JP3642540B2 - 樹脂被覆シリカ微粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置の液晶の厚みを制御するスペーサー粒子等に使用可能な樹脂被覆シリカ微粒子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術およびその問題点】
液晶表示装置はフラットパネルディスプレイの代表的なものであり、その低消費電力性および低電圧駆動性から電子式卓上計算機、テレビ、コンピュータ、ワードプロセッサ等、種々の機器の表示装置として広く利用されている。この液晶表示装置の表示パネルは、例えば、透明電極や配向膜等の所定の部材が設けられた2枚の透明基板を所定の間隔に保ちつつシール材で貼り合わせて液晶セルを形成し、この液晶セル内に液晶を封入することで形成される。このとき、2枚の透明基板のうちの一方の基板の所定面(液晶セルの内壁になる面)には、例えば湿式散布により、2枚の透明基板の間隔(セルギャップ)を所定の値に保って所望厚の液晶層を形成するためのスペーサが予め分散配置される。
【0003】
表示特性が良好な液晶表示装置を得るためには、スペーサからの溶出成分により液晶が悪影響を被らないようにする必要がある他、液晶セルを構成する2枚の透明基板の間隔に局所的なバラツキが生じないようにする必要がある。
【0004】
このような要件を満たし得るスペーサ材料としては、シリコンアルコキシドを加水分解・重縮合させてシード粒子を形成した後、このシード粒子を所定の方法で成長させることで得たシリカ微粒子がある。このシリカ微粒子は純度が高いため、液晶と接しても溶出成分により液晶に悪影響を及ぼすことが少ない。また、個々のシリカ微粒子の粒径精度が高く、かつ、同一条件で製造したシリカ微粒子についての粒径の変動係数(CV値)が低いため、スペーサとして用いた場合には2枚の透明基板の間隔を実質的に均一に保つことが可能である。しかしながらこの公報に開示されたシリカ微粒子製スペーサはいずれも未焼成であるので、シール剤硬化時の加熱や加圧により、割れてしまうという問題があった。さらに、このシリカ微粒子を液晶表示装置用のスペーサとして使用した場合、液晶セルに液晶を注入する過程でシリカ微粒子の一部が移動してしまい、この移動のときに配向膜が損傷を受けて配向斑が生じることがある。また、液晶の注入時に液晶セル周囲に付着した液晶は一般に超音波洗浄により除去されるが、この超音波洗浄のときにシリカ微粒子の一部に移動が起こり、この移動により配向膜が損傷を受けて配向斑が生じることがある。従って、表示特性の高い液晶表示装置を高い生産性の下に製造するためには、液晶セルの形成後に行われる液晶注入や超音波洗浄のときにスペーサの移動が実質的に起こらないようにする必要がある。
【0005】
特に近年LCDの大画面、高精細表示、視野角の拡大を可能とする強誘電液晶材料が使用されつつある。この液晶は、従来のTN液晶と比較して流動性が低く、液晶セル形成後の液晶注入に時間がかかるため、超音波などの物理的な力で注入を促進することになる。しかしながら、注入の際にスペーサと配向膜との固定(接着性)が弱いと、注入されてくる液晶に圧されてスペーサが移動してしまい、均一な厚さの液晶セルが作製できなくなるという問題点がある。
【0006】
液晶セルの形成後に実質的に移動が起こらないスペーサとしては、シリカ微粒子の表面を市販の合成樹脂粉末で被覆したものがある。具体的には、シリカ微粒子の表面に静電気力によって市販の合成樹脂粉末を吸着させた後、これに衝撃力を加え、その際に発生する熱により前記合成樹脂の一部を融解させて合成樹脂粉末同士を接合させると共に合成樹脂粉末をシリカ微粒子に固定させてなるものが知られている(特開昭63−94224号公報)。このスペーサでは、シリカ微粒子を被覆している合成樹脂粉末は2枚の透明基板をシール材で貼り合わせて液晶セルを形成する際に加えられる熱により溶融する。このためスペーサは各透明基板に固着し、結果として、液晶セル形成後にはスペーサの移動が実質的に起こらなくなるというものである。しかしながら、シリカ微粒子の表面を市販の合成樹脂粉末で被覆してなる、このスペーサは、合成樹脂粉末とシリカ微粒子との結合力が十分でないため、シリカ微粒子表面に付着した樹脂層が剥離しやすく、また、剥離した樹脂層が液晶物質を損傷する恐れがある。
【0007】
また、特開平1−294702号(特公平6−96605号)公報には、核物質を所定の溶液中に溶解ないし分散させた後に当該分散系に水酸化物と強酸を投入し、これにより核物質を中心としてモノマー、重合開始剤等の油溶性物質からなる油滴を形成し、この油滴中のモノマーを選択的に重合させることで粒度分布が単分散の重合体粒子を製造する方法が開示されている。そして、この公報にはシリカ微粒子を核物質として用いて製造した重合体微粒子が開示されており、この重合体粒子を液晶表示装置用のスペーサとして用いた場合には、同公報に開示されていない効果ではあるが、液晶セル形成後に移動を起しにくいものと推察される。しかしながら、この公報に記載の方法では、生成する微粒子の粒度分布にかなりの幅があり、液晶表示装置用のスペーサに要求される粒度分布の単分散性(CV値2%以下)を満たすものは得られない。前記単分散性を満たすものを得るためには、製造後にふるい等の手段による分級操作が必要になる。
【0008】
また、シリカ微粒子を核物質として用いた場合、被覆前のシリカ微粒子の平均粒径は0.02μmであるが、被覆を施すことにより、最終的に平均粒径が10.3μmまで大きくなってしまい、被覆厚さを制御することができないという欠点がある。被覆厚さをスペーサとして好適な0.05〜1μm程度とするには、モノマー濃度を低くする必要があるが、モノマー濃度を低くすると、シリカ微粒子表面の重合性官能基が少ないため、均一な被覆を施すことができなくなる。
【0009】
さらに、特開平5−232480号公報には、所定の活性水素を有する架橋重合体粒子の表面にSi−H基を導入し、このSi−H基をグリシジル基に変換し、さらにこのグリシジル基をビニル基に変換した後、ビニル基を導入した当該架橋重合体粒子の表面にグラフト重合法により、熱可塑性樹脂製の付着層を形成してなる液晶スペーサが開示されている。この公報に開示されている液晶スペーサでは、付着層とその基材である架橋重合体粒子とが、共有結合により結合されているので付着層の剥離が起こりにくく、かつ、付着層は加熱により軟化して配向基板に対して良好な付着性を示す。このため、当該液晶スペーサは液晶セル形成後に移動を起しにくいものと推察される。
【0010】
この公報には、付着層を形成するための母材粒子として未焼成シリカ微粒子を用いている例があるが、この場合焼成していないため、シリカ微粒子自体の圧縮強度が弱く、液晶表示装置用スペーサとして用いるには不都合である。また、この公報に記載の方法では、分散安定剤を用いておらず、製造過程において樹脂被覆粒子同士が凝集しやすく、表面に均一な樹脂被膜を有する単分散の樹脂被覆粒子を製造することは困難である。LCD用スペーサは、特に、セルギャップ精度が要求され、凝集した粒子では、セルギャップを一定間隔に保つというスペーサとしての役割を十分に果たすことができない。さらに、架橋重合体粒子表面にビニル基を導入するまでの工程が複雑であり、製造コストが高くなってしまう問題点がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、(i)全体として硬度、強度が高く、液晶表示装置用スペーサとして用いたときに、セルギャップを所定の間隔に保つというスペーサとしての機能を長期間に亘って果たすことができる、(ii)超音波振動により散布液(アルコール水溶液)に分散させた場合でも樹脂被膜の剥離が実質的に起こらない、(iii)液晶表示装置用の配向基板に対して良好な付着性を有するとともに、液晶自体だけでなく液晶の配向にも悪影響を及ぼすことが実質的にない等の利点を有する樹脂被覆シリカ微粒子およびその製造方法を提供することにある。
