ基を有するアルコール又はフェノールとポリエポキシドとの反応生成物をポリエポキシドの硬化剤として使用する方法が提案されている。しかし、これらによって合成される硬化剤組成物は未だ貯蔵安定性が十分ではなく、硬化物物性も満足できるものではない。
【0006】
また、特開平3−296525号公報には、N,N−ジアルキルアミノアルキルアミン、環状アミン及びジイソシアネートを加熱反応させて得られる硬化剤化合物を使用する方法が提案されているが、未だ貯蔵安定性が満足できるものではない。
【0007】
従って、本発明の目的は、保存安定性に優れ、且つ、硬化性、接着性、硬化物物性に優れた一成分系硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、ポリエポキシ化合物の硬化剤として、特定のN,N−ジアルキルアミノアルキルアミン、ジカルボン酸ジヒドラジド及び有機ポリイソシアネートから得られる潜在性硬化剤を使用することで、上記目的を達成し得る硬化性エポキシ樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は、(A)ポリエポキシ化合物及び(B)(イ)下記〔化2〕(前記〔化1〕と同じ)の一般式(I)で表されるアミン化合物、(ロ)ジカルボン酸ジヒドラジド及び(ハ)有機ポリイソシアネートを反応させてなる硬化剤を含有する一成分系加熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
【化2】
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。
【0012】
本発明に使用される(A)成分のポリエポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンジフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン等のグリシジルアミノ基を有するポリエポキシ化合物等が挙げられる。
【0013】
本発明に使用される(B)成分の硬化剤を得るのに用いられる(イ)成分の上記一般式(I)で表されるアミン化合物において、R1 及びR2 で表わされるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等の基が挙げられ、また、R1 及びR2 が結合して酸素原子又は窒素原子を含むことのできるアルキレン基を形成してもよく、例えば、R1 、R2 及びこれらの結合する窒素原子と一緒になって、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の環構造を形成することができる。
【0014】
(イ)成分の上記一般式(I) で表される化合物(N,N−ジアルキルアミノアルキルアミン)としては、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジプロピルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、アミノプロピルモルホリン、アミノエチルピペリジン、1−(2−アミノエチル)−4−メチルピペラジン等が挙げられる。
【0015】
また、(B)成分の硬化剤を得るのに用いられる(ロ)成分のジカルボン酸ジヒドラジドとしては、炭素原子数1〜10の脂肪族、脂環式及び芳香族ジカルボン酸ジヒドラシド等が挙げられ、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、テトラヒドロフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0016】
ここで、(イ)成分と(ロ)成分との使用比率は、(イ)成分1モルに対し、(ロ)成分が好ましくは0.01〜5モル、更に好ましくは0.1〜3モルである。この範囲を逸脱すると、得られるエポキシ樹脂組成物の保存安定性を低下したり、硬化性、接着性等の諸性能が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0017】
また、(B)成分の硬化剤を得るのに用いられる(ハ)成分の有機ポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環式及び芳香族ポリイソシアネートが挙げられ、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートエステル、1,4−シクロへキシレンジイソシアネート、4,4' −ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3' −ジメトキシ−4,4' −ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0018】
(ハ)成分の使用量は、(イ)成分及び(ロ)成分或いは後述の(ニ)成分を使用するときにはこれを合せたアミン化合物のNH2 基1個に対し、(ハ)成分のNCO基が好ましくは0.1〜2個、更に好ましくは0.5〜1個となる量である。0.1個未満の使用では、得られるエポキシ樹脂組成物の保存安定性が低下するおそれがあり、2個よりも多く使用した場合には、エポキシ樹脂組成物の保存安定性を低下させると共に硬化性、接着性に悪影響を与えるおそれがあるため好ましくない。
