JP3643271B2 - 有害物質除去性能を有する、水硬性組成物、水硬性硬化体及び水硬性硬化体の製造方法 - Google Patents

有害物質除去性能を有する、水硬性組成物、水硬性硬化体及び水硬性硬化体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有害物質を除去する性能を有する、水硬性組成物、水硬性硬化体及び水硬性硬化体の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、ホルムアルデヒド等の各種アルデヒド等の有害物質を除去する性能を有する、天候、気候、外気温度、室温等に大きく影響されることなく吸着することができ、一旦吸着した臭気性物質を簡単に放出することのない水硬性組成物(例えば、モルタル状壁基材あるいは壁仕上げ材)、水硬性硬化体及び水硬性硬化体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年生活水準の著しい向上と共に、より快適な生活環境や作業環境が求められるようになり、大気あるいは屋内中の臭気成分等の有害気体成分に関連して種々の問題が提起されている。例えば、嫌煙運動が盛んになっている原因の一つには、たばこの煙に含まれるアセトアルデヒド、アンモニア、トリメチルアミン、メルカプタン、硫化水素等の多数の臭気成分が毛髪、衣服、屋内の壁、家具、カーペットや自動車、電車等の乗り物の室内等に付着し、悪臭として残存することが挙げられる。
【0003】
そして、最近の新築住宅の建築、特にクロス貼りあるいは家具の組立等においては、ホルムアルデヒド等の化学物質が含有された接着剤等が多用されており、そのためホルムアルデヒド等の化学物質が含浸又は塗布された新建材あるいは家具等が屋内に存在することは回避できない。その結果該化学物質が大量に気化分散して悪臭あるいは有害物質として存在する環境が形成され、生活環境を悪化させ、更に居住者の健康をも損なうことが大きな問題となっている。
【0004】
このような有害物質を除去(消臭)する手段としては、空気清浄機、エアコン等の使用が一般的であるが、その効果は不充分である。さらに、機械的な消臭手段以外の方法についても、種々の提案がなされている。それには、例えば、改質により消臭機能を付与したアクリル樹脂を紡糸して繊維化し、これを加工して消臭性のカーペットやカーテンを製造することが行われている。しかしながら、この方法は、除去効果が不充分であり、更にアクリル樹脂の改質に高コストを要するので、工業的に有利なものではない。
【0005】
また、アクリル樹脂エマルジョン等の合成樹脂マトリックスと消臭性成分とを含有する消臭性コーティング材を、各種の材質及び形状を有する基材に被覆することも行われている。代表的な消臭性成分としては、例えば、パーライト、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、硫酸第一鉄とL−アスコルビン酸との結合体等を挙げることができる。
【0006】
これらのうち、パーライト、ゼオライト、シリカゲル及び活性炭は、臭いを物理的に吸着する成分である。一方、硫酸第一鉄とL−アスコルビン酸との結合体は、紫外線が当たると活性酸素が発生し、これが悪臭成分を酸化して消臭する機能を有している。しかしながら、これらの物質を含有する従来のコーティング材は、アセトアルデヒドやホルムアルデヒドに対する除去効果が不十分であるという致命的欠点を有している。
【0007】
また、これらのうち、物理的吸着剤を配合する消臭性材料については、その材料の形態を本発明と同様に水硬性のものとするものも最近提案されており、それには下地材の上に上塗りするところの仕上げ材とするものがある(特開平10−245255号公報)。これも前記したとおり物理的吸着剤による悪臭成分の除去であることからアセトアルデヒドやホルムアルデヒドに対する除去効果が不十分であり、かつ物理的吸着であることから、屋内空間等の温度等の変化により悪臭成分の再放出も回避できない。
【0008】
したがって、これらの悪臭成分除去は、アセトアルデヒドやホルムアルデヒドに対する除去能はいずれも充分なものではないことから、最近、新たに特にホルムアルデヒドに対する消臭能除去能が優れ、かつ長期持続性を有するヒドラジド化合物を消臭物質とする消臭剤の提案(特開平10−36681号公報)及びアゾール化合物又はアジン化合物を消臭物質とする消臭剤の提案(特開平11−4879号公報)がなされている。そこにおける消臭剤の剤型は溶液又は分散液であり、紙、繊維、合板、化粧板等に塗布または含浸する使用形態が提案されている。
