JP3641173B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、打球の飛距離を増大しうるゴルフクラブヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ゴルフクラブヘッド、特にドライバーなどに代表されるウッド型のゴルフクラブヘッドにあっては、ボールをより遠くへ飛ばすための飛距離性能が重要視されている。一般に、打球の飛距離は、打ち出しされたボールの速度(ボール初速)が増すほど増大するため、飛距離の増大には、ゴルフクラブヘッドの持つ運動エネルギーを効率よくボールに伝達し、ボールの打ち出し速度を増すことが必要である。そして、打ち出しされたボール速度vbと、ヘッドの速度vhとの比(vb/vh)を高める工夫、つまり反発特性を高める工夫が種々提案されている。
【0003】
また近年では、ヘッドの反発特性を高める手法の一つとして、ボールを打撃するフェース部の剛性を低下させることにより、ヘッドの1次の固有振動数をゴルフボールのそれに近づけることが有効であることが判明している(いわゆるインピーダンスマッチング理論)。このような理論に基づいて、例えば特開平9−299519号公報では、図9(A)およびその断面図である図9(B)に示すごとく、ヘッドaの内部に中空部iを形成するとともに、フェース部bの内面cに、環状にのびる凹溝dを形成することが開示されている。このような凹溝dは、フェース部bの厚さを減じ低剛性化して打球時に該フェース部bを撓みやすくすることで、ヘッドの反発特性を高めている。
【0004】
ところで、前記のヘッドaにあっては、凹溝dの溝幅Wについては、フェース部bの各位置において一定に形成されている。発明者らは、フェース部bが通常、トウ−ヒール方向(水平方向)の長さL1が、クラウン−ソール方向(上下方向)の長さL2よりも大で形成されていることに着目し、フェース部bの耐久性を確保しつつさらに低剛性化を促進するためには、単に一定の溝幅Wで前記凹溝dを設けるだけでは足りず、フェース部bの位置に応じて前記凹溝dの溝幅Wを変化させることが効果的であることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
以上のように、本発明はボールを打撃するフェース部の内面に、この内面の周縁に沿って環状にのびる凹溝を具えるとともに、この凹溝の溝幅をフェース部の位置に応じて最適に変化させることを基本として、フェース部の耐久性を維持しつつ反発特性をさら高めて飛距離を増大しうるゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、内部に中空部を設けたゴルフクラブヘッドであって、
ボールを打撃するフェース部の前記中空部側を向く内面に、この内面の周縁に沿って環状にのびる凹溝を具えるとともに、
前記ヘッドのシャフトが装着されるシャフト装着軸線Cを垂直面VPに位置させかつこのヘッドのライ角で前記シャフト装着軸線Cを、ロフト角で前記フェース部の表面であるフェース面をそれぞれ傾けて水平面に載置した基準状態において、
前記フェース部を、前記フェース面の最低位置を通る第1の水平面、該フェース面の最高位置を通る第2の水平面、該フェース面の最もトウ側の位置を通りかつ前記垂直面VPと直交するトウ側の垂直面、及び該フェース面の最もヒール側の位置を通りかつ前記垂直面VPと直交するヒール側の垂直面が形成する仮想の矩形筒によって囲むとともに、
該フェース部を、前記矩形筒の対角の稜線間を継ぐ2つの平面により、クラウン側領域Ac、ソール側領域As、トウ側領域At、及びヒール側領域Ahに仮想区分した場合において、
前記凹溝は、前記クラウン側領域Acでの平均溝幅Wca、前記ソール側領域Asの平均溝幅Wsa、トウ側領域Atの平均溝幅Wta、及びヒール側領域Ahの平均溝幅Whaが、下記式(1) または(2) のいずれかを満足するとともに、
前記各溝幅W ca 、W sa 、W ta 、W ha を1〜10 mm としたことを特徴としている。
Wca>Wta、かつWca>Wha、かつWsa≧Wta、かつWsa≧Wha …(1)
Wca≧Wta、かつWca≧Wha、かつWsa>Wta、かつWsa>Wha …(2)
【0007】
また請求項2記載の発明は、下記式▲3▼を満足することを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
Wca>Wta、かつWca>Wha、かつWsa>Wta、かつWsa>Wha …▲3▼