【0019】
更に、(B)成分の硬化剤を製造する際には、(イ)成分以外の(ニ)アミン化合物を使用することができる。該アミン化合物としては、例えば、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミン等のモノアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−3,6−ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ピペラジン等のポリアミン類等が挙げられる。
【0020】
(ニ)成分の使用量は、(イ)成分1モルに対し、好ましくは5モル以下、更に好ましくは3モル以下である。5モルを越えて用いた場合には、得られるエポキシ樹脂組成物の保存安定性を低下させるおそれがあるため好ましくない。
【0021】
また、(B)成分の硬化剤を製造する際には、(ホ)エポキシ化合物を使用してエポキシ付加変性することができる。これらエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のポリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルトトルイジン等の前記のポリエポキシ化合物;フェニルグリシジルエーテル、メチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル等のモノエポキシ化合物が挙げられる。
【0022】
(ホ)成分の使用量は、(イ)及び(ロ)成分或いは(ニ)成分を使用するときにはこれを合せたアミン化合物のNH2 基1個に対し、(ホ)成分のエポキシ基が好ましくは0.9個以下、更に好ましくは0.01〜0.5個となる量である。0.9個より多く使用した場合には、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化性が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0023】
(B)成分の硬化剤は、(イ)成分〜(ハ)成分、(ニ)成分を使用する場合には該(ニ)成分を一括して反応させることもできるし、(イ)成分と(ハ)成分、(ロ)成分と(ハ)成分、(ニ)成分を使用する場合には該(ニ)成分と(ハ)成分を別々に反応させることもできる。これらの反応は通常、有機溶媒中で常温から200℃、好ましくは50〜150℃の温度範囲に加熱して製造することができる。
また、(ホ)成分を使用する場合には、上記アミン化合物に予め付加したものを上記反応に使用することもできるし、一括して反応させることもできるし、上記反応後に得られたアミン化合物に付加することもできる。
【0024】
ここで使用することのできる有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類;イソ−又はn−ブタノール、イソ−又はn−プロパノール、アミルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジオキサン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素等が挙げられる。
【0025】
本発明において、(A)成分のポリエポキシ化合物と(B)成分の硬化剤との使用量の比は、(A)ポリエポキシ化合物100重量部に対し、(B)硬化剤が好ましくは0.1〜200重量部、更に好ましくは1〜100重量部である。(B)成分が0.1重量部未満であると、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化性が得られないおそれがあり、200重量部を越えた場合には硬化物物性が低下するおそれがあるめ好ましくない。
【0026】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には、(B)成分の硬化剤とともに、通常公知のエポキシ樹脂用硬化剤を併用することができる。そのような硬化剤としては、前記(ニ)成分として例示したポリアミン類、或いはこれらと、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類又はカルボン酸のグリシジルエステル類等の各種エポキシ樹脂とを常法によって反応させることによって製造されるポリエポキシ付加変性物;これらの有機ポリアミン類と、フタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸等のカルボン酸類とを常法によって反応させることによって製造されるアミド化変性物;これらのポリアミン類とホルムアルデヒド等のアルデヒド類及びフェノール、クレゾール、キシレノール、第三ブチルフェノール、レゾルシン等の核に少なくとも一個のアルデヒド化反応性場所を有するフェノール類とを常法によって反応させることによって製造されるマンニッヒ化変性物等が挙げられる。また、ジシアンジアミド、メラミン、グアナミン、酸無水物、ジカルボン酸ジヒドラジド類、イミダゾール類等の潜在性硬化剤も使用できる。
【0027】