【0009】
ところで、この提案では、新築住宅に使用された塗料中等のホルムアルデヒドは数年あるいは十数年という長期間に亘り放出されることから、その吸着能は、それに対応できるように長期間持続性のある吸収能を有するものとしており、また、前記のような長期持続性を有する理由については、特開平10−36681号公報において、空気中の水分の変動によりヒドラジドがアルデヒドを放出し、その結果フリーになったヒドラジドが再度吸着能を回復することにあると一応考えており、その際の放出量は嗅覚に感じない程度としている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のとおりであるから、この提案では、新築直後におけるコンクリート駆体に含まれる化学混和剤等から発生するホルムアルデヒド等の臭気成分の高濃度による弊害については、何等配慮されていない。さらに、先の提案には、セメント等の水硬性材料と混合して壁下地材あるいは壁仕上げ材等の壁材の形態として使用する場合の態様については、何等開示されていない。
【0011】
そこで、本発明者は所属企業がセメント製品を供給する企業であることから、消臭成分を溶液又は分散液の形態ではなく、同成分をセメント等の水硬性材料と併用可能な形態、すなわち壁の下地材あるいは仕上げ材等として使用できる水硬性硬化体形成用の形態とすると共に新築直後における高濃度のホルムアルデヒド等の臭気成分を高精度に吸着し、一旦吸着した臭気成分は放出することのないものとすべく、研究に着手した。その際本発明者は、ヒドラジド化合物、アゾール化合物又はアジン化合物等の優れた有害物質除去性能に着目した。
【0012】
その結果、開発に成功し完成したのが、本発明の有害物質除去性能を有する、水硬性組成物、水硬性硬化体及び水硬性硬化体の製造方法である。
したがって、本発明の目的は、ホルムアルデヒド等の各種アルデヒド等の臭気性物質を、天候、気候、外気温度、室温等に影響されることなく高性能に吸着することができ、一旦吸着した臭気性物質を簡単に放出することのない、壁下地材あるいは壁仕上げ材として好適に利用できる水硬性組成物、水硬性硬化体及び水硬性硬化体の製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記した課題を解決するものであり、その手段である本発明は、水硬性組成物、水硬性硬化体及び水硬性硬化体の製造方法であり、そのうちの水硬性組成物は、水硬性結合材及び該結合材100重量部に対してヒドラジド化合物、アゾール化合物及びアジン化合物から選択される少なくとも1種の化合物0.05〜20重量部を含有する、有害物質除去性能を有する含水率25%以下の水硬性硬化体形成用のものである。
【0014】
また、本発明の水硬性硬化体は、水硬性結合材及び該結合材に100重量部に対してヒドラジド化合物、アゾール化合物及びアジン化合物から選択される少なくとも1種の化合物0.05〜20重量部を含有する水硬性組成物を硬化させた有害物質除去性能を有する含水率25%以下のものであり、更に、水硬性硬化体の製造方法は、水硬性結合材及び該結合材100重量部に対してヒドラジド化合物、アゾール化合物及びアジン化合物から選択される少なくとも1種の化合物0.05〜20重量部を含有する、水硬性組成物に水を配合して硬化させる有害物質除去性能を有する含水率25%以下の水硬性硬化体を製造するものである。
【0015】
そして、本発明は、このようにすることにより ホルムアルデヒド等の各種アルデヒド等の臭気性有害物質を、天候、気候、外気温度、室温等に影響されることなく高性能に吸着することができ、一旦吸着した有害物質を簡単に放出することのない、壁下地材あるいは壁仕上げ材として好適に利用できる水硬性組成物、水硬性硬化体及び水硬性硬化体の製造方法を提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、以下に具体的かつ詳細に説明する。
本発明は、前記したとおり水硬性組成物、水硬性硬化体及び水硬性硬化体の製造方法の発明であり、そのうちの水硬性組成物は、水硬性結合材及び該結合材100重量部に対してヒドラジド化合物、アゾール化合物及びアジン化合物から選択される少なくとも1種の化合物0.05〜20重量部を含有する、有害物質除去性能を有する含水率25%以下の水硬性硬化体形成用のものである。