【0012】
【発明を解決するための手段】
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子は、焼成シリカ微粒子の表面にビニル基を有するシランカップリング剤を介して形成された単層構造または複数層構造からなる熱可塑性樹脂被膜を有し、前記焼成シリカ微粒子が、シリコンアルコキシドまたはその部分加水分解物で表面処理されたものであることを特徴とするものである。
【0013】
また、上記目的を達成する本発明の樹脂被覆シリカ微粒子の製造方法は、焼成シリカ微粒子を、ビニル基を有するシランカップリング剤で表面処理してシリカ微粒子の表面にビニル基を導入する工程(A);および
極性溶媒中で分散安定剤、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤の存在下に単官能ビニルモノマーを分散重合させて、表面処理されたシリカ微粒子の表面に熱可塑性樹脂被膜を形成する工程(B)を含み、前記工程(A)において前記焼成シリカ微粒子を、ビニル系シランカップリング剤で表面処理すると同時および/またはその前にシリコンアルコキシドまたはその部分加水分解物と反応させることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子を構成するものは、焼成シリカ微粒子、ビニル系シランカップリング剤および熱可塑性樹脂被膜である。このうち、焼成シリカ微粒子は、コア部分を形成する母材であり、いわゆるゾルゲル法によりシリコンアルコキシドを加水分解および重縮合反応して得られた生シリカ微粒子(焼成していないシリカ微粒子)を焼成することによって得られるものである。この焼成シリカ微粒子の製法、性質などは、後述する本発明の樹脂被覆シリカ微粒子の製造方法において詳しく説明する。
【0015】
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子において、ビニル系シランカップリング剤は、焼成シリカ微粒子と後記する熱可塑性樹脂被膜との間に介在し、焼成シリカ微粒子の表面に密着性に優れた熱可塑性樹脂被膜を形成するためのものである。この点を詳述すると、ビニル系シランカップリング剤のシラン部分が焼成シリカ微粒子表面のシラノール基と反応して化学結合を形成し、同時にビニル系シランカップリング剤のビニル基が、熱可塑性樹脂被膜形成用モノマーの重合時に該モノマー中の不飽和二重結合と反応して化学結合を形成することにより、焼成シリカ微粒子表面に、連結剤としてのビニル系シランカップリング剤を介して密着性に優れた熱可塑性樹脂被膜が形成される。
【0016】
なお、本発明の樹脂被覆シリカ微粒子において、連結剤であるビニル系シランカップリング剤は、その反応性の基であるビニル基およびシラン部分が反応した形で存在していることは、上述の説明より明らかである。
【0017】
ビニル系シランカップリング剤としては、シリカ微粒子表面のシラノール基との反応性を有するシラン部分(例えばアルコキシシラン基、ハロゲノシラン基、アセトキシシラン基など)を有し、かつ熱可塑性樹脂被膜形成用モノマーとの反応性を有するビニル基を有するものであればいかなるものも使用できる。ここに上記ビニル基とは最広義に解釈し、ビニル基それ自体以外にアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基などを含むものとする。上記のビニル系シランカップリング剤の具体例としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシ)シラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0018】
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子において、熱可塑性樹脂被膜は、焼成シリカ微粒子表面にビニル系シランカップリング剤を介して形成された外郭層を構成するものである。熱可塑性樹脂被膜は、樹脂被覆シリカ微粒子の目的、用途などによって種々のものを選択できるが、下記条件
(a)重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する。
(b)ビニル系シランカップリング剤のビニル基と反応し得る官能基を有する。
を満足する単官能モノマーを主として重合して得られたものであることを要する。なお、単官能ビニルモノマーの種類は後記する。
【0019】
単官能ビニルモノマーの重合により得られたものであるため、樹脂被膜は上述のとおり熱可塑性樹脂によって構成される。ここに熱可塑性樹脂とは、基本的にはモノマー成分として単官能ビニルモノマーのみを重合して得た樹脂を意味するが、上記単官能ビニルモノマーに、多官能ビニルモノマーを実質的な架橋が起こらない範囲で(例えば全モノマーに対して0.5モル%未満の量で)加えたモノマー混合物を重合して得た樹脂も含むものとする。
【0020】
熱可塑性樹脂被膜が複数層構造の場合、これらの複数の層は同一種類の樹脂からなっていてもよいし、異なる種類の樹脂からなっていてもよい。また、同一種類の樹脂からなっている場合においても、その樹脂の原料であるビニルモノマーの組成は異なっていてもよい。
【0021】
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子は、下記の利点を有する。
(i)焼成シリカ微粒子によってコア部分(母材)を形成しているため、強度、硬度が高く、液晶表示装置用スペーサとして用いたときに、セルギャップを所定の間隔に保つというスペーサとしての機能を長期間に亘って果たすことができる。
【0022】
(ii)ビニル系シランカップリング剤を介して焼成シリカ微粒子表面に熱可塑性樹脂被膜を形成してあるので、焼成シリカ微粒子表面と樹脂被膜との密着性に優れている。従って超音波振動により散布液(アルコール水溶液)に分散させた場合でもシリカ微粒子からの樹脂被膜の剥離が起こり難くなる。すなわち、前記樹脂被膜は超音波処理に対して耐久性を有している。
【0023】
(iii)シリカ微粒子表面に形成された樹脂被膜は、母材のシリカ微粒子よりも硬度が低く適度の弾力性、柔軟性および熱可塑性を有している。従って、本発明の樹脂被覆シリカ微粒子を液晶表示用スペーサとして用いた場合には、樹脂被膜が適度の加熱により基板表面(配向膜表面)に固着する結果、液晶セル形成後においても実質的に移動を起こさない。また、粒子同士が合着または凝集していないため、基板表面への散布作業性が向上するとともに、凝集した粒子が異物として作用することによる液晶表示不良の恐れを低減できる。さらに、樹脂被膜からの成分溶出により液晶に悪影響を及ぼすことが実質的にないため、液晶の配向乱れによる表示不良は実質的に起きない。
【0024】
次に、本発明の樹脂被覆シリカ微粒子の好ましい数値条件について述べる。
【0025】
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子は、その平均粒径が0.6〜17μmであり、かつその粒度分布の変動係数(CV値)が2%以下であるのが好ましい。
【0026】