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記凹溝は、前記平均溝幅Wca、Wsa、Wta及びWhaが、いずれも1〜10mmでありかつこの凹溝の溝底で測定したフェース部の最小厚さt1が1.5〜3.0mmであり、しかも凹溝は、前記クラウン側領域Ac、ソール側領域As、トウ側領域At及びヒール側領域Ahの4つの領域が1点で交わるフェース面の中心点Oから該フェース面の周縁上の任意の点pまでをフェース面に沿ってのびる直線O−pの長さdと、この直線O−p上において前記中心点Oから前記凹溝の内側の溝縁のフェース面投影位置pxまでの長さdxとの比(dx/d)を、0.7以上かつ0.95以下としたことを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)1の基準状態におけるフェース面側からみた正面図、図2は図1のX−X線端面図、図3は図2のY−Y線端面図をそれぞれ示している。前記「基準状態」とは、図4(A)、(B)に示す如く、前記ヘッド1のシャフトSが装着されるシャフト装着軸線C(又は該ヘッド1にシャフトSを装着したときのシャフト中心線CLであって、以下同じとする。)を垂直面VPに位置させかつこのヘッド1のライ角αで前記シャフト装着軸線Cを、またロフト角βでフェース部2の表面であるフェース面2aをそれぞれ傾けて水平面HPに載置した状態を言う。また「ライ角」、「ロフト角」は、いずれもヘッド1を製造する際に当該ヘッドに予め定められた角度であり、「ライ角」は、図4(A)に示したようにシャフト装着軸線Cと水平面HPとのなす角度α、「ロフト角」とは、図4(B)に示したようにライ角を合わせかつフェース角0度のときのフェース面2aと垂直線Gとによってできる角度βである。
【0010】
本実施形態のヘッド1は、内部に中空部iを有する例えばウッド型のものとして構成されており、前記フェース部2と、ヘッド1の上面をなすクラウン部3と、前記フェース部2の下縁に連なりヘッド底面をなすソール部4と、前記クラウン部3とソール部4との間を継ぐサイド部5とを有するとともに、クラウン部3のヒールH側にシャフトSが差し込まれるシャフト差込部6を突設形成したものを例示している。
【0011】
また前記中空部iは、完全に中空である場合の他、ボール打撃時におけるフェース部2の弾性変形を妨げない限りにおいて、例えば合成樹脂材料、発泡体、流動体を充填することや、その他の重量調整材などを適宜配置することができる。さらにヘッド1は、前記シャフト差込部6の中心線によって前記シャフト装着軸線Cが特定されうる。また本例のヘッド1は、例えばステンレス、アルミ合金、チタン、チタン合金、あるいはその他の各種の金属材料、さらには繊維強化プラスチックなど種々の材料の1種以上を用いて構成しうる。
【0012】
また本例のヘッド1は、前記フェース部2の中空部i側を向く内面2bに、この内面2bの周縁2eに沿って環状にのびる凹溝7を具え、これによってフェース部2の内面2bかつその周縁2eの近傍に厚さが小かつ環状に連続する薄肉部9が形成されている。このような凹溝7は、フェース部2を低剛性化して打球時に撓みやすくすることにより、フェース部2の反発特性を高め飛距離を増大させるのに役立つ。
【0013】
本実施形態の前記凹溝7は、図2に示す如く、フェース部2の周縁2e側の溝壁面が、前記クラウン部3、ソール部4の各部の内面と実質的に面一に連なって形成されたものが例示される。また凹溝7は、前記内面2bの周縁2eに沿ってかつ連続した環状溝として形成されたものが例示され、その溝断面形状は、本例のように円弧状をなすものの他、略V字状、矩形状など種々変形しうる。なおフェース部2の「内面2bの周縁」とは、図2に示す如く、フェース部2の内面をヘッド1の表面側に仮想延長したときの延長面がヘッドの内面と交わる位置とする。
【0014】
また凹溝7は、その溝深さが著しく大である場合、前記薄肉部9の剛性を過度に減じてフェース部2の割れや塑性変形による耐久性低下を招くおそれがあり、逆に溝深さが著しく小であると、前記反発特性の改善が十分に期待できない傾向がある。かかる観点より、前記凹溝7の溝底で測定したフェース部2の最小厚さt1は、例えば1.0〜3.0mm、より好ましく1.2〜2.8mm、さらに好ましくは1.5〜2.5mmとなるよう溝深さないし溝断面形状を定めるのが望ましい。
【0015】
本実施形態では、前記最小厚さt1をフェース部2の各位置において略一定としたものが例示される。またフェース部2は、前記凹溝7にて囲まれる中央部分の厚さt2を、例えば2.0〜4.0mm、より好ましくは2.5〜3.5mm、本例では約3.1mm程度の均一厚さとしたものが例示される。また、前記クラウン部3、ソール部4、サイド部5の各部の厚さt3は、例えば0.8〜1.5mmの範囲で適宜設定するのが良い。