【0017】
前記水硬性結合材としては、水硬性硬化体を形成する際に通常配合される各種水硬性結合材が特に制限されることなく使用でき、それには各種セメント(すなわちポルトランドセメントあるいはアルミナセメント等)、ドロマイトプラスター、高炉スラグ、あるいは石膏等があるが、各種セメント、ドロマイトプラスターあるいは石膏が好ましい。
【0018】
そして、この水硬性組成物には、物理的吸着性物質を配合することがよく、また、各種混和材、混和剤、粗骨材、細骨材、顔料、又は繊維を配合することができる。これらの水硬性結合材及び有害物質を除去する性能を有する物質以外の配合成分は、水硬性組成物中に予め配合しておいてもよいが、水硬性硬化体製造時に配合してもよい。
【0019】
本発明で配合する物理的吸着性物質としては、該物質として広く知られた各種のものが特に制限されることなく使用可能であり、それには、例えば活性炭、セピオライト、ゼオライト、パーライト、珪藻土、あるいはシリカゲル等があるが、活性炭、セピオライト、ゼオライト、パーライト、珪藻土が好ましく、その含有量は、結合材100重量部に対して1〜100重量部がよい。それは1重量部未満では十分な物理的吸着性能が得られないからである。また100重量を超えると強度を損ない、かつ含水率を増加させ、その結果ホルムアルデヒド等の臭気成分のリリース率、すなわち脱着率を増大させ、結果的に吸着能の低下を引き起こすということにからである。
【0020】
本発明では水硬性硬化体の含水率を25%以下とせしめるものであるが、その理由は、このようなアルデヒド化合物は、一旦吸着後状況によっては脱着するものであり、その脱着を回避するには硬化体中の含水率を25%以下とすることが必要であることが判明したからである。そして、使用時において、地域、気候あるいは環境にかかわりなく、例えば湿度の低い季節(特に関東地方における冬場)から高温多湿の季節(北海道を除く日本列島の梅雨時)までの違いにかかわりなく、硬化体中の含水率を25%以下に維持するには物理的吸着性物質の含有量は、前記した100重量部以下にするのがよい。
【0021】
骨材としては、細骨材及び粗骨材を配合することができ、その配合量は結合材100重量部に対して0〜300重量部とするのがよい。その配合目的は強度発現であるが、本発明の水硬性組成物の使用目的からして粗骨材を配合するほど強度を必要とする形態での利用度は低く、また装飾的にも細骨材を配合するのが好ましい。細骨材としてはモルタルあるいはコンクリートを製造する際に使用するものが特に制限されることなく使用できるが、炭酸カルシウムあるいは珪砂が好ましく使用できる。またその平均粒径は硬化体の形状からして10μm〜3mmが好ましい。
【0022】
比較的配合量の多い成分である混和材としては、膨張材、無水石膏、フライアッシュあるいはシリカヒューム等があるが、膨張材、無水石膏を配合するのが好ましい。その配合量については、膨張材は結合材100重量部に対して0〜10重量部、無水石膏は0〜10重量部であるのがよく、混和材全体では結合材100重量部に対して0〜10重量部の範囲がよい。
【0023】
微量配合成分である混和剤としては、保湿剤、ポリマーエマルジョン、減水剤、収縮低減剤、凝結遅延剤あるいは硬化促進剤等があるが、保湿剤、ポリマーエマルジョン、流動化剤を配合するのが好ましい。それらのうち前3者配合目的は、前から順に作業性向上、施工性向上、亀裂防止であり、配合量については、結合材100重量部に対して、前から順に0〜5重量部、0〜20重量部、0〜5重量部、0〜5重量部、0〜10重量部、0〜10であるのがよく、混和剤全体では結合材100重量部に対して0〜20重量部の範囲がよい。
【0024】
本発明で配合する化学的吸着性を有する消臭性物質は、ヒドラジド化合物、アゾール化合物及びアジン化合物から選択される少なくとも1種の化合物であり、その配合量は水硬性結合材100重量部に対して0.05〜20重量部であり、好ましくは0.2〜10重量部がよい。その理由は0.05重量部未満では長期的吸着性能に問題があり、20重量部を超えると強度、凝結等の物性に悪影響があるからである。
【0025】