樹脂被覆シリカ微粒子の平均粒径が上記範囲内であれば、液晶表示装置用スペーサとして用いるのに好適である。平均粒径の下限として0.6μmが好ましい理由は、液晶表示装置のセルギャップの下限が概ね0.6μmだからである。一方、平均粒径として17μm以下が好ましい理由は、以下のとおりである。平均粒径の大きい樹脂被覆シリカ微粒子を得るためには母材である焼成シリカ微粒子としても平均粒径の大きなものを使用する必要がある。しかし、粒径の大きいシリカ微粒子は後述する本発明の方法により樹脂被覆シリカ微粒子を得る際に溶液中で沈降して互いに合着し易く、合着が生じた場合には所望の樹脂被覆シリカ微粒子を得ることが困難になる。このため、母材として使用するシリカ微粒子の平均粒径の上限に応じて本発明の樹脂被覆シリカ微粒子の平均粒径の上限も規定され、その値は17μm程度となる。
【0027】
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子を液晶表示装置用のスペーサとして利用する場合、その平均粒径は1.0〜12μmであることが好ましく、特に1.2〜10μmであることが好ましい。
【0028】
粒度分布の変動係数(以下、「CV値」という。)が2%以下とは、液晶表示装置用スペーサとしての機能を果たし得る程度の、いわゆる単分散性を満たすことを意味する。CV値2%以下が好ましい理由は、CV値が2%を超えると、液晶の駆動電圧に変化をきたし、その結果コントラストの低下、表示色の不均一を招くため、液晶表示装置用のスペーサとして用いるには不適だからである。
【0029】
なお、CV値は次式により算出される。
【0030】
CV値(%)=(粒径の標準偏差)÷(平均粒径)×100
【0031】
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子における樹脂被膜の厚さは、樹脂被覆シリカ微粒子の粒径にもよるが、概ね0.01〜0.5μmの範囲内であるのが好ましい。樹脂被膜の厚さが0.01μm未満では、液晶表示装置用の配向基板に対して十分な付着力を有する樹脂被覆シリカ微粒子を得ることが困難である。一方、樹脂被膜の厚さが0.5μmを超えると、樹脂被覆シリカ微粒子同士の合着が発生しやすくなり、CV値2%以下の微粒子が得られにくくなる。樹脂被膜の好ましい厚さは、シリカ微粒子の粒径が概ね4μm以下のときは0.02〜0.2μm程度であり、シリカ微粒子の粒径が4μm以上のときは0.02〜0.5μm程度である。
【0032】
次に、本発明の樹脂被覆シリカ微粒子を製造する方法について説明する。
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子の製造方法は、焼成シリカ微粒子をビニル系シランカップリング剤で表面処理してシリカ微粒子の表面にビニル基を導入する工程(A);および
極性溶媒中で分散安定剤、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下に、単官能ビニルモノマーを分散重合させてシリカ微粒子の表面に熱可塑性樹脂被膜を形成する工程(B)を含むことを特徴とする。
以下、工程毎に詳説する。
【0033】
工程(A)
工程(A)は、焼成シリカ微粒子と、その表面に形成される熱可塑性樹脂被膜とを連結する分子(ビニル系シランカップリング剤)を焼成シリカ微粒子表面に導入する工程である。
【0034】
樹脂被覆シリカ微粒子の母材となる焼成シリカ微粒子は、実質的に真球の微粒子であり、粒子同士が実質的に合着していないものであればよく、この焼成シリカ微粒子は多孔質であってもよい。本明細書において、焼成シリカ微粒子とは、焼成により、粒子強度が70kgf/mm2以上になったものをいう。
【0035】
粒子強度は、島津製作所製の微小圧縮試験機(MCTE−200)を用いて、圧縮破壊荷重を求め、日本鉱業会誌81巻、10号、1024頁(1965)に記載されている次式により粒子強度(St)に置き換えた数値である。
【0036】
粒子強度St(kgf/mm2)=2.8P/πd2
P:圧縮破壊荷重(kgf)
d:粒径(mm)
【0037】
なお、焼成していないシリカ微粒子(ゾルゲル法により得られた生シリカ微粒子)を母材として用いた樹脂被覆シリカ微粒子は、粒子強度がおよそ50kgf/mm2程度であり、液晶表示装置用スペーサとして用いるには粒子強度が不十分である。すなわち未焼成シリカ微粒子を用いた樹脂被覆シリカ微粒子を液晶表示装置用スペーサとして用いた場合、液晶セルの形成時に施される加圧等により変形を起こすことがあり、均一なセルギャップが得られず不適当である。
【0038】
また、母材となる焼成シリカ微粒子の平均粒径は、目的とする樹脂被覆シリカ微粒子が得られる大きさであればよく、樹脂被覆シリカ微粒子の平均粒径や樹脂被膜の厚さに応じて異なってくるが、具体的には0.5〜15μmであり、好ましくは0.8〜12μm、特に好ましくは1.0〜10μmの範囲内である。CV値は2%以下が好ましく、特に1.5%以下が好ましい。シリカ微粒子の平均粒径として0.5〜15μmの範囲が好ましい理由は、平均粒径が前記範囲から外れると目的とする粒径を有する樹脂被覆シリカ微粒子を得ることが困難になるからである。また、シリカ微粒子のCV値として2%以下が好ましい理由は、CV値が2%を超えるシリカ微粒子を母材(コア物質)として用いたのでは、液晶表示装置用のスペーサに要求される粒度分布の単分散性(変動率2%以下)を満たす樹脂被覆シリカ微粒子が実質的に得られないからである。
【0039】
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子の母材となる焼成シリカ微粒子は上述の要件を満たすものでありさえすればいかなる方法により得たものであってもよい。焼成する前のシリカ微粒子(生シリカ微粒子)は、いわゆるゾルゲル法により得られるが、その具体例としては、下記(a)および(b)のものが挙げられる。
【0040】
(a)シリコンアルコキシドの加水分解および重縮合反応によって粒度分布が単分散のシード粒子を生成させる。次にこのシード粒子の分散液に触媒の存在下にシリコンアルコキシドを添加して前記シード粒子を成長させて粒径を増大させるという成長過程を、1回の成長過程が終了する毎に分級によって粒度分布を単分散に保ちつつ複数回行うことによりシリカ微粒子を得る。
【0041】
(b)シリカシード粒子をアルコールとアンモニア水との混合溶媒に分散さてなる分散液にシリコンアルコキシドを添加してこれを加水分解させ、これによりシリカ種粒子を成長させてシリカ粒子を得る。その際、シリコンアルコキシドを添加する前の分散液中の全シリカ種粒子の合計表面積Soと同分散液中の溶液成分の合計容積Voとの比So/Voを300cm2/cm3以上とするとともに、シリコンアルコキシドを添加した後の分散液中の成長した全シリカ粒子の合計表面積Sと同分散液中の溶液成分の合計容積Vとの比S/Vを300〜1200cm2/cm3以上とする。このようにして、お互いに分布が重なり合わない2種類の粒径分布をもつシリカ微粒子を得た後、分級によって一方のシリカ微粒子を得る(特開平6−48720号公報参照)。
【0042】
シリカ微粒子は、上記のようにシリコンアルコキシドを水、アンモニアおよびアルコールからなる混合液中において加水分解および脱水・重縮合させること等の手段により製造される。上記のようにして得られた未焼成シリカ微粒子は、シラノール基(Si−OH)が多いため、シランカップリング剤によって重合性官能基をシリカ微粒子表面に導入することは比較的容易である。しかしながら、有機物、水、アンモニアもかなり残存しており、上述したように強度、硬度も低い。この未焼成シリカ微粒子を500〜1200℃で焼成すると有機物や水は揮発し、さらにシラノール基同士が縮合してシロキサン結合(Si−O−Si)が増加し、強度、硬度が増加する。従って、焼成により強度、硬度は改善されるが、シリカ微粒子の表面に存在する、ビニル系シランカップリング剤との反応活性点であるシラノール基が縮合に消費されてかなり減少し、ビニル系シランカップリング剤との反応が進行しにくくなったり、全く進行しなくなったりする。