【0016】
さらに本実施形態の凹溝7は、フェース部2の位置によって溝幅が変化するもので、具体的にはその溝幅を次のように設定している。まず図1に示す基準状態において、フェース部2を、フェース面2aの最低位置を通る第1の水平面HPd、該フェース面2aの最高位置を通る第2の水平面HPu、該フェース面2aの最もトウT側の位置を通りかつ前記垂直面VPと直交するトウ側の垂直面VPt、及び該フェース面2aの最もヒールH側の位置を通りかつ前記垂直面VPと直交するヒールH側の垂直面VPhが形成する仮想の矩形筒jによって囲むとともに、該フェース部2を、前記矩形筒jの対角の稜線(図1では、紙面に垂直な直線となる)間を継ぐ2つの平面P1、P2を設定する。
【0017】
そして、この2つの平面P1、P2により、フェース部2を、クラウン部3寄りのクラウン側領域Ac、ソール部3寄りのソール側領域As、トウT寄りのトウ側領域At、及びヒールH寄りのヒール側領域Ahの4つの領域に仮想区分する。このとき、前記凹溝7は、前記クラウン側領域Acでの平均溝幅Wca、前記ソール側領域Asでの平均溝幅Wsa、トウ側領域Atでの平均溝幅Wta、及びヒール側領域Ahでの平均溝幅Whaが、下記式▲1▼または▲2▼のいずれかを満足するように設定される。
Wca>Wta、かつWca>Wha、かつWsa≧Wta、かつWsa≧Wha …▲1▼
Wca≧Wta、かつWca≧Wha、かつWsa>Wta、かつWsa>Wha …▲2▼
【0018】
一般に、また本例のように、フェース部2の形状は、クラウン−ソール方向の長さが、トウ−ヒール方向の長さに比して小、すなわち横長形状を基本としていることは前述の通りである。ここで、図5に示すように、クラウン−ソール方向の長さを有する両端支持梁B1、トウ−ヒール方向の長さを有する両端支持梁B2を別個に考える。これらの梁に、同一の集中荷重Fが梁長さの中心にそれぞれ作用した場合、梁の断面係数、ヤング率などを同一とすれば、梁の撓み量δは、長さが大の梁B2の方が大きくなる。梁B1の撓み量を、梁B2に近づけるためには、梁B1の断面係数などを小とするのがよい。
【0019】
本実施形態では、長さが小のため撓み難いクラウン−ソール方向に対し、クラウン側領域Ac又はソール側領域Asにおいて凹溝7の平均溝幅Wca又はWsaが相対的に大となることによって、より一層フェース部の低剛性化を図ることが可能となる。逆に、長さが大のため撓みやすいトウ−ヒール方向に対し、トウ側領域At又はヒール側領域Ahにおいて凹溝7の平均溝幅Wta又はWhaが相対的に小となることにより、フェース部2の極端な強度低下が抑制される。
【0020】
このように本実施形態のヘッド1では、フェース部2の強度低下を防止しつつ、従来の均一な溝幅の凹溝を具えるヘッドに比して、より一層効果的に低剛性化を図ることができるから、実用上要求される耐久性を維持し、かつ反発特性が高められ、ひいては飛距離を増大しうる。なお前記各領域での平均溝幅は、各領域において、複数箇所の溝幅を測定し、これを平均することにより得ることができる。また、各領域で測定される溝幅Wc 、Ws 、Wt 、Wh は、溝がのびる向きと直角方向に、かつ図2、図3に示す如く、フェース部2の内面2bにおける溝縁間の距離として求める。また、各領域の境界部での溝幅は、図1に符号Wkで示す如く凹溝7内の境界線の中間点の位置において前記の通り測定する。
【0021】
なお凹溝7の溝幅が急激に変化すると、その部分で応力集中などが生じやすくヘッド1の耐久性が低下するおそれがある。このため、凹溝7の溝幅Wc 、Ws 、Wt 、Wh は、いずれも滑らかに変化するものが良い。また前記平均溝幅Wca、Wsa、Wta、Whaが、著しく小さい場合、フェース部2の剛性低下を十分に図ることができず反発係数の向上が期待できない傾向があり、逆に著しく大きい場合、フェース部2に実用上要求される耐久性が得られない傾向がある。かかる観点より、前記各溝幅Wca、Wsa、Wta、Whaは、1〜10 mm とする。より好ましくは1.5〜9mm、さらに好ましくは2〜8mmの範囲とする。
【0022】
また凹溝7は、前記各領域の平均溝幅が、下記式▲3▼を満足することが特に望ましいものである。
Wca>Wta、かつWca>Wha、かつWsa>Wta、かつWsa>Wha …▲3▼
【0023】