本発明において有害物質を除去性能を有する物質として配合するヒドラジド化合物としては、ヒドラジド化合物であれば特に制限されることはなく、分子中に1個のヒドラジド基を有するモノヒドラジド化合物、分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物、分子中に3個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物等を挙げることができる。
【0026】
モノヒドラジド化合物として、例えば、下記一般式
R−CO−NHNH2 一般式(1)
で表されるモノヒドラジド化合物を挙げることができる。
〔但し、式中、Rは水素原子、アルキル基又は置換基を有することのあるアリール基を示す。〕
【0027】
上記一般式(1)において、Rで示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基等の炭素数1〜12の直鎖状アルキル基を挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等を挙げることができ、これらの中でもフェニル基が好ましい。またアリール基の置換基としては、例えば、水酸基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等を挙げることができる。
【0028】
上記一般式(1)の具体的ヒドラジド化合物としては、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド等を例示できる。
【0029】
ジヒドラジド化合物としては、例えば、下記一般式
2NHN−X−NHNH2 一般式(2)
表わされるジヒドラジド化合物を挙げることができる。
[但し、式中Xは基−CO−又は基−CO−A−CO−を示す。Aはアルキレン基又はアリーレン基を示す。]
【0030】
上記一般式(2)において、Aで示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基等の炭素数1〜12の直鎖状アルキレン基を挙げることができる。
【0031】
アルキレン基の置換基としては、例えば水酸基等を挙げることができる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等を挙げることができ、これらの中でもフェニレン基、ナフチレン基等が好ましい。アリーレン基の置換基としては、上記アリール基の置換基と同様のものを挙げることができる。
【0032】
上記一般式(2)のジヒドラジド化合物は、具体的には、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン−2酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド等の2塩基酸ジヒドラジド等が挙げられる。更に、特公平2−4607号公報に記載の各種2塩基酸ジヒドラジド化合物、2,4−ジヒドラジノ−6−メチルアミノ−sym−トリアジン等も本発明のジヒドラジドとして用いることができる。
【0033】
ポリヒドラジド化合物としては、具体的には、ポリアクリル酸ヒドラジド等を例示できる。
これらのヒドラジド化合物の中では、ジヒドラジド化合物が好ましく、2塩基酸ジヒドラジドが特に好ましく、アジピン酸ジヒドラジドがより一層好ましい。
【0034】
アゾール化合物及びアジン化合物としては、異項原子として2個又は3個の窒素原子を有する、公知の5員環乃至6員環の複素環化合物を広く使用することができる。これらの複素環化合物には、炭素数1〜4程度の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基、1又は2個以上の置換基を有してもよいアリール基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、メルカプト基、エステル基、カルボキシル基、ベンゾトリアゾリル基、1−ヒドロキシベンゾトリアゾリル基等の置換基が1個又は2個以上置換していてもよい。
【0035】
ここで、炭素数1〜4程度の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル等が挙げられる。またアリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基が挙げられ、これらの基には水酸基、ハロゲン原子、スルホン酸基、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等の置換基が1又は2個以上置換していてもよい。なお、置換基としてカルボキシル基を有する場合には、そのエステルも本発明の有効成分に包含される。