【0043】
シリカ微粒子の焼成温度、時間、粒子の表面積等の条件により失われるシラノール基の量にはかなりの幅がある。例えば、焼成度が低く、表面のシラノール基の量が比較的に多い焼成シリカ微粒子の場合には、ビニル系シランカップリング剤との反応によるビニル基の導入が比較的容易に進行するので、焼成シリカ微粒子を直接ビニル系シランカップリング剤で表面処理することができる。
【0044】
しかし、焼成度が高く、反応活性点であるシラノール基の量が低減している焼成シリカ微粒子をそのままビニル系シランカップリング剤で処理しても十分な量のビニル基をシリカ微粒子表面に導入することができず、それ故均一な樹脂被膜を有するシリカ微粒子を得ることができない。
【0045】
そこで、焼成シリカ微粒子表面のシラノール基が不足する場合(すなわち、ビニル系シランカップリング剤が反応することによってシリカ微粒子表面に導入されるビニル基の量が不十分となる場合)には、シリコンアルコキシドまたはその部分加水分解物を焼成シリカ微粒子と反応させて焼成シリカ微粒子の表面にシラノール基を導入することにより、ビニル系シランカップリング剤との反応活性点を増加させて必要量のビニル基を導入するのが好ましい。すなわち、焼成度の高い焼成シリカ微粒子についてシリコンアルコキシドまたはその部分加水分解物による処理を行うことにより、従来は液晶表示装置用のスペーサの母材として使用することができなかった高強度・高硬度の焼成シリカ微粒子が母材として有利に使用できるようになった。
【0046】
なお、アルカリ性条件下で、シリコンアルコキシドは、下記反応式で示されるように加水分解され、徐々に脱水・縮合される。
【0047】
Si(OR)4 + 4H2O → Si(OH)4 + 4ROH
Si(OH)4 → SiO2 + 2H2O
【0048】
焼成シリカ微粒子のシロキサン結合の多い表面と、上記加水分解によって生じるテトラヒドロキシシランは、本質的に同質成分であり、区別できない。そのため上記のように生成したテトラヒドロキシシランが、焼成シリカ微粒子の表面と一体化され、焼成シリカ微粒子の表面にテトラヒドロキシシランの薄い膜が形成されたような状態となる。焼成シリカ微粒子の表面に形成されたテトラヒドロキシシラン薄膜中のシラノール基にビニル系シランカップリング剤が反応し、シリカ微粒子の表面にビニル基が導入される。
【0049】
本発明で用いることができるシリコンアルコキシドまたはその部分加水分解物は、焼成シリカ微粒子表面にシラノール基が導入できるものであれば特に制限はない。ここで用いることができるシリコンアルコキシドとは、一般式
Si(OR1)4またはSi(R2)n(OR1)4-n
(式中、R1およびR2はアルキル基またはアシル基、特に炭素数1〜5のアルキル基または炭素数2〜6のアシル基であり、nは1〜3の整数である。)で示されるものであり、その具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
シリコンアルコキシドの部分加水分解物とは、上記一般式で示されるシリコンアルコキシド中の複数のアルコキシ基(OR1)または(OR2)の一部を加水分解したものが挙げられる。
【0051】
シリコンアルコキシドまたはその部分加水分解物との反応(以下、「シリコンアルコキシド処理」という。)は、焼成シリカ微粒子をビニル系シランカップリング剤による表面処理(以下、「カップリング剤処理」という。)(すなわち工程(A)))と同時および/またはその前に行うことができる。すなわち、シリコンアルコキシド処理は、カップリング剤処理の前、カップリング剤処理と同時、または両方で行ってもよい。
【0052】
シリコンアルコキシド処理のためのシリコンアルコキシドまたはその部分加水分解物の使用量は、ビニル系シランカップリング剤の使用量に対するモル比で0.5以下が好ましく、特に0.25以下が好ましい。
【0053】
本発明において、本発明の樹脂被覆シリカ微粒子の製造方法の工程(A)のカップリング剤処理において用いるビニル系シランカップリング剤とは、既に述べたようにシリカ微粒子表面のシラノール基との反応性を有するシラン部分(例えばアルコキシシラン基、ハロゲノシラン基、アセトキシシラン基など)を有し、かつ樹脂被膜形成用モノマーとの反応性を有するビニル基を有するものであれば、いかなるものも使用できる。ここに上記ビニル基とは最広義に解し、ビニル基それ自体以外にアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基などを含むものとする。
【0054】
上記のビニル系シランカップリング剤の具体例としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシ)シラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0055】
ビニル系シランカップリング剤は1種のみで用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
ビニル系シランカップリング剤の使用量は、焼成シリカ微粒子の単位表面積当たり0.5〜5ミリモル/m2に相当する量が好ましく、特に1〜3ミリモル/m2に相当する量が好ましい。
【0057】
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子の製造方法では、上述したシリカ微粒子をビニル系シランカップリング剤で表面処理する工程(A)をまず実施するわけであるが、この工程(A)は例えば次のようにして行うことができる。まず、超音波振動等を利用して、焼成シリカ微粒子をメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール溶媒中に分散させて所望の分散液を得る。このときの溶媒は1種類のアルコールであってもよいし、複数種のアルコールからなる混合物であってもよい。アルコール溶媒の重量は焼成シリカ微粒子の重量の5〜30倍が好適である。このようにして得られた分散液に、焼成シリカ微粒子の重量に対して2〜30倍の25〜30%アンモニア水を添加し、さらに、ビニル系シランカップリング剤を添加する。分散液の液温を20〜80℃に保ちつつ1〜24時間攪拌する。これにより、焼成シリカ微粒子がビニル系シランカップリング剤により表面処理され、焼成シリカ微粒子の表面にはビニル基が導入される。
【0058】
前述したように、ビニル系シランカップリング剤での表面処理時に必要に応じて少量(ビニル系シランカップリング剤に対するモル比で0.5以下)のシリコンアルコキシドを添加することができる。ビニル系シランカップリング剤と加水分解速度の速いシリコンアルコキシドを共存させることにより、焼成シリカ微粒子表面に、均一な樹脂被膜を形成するのに十分な量のビニル基を導入することができる。
【0059】
工程(B)
次に、焼成シリカ微粒子の表面に樹脂被膜を形成する工程(B)について説明する。
【0060】
工程(B)では、上述のようにして工程(A)を実施し、表面にビニル基が導入されたシリカ微粒子を分散安定剤を用いて極性溶媒中に分散させつつ、この分散液に単官能ビニルモノマーを加えて溶解させ、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下に前記ビニルモノマーを重合させることにより表面にビニル基が導入されたシリカ微粒子の表面に樹脂被膜を形成させて、反応液中に樹脂被覆シリカ微粒子を生成させる。基本的に単官能ビニルモノマーを用いていることから、得られる樹脂被膜は熱可塑性樹脂からなる。