これにより、クラウン側領域Acの平均溝幅Wca及びソール側領域Asの平均溝幅Wsaが、いずれもトウ側領域Atの平均溝幅Wta、ヒール側領域Ahの平均溝幅Whaよりも大に設定される結果、フェース部2の耐久性を維持しつつ低剛性化をさらに促進することが可能となる。この際、クラウン側領域Acの平均溝幅Wca及びソール側領域Asの平均溝幅Wsaは、トウ側領域Atの平均溝幅Wta、ヒール側領域Ahの平均溝幅Whaの例えば1.2〜3.0倍、より好ましくは1.5〜2.5倍に設定することが望ましい。なおクラウン側領域Acの平均溝幅Wcaと、ソール側領域Asの平均溝幅Wsaとは同一であっても良いし、また違えても良い。同様にトウ側領域Atの平均溝幅Wtaと、ヒール側領域Ahの平均溝幅Whaとは同一であっても良くまた違えても良い。
【0024】
また前記凹溝7は、フェース部2の内面2bに、この内面2bの周縁2eに沿って形成されるものであるが、より好ましくは前記周縁2eに近接して配するのが良い。これは凹溝7が、フェース部の内面2bの周縁2e側から中央側に寄るほど、フェース部2を低剛性化する効果が低下するためである。好ましくは、図6に示す如く、前記クラウン側領域Ac、ソール側領域As、トウ側領域At及びヒール側領域Ahの4つの領域が1点で交わるフェース面2aの中心点Oから該フェース面2aの周縁上の任意の点pまでをフェース面2aに沿ってのびる直線O−pの長さdと、この直線O−p上において前記中心点Oから前記凹溝7の内側の溝縁7iのフェース面投影位置pxまでの長さdxとの比(dx/d)が、すべてのフェース面2aの周縁上の点において、0.7〜0.95を満たす。これによって、前記凹溝7の位置が適切に規制され、フェース部2をより効果的に低剛性化できる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば図7(A)に示す如く、クラウン側領域Acの凹溝7の平均溝幅Wcaだけを増大させ、他の領域の凹溝7の平均溝幅を実質的に同一としたり、また図7(B)の如く、クラウン側領域Ac及びソール側領域Asの凹溝7の溝幅が、フェース部のトウ−ヒール方向の略中間位置の最大幅からトウ、ヒールの各方向に向けて漸減するものなど、種々の態様にて実施しうる。
【0026】
また凹溝7は、図8(A)に示すように、クラウン部3、ソール部4、サイド部5の各内面から離間した位置に形成してもよく、さらには図8(B)のように、クラウン部3、ソール部4、サイド部5の各部の内面を抉るような位置に形成する他、図9(A)に示したように環状として楕円状にするなど種々変更しうる。また本発明は、ヘッド1の内部に中空部iを有するものであれば、アイアン型や、さらにはウッド型とアイアン型の中間的な形状を具えたいわゆるユーティリティ型のヘッドなどにも好適に用いうる。
【0027】
【実施例】
表1に示す仕様により複数のウッド型のゴルフクラブヘッドを試作した。各ヘッドは、いずれも6Al−4Vチタン合金からなり、ヘッド体積を300cm 3、ヘッド質量185g、ロフト角を10度、ライ角を56度、フェース角を3度に設定した。凹溝を除いた各部の厚さは、3.1mmに統一している。そして、各ヘッドにそれぞれ同一のシャフト(住友ゴム工業(株)製の「ファージェクトFJ474」)、同一のグリップ(芹沢ゴム工業所社製「パーフェクトコード」)を装着したウッド型ゴルフクラブを製造して、打撃テスト及び耐久テストを行った。なお各クラブは、いずれもクラブ全長45インチ、クラブ質量280g、バランスD0に設定した。
【0028】
打撃テストでは、供試クラブをスイングロボットに設置し、ヘッドスピード45m/sにてボール(住友ゴム工業(株)製「MAXFRI HI−BRID」)を各クラブ毎に5球づつ打撃し、打ち出しされたボールの打ち出し速度、飛距離(キャリー+ラン)を測定しその平均値で評価した。また耐久テストでは、フェース面の中心点において、ヘッドスピード45m/sで3000発の実打を行い、このテストの前後でのフェース面の凹み量を調べた。実用上の耐久性を考慮すると、凹み量は0.1mm未満のものが合格である。ヘッドの仕様、テスト結果などを表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
テストの結果、実施例のヘッドを具えたウッド型ゴルフクラブでは、飛距離を増大できかつ実用に耐えうる十分な耐久性を具えていることが確認できた。これに対して、凹溝のない比較例1では、耐久性には優れるもののフェース部が低剛性化されていないため飛距離の増大が得られていない。また、一定の溝幅をなす凹溝を設けた比較例2では、耐久性は実施例1と同程度であるが飛距離が劣っており、また、比較例2よりも溝幅を大とした比較例4では、飛距離が増大しているものの実用上必要とされる耐久性が得られておらず、いずれも好適なフェース部の低剛性と耐久性とのバランスが確保されていない。またトウ、ヒール側領域の平均溝幅を、クラウン部、ソール部側領域の平均溝幅よりも大とした比較例3にあっては、フェース部の均一な低剛性化が損なわれ、飛距離、耐久性のいずれにおいても劣る結果となった。