【0036】
アゾール化合物としては、例えばジアゾール化合物、トリアゾール化合物、チアジアゾール化合物等を挙げることができ、ジアゾール化合物及びトリアゾール化合物を好ましく使用できる。
【0037】
ジアゾール化合物の具体例としては、例えば3−メチル−5−ピラゾロン、1,3−ジメチル−5−ピラゾロン、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン、3−フェニル−6−ピラゾロン、3−メチル−1−(3−スルホフェニル)−5−ピラゾロン等のピラゾロン化合物、ピラゾール、3−メチルピラゾール、1,4−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチル−1−フェニルピラゾール、3−アミノピラゾール、5−アミノ−3−メチルピラゾール、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸メチルエステル、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸エチルエステル、3,5−メチルピラゾールジカルボン酸等のピラゾール化合物等を挙げることができる。
【0038】
トリアゾール化合物の具体例としては、例えば1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジ−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−フェニル−1,2,4−トリアゾールを挙げることができる。
【0040】
さらに、 トリアゾール化合物としては、3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール−3−オン、ウラゾール(3,5−ジオキシ−1,2,4−トリアゾール)、1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジン、1H−ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0041】
チアジアゾール化合物の具体例としては、例えば2−アミノ−5−エチル−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、5−t−ブチル−2−メチルアミノ−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール等を挙げることができる。
【0042】
アジン化合物としては、例えばジアジン化合物、トリアジン化合物、ピリダジン化合物等を挙げることができ、これらの中ではピリダジン化合物が好ましく使用できる。
【0043】
ジアジン化合物の具体例としては、例えば1,3−ジアジン、2−アミノ−4,6−ジメチル−1,3−ジアジン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−ジアジン、2−メルカプト−1,3−ジアジン、2−アミノ−1,3−ジアジン、2,4−ジヒドロキシ−1,3−ジアジン等の1,3−ジアジン類、2−アミノ−1,4−ジアジン、2,3−ジメチル−1,4−ジアジン、2−メチル−1,4−ジアジン、1,4−ジアジン−2−カルボン酸、2,3,5−トリメチル−1,4−ジアジン等の1,4−ジアジン類等を挙げることができる。
【0044】
トリアジン化合物の具体例としては、例えば3−アミノ−5,6−ジメチル−1,2,4−トリアジン、3−ヒドロキシ−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、ベンゾ−1,2,3−トリアジン−4(3H)−オン、3−(2−ピリジル)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン等を挙げることができる。
【0045】
これらの本発明組成物の有害物質除去性能を有する物質である、ヒドラジド化合物、アゾール化合物及びアジン化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができ、また例えばヒドラジド化合物の2種以上を混合して使用してもよい。前記有害物質除去性能を有する化合物のうち、本発明の水硬性組成物で好適に使用できる化合物は、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロンあるいは1,2,4トリアゾールである。