【0061】
工程(B)で焼成微粒子の表面に形成される熱可塑性樹脂被膜は、ネマチック型、スーパーツイステッドネマチック(STN)型、強誘電型等の液晶と接しても成分の溶出が起こらない樹脂からなる。そして実質的に均一膜厚で、樹脂同士の凝集がない、単分散のものである。従って本発明の樹脂被覆シリカ微粒子は、液晶表示装置用のスペーサとして用いた場合でも液晶自体およびその配向に悪影響を及ぼすことがないため、液晶表示不良を起こすことが実質的にない。
【0062】
また、上記のような樹脂被覆シリカ微粒子を液晶表示装置用のスペーサとして用いた場合には、上記の樹脂被膜が加熱により基板表面(配向膜表面)に付着する結果、液晶セル形成後においても実質的に移動を起こさない。
【0063】
工程(B)で用いることができる単官能ビニルモノマーとは、炭素−炭素不飽和二重結合を1個有するモノマーであり、その具体例としてはビニル芳香族炭化水素(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン等)、アクリル酸、アクリル酸のエステル(メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−アミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、γ−ヒドロキシプロピルアクリレート等)、メタクリル酸、メタクリル酸のエステル(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−アミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、γ−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等)、およびビニルシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)が挙げられ、これらの単官能ビニルモノマーを重合することにより、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、メタアクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂からなる樹脂被膜が形成される。
【0064】
なお、既に述べたように、架橋を実質的に起こさない範囲で多官能ビニルモノマーを単官能ビニルモノマーとともに用いることができる。
【0065】
工程(B)では、分散重合が分散安定剤の存在下で行われることが必須である。分散安定剤の添加により、樹脂被膜が形成された後のシリカ微粒子同士、すなわち樹脂被覆シリカ微粒子同士の合着を実質的に防止することができ、シリカ微粒子表面での樹脂被膜の重合が好適に進行する。
【0066】
工程(B)で用いる分散安定剤の具体例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0067】
重合は、いわゆる極性溶媒または極性溶媒と任意の比率で混和できる有機溶媒の存在下に行われる。本発明において「極性溶媒」とは、いわゆる極性溶媒だけでなく極性溶媒混和性有機溶媒をも含む広い概念である。極性溶媒の具体例としては、例えば水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。極性溶媒混和性有機溶媒の具体例としては、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。これらの中からビニルモノマーは溶解するがその重合体である樹脂は溶解しないものを、使用するビニルモノマーに応じて適宜選択し、単独または複数のものを混合して用いる。
【0068】
上記極性溶媒として、特に多価アルコール類を用いると、溶媒の粘度が上がると共に重合体の溶解度は低下することになる。その結果、溶媒中に析出してくる熱可塑性樹脂粒子の粒径が小さくなり、この樹脂粒子がシリカ表面に付着して被膜を形成する際、より均一でかつ緻密な状態で被膜を形成することができる。
【0069】
本発明の目的である単分散の樹脂被覆シリカ微粒子を得るために特に好ましい極性溶媒の組み合わせおよびその混合割合としては、例えばエチレングリコール:水:メタノール=20〜60重量%:20〜40重量%:20〜40重量%が挙げられる。
【0070】
表面処理後のシリカ微粒子を分散安定剤を用いて極性溶媒中に分散させる方法に特別の制限はないが、例えば下記(イ)または(ロ)の方法により所望の分散液を得ることができる。
【0071】
(イ)まず、極性溶媒に分散安定剤を溶解させて、分散安定剤の濃度が2〜15重量%の溶液を調製する。次に、この溶液に表面処理後のシリカ微粒子を加え、超音波振動等を利用して前記シリカ微粒子を分散させて目的とする分散液を得る。このときの前記シリカ微粒子の添加量は、極性溶媒に対して1〜5重量%とする。
【0072】
(ロ)まず、極性溶媒に表面処理後のシリカ微粒子を加え、超音波振動等を利用して前記シリカ微粒子を分散させる。このときの前記シリカ微粒子の添加量は、最終的に得られる分散液において前記シリカ微粒子の割合が極性溶媒に対して1〜5重量%になる量とする。また、別途、極性溶媒に分散安定剤を溶解させた溶液を調製する。この溶液における分散安定剤の濃度は、最終的に得られる分散液において分散安定剤の割合が極性溶媒に対して2〜15重量%になる量とする。そして、前記シリカ微粒子を分散させた極性溶媒と前記分散安定剤を溶解させた極性溶媒とを混合して、目的とする分散液を得る。
【0073】
工程(B)では、工程(A)の表面処理後のシリカ微粒子を上述のように分散安定剤を用いて極性溶媒中に分散させた後、この分散液にビニルモノマーと、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下に前記モノマー混合物を重合させる。このとき用いるラジカル重合開始剤の具体例としては2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤や、過酸化ベンゾイル等の過酸化物が挙げられる。
【0074】
ラジカル重合開始剤の添加量は、モノマー混合物の添加量に対して1〜50モル%とすることが好ましく、特に10〜30モル%とすることが好ましい。
【0075】
工程(B)では、分散重合が連鎖移動剤の存在下で行われることが必須である。連鎖移動剤の添加により、樹脂被膜が形成された後のシリカ微粒子同士、すなわち樹脂被覆シリカ微粒子同士の合着を実質的に防止することができ、シリカ微粒子表面での単官能ビニルモノマーの重合による樹脂被膜の形成が好適に進行する。
【0076】
連鎖移動剤を添加すると、樹脂被覆シリカ微粒子同士の合着・凝集が少なくなる理由としては、(使用する極性溶媒に対する、重合体(熱可塑性樹脂)の溶解度によっても影響されるが)基本的に、連鎖移動剤を添加することにより、重合体のポリマー鎖が短くなり、析出してくる熱可塑性樹脂の粒径が小さくなることから、単一のシリカ粒子表面に均一でかつ緻密な状態で被膜形成がなされるためと考えられる。
【0077】
連鎖移動剤を添加すると、ポリマー鎖を構成するビニルモノマー分子の繰り返し単位数が少なくなり、ポリマー鎖の長さが短くなるため、比較的粒径の小さいシリカ微粒子であっても、均一な樹脂被覆が可能となる。
【0078】