【0031】
【発明の効果】
本発明では、フェース部の内面に、この内面の周縁に沿って環状にのびる凹溝を具えるとともに、この凹溝の溝幅をフェース部の位置に応じて最適に変化させることにより、フェース部の耐久性を維持しつつ反発特性をさら高めて飛距離を増大しうるゴルフクラブヘッドを提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す基準状態のゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図2】そのX−X線端面図である。
【図3】図2のY−Y線端面図である。
【図4】(A)はライ角を説明する線図、(B)はロフト角を説明する線図である。
【図5】梁の撓みを説明する概念図である。
【図6】本発明の一実施形態を示す基準状態のゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図7】(A)、(B)は、本発明の他の実施形態を示すゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図8】(A)、(B)は、本発明の他の実施形態を示すゴルフクラブヘッドの断面図である。
【図9】(A)は従来の技術を説明するゴルフクラブヘッドの正面図、(B)はその端面図である。
【符号の説明】
1 ゴルフクラブヘッド
2 フェース部
2a フェース面
2b フェース部の内面
2e内面の周縁
7 凹溝
Ac クラウン側領域
As ソール側領域
At トウ側領域
Ah ヒール側領域
Claims (3)
- 内部に中空部を設けたゴルフクラブヘッドであって、
ボールを打撃するフェース部の前記中空部側を向く内面に、この内面の周縁に沿って環状にのびる凹溝を具えるとともに、
前記ヘッドのシャフトが装着されるシャフト装着軸線Cを垂直面VPに位置させかつこのヘッドのライ角で前記シャフト装着軸線Cを、ロフト角で前記フェース部の表面であるフェース面をそれぞれ傾けて水平面に載置した基準状態において、
前記フェース部を、前記フェース面の最低位置を通る第1の水平面、該フェース面の最高位置を通る第2の水平面、該フェース面の最もトウ側の位置を通りかつ前記垂直面VPと直交するトウ側の垂直面、及び該フェース面の最もヒール側の位置を通りかつ前記垂直面VPと直交するヒール側の垂直面が形成する仮想の矩形筒によって囲むとともに、
該フェース部を、前記矩形筒の対角の稜線間を継ぐ2つの平面により、クラウン側領域Ac、ソール側領域As、トウ側領域At、及びヒール側領域Ahに仮想区分した場合において、
前記凹溝は、前記クラウン側領域Acでの平均溝幅Wca、前記ソール側領域Asの平均溝幅Wsa、トウ側領域Atの平均溝幅Wta、及びヒール側領域Ahの平均溝幅Whaが、下記式(1) または(2) のいずれかを満足するとともに、
前記各溝幅W ca 、W sa 、W ta 、W ha を1〜10 mm としたことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
Wca>Wta、かつWca>Wha、かつWsa≧Wta、かつWsa≧Wha …(1)
Wca≧Wta、かつWca≧Wha、かつWsa>Wta、かつWsa>Wha …(2) - 下記式(3) を満足することを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
Wca>Wta、かつWca>Wha、かつWsa>Wta、かつWsa>Wha …(3) - 前記凹溝は、前記平均溝幅Wca、Wsa、Wta及びWhaが、いずれも1〜10mmでありかつこの凹溝の溝底で測定したフェース部の最小厚さt1が1.5〜3.0mmであり、
しかも凹溝は、前記クラウン側領域Ac、ソール側領域As、トウ側領域At及びヒール側領域Ahの4つの領域が1点で交わるフェース面の中心点Oから該フェース面の周縁上の任意の点pまでをフェース面に沿ってのびる直線O−pの長さdと、この直線O−p上において前記中心点Oから前記凹溝の内側の溝縁のフェース面投影位置pxまでの長さdxとの比(dx/d)を、0.7以上かつ0ほ95以下としたことを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
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