【0046】
本発明の水硬性硬化体を製造するには、水和(凝固)反応を行うために水を配合せしめるが、その配合量は、結合材100重量部に対して、20〜300重量部がよく、好ましくは100〜200重量部がよい。その硬化体の製造は、予め工場で板状等の各種形状に生産してもよいし、現場で水硬性組成物に水を混合して水和・凝固反応を行い製造してもよい。
【0047】
その硬化体の製造には、配合される各種成分、具体的にはセメント等の結合材、骨材、セピロライトあるいはパーライト等の物理的吸着性物質、膨張材等の混和材、保水剤等の混和剤、並びに消臭性成分等の各種配合成分を均一に混合せしめることが必要であり、そのためにコンクリートあるいはモルタル等を形成する際の通常の手段及び手順が採用でき、これら成分全てを傾胴ミキサーあるいは強制ミキサー等に投入し攪拌混合するのがよい。これら成分を均一に混合する当たっては、有害物質除去性能を有する物質を均一混合を促進するために加水前に混合するのがよい。
【0048】
そして、その硬化体を工場で製造する場合は、同一条件で製造できるので均質の硬化体を効率的に製造できる。その硬化体の形状としては、板状、ブロック状あるいはフィルム状等の各種形状の製品を製造することは可能であるが、建築用資材であることから、板状が好ましい。その大きさは10×10mm〜1000×1000mm程度の長方形あるいは正方形がよく、板厚は1〜100mm程度がよい。その利用形態は下地材あるいは仕上げ材のいずれでも可能であり、仕上げ材として利用する場合には、染料もしくは顔料、あるいはそれ以外の装飾成分を配合せしめるのがよい。
【0049】
また、現場で水硬性硬化体を製造する場合には、現場施工の長所を生かすには工場で製造する前記以外の製造手段を利用するのがよく、それには水硬性組成物に水を混合してペースト状(モルタル状)にしたものを左官工により下地材の上に塗布する施工方法がよい。その際の下地材として、各種の下地材が特に制限されることなく使用でき、それには例えば、石膏ボード、コンクリートあるいはALC板等がある。その利用形態としては、準下地材あるいは仕上げ材のいずれでも可能であり、仕上げ材として利用する場合には、顔料等の着色成分を配合せしめるのがよい。
【0050】
【実施例】
以下に、本発明の水硬性硬化体及び比較水硬性硬化体の具体的製造例、並びにそれらを使用した吸着性能試験及び吸脱着性能試験等について記載するが、本発明は、これら製造例及び試験例によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0051】
[実施例1ないし4及び比較例1ないし7]
〈供試体製造方法〉
以下に示す配合量の成分、及び表1に示す配合量の有害物質除去性能を有するヒドラジド系化合物であるアジピン酸ジヒドラジドを配合した水硬性組成物をフロー180±5の範囲になるようにJIS R 5201(セメントの物理試験方法)に準じて粉体水比50%で、ホバート社製ミキサー(N−50)により練り混ぜペースト状混合物を調製した。調製後、20×20×2mmの成形体を成形し、成形後所定の含水率になるまで養生し供試体を製造した。すなわち、所定の含水率になるまで20℃、60%R.H.又は90%R.H.の恒温室にて養生した。
【0052】
Figure 0003643271
【0053】
〈供試体の含水率の調整〉
前記した供試体を使用して臭気性成分の吸着試験を実施するために、供試体中の含水率の調整を実施した。その調整方法は以下のとおりである。すなわち、所定の含水率になるまで20℃、60%R.H.の恒温室にて養生した。
また、その結果、得られた供試体中の含水率は表1に示すとおりである。
なお、前記配合量(重量部)は、白色セメント100重量部に対するものであるが、表1における化学吸着剤含有量は、結合材(すなわち白色セメント、高炉スラグ及びドロマイトプラスター)100重量部に対するものである。
【0054】
【表1】
Figure 0003643271
【0055】
〈吸着性能試験方法〉
吸着性能試験はアセトアルデヒドガスを使用して行った。その手順は以下のとおりであり、その概念図を図1に示す。
1)供試体1を1リットルのフッ化ビニル製バック2(デュポン社製)に入れ、入口を熱シールにより閉じた。
2)エアーポンプ3で吸引し、バック2内の空気を完全に排除する。