一方、連鎖移動剤を添加せずに、粒径がおよそ3μm以下の比較的粒径の小さいシリカ微粒子に樹脂被覆を施した場合、樹脂被膜はシリカ微粒子表面に均一に形成されず、被膜が部分的に厚いところ、薄いところができてしまう。これは、単官能ビニルモノマーを重合して得られたポリマーが線状ポリマーであり、被覆されるシリカ微粒子の粒径がポリマー鎖の長さに対して小さすぎるため、均一な膜厚でシリカ微粒子を被覆できないためと考えられる。
【0079】
ところで、粒径がおよそ3μmを超える比較的大粒径のシリカ微粒子の場合には、連鎖移動剤を添加しなくても、比較的均一な膜厚の樹脂被膜を形成させることができる。しかしながら、連鎖移動剤を用いないで形成される樹脂被膜は、分子鎖が長く、軟化温度が高いポリマーからなるため、このような高軟化点ポリマーからなる樹脂を被覆したシリカ微粒子を液晶表示装置用スペーサとして用いる場合、スペーサを配向膜基板に確実に付着させるためには高い温度で加熱処理を行わなければならず、熱によって配向膜を損傷する危険性がある。
【0080】
これに対し、連鎖移動剤を用いて形成される樹脂被膜を構成するポリマーは、分子鎖が短く、軟化温度も比較的低く、配向膜を損傷する危険性のない温度で、スペーサを配向膜基板に確実に付着させることができる。
【0081】
工程(B)で用いる連鎖移動剤の具体例としては、例えばラジカル重合で一般的に用いられるイソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、3−エトキシプロパンチオール、ビス−2−アミノジフェニルジスルフィッド、ビス−2−ベンゾチアゾイルジスルフィッド、エチルチオグリコレート、アミルメルカプタン、メルカプト酢酸等のメルカプタン類;四塩化炭素、四塩化臭素等のハロゲン化炭素類;ジフェニルメタン、トリフェニルメタン等の炭化水素類;およびトリエチルアミンなどが挙げられる。
【0082】
工程(B)における単官能ビニルモノマーの添加は、カップリング剤処理後のシリカ微粒子と分散安定剤を含む極性溶媒分散液にラジカル重合開始剤および連鎖移動剤を添加した後であってもよいし、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の添加と同時であってもよい。
【0083】
工程(B)における単官能ビニルモノマーの重合は、単官能ビニルモノマー、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤が添加された後の分散液の液温を20〜80℃に保ちつつ、当該分散液を1〜24時間攪拌するこにより行うことができる。この重合により、前述したビニル系シランカップリング剤で表面処理された後のシリカ微粒子の表面に所望の熱可塑性樹脂被膜が形成され、反応液中に樹脂被覆シリカ微粒子が生成する。
【0084】
工程(B)の重合反応によって形成される樹脂被膜の厚さは0.01〜0.5μmとすることが好ましい。樹脂被膜の厚さは、分散液中のモノマー混合物の濃度、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の濃度、重合時間等を適宜変更することにより制御することができる。
【0085】
工程(B)のビニルモノマーの重合に伴って、反応液中には多数の樹脂微粒子が副生する。これらの樹脂微粒子は樹脂被覆シリカ微粒子に比べて著しく小さく、反応液中に樹脂被覆シリカ微粒子とともに懸濁状態で存在している。従って、工程(B)の重合反応終了後に、反応液中に副生した樹脂微粒子を洗浄により除去して、本発明の樹脂被覆シリカ微粒子を分取する。
【0086】
目的とする樹脂被覆シリカ微粒子は、上述のようにして樹脂微粒子を除去した後、例えば洗浄液を水で置換した後、凍結乾燥することにより単離することができる。
【0087】
なお、上述の工程(A)および(B)を実施することにより得られる樹脂被覆シリカ微粒子では、これを構成する樹脂被膜は単層構造となっている(以下、「単層樹脂被覆シリカ微粒子」という。)。樹脂被膜は前述したように単層構造であってもよいし複数層構造であってもよく、樹脂被膜が2層以上の構造を有する樹脂被覆シリカ微粒子は、例えば次の工程(C)を実施することによって得ることができる。
【0088】
工程(C)
まず、上述のようにして単層樹脂被覆シリカ微粒子を分取した後、この単層樹脂被覆シリカ微粒子を分散安定剤を用いて極性溶媒中に分散させつつ、この分散液に単官能ビニルモノマーを加えて溶解させる。次にラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下に前記単官能ビニルモノマーを重合させることにより前記単層樹脂被覆シリカ微粒子の表面に更に樹脂被膜を形成させて、反応液中に新たな2層目の樹脂被膜を有する樹脂被覆シリカ微粒子を生成させる。
【0089】
次いで、前述したと同様に反応液中に副生した樹脂微粒子を洗浄により除去した後に新たな2層樹脂被覆シリカ微粒子を分取する。これにより、目的とする複数層構造からなる熱可塑性樹脂被膜を有する樹脂被覆シリカ微粒子を得ることができる。
【0090】
このとき用いる分散安定剤、極性溶媒、単官能ビニルモノマー、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤は、1層目の樹脂被膜を形成する際に用いたものと同じであってもよいし異なっていてもよい。これらの具体例は、前述したとおりである。また、単層樹脂被覆シリカ微粒子を分散安定剤を用いて極性溶媒中に分散させる方法は、工程(B)における方法に準じる。そして、これ以降の手順も単層樹脂被覆シリカ微粒子を得る際の手順に準じる。工程(C)においても、極性溶媒として多価アルコールを用いると、熱可塑性樹脂被膜の形成を効果的に行うことができる。
【0091】
以下同様にして最外層の熱可塑性樹脂被膜の外側に新たな樹脂被膜を分散重合法により形成することにより、熱可塑性樹脂被膜が3層構造以上の樹脂被覆シリカ微粒子を得ることもできる。
【0092】
前記のようにして単離された本発明の樹脂被覆シリカ微粒子は、ふるい等による分級操作を行わずとも液晶表示装置用のスペーサとしてそのまま使用できる他、半導体封止用樹脂の充填材や歯科材料樹脂の充填材としても好適に使用できる。
【0093】
【実施例】
実施例1
(1)ビニル系シランカップリング剤によるシリカ微粒子の表面処理
焼成温度500℃で焼成した単分散シリカ微粒子(平均粒径1.80μm、CV値1.35%、粒子強度98kgf/mm2)200gを、内容積5リットルのフラスコに入れ、ここにイソプロピルアルコール1260gを加えた後、超音波振動を利用してシリカ微粒子を均一に分散させた。この分散液にメタノール1260gと25wt%アンモニア水1000gを添加し、液温30℃で30分間攪拌した。この混合溶液に、ビニル系シランカップリング剤であるγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン86g(0.35モル)とアルコキシシランであるテトラエトキシシラン11.2g(0.054モル)の混合物を、15分かけて添加した。添加終了後、得られた溶液の液温を60℃まで上昇させ、当該溶液を10時間攪拌しながらシリカ微粒子の表面処理を行った。表面処理終了後、溶液を静置してシリカ粒子を沈降させ、上澄み液を除去して沈降粒子(表面処理後のシリカ粒子)を得た。この粒子について、メタノール中で沈降、デカンテーションを繰り返すことで洗浄を行った。メタノールを除去した後、得られた表面処理後のシリカ粒子を、150℃のオーブン中で1時間乾燥した。このようにして表面にビニル基が導入されたシリカ微粒子を得た。
【0094】
(2)樹脂被覆シリカ微粒子の製造