また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を塗料又は接着剤として用いる場合には、通常、取り扱いを容易にするために溶剤が配合される。これらの溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類;イソ−又はn−ブタノール、イソ−又はn−プロパノール、アミルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(丸善石油化学(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジオキサン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、硬化触媒;モノグリシジルエーテル類、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタール等の反応性又は非反応性の希釈剤(可塑剤);ガラス繊維、炭素繊維、セルロース、ケイ砂、セメント、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、ベントナイト、タルク、シリカ、微粉末シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、瀝青物質等の充填剤若しくは顔料;増粘剤;チキソトロピック剤;難燃剤;消泡剤;防錆剤;コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の常用の添加物を添加してもよく、更に、キシレン樹脂、石油樹脂等の粘着性の樹脂類を併用することもできる。
【0029】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、例えば、コンクリート、セメントモルタル、各種金属、皮革、ガラス、ゴム、プラスチック、木、布、紙等に対する塗料或いは接着剤;包装用粘着テープ、粘着ラベル、冷凍食品ラベル、リムーバルラベル、POSラベル、粘着壁紙、粘着床材の粘着剤;アート紙、軽量コート紙、キャストコート紙、塗工板紙、カーボンレス複写機、含浸紙等の加工紙;天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の収束剤、ほつれ防止剤、加工剤等の繊維処理剤;シーリング材、セメント混和剤、防水材等の建築材料等の広範な用途に使用することができるが、特に、各種基材への塗料、接着剤として好適に用いられる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
製造例1(実施例1に使用する硬化剤)
イソブタノール162.5g、キシレン162.5g、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン204g(2モル)、アジピン酸ジヒドラジド87g(0.5モル)及びイソホロンジアミン85g(0.5モル)を仕込み、60〜70℃で30分間混合攪拌する。そこにイソホロンジイソシアネート67重量%キシレン溶液666g(2モル)を滴下した。滴下終了後昇温して140〜150℃で2時間還流熟成を行い、IRでイソシアネートの吸収である2250cm-1の吸収が消えたことを確認し、200℃まで昇温して2時間常圧脱溶剤を行い、更に190〜200℃、50〜60mmHgで1時間減圧脱溶剤を行って淡白色の固形物を得た。
【0032】
製造例2〜11(実施例2〜10及び比較例1に使用する硬化剤)
表1〜表3に示す各成分を用い、製造例1に準じて硬化剤を製造した。
【0033】
製造例12(実施例11に使用する硬化剤)
イソブタノール162.5g、キシレン162.5g、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン204g(2モル)、アジピン酸ジヒドラジド87g(0.5モル)及びイソホロンジアミン85g(0.5モル)を仕込み、60〜70℃で30分間混合攪拌する。そこにイソホロンジイソシアネート67重量%キシレン溶液666g(2モル)を滴下した。滴下終了後昇温して140〜150℃で2時間還流熟成を行い、IRでイソシアネートの吸収である2250cm-1の吸収が消えたことを確認し、ヘキサメチレンジアミン116g(1モル)、ジメチルアミノプロピルアミン204g(2モル)を仕込み、120℃で30分混合攪拌した。そこへジグリシジルトルイジンを540g(2モル)を徐々に滴下した。滴下後、140〜150℃で2時間還流熟成した。更に、200℃まで昇温して2時間常圧脱溶剤を行い、更に190〜200℃、50〜60mmHgで1時間減圧脱溶剤を行って淡白色の固形樹脂を得た。
【0034】
製造例13〜15(実施例12〜14に使用する硬化剤)
表2に示す各成分を用い、製造例12に準じて硬化剤を製造した。
【0035】
製造例16(実施例15に使用する硬化剤)