3)次いで、アセトアルデヒドを窒素ガス(99.9999%)で濃度約500ppmに希釈した4実験用標準ガス(日本酸素社製)をコックよりバック2内の圧力が大気圧よりやや高くなるまで注入し、その後コックを開き内部の圧力を大気圧と等しくする。
4)同様に供試体1の入っていないバックもブランクとして用意する。
5)ガス検知管6(ガステック社製)を採取器7に接続し、60時間経過後、コックに検知管6を接続しバック内のガスを採取し(100ml)、検知管6により濃度を読みとる。
6)アセトアルデヒドの吸着量はブランクの濃度から供試体を入れたバック中の吸着残の濃度を引くことにより求める。
【0056】
〈吸着性能試験結果〉
この試験結果によれば、本発明組成物の消臭性物質が配合されている実施例1ないし4及び比較例7の組成物は、いずれもアセトアルデヒドの吸着能が優れていることがわかる。他方、該消臭性物質が配合されていない比較例の場合には、含水率の低い比較例1、2の組成物ではアセトアルデヒドの吸着能は低いが、含水率が高い比較例3ないし6では含水率の増大に伴ってその吸着能が向上することがわかる。特に含水率が20%を超えると消臭性成分を含有する場合とほぼ同等の吸着能を示すことが理解できる。
【0057】
〈吸脱着性能試験方法〉
吸脱着性能試験もアセトアルデヒドガスを使用して行った。その手順は以下のとおりである。
1)吸着性能試験測定後の供試体1を新しい1リットルのフッ化ビニル製バックに入れ、入口を熱シールにより閉じた。
2)吸着性能試験と同様にバック2内の空気を完全に排除する。
3)次いで、窒素ガス(99.9999%)を充填する。
4)7日後バック内のガス100mlを採取し、ガス検知管により測定した。
5)測定値より得られたアセトアルデヒド濃度をリリース量とした。
【0058】
〈吸脱着性能試験結果〉
この試験結果によれば、本発明組成物における消臭性物質が配合されている実施例の場合には、含水率が24%までは、いずれもアセトアルデヒドのリリース率が低いが含水率が33%の比較例7のみがリリース率が高いことがわかる。他方、消臭性物質が配合されていない比較例の場合には、含水率が22%以上では該物質を配合されていないにもかかわらず、本発明と同様の高いアセトアルデヒドの吸着率を示すが、比較例1ないし6のいずれの比較例においても、含水率の高低にかかわわりなくリリース率が高いことがわかる。
【0059】
このように含水率が増大するに従い脱着率が増加する原因については、本発明者は解明しているわけではないが、アルデヒド化合物がいずれも水溶性であること及び消臭性物質を含有しない組成物から形成した硬化体において、含水率とアセトアルデヒドの吸着率がほぼ比例関係にあることから、硬化体中に多量に水が存在する場合には、水が吸着・脱着反応に何らかの形で関与しているものと推測している。
【0060】
以上のとおりであるから、本発明の水硬性組成物は、湿度の低い季節(特に関東地方における冬場)から高温多湿の季節(北海道を除く日本列島の梅雨時)までのいずれにおいても、ホルムアルデヒド等の各種臭気性成分を吸着し、脱着することのない壁材等の形態を採ることのできる水硬性硬化体を提供することができる優れた効果を奏するものである。
【0061】
[実施例5及び比較例8]
新設した美術館あるいは博物館の建物駆体、駆体構成材、駆体付設材あるいは備品等から発生するホルムアルデヒド等の臭気性有害ガスが絵画等の室内展示物に与える劣化等の悪影響に対する本発明の組成物及び硬化体の回避能について調査すべく、保管庫の内壁に本発明の水硬性硬化体等を内張りして、保管庫内のホルムアルデヒド濃度変化を調査した。
【0062】
〈保管庫の具体的構造〉
保管庫の内壁に調湿性のある人工木材(主原料ケイ酸カルシウム、商品名エースライト(株)小野田社製)を内張りした開閉扉のある保管庫と、実施例1と同一組成の水硬性組成物から形成した板状水硬性硬化体を内張りし、その上に更に前記人工木材を施工した開閉扉のある保管庫を用意した。また、この保管庫のほかに下地材と水硬性硬化体が直接接触することの影響の有無を確認するためにコンクリート下地と水硬性硬化体の中間に遮蔽層(ポリマーセメントから形成された硬化体)を配置した開閉扉のある保管庫も用意した。なお、実施例の硬化体中の含水率は3%であった。
【0063】