分散安定剤であるポリビニルピロリドンK−90(和光純薬工業社製、分子量40万)17gを、極性溶媒としてのエチレングリコール:メタノール:水=6:2:2(重量比)の混合溶液500mlに溶解させた。この溶液に、上記(1)で得られた表面処理後のシリカ微粒子10gを添加し、超音波振動を利用してシリカ微粒子を均一に分散させた。この分散液に、2,2−アゾビスイソブチロニトリル1.0g(6.1ミリモル)を加えてよく攪拌した。ここに単官能ビニルモノマーであるメタクリル酸メチル5.0g(50.0ミリモル)および連鎖移動剤であるメルカプト酢酸0.12g(1.3ミリモル)を添加し、65℃で攪拌しながら重合を行った。8時間後、反応液を、水:メタノール=8:2(体積比)の混合液500ml中に注いで重合反応を終了させた。
【0095】
上記混合溶液を、そのまま静置して、表面に熱可塑性ポリメタメチルアクリレート(PMMA)被覆層を有するシリカ微粒子を沈降させた。沈降後、上澄み液を除去し、ここへメタノール:水=2:8(体積比)の混合液500mlを添加し、攪拌して、前記粒子を分散させた。次いでPMMA被覆シリカ微粒子の沈降、上澄み液の除去の一連の操作を7回繰り返して、PMMA被覆シリカ微粒子の洗浄を行い、PMMA樹脂粒子を除去した。洗浄溶媒を水に置換した後、凍結乾燥を行った。このようにして得られたPMMA被覆シリカ微粒子を、走査型電子顕微鏡で観察すると、個々の粒子間に合着はなく、粒子径は1.92μm(粒度分布のCV値:1.65%)で、PMMAが0.06μmの厚さで均一にシリカ粒子を被覆していた。
【0096】
さらに、このシリカ粒子を被覆しているPMMA樹脂の数平均分子量(Mn)は、GPC測定によると13,000であった。
【0097】
(3)PMMA被覆シリカ微粒子の耐液晶性試験
上記(2)で得られたPMMA被覆シリカ微粒子1gを、STN型液晶(メルク社製、ZLI−5150−075、比抵抗:2.1×1011Ωcm)2ccと混合し、これを入れた容器を封印して90℃のオーブンに3日間放置することで熱処理した後、液晶の比抵抗を測定した。その結果、熱処理後の液晶の比抵抗は、2×1011Ωcmであり、STN型液晶の元来の比抵抗2.1×1011Ωcmからほとんど変化していなかった。このことから、PMMA被覆シリカ微粒子は、液晶に対して耐性を有し、液晶と接してもイオン等の液晶にとって有害な成分の溶出を実質的に起こさないことがわかる。
【0098】
(4)PMMA被覆シリカ微粒子の被覆耐久性試験
上記(2)で得られたPMMA被覆シリカ微粒子の超音波振動処理に対する耐久性を次のようにして調べた。まず、内容積200ccのフラスコにPMMA被覆シリカ微粒子1gと分散媒100ccを入れ、これを周波数50kHz、出力150Wの超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製のVS150)の洗浄槽(内寸;50mm(縦)×200mm(横)×100mm(深さ))に浸漬した。この後、50kHz、150Wの出力条件で15分間超音波処理を行った。このとき、前記分散媒としてはメタノールまたは2−プロパノールの低級アルコールと純水との混合溶媒、または純水を用い、試験は分散媒を種々変更して行った。また、超音波洗浄機の洗浄槽内には、当該洗浄槽の2/3の高さまで水を張った。
【0099】
超音波処理終了後、所定個数のPMMA被覆シリカ微粒子を無作為に抽出して走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの分散媒を用いた場合でも、PMMA被覆シリカ微粒子にPMMA被膜の剥離等の変化は何等認められなかった。
【0100】
(5)配向基板に対する付着性能試験
上記(2)で得られたPMMA被覆シリカ微粒子0.02gを、乾式散布機を用いて、予めポリイミド製配向膜をコーティングしておいた2枚のガラス板上に散布した。一方のガラス板を、150℃のオーブン中で2時間加熱処理し、他方のガラス板は、比較対照として室温にて静置した。これらの2枚のガラス板を専用架台に取り付け、ガラス板の上面から上1cmの位置に45度の角度で窒素ガス吹き付けノズルを固定し、ガラス板に向けて窒素ガスを3kg/cm2の圧力で30秒間吹き付けた。吹き付け終了後、光学顕微鏡により、窒素ガス吹き付け前と吹き付け後のガラス板上のPMMA被覆シリカ微粒子の数を計数し、次式により粒子残存率を算出した。
【0101】
粒子残存率(%)=(窒素ガス吹き付け後の粒子数/窒素ガス吹き付け前の粒子数)×100
【0102】
その結果、熱処理されたガラス板の粒子残存率は100%であり、PMMA被覆シリカ微粒子が配向基板に完全に固着していることがわかった。これに対して、比較対照のガラス板では、粒子残存率が0%であり、PMMA被覆シリカ微粒子が全く固着していなかった。
【0103】
実施例2
(1)ビニル系シランカップリング剤によるシリカ微粒子の表面処理
焼成温度500℃で焼成した平均粒径5.70μm、CV値1.01%、粒子強度97kgf/mm2の単分散シリカ微粒子を用いた以外は実施例1の(1)と同様にして表面にビニル基が導入された表面処理シリカ微粒子を得た。
【0104】
(2)樹脂被覆シリカ微粒子の製造
分散安定剤であるポリビニルピロリドンK−90(和光純薬工業社製、分子量40万)17gを、極性溶媒としてのエチレングリコール:メタノール:水=2:4:4(重量比)の混合溶液750mlに溶解させた。この溶液に、上記(1)で得られた表面処理後のシリカ微粒子25gを添加し、超音波振動を利用してシリカ微粒子を均一に分散させた。この分散液に、ラジカル重合開始剤である2,2−アゾビスイソブチロニトリル1.0g(6.1ミリモル)を加えてよく攪拌した。ここに単官能ビニルモノマーであるメタクリル酸メチル8.0g(85.0ミリモル)および連鎖移動剤であるメルカプト酢酸0.18g(1.95ミリモル)を添加し、65℃で攪拌しながら重合を行った。8時間後、反応液を、水:メタノール=8:2(体積比)の混合液500ml中に注いで重合反応を終了させた。
【0105】
上記混合溶液を、そのまま静置して、表面に熱可塑性ポリメタメチルアクリレート(PMMA)被覆層を有するシリカ微粒子を沈降させた。沈降後、上澄み液を除去し、ここへメタノール:水=2:8(体積比)の混合液500mlを添加し、攪拌して、前記粒子を分散させた。次いでPMMA被覆シリカ微粒子の沈降、上澄み液の除去の一連の操作を7回繰り返して、PMMA被覆シリカ微粒子の洗浄を行い、PMMA樹脂粒子を除去した。洗浄溶媒を水に置換した後、凍結乾燥を行った。このようにして得られたPMMA被覆シリカ微粒子を、走査型電子顕微鏡で観察すると、個々の粒子間に合着はなく、粒子径は5.94μm(粒度分布のCV値:1.65%)で、PMMAが0.12μmの厚さで均一にシリカ粒子を被覆していた。
【0106】
さらに、このシリカ微粒子を被覆しているPMMA樹脂の数平均分子量(Mn)は、GPC測定によると15,000であった。
【0107】
(3)耐液晶性試験
上記(2)で得られたPMMA被覆シリカ微粒子について、実施例1の(3)と同様の方法で耐液晶性試験を実施した。その結果、熱処理後の液晶の比抵抗値は1.9×1011Ωcmであり、この値は前記のSTN型液晶の元来の比抵抗値2.1×1011Ωcmからほとんど変化していなかった。このことからPMMA被覆シリカ微粒子は液晶に対して耐性を有し、液晶と接してもイオン等の有害な成分の溶出を実質的に起こさないことがわかる。
【0108】
(4)被覆耐久性試験
上記(2)で得られたPMMA被覆シリカ微粒子について、実施例1の(4)と同様にして被覆耐久性試験を実施した。その結果、PMMA被覆シリカ微粒子の粒径は5.91μmであり、超音波照射によるPMMA被膜の剥離は認められず、被覆層が耐久性に富むことが明らかとなった。