イソブタノール162.5g、キシレン162.5g、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン408g(4モル)、アジピン酸ジヒドラジド174g(1モル)及びイソホロンジアミン170g(1モル)を仕込み、60〜70℃で30分間混合攪拌する。そこへジグリシジルトルイジン486g(1.8モル)及びテトラグリシジルメタキシレンジアミン40g(0.1モル)を順に滴下して、2時間還流熟成した。そこにイソホロンジイソシアネート67重量%キシレン溶液666g(2モル)を滴下した。滴下終了後昇温して140〜150℃で2 時間還流熟成を行い、IRでイソシアネートの吸収である2250cm-1の吸収が消えたことを確認し、200℃まで昇温して2時間常圧脱溶剤を行い、更に190〜200℃、50〜60mmHgで1時間減圧脱溶剤を行って淡白色の固形物を得た。
【0036】
製造例17〜20(実施例16〜18、比較例2に使用する硬化剤)
表3に示す各成分を用い、製造例16に準じて硬化剤を製造した。
【0037】
実施例1〜18及び比較例1,2アデカレジンEP−4901E(旭電化工業(株) 製;ビスフェノールF型エポキシ樹脂)と上記製造例1〜20で製造した硬化剤とを100/20(重量比)で混合して、硬化性エポキシ樹脂組成物とした。得られた硬化性エポキシ樹脂組成物について、下記の各試験を実施した。
【0038】
(硬化性)
硬化性エポキシ樹脂組成物を3本ロールに掛けたものをゲル化試験機で行った。ゲル化時間の判定は、糸を引かなくなった時間とした。
【0039】
(安定性)
硬化性エポキシ樹脂組成物を3本ロールに掛けたものを25℃で3時間放置後の25℃における粘度を初期粘度として、その後40℃に放置してその経時の粘度を測定した。
【0040】
(引張試験)
硬化性エポキシ樹脂組成物を3本ロールに掛けたものを用いて、日本テストパネル製の軟鋼鈑SPCC−SD(1.6mm×25mm×100mm)をのりしろ25mm×10mmとして張り合わせて150℃で1時間加熱して接着したものを23℃でテストスピード50mm/minでせん断力を測定した。
【0041】
(引裂き試験)
硬化性エポキシ樹脂組成物を3本ロールに掛けたものを用いて、日本テストパネル製の軟鋼鈑SPCC−SD(1.6mm×25mm×100mm)をのりしろ25mm×10mmとして張り合わせて150℃で1時間加熱して接着したものを23℃でテストスピード200mm/minでT−型剥離強度を測定した。
【0042】
(軟化点)
硬化性エポキシ樹脂組成物を3本ロールに掛けたものを用いて、メルティングポインター(メイホー社製)によって軟化点を測定した。
【0043】
(ガラス転移点)
硬化性エポキシ樹脂組成物を3本ロールに掛けたものを用いて、示差熱計(セイコー電子製)によってガラス転移を測定した。測定条件は、150℃まで100℃/minで昇温し、150℃で1時間保持したものを100℃/minで冷却し、50℃まで冷却したら5℃/minで200℃まで昇温した。このときの変曲点からガラス転移点を求めた。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
上記の結果より明らかなように、ポリエポキシ化合物とN,N−ジアルキルアミノアルキルアミン、ジカルボン酸ジヒドラジド及び有機ポリイソシアネートを反応させて得られる硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物(実施例1〜18)は、一液硬化システムで保存安定性に優れ、且つ硬化速度が速く、得られる硬化物の物性にも優れたものである。これらの成分に更に他のアミン化合物或いはエポキシ化合物を使用することでこれらのバランスを調整することができる。
【0048】
これに対し、N,N−ジアルキルアミノアルキルアミン、イソホロンジアミン等の汎用のポリアミン及び有機ポリイソシアネートを反応させて得られる硬化剤を使用した場合(比較例1及び2)には、硬化性は優れたものが得られるが、保存安定性が極めて悪いものしかえられない。
【0049】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、一成分系での硬化が可能で、保存安定性に優れ、且つ、硬化性、接着性、硬化物物性等に優れたものである。
Claims (4)
- (A)ポリエポキシ化合物及び(B)(イ)上記一般式(I)で表されるアミン化合物、(ロ)ジカルボン酸ジヒドラジド、(ハ)有機ポリイソシアネート及び(ニ)(イ)以外のアミン化合物を反応させてなる硬化剤を含有する一成分系加熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
- (A)ポリエポキシ化合物及び(B)(イ)上記一般式(I)で表されるアミン化合物、(ロ)ジカルボン酸ジヒドラジド、(ハ)有機ポリイソシアネート及び(ホ)エポキシ化合物を反応させてなる硬化剤を含有する一成分系加熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
- (A)ポリエポキシ化合物及び(B)(イ)上記一般式(I)で表されるアミン化合物、(ロ)ジカルボン酸ジヒドラジド、(ハ)有機ポリイソシアネート、(ニ)(イ)以外のアミン化合物及び(ホ)エポキシ化合物を反応させてなる硬化剤を含有する一成分系加熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
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