これらの保管庫の開閉扉を施工後閉鎖して1週間放置した後庫内からガスを採取し、ホルムアルデヒド濃度を測定した。人工木材のみを内張りした比較例8の保管庫は、ホルムアルデヒド濃度が380ppbであった。それに対し、実施例5の保管庫における同濃度は200ppb未満であり、かつ遮蔽層の存在の有無により有意差はなかった。この測定されたホルムアルデヒドはコンクリート下地、内装材及び木材等から発生したものである。
【0064】
以上のとおりであるから、本発明の水硬性硬化体の優れた臭気性物質の吸着能が実用的な構造体に形成した場合においても生ずることが明らかである。特に新設した美術館あるいは博物館においては発生するホルムアルデヒド等の臭気性有害ガスが絵画等の室内展示物に劣化等の悪影響を与えることが問題とされ、竣工後有害ガス濃度が数ppbに達するまで室内空気の換気、除湿を強制的に行うことが必要とされており、そのために極端な場合には開館できるまでには1年以上の期間を要するという場合もあるといわれている。本発明はこのような場合における有害ガスの濃度低下に大いに貢献することができ、開館までの期間短縮に非常に有益な手段となる。
【0065】
[実施例6]
営業あるいは契約上の制約から、一般住宅に比較し着工から完成までの期間が極端に短く、揮発性有害化合物を有する新建材にて施工されることが通常である店舗の新築あるいは改築時において発生するホルムアルデヒド等の臭気性有害ガスに対する本発明の水硬性硬化体の吸着能について調査すべく、改装中の数部屋のうち1室の内壁の一部(約20%)に本発明の水硬性硬化体(厚さ5mm)を内張りし、他室は市販の建材にて内張りして改装した。
【0066】
改装工事終了後、ホルムアルデヒド濃度を測定したところ通常通り改装した部屋の濃度は0.2〜0.8ppmであったが、水硬性硬化体を使用した部屋の濃度は0.2ppm未満であった。また改装中は、通常通り改修した部屋では時として目に痛みを伴うことがあったが、水硬性硬化体を使用した部屋では目に痛みを伴うことはなかった。
【0067】
【発明の効果】
本発明の水硬性組成物は、ホルムアルデヒド等の各種のアルデヒドなどの臭気性物質を、天候、気候、外気温度、室温等に大きく影響されることなく高性能に吸着することができ、一旦吸着した臭気性物質を簡単に放出することのない、壁下地材あるいは壁仕上げ材等の壁材として好適に利用できる水硬性硬化体及び水硬性硬化体の製造方法を提供することができる優れた効果を奏する発明である。また、特に竣工後短期間で有害ガス濃度を低下させる必要のある営業用の建築物(例えば、博物館、コンビニ、食料品店あるいは食堂等)の有害ガス除去に大いに有益な手段となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明等の水硬性硬化体のアセトアルデヒドガスによる吸着性能試験の概要を図示する図。
【符号の説明】
1 供試体
2 フッ化ビニル製バック
3 エアーポンプ
4 標準ガス
5 コック
6 検知管
7 採取器

Claims (6)

  1. 水硬性結合材及び該結合材100重量部に対してヒドラジド化合物、ベンゾトリアゾールを除くアゾール化合物及びトリアジンを除くアジン化合物から選択される少なくとも1種の化合物0.05〜20重量部を含有する、有害物質を除去する性能を有する含水率25%以下の水硬性硬化体形成用の水硬性組成物。
  2. ヒドラジド化合物が、ジヒドラジド化合物及びポリヒドラジド化合物である請求項1記載の水硬性組成物。
  3. 物理的吸着性物質を水硬性結合材100重量部に対して1〜100重量部含有する請求項1又は2記載の水硬性組成物。
  4. 水硬性結合材及び該結合材100重量部に対してヒドラジド化合物、ベンゾトリアゾールを除くアゾール化合物及びトリアジンを除くアジン化合物から選択される少なくとも1種の化合物0.05〜20重量部を含有する水硬性組成物を硬化させた有害物質を除去する性能を有する含水率25%以下の水硬性硬化体。
  5. 物理的吸着性物質を水硬性結合材100重量部に対して1〜100重量部含有する請求項4記載の水硬性硬化体。
  6. 水硬性結合材及び該結合材100重量部に対してヒドラジド化合物、ベンゾトリアゾールを除くアゾール化合物及びトリアジンを除くアジン化合物から選択される少なくとも1種の化合物0.05〜20重量部を含有する水硬性組成物に水を配合して硬化させる有害物質を除去する性能を有する含水率25%以下の水硬性硬化体の製造方法。
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