【0109】
(5)配向基板に対する付着性試験
上記(2)で得られたPMMA被覆シリカ微粒子について、実施例1の(5)と同様にして配向基板に対する付着性試験を実施した。その結果、熱処理されたガラス板の粒子残存率は100%であり、PMMA被覆シリカ微粒子が配向基板に完全に固着されていることがわかった。これに対して、比較対照のガラス板では、粒子残存率が0%であり、PMMA被覆シリカ微粒子が全く固着していなかった。
【0110】
実施例3:第2層の樹脂被膜の形成
分散安定剤であるポリビニルピロリドンK−90(和光純薬工業社製、分子量40万)17gを、極性溶媒としてのエチレングリコール:メタノール:水=6:2:2(重量比)の混合溶液500mlに溶解させた。この溶液に、実施例1の(2)で得られた表面処理後のシリカ微粒子10gを添加し、超音波振動を利用してシリカ微粒子を均一に分散させた。この分散液に、2,2−アゾビスイソブチロニトリル1.0g(6.1ミリモル)を加えてよく攪拌した。ここに単官能ビニルモノマーであるメタクリル酸メチル5.0g(50.0ミリモル)および連鎖移動剤であるメルカプト酢酸0.12g(1.3ミリモル)を添加し、65℃で攪拌しながら重合を行った。8時間後、反応液を、水:メタノール=8:2(体積比)の混合液500ml中に注いで重合反応を終了させた。
【0111】
上記混合溶液を、そのまま静置して、表面に熱可塑性ポリメタメチルアクリレート(PMMA)被覆層を有するシリカ微粒子を沈降させた。沈降後、上澄み液を除去し、ここへメタノール:水=2:8(体積比)の混合液500mlを添加し、攪拌して、前記粒子を分散させた。次いでPMMA被覆シリカ微粒子の沈降、上澄み液の除去の一連の操作を7回繰り返して、PMMA被覆シリカ微粒子の洗浄を行い、PMMA樹脂粒子を除去した。洗浄溶媒を水に置換した後、凍結乾燥を行った。このようにして得られたPMMA被覆シリカ微粒子を、走査型電子顕微鏡で観察すると、個々の粒子間に合着はなく、粒子径は2.02μm(粒度分布のCV値:1.76%)で、PMMAが0.05μmの厚さで均一に第1層のPMMA被膜を有するシリカ粒子を被覆していた。
【0112】
比較例1:ビニル系シランカップリング剤不使用
ビニル系シランカップリング剤の代わりにビニル基を有しないシランカップリング剤であるメチルトリエトキシシランを用いた以外は実施例1の(1)と同様にして、表面処理されたシリカ微粒子を調製した。得られた表面処理シリカ微粒子を用いて、実施例1の(2)と同様にしてPMMA被覆シリカ微粒子の製造を試みた。 シリカ微粒子表面にビニル基を導入せずに、PMMA樹脂被覆を行った場合、得られたシリカ微粒子は、走査型電子顕微鏡観察によると、平均粒径が1.8μmであり、シリカ粒子の表面にはPMMAが全く被覆されていないことが確認された。
【0113】
比較例2:分散安定剤不使用
実施例1の(1)と同様にして表面にビニル基が導入されたシリカ微粒子10g、ラジカル重合開始剤である2,2−アゾビスイソブチロニトリル1.0g(6.1ミリモル)およびジオキサン200gを反応容器に仕込み、70℃で1.5時間反応させた。その後、分散安定剤を添加しない以外は実施例1の(2)と同様にして、ビニルモノマーおよび連鎖移動剤を上記反応液に滴下し、重合反応を試みた。このとき、前記ビニルモノマーおよび連鎖移動剤の滴下から30分後に、反応液の粘度が異常に高くなり、1時間後には反応液全体がゲル状となった。
【0114】
1時間重合させた後、ゲル化した反応液を大量のジオキサン中に投入して、PMMA被覆シリカ微粒子を分取したが、粒子同士が著しく合着・凝集しており、スペーサ用途に使用できる単分散性を有していなかった。
【0115】
分散安定剤を添加せずに重合反応を行うと、粒子同士が合着・凝集し、単分散性の樹脂被覆シリカ微粒子を得ることができないことがわかる。
【0116】
比較例3:連鎖移動剤不使用
連鎖移動剤を使用しない以外は実施例1と同様にしてPMMA被覆シリカ微粒子を得た。このようにして得られたPMMA被覆シリカ微粒子は、走査型電子顕微鏡観察によると、合着と凝集が多く、全粒子数に対して10%程度の単独粒子しか認められなかった。また、この単独粒子の粒径は1.94μm(CV値2.41%)で、単分散性が著しく低かった。シリカ微粒子を被覆しているPMMA樹脂の数平均分子量(Mn)はGPC測定によると144,000であった。
【0117】
さらに、この単独粒子を実施例1の(5)と同様にして、配向基板に対する付着性試験を実施した。その結果、熱処理されたガラス板の粒子残存率は80%であり、実施例1の(2)で得られたPMMA被覆シリカ微粒子と比較して配向基板に対する付着性が低いことがわかる。
【0118】
【発明の効果】
本発明の樹脂被覆シリカ微粒子は、全体としての強度、硬度が高く、液晶表示装置用スペーサとして用いたときに、スペーサとしての機能を長時間に亘って果たすことができる。また、超音波振動により分散媒中に分散させた場合でも、熱可塑性樹脂被膜の剥離が実質的に起こらない。すなわち、超音波振動に対して耐久性を有する。また、液晶表示装置用の配向基板に対して良好な付着性を有するとともに、液晶自体およびその配向に悪影響を及ぼすことが実質的にない。
【0119】
そして、本発明の樹脂被覆シリカ微粒子は、液晶表示装置用のスペーサに要求される平均粒径および粒度分布の単分散性を満たすものであり、この樹脂被覆シリカ微粒子は、本発明の方法で製造することにより、合着および凝集した粒子の副生を防止することができるので、歩留まり向上など明らかに経済的なメリットを有する。
Claims (7)
- 焼成シリカ微粒子の表面にビニル系シランカップリング剤を介して形成された単層構造または複数層構造からなる熱可塑性樹脂被膜を有し、前記焼成シリカ微粒子が、シリコンアルコキシドまたはその部分加水分解物で表面処理されたものであることを特徴とする樹脂被覆シリカ微粒子。
- 平均粒径が0.6〜17μmであり、かつその粒度分布の変動係数が2%以下である請求項1に記載の樹脂被覆シリカ微粒子。
- シリカ微粒子の表面に形成された樹脂被膜の厚さが0.05〜1μmである請求項1または2のいずれか1項に記載の樹脂被覆シリカ微粒子。
- 焼成シリカ微粒子をビニル系シランカップリング剤で表面処理してシリカ微粒子の表面にビニル基を導入する工程(A);および
極性溶媒中で分散安定剤、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下に、単官能ビニルモノマーを分散重合させて、表面処理されたシリカ微粒子の表面に熱可塑性樹脂被膜を形成する工程(B)を含み、前記工程(A)において前記焼成シリカ微粒子を、ビニル系シランカップリング剤で表面処理すると同時および/またはその前にシリコンアルコキシドまたはその部分加水分解物と反応させることを特徴とする樹脂被覆シリカ微粒子の製造方法。 - 分散重合系に極性溶媒として多価アルコールを存在させる請求項4に記載の方法。
- 請求項4に記載の方法によって製造した樹脂被覆シリカ微粒子を、極性溶媒中で分散安定剤、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下に、単官能ビニルモノマーを分散重合させて熱可塑性樹脂被膜の表面にさらに熱可塑性樹脂被膜を形成する工程(C)を少なくとも1回実施することを特徴とする複数層構造の樹脂被覆シリカ微粒子の製造方法。
- 分散重合系に極性溶媒として多価アルコールを存在させる請求項6に記載の方法